説明

ダクト接続構造及びダクトの接続方法

【課題】搬送される空気の通過に伴って生じる熱損失若しくは熱吸収を最小限にすると共に、作業性に優れたダクト接続構造及びダクトの接続方法を提供する。
【解決手段】建物の梁11を貫通するように孔12を設けて、この孔にダクト接続用の継ぎ手管13を挿通すると共に、継ぎ手管の両端部にダクト14をそれぞれ接続するダクト接続構造である。また、継ぎ手管の少なくとも一部は軸方向に伸縮可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、継ぎ手管を用いてダクトを接続するダクト接続構造及びダクトの接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ユニット建物に設けられる換気用ダクトの接続構造としては、隣接する建物ユニットの隣り合う梁に孔を設けて、その孔にダクトを挿通すると共に、隣接する建物ユニットのダクトの端部同士を連結部材を介して接続するものが知られている(特許文献1〜4を参照)。
【0003】
例えば、上記接続構造としては、図5に示すように、隣接する建物ユニットの骨組みである梁11、11に形成された孔12、12に連結部材としてのPVC管16を挿通してダクト14、14を接続するダクト接続構造20がある。
【0004】
このダクト接続構造20では、断面略コ字状に形成された梁11、11の対向する側面11c、11cの略中央にPVC管16の管径よりも少し大きな径の孔12、12が設けられている。
【0005】
また、孔12、12に挿通されて梁11、11の外側に突出するPVC管16の両端部には、隣接する建物ユニットのダクト14、14がアルミテープ15を介して接続されている。
【0006】
ここで、このダクト14、14には搬送される空気の熱損失若しくは熱吸収を抑えるための断熱材若しくは保温材が捲回されている。
【特許文献1】特開平11−230607号公報
【特許文献2】特開平11−173477号公報
【特許文献3】特開平11−211182号公報
【特許文献4】特開平8−74321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来の建物ユニット間のダクト接続構造20では、建物の構造部材である断面欠損を最小限に抑えるために、梁11、11に形成される孔12、12の径はPVC管16を挿入できるだけの大きさに設定されている。
【0008】
このため、PVC管16を断熱材若しくは保温材で被覆すると孔12、12を通らなくなるので、PVC管16部分に充分な断熱を行うことができないという問題がある。
【0009】
また、ダクト14とPVC管16との接続作業を容易にするために、PVC管16の両端部は梁11、11の外側に突出するように形成されているので、PVC管16内を通過する空気の通過距離は長くなり、熱損失若しくは熱吸収が大きくなるという問題がある。
【0010】
他方、このPVC管16の熱損失若しくは熱吸収に対しては、PVC管16の長さを最小限にしてPVC管16部分の断熱性能の低下を防止することが行われている。
【0011】
しかしながら、PVC管16の長さを最小限にすると、断熱されたダクト14、14の端部を梁11、11のフランジ近傍まで位置させてPVC管16と接続させることになるので、型鋼である梁11、11の内側という手の届き難い箇所での接続作業となり作業性が悪く、また、接続不良によって品質が低下する恐れもある。
【0012】
そこで本発明は、搬送される空気の通過に伴って生じる熱損失若しくは熱吸収を最小限にすると共に、作業性に優れたダクト接続構造及びダクトの接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために本発明は、建物の構造部材を貫通するように孔が設けられ、前記孔にはダクト接続用の継ぎ手管が挿通されると共に前記継ぎ手管の両端部に前記ダクトがそれぞれ接続されるダクト接続構造であって、前記継ぎ手管の少なくとも一部が軸方向に伸縮可能であることを特徴とする。
【0014】
また、前記継ぎ手管の伸縮部分が蛇腹形状に形成されていてもよい。
【0015】
また、本発明は、建物の構造部材を貫通するように孔を設け、前記孔にはダクト接続用の継ぎ手管を挿通すると共に前記継ぎ手管の両端部に前記ダクトをそれぞれ接続するダクトの接続構造において、軸方向に伸縮可能な継ぎ手管を伸ばした状態で前記孔に挿入し、前記継ぎ手管の両端部にそれぞれ前記ダクトを接続し、前記ダクトを前記孔に向けて押し込むことによって前記継ぎ手管を縮めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、継ぎ手管の少なくとも一部を軸方向に伸縮可能な構成とすることにより、継ぎ手管を引き伸ばして作業性の良い継ぎ手管の両端部とダクトとの接続作業を行うことができるので、作業性に優れ、また、接続不良のない品質の良いダクト接続構造を提供することができる。
【0017】
また、ダクトと継ぎ手管の接続完了後に継ぎ手管を押し縮めることにより、継ぎ手管内における搬送されてきた空気の通過領域を少なくすることができるので、継ぎ手管部分での熱損失若しくは熱吸収を最小限にすることができる。
【0018】
更に、継ぎ手管に断熱材若しくは保温材を被覆しなくてよいので、構造部材に形成される孔の径を最小限にして、構造部材の断面欠損による耐力低下を最小限にすることができる。
【0019】
また、継ぎ手管の伸縮部分を蛇腹形状に形成することにより、継ぎ手管の伸縮を容易に行うことができ、作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係るダクト接続構造の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は本発明の実施の形態に係るダクト接続構造10の構成を示す部分断面図である。
【0022】
本発明に係るダクト接続構造10は、例えばユニット建物(図示せず)の隣接する建物ユニット間において各建物ユニットのダクト14、14を接続する際に適用されるものである。
【0023】
この各建物ユニットは、骨組みとして柱、梁、根太などから略箱形に形成されると共に、この骨組みに天井面材や床面材、内外壁などが取付けられてなる。
【0024】
そして、この建物ユニットを上下左右方向に複数配置して建物ユニット同士を結合することによりユニット建物とする。
【0025】
このようなユニット建物では、隣接する建物ユニットの梁や柱などが隣り合うように配置されている。
【0026】
そして、図1に示すように、ダクト接続構造10は、隣接する建物ユニット(図示せず)の隣り合う構造部材としての梁11、11間に跨って設けられている。
【0027】
この梁11、11は断面視略コ字状に形成されていると共に、その凹部11b、11bが、梁11、11の水平方向で各建物ユニット内側A、Aにそれぞれ形成されている。
【0028】
しかも、梁11、11の各建物ユニット内側A、Aのそれぞれの角部には、梁11、11の鉛直方向内側へ向けて突出するフランジ部11a、11a、11a、11aがそれぞれ延出されている。
【0029】
また、梁11、11の互いに対向する側面11c、11cの略中央には同寸同形の孔12、12がそれぞれ形成され、この孔12、12は梁11、11間を連通するように梁11、11の水平方向に関して重合した状態となっている。
【0030】
更に、孔12、12には、この孔12、12を連通する継ぎ手管としての略円筒状の蛇腹管13が挿通されている。
【0031】
この蛇腹管13は、断熱性を有する樹脂若しくはアルミなどの金属材料からなると共に、断面略山状若しくは谷状の撓み13a、・・・が軸方向の円周上に沿って複数形成された状態になっている。
【0032】
そして、蛇腹管13の軸方向に圧縮力若しくは引張り力を加えると、この複数の撓み13a、・・・がそれぞれ変形して、軸方向に縮むか若しくは引き伸ばされることになるので、蛇腹管13軸方向に自在に伸縮させることができる。
【0033】
また、この蛇腹管13の両端部13b、13bには、隣接する建物ユニットのそれぞれに設けられるダクト14、14の一端部14a、14aがアルミテープ15、15を介して接続されている。
【0034】
このダクト14の一端部14aの外周にはL字状に切り欠かれた切欠段差部14bが設けられ、この切欠段差部14bに蛇腹管13の端部13bが嵌合されている(もう一方のダクト14についても同様の構成)。
【0035】
そして、この蛇腹管13とダクト14との嵌合部分の境界を覆うようにアルミテープ15が捲回されている。
【0036】
一方、ダクト14の基部14cには、この基部14cの外周に捲回される断熱材14dが設けられている(もう一方のダクト14についても同様の構成)。
【0037】
尚、ダクト14の断熱部分の径は、ダクト14の基部14cに断熱材14dが捲回されているので、梁11の側面11cに形成された孔12の径よりも大きくなっている。
【0038】
次に、本発明に係るダクト接続構造10の作用をこのダクト接続構造10を形成するダクトの接続方法と共に説明する。
【0039】
まず、図2に示すように、隣接する建物ユニット(図示せず)の梁11、11が隣り合うように、建築現場にてユニット建物を組み立てる。
【0040】
そして、隣接する建物ユニットの梁11、11の対向する側面11c、11cに設けられた孔12、12に、引き伸ばすことによって孔12、12の内径より外径が小さくなった蛇腹管13を、一方の建物ユニットの梁11側から矢印Aの方向へと挿通する。
【0041】
この蛇腹管13は、管の長手方向の略中央部分が隣接する建物ユニットの梁11、11の側面11c、11c間の隙間dに位置するまで孔12、12に挿通される。
【0042】
そして、図3に示すように、蛇腹管13が孔12、12に挿通された状態で、蛇腹管13を水平方向に引き伸ばして、蛇腹管13の両端部13b、13bが凹部11b、11bから梁11、11の外側、即ち、各建物ユニット内側A、Aにまで達するようにする。
【0043】
更に、蛇腹管13が引き伸ばされた状態で、蛇腹管13の両端部13b、13bにそれぞれダクト14、14の一端部14a、14aを嵌合した後、アルミテープ15をその嵌合部分の境界を覆うように捲回して接着させることにより蛇腹管13とダクト14、14とを接続する。
【0044】
そして、蛇腹管13とダクト14、14とが接続された状態で、図4に示すように、蛇腹管13の梁11、11から突出する部分を側面11c、11c側に押し縮めてダクト14、14間の接続を保持させることにより、隣接する建物ユニット間のダクト接続作業が完了する。
【0045】
以上のようなダクト接続作業では、隣接する建物ユニットの梁11、11に挿通された蛇腹管13を凹部11b、11bの外側まで引き伸ばした状態で蛇腹管13の両端部13b、13bとダクト14、14の一端部14a、14aとを接続するので、ダクトの接続やアルミテープ15の捲回作業を行いやすく作業性に優れている。
【0046】
しかも、作業を良好に行えるので接続不良のない品質の良いダクトの接続構造を提供することができる。
【0047】
一方、建物ユニット内などに設置されている空調機からは空調(冷暖房)された空気が送風され、その空気はダクト14の内部を通って隣接する建物ユニットの間で形成されたダクト接続構造10部分に搬送される。
【0048】
そして、空調機から搬送された空気は、図4に示すダクト接続構造10において、一方の建物ユニットのダクト14内から押し縮められた蛇腹管13内を通過して他方の建物ユニットのダクト14内へと導かれる。
【0049】
この時、蛇腹管13は押し縮められた状態で保持されているので、搬送された空気が蛇腹管13内を通過する領域は少なくなり、空調機から搬送された空気の熱が管壁を介して放熱されること若しくは搬送された空気が管壁を介して熱を吸収することをできる限り抑制することができる。
【0050】
即ち、空調機から搬送された冷気がダクト接続構造10において暖められること若しくは暖気が冷やされることを抑制することができる。
【0051】
また、蛇腹管13自体には断熱材若しくは保温材を被覆していないので、梁11、11に形成される孔12、12の径を小さくすることができる。
【0052】
従って、構造部材としての梁11、11の断面欠損による耐力の低下を最小限にすることができる。
【0053】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0054】
例えば、上記実施の形態に係るダクト接続構造10は、隣接する建物ユニットの隣り合う梁11、11に設けられているが、これに限定されるものではなく、建物ユニット若しくは建物ユニット以外の柱や壁などの構造部材を介してダクトの接続作業を行わなければならない箇所に、上記実施の形態に係るダクト接続構造10を適用してもよい。
【0055】
また、上記実施の形態に係る蛇腹管13は全長を蛇腹にしなくてもよい。
【0056】
更に、上記実施の形態に係る継ぎ手管としての管13は蛇腹に限定されず、ゴムなどの伸縮性部材によって構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態に係るダクト接続構造の構成を示す部分断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るダクト接続構造を形成する接続作業時において蛇腹管を挿通する際の説明図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るダクト接続構造を形成する接続作業時において蛇腹管とダクトとを接続する際の説明図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るダクト接続構造を形成する接続作業完了時の状態を示す説明図である。
【図5】従来技術に係るダクト接続構造の概略構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0058】
10 ダクト接続構造
11 梁(構造部材)
12 孔
13 蛇腹管(継ぎ手管)
14 ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の構造部材を貫通するように孔が設けられ、前記孔にはダクト接続用の継ぎ手管が挿通されると共に前記継ぎ手管の両端部に前記ダクトがそれぞれ接続されるダクト接続構造であって、
前記継ぎ手管の少なくとも一部が軸方向に伸縮可能であることを特徴とするダクト接続構造。
【請求項2】
前記継ぎ手管の伸縮部分が蛇腹形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のダクト接続構造。
【請求項3】
建物の構造部材を貫通するように孔を設け、前記孔にはダクト接続用の継ぎ手管を挿通すると共に前記継ぎ手管の両端部に前記ダクトをそれぞれ接続するダクトの接続構造において、
軸方向に伸縮可能な継ぎ手管を伸ばした状態で前記孔に挿入し、前記継ぎ手管の両端部にそれぞれ前記ダクトを接続し、前記ダクトを前記孔に向けて押し込むことによって前記継ぎ手管を縮めることを特徴とするダクトの接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−192437(P2007−192437A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−9400(P2006−9400)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】