説明

ダニ駆除剤試験装置及びダニ駆除部材

【課題】ミツバチの外部寄生害虫であるミツバチヘギイタダニ等のダニを駆除する駆除剤の試験に用いる装置及び試験される駆除剤を塗布するダニ駆除部材を提供する。
【解決手段】上面が開口して蓋2aを備え少なくとも底部が網2cとなっている飼育カゴ2と、上端は封がされ下端に給餌孔を備え前記蓋2aに穿設された挿通孔に挿通、係止され内部にミツバチの餌を溜める給餌管3と、前記飼育カゴ2を載置するためのトレー4と、前記飼育カゴ2内に吊るされ試験される駆除剤5を染み込ませた駆除部材と、からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミツバチの外部寄生害虫であるミツバチヘギイタダニ等のダニを駆除する駆除剤の試験に用いる装置及び試験される駆除剤を塗布するダニ駆除部材に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、ミツバチの外部寄生害虫であるミツバチヘギイタダニ駆除剤の試験には、塩化ビニールなどのプラスチック素材を使用(特許文献1)し、その表面に殺虫剤を塗布した駆除部材が多く市販されている。
【0003】
しかしながら、上記のような塩化ビニール製のダニ駆除部材は腐敗しにくいため、使用後にみだりに山野に捨てることが出来ず、また、焼却処分をするにも塗布されている殺虫剤の残留物や塩化ビニールから悪臭が発生し、周辺住民へ悪影響を及ぼす恐れがあった。
【0004】
そのため、使用後に腐敗処理や焼却処分をしても環境に悪影響を及ぼすことが無く、廃棄し易いダニ駆除部材が求められている。
【0005】
また、上記ダニ駆除部材には次の条件を満たすことが求められている。即ち、(1)攻撃により針を失ったミツバチは死亡するためミツバチの攻撃性を刺激しないものであること、(2)巣箱内が35度と高温であるため駆除薬剤の揮発物が一時に多く発生し充満しないこと、(3)前記駆除薬剤の揮発物が卵や幼虫に影響を及ぼさないこと、(4)薬剤との接触により殺ダニ効果があること、である。更に、現在では高価な外国製に頼っているため、廉価な国内製であることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−124377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、廃棄し易く、ミツバチの攻撃性を刺激せず、揮発物が一時に発生せず、卵や幼虫に影響を及ぼすことなく、ミツバチと接触するだけで試験されるダニ駆除剤がミツバチに移行するダニ駆除部材と、試験されるダニ駆除剤を実験・検証するためのダニ駆除剤試験装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために、上面が開口して蓋2aを備え少なくとも底部が網2cとなっている飼育カゴ2と、上端は封がされ下端に給餌孔3bを備え前記蓋2aに穿設された挿通孔2bに挿通、係止され内部にミツバチの餌を溜める給餌管3と、前記飼育カゴ2を載置するためのトレー4と、前記飼育カゴ2内に吊るされる試験されるダニ駆除剤5eを染み込ませた駆除部材と、からなることを特徴とするダニ駆除剤試験装置の構成とした。また、前記駆除材が、木質材であることを特徴とするダニ駆除剤試験装置とした。さらに、前記駆除部材を、蜜蝋とパラフィンからなる混合物を染み込ませ、表面に試験されるダニ駆除剤を塗布した木片としたことを特徴とする前記ダニ駆除剤試験装置とした。加えて、前記給餌管を、上端に拡張部3aを形成するとともに封がされ、他端である下端に水平から上方向に開口した給餌孔3bを備え、前記蓋2aに穿設された挿通孔2bに挿通され、前記拡張部3aで前記蓋2aに係止され内部にミツバチの餌を溜める給餌管3としたことを特徴とする前記何れかに記載のダニ駆除剤試験装置とした。
【0009】
また、ダニ駆除剤の有効試験に用いられる駆除部材であって、木片に蜜蝋とパラフィンからなる混合物を染み込ませ、試験されるダニ駆除剤を塗布し、乾燥させてなることを特徴とするダニ駆除部材の構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明で実験・検証された木片などの木質材であるダニ駆除部材は有機物であるため土中に埋めれば腐敗して土となり、焼却処理をしても悪臭を発生させるとがなく、容易に廃棄することができる。
【0011】
また、本発明であるダニ駆除部材の内部には蜜蝋とパラフィンが染み込んでいるため、ダニ駆除剤は素材の表面に付着させるために必要な量(従来の20〜30%)に抑えることができ、また表面の塗布されたダニ駆除剤により駆除部材内部からの揮発物の発生が抑えられるため、高温時における巣箱内のミツバチへの影響を防止することができる。
【0012】
更に、ダニ駆除部材内部に染み込ませた蜜蝋とパラフィンの混合物はミツバチの攻撃性を和らげるため、無駄にミツバチを殺すことなくミツバチのダニ駆除作業や新たなダニ駆除剤の実験・検証を行うことができる。
【0013】
また、ダニ駆除剤試験装置で使用する給餌管により、24時間後、48時間後等の長時間に渡る室内毒性検定作業を容易に行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明であるダニ駆除剤試験装置の斜視図である。
【図2】本発明であるダニ駆除剤試験装置の分解図である。
【図3】本発明であるダニ駆除剤試験装置を使用した状態の断面図である。
【図4】本発明であるダニ駆除剤試験装置の給餌管のA−A線断面図である。
【図5】本発明であるダニ駆除剤試験装置で使用するダニ駆除部材の斜視図である。
【図6】本発明であるダニ駆除剤試験装置を巣箱内に設置した状態を示した図である。
【図7】本発明であるダニ駆除剤試験装置で使用するダニ駆除部材の作成方法を示した流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
廃棄し易く、ミツバチの攻撃性を刺激せず、揮発物が一時に集中せず、卵や幼虫に影響を及ぼすことなく、接触するだけで殺ダニ効果があるダニ駆除剤を木片に蜜蝋とパラフィンの混合物を染み込ませて表面にダニ駆除剤を塗布することで実現し、その実験及び検証を給餌管を備えたダニ駆除剤試験装置によって実現した。
【実施例1】
【0016】
次に図1から図6を使用して本発明であるダニ駆除剤試験装置を詳細に説明することとする。図1は本発明であるダニ駆除剤試験装置の斜視図、図2はダニ駆除剤試験装置の分解図、図3はダニ駆除剤試験装置を使用した状態の断面図、図4はダニ駆除剤試験装置の給餌管のA−A線断面図、図5はダニ駆除剤試験装置で使用するダニ駆除部材の斜視図、図6はダニ駆除剤試験装置を巣箱内に設置した状態を示した図である。
【0017】
図1及び図2に示すように、本発明であるダニ駆除剤試験装置1は、上面が開口して蓋2aを備え前後左右底面が網2cとなっている略直方体状の飼育カゴ2と、上端に拡張部3aを形成し下端に給餌孔3bを備え前記蓋2aに穿設された挿通孔2bに挿通される給餌管3と、前記飼育カゴ2を載置するためのトレー4と、平板状の木片5dで、試されるダニ駆除剤が塗布され前記飼育カゴ2内に吊るされるダニ駆除部材5とからなる。前記ダニ駆除部材5は、前記飼育カゴ2にヒモ5bに備えられた留め具5aで係止される。なお、ここでは飼育カゴ2は、略直方体として示したが、トレー4に載置するため底部が平坦であればよく、全体として円柱状であってもよく、さらに上面は平坦である必要はない。トレー4を設けることで、ダニ駆除剤により死滅し落下したダニを捕集でき、簡易にダニ駆除剤の有効性の有無を確認することができる。
【0018】
図3に示すように、トレー4の中に飼育カゴ2を設置し、更にダニ駆除部材5に取り付けた留め具5aを飼育カゴ2の上面縁に掛けた状態で飼育カゴ2内にダニ駆除部材5を吊り下げて蓋2aで固定し、複数匹のミツバチ6、6、6・・・を飼育カゴ2内に入れて蓋2aの挿通孔2bに給餌管3を挿通して本発明であるダニ駆除剤試験装置1を設置する。
【0019】
このとき、給餌管3内には液状の餌3cが注入されており、ミツバチ6は給餌管3の下端に設けた給餌孔3bから餌3cを得ることが出来る。
【0020】
図2及び図3に示すように、前記飼育カゴ2は縦長の直方体状をしており前後左右面及び底面は網2c面であり、上面のみが開口している。前記飼育カゴ2の開口した上面は蓋2aを取り付けられており、この蓋2aの中央には給餌管3を取り付けるための挿通孔2bが穿設されている。また、蓋2aも網であってもよく、或いは底部のみ網とし、側面上面は、孔を穿孔するなどして、通気性を確保するだけでもよい。なお、蓋2aが網であれば、その格子の孔に給餌管3を係止すればよい。
【0021】
図3及び図4に示すように、前記給餌管3は内部が中空の管であり、下端のみが開口して給餌孔3bを形成している。また、給餌管3は中部から下端に向かうにつれて径が小さくなり、前記給餌孔3bが側面を向く程度に下端部分が大きく湾曲した略J字型をしている。
【0022】
前記給餌管3の上端に形成した拡張部3aは、蓋2aの挿通孔2bよりも径が大きく、給餌管3を蓋2aに取り付ける際にストッパーの役目をし、図4に示すように給餌管3が飼育カゴ2内の中央に吊り下げられた状態を維持することができる。
【0023】
このように、特別な装置を必要とせずに給餌管3を飼育カゴ2内に設置することができ、施薬後に落下したダニの調査を容易に行うことができ、更に薬物コンタミネーションの危険性が少ない。
【0024】
即ち、直管型の給餌器や下置きの給餌器では、ミツバチが餌を食べる際にミツバチの胸部を餌に接触させてしまうため、ミツバチの胸部から餌に毒性が移行してしまい薬物コンタミが発生する可能性が大きかったが、本発明のように略J字型の給餌管3では、1匹毎に給餌孔を跨いで餌を得るためミツバチの胸部が餌に接触することが無く餌に毒性が移行する危険性がすくない。
【0025】
以上のように、給餌管3を略J字型にすることで、取扱が容易で省力的に実験調査を行うことができ、更に薬物コンタミネーションの心配もない。
【0026】
図2及び図5に示すように、前記ダニ駆除部材5は平板状の木片5dからなり、表面に試験されるダニ駆除剤5eが塗布されている。また、木片5dには孔5cが穿設されており、ヒモ5bを介して留め具5aを取り付けることが出来る。ダニ駆除部材5としては、木片に限らず、(1)攻撃により針を失ったミツバチは死亡するためミツバチの攻撃性を刺激しないものであること、(2)巣箱内が35度と高温であるため駆除薬剤の揮発物が一時に多く発生し充満しないこと、(3)前記駆除薬剤の揮発物が卵や幼虫に影響を及ぼさないこと、(4)薬剤との接触により殺ダニ効果があること、の条件を満たす部材であれば、種々の木質性の素材が採用できる。
【0027】
図6に示すように、本発明であるダニ駆除剤試験装置1をトレー4上に載置した状態で小型の巣箱7内に4つ程設置し、ダニ駆除部材5に塗布したダニ駆除剤5eがミツバチヘギイタダニを駆除する効果があるかどうかを実験する。
【0028】
次に図7を使用して、ダニ駆除部材5の作成方法を説明することとする。図7は本発明であるダニ駆除剤試験装置で使用するダニ駆除部材の作成方法を示した流れ図である。
【0029】
図7に示すように、「ダニ駆除部材の作成方法8」には、まず「木質材の選定8a」をする。ダニ駆除部材5で使用する木質材としては木材のケヤキが好ましいが、特に限定したものではない。木質材として木材を選定した場合には、木材を小片(木片5d)(1.5cm×5cm程度)として、端部付近に孔5cを穿設する。
【0030】
次に前記木片5dを使用して「木片を加熱した混合物に入れ処理8b」を行う。この混合物は蜜蝋とパラフィンを1:1の割合で混合したもので、木片5dに染み渡らせる。
【0031】
次に「木片に混合物を染み込ませる8c」行程で木片5dに前記蜜蝋とパラフィンからなる混合物を染み込ませ、続いて「表面処理8d」の行程で木片5d表面の余分な混合物を熱した鉄板を押し当てながら薄く延ばすことにより取り除く。
【0032】
次に「木片をダニ駆除剤(溶液)に浸漬8e」を行う。この行程はミツバチヘギイタダニ駆除に効果があると思われるダニ駆除剤を前記木片5dの表面に塗りつける行程である。混合物を染み込ませた木片5dの表面を駆除剤溶液で覆うことで木材内部からの揮発物の発生を抑制することができる。
【0033】
最後に「木片を風乾8f」を行う。以上のように混合液を染み込ませ表面にダニ駆除剤5eを塗った木片5dを乾かして製剤化し、ダニ駆除部材が完成する。
【0034】
上記行程で作成したダニ駆除部材5を、図6に示すようにダニ駆除剤試験装置1内に取付けて「木片を巣箱内に設置8g」する。木片5dの表面に塗りつけたダニ駆除剤がミツバチヘギイタダニの駆除の有効であれば、ミツバチが「木片に接触することによりダニが死滅8h」する。
【0035】
上記の行程で作成したダニ駆除部材5を備えたダニ駆除剤試験装置1を使用することでミツバチを刺激することなく、またミツバチの卵や幼虫に影響を及ぼすことなく新たなダニ駆除剤候補の殺ダニ効果を実験することができる。
【0036】
次に前記ダニ駆除剤試験装置1を使用したダニ駆除剤の試験方法を説明することとする。
【0037】
まず、本発明であるダニ駆除剤試験装置1内にミツバチヘギイタダニが寄生したミツバチ25頭を入れ、ダニ駆除部材5を設置し、更に餌3cの入った給餌管3を設置する。尚、ダニ駆除剤試験装置1は4つ使用し、合計100頭のミツバチで試験を行った。また、ダニ駆除剤として、クミアイ化学工業(株)製の植物寄生害虫駆除用のマブリックEW(登録商標)を水で10倍希釈して使用した。マブリックEW(登録商標)は、フレバリネート(19重量%)を駆除成分とする乳液である。
【0038】
上記の状態で摂氏25度の室内においてミツバチを飼育し、24時間後のミツバチとミツバチヘギイタダニの生存数及び死亡数を測定した。
【0039】
その結果、ミツバチヘギイタダニは全死し、ミツバチについては全てが生存していた。
【0040】
また、ミツバチ巣箱においても、前記ダニ駆除部材をダニ駆除に使用することができる。巣箱の下部を金網とし、その下部に落下ダニ捕集用の箱を設ける。その補修用箱上にワセリンを塗布した紙を敷き、その紙上に前記ダニ駆除部材5を設置した。その結果、捕集用箱内にダニの落下が確認できた。従って、1〜2万頭のミツバチが生存する巣箱においてもダニ駆除部材5は有効である。本試験では、無数のミツバチヘギイタダニの死骸を確認すると共に、全ミツバチが生存していることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように、本発明にかかるダニ駆除剤試験装置及び駆除部材は、従来よりも少ないダニ駆除剤量でミツバチの攻撃性を和らげた状態のままダニ駆除剤の有効性試験を行うことができ、また駆除部材は土中で腐敗して土になるため容易に廃棄することができるため、ミツバチに寄生するダニの駆除や新たなダニ駆除剤の実験及び検証に適している。
【符号の説明】
【0042】
1 ダニ駆除剤試験装置
2 飼育カゴ
2a 蓋
2b 挿通孔
2c 網
3 給餌管
3a 拡張部
3b 給餌孔
3c 餌
4 トレー
5 ダニ駆除部材
5a 留め具
5b ヒモ
5c 孔
5d 木片
5e ダニ駆除剤
6 ミツバチ
7 巣箱
8 ダニ駆除部材の作成方法
8a 木質材の選定
8b 木片を加熱した混合物に入れ処理
8c 木片に混合物を染み込ませる
8d 表面処理
8e 木片をダニ駆除剤溶液に浸漬
8f 木片を風乾
8g 木片を巣箱内に設置
8h 木片に接触することによりダニが死滅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口して蓋を備え少なくとも底部が網である飼育カゴと、上端は封がされ下端に給餌孔を備え前記蓋に穿設された挿通孔に挿通し係止され、内部にミツバチの餌を溜める給餌管と、前記飼育カゴを載置するためのトレーと、前記飼育カゴ内に吊るし試験される駆除剤を染み込ませた駆除部材とからなることを特徴とするダニ駆除剤試験装置。
【請求項2】
前記駆除材が、木質材であることを特徴とする請求項1に記載のダニ駆除剤試験装置。
【請求項3】
前記駆除部材を、蜜蝋とパラフィンからなる混合物を染み込ませ、表面に試験されるダニ駆除剤を塗布した木片としたことを特徴とする請求項1に記載のダニ駆除剤試験装置。
【請求項4】
前記給餌管を、上端に拡張部を形成するとともに封がされ、他端である下端に水平から上方向に開口した給餌孔を備え、前記蓋に穿設された挿通孔に挿通されるとともに前記拡張部で前記蓋に係止され、内部にミツバチの餌を溜める給餌管としたことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のダニ駆除剤試験装置。
【請求項5】
ダニ駆除剤の有効試験に用いられる駆除部材であって、木片に蜜蝋とパラフィンからなる混合物を染み込ませ、試験されるダニ駆除剤を塗布し、乾燥させてなることを特徴とするダニ駆除部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−24097(P2012−24097A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201448(P2011−201448)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3149604号
【原出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(308041679)
【Fターム(参考)】