説明

ダビガトランの合成の中間体の製造方法

本発明は、ダビガトラン エテキシラート(dabiagtran etexilate)の合成の重要な中間体である、式(1)のジアミンの合成のための方法に関する。
【化1】


(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダビガトラン エテキシラート(dabiagtran etexilate)の合成の重要な中間体である、式(1)のジアミンの合成方法に関する。
【0002】
【化1】

(1)
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ダビガトラン エテキシラートは、本分野において公知であり、国際特許出願WO 98/37075で最初に開示された。ダビガトラン エテキシラートの製造方法も、WO 2006/000353又はHauelらの文献(J. Med. Chem, 2002, 45, 1757 ff) から公知である。
Hauelらの文献に従うと、式(1)の化合物は、Pd/Cを用いる水素化によって、式(2)のニトロ化合物から得られうる。
【0004】
【化2】

(2) (1)
【0005】
しかしながら、特にラージスケールの方法では、出発材料の不完全な変換を引き起こす触媒被毒のために、反応が時折停止する。このために、該反応経過の間に、更に触媒を添加することが必要となりうる。更に、反応時間が長引くと、反応生成物(1)の性質に悪影響を及ぼす。式(2)の化合物の製造方法は、例えば、Hauelらの文献(J. Med. Chem, 2002, 45, 1757-1766) で開示されている。Hauelらの文献で開示されるように、式(2)の化合物の合成で、方法に関係した硫黄不純物が様々な量で式(2)の化合物と共に含まれる(carry over)可能性があることは、明らかである。これらの不純物は、式(1)の製造における反応時間、質及び触媒消費に大きく影響する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、触媒被毒と関連する上記欠点を克服する、改良された式(1)の化合物の製造方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の説明
驚いたことに、発明の根底にある問題は、この反応混合物に第三級アミンを添加することで、解決されうることが分かった。
その結果として、本発明は、式(2)の化合物の接触水素化による、式(1)の化合物の合成に関し、反応を第三級アミンの存在下で実施することを特徴とする。
【0008】
【化3】

(1)
【0009】
【化4】

(2)
【0010】
特に好ましい方法では、水素化は、0℃〜100℃、好ましくは10℃〜80℃、特に20℃〜60℃の温度範囲で行なわれる。
また、水素化が0.5バール〜25バールの圧力下で、好ましくは1バール〜8バールの圧力下で、特に約2〜6バールの圧力下で行われる、方法が好ましい。
【0011】
本発明に従った方法の中で好ましく使用される溶媒は、プロトン性溶媒でも非プロトン性極性溶媒でもよく、プロトン性溶媒は、例えば、アルコール類、カルボン酸類、又は、水であり、非プロトン性極性溶媒は、例えば、エーテル類、エステル類、アミド類又はラクタン類、又は、それらの混合物である。水は、全ての溶媒に適宜添加されても良い。使用される好ましいプロトン性溶媒は、分枝又は非分枝のC1−C8アルカノール、C1−C3カルボン酸、又は、それらの混合物である。特に好ましくは、低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール又はイソプロパノール、カルボン酸、例えば、ギ酸、酢酸又はプロピオン酸、又は、それらの混合物が使用される。好ましい非プロトン性溶媒は、極性エーテル類、例えば、テトラヒドロフラン又はジメトキシエチルエーテル、アミド類、例えば、ジメチルホルムアミド、ラクタム類、例えば、N-メチルピロリドン、又は、エステル類、例えば、酢酸エチルである。本発明において最も好ましい溶媒は酢酸エチルである。
【0012】
好ましい水素化触媒は、一般的に、遷移金属、例えばニッケル、白金、パラジウム、又はそれらの塩か酸化物である。ラネーニッケル、酸化白金又はパラジウム担持不活性担体材料、特に、パラジウム担持活性炭(Pd/C)が、好ましい。
【0013】
第三級アミンは、好ましくは、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン及びDBU(ジアザビシクロウンデセン)から選択される。最も好ましいアミンは、トリエチルアミンである。
【0014】
本発明の範囲内で使用される第三級アミンの量は、出発材料(2)の量に基づいて、0.05〜10%、好ましくは0.5〜7%、最も好ましくは2〜6%の範囲である。上記の量は、出発材料(2)に対して、質量%で示される。
【0015】
下記の実施例において、同じ化合物(2)のバッチを出発材料として使用した。この実験の前に、該バッチは、約380ppmの不純物硫黄を含んでいることを測定した。
【0016】
本発明に従った実施例:
不活性雰囲気(N2)下で、オートクレーブを150gの化合物(2)、6gの10%パラジウム担持炭触媒、7 mlのトリエチルアミン及び630mlの酢酸エチルでチャージした。オートクレーブを30℃に加熱し、4バールの圧力になるまで水素を加えた。次いで、温度を50℃に調整した。出発材料の完全な変換のための通常の時間は、1〜2時間だった。次いで、オートクレーブを冷却させて、懸濁液をろ過して触媒を除いた。有機ろ液を、ロータリーエバポレーターで濃縮して、350mlのイソプロパノールかトルエンで希釈した。再びこの溶液を穏やかに真空濃縮し、400mlのイソプロパノールかトルエンを添加した。該溶液を10℃に冷却し、生成物を結晶化させた。この粗生成物をろ過で分離し、真空乾燥させて、123gの式(1)の化合物(90%の理論的収量)を得た。
【0017】
比較例(従来技術):
不活性雰囲気(N2)下で、オートクレーブを150gの化合物(2)、6gの10%パラジウム担持炭触媒及び630mlの酢酸エチルでチャージした。オートクレーブを30℃に加熱し、4バールの圧力になるまで水素を加えた。次いで、温度を50℃に調整した。水素の消費が停止するか、緩やかになったら、オートクレーブを窒素で置換し(flush with)、更に触媒を添加し(およそ開始時の量の50%)、次いで新しく水素を加え、水素化を続けた。出発材料の完全な変換のための通常の時間は、およそ4時間だった。次いで、オートクレーブを冷却させて、懸濁液をろ過して触媒を除いた。有機ろ液を、ロータリーエバポレーターで濃縮して、350mlのイソプロパノールかトルエンで希釈した。再び溶液を穏やかに真空濃縮し、400mlのイソプロパノールかトルエンを添加した。該溶液を10℃に冷却し、生成物を結晶化させた。この粗生成物をろ過で分離し、真空乾燥させて、116gの式(1)の化合物(85%の理論的収量)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2)の化合物の接触水素化による、式(1)の化合物の合成方法であって、反応を第三級アミンの存在下で実施することを特徴とする方法。
【化1】

(1)
【化2】

(2)
【請求項2】
第三級アミンが、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン及びDBU(ジアザビシクロウンデセン)から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水素化を、0℃〜100℃、好ましくは10℃〜80℃、特に20℃〜60℃の温度範囲で行う、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
溶媒が、分枝又は非分枝のC1−C8アルカノール、C1−C3カルボン酸、極性エーテル、アミド及びエステルから選択される、請求項1、2又は3に記載の方法。

【公表番号】特表2011−524402(P2011−524402A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514002(P2011−514002)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057265
【国際公開番号】WO2009/153214
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】