説明

ダンパー及びそれを用いたスピーカ

【課題】スピーカを小型化でき、かつ、スピーカを高性能化できるダンパーを提供する。
【解決手段】ダンパー100は、略長円形状を有し、細長型のスピーカに用いることができる。ダンパー100は、内周部110と、外周部120と、内周部110と外周部120とを接続するコルゲーション130とを有する。コルゲーション130には、複数の山部131a,131b,131c,131d及び谷部141a,141b,141cが設けられる。短軸部150のコルゲーション130の全長と長軸部160のコルゲーション130の全長とは、略等しい。また、内周部110側の第1の山部131aは、平面視でボイスコイルボビンの外周形状と略相似の形状となる円形を有している。第1の山部131aの高さは、略一定である。長円形であっても、長軸部160と短軸部150とでダンパー100の振幅量を略等しくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ダンパー及びそれを用いたスピーカに関し、特に、幅が狭い細長型のダンパー及びそれを用いたスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカは、家庭用音響機器や車載用音響機器だけでなく、パーソナルコンピュータ、携帯電話、ゲーム機など、様々な電子機器に広く使用されている。電子機器は軽薄短小化が進んでおり、スピーカに対しても、より小型化、及び高性能化が求められている。スピーカの高性能化としては、具体的には、高音質化に加えて、耐入力性の向上や、広帯域再生の実現などが求められている。
【0003】
音響機器や電子機器の軽薄短小化に際しては、薄型で幅が狭いスピーカを用いることが必要になる。スピーカの幅を狭くすると、スピーカの振動板の幅が狭く、面積が小さくなるため、スピーカの出力音圧が低下してしまう。スピーカの出力音圧を確保するためには、幅を狭くしたままで一方向に延ばして細長型とした振動板が用いられることがある。
【0004】
しかしながら、このような細長型の振動板を用いたスピーカでは、振動系(振動板及びダストキャップなどをいう)を支持するためのダンパーの幅も狭くなる。ダンパーの幅が狭くなると、ダンパーの可動域が狭くなり、最低共振周波数が上昇してしまう。他方、ダンパーの動きを向上させるためにダンパーを極度に柔らかくすると、ダンパー本来の働きである、振動系を安定させて振幅を小さくする機能が損なわれる。その結果として、スピーカの耐入力性を向上させることができなくなる。
【0005】
スピーカの音質を向上させるためには、最低共振周波数をできるだけ低くする必要がある。また、スピーカの耐入力性を向上させるためには、入力時の振動系の振幅を安定させる必要がある。しかしながら、従来、細長型のスピーカでは、ダンパーの幅が制限されるので、このようなスピーカの音質や耐入力性などの性能が制限されるという問題があった。
【0006】
このような問題点に関して、例えば下記特許文献1には、ダンパーの形状を長円形にしたスピーカが開示されている。このスピーカにおいて、ダンパーは、長径方向の山部と谷部との間隔が短径方向の山部と谷部との間隔よりも広く、かつ、長径方向の山部及び谷部の高さが最も高くなるように構成されている。このスピーカでは、振動系の振幅を安定させ、かつ、最低共振周波数を低下させ、音質と耐入力性との改善が図られている。
【0007】
なお、長径方向と短径方向とで形状が異なる略長円形のダンパーに関しては、次のような構造のものが知られている。
【0008】
下記特許文献2には、長径方向の山部及び谷部の数が、短径方向の山部及び谷部の数とは異なるダンパーの構造が開示されている。
【0009】
下記特許文献3には、山部と谷部との幅(間隔)が一定でなく、コルゲーションの一部が切断されたダンパーの構造が開示されている。
【0010】
下記特許文献4には、長円形のダンパーの構造であって、短径方向の部分の中央に「くびれ」や「付加谷部」を設けたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−49719号公報
【特許文献2】特開平1−269396号公報
【特許文献3】特開昭60−242795号公報
【特許文献4】特開2010−278793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載されているダンパーは、長径方向の部分(長径部)と短径方向の部分(短径部)とで山部及び谷部の数が同じであって、長径部の山部及び谷部の幅が広く、その高さも高いものである。そのため、長径部の振幅量と短径部の振幅量とには差が生じるという問題がある。特に、大入力時においては、長径部と短径部とで振幅方向の動きが異なり、振動系のローリング現象が発生するおそれがある。
【0013】
特許文献2から4には、上記のような問題点に対する有効な解決策は開示されていない。
【0014】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、スピーカを小型化でき、かつ、スピーカを高性能化できるダンパー及びそれを用いたスピーカを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、短軸方向の寸法よりも長軸方向の寸法が長いダンパーは、ボイスコイルボビンに接続される内周部と、スピーカ本体に接続される外周部と、複数の山部及び谷部を有し、内周部と外周部とを接続するコルゲーションとを備え、短軸方向のコルゲーションの全長と、長軸方向のコルゲーションの全長とは略等しい。
【0016】
好ましくは複数の谷部の高さは互いに略一定であり、短軸において、山部の高さは、内周部側から外周部側に近くなるほど高く、長軸において、山部の高さは、内周部側から外周部側に近くなるほど低い。
【0017】
好ましくは内周部側の山部は、平面視でボイスコイルボビンの外周形状と略相似の形状を有し、その高さは略一定である。
【0018】
好ましくは複数の山部は、内周部側のものを除いて、それぞれ、短軸において最も高さが高く、短軸から長軸に近づくにつれて高さが低くなる。
【0019】
好ましくは長軸方向にある山部及び谷部の数は、短軸方向にある山部及び谷部の数よりも大きく、長軸において外周部側に位置する少なくとも2つの山部は、共に短軸に近づくにつれて合同し、短軸において外周部に最も近い1つの山部となる。
【0020】
好ましくは長軸において外周部側に位置する少なくとも2つの山部のうち少なくとも1つは、長軸における内周部側の山部よりも高さが低く、かつ、短軸に近づくにつれて高さが変化しながら他の山部に合同する。
【0021】
好ましくはダンパーは、繊維状の布にフェノール樹脂を含浸し熱成型すること、フィルム状の板を成型すること、及び熱可塑性樹脂を射出成型することのいずれかにより形成されている。
【0022】
この発明の他の局面に従うと、スピーカは、上述に記載のダンパーを備える。
【発明の効果】
【0023】
これらの発明に従うと、短軸方向のコルゲーションの全長と、長軸方向のコルゲーションの全長とは略等しい。したがって、スピーカを小型化でき、かつ、スピーカを高性能化できるダンパー及びそれを用いたスピーカを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態の1つにおけるスピーカの正面図である。
【図2】スピーカの側断面図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】フレームに取り付けられているダンパーを示す正面図である。
【図5】ダンパーの正面図である。
【図6】ダンパーを長径方向が左右方向となるように示した側断面図である。
【図7】ダンパーを短径方向が上下方向となるように示した側断面図である。
【図8】ダンパーを長径方向が左右方向となるように示した側面図である。
【図9】ダンパーを短径方向が上下方向となるように示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態の1つにおけるダンパーを用いたスピーカについて説明する。
【0026】
[実施の形態]
【0027】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるスピーカ1の正面図である。
【0028】
図1に示されるように、スピーカ1は、正面(以下、前面ということがある。)から見て細長型の外形を有している。
【0029】
図2は、スピーカ1の側断面図である。図3は、図1のA−A線断面図である。
【0030】
以下、図1〜3を参照しながら、スピーカ1の構造について説明する。
【0031】
図2に示されるように、スピーカ1は、2つの駆動部5,6を有する、細長型のものである。駆動部5,6は、それぞれ、スピーカ1の背面(図2において右側;以下、裏面ということがある。)側に取り付けられている。駆動部5,6は、後述するように、それぞれボイスコイル42を含む。
【0032】
スピーカ1は、大まかに、フレーム10と、振動板ユニット20と、2つの駆動部5,6とを有している。振動板ユニット20は、振動板21と、エッジ25と、ガスケット29とを有している。振動板ユニット20には、キャップ27,28が取り付けられている。駆動部5は、磁気回路30と、ボイスコイルボビン41と、ボイスコイル42と、ダンパー100とを有している。駆動部6は、駆動部5と同一の構成を有している。
【0033】
駆動部5,6は、それぞれ、フレーム10の中央部を挟んで上下略対称となる位置に、互いに上下に並ぶように配置されている。
【0034】
磁気回路30は、ボトムヨーク31と、マグネット32と、トッププレート33とを有している。磁気回路30は、フレーム10に固定されている。磁気回路30は、外磁型のものである。マグネット32は、ボトムヨーク31の底部とトッププレート33との間に挟まれるようにして、ボトムヨーク31の中央円筒部の周囲に配置されている。これにより、ボトムヨーク31の中央円筒部と、トッププレート33の内周部との隙間に磁気ギャップが構成されている。なお、磁気回路30は内磁型のものであってもよい。
【0035】
ボイスコイル42は、ボイスコイルボビン41の下部(図2において右側の部分)周面に、巻回されて取り付けられている。本実施の形態において、ボイスコイルボビン41は、略円筒形状を有している。ボイスコイル42は、ボイスコイルボビン41と共に磁気回路30の磁気ギャップに位置するようにして配置されている。ボイスコイルボビン41は、ダンパー100を介して、フレーム10に支持されている。
【0036】
振動板ユニット20は、ガスケット29に対してエッジ25を介して振動板21が取り付けられて構成されている。振動板ユニット20は、ガスケット29がフレーム10に固定されることで、フレーム10に取り付けられている。エッジ25の内周部は、振動板21の外周部に接着されている。図1に示されるように、本実施の形態において、エッジ25の外周縁は、平面視で2つの半円弧と2つの互いに略平行な直線とを接続して形成される長円形状を有している。他方、フレーム10は、略矩形形状を有している。ガスケット29は、エッジ25の外周縁とフレーム10の取り付け面との間を覆うように形成されている。エッジ25の外周縁は、ガスケット29に接着されている。すなわち、振動板21は、ガスケット29にエッジ25を介して保持されている。
【0037】
図2に示されるように、振動板21は、2つの駆動部5,6にそれぞれ対応する2つのコーン部23,24を有し、一体に形成されている。すなわち、振動板21において、駆動部5に対応する部分と、駆動部6に対応する部分とが深くなっている(スピーカ1の正面から窪み、背面側に近づいている。)。また、振動板21は、その深い部分から振動板21の外周部に近づくに従って、浅くなるように、すなわちスピーカ1の正面(図2において左端の面)からの距離が小さくなるように形成されている。駆動部5,6の間の部分すなわちスピーカ1の中央部においても、振動板21の深さは浅くなっている。
【0038】
コーン部23は、駆動部5のボイスコイルボビン41の上部(図2においてボイスコイルボビン41の左側の部分)に接続されている。また、コーン部24は、駆動部6のボイスコイルボビン41の上部に接続されている。これにより、両ボイスコイルボビン41が前後(図2において左右方向)に変位して振動するのに伴い、振動板21が振動する。キャップ27,28は、それぞれ、コーン部23,24の前面側に、それによりボイスコイルボビン41が覆われるように、接着されている。
【0039】
駆動部5のボイスコイル42と駆動部6のボイスコイル42とは、配線材65を介して、直列に接続されている。駆動部5のボイスコイル42は、錦糸線61を介して、フレーム10に取り付けられた端子63に接続されている。駆動部6のボイスコイル42は、錦糸線62を介して、フレーム10に取り付けられた端子64に接続されている。端子63,64間に電圧が印加されることで、スピーカ1が駆動する。
【0040】
図3に示されるように、ダンパー100は、内周部110と、外周部120と、コルゲーション130とを有している。ダンパー100の内周部110は、ボイスコイルボビン41の外周部に接着されて接続されている。外周部120は、フレーム10に接着されて接続されている。すなわち、外周部120は、スピーカ1のうち、振動板21やボイスコイルボビン41などの可動部ではない、スピーカ1の本体に取り付けられている。これにより、振動板21と、駆動部5,6のそれぞれのボイスコイルボビン41やボイスコイル42とで構成されるスピーカ1の振動系は、2つのダンパー100と、エッジ25とで支持されている。
【0041】
ダンパー100は、例えば、繊維状の布にフェノール樹脂を含浸し熱成型することにより形成されている。なお、ダンパー100は、フィルム状の板を成型して形成されたものや、熱可塑性樹脂により射出成型して形成されたものなどであってもよい。
【0042】
図4は、フレーム10に取り付けられているダンパー100を示す正面図である。
【0043】
図4に示されるように、ダンパー100は、フレーム10に、駆動部5,6の磁気回路30などよりも正面側に取り付けられている。ここで、本実施の形態において、ダンパー100は、短軸と長軸とを有する略長円形状を有している。すなわち、ダンパー100は、スピーカ1の幅方向(短軸方向(短径方向ということもある。);図4において左右方向)の寸法よりも、幅方向に直交する上下方向(長軸方向(長径方向ということもある。);図4において上下方向)の寸法が長い外形形状を有している。タンパー100は長軸方向がスピーカ1の上下方向と一致するように配置されている。
【0044】
図5は、ダンパー100の正面図である。図6は、ダンパー100を長軸方向が左右方向となるように示した側断面図である。図7は、ダンパー100を短軸方向が上下方向となるように示した側断面図である。
【0045】
以下、図5〜図7を参照して、ダンパー100について説明する。
【0046】
図5において、A1は短軸を、A2は長軸を、Cはダンパー100の中心を、X方向は長軸方向を、Y方向は短軸方向を、それぞれ示している。図5に示されるように、コルゲーション130は、内周部110と外周部120とを接続している。コルゲーション130は、複数の山部131a,131b,131c,131d(以下、これらを区別せず山部131と総称することがある。)及び谷部141a,141b,141c(以下、これらを区別せず谷部141と総称することがある。)を有している。コルゲーション130は、短軸部150と長軸部160とで異なる形状を有している。短軸部150は、コルゲーション130のうちダンパー100の中心Cに対して短軸方向に位置する部位である。また、長軸部160は、コルゲーション130のうちダンパー100の中心Cに対して長軸方向に位置する部位である。図5において、ここで短軸部150及び長軸部160と呼ぶ部位の辺りを、それぞれ2点鎖線で囲んで示している。
【0047】
本実施の形態において、長軸部160の山部131及び谷部141の数は、短軸部150の山部131及び谷部141の数よりも大きくなっている。図5に示されるように、長軸部160には、内周部110側から外周部120側にかけて、第1の山部131a、第1の谷部141a、第2の山部131b、第2の谷部141b、第3の山部131c、第3の谷部141c、及び第4の山部131dが形成されている。長軸部160には、4つの山部131と、3つの谷部141が形成されている。他方、短軸部150には、内周部110側から外周部120側にかけて、第1の山部131a、第1の谷部141a、第2の山部131b、第2の谷部141b、及び第3の山部131cが形成されている。短軸部150には、3つの山部131と、2つの谷部141が形成されている。短軸部150においては、後述のように2つの山部131(第3の山部131c及び第4の山部131d)が合同していることにより、長軸部160よりも山部131,谷部141の数が少なくなっている。
【0048】
図5に示されるように、複数の山部131のうち最内周に位置するもの、すなわち内周部110側の第1の山部131aは、平面視で円形を有している。第1の山部131aは、ボイスコイルボビン41の外周形状と略相似の形状を有している。
【0049】
第1の谷部141a、第2の山部131b、及び第2の谷部141bは、中心を長軸方向にずらしたトラック型(長円形)に形成されている。第1の谷部141a、第2の山部131b、及び第2の谷部141bのそれぞれは、円弧部分の直径が互いに異なり、外周になるほど円弧部分の直径が大きくなっている。
【0050】
第3の山部131c、第3の谷部141c、及び第4の山部131dは、中心を長軸方向にずらしたトラック型であって、互いに円弧部分の直径は同一である。第3の山部131c、第3の谷部141c、及び第4の山部131dの円弧部分の直径は、第2の谷部141bの円弧部分の直径よりも大きくなっている。
【0051】
図6及び図7に示されるように、短軸部150のコルゲーション130の全長と、長軸部160のコルゲーション130の全長とは略等しくなっている。すなわち、短軸方向のコルゲーション130の全長と、長軸方向のコルゲーション130の全長とは、略等しくなっている。ここで、全長とは、短軸方向又は長軸方向に沿ったコルゲーション130の表面の長さをいう。短軸部150は、長軸部160よりも山部131と谷部141の数が少ない。すなわち、短軸部150においては、長軸部160よりも山部131と谷部141との起伏の差が大きくなっている。
【0052】
また、短軸部150において、山部131と谷部141との間隔は、すべて略同幅である。他方、長軸部160において、第1の山部131aから第2の谷部141bまでの山部131と谷部141との間隔は略同幅であるが、第3の山部131cから第4の山部131dにかけては、山部131と谷部141との間隔が変化し、やや広めになっている。
【0053】
本実施の形態において、図6及び図7に示されるように、複数の谷部141a〜141cの高さ(例えば、外周部120が位置する平面からの距離すなわちスピーカ1の前面からの距離)は、互いに略一定である。すなわち、コルゲーション130の底部は、外周部120が位置する平面に平行な平面上に揃って位置している。
【0054】
複数の山部131は、内周部110側のものを除いて、それぞれ、短軸部150において最も高さが高く、かつ、短軸部150から長軸部160に近づくにつれて高さが徐々に低くなっている。
【0055】
すなわち、最内周の第1の山部131aの高さは、略一定である。図6に示されるように、長軸部160の山部131の高さは、内周部110側から外周部120側に近くなるほど低くなっている。他方、図7に示されるように、短軸部150の山部131の高さは、内周部110側から外周部120側に近くなるほど高くなっている。
【0056】
より具体的には、第2の山部131bの高さは、短軸部150においては第1の山部131aよりも高く、長軸部160においては第1の山部131aよりわずかに低くなっている。第2の山部131bの高さは、短軸部150から長軸部160に近づくにつれて、徐々に低くなっている。
【0057】
第3の山部131cの高さは、短軸部150においては第2の山部131bよりわずかに高くなっており、長軸部160においては第2の山部131bより低くなっている。第3の山部131cの高さは、短軸部150から長軸部160に近づくにつれて、徐々に低くなっている。
【0058】
長軸部160において、第4の山部131dの高さは、第3の山部131cよりもさらに山の高さが低くなっている。第4の山部131dの高さは、長軸部160から短軸部150に近づくにつれて徐々に高くなる。
【0059】
ここで、図5に示されるように、長軸部160から短軸部150に近づくにつれて、第4の山部131dは、第3の山部131cに、高さが変わりながら合同する。
【0060】
すなわち、長軸部160で外周部120側に位置する第3の山部131cと第4の山部131dとは、共に、短軸部150に近づくにつれて合同する。第3の山部131cと第4の山部131dとは、短軸部150において1つの第3の山部131cとなり、これに伴って第3の谷部141cは消滅する。上述したとおり、第3の山部131cと第4の山部131dとは、共に、長軸部160において内周部110側の第1の山部131aや第2の山部131bよりも高さが低い。第3の山部131c及び第4の山部131dは、短軸部150に近づくにつれて高さが高くなり、互いに合同する。
【0061】
図8は、ダンパー100を長軸方向が左右方向となるように示した側面図である。
【0062】
上記のようにコルゲーション130が形成されていることで、図8に示されるように、ダンパー100の高さは、長軸方向が左右方向となるように短軸方向から見て、略中央の短軸部150が最も高く、両側部となる長軸部160にかけて低くなっている。短軸部150において第3の山部131cの高さが他の山部131よりも高いので、短軸方向から見て他の山部131は見えない。
【0063】
図9は、ダンパー100を短軸方向が上下方向となるように示した側面図である。
【0064】
図9に示されるように、ダンパー100の高さは、短軸方向が上下方向となる長軸方向から見て、略中央の長軸部160が最も低く、両側部となる短軸部150にかけて徐々に高くなっている。長軸部160においては、外周部120側の第3の山部131c、第4の山部131dの高さが外周部120に近づくにつれて徐々に低くなっているので、長軸方向から見ると、最外周の第4の山部131dだけでなく、例えば第3の山部131c、第2の山部131bなど、他の山部131も見える。
【0065】
[実施の形態における効果]
【0066】
本実施の形態においては、以上のように構成されたダンパー100を用いてスピーカ1が構成されていることにより、スピーカ1を、音質及び耐入力性に優れたものにすることができる。スピーカ1を、細長型の小型なものにでき、かつ、高性能化できる。
【0067】
すなわち、ダンパー100において、最内周の第1の山部131aが一定の高さの円形であるので、小入力時の直線性を確保できる。また、短軸部150と長軸部160とで、コルゲーション130の全長は略等しくなっている。したがって、ダンパー100の振幅量がほぼ同じになり、大入力時にローリングが発生することを防ぐことができる。
【0068】
本実施の形態では、長軸部160においては外周部120側に近づくほど山部131の高さが低く、また、長軸部160から短軸部150に近づくにつれて山部131の高さが変わる。したがって、長軸部の山の高さが外周ほど低いことにより、細長型の振動板21の長径部の傾斜が緩いことによる振動板21のダンパー100への接触が防止できる。
【0069】
また、上記のスピーカ1では、長軸部160と短軸部150とで山部131の数が変えられているので、長軸部160と短軸部150とでスティフネスを同じに保つことができる。したがって、ダンパー100全体のスティフネスを下げることができ、最低共振周波数を低減することができる。長軸部160から短軸部150にかけて、徐々に、第3の山部131cと第4の山部131dとが合同するので、ダンパー100の全周にわたってダンパー100のスティフネスが急激に変化することがない。したがって、スピーカ1をより適正に動作させることができ、スピーカ1を高性能化できる。
【0070】
[その他]
【0071】
上記の実施の形態ではボイスコイルボビンが円形の筒状であるが、ボイスコイルボビンの形状はトラック型であったり楕円型であったりしてもよい。この場合、例えば最内周の山が、ボイスコイルボビン41と相似形となるように構成されていればよく、小入力時の直線性を高めることができる。
【0072】
その他ダンパーの細部の形状は上述に限られるものではない。例えば、山部や谷部の数は、上述に限られず、さらに多くても、少なくてもよい。また、山部及び谷部の数は、長軸部と短軸部とで等しくてもよい。
【0073】
長軸方向と短軸方向とで、山部の高さが上記のように徐変するものでなくてもよい。長軸部のコルゲーションの全長と短軸部のコルゲーションの全長が略等しくなるようにすることにより、長軸部と短軸部とでダンパーの振幅量を略等しくすることができる。したがって、ローリングの発生を防止できる。
【0074】
また、長軸部と短軸部において山部の数の差をより大きくしてもよい。この場合、長軸部の3つ以上の山部が短軸部に近づくにつれて短軸部の最外周に高さを変えながら合同するようにしてもよい。これにより、ダンパー全体のスティフネスを均一に保ちながら、最低共振周波数を低減させることができる。
【0075】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0076】
1 スピーカ
5,6 駆動部
10 フレーム
21 振動板
41 ボイスコイルボビン
100 ダンパー
110 内周部
120 外周部
130 コルゲーション部
131a 第1の山部
131b 第2の山部
131c 第3の山部
131d 第4の山部
141a 第1の谷部
141b 第2の谷部
141c 第3の谷部
150 短軸部
160 長軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短軸方向の寸法よりも長軸方向の寸法が長いダンパーであって、
ボイスコイルボビンに接続される内周部と、
スピーカ本体に接続される外周部と、
複数の山部及び谷部を有し、前記内周部と外周部とを接続するコルゲーションとを備え、
前記短軸方向の前記コルゲーションの全長と、前記長軸方向の前記コルゲーションの全長とは略等しい、ダンパー。
【請求項2】
前記複数の谷部の高さは互いに略一定であり、
前記短軸において、前記山部の高さは、前記内周部側から前記外周部側に近くなるほど高く、
前記長軸において、前記山部の高さは、前記内周部側から前記外周部側に近くなるほど低い、請求項1に記載のダンパー。
【請求項3】
前記内周部側の山部は、平面視で前記ボイスコイルボビンの外周形状と略相似の形状を有し、その高さは略一定である、請求項1又は2に記載のダンパー。
【請求項4】
前記複数の山部は、前記内周部側のものを除いて、それぞれ、前記短軸において最も高さが高く、前記短軸から前記長軸に近づくにつれて高さが低くなる、請求項1から3のいずれか1項に記載のダンパー。
【請求項5】
前記長軸方向にある山部及び谷部の数は、前記短軸方向にある山部及び谷部の数よりも大きく、
前記長軸において前記外周部側に位置する少なくとも2つの山部は、共に前記短軸に近づくにつれて合同し、前記短軸において前記外周部に最も近い1つの山部となる、請求項1から4のいずれか1項に記載のダンパー。
【請求項6】
前記長軸において前記外周部側に位置する少なくとも2つの山部のうち少なくとも1つは、前記長軸における前記内周部側の山部よりも高さが低く、かつ、前記短軸に近づくにつれて高さが変化しながら他の山部に合同する、請求項5に記載のダンパー。
【請求項7】
前記ダンパーは、
繊維状の布にフェノール樹脂を含浸し熱成型すること、
フィルム状の板を成型すること、及び
熱可塑性樹脂を射出成型すること
のいずれかにより形成されている、請求項1から6のいずれか1項に記載のダンパー。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のダンパーを備える、スピーカ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−51513(P2013−51513A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187662(P2011−187662)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】