説明

ダンパ駆動装置

【課題】制御用ケーブルなどの断線によって電磁弁が動作不良になった場合でも、ダンパを手動で容易に駆動させることが可能なダンパ駆動装置を提供する。
【解決手段】方向切替電磁弁50に接続されている管路48、51、52に対して並列に接続可能なパイパス管路55と、バイパス管路55に設けられ、圧縮空気Aを空圧シリンダ41の伸長用ポートに供給する第1の手動出力ポート56aと圧縮空気Aを空圧シリンダ41の収縮用ポートに供給する第2の手動出力ポート56bとを有する手動方向切替弁56と、バイパス管路55の第1の手動出力ポート56a側に接続される第1の手動開閉弁58と、バイパス管路55の第2の手動出力ポート56b側に接続される第2の手動開閉弁57と、を備え、方向切替電磁弁50の動作不良時には、手動操作によって圧縮空気Aをパイパス管路55に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空圧シリンダと電磁弁を用いて給気通路を流れる空気を遮断するダンパ駆動装置に関し、とくに電磁弁が動作不良になった場合でもダンパを容易に駆動させることが可能なダンパ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭火力発電所には、石炭を微粉砕する微粉炭機が設置されている。微粉炭機には、微粉炭機内の温度を制御するために温度調節用空気が供給されるようになっており、温度調節用空気の流量調整はダンパによって行われる。このダンパ入口には、流路遮断用のダンパが設けられている。このダンパはミルハッチ式ダンパと呼ばれ、空圧シリンダと電磁弁によって駆動されるようになっている。石炭火力発電所では、微粉炭機からの微粉炭をボイラで燃焼させることにより、発電機を駆動させるための蒸気を得ているので、ミルハッチ式ダンパ駆動装置における電磁弁などの構成部品は、火力発電所の所定出力を確保する上で重要な部品となる。
【0003】
従来から、電磁弁の信頼性を高めるようにした技術の一例として、手動操作を可能とした電磁弁が知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−38132号公報
【特許文献2】特開2009−58073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ミルハッチ式ダンパ駆動装置における電磁弁が制御用ケーブルの断線によって動作しなくなった場合は、ミルハッチ式ダンパを駆動させることができなくなり、火力発電所の所定出力を確保できなくなるという問題がある。
【0006】
特許文献1のように、手動操作が可能な電磁弁も存在するが、これは操作力の小さな小型の電磁弁に限られ、火力発電所で用いられる比較的大型の電磁弁は手動で操作することが困難である。また、特許文献2のように、堆積した固着物による動作不良を回復させることは可能であるが、制御用ケーブルの断線などの場合は、電磁弁が正常に動作できなくなる。
【0007】
したがって、電磁弁を制御するための制御用ケーブルが断線した場合でも、ダンパを容易に駆動させることが可能なダンパ駆動装置があれば便利である。ダンパが電磁弁の動作不良によって駆動できない問題は、火力発電所のミルハッチ式ダンパに限られず、他の設備におけるダンパにも存在する。
【0008】
そこでこの発明は、制御用ケーブルなどの断線によって電磁弁が動作不良になった場合でも、ダンパを手動で容易に駆動させることが可能なダンパ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、圧縮空気を方向切替電磁弁を介して空圧シリンダに供給し、前記方向切替電磁弁の切替動作に伴う前記空圧シリンダのロッドの往復動によってダンパを開閉駆動させるダンパ駆動装置であって、前記方向切替電磁弁に接続されている管路に対して並列に接続可能なパイパス管路と、前記バイパス管路に設けられ、前記圧縮空気を前記空圧シリンダの伸長用ポートに供給する第1の手動出力ポートと前記圧縮空気を前記空圧シリンダの収縮用ポートに供給する第2の手動出力ポートとを有する手動方向切替弁と、前記バイパス管路の前記第1の手動出力ポート側に接続される第1の手動開閉弁と、前記バイパス管路の前記第2の手動出力ポート側に接続される第2の手動開閉弁と、を備え、前記方向切替電磁弁の動作不良時には、手動操作によって前記圧縮空気を前記パイパス管路に供給することを特徴とするダンパ駆動装置である。
【0010】
この発明によれば、バイパス管路に設けられた手動方向切替弁の操作によって圧縮空気の空圧シリンダへの供給流路が切替られ、空圧シリンダの往復動が可能となる。また、空圧シリンダ内の残留空気は、第1の手動開閉弁または第2の手動開閉弁を介して外部に排出される。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のダンパ駆動装置において、前記方向切替電磁弁は、前記管路に設けられた迅速流体継手を介して切り離し可能に接続されていることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のダンパ駆動装置において、前記方向切替電磁弁および前記手動方向切替弁の上流側には、前記圧縮空気の供給および停止のための開閉弁が設けられていることを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のダンパ駆動装置において、前記ダンパは、石炭火力発電所の微粉炭機に供給される温度調節用空気を遮断するためのミルハッチ式ダンパであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、制御用ケーブルの断線などによって方向切替電磁弁が動作不良になった場合でも、圧縮空気をバイパス管路の手動方向切替弁に供給し、第1の手動開閉弁または第2の手動開閉弁を操作することで、ダンパを手動で容易に駆動させることが可能となる。すなわち、ダンパ駆動装置における圧縮空気の供給経路を変えることにより、僅かな操作力でダンパを駆動させることが可能となり、ダンパを手動で容易に駆動させることが可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、方向切替電磁弁は管路に設けられた迅速流体継手を介して切り離し可能に接続されているので、方向切替電磁弁が動作不良になった場合は、方向切替電磁弁を管路から容易に切り離すことができ、故障に対する迅速な措置が可能となる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、方向切替電磁弁および手動方向切替弁の上流側には、圧縮空気の供給および停止のための開閉弁が設けられているので、方向切替電磁弁の動作不良発生時には、一時的にダンパ駆動装置への圧縮空気の供給を停止することができ、故障発生に伴う管路切替作業の安全を確保することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、ダンパは微粉炭機に供給される温度調節用空気を遮断するためのミルハッチ式ダンパであるので、方向切替電磁弁が制御用ケーブルの断線によって動作しなくなった場合でも、ミルハッチ式ダンパを駆動させることができ、石炭火力発電所の出力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係わるダンパ駆動装置の手動方向切替弁によってダンパが閉じた状態の管路構成を示す概要図である。
【図2】図1のダンパ駆動装置の手動方向切替弁によってダンパが開いた状態の管路構成を示す概要図である。
【図3】図1のダンパ駆動装置の方向切替電磁弁によってダンパが閉じた状態の管路構成を示す概要図である。
【図4】図1のダンパ駆動装置の方向切替電磁弁によってダンパが開いた状態の管路構成を示す概要図である。
【図5】図1のダンパ駆動装置が設けられる微粉炭機周辺の概略構成図である。
【図6】図1のダンパ駆動装置における空圧シリンダの伸長時の状態を示す正面図である。
【図7】図1のダンパ駆動装置における空圧シリンダの収縮時の状態を示す正面図である。
【図8】図1のダンパ駆動装置の手動方向切替弁によってダンパが閉じた状態の管路構成の変形例を示す概要図である。
【図9】図1のダンパ駆動装置の手動方向切替弁によってダンパが開いた状態の管路構成の変形例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
つぎに、この発明の実施の形態について図面を用いて詳しく説明する。
【0020】
図1ないし図9は、この発明の実施の形態を示している。図5は、石炭火力発電所に設置されている微粉炭機10およびその周辺機器を示している。図5に示すように、石炭火力発電所に搬入された石炭は、石炭バンカー1に投入されるようになっている。石炭バンカー1の下部には、石炭を排出させるための石炭ゲート2が設けられている。石炭ゲート2の下方には、石炭を搬送するコンベアー4を備えた給炭機3が設けられている。給炭機3によって搬送された石炭は、石炭供給路5を介して微粉炭機10に供給されるようになっている。
【0021】
微粉炭機10は、下端部にモータや減速機を備えた回転駆動部11を有している。回転駆動部11の直上には、軸心回りに回転可能な回転テーブル12が設けられている。回転テーブル12の上方には、複数の粉砕ローラ13が設けられている。回転テーブル12の上面には、石炭供給路5からの石炭が供給されるようになっており、回転テーブル12の上面に供給された石炭は、回転テーブル12と粉砕ローラ13とによって所定の粒度に粉砕されるようになっている。微粉炭機10の上部には、微粉炭機10内の温度を測定する温度センサ14が設けられている。温度センサ14によって測定された温度は、電気信号に変換され制御器33に送られる。
【0022】
微粉炭機10の上流側には、押込通風機21および一次通風機25が設けられている。押込通風機21から排出される空気は、モータ駆動によるダンパ22および給気通路23を介して空気余熱器24に供給されるようになっている。空気余熱器24で加熱された空気は、微粉炭機10によって粉砕された石炭が供給されるボイラ(図示略)に送られる。一次通風機25から排出される空気の一部は、モータ駆動によるダンパ26および給気通路28を介して空気余熱器24に供給されるようになっている。給気通路28を介して空気余熱器24に供給された空気は、給気通路(熱空気ダクト)29を介して微粉炭機10に供給されるようになっている。
【0023】
給気通路29の上流側には、加熱用空気の量を調整する熱空気ミルハッチ式ダンパ30が設けられている。熱空気ミルハッチ式ダンパ30は、熱空気ダンパ駆動装置40によって開閉駆動される。一次通風機25から排出される空気の一部は、給気通路(冷空気ダクト)27を介して給気通路29における熱空気ミルハッチ式ダンパ30の下流側に供給されるようになっている。給気通路27には、冷却用空気の量を調整する冷空気ミルハッチ式ダンパ30´が設けられている。冷空気ミルハッチ式ダンパ30´は、冷空気ダンパ駆動装置40´によって開閉駆動される。
【0024】
給気通路29における給気通路27の合流部よりも下流側には、給気通路29を流れる空気の流量を測定する流量センサ31が設けられている。流量センサ31によって測定された空気の流量は、電気信号に変換され制御器33に送られる。また、給気通路29における流量センサ31の下流側には、給気通路29を流れる空気の温度を測定する温度センサ32が設けられている。温度センサ32によって測定された空気の温度は、電気信号に変換され制御器33に送られる。
【0025】
図6および図7は、熱空気ミルハッチ式ダンパ30と熱空気ダンパ駆動装置40との連結構造を示している。この実施の形態においては、熱空気ミルハッチ式ダンパ30と熱空気ダンパ駆動装置40以外に、冷空気ミルハッチ式ダンパ30´と冷空気ダンパ駆動装置40´を備えているが、冷空気ミルハッチ式ダンパ30´と冷空気ダンパ駆動装置40´の構造は、熱空気ミルハッチ式ダンパ30と熱空気ダンパ駆動装置40の構造に準じるので、ここでは熱空気ミルハッチ式ダンパ30と熱空気ダンパ駆動装置40の構造についてのみ説明する。
【0026】
図6および図7に示すように、熱空気ミルハッチ式ダンパ30は、ダンパ本体30a、回動軸30b、駆動レバー30cを有している。ダンパ本体30aは、給気通路29内に配置されており、中央部が回動軸30bに連結されている。回動軸30bは、給気通路29を構成する通路部材(図示略)に回動可能に支持されている。回動軸30bの一方の端部には、駆動レバー30cが連結されている。
【0027】
図6および図7に示すように熱空気ダンパ駆動装置40は、空圧シリンダ41を有している。空圧シリンダ41は、中間トラニオン形の空圧シリンダから構成されており、シリンダ本体41a、ピストン41b、ロッド41c、連結具41d、連結ピン41eを有している。シリンダ本体41aの外側面には、支持ピン41fが固定されている。シリンダ本体41aの近傍には、ブラケット43を備えた支持架台42が配置されている。シリンダ本体41aは、支持ピン41fを介してブラケット43に揺動可能に支持されている。すなわち、シリンダ本体41aは支持ピン41fを中心としてブラケット43に対して左右方向に首振り可能となっている。
【0028】
ピストン41bは、シリンダ本体41aに移動可能に嵌合されており、圧縮空気によって軸方向に移動可能となっている。ピストン41bには、ロッド41cが連結されている。シリンダ本体41aには、ピストン41bを移動させるための圧縮空気Aを導入するための伸長用ポート41gと収縮用ポート41hが設けられている。ロッド41cの先端部には、連結具41dが取付けられている。第1のダンパ駆動装置40の駆動レバー30cは、連結ピン41eを介して連結具41dと連結されている。これにより、ダンパ本体30aはロッド41cの往復動によって給気通路29を開閉するようになっている。
【0029】
図3および図4は、熱空気ダンパ駆動装置40における方向切替電磁弁50の正常時の管路構成を示している。図3および図4に示すように、石炭火力発電所における圧縮空気Aを供給する管路45には、管路45を開閉するための開閉弁46が設けられている。管路45における開閉弁46の下流側には、管路45内を流れる圧縮空気Aの圧力を調整するための圧力調整器47が設けられている。管路45における圧力調整器47の下流側には、三又管継手61が設けられている。管継手61の下流側の出口には、迅速流体継手61a、61bが取付けられている。
【0030】
迅速流体継手61aは、流路の接続および離脱を迅速に行う部品であり、内部に逆止弁(図示略)を有している。迅速流体継手61aは、流路から切り離した状態では、逆止弁の作用により圧縮空気Aが外部へ漏れるのを阻止する機能を有している。三又管継手61における別の迅速流体継手61bおよび後述する他の三又管継手62、63も迅速流体継手62a、62b、63a、63bを有しており、これらも迅速流体継手61aと同様の機能を有している。
【0031】
圧力調整器47の下流側に位置する管路45は、管継手61および管路48を介して方向切替電磁弁50の給気ポート50aに接続されている。方向切替電磁弁50は、給気ポート50aの他に、第1の自動出力ポート50b、第2の自動出力ポート50c、第1の自動排気ポート50d、第2の自動排気ポート50eを有している。方向切替電磁弁50は、二つのソレノイド50f、50gを有しており、各ソレノイド50f、50gは制御用ケーブル34を介して制御器33に接続されている。
【0032】
方向切替電磁弁50の第1の自動排気ポート50dは、図6に示すように管路52を介して空圧シリンダ41の収縮用ポート41hに接続されている。方向切替電磁弁50の第1の自動出力ポート50bは、図6に示すように管路52を介して空圧シリンダ41の収縮用ポート41hに接続されている。方向切替電磁弁50の第2の自動出力ポート50cは、図6に示すように管路51を介して空圧シリンダ41の伸長用ポート41gに接続されている。管路52の途中には、迅速流体継手62a、62bを有する三又管継手62が設けられている。同様に、管路51の途中には、迅速流体継手63a、63bを有する三又管継手63が設けられている。
【0033】
熱空気ダンパ駆動装置40は、方向切替電磁弁50に接続されている管路48、51、52に対して並列に接続可能なパイパス管路55を有している。パイパス管路55は、第1のバイパス路55aと第2のバイパス路55bと第3のパイパス路55cとから構成されている。パイパス管路55は、方向切替電磁弁50が制御用ケーブル34の断線などによって動作不良になる場合を除き、管路48、51、52に対して切り離された状態となっている。すなわち、第1のバイパス路55aの上流端は、三又管継手61の迅速流体継手61bから切り離されており、第2のバイパス路55bの端部は、三又管継手63の迅速流体継手63bから切り離されている。同様に、第3のバイパス路55cの端部は、三又管継手62の迅速流体継手62bから切り離されている。
【0034】
バイパス管路55の第1のバイパス路55aの下流端には、手動方向切替弁56が設けられている。手動方向切替弁56は、圧縮空気Aを空圧シリンダ41の伸長用ポート41gに供給する第1の手動出力ポート56aを有している。また、手動方向切替弁56は、圧縮空気Aを空圧シリンダ41の収縮用ポート41hに供給する第2の手動出力ポート56bを有している。第1の手動出力ポート56a側に接続される第2のバイパス路55bには、第1の手動開閉弁58が接続されている。第1の手動開閉弁58は、開弁時には第2のバイパス路55b内に流入した空圧シリンダ41内の残留空気を外部に排出させる機能を有している。第2の手動開閉弁57は、開弁時には第3のバイパス路55c内に流入した空圧シリンダ41内の残留空気を外部に排出させる機能を有している。
【0035】
つぎに、熱空気ダンパ駆動装置40の動作および作用について説明する。
【0036】
方向切替電磁弁50が制御用ケーブル34を介して制御器33からの指令に基づき正常に作動している場合は、ソレノイド50f、50gに印加される電圧によって方向切替電磁弁50の切替動作が行われる。図3に示すように、給気通路29を閉じる場合は、ソレノイド50fに電圧が印加され、給気ポート50aに供給された圧縮空気Aが第1の出力ポート50bから出るように方向切替電磁弁50の内部流路が切替えられる。これにより、方向切替電磁弁50からの圧縮空気Aは、管路52を介して空圧シリンダ41の収縮用ポート41h側に供給される。したがって、空圧シリンダ41のピストン41aが圧縮空気Aによって押し下げられ、図3に示すように、給気通路29は第1のミルハッチ式ダンパ30によって閉じられる。また、空圧シリンダ41内における収縮用ポート41h側の残留空気は、管路51を介して方向切替電磁弁50の第2の排気ポート50eから外部に排出される。
【0037】
図4に示すように、給気通路29を開く場合は、ソレノイド50fに電圧が印加され、給気ポート50aに供給された圧縮空気Aが第2の出力ポート50cから出るように方向切替電磁弁50の内部流路が切替えられる。これにより、方向切替電磁弁50からの圧縮空気Aは、管路51を介して空圧シリンダ41の伸長用ポート41g側に供給される。したがって、空圧シリンダ41のピストン41aが圧縮空気Aによって押し上げられ、図4に示すように、給気通路29は第1のミルハッチ式ダンパ30によって開かれる。また、空圧シリンダ41内における伸長用ポート41g側の残留空気は、管路52を介して方向切替電磁弁50の第1の排気ポート50dから外部に排出される。
【0038】
つぎに、方向切替電磁弁50が動作不良の場合における熱空気ダンパ駆動装置40の管路切替作業について説明する。
【0039】
制御用ケーブル34が断線した場合は、ソレノイド50f、50gに電圧が印加されなくなり、方向切替電磁弁50は制御器33からの指令に基づく動作ができなくなる。その場合は、図1および図2に示すように、ダンパ駆動装置40の管路切替を行い、手動操作による第1のミルハッチ式ダンパ30の開閉動作を行う必要がある。方向切替電磁弁50が動作不良の場合は、ダンパ本体30aが閉まらなくなるので、そのまま放置すると微粉炭機10内が冷却不良になるおそれや、給気通路(熱空気ダクト)29へ微粉炭が堆積するおそれがある。
【0040】
制御用ケーブル34の断線による方向切替電磁弁50の動作不良時には、管路48の上流端部が三又継手61から切り離される。管路48の上流端部は、正常時は三又継手61の迅速流体継手61aに接続されているので、方向切替電磁弁50の動作不良時において、管路48の上流端部を迅速流体継手61aから切り離すのが著しく容易となる。
【0041】
また、方向切替電磁弁50の第1の出力ポート50bが接続される管路52の分岐部52aも三又継手62から切り離される。管路52の分岐部52aは、正常時は三又継手62の迅速流体継手62aに接続されているので、方向切替電磁弁50の動作不良時において、管路52の分岐部52aを迅速流体継手62aから切り離すのが著しく容易となる。同様に、管路51の分岐部51aは、正常時は三又継手63の迅速流体継手63aに接続されているので、方向切替電磁弁50の動作不良時において、管路51の分岐部51aを迅速流体継手63aから切り離すのが著しく容易となる。
【0042】
つぎに、管路48の上流端部48aと、管路51の分岐部51aと、管路52の分岐部52aの切り離しが終了すると、例えば第2のバイパス路55bの端部を、三又継手63の迅速流体継手63bに接続する。迅速流体継手63bは、切り離しだけでなく接続も迅速に行うことができるので、第2のバイパス路55bの端部を迅速流体継手63bに接続する作業も著しく容易となる。その後、第3のパイパス路55cの端部を、三又継手62の迅速流体継手62bに接続する。迅速流体継手62bは、切り離しだけでなく接続も迅速に行うことができるので、第3のバイパス路55cの端部を迅速流体継手62bに接続する作業も著しく容易となる。
【0043】
第2のバイパス路55bおよび第3のバイパス路55cの接続が終了すると、第1のバイパス路55aの上流端を三又継手61の迅速流体継手61bに接続する。迅速流体継手61bも切り離しだけでなく接続も迅速に行うことができるので、第1のバイパス路55aの端部を迅速流体継手61bに接続する作業も著しく容易となる。これにより、方向切替電磁弁50の各ポート50a〜50cは、図1および図2に示すようにバイパス管路55に対してすべて切り離されたことになる。上述した方向切替電磁弁50のバイパス管路55に対する切り離し時には、圧縮空気Aを供給する管路45の開閉弁46を閉弁状態とし、作業対象となる管路に不必要な圧力が作用するのを排除するのが安全上望ましい。
【0044】
つぎに、方向切替電磁弁50が動作不良の場合における手動方向切替弁56による熱空気ダンパ駆動装置40の動作について説明する。
【0045】
制御用ケーブル34の断線による方向切替電磁弁50の動作不良時には、バイパス通路55の第1のバイパス路55aを介して手動方向切替弁56に圧縮空気Aが供給される。熱空気ミルハッチ式ダンパ30を閉じる場合は、図1に示すように手動方向切替弁56を手で操作することにより、圧縮空気Aを空圧シリンダ41の収縮用ポート41hに供給し、空圧シリンダ41のロッド41cを収縮させる。そして、空圧シリンダ41内における伸長用ポート41g側の空気は、第1の手動開閉弁58を介して外部に排出される。これにより、ダンパ本体30aが回動し、給気通路29は第1のミルハッチ式ダンパ30によって閉じられた状態となる。
【0046】
熱空気ミルハッチ式ダンパ30を開く場合は、図2に示すように手動方向切替弁56を手で操作することにより、圧縮空気Aを空圧シリンダ41の伸長用ポート41gに供給し、空圧シリンダ41のロッド41cを伸長させる。そして、空圧シリンダ41内における収縮用ポート41h側の空気は、第2の手動開閉弁57を介して外部に排出される。これにより、ダンパ本体30aが回動し、給気通路29は熱空気ミルハッチ式ダンパ30によって開かれた状態となる。
【0047】
制御用ケーブル34の断線が特定され、制御用ケーブル34が正常な状態に復旧した場合は、第1のダンパ駆動装置40は図3および図4の管路構成に再び戻され、方向切替電磁弁50による熱空気ミルハッチ式ダンパ30の開閉動作が行われる。
【0048】
このように、制御用ケーブル34の断線などによって方向切替電磁弁50が動作不良になった場合でも、圧縮空気Aをバイパス通路55の手動方向切替弁56に供給することで、ミルハッチ式ダンパ30を手動で確実に駆動させることが可能となる。したがって、石炭火力発電所では所定出力を確保することができ、出力の安定した運転が可能となる。
【0049】
また、方向切替電磁弁50は管路48、51、52に設けられた迅速流体継手61a〜63aを介して取り外し可能に接続されているので、方向切替電磁弁50が動作不良になった場合は、方向切替電磁弁50を管路48、51、52から容易に切り離すことができ、故障に対する迅速な措置をとることが可能となる。さらに、方向切替電磁弁50および手動方向切替弁56の上流側には、圧縮空気Aの供給および停止のための開閉弁46が設けられているので、方向切替電磁弁50の動作不良発生時には、一時的に熱空気ダンパ駆動装置40への圧縮空気Aの供給を停止することができ、故障発生に伴う管路切替作業の安全を確保することができる。
【0050】
図8および図9は、図1ないし図4の変形例を示している。図1ないし図4においては、方向切替電磁弁50の切り離しおよびバイパス管路55の接続に三又継手61〜63を使用する構成としたが、三又継手61〜63に代えて手動切替弁71〜73を用いることにより、管路の切り離しおよび接続作業が不要となり、手動切替弁71〜73の切替操作のみで、方向切替電磁弁50から手動方向切替弁56の切替が可能となる。
【0051】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、実施の形態においては、石炭火力発電所の微粉炭機10に供給される温度調節用空気を遮断するためのミルハッチ式ダンパ30に適用した場合を説明したが、ダンパはこれに限定されることはなく、火力発電所以外の設備にも適用可能である。
【0052】
また、上記の実施の形態においては、熱空気ダンパ駆動装置40の動作のみについて説明したが、冷空気ダンパ駆動装置40´の動作も熱空気ダンパ駆動装置40の動作に準じており、冷空気ダンパ駆動装置40´においても方向切替電磁弁50の動作不良に対する迅速な措置が可能となっている。
【符号の説明】
【0053】
10 微粉炭機
21 押込通風機
24 空気余熱器
29 給気通路
30 熱空気ミルハッチ式ダンパ(ダンパ)
30´ 冷空気ミルハッチ式ダンパ(ダンパ)
40 熱空気ダンパ駆動装置(ダンパ駆動装置)
40´ 冷空気ダンパ駆動装置(ダンパ駆動装置)
41 空圧シリンダ
46 開閉弁
48 管路
50 方向切替電磁弁
51 管路
52 管路
55 バイパス管路
56 手動方向切替弁
56a 第1の手動出力ポート
56b 第2の手動出力ポート
57 第2の手動開閉弁(手動開閉弁)
58 第1の手動開閉弁(手動開閉弁)
A 圧縮空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気を方向切替電磁弁を介して空圧シリンダに供給し、前記方向切替電磁弁の切替動作に伴う前記空圧シリンダのロッドの往復動によってダンパを開閉駆動させるダンパ駆動装置であって、
前記方向切替電磁弁に接続されている管路に対して並列に接続可能なパイパス管路と、
前記バイパス管路に設けられ、前記圧縮空気を前記空圧シリンダの伸長用ポートに供給する第1の手動出力ポートと前記圧縮空気を前記空圧シリンダの収縮用ポートに供給する第2の手動出力ポートとを有する手動方向切替弁と、
前記バイパス管路の前記第1の手動出力ポート側に接続される第1の手動開閉弁と、
前記バイパス管路の前記第2の手動出力ポート側に接続される第2の手動開閉弁と、
を備え、
前記方向切替電磁弁の動作不良時には、手動操作によって前記圧縮空気を前記パイパス管路に供給することを特徴とするダンパ駆動装置。
【請求項2】
前記方向切替電磁弁は、前記管路に設けられた迅速流体継手を介して切り離し可能に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のダンパ駆動装置。
【請求項3】
前記方向切替電磁弁および前記手動方向切替弁の上流側には、前記圧縮空気の供給および停止のための開閉弁が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のダンパ駆動装置。
【請求項4】
前記ダンパは、石炭火力発電所の微粉炭機に供給される温度調節用空気を遮断するためのミルハッチ式ダンパであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のダンパ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−82926(P2012−82926A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231173(P2010−231173)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】