説明

チアカリックスアレーン誘導体及びその製造方法

【課題】 高屈折率を有するチアカリックスアレーン誘導体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 下記式(3)で表されるチアカリックスアレーン誘導体。
【化21】


(式(3)中、nは4〜10の整数を表し、mは1〜1000の整数を表し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示し、Rは炭素数1〜20の2価の有機基を示し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示し、R及びRはそれぞれ水素又は炭素数1〜20の1価の有機基を示し、またRとRは結合してもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なチアカリックスアレーン誘導体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カリックスアレーンはフェノールとホルムアルデヒドが脱水縮合した大環状化合物であり、環化条件を制御することで、環を構成するフェノール数を厳密に制御することが可能である。カリックスアレーンは、比較的安価に製造することが可能で、また比較的容易に官能基を導入することが可能である。例えば特許文献1では、フェノール水酸基を修飾し包接化合物とし、ナトリウムイオン選択性色素への応用報告がなされている。また、カリックスアレーンは機能性耐熱樹脂としても応用が期待されており、例えば特許文献2ではオキセタン基を導入した耐熱樹脂の報告があり、特許文献3ではカリックスアレーンにアルカリ現像性を付与した耐熱樹脂の報告がある。
【0003】
一方、カリックスアレーンは、芳香族環を多数有しかつ環状物であることから、高屈折率透明耐熱樹脂としても応用が可能である。代表的な高耐熱透明樹脂として例えばポリカーボネート類があるが、屈折率調整が難しくかつ線状高分子であるため複屈折が大きいという欠点を有している。また、ポリアクリレート類は透明性が高くかつ屈折率調整が比較的容易であるが、耐熱性に劣ることが知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−106384号公報
【特許文献2】特開平11−228558号公報
【特許文献3】特開2002−3563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高屈折率を有するチアカリックスアレーン誘導体及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、環構造中に硫黄原子を含むチアカリックスアレーンのフェノール水酸基について化学修飾の検討を詳細に行い、塩素基を有する誘導体を出発原料にしてポリチオエーテル鎖を伸長することにより、高屈折率樹脂を見出すことができた。
本発明によれば、以下のチアカリックスアレーン誘導体及びその製造方法が提供される。
1.下記式(1)で表されるチアカリックスアレーン誘導体。
【化8】

(式(1)中、nは4〜10の整数を表し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示し、Rは炭素数1〜20の2価の有機基を示す。)
2.下記式(2)で表されるチアカリックスアレーン誘導体。
【化9】

(式(2)中、nは4〜10の整数を表し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示し、Rは炭素数1〜20の2価の有機基を示し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示す。)
3.下記式(3)で表されるチアカリックスアレーン誘導体。
【化10】

(式(3)中、nは4〜10の整数を表し、mは1〜1000の整数を表し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示し、Rは炭素数1〜20の2価の有機基を示し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示し、R及びRはそれぞれ水素又は炭素数1〜20の1価の有機基を示し、またRとRは結合してもよい。)
4.下記式(4)で表されるチアカリックスアレーン誘導体。
【化11】

(式(4)中、nは4〜10の整数を表し、mは1〜1000の整数を表し、lは1〜1000の整数を表し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示し、Rは炭素数1〜20の2価の有機基を示し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示し、R及びRはそれぞれ水素又は炭素数1〜20の1価の有機基を示し、またRとRは結合してもよく、Xは酸素又は硫黄を示し、R及びRはそれぞれ水素又は炭素数1〜20の1価の有機基を示し、またRとRは結合してもよい。)
5.下記式で表されるフェノール体にCl−R−COY(Rは式(1)と同じであり、Yはハロゲンである。)を反応させる1記載のチアカリックスアレーン誘導体の製造方法。
【化12】

(式中、nは4〜10の整数を表し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示す。)
6.1記載の誘導体に、R−COS−Z(Rは式(2)と同じであり、Zはアルカリ金属である。)を反応させる2に記載のチアカリックスアレーン誘導体の製造方法。
7.2記載の誘導体に、下記式で表されるチイラン誘導体を反応させる3記載のチアカリックスアレーン誘導体の製造方法。
【化13】

(式中、R及びRは式(3)と同じである。)
8.3記載の誘導体に、下記式で表されるエポキシ化合物又はチイラン化合物を反応させる4記載のチアカリックスアレーン誘導体の製造方法。
【化14】

(式中、R、R及びXは式(4)と同じである。)
9.重合性基を有する3又は4記載のチアカリックスアレーン誘導体。
10.9記載のチアカリックスアレーン誘導体に加熱又は活性エネルギー線照射を行うことによって得られる3次元硬化物。
11.9記載のチアカリックスアレーン誘導体に、加熱又は活性エネルギー線照射を行うことによって硬化させる3次元硬化物の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高屈折率を有するチアカリックスアレーン誘導体及びその製造方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の式(3)又は(4)で表されるチアカリックスアレーン誘導体は、式(1)乃至式(3)で表されるチアカリックスアレーン誘導体を中間体として製造できる。
【0009】
式(1)〜(4)中のRは、炭素数1〜20の1価の有機基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基や、ビニル基、アリル基等のアルケニル基や、シクロヘキシル基、ノルボルネン基等の飽和又は不飽和環状脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基や、エーテル類、エステル類、アミノ類、及びこれらの置換化合物である。好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。
【0010】
式(1)〜(4)中のRは、炭素数1〜20の2価の有機基であり、例えばメチレン基、エチレン基等のアルキレン基やフェニレン基等の芳香族基及びこれらの置換化合物であるが、塩素基の反応性の観点から炭素数1〜4のアルキレン基、又はジニトロ置換フェニレン基等の電子吸引性基が望ましい。
【0011】
式(1)〜(4)中のnは、4〜10の整数であり、好ましくは4〜6である。
【0012】
式(2)〜(4)中のRは、炭素数1〜20の1価の有機基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基や、ビニル基、アリル基等のアルケニル基や、シクロヘキシル基、ノルボルネン基等の飽和又は不飽和環状脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基、エーテル類、エステル類、アミノ類、及びこれらの置換化合物である。好ましくは炭素数1〜4のアルキル基で置換された又は非置換のフェニル基又はナフチル基である。
【0013】
式(3)及び式(4)中のR及びRはそれぞれ水素又は炭素数1〜20の1価の有機基であり、例えば、互いに独立してメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基や、ビニル基、アリル基等のアルケニル基や、シクロヘキシル基、ノルボルネン基等の飽和又は不飽和環状脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基や、エーテル類、エステル類、アミノ類、及びこれらの置換化合物であり、また、RとRが結合して、例えばシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、ノルボルナン環等の環を形成してもよい。好ましくは、Rは水素又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基で置換された又は非置換のフェノキシアルキル(好ましくは炭素数1〜4)基である。
【0014】
式(3)及び式(4)中のmは1〜1000の整数であり、好ましくは1〜100である。また、mは繰り返し数を表し、好ましくは数平均分子量が1000〜50000である。
【0015】
式(4)中のR及びRはそれぞれ水素又は炭素数1〜20の1価の有機基であり、例えば、互いに独立してメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基や、ビニル基、アリル基、アクリロリル基、メタクリロイル基、スチリル基、p−ビニルアリール基、ビニロキシ基等のアルケニル基や、シクロヘキシル基、ノルボルネン基、クロトニル基、アルコキシ基、フェノキシ基等の飽和又は脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基や、エーテル類、エステル類、及びそれらの置換化合物であり、また、RとRが結合して、例えばシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、ノルボルナン等の環を形成してもよい。好ましくは、Rは水素又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基で置換された又は非置換のフェノキシアルキル(好ましくは炭素数1〜4)基である。
【0016】
式(4)中のlは1〜1000の整数であり、好ましくは1〜100である。また、lは繰り返し数を表し、好ましくは数平均分子量が1000〜50000である。
【0017】
式(1)で示されるチアカリックスアレーン誘導体は、下記式で示される対応するフェノール体
【化15】

(式中、nは4〜10の整数を表し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示す。)
にCl−R−COY(Rは式(1)と同じであり、Yはハロゲンである。)を反応させることにより得ることができる。好ましくは塩基存在下で反応を行う。
【0018】
用いる塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン等の第3級アミン化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物等がある。塩基の量はフェノール水酸基に対し好ましくは1〜10倍、より好ましくは1〜2倍量用いる。
【0019】
反応に用いる溶剤は、ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン等のエーテル類、ジクロロメタンやクロロホルム等のハロゲン系溶媒、ヘキサンやトルエン等の炭化水素系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンやN−ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒、アセトンやシクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル等のエステル類を用いることができる。また、無溶媒でも反応させることができる。
【0020】
反応温度は、通常、−78〜100℃の間で行うが、好ましくは−50〜50℃、より好ましくは−50〜20℃である。反応温度が−78℃未満だと反応時間が長くなる恐れがあり、また反応温度が100℃を超えると副反応が起こる恐れがある。
【0021】
式(2)で示されるチアカリックスアレーン誘導体は、式(1)で示される化合物に、R−COS−Z(Rは式(2)と同じであり、Zはアルカリ金属である。)を反応させることにより得ることができる。好ましくは塩触媒存在下で反応を行う。
【0022】
塩触媒としては、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩や、リチウムクロリド、リチウムブロミド等の金属塩が用いられる。触媒の添加量は、式(1)で示される化合物100部に対し1〜10部である。R−COS−Zは式(1)で示される化合物に対し大過剰加え、反応途中でさらに追加してもよい。
【0023】
反応に用いる溶媒は、エーテル類、ハロゲン系溶媒、炭化水素系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミドやN−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒、アセトンやシクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル等のエステル類を用いることができる。
【0024】
反応温度は、通常、−78〜100℃の間で行うが、好ましくは−50℃〜80℃、より好ましくは−50℃〜50℃である。反応温度が−78℃未満だと反応時間が長くなる恐れがあり、また反応温度が100℃を超えると副反応が起こる恐れがある。
【0025】
式(3)で示されるチアカリックスアレーン誘導体は、式(2)で示される化合物に、下記式で示される対応するチイラン化合物
【化16】

(式中、R及びRは式(3)と同じである。)
を反応させることによって得ることができる。好ましくは塩触媒存在下で反応を行う。
【0026】
塩触媒としては、テトラブチルアンモニウムブロミドやテトラエチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩や、リチウムクロリド、リチウムブロミド等の金属塩が用いられる。触媒の添加量は、式(2)で示される化合物の官能基量と等量が好ましい。
【0027】
反応に用いる溶媒は、エーテル類、ハロゲン系溶媒、炭化水素系溶媒の他に、N,N−ジメチルホルムアミドやN−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒、アセトンやシクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル等のエステル類を用いることができる。また、無溶媒でも反応させることができる。
【0028】
反応温度は、通常、0〜150℃の間で行うが、好ましくは20℃〜100℃、より好ましくは50℃〜100℃である。反応温度が0℃未満だと反応時間が長くなる恐れがあり、また反応温度が150℃を超えると副反応が起こる恐れがある。
反応は、アンプル封管等、水分を除去できる状態で行うのが望ましい。
【0029】
式(4)で示されるカリックスアレーン誘導体は、式(3)で示される化合物に、下記式で示される対応するチイラン化合物又はエポキシ化合物
【化17】

(式中、R、R及びXは式(4)と同じである。)
を反応させることによって得ることができる。好ましくは塩触媒存在下で反応を行う。
【0030】
塩触媒としては、テトラブチルアンモニウムブロミドやテトラエチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩や、リチウムクロリド、リチウムブロミド等の金属塩が用いられる。触媒の添加量は、式(3)で示される化合物の官能基量と等量が好ましい。
【0031】
反応に用いる溶媒はエーテル類、ハロゲン系溶媒、炭化水素系溶媒の他に、N,N−ジメチルホルムアミドやN−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒、アセトンやシクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル等のエステル類を用いることができる。また、無溶媒でも反応させることができる。
【0032】
反応温度は、通常、0〜150℃の間で行うが、好ましくは20〜100℃、より好ましくは50〜100℃である。反応温度が0℃未満だと反応時間が長くなる恐れがあり、また反応温度が150℃を超えると副反応が起こる恐れがある。
反応はアンプル封管等、水分を除去できる状態で行うのが望ましい。
【0033】
式(3)で示される化合物は、2重結合や3重結合をもつ不飽和炭化水素基や、アクリル基やメタクリル基、シクロプロパン基やシクロブタン基等の高歪炭化水素基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、エポキシ基やオキセタン基等の環状エーテル基等、ラジカル重合性やカチオン、アニオン重合性等の重合性基を含むことができる。例えばR,R,R,R,Rの少なくとも1つが重合性基を含んでもよい。
【0034】
式(4)で示される化合物は、2重結合や3重結合をもつ不飽和炭化水素基や、アクリル基やメタクリル基、シクロプロパン基やシクロブタン基等の高歪炭化水素基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、エポキシ基やオキセタン基等の環状エーテル基等、ラジカル重合性やカチオン、アニオン重合性等の重合性基を含むことができる。例えばR,R,R,R,R,R,Rの少なくとも1つが重合性基を含んでもよい。
【0035】
式(3)及び(4)の化合物が重合性基を含む場合、対応する重合触媒を加え加熱又は光等の活性エネルギー線を照射することによって、3次元硬化物を得ることができる。
【0036】
熱ラジカル重合開始剤としては、特に制限されず公知のものが使用できる。代表的なものを例示すると、ベンゾイルパーオキシド、p−クロルベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシジカーボネート等のパーオキシド、アゾイソブチロニトリル等のアゾ化合物である。熱ラジカル重合開始剤の使用量は、重合条件や開始剤の種類、重合性モノマーの種類や組成によって異なるため一概に限定できないが、重合性基に対して0.01〜10当量%の範囲で用いるのが好適である。重合温度及び重合時間は、重合開始剤の種類と量や重合性モノマーの種類によって大きく変化するので限定できないが、2〜40時間で重合が完結するように条件を選ぶのが好ましい。
【0037】
また紫外線、可視光、あるいは放射線等の活性エネルギー線を用いたラジカル重合の開始剤としては、特に制限されず公知のものが使用できる。代表的なものとして、ベンゾイルメチルエーテル、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンジルメチルケタール、2−イソプロピルチオキサントン等が用いられる。これらの重合開始剤は、重合性基に対して0.001〜5当量%の範囲で用いるのが一般的である。
【0038】
熱カチオン重合開始剤としては、特に制限されず公知のものが使用できる。代表的なものを例示すると、塩化アルミニウム、4塩化スズ、4塩化チタン等が用いられる。熱カチオン重合開始剤の使用量は、重合条件や開始剤の種類、重合性モノマーの種類や組成によって異なるため一概に限定できないが、重合性基に対して0.01〜10当量%の範囲で用いるのが好適である。重合温度及び重合時間は、重合開始剤の種類と量や重合性モノマーの種類によって大きく変化するので限定できないが、2〜40時間で重合が完結するように条件を選ぶのが好ましい。
【0039】
また紫外線、可視光、あるいは放射線等の活性エネルギー線を用いたカチオン重合の開始剤としては、特に制限されず公知のものが使用できる。代表的なものとして、スルホニウム塩類、ヨードニウム塩類等が用いられる。これらの重合開始剤は、重合性基に対して0.001〜5当量%の範囲で用いるのが一般的である。
【0040】
アニオン重合開始剤としては、特に制限されず公知のものが使用できる。代表的なものを例示すると、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム、金属リチウム等が用いられる。
【0041】
以上の触媒に、各種増感剤や助触媒を加えてもよい。また、3次元硬化物の物性を制御するために、酸化防止剤、金属不活性化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、安定剤、レベリング剤等の各種添加剤を加えてもよい。
【0042】
さらに、3次元硬化物の特性を高める目的で、シリカや酸化チタン等無機フィラーや有機フィラーを任意の割合で加えてもよい。
【0043】
式(3)及び式(4)で示される化合物中に、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリオレフィン、シロキサンポリマー等の各種ポリマーを任意の割合でブレンドしてもよい。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明の光学用樹脂の製造法について詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されない。
実施例1
下記式(5)で示される化合物(以下(5)と略す)を下記の方法で合成した。
【化18】

【0045】
300ml三つ口フラスコに、上記式(6)のチアカリックスアレーン(東京化成品株式会社製)2.88g(4mmol)、ピリジン3.80ml(48mmol)、テトラヒドロフラン30mlを加え、0℃窒素雰囲気下で攪拌した。クロロアセチルクロリド5.42ml(48mmol)を滴下し24時間攪拌後、クロロホルムを100ml加え、1N塩酸100mlで1回、5mol%炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで2回洗浄し、さらに水100mlで2回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒留去した。得られた褐色液体をメタノールで洗浄し、その後、クロロホルムで再結晶し、(5)を黄白色粉末固体として0.57g(収率14%)得た。
得られた化合物の分析結果を以下に示す。
IR(cm−1):2965、1791、1571、1479、1114、742
H−NMR(500MHz、CDCl):δ(ppm)1.30(s、36H)、3.4(m、8H)、7.0(s、8H)
【0046】
実施例2
下記式(7)で示される化合物(以下(7)と略す)を下記の方法で合成した。
【化19】

50ml三つ口フラスコに、チオ安息香酸カリウム0.64g(3.6mmol)、(6)0.31g(0.3mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド0.07g(0.06mmol)、N−メチルピロリドン20mlを加え室温で攪拌した。24時間攪拌後、クロロホルム20mlを加え水20mlで3回洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒留去した。その後メタノールで洗浄し、(7)を淡黄色粉末固体として0.15g(収率35%)得た。
得られた化合物の分析結果を以下に示す。
元素分析:理論値(%) C:63.66 H:5.06
測定値(%) C:63.57 H:5.10
IR(cm−1):2964、1779、1671、1571、1475、1103、688
H−NMR(600MHz、CDCl):δ(ppm)1.27(s、36H)、3.37(s、8H)、7.48(dd、8H)、7.59(dd、4H)、7.71(s、8H)、7.97(d、8H)
【0047】
実施例3
下記式(8)で示される化合物(以下(8)と略す)を下記の方法で合成した。
【化20】

湿度10%以下に保ったドライボックス中で、アンプル管にテトラブチルアンモニウムクロリド0.056g(0.2mmol)、(7)0.072g(0.05mmol)、3−フェノキシプロピレンスルフィド1.330g(8.0mmol)、N−メチルピロリドン1mlを加え封管した。アンプル管を90℃で24時間攪拌後、反応溶液をメタノール100ml中に滴下し、得られた固体をさらにクロロホルム5mlに溶解させてメタノール100ml中に滴下して(8)を黄色粘性固体として1.25g(収率89%)得た。
得られた化合物の分子量をGPC法で測定したところ、数平均分子量6.2x10、分散度1.8であった。GPC法の測定条件は以下の通りであった。
(a)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(SEC):東ソー株式会社製、ゲル浸透クロマトグラフィー(SEC)HLC−8020型
(b)カラム:TSKgelG1000H
(c)展開溶媒:テトラヒドロフラン
(d)標準物質:ポリスチレン
得られた化合物のIRの結果を以下に示す。
IR(cm−1):1737、1681、1598、1496、1240、1172、754
また、3−フェノキシプロピレンスルフィドの量を変えて同様の条件で反応を行い、得られた化合物について屈折率を測定した。結果を表1に示す。
【0048】
[屈折率の測定方法]
種々のポリマー20mgを、テトラヒドロフラン2mlに溶解させ、この溶液0.2mlをシリコンウエハー上に滴下し、スピンコータ(浅沼製作所株式会社製)により塗布した。次いで、この溶液が塗布されたシリコンウエハーを室温で24時間減圧乾燥後、エリプソメータ(ガードナー社製、115B型)により波長632.8nmにおける屈折率測定を5回行い、最大値と最小値を除いた3回の測定値の平均を屈折率とした。
【0049】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のチアカリックスアレーン誘導体を用いることにより、高耐熱性を有し、屈折率調整可能な、さらに高屈折率を有する樹脂を提供できる。この樹脂は、光学レンズ、光学フィルム、光学フィルムを用いた液晶表示装置等に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるチアカリックスアレーン誘導体。
【化1】

(式(1)中、nは4〜10の整数を表し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示し、Rは炭素数1〜20の2価の有機基を示す。)
【請求項2】
下記式(2)で表されるチアカリックスアレーン誘導体。
【化2】

(式(2)中、nは4〜10の整数を表し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示し、Rは炭素数1〜20の2価の有機基を示し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示す。)
【請求項3】
下記式(3)で表されるチアカリックスアレーン誘導体。
【化3】

(式(3)中、nは4〜10の整数を表し、mは1〜1000の整数を表し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示し、Rは炭素数1〜20の2価の有機基を示し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示し、R及びRはそれぞれ水素又は炭素数1〜20の1価の有機基を示し、またRとRは結合してもよい。)
【請求項4】
下記式(4)で表されるチアカリックスアレーン誘導体。
【化4】

(式(4)中、nは4〜10の整数を表し、mは1〜1000の整数を表し、lは1〜1000の整数を表し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示し、Rは炭素数1〜20の2価の有機基を示し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示し、R及びRはそれぞれ水素又は炭素数1〜20の1価の有機基を示し、またRとRは結合してもよく、Xは酸素又は硫黄を示し、R及びRはそれぞれ水素又は炭素数1〜20の1価の有機基を示し、またRとRは結合してもよい。)
【請求項5】
下記式で表されるフェノール体にCl−R−COY(Rは式(1)と同じであり、Yはハロゲンである。)を反応させる請求項1記載のチアカリックスアレーン誘導体の製造方法。
【化5】

(式中、nは4〜10の整数を表し、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示す。)
【請求項6】
請求項1記載の誘導体に、R−COS−Z(Rは式(2)と同じであり、Zはアルカリ金属である。)を反応させる請求項2に記載のチアカリックスアレーン誘導体の製造方法。
【請求項7】
請求項2記載の誘導体に、下記式で表されるチイラン誘導体を反応させる請求項3記載のチアカリックスアレーン誘導体の製造方法。
【化6】

(式中、R及びRは式(3)と同じである。)
【請求項8】
請求項3記載の誘導体に、下記式で表されるエポキシ化合物又はチイラン化合物を反応させる請求項4記載のチアカリックスアレーン誘導体の製造方法。
【化7】

(式中、R、R及びXは式(4)と同じである。)
【請求項9】
重合性基を有する請求項3又は4記載のチアカリックスアレーン誘導体。
【請求項10】
請求項9記載のチアカリックスアレーン誘導体に加熱又は活性エネルギー線照射を行うことによって得られる3次元硬化物。
【請求項11】
請求項9記載のチアカリックスアレーン誘導体に、加熱又は活性エネルギー線照射を行うことによって硬化させる3次元硬化物の製造方法。

【公開番号】特開2007−22990(P2007−22990A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210489(P2005−210489)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(592218300)学校法人神奈川大学 (243)
【Fターム(参考)】