説明

チゼルを取り外すための工具

【課題】チゼルを簡単かつ迅速に交換することができる工具を提供する。
【解決手段】チゼル(50)を、特にチゼルホルダ(40)から取り外すための工具(10)であって、ベース部分(20.1)を有しており、該ベース部分が作動部材(60)を収容していて、作動部材(60)が押出ピン(65)を有しており、作動部材(60)が移動可能である形式のものにおいて、作動部材(60)が間接的または直接的に流体負荷されるシリンダのピストンまたは電動モータユニットに連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にチゼルホルダからチゼルを取り外すための工具であって、作動部材を収容するベース部分を備えており、作動部材が押出ピンを有しており、作動部材が移動可能である形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
このような工具は例えば、道路破砕機、リサイクラ、岩盤切削機等において使用される。この工具は、チゼル、特にシャンクチゼル(円形シャンクチゼル)の取り外しのために使用される。この場合、チゼルはチゼル収容部においてクランプ保持されている。チゼル収容部は通常、貫通孔として形成されている。チゼルホルダ自体はフライスローラ管(Fraeswalzenrohr)の表面に固定されていて、特に溶接されている。または、フライスローラ管の表面に溶接されているベース支持体に交換可能に固定されている。チゼルの取り外しを簡単にするために、ドイツ連邦共和国実用新案第29623508号明細書(DE29623508U1)に記載されているような工具が公知である。
【0003】
このような工具は2つのレバーアームを有しており、これらのレバーアームはジョイントによって互いに結合されている。レバーアームの一方はこの場合、押出ピンを形成していて、他方のレバーアームはグリップ部分を形成している。押出ピンは自由端部で、押し出したいチゼルのチゼルシャンクの端部側に当接するように、チゼル収容部内に導入することができる。
【0004】
工具は第2のレバーで、フライスローラ管の支持肩部に対して当て付けられる。チゼルは次いでレバーの移動によりチゼル収容部から押し出される。最後に押出ピンがチゼル収容部から外に出される。二重レバーによる取り扱いは狭い組み付けスペースにおいては困難であり時間がかかる。さらに工具はフライスローラ上の支持肩部を要するが、これは常に得られるものではない。
【0005】
先行技術により、チゼルのチゼルヘッドに引き抜きクローを当て付けることができる取り外し工具も公知である。この場合、引き抜きクローを係合させる環状の溝をチゼルヘッドに設ける必要がある。このような工具によっては、チゼルヘッドが著しく摩耗し、溝が十分に存在しなくなってしまった場合にはもはやチゼルを取り外すことはできない。破断したチゼルヘッドを有するチゼルも取り外すことはできない。このような工具は、ドイツ連邦共和国特許第4323699号明細書(DE4323699C2)、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3223761号明細書(DE3223761A1)、ドイツ連邦共和国実用新案第8403441号明細書(DE8403441U1)、米国特許第6526641号明細書(US6526641B1)により公知である。
【0006】
別の工具がドイツ連邦共和国特許出願公開第3026930号明細書(DE3026930A1)に記載されている。この工具は、チゼルホルダに固定することができる支持アームを有している。この支持アームには旋回レバーが連結されていて、この旋回レバーはグリップを支持している。チゼルホルダは直線的に移動可能なプランジャを支持している。チゼルを取り外すためには、旋回レバーの、グリップとは反対側のレバーアームがプランジャに当て付けられる。グリップの移動により、プランジャが移動され、プランジャによってチゼルをチゼル収容部から押し出すことができる。チゼルホルダに取り付けられたプランジャは付加的な部分であり組み付けの手間がかかる。さらには、プランジャはチゼルホルダにおいて構成スペースを拡大することになり、これは昨今の精密フライスにおいては甘受しがたい。
【0007】
さらにこのような構成形式では、チゼルを、袋孔状のチゼル収容部内に固定しなければならない。このようなチゼル収容部は運転使用時に汚染され、これによりシステムが故障する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】DE29623508U1
【特許文献2】DE4323699C2
【特許文献3】DE3223761A1
【特許文献4】DE8403441U1
【特許文献5】US6526641B1
【特許文献6】DE3026930A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、冒頭で述べた形式の工具を改良して、チゼルを簡単かつ迅速に交換することができる工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために本発明の構成では、作動部材が間接的または直接的に、流体負荷されるシリンダ・ピストンシステムまたは電動モータユニットに連結されているようにした。
【発明の効果】
【0011】
シリンダは例えば流体シリンダであって、特に油圧回路を介して負荷可能な液圧シリンダであって良い。特に、これにより大きな圧力がピストンへとかけられ、相応に大きな力が作動部材に伝達される。このようにしてチゼルは大きな力をかけることなく確実に取り外すことができる。電気モータ的なユニットは例えば、電動モータによって駆動可能なスピンドル・ナットユニットであって良い。
【0012】
本発明の有利な別の構成では、作動部材がベース部分に、定置の旋回支承部を中心として旋回可能に支承されている。このベース部分はチゼルホルダに配属させることができ、定置の旋回支承部を介して、再現可能な押出過程を実現することができる。
【0013】
押出ピンが、作動部材の移動運動により湾曲軌道に沿って運動するならば、変化するモーメントの経過を実現することができる。例えば、相応の工具の構成では、移動運動の開始時に高いモーメントが形成され、これは継続的に減少させることができる。これにより移動運動の開始時にまず、チゼルとチゼル収容部との間の付着摩擦を克服しなければならないという必要性に簡単に対処できる。
【0014】
有利には、ベース部分は、チゼルホルダに直接的に支持するための支持区分又は例えば摩耗保護ディスクを介して間接的に支持するための支持区分を有している。これにより工具をチゼルホルダに定置に配属させることにより、付加的な支持部分、例えばフライスローラ管上の押圧肩部を省くことができる。これによりフライスローラ管上に、個々のチゼルホルダのコンパクトな配置を実現することができ、先行技術におけるような付加的な手間は必要ない。
【0015】
有利には、支持のために、チゼルホルダにおける過剰な摩耗にさらされるような個所を使用せず、これにより工具は常に再現可能に装着することができる。特に、通常、チゼルヘッドとチゼルホルダの載置面との間に配置されている摩耗ディスクがこのような理想的な支持点を提供する。
【0016】
例えば支持区分は、フォーク状の押圧部分に配置することができる。工具はフォーク状の押圧部分でチゼルホルダに当て付けられ、支持区分はチゼルのチゼルヘッドの側方で接触する。ここでは、支持区分は摩耗ディスクに係合する。
【0017】
本発明の有利な構成では、ベース部分が支持区分に対して間隔をおいて位置していて、外側に位置する当接面をチゼルホルダに当て付けるために有している。支持区分と当接面とによってチゼルホルダに対する工具の所定の配属が得られる。これにより工具を常に同様にチゼルホルダに配置することができる。
【0018】
考えられる本発明の一変化実施例では、ベース部分が収容部を有していて、この収容部には、収容部を制限する2つの側壁の間に作動部材が収容されており、側壁が軸受収容部を有しており、この軸受収容部で作動部材が旋回可能に支承されている。
【0019】
簡単な構造的な構成により、両側壁の間で作動部材を安定的にガイドすることができる。
【0020】
別の有利な構成では、作動部材の移動運動は、ベース部分に配置された少なくとも1つのストッパによって制限されている。これにより作動部材の移動運動は制限することができる。この場合、移動運動は、作動部材が端部位置においてひっかかって挟まれることがないように制御される。
【0021】
出発位置では、作動部材は、相応に制限された状態で、チゼルホルダに容易に当て付けることができるようにストッパによって位置決めされている。取り外し位置における作動部材の作動運動の制限は、作動部材がチゼル収容部においてひっかかって挟まることを防止する。
【0022】
この場合、作動部材は、出発位置から取り外し位置へと移動可能であって、作動部材はばねエレメントによって出発位置においてばねによりプレロードをかけられて保持されている。このような手段は、シリンダが無圧力状態にされている場合に作動部材が出発位置に留まるか、出発位置に戻されることを保証する。例えば、二重作用するシリンダを使用することにより、ばねによるプレロードを省くことができることがわかる。
【0023】
接近しにくい場所においても簡単かつ確実な工具の操作を得るために、ベース部分が間接的または直接的に、接続部分によってグリップ部分に連結されていて、グリップ部分は旋回支承部によってベース部分に対して相対的に旋回されている。
【0024】
本発明の有利な構成によれば、押出ピンがレバーアームに接続されていて、レバーアームは、ピストンロッドの旋回可能な結合のためのカップリングを有しており、レバーは、カップリングに対して間隔をおいて旋回可能に支承されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】工具に配属されている、チゼルホルダを備えたベース支持体の一部を第1の運転位置で示した側方図である。
【図2】図1を第2の運転位置で示した図である。
【図3】図1を第3の運転位置で示した図である。
【図4】図1に示した工具のアダプタを示した斜視図である。
【図5】別の構成の工具に配属される、図1のチゼルホルダとベース支持体の一部を示した側方図である。
【図6】第3の構成の工具に配属される、図1のチゼルホルダとベース支持体の一部を示した側方図である。
【図7】第4の構成の工具に配属される、図1のチゼルホルダとベース支持体の一部を示した側方図である。
【図8】第5の構成の工具に配属される、図1のチゼルホルダとベース支持体の一部を示した側方図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明を実施するための複数の実施例を図面につき詳しく説明する。
【0027】
図1にはグリップ12を備えた工具が示されている。グリップ12内にはバッテリが組み込まれている。バッテリには2つの電流コンタクト11を介して、相応の充填ステーションで充電することができる。バッテリは電動モータへの電力供給のために働く。この電動モータは、グリップ12に接続されている付加ケーシング内に取り付けられている。この付加ケーシング内にはシリンダ13が取り付けられている。シリンダ13はこの場合、液圧シリンダとして形成されているので、付加ケーシング内には相応の液圧回路系が組み込まれている。シリンダ13内ではピストンが2つの端部位置の間で摺動可能に支承されている。グリップ12には発動装置12.1が取り付けられている。発動装置12.1は回路のコンタクトに接続されていて、付加ケーシング内の電動モータを作動させる。電動モータは、液圧系と接続されていて、シリンダ13内におけるピストンを作動させる。選択的には、グリップ12内に、グリップ12の流体接続部に通じる管路を設けることも考えられる。この流体接続部はクイックカップリングとして形成されている。
【0028】
このクイックカップリングは、ホースの対応カップリング部材に接続することができる。この場合、このホースは、例えば道路切削機または岩盤切削機の液圧系から延びている。グリップ12内に組み込まれた管路はシリンダ13に通じている。シリンダ13内にはピストンが直線的に移動可能に取り付けられている。ピストンの移動運動は、グリップ12の発動装置12.1を介して制御可能な弁によって制御することができる。シリンダ13には図4に示されたアダプタ20を接続することができる。このアダプタ20については、図1〜図4につき以下で詳しく説明する。アダプタ20はベース部分20.1を有している。ベース部分20.1は、2つの側壁20.4によって収容部20.2を制限している。この収容部20.2内には、レバーの形の作動部材60が旋回可能に支承されている。作動部材60はレバーアーム64を有していて、このレバーアーム64には押出ピン65が一体的に接続されている。押出ピン65は湾曲されて成形されている。押出ピン65の自由端部は凸状に球形に形成されている。レバーアーム64には、押出ピン65とは反対側の端部に、軸受収容部63を成す孔が設けられている。
【0029】
この軸受収容部63は、側壁20.4に設けられた対応する孔と整合して一列に並んでいる。これらの整合する孔と軸受収容部63とに軸受ピン20.6が挿入され図4に示されているように、固定リングによって固定される。軸受ピン20.6は、図1の図平面に対して垂直に延びる回転軸を成す。軸受収容部63と、押出ピン65のレバーアーム64への結合個所との間の領域で、レバーアーム64にはカップリング62が設けられている。このカップリング62には、軸受収容部15を備えたピストンロッド14が接続されている。ピストンロッド14は軸受収容部15とは反対側の端部で、図4に示されているようなフランジ16を有している。ベース部分20.1には接続部分20.10が一体的に形成されている。図1には、接続部分20.10が、ポット状の収容部を有していることが示されている。このポット状の収容部は、貫通孔を介して収容部20.2に空間的に接続されている。ポット状の収容部にはばねエレメント20.11が挿入されている。ばねエレメント20.11はコイルばねとして形成されている。ピストンロッド14はコイルばねを貫通していて、ピストンロッド14の自由端部は作動部材60に接触している。
【0030】
この場合、ピストンロッド14の軸受収容部15がカップリング62に接している。レバーアーム64はカップリング62の領域に、互いに整合して一列に位置する2つの孔を有している。これらの孔はピストンロッド14における軸受収容部15に整合させることができる。
【0031】
ピストンロッド14のフランジ16は、ポット状の収容部から突出するばね端部に当て付けられる。次いで、圧力によりフランジ16でばねエレメント20.11を、軸受収容部15がカップリング62の孔に整合するまで圧縮することができる。整合した孔と軸受収容部15とにジョイントピンを挿入することができる。図4に示したように、側壁20.4には円形の貫通孔20.5が設けられている。
【0032】
レバーアーム64の孔は、カップリング62に設けられた孔に合わせて一列に並べることができる。次いでジョイントピンを貫通孔20.5からレバーアーム64の孔と、軸受収容部15とに挿入する。これによりピストンロッド14の簡単な連結もしくは連結解除を行うことができる。ピストンロッド14は連結された状態では、図1に示された位置でばねによりプレロードをかけられて保持されている。これにより作動部材60はこの位置で固定されている。
【0033】
接続部分20.10によってアダプタ20は付加ケーシングに結合されている。この場合、接続部分20.10と付加ケーシングとの間には回転軸受が形成されていて、付加ケーシングはベース部分20.1に対して相対的に回転可能である。組み付け状態では、ピストンロッド14のフランジ16は、シリンダ13内に案内されているピストンに当接されている。この場合、ピストンはシリンダ内で、押出位置を規定する端部位置に配置されている。
【0034】
図1に示されているように、ベース部分20.1の収容部20.2の領域にはストッパ20.8,20.9が設けられている。
【0035】
ストッパ20.8,20.9は、作動部材60の移動運動を制限するために働く。このために作動部材60は相応の対応面を有しており、この対応面でストッパ20.8,20.9に当接することができる。図1では作動部材60がストッパ20.8に当接している。図3では作動部材60がストッパ20.9に当接している。
【0036】
図4に示されているように、ベース部分20.1には押圧部分20.13が一体に形成されている。押圧部分20.13はフォーク状に形成されていて、支持区分20.14を有している。
【0037】
上記工具10は、チゼルホルダ40に収容されているチゼル50を取り外すために働く。チゼルホルダ40は交換可能にベース支持体30に保持されている。
【0038】
このためにベース支持体30は差込収容部を有しており、この差込収容部はチゼルホルダ40の差込付加部を収容する。クランプねじ32によってチゼルホルダ40をベース支持体30に位置固定することができる。ベース支持体30は凹状の支持面31を有している。この支持面31で、ベース支持体30は、フライスローラ管の上面に被せ嵌められ、そこに固定的に溶接される。チゼルホルダ40は、チゼル収容部43が孔として加工成形されている付加部41を有している。チゼル収容部43は後方から切欠42から接近することができる。チゼル50はこの実施例では円形シャンクチゼルとして形成されている。チゼル50は、チゼルシャンク51が一体的に形成されているチゼルヘッドを有している。チゼルシャンク51上には緊締スリーブが被せられている。緊締スリーブはチゼルシャンク51上で軸方向には摺動不能であるが周方向で自由に回転可能に保持されている。図1に示したように、チゼル50のチゼルシャンク51は、チゼルホルダ40のチゼル収容部43内に、ここに緊締スリーブによってクランプされて保持されるように挿入されている。チゼルは挿入状態でチゼルヘッドで、チゼルシャンク51に被せられている摩耗保護ディスク54に支持されている。摩耗保護ディスク54はチゼルヘッドと緊締スリーブとの間に配置されている。摩耗保護ディスク54は、チゼルヘッドとは反対の側で、チゼルホルダ40の支持面に当接している。
【0039】
運転使用時、チゼル50のチゼルヘッドは摩耗保護ディスク54に沿って回転することができる。この場合、チゼルシャンク51も緊締スリーブ内で回転する。チゼル50のチゼルヘッドは通常、例えば硬質金属から成るチゼル先端52を支持している。
【0040】
チゼル50が摩耗状態になると、チゼル50を取り外さなければならない。この場合、図面に記載した工具10が使用される。この場合、工具10はチゼルホルダ40上に被せられ、この場合、押圧部分20.13の支持区分20.14が、摩耗保護ディスク54の前面に当接する。押圧部分20.13は勿論、直接にまたは間接的に、チゼルホルダ40の適当な任意の個所に支持されていても良い。
【0041】
この場合、押圧部分20.13とチゼルホルダ40との間にはチゼルの組み付け方向で形状接続が行われる。ベース部分20.1はさらに当接面20.7を有しており、ベース部分20.1はこの当接面20.7でチゼルホルダ40の上面に支持されている。当接面20.7と支持面20.14とによって工具10をチゼルホルダ40に所定のように配属させることができる。工具10をチゼルホルダ40に取り付ける際には、押出ピン65も切欠42を通って進入する。この場合、押出ピン65の自由端部は、チゼルシャンク51自由端部に向かい合って位置する。チゼルシャンク51の自由端部は支持面53を成している。工具10が図1に示した位置にもたらされると、グリップ12に設けられた発動装置12.1が操作される。
【0042】
発動装置12.1の操作により、付加ケーシング内の電動モータが作動される。電動モータは液圧流体をシリンダ13へと送り、これによりピストンはシリンダ13内で摺動される。ピストンがピストンロッド14のフランジ16に間接的または直接的に当接するので、ピストンロッド14も図2に示された位置へと移動される。このような移動運動の際にはばねエレメント20.11も圧縮される。
【0043】
ピストンロッド14の移動により、作動部材60は軸受収容部63を中心として旋回する。この場合、作動部材60の押出ピン65は、チゼル収容部43内に進入し、押出ピン65の自由端部がチゼルシャンク51の支持面53に接触するようになる。作動部材60の移動により、チゼル50はチゼル収容部43から押し出される。この場合、支持区分20.14は、摩耗保護ディスク54の位置を保持する。その後、緊締スリーブが、摩耗保護ディスク54の円筒状の孔内に進入する。この場合、緊締スリーブは半径方向で内側に向かって圧縮され、これにより緊締作用は部分的に相殺される。これにより必要な押出力が僅かとなる。作動部材60の作動運動はストッパ20.9によって制限されている。
【0044】
この終端位置では、スイッチも、付加ケーシング内の電動モータへの電力供給を遮断する。この運転位置は図3に示されている。この場合、チゼル50は完全にチゼル収容部43から外に動かされる。電動モータの無電流切換により、ピストンからの液圧は減少する。
【0045】
ばねエレメント20.11はそのプレロードを減じることができる。この場合、作動部材60は、反時計回りで、図1に示された出発位置に戻される。この場合、シリンダ13内のピストンも出発位置に戻される。工具10は、チゼルホルダ40から取り外され、これにより摩耗保護ディスク54は解放される。チゼル50は取り外すことができる。
【0046】
図5〜図8には工具の変化実施例が示されている。図5〜図7に示したものでは、ベース支持体30と、チゼルホルダ40と、チゼル50とから成る交換ホルダシステムは図1〜図4に示した装置に相応する。図8には、本発明による工具10が、原則的に公知の交換システムにおける使用にだけ限定されるものではないことが示されている。むしろ、チゼルホルダ40が直接的にフライスローラ管F上に溶接されるような使用例も考えられる(溶接シーム44参照)。
【0047】
図5の工具の構成は、図1〜図4に示した工具の構成にほぼ相応する。作動部材60だけが異なるように構成されている。作動部材60は、構成スペースを節約するために4リンク系として扁平な伝動装置として形成されている。この場合、2つのレバー61,65.2が使用され、これらのレバー61,65.2は旋回支承部65.1,65.4を介して押出ピン65に枢着的に結合されている。この場合、旋回軸線は図平面に対して垂直に向けられている。
【0048】
押出ピン65とは逆側で、レバー61は旋回支承部(軸受ピン20.6)を介してピストンロッド14に接続されている。この接続領域は、図1〜図4の作動部材60へのピストンロッド14の接続領域に相応する。上記構成が参照される。
【0049】
第2のレバー65.2は、押出ピン65とは反対側の端部で、旋回支承部65.3を介して側壁20.4に連結されている。旋回軸線はやはり、図平面に対して垂直に延びている。図5には工具の出発位置が示されている。発動装置12.1の操作の際には、ピストンロッド14は図平面において直線的に下方に摺動される。この場合、押出ピン65を介して連結されたレバー61,65.2が同期的に時計回りで旋回する。同時に、押出ピン65はチゼル収容部43内へと進入し、緊締スリーブSの緊締力を克服しながら、チゼル50を支持面53でチゼル収容部43から押し出す。
【0050】
押出位置に達すると、ばねエレメント20.11は作動部材60を再び、図5に示された出発位置へと押圧する。
【0051】
図6には別の工具が示されている。アダプタ20は概ね、図1〜図5に示した工具10におけるアダプタ20に相応している。従って、以下では異なる特徴についてのみ言及するので、その他の点は上記説明を参照されたい。アダプタ20の接続部分20.10には収容部が設けられている。この収容部には、湾曲された管66.2が挿入されており内部で保持されている。この管66.2には湾曲可能な張りのないエレメント66.7、この実施例では、基本的に駆動技術においても使用されるようなリンクチェーンが挿入されている。このリンクチェーンは一方の端部で、ピストンロッド14の軸受収容部15に旋回可能に固定されている。他方のチェーン端部では、最後のチェーンリンクが押出ピン65を形成している。図6にはさらに工具出発位置が示されている。発動装置12.1の操作の際にピストンロッド14は(下方に)摺動される。この場合、ピストンロッド14は、管66.2の円筒状の接続領域に進入する。
【0052】
リンクチェーンは管66.2内で摺動され、管66.2はリンクチェーンが外方へ屈曲するのを防止している。押出ピン65は、チゼル50の支持面に支持されており、チゼル50をチゼル収容部43から押し出す。
【0053】
リンクチェーンがチゼル収容部43の領域に達すると、チゼル収容部43が外方への屈曲を防止する。終端位置に達した後、ばねエレメント20.11は作動部材60を再び図6に示した出発位置へと戻す。
【0054】
図7に示された工具では、チェーンリンクの代わりに流体66.3、有利には液体が管66.2内に充填されている。ピストンロッド14にはピストン66.1がクロスヘッドジョイントによって接続されている。ピストン66.1は外側の輪郭で、シールリングと協働して、管66.2の円筒状の領域の内壁においてシールしている。同様に円筒状に形成されている他方の管端部には第2のピストン66.6がシールされて挿入されている。ピストン66.6は直線的に移動可能であり、押出ピン65を支持している。管66.2は切欠42を通ってチゼル収容部43内に進入することができ、押出ピン65はチゼル50の支持面53に向かい合って位置する。ピストンロッド14の移動の際にピストン66.1は管66.2内に押し込まれる。流体66.3はこの移動運動を第2のピストン66.6に伝達する。この場合、押出ピン65はチゼル50をチゼル収容部43から外へ出す。ピストンロッド14の負荷を解放する際に、ばねエレメント20.11が作動部材60を出発位置へと押す。この場合、ピストン66.1は上方に向かって引っ張られる。真空形成により、第2のピストン66.6は流体66.3によって同様に出発位置へ戻されるように吸引される。
【0055】
図8には工具10が示されている。この工具ではグリップ12内に電動モータ66.8が組み込まれている。電動モータ66.8の被駆動軸66.9にはスピンドル66.11が設けられている。電動モータ66.8とは反対の側で、被駆動軸66.9は、ボールベアリング66.10によって回転可能にアダプタ20内に固定されている。さらにアダプタ20には、両側壁20.4の間で作動部材60が収容されている。この作動部材60はこの実施例では、ディスクの形状を有している。作動部材60の縁部側には歯列66.12が設けられていて、この歯列66.12はスピンドル66.11に噛み合う。
【0056】
作動部材60はアダプタ20内に保持されている。この場合、軸受収容部63が旋回軸を成している。作動部材60は押出ピン65を支持している。この押出ピン65は、軸受収容部63に対して偏心的に一体的に形成されている。
【0057】
工具10は同様に、押出ピン65で切欠42を通ってチゼル収容部43内に挿入されることができ、これにより押出ピン65は、チゼル50の支持面53に向かい合って位置する。グリップ12における発動装置12.1の操作時に電動モータ66.8が作動される。これにより被駆動軸66.9が回転運動させられる。スピンドル66.11は歯列66.12を介して作動部材60を時計回りに回転させる。歯列66.12が旋回支承部63に対して間隔を置いて位置していることにより、十分に大きいレバーアームが形成される。スピンドル伝動装置の使用により力を大きく軽減させることができる。押出ピン65は作動部材60の回転によりチゼル50をチゼル収容部43から押し出す。押出位置に達すると、電動モータ66.8の制御が変更され、作動部材60が再び図8に示した端部位置に達するまで回転方向が変更される。この端部位置では電動モータ66.8がスイッチオフされる。
【0058】
工具10が、種々異なる適当なチゼルホルダ40及び交換ホルダシステムにおいても使用可能であることがわかる。
【符号の説明】
【0059】
10 工具、 11 電流コンタクト、 12 グリップ、 12.1 発動装置、 13 シリンダ、 14 ピストンロッド、 15 軸受収容部、 16 フランジ、 20 アダプタ、 20.1 ベース部分、 20.11 ばねエレメント、 20.13 押圧部分、 20.14 支持区分、 20.2 収容部、 20.4 側壁、 20.6 軸受ピン、 20.7 当接面、 20.8,20.9 ストッパ、 30 ベース支持体、 32 クランプねじ、 40 チゼルホルダ、 41 付加部、 42 切欠、 43 チゼル収容部、 44 溶接シーム、 50 チゼル、 51 チゼルシャンク、 53 支持面、 54 摩耗保護ディスク、 60 作動部材、 61 レバー、 62 カップリング、 63 軸受収容部、 64 レバーアーム、 65 押出ピン、 65.1 旋回支承部、 65.2 レバー、 65.3,65.4 旋回支承部、 66.1,66.6 ピストン、 66.10 ボールベアリング、 66.11 スピンドル、 66.2 管、 66.3 流体、 66.7 湾曲可能な張りのないエレメント、 66.8 電動モータ、 66.9 被駆動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チゼル(50)を、特にチゼルホルダ(40)から取り外すための工具(10)であって、ベース部分(20.1)を有しており、該ベース部分が作動部材(60)を収容していて、作動部材(60)が押出ピン(65)を有しており、作動部材(60)が移動可能である形式のものにおいて、
作動部材(60)が間接的または直接的にシリンダ・ピストンシステム(シリンダ13)または電動モータユニットに連結されていることを特徴とする、チゼルを取り外すための工具。
【請求項2】
作動部材(60)がベース部分(20.1)に旋回支承部を中心として旋回可能に支承されている、請求項1記載の工具。
【請求項3】
押出ピン(65)が作動部材(60)の移動運動により湾曲軌道に沿って運動する、請求項1または2記載の工具。
【請求項4】
ベース部分(20.1)が、チゼルホルダ(40)または摩耗保護ディスク(54)における支持のために支持区分(20.14)を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の工具。
【請求項5】
前記支持区分(20.14)がフォーク状の押圧部分(20.13)に配置されている、請求項4記載の工具。
【請求項6】
ベース部分(20.1)が、前記支持区分(20.14)に対して間隔をおいて位置する、チゼルホルダ(40)に当て付けるための外側に位置する当接面(20.7)を有している、請求項4又は5記載の工具。
【請求項7】
ベース部分(20.1)が収容部(20.2)を有しており、該収容部内には、収容部(20.2)を制限する2つの側壁(20.4)の間で作動部材(60)が収容されており、前記側壁(20.4)が軸受収容部を有しており、該軸受収容部で作動部材(60)が旋回可能に支承されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の工具。
【請求項8】
作動部材(60)の移動運動が、ベース部分(20.1)に配置された少なくとも1つのストッパ(20.8,20.9)によって制限されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の工具。
【請求項9】
作動部材(60)が出発位置から取り外し位置へと運動可能であって、作動部材(60)がばねエレメント(20.11)によって出発位置においてプレロードをかけられて保持されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の工具。
【請求項10】
ベース部分(20.1)が間接的または直接的に、接続部分(20.10)によってグリップ部分(12)に連結されていて、グリップ部分(12)が旋回軸受によって、ベース部分(20.1)に対して相対的に旋回可能である、請求項1から9までのいずれか1項記載の工具。
【請求項11】
押出ピン(65)がレバーアーム(61)に接続されていて、レバーアームが、ピストンロッド(14)の旋回可能な結合のためにカップリング(62)を有しており、レバー(61)がカップリング(62)に対して間隔をおいて旋回可能に支承されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の工具。
【請求項12】
押出ピン(65)が作動部材(60)の伝動装置によって駆動可能である、請求項1から11までのいずれか1項記載の工具。
【請求項13】
押出ピン(65)が作動部材(60)の扁平な伝動装置によって駆動されている、請求項1から12までのいずれか1項記載の工具。
【請求項14】
前記扁平な伝動装置が平行四辺形4リンクシステムである、請求項12記載の工具。
【請求項15】
押出ピン(65)が、湾曲可能な張りのないエレメント(66.7)、特にチェーンに連結されていて、前記湾曲可能な張りのないエレメント(66.7)がガイド、特に管(66.2)において外方に屈曲しないようにガイドされている、請求項1から14までのいずれか1項記載の工具。
【請求項16】
押出ピン(65)が、チェーンとして形成された湾曲可能な張りのないエレメント(66.7)の1つのチェーンリンクによって形成されている、請求項15記載の工具。
【請求項17】
押出ピン(65)が流体(66.3)によって移動可能である、請求項1から16までのいずれか1項記載の工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−285827(P2009−285827A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122645(P2009−122645)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(301064954)ヴィルトゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (25)
【氏名又は名称原語表記】Wirtgen GmbH
【住所又は居所原語表記】Reinhard−Wirtgen−Strasse 2, D−53578 Windhagen, Germany
【Fターム(参考)】