説明

チタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液及びその製造方法

【課題】バインダを用いずに緻密で欠陥の少ない膜厚1μm以下のチタン酸バリウム薄膜を形成することが可能であり、分散安定性が高く、分散剤が不要なチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液及びその製造方法を提供する。
【解決手段】チタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液は、ゾル−ゲル法により合成したチタン酸バリウムのナノ粒子が分散媒中に分散しており、(1)ゼータ電位が40mV以上、(2)水分含量が3%以下、(3)導電率が30μS・cm−1以下、(4)ナノ粒子の表面に吸着された溶媒と前記分散媒との溶解度パラメータの差の絶対値が0〜2(cal・cm−31/2、及び(5)前記ナノ粒子の濃度が1重量%以上という条件を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液及びその製造方法に係り、更に詳細には、バインダを用いずに緻密で欠陥の少ない膜厚1μm以下のチタン酸バリウム薄膜を形成することが可能であり、分散安定性が高く、分散剤が不要なチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子情報機器の小型化及び通信速度の高速化に伴い、プリント配線基板上への高密度実装及び信号の高速化に起因するノイズ対策の必要性が増大している。これらの課題への対応策として、基板上に実装する部品点数の削減及び配線長の短縮化等の効果が期待される、コンデンサ等の基板への内蔵化が検討されている。電子情報機器の小型化に対応可能な基板内蔵型の薄膜コンデンサを実現するためには、高い誘電率を有し、緻密で欠陥の少ない膜厚1μm以下の薄膜が形成可能で、かつ常圧下200℃以下の低温で形成可能である誘電体薄膜が必要である。
【0003】
高い誘電率を有するセラミックス材料としてチタン酸バリウムが広く用いられている。現在量産されているプリント基板内蔵型コンデンサ用誘電体フィルムは、粒径1μm程度のチタン酸バリウム微粒子と有機高分子バインダとから構成されているが、膜厚が50μm程度と大きく、容量密度が小さいため、基板内蔵型コンデンサ用誘電体薄膜にはさらなる高容量化が求められている。そのためには、膜厚を10μm以下、更には1μm以下と限りなく薄くする必要があり、かかる膜厚を実現するためには粒径100nm以下のチタン酸バリウムのナノ粒子を用意し、これを溶液中へ安定に分散させる方法が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、疎水性液体である分散媒、複合金属アルコキシド溶液からなる原料の加水分解に必要な水量の0.95倍以上3倍以下水、及び界面活性剤を含むマイクロエマルジョン中での原料の加水分解反応によって作製される、金属酸化物超微粒子分散溶液が提案されている。
【0005】
特許文献2には、疎水性液体である分散媒、水及び界面活性剤を含むマイクロエマルジョン中での加水分解反応によって作製される、MTiOで表されるペロブスカイト型酸化物等のチタン系複合金属酸化物超微粒子分散溶液に、同種のチタン系複合金属酸化物用の有機金属化合物溶液を液中の複合金属酸化物換算で1:1〜1:30の範囲の割合で混合してなることを特徴とする金属酸化物超微粒子分散溶液が提案されている。
【0006】
特許文献3には、Li、Na、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも一種の金属Aを含む金属水酸化物と、Ti、Zr、Hf、TaおよびNbから選ばれる少なくとも一種の金属Bを含む、金属アルコキシドおよび金属錯体の少なくとも一方とを有機溶媒に溶解させて溶液を調整する工程(a)、及び前記工程(a)で調製した溶液に水を添加し、該溶液中の前駆体を加水分解・縮合して結晶粒子を得る工程(b)とを有する、ABOx型の結晶構造を有するペロブスカイト型結晶粒子の製造結晶粒子を製造する方法が提案されている。
【0007】
特許文献4には、一次粒子の平均一次粒子径が10以上20nm未満であって球形度が1.00〜1.18であり、平均一次粒子径と平均二次粒子径との比が0.7〜6.0であることを特徴とするチタン酸バリウム微粒子粉末及びその分散体が提案されている。
【0008】
また、特許文献5には、平均一次粒子径が100nm以下である無機粒子粉末を分散媒体中に予備分散する第一の工程と、第一の工程で得られた無機粒子粉末を含む分散媒体をメディアと共に攪拌して分散する第二の工程と、第二の工程で得られた無機粒子粉末を含む分散媒体を後分散する第三の工程からなることを特徴とする無機粒子の分散体の製造法が提案されている。
【0009】
【特許文献1】特開2004−300013号公報
【特許文献2】特開2005−247632号公報
【特許文献3】特開2005−162582号公報
【特許文献4】特開2007−137759号公報
【特許文献5】特開2008−075020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1及び2記載の金属酸化物超微粒子分散溶液は、W/Oマイクロエマルジョンを利用して合成されている。このような合成方法を用いることにより、合成に要する水の量を大きく低減できるために、結晶性の高い粒子を合成すると同時に分散安定性の高い溶液を実現している。しかし、この方法では、粒子濃度が最大でも0.05mol/Lと低く、1μmの厚みの膜を作製するためには相当回繰り返してコーティングする必要があり、工業生産する上で問題がある。また特許文献3〜5には、各種金属酸化物微粒子の分散溶液に係る発明が開示されているが、必要に応じて界面活性剤などを添加してもよいという以外には、分散安定性を高めるための条件について何ら記載されていない。これは、高い分散性を示す条件が、粒子の製造方法、使用する溶媒等によって大きく変わるためである。
【0011】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、バインダを用いずに緻密で欠陥の少ない膜厚1μm以下のチタン酸バリウム薄膜を形成することが可能であり、分散安定性が高く、分散剤が不要なチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、ゾルゲル法によって合成したチタン酸バリウムのナノ粒子について、その分散安定性を向上させるために必要な条件、より具体的には、チタン酸バリウムのナノ粒子の溶液中での電位の状態、及び溶媒内のイオンや水分の量について鋭意検討を行った結果、それらを精密に制御することによって、様々な溶媒で高い分散安定性を示すチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液及びその製造方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
前記目的に沿う本発明の第1の態様は、ゾル−ゲル法により合成したチタン酸バリウムのナノ粒子を分散媒中に分散させたチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液であって、
(1)ゼータ電位が40mV以上であり、
(2)水分含量が3%以下であり、
(3)導電率が30μS・cm−1以下であり、
(4)前記ナノ粒子の表面に吸着された物質と前記分散媒との溶解度パラメータの差の絶対値が0〜2(cal・cm−31/2であり、
(5)前記ナノ粒子の濃度が1重量%以上であることを特徴とするチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液を提供することにより上記課題を解決するものである。
【0014】
上記の条件(1)を具備するようにゼータ電位を調節することにより、ナノ粒子の表面電荷によってナノ粒子の凝集を抑制することができる。また、上記の条件(2)及び(3)を具備するように水分及び電解質の含量を調節することにより、ナノ粒子表面の電気二重層の中和を抑制し、ファンデルワールス力によるナノ粒子の凝集を抑制することができる。更に、上記の条件(4)を満たすような分散媒を選択することにより、ナノ粒子が十分に溶媒和され、分散媒への分散安定性を向上させることができる。
【0015】
従来技術では、界面活性剤等の分散剤を用いずにナノ粒子を分散させるには、ナノ粒子の濃度を0.05mol/L以下(1重量%以下)にしなければならない。そのため、1μm程度の厚みの薄膜を形成するためには少なくとも数十回成膜を繰り返す必要がある。それに対し、本発明の第1の態様に係るチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液においては、チタン酸バリウムのナノ粒子の濃度を1重量%以上、より好ましくは0.5mol/L以上(10重量%以上)にまで高めても一次粒子が高い安定性で単分散した状態が実現でき、所望のチタン酸バリウム誘電体薄膜の厚みや作製方法に応じてナノ粒子の濃度を適宜変化させることができ、工業的にも有用である。
【0016】
本発明の第1の態様において、前記ナノ粒子の平均粒径が3nm〜100nmであることが好ましい。
平均粒径を100nm以下にすることにより、薄膜形成時におけるナノ粒子の充填率を増大させることができるため、緻密で容量密度の高いチタン酸バリウム薄膜を形成することができる。
【0017】
本発明の第1の態様において、前記ナノ粒子の二次粒子の平均粒径の該ナノ粒子の一次粒子の平均粒径に対する比が1.0〜5.0であることが好ましく、更には1.0〜1.3であることが好ましい。
ナノ粒子の分散性が高く、一次粒子の凝集が抑制されることにより、緻密なチタン酸バリウム薄膜を形成することができる。二次粒子の平均粒径が一次粒子の平均粒径の5.0倍以下であると、その効果は顕著となり、1.0に近づくにつれ、より効果的となる。
【0018】
本発明の第2の態様は、反応溶媒中で、ゾル−ゲル法によりチタン酸バリウムのナノ粒子を調製する工程Aと、前記ナノ粒子の表面に吸着した物質との溶解度パラメータの差の絶対値が0〜2(cal・cm−31/2である分散媒中に、前記反応溶媒で湿潤した状態で分散させ、下記の条件(1)〜(4)を具備するチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液を製造する工程Bとを有することを特徴とするチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液の製造方法を提供することにより上記課題を解決するものである。
(1)ゼータ電位が40mV以上である。
(2)水分含量が3%以下である。
(3)導電率が30μS・cm−1以下である。
(4)前記ナノ粒子の濃度が1重量%以上である。
【0019】
工程Aにおいて調製したチタン酸バリウムのナノ粒子を、反応溶液から取り出して乾燥させることなく湿潤した状態で分散媒中に分散させることにより、乾燥に伴う不可逆的なナノ粒子の凝集を抑制することができる。
【0020】
本発明の第2の態様において、前記工程Aが、バリウムアルコキシドとチタンアルコキシドとを、Ba/Ti比が1.00を超えないように前記反応溶媒に溶解し前駆体溶液を調製する工程Cと、前記前駆体溶液に加水後、30℃以下の温度で粒成長が終わるまでエージングし、結晶性チタン酸バリウムのナノ粒子を形成させる工程Dとを含んでいてもよい。
工程Cにおいて、Ba/Ti比が1を超えないようにすると、バリウムアルコキシドとチタンアルコキシドは、反応溶媒中でダブルアルコキシドを形成する。そのため、他の方法において見られるようなバリウムの反応溶媒中への溶出がなく(例えば、Materials Chemistry and Physics,80(2003),647−655,Effect of barium disslution on dispersing aqueous barium titanate suspensionを参照)、原料の調製にあたりバリウムを過剰にする必要がなくなると共に、炭酸バリウムの析出を抑制できる。
【0021】
更に、工程Dにおいて、前駆体溶液より形成されるチタン酸バリウムの結晶性ゲルを30℃以下でエージングすることにより、ナノ粒子中に存在するヒドロキシル基(OH基)の量を減少させることができるため、欠陥の少ないチタン酸バリウムのナノ粒子を得ることができる。また、30℃以下の温度で十分に結晶成長させることにより、高温で長時間エージングすること必要がなくなるため、製造工程に要する時間を短縮化できる。
【0022】
本発明の第2の態様において、前記ナノ粒子の平均粒径が3nm〜100nmであることが好ましい。
平均粒径を100nm以下にすることにより、薄膜形成時におけるナノ粒子の充填率を増大させることができるため、緻密で容量密度の高いチタン酸バリウム薄膜を形成することができる。
【0023】
本発明の第2の態様において、前記ナノ粒子の二次粒子の平均粒径の該ナノ粒子の一次粒子の平均粒径に対する比が1.0〜5.0であることが好ましく、更には1.0〜1.3であることが好ましい。
ナノ粒子の分散性が高く、一次粒子の凝集が抑制されることにより、緻密なチタン酸バリウム薄膜を形成することができる。二次粒子の平均粒径が一次粒子の平均粒径の5.0倍以下であると、その効果は顕著となり、1.0に近づくにつれ、より効果的となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、バインダを用いずに、緻密で欠陥の少ない膜厚1μm以下のチタン酸バリウム薄膜を形成することが可能であり、分散安定性が高く、分散剤が不要なチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液及びその製造方法が提供される。本発明により提供されるチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液は、チタン酸バリウムのナノ粒子の一次粒子が1重量%以上の高い濃度で分散しているため、従来よりも少ない塗布回数で、緻密かつ欠陥のないチタン酸バリウム薄膜が形成可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
続いて、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
本発明の一実施の形態に係るチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液は、反応溶媒中で、ゾル−ゲル法によりチタン酸バリウムのナノ粒子を調製する工程Aと、得られたチタン酸バリウムのナノ粒子を、反応溶媒との溶解度パラメータの差の絶対値が0〜2(cal・cm−31/2である分散媒中に反応溶媒で湿潤した状態で分散させ、チタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液を製造する工程Bとを有する方法により製造される。
【0026】
また、ゾル−ゲル法によりチタン酸バリウムのナノ粒子を調製する工程Aは、バリウムアルコキシドとチタンアルコキシドとをBa/Ti比が1.00を超えないように反応溶媒に溶解し前駆体溶液を調製する工程Cと、前駆体溶液に加水後、30℃以下の温度で粒成長が終わるまでエージングし、結晶性チタン酸バリウムのナノ粒子を形成させる工程Dとを含んでいる。
【0027】
以下、チタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液の製造方法について説明する。
チタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液の製造方法において、まず、バリウムアルコキシドとチタンアルコキシドとをBa/Ti比が1.00を超えないように反応溶媒に溶解し前駆体溶液を調製する(工程C)。
【0028】
使用することができるバリウムアルコキシドは、一般式Ba(ORで表される化合物であり、ここで、Rは、n=1〜10の−C2n+1、−CH(CH、−COCH、−COC、−CHOCH、−CHOC及び−COCOCから選ばれた1種又は2種以上の基を表す。バリウムアルコキシドの具体例としては、バリウムエトキシド(R=C)、バリウムイソプロポキシド(R=CH(CH)等が挙げられる。また、はじめからアルコキシドである必要はなく、金属バリウム、塩化バリウム、酸化バリウム、硝酸バリウム、水酸化バリウム等を反応溶媒に溶解した後アルコキシドに転化してもよい。
【0029】
使用することができるチタンアルコキシドは、一般式Ti(ORで表される化合物であり、ここで、Rは、n=1〜10の−C2n+1、−CH(CH、−COCH、−COC、−CHOCH、−CHOC及び−COCOCから選ばれた1種又は2種以上の基を表す。チタンアルコキシドの具体例としては、チタンエトキシド(R=C)、チタンイソプロポキシド(R=CH(CH)等が挙げられる。また、はじめからアルコキシドである必要はなく、金属チタン、塩化チタン、シュウ酸チタン、水酸化チタン等を反応溶媒に溶解した後アルコキシドに転化してもよい。
【0030】
前駆体溶液に加えるバリウムアルコキシドのチタンアルコキシドに対するモル比は、1.00以下である。このように前駆体溶液に加えるBa/Ti比が1.00を超えると粒子表面に炭酸バリウムが析出する。また、Ba/Ti比が0.90となった場合でも化学量論の結晶性チタン酸バリウムのナノ粒子が得られる。これは、粒子サイズがナノサイズ化したことにより、粒子重量あたりの表面積(比表面積)が著しく増大し、粒子最表面はTiリッチになるが、結晶構造としてはチタン酸バリウムになる。しかしながら1.00よりも小さくなるとナノ粒子同士が凝集するため、Ba/Ti比は好ましくは0.95〜1.00がよく、更には0.99〜1.00がよい。
【0031】
前駆体溶液におけるバリウムアルコキシド及びチタンアルコキシドの濃度には特に制限は無いが、作業効率上0.5mol/L以上である方が好ましく、1mol/L以上であることがより好ましい。0.5mol/L未満であるとチタン酸バリウムのナノ粒子の生成に時間がかかり、作業効率上不利となる。
【0032】
前駆体溶液の調製に使用する溶媒としては、バリウムアルコキシド及びチタンアルコキシドを上記の濃度で溶解することができる任意の溶媒を使用することができるが、使用するバリウムアルコキシド及びチタンアルコキシドの種類及び濃度並びに工程Bにおいて使用する分散媒の種類等に応じて適宜選択して用いることができるが、具体例としては、アルコール系(例えば、メタノール、エタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−プロパノール等)
、ケトン系(メチルエチルケトン、アセチルアセトン(ペンタン−2,4−ジオン)、アセトン等)等、及びこれらのうち任意の2種類以上を任意の割合で混合した混合溶媒等の有機溶媒が挙げられる。
【0033】
次いで、このようにして調製した前駆体溶液に前駆体溶液に加水後、30℃以下の温度で粒成長が終わるまでエージングし、結晶性チタン酸バリウムのナノ粒子を形成させる(工程D)。
前駆体溶液に加水すると、バリウムアルコキシド及びチタンアルコキシドの加水分解及び重縮合反応が進行し、チタン酸バリウムの結晶性ゲルが生成する。
【0034】
加水分解のために使用される水は、大気中の水分又は加湿した反応雰囲気に含まれる水蒸気という形で前駆体溶液に添加してもよいが、添加量を制御するために、一定量の液体の水の形で添加してもよく、水を水溶性の溶媒に溶解した溶液として添加してもよい。必要に応じて、無機酸、有機酸、水酸化物、有機アミン類等の酸又はアルカリの水溶液として添加してもよい。ただし、前駆体溶液中の電解質が高くなりすぎると、生成するナノ粒子の表面に形成される電気二重層が中和される結果、後述するエージングの際にナノ粒子の凝集が起こりやすくなるため、酸及び塩基の添加量を不必要に多くしないことが好ましい。
【0035】
水の添加方法は特に制限されないが、前駆体溶液中の水の濃度分布が均一になるように、前駆体溶液を撹拌しながら添加するのが好ましい。水の濃度分布が不均一になると、加水分解及び重縮合反応が局所的に進行するため、得られるナノ粒子の粒径が不均一になり易くなると共に、一次粒子の凝集が起こりやすくなるおそれもある。
【0036】
水の添加量は、前駆体溶液中の金属アルコキシドのモル数に対して1〜80倍であることが好ましい。添加量が前駆体溶液中のバリウムアルコキシド及びチタンアルコキシドのモル数に対して1倍を下回ると加水分解及び重縮合反応が進行しにくくなる。また、80倍を超えてもエージング条件を最適化すれば結晶化するが、加水分解及び重縮合反応速度が大きくなりすぎたり、局所的に進行することにより得られるナノ粒子の粒径が不均一になり易くなったりすると共に、一次粒子の凝集が起こりやすくなるおそれがある。
【0037】
溶液の安定性の観点等から、前駆体溶液に公知のキレート剤を添加してもよく、或いは予めキレートが配位している金属アルコキシドを用いてもよい。キレートとしては、例えば、アセチルアセトネート(ペンタンジオネート)、エチルアセトネート(ヘキサンジオネート)、プロピルアセトアセトネート(ヘプタンジオネート)、テトラメチルヘプタンジオネート、ベンゾインアセトネート等が挙げられる。
【0038】
加水を行う温度は、加水分解及び重縮合反応により、チタン酸バリウムの結晶核の生成及びナノ粒子の成長が空間的に均一に進行するように、前駆体溶液の濃度、水の添加量及び使用する反応溶媒等に応じて適宜決定される。例えば、高濃度の前駆体溶液を使用する場合等において、室温では加水分解及び重縮合反応が迅速に進行しすぎる場合には、前駆体溶液を冷却した状態で加水を行うことが好ましい。冷却温度は、例えば、−30℃〜10℃である。冷却温度があまり低いと、添加した水が凍結するおそれがある。
【0039】
加水後エージングを行うことにより、生成したゲルからのシネレシス(離液)により結晶性ナノ粒子が生成すると共に、ナノ粒子内に存在するヒドロキシル基の量が減少し、緻密で欠陥のないチタン酸バリウム薄膜を形成可能なナノ粒子を得ることができる。エージング温度が高くなるとシネレシスよりも結晶性ナノ粒子の生成が速く得られるため、粒子内部にヒドロキシル基が取り残される。このため、エージング温度は30℃以下、好ましくは室温(25℃)以下であり、エージング時間は、前駆体溶液の濃度、水の添加量及び使用する反応溶媒等に応じて適宜決定され、例えば、1〜480時間である。また、30℃以下の温度でヒドロキシル基の量が少ない結晶性のナノ粒子を得る最低限の時間エージングした後は、高温でエージングしてもヒドロキシル基がナノ粒子内部に生成することがなく、短時間でのナノ粒子の製造が可能になる。
【0040】
その後、上記のようにして得られたチタン酸バリウムのナノ粒子を、完全に乾燥させずに反応溶媒で湿潤した状態で、反応溶媒等のナノ粒子の表面に吸着された物質との溶解度パラメータの差の絶対値が0〜2(cal・cm−31/2である分散媒中に分散させ、チタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液を製造する(工程B)。
【0041】
分散媒は、ナノ粒子の表面に吸着された物質との溶解度パラメータの差の絶対値が0〜2(cal・cm−31/2である任意の溶媒を使用することができ、反応溶媒と同一の溶媒であっても異なる溶媒であってもよい。分散媒の沸点が100℃以下の場合には、湿潤状態のまま分散媒で繰り返し洗浄することにより含水率を低減できる。分散媒が100℃以上の場合には、湿潤状態のまま分散媒を加えてエバポレーションすることにより含水率を低減できる。また、任意の2種類以上の溶媒を任意の割合で混合した混合溶媒であってもよい。使用される分散媒の量は、チタン酸バリウムのナノ粒子の濃度が1重量%以上となるよう、すなわち、チタン酸バリウムのナノ粒子1重量部に対し100重量部以下となる任意の量であり、分散安定性が確保されるよう、ナノ粒子の平均粒径、使用される分散媒の種類、及び使用目的等に応じて適宜調節される。
【0042】
分散媒の溶解度パラメータは、Hildebrandの溶解度パラメータ(δ)とも呼ばれる値であり、下式で定義される。
【0043】
【数1】

【0044】
なお、式中、ΔHは分散媒の蒸発熱、Rは理想気体の気体定数、Tは温度、Vはモル体積をそれぞれ表す。
【0045】
分散媒の溶解度パラメータと反応溶媒との溶解度パラメータの差の絶対値が0〜2(cal・cm−31/2とすることにより、分散媒中でもナノ粒子が十分に溶媒和された状態を確保することができるため、ナノ粒子の分散媒安定性を向上させつつ、その凝集を抑制することができる。
【0046】
ナノ粒子の分散媒中への分散は、任意の公知の方法を用いて行うことができる。ナノ粒子がスラリー状となっている場合や、分散が困難である場合には、機械的粉砕、或いは超音波照射を行いながら分散媒中に分散させる。
このようにして得られるチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液には、必要に応じて、ナノ粒子の分散媒安定性を向上させるための界面活性剤等の添加剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、カチオン性、アニオン性、及びノニオン性の任意の界面活性剤を使用することができるが、カチオン性界面活性剤の場合、ナノ粒子表面の電気二重層を中和し、ゼータ電位を低下させることによる分散安定性の低下を防ぐために、添加量を多くしすぎないよう注意が必要である。
【0047】
このようにして得られるチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液は、40mV以上のゼータ電位を有している。ゼータ電位が40mVよりも小さくなると、ナノ粒子間の静電反発が減少し、ファンデルワールス力による凝集が起こりやすくなる。ゼータ電位の大きさは、例えば、分散媒の種類を適宜選択することにより調節することができる。ゼータ電位を40mV以上にするのに好適な溶媒の例としては、2−メトキシエタノール(エチレングリコールモノメチルエーテル)、2−エトキシエタノール(エチレングリコールモノエチルエーテル、ジグライム)等が挙げられる。ゼータ電位の大きさは、任意の公知の方法、例えば、電気泳動法、沈降電位法等を用いて測定することができる。ただし、電気泳動法の場合、いくつかの電界強度で測定した電気泳動速度の傾きから求めなければ実際のゼータ電位よりも低い結果となるため、この傾きから求めたゼータ電位が40mV以上である必要がある。
【0048】
チタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液は、30μS・cm−1以下の導電率を有している。導電率が30μS・cm−1を上回ると、分散溶液に含まれる電解質により電気二重層が中和され、ナノ粒子の凝集が起こりやすくなるため、導電率としては低いほうがよい。導電率は、電気抵抗測定法等の任意の公知の方法を用いて測定することができる。
【0049】
チタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液の水分含量は3%以下である。水分含量が3%を上回ると、導電率が増大し、電気二重層の中和によるナノ粒子の凝集が起こりやすくなる。水分含量は、カールフィッシャー法等の任意の公知の方法を用いて測定することができる。
【0050】
チタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液は、1重量%以上のチタン酸バリウムのナノ粒子を含んでいる。チタン酸バリウムのナノ粒子濃度の上限は10重量%であり、これを上回ると一次粒子の凝集が起こりやすくなる。好ましいチタン酸バリウムのナノ粒子濃度は、4〜8重量%である。
【0051】
チタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液中のナノ粒子の平均一次粒子径は、3〜100nmであり、好ましくは10〜50nmであり、例えば、20nm程度である。ナノ粒子の平均一次粒子径が100nmを上回ると、1μm以下の厚みの薄膜を形成した際に絶縁不良の原因になりやすくなり、3nmを下回ると分散媒中に安定に分散した状態を保持することが困難となる。
【0052】
また、ナノ粒子の平均二次粒子径は、平均一次粒子径の5.0倍以下、好ましくは1.3倍以下、更には1.2倍以下、更には1.1倍以下であり、最も好ましくは平均一次粒子径に等しい。緻密で欠陥の少ないチタン酸バリウム薄膜を形成するためには、チタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液において、ナノ粒子が上記の平均二次粒子径を有するように均一かつ安定に分散していることが重要である。本実施の形態において示したような条件及び方法を用いて、前駆体溶液の調製、加水分解及び重縮合反応、ナノ粒子のエージング、分散媒の選択及びナノ粒子の分散を行うことにより、前記のゼータ電位、導電率、水分含量、Ba/Ti比、及びナノ粒子の濃度の条件を具備するチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液を製造することができる。なお、チタン酸バリウムのナノ粒子の平均一次粒子径は、透過電子顕微鏡(TEM)による直接観察、或いはX線回折で測定される回折パターンの半価幅等の任意の公知の方法から測定できる。また、平均二次粒子径は、動的光散乱法等の任意の公知の方法を用いて測定することができる。
【0053】
チタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液を基板上に塗布し、チタン酸バリウムのナノ粒子被膜層を形成後焼結することにより、チタン酸バリウム薄膜を形成することができる。基板上へのチタン酸バリウムのナノ粒子被膜層の形成は、例えば、スピンコーティング法、ディップコーティング法、電気泳動電着法、スプレーコーティング、ダイコーティング等の被膜層形成方法により行なうことができる。基板上に形成した被膜層は、例えば、酸素ガス気流中で70〜200℃で0.5〜5時間放置することにより乾燥させ、被膜層中の溶媒を除去し、次いで基板と共に低温で焼成することにより、基板上にチタン酸バリウムの結晶性薄膜層を形成することができる。
【0054】
チタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液から基板上に作製した被膜層を焼成し基板上に薄膜を形成する場合、乾燥した被膜層中の有機物質を除去し、結晶粒子を焼結させるのに必要なエネルギーを焼成時に与えるだけで、基板上に結晶性薄膜を形成させることができる。
【実施例】
【0055】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
ナノ粒子の平均一次粒子径(結晶子径:D)は、X線回折(Panalytical製X’Pert PRO)を用いて測定した(110)面回折ピークの半価幅から、シェラーの式により算出した。ナノ粒子分散溶液のナノ粒子の平均二次粒子径(凝集粒子径:D)は、Malvern製Zetasizer NANO−ZSを用いた動的光散乱(DLS)法によって測定した。
【0056】
実施例1:チタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液の製造
バリウムエトキシド及びチタンイソプロポキシドを乾燥した2−メトキシエタノールに溶解し、前駆体溶液(バリウムエトキシド及びチタンイソプロポキシド濃度は共に1.0mol/Lであった)を調製した。前駆体溶液を−30℃で撹拌しながら水を加え、撹拌しながら30℃で12時間エージングを行った。反応溶媒である2−メトキシエタノールの大部分をデカンテーションにより除去し、生成したチタン酸バリウムのナノ粒子を、湿潤した状態のまま、分散媒である2−メトキシエタノール中に加え、超音波照射及び撹拌により分散させ、チタン酸バリウムのナノ粒子濃度0.2mol/L(4.6重量%)のチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液を製造した。
【0057】
このようにして得られたチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液の動的光散乱(DLS)測定より、Dは19nm、Dは23nm、両者の比(D/D)は1.2であることがわかった。また、電気泳動法によりゼータ電位を測定したところ、58.3mVという値が得られた。
【0058】
実施例2:分散媒の影響
2−メトキシエタノールの代わりに、溶解度パラメータ(SP)の異なる数種の溶媒を用いてチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液を製造し、ゼータ電位及びDの測定を行った。結果は下記の表1に示すとおりであった。
【0059】
【表1】

【0060】
ゼータ電位が58.3mVであり、反応溶媒と同一であるため、2−メトキシエタノールとのSPの差(ΔSP)の絶対値(|ΔSP|)が0(cal・cm−31/2である2−メトキシエタノールを分散媒として用いた場合には、D/Dが約1.2と、一次粒子の凝集が抑制されており、良好な分散製を示すことがわかった。一方、|ΔSP|が2(cal・cm−31/2よりも大きくゼータ電位が40mV未満であるメタノールの場合には、D/Dが7以上と大きな値を示していることがわかる。また、溶解度パラメータの差及びゼータ電位のいずれか一方が条件を満足していない、2−メトキシエタノール以外の他の溶媒についても、D/Dは5.0よりも大きな値を示した。
【0061】
また、ナノ粒子分散溶液の分散安定性と|ΔSP|との関係を検討するために、ナノ粒子分散調製後20時間経過時のDを測定した。結果は下記の表2に示すとおりであった。
【0062】
【表2】

【0063】
|ΔSP|が2(cal・cm−31/2以下である場合には、ナノ粒子分散溶液調製後20時間経過してもD/Dが3以下であり、良好な分散安定性を示すが、|ΔSP|が2(cal・cm−31/2を超えるメタノールについては、分散安定性が極端に低下していることがわかる。
【0064】
実施例3:導電率の影響
分散媒として2−メトキシエタノールを用い、異なる濃度の電解質を添加し導電率を変化させた4種類のチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液(導電率3.75μS・cm−1、6.89μS・cm−1、25.9μS・cm−1、153μS・cm−1)を製造し、平均二次粒子径(D)の経時変化を測定した。結果は図1に示すとおりであった。導電率が30μS・cm−1以下のチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液については、12時間以上放置しても有意なDの変化が観測されず、特に導電率3.75μS・cm−1のナノ粒子分散溶液については1カ月放置後も有意なDの変化が観測されなかったのに対し、導電率が153μS・cm−1のチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液は、10分経過後に平均二次粒子径が急速に増大し、1.5時間経過後にはD/Dが約25に達した。
【0065】
実施例4:ゼータ電位の影響
実施例1において製造したチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液に種々の濃度のポリアクリル酸(PAA)を添加し、ゼータ電位を低下させた場合における、平均粒子径の変化を測定した。結果は図2に示すとおりであった。チタン酸バリウムのナノ粒子の3重量%のPAAを添加し、ゼータ電位を10mVまで低下させると、Dが著しく増大し、約850nm(平均一次粒子径の40倍以上)という測定値が得られた。この結果より、ゼータ電位を40mV未満に低下させることにより、チタン酸バリウムのナノ粒子の分散安定性が大幅に低下していることがわかる。
【0066】
実施例5:水分含量の影響
ナノ粒子分散溶液の水分含量と分散安定性との関係を検討するために、ナノ粒子を2−メトキシエタノール中に分散後、ロータリーエバポレータにより水分を除去した場合(エバポレーション)と、エバポレーション後水を添加した場合とについてDを測定した。結果は図3に示すとおりであった。水分含量が2%以下の場合には、ナノ粒子分散溶液調製直後のD/Dは2以下であり、経時的な増大も観測されなかった。一方、水分含量が4%の場合には、ナノ粒子分散溶液調製直後のD/Dは3であったが、経時的に増大が進んだ。これらの結果から、水分含量の増大に伴い分散安定性が低下していることがわかる。
【0067】
実施例6:分散性と製膜性との関係
平均二次粒子径の異なる(20nm及び100nm:それぞれ、D/D値1.0及び5.0に相当)2種類のチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液(平均一次粒子径(D)20nm、濃度0.2mol/L)を基板上に塗布し、乾燥後焼結して作製したチタン酸バリウム薄膜について、走査型電子顕微鏡(SEM)写真の撮影を行った。加速電圧は5kVであり、薄膜表面の写真は、測定倍率1,000倍及び100,000倍で、断面写真は倍率30,000倍で撮影を行った。結果を図4〜図9に示す。
【0068】
図4〜図6より明らかなように、平均一次粒子径20nm、平均二次粒子径20nmのチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液より作製したチタン酸バリウム薄膜は、膜厚600nm程度の、緻密かつ均一な薄膜であることがわかる。一方、図7〜図9より明らかなように、平均二次粒子径100nmのチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液より作製したチタン酸バリウム薄膜は、粒径が60〜200nm程度の粒子が不均一に分布しており、薄膜の緻密さ及び均一性において劣っていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係るチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液及びその製造方法は、基板内蔵型コンデンサ用誘電体薄膜を始めとするチタン酸バリウム薄膜の形成及びその出発物質の製造に好適に用いることができ、電子情報機器の製造等の技術分野において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】ナノ粒子分散溶液の導電率と平均二次粒子径(D)の経時変化との関係を示すグラフである。
【図2】ナノ粒子分散溶液へのPAAの添加量と、ゼータ電位及びDとの関係を示すグラフである。
【図3】ナノ粒子分散溶液の水分含量とDとの関係を示すグラフである。
【図4】平均一次粒子径20nm、平均二次粒子径20nmのチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液より作製したチタン酸バリウム薄膜表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(倍率1,000倍)である。
【図5】平均一次粒子径20nm、平均二次粒子径20nmのチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液より作製したチタン酸バリウム薄膜表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(倍率100,000倍)である。
【図6】平均一次粒子径20nm、平均二次粒子径20nmのチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液より作製したチタン酸バリウム薄膜断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(倍率30,000倍)である。
【図7】平均一次粒子径20nm、平均二次粒子径100nmのチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液より作製したチタン酸バリウム薄膜表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(倍率1,000倍)である。
【図8】平均一次粒子径20nm、平均二次粒子径100nmのチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液より作製したチタン酸バリウム薄膜表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(倍率100,000倍)である。
【図9】平均一次粒子径20nm、平均二次粒子径100nmのチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液より作製したチタン酸バリウム薄膜断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(倍率30,000倍)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゾル−ゲル法により合成したチタン酸バリウムのナノ粒子を分散媒中に分散させたチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液であって、
(1)ゼータ電位が40mV以上であり、
(2)水分含量が3%以下であり、
(3)導電率が30μS・cm−1以下であり、
(4)前記ナノ粒子の表面に吸着された物質と前記分散媒との溶解度パラメータの差の絶対値が0〜2(cal・cm−31/2であり、
(5)前記ナノ粒子の濃度が1重量%以上であることを特徴とするチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液。
【請求項2】
前記ナノ粒子の平均粒径が3nm〜100nmであることを特徴とする請求項1記載のチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液。
【請求項3】
前記ナノ粒子の二次粒子の平均粒径の該ナノ粒子の一次粒子の平均粒径に対する比が1.0〜5.0であることを特徴とする請求項1及び2のいずれか1項記載のチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液。
【請求項4】
反応溶媒中で、ゾル−ゲル法によりチタン酸バリウムのナノ粒子を調製する工程Aと、
前記ナノ粒子の表面に吸着された物質との溶解度パラメータの差の絶対値が0〜2(cal・cm−31/2である分散媒中に、前記反応溶媒で湿潤した状態で分散させ、下記の条件(1)〜(4)を具備するチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液を製造する工程Bとを有することを特徴とするチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液の製造方法。
(1)ゼータ電位が40mV以上である。
(2)水分含量が3%以下である。
(3)導電率が30μS・cm−1以下である。
(4)前記ナノ粒子の濃度が1重量%以上である。
【請求項5】
前記工程Aが、バリウムアルコキシドとチタンアルコキシドとを、Ba/Ti比が1.00を超えないように前記反応溶媒に溶解し前駆体溶液を調製する工程Cと、
前記前駆体溶液に加水後、30℃以下の温度で粒成長が終わるまでエージングし、結晶性チタン酸バリウムのナノ粒子を形成させる工程Dとを含むことを特徴とする請求項4記載のチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液の製造方法。
【請求項6】
前記ナノ粒子の平均粒径が3nm〜100nmであることを特徴とする請求項4及び5のいずれか1項記載のチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液の製造方法。
【請求項7】
前記ナノ粒子の二次粒子の平均粒径の該ナノ粒子の一次粒子の平均粒径に対する比が1.0〜5.0であることを特徴とする請求項4から6のいずれか1項記載のチタン酸バリウムのナノ粒子分散溶液の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−64938(P2010−64938A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234586(P2008−234586)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年8月20日発行の「第61回コロイドおよび界面化学討論会講演要旨集」にて発表
【出願人】(591065549)福岡県 (121)
【Fターム(参考)】