説明

チップ形コンデンサ及びその製造方法

【課題】耐振動性が優れ、コストを削減でき、かつ半田付け品質を向上できるチップ形のコンデンサを提供する。
【解決手段】陽極及び陰極のリード線11、12が導出されるコンデンサ本体10と、コンデンサ本体10に装着されるとともにリード線11、12の端子部11a、12aを一面の基板実装面20aに配して回路基板上に載置される実装部20とを備え、端子部11a、12aが回路基板に半田付けされるチップ形コンデンサ1において、実装部20が有機金属錯体化合物を含む樹脂により形成され、基板実装面20a上にレーザ照射して金属を露出させた領域にメッキを施して形成される補助端子部21を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に面実装されるチップ形コンデンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図12、図13は従来のチップ形のコンデンサの正面図及び底面図を示している。コンデンサ1はコンデンサ本体10及び座板20を備えている。コンデンサ本体10は一端面の導出面10aから陽極のリード線11及び陰極のリード線12が導出される。
【0003】
座板20は樹脂成形品から成り、一面をコンデンサ本体10の導出面10aに接して他面に回路基板上に載置される基板実装面20aを形成する。座板20にはリード線11、12が挿通される挿通孔20bが設けられる。基板実装面20aには挿通孔20bに連続して溝部20cが凹設される。
【0004】
挿通孔20bに挿通されたリード線11、12は先端を折曲して端子部11a、12aが形成され、溝部20c内に端子部11a、12aが収納される。これにより、コンデンサ1は基板実装面20aの表面に端子部11a、12aが配され、面実装化したチップ形に形成される。
【0005】
そして、端子部11a、12aに半田が塗布され、240℃〜260℃の鉛フリーリフローを通して回路基板にコンデンサ1が実装される。座板20はリフロー時の耐熱性を必要とするため、ポリアミド等の耐熱性樹脂が用いられる。
【0006】
上記構成のコンデンサ1はリード線11、12の端子部11a、12aの半田付けによって回路基板に固定される。このため、振動が強く、約5Gを越える強い耐振動性が求められる車載等の用途ではリード線11、12が切断する場合がある。
【0007】
この問題を解決するために、座板20の基板実装面20aに補助端子部を設けたコンデンサ1が知られている。図14、図15はこの座板20の正面断面図及び底面図を示している。端子部11a、12a(図13参照)に加えて補助端子部21を回路基板に半田付けすることにより、コンデンサ1の耐振動性を向上することができる。
【0008】
補助端子部21は曲げ加工等により所定形状に加工された金属板22を座板20にインサート成形して形成される。金属板22をインサート成形することにより、金属板22の脱落を防止することができる。
【0009】
この時、補助端子部21と基板実装面20aとの同一面性(coplanarity)を確保する必要がある。このため、図16に示すように、複数の金属板22を枠体23aにより連結したフレーム23が形成される。そして、一点鎖線で示すように枠体23aの内側に樹脂を射出して座板20が成形され、枠体23aが除去される。
【0010】
また、特許文献1にはリード線に接続される補助端子部をメッキにより形成したコンデンサが開示される。補助端子部とリード線とは半田層によって導通して固着され、回路基板に半田付けされる。これにより、補助端子部の面積を広く確保してコンデンサの耐振動性を向上することができる
【0011】
メッキにより端子を形成する一般的な手順として、まず、樹脂成形された座板の表面がサンドブラストや薬液浸漬法によるエッチング等によって粗面化される。次に、座板を塩化錫や塩化パラジューム等を含む触媒付与液に浸漬して粗面化された表面に錯体を形成する。次に、硫酸銅や塩化銅等を含む無電解メッキ液に座板を浸漬して銅の下地層を析出させる。次に、座板を電気メッキ液に浸漬して下地層上に銅メッキ層を形成する。次に、銅メッキ層上に錫メッキ層を形成する
【0012】
次に、基板実装面をスクリーン印刷によりパターニングして補助端子部を形成する領域をレジストにより被覆する。次に、座板を所定の溶液に浸漬し、レジストにより被覆していない部分の余分な金属メッキ層を化学溶解する。次に、レジストを除去して金属メッキ層による補助端子部を露出させる。
【0013】
これにより、樹脂の表面を粗面化して金属メッキ層を形成することでメッキ層を樹脂の凹凸に機械的に絡め、高い密着力(アンカー効果)を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】実開平2−132926号(第5頁−第10頁、第1図)
【特許文献2】特開平9−293942号公報
【特許文献3】特許第3881338号公報
【特許文献4】特表2000−503817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記の補助端子部をインサート成形により形成したコンデンサによると、金属板22の材料として例えば、黄銅の基材に錫メッキ等を施した比較的高価な材料が使用される。また、複数の金属板22を連結したフレーム23を形成してインサート成形した後に枠体23aを廃棄するため、材料効率が10%にも満たないほど低くなる。また、フレーム23をベースとしてインサート成形すると1ショットで得られる座板20の数が数個〜10個程度になる。これにより、図14に示す金属板22のない座板20が1ショットで数百個成形できるのに比して、製造工数が大きくなる。
【0016】
また、金属板22の曲げ加工精度に限度があるため、基板実装面20aに対する補助端子部21の突出量D(図14参照)が10〜50μm程度にばらつく。これにより、回路基板上にクリーム半田を塗布してコンデンサ1を面実装する際に、コンデンサ1に傾きが生じたり、クリーム半田が薄い場合には半田付け不良が発生したりする原因となり得る。加えて、金型の磨耗等によって突出量Dがマイナス寸法になると基板実装面20a対して補助端子部21が凹むため、半田付けができない致命的な不良となる。従って、突出量Dを管理するために更に製造工数が大きくなる。
【0017】
その結果、補助端子部21をインサート成形により形成すると、コンデンサ1のコストが大きくなる問題があった。
【0018】
一方で、補助端子部をメッキにより形成したコンデンサによると、基板実装面に対する補助端子部の面積が小さいにも拘わらずメッキが広い面積に施された後に除去する工程を必要とする。また、座板の表面を粗面化した後に錯体を形成する工程やメッキの下地となる金属を析出させる工程を必要とする。これらにより、座板の製造工程の数が多く、製造工数が大きくなる。
【0019】
加えて、座板の材料として用いられる耐熱性樹脂は一般に耐薬品性や機械強度が高いため、表面の粗面化が殆ど不可能か極めて非能率的となる。その結果、補助端子部をメッキにより形成する場合も同様に、コンデンサのコストが大きくなる問題があった。
【0020】
本発明は、耐振動性が優れ、コストを削減でき、かつ半田付け品質を向上できるチップ形のコンデンサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために本発明は、陽極及び陰極のリード線が導出されるコンデンサ本体と、前記コンデンサ本体に装着されるとともに前記リード線の端子部を一面の基板実装面に配して回路基板上に載置される実装部とを備え、前記端子部が回路基板に半田付けされるチップ形コンデンサにおいて、前記実装部が有機金属錯体化合物を含む樹脂により形成され、前記基板実装面上にレーザ照射して金属を露出させた領域にメッキを施して形成される補助端子部を設けたことを特徴としている。
【0022】
この構成によると、コンデンサ本体から陽極のリード線及び陰極のリード線が導出され、実装部の基板実装面上に各リード線の端子部が配される。また、基板実装面上にはメッキを含む工程によって補助端子部が形成される。端子部及び補助端子部が回路基板に半田付けされてチップ形コンデンサが実装される。実装部は有機金属錯体化合物を含む樹脂により形成され、補助端子部は基板実装面上にレーザ照射して金属を露出させた領域にメッキを施して形成される。レーザ照射により有機金属錯体化合物が分解して金属が析出し、該金属が樹脂のスポンジ層に絡まって存在してメッキの下地となるためメッキの付着強度が向上する。補助端子部と端子部とは電気的に導通していてもよく、導通していなくてもよい。
【0023】
また本発明は、上記構成のチップ形コンデンサにおいて、陽極の前記リード線と陰極の前記リード線とが前記コンデンサ本体の同一の導出面から導出され、前記導出面と回路基板との間に配される座板により前記実装部を形成したことを特徴としている。この構成によると、コンデンサ本体の導出面から導出されるリード線が回路基板に対向する基板実装面上に導かれて端子部を形成する。
【0024】
また本発明は、上記構成のチップ形コンデンサにおいて、前記座板が前記リード線を挿通する挿通孔を有し、前記挿通孔は回路基板側を広げる方向に周壁を傾斜して形成されるとともに前記挿通孔内に前記補助端子部を延設したことを特徴としている。この構成によると、リード線が挿通孔を貫通して基板実装面上に導かれて端子部を形成する。挿通孔の周壁は傾斜するため容易にレーザ照射され、補助端子部が挿通孔内に延びて形成される。
【0025】
また本発明は、上記構成のチップ形コンデンサにおいて、前記実装部が前記コンデンサ本体の周面に配され、前記リード線の導出面に対して前記基板実装面が直交することを特徴としている。この構成によると、コンデンサ本体の周面に実装部が配され、導出面から導出されるリード線が折曲により基板実装面上に導かれて端子部を形成する。実装部はコンデンサ本体を覆う筒状でもよく、コンデンサ本体の一周面に対向する板状でもよい。
【0026】
また本発明は、上記構成のチップ形コンデンサにおいて、前記実装部が前記端子部を収納する溝部を有し、前記溝部は回路基板側を広げる方向に壁面を傾斜して形成されるとともに前記溝部内に前記補助端子部を延設したことを特徴としている。この構成によると、リード線の端子部が溝部内に収納され、基板実装面上に端子部が配置される。溝部の壁面は傾斜するため容易にレーザ照射され、補助端子部が溝部内に延びて形成される。
【0027】
また本発明は、上記構成のチップ形コンデンサにおいて、前記補助端子部は、陽極の前記リード線に導通する部分と陰極の前記リード線に導通する部分とが1mm以上離れて形成されることを特徴としている。この構成によると、補助端子部が1mm以上離れて分離し、それぞれ陽極のリード線及び陰極のリード線に導通する。
【0028】
また本発明は、上記構成のチップ形コンデンサにおいて、前記基板実装面の面積に対する前記補助端子部の面積を80%以下にしたことを特徴としている。
【0029】
また本発明は、上記構成のチップ形コンデンサにおいて、前記実装部のASTM D648に基づく荷重が0.455MPa時の熱変形温度を200℃以上にしたことを特徴としている。この構成によると、耐熱性樹脂により形成された実装部に対して容易にメッキを施すことができる。
【0030】
また本発明は、上記構成のチップ形コンデンサにおいて、前記実装部をポリフタルアミドに有機銅錯体化合物を混練して形成し、前記補助端子部が銅メッキを施されることを特徴としている。
【0031】
また本発明は、陽極及び陰極のリード線が導出されるコンデンサ本体と、前記コンデンサ本体に装着されるとともに前記リード線の端子部を一面の基板実装面に配して回路基板上に載置される実装部とを備え、前記端子部が回路基板に半田付けされるチップ形コンデンサの製造方法において、有機金属錯体化合物を含む樹脂により前記実装部を形成する実装部形成工程と、前記基板実装面の所定領域にレーザ照射して金属を露出させるレーザ照射工程と、前記レーザ照射工程で金属が露出した領域にメッキを施して回路基板に半田付けされる補助端子部を形成するメッキ工程とを備えたことを特徴としている。
【0032】
この構成によると、実装部形成工程で有機金属錯体化合物を含む樹脂の射出成形等により実装部が形成される。次に、レーザ照射工程で基板実装面の所定領域にレーザ照射して有機金属錯体化合物を分解し、金属を析出して露出させる。次に、メッキ工程でレーザ照射工程による金属の露出領域にメッキが施され、基板実装面上に補助端子部が形成される。コンデンサ本体のリード線は基板実装面上に端子部を形成し、端子部及び補助端子部が回路基板に半田付けされてチップ形コンデンサが実装される。
【発明の効果】
【0033】
本発明によると、基板実装面を有する実装部が有機金属錯体化合物を含む樹脂により形成され、補助端子部が基板実装面上にレーザ照射して金属を露出させた領域にメッキを施して形成される。従って、補助端子部を回路基板に半田付けしてチップ形コンデンサの耐振動性を向上できるとともに、実装部の製造工数を削減してチップ形コンデンサのコストを削減することができる。また、同一面性を改善できることからチップ形コンデンサの半田付け品質も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態のコンデンサを示す正面図
【図2】本発明の第1実施形態のコンデンサの座板を示す底面図
【図3】本発明の第1実施形態のコンデンサの座板を示す正面図
【図4】本発明の第1実施形態のコンデンサの製造工程を示す工程図
【図5】本発明の第1実施形態のコンデンサの実装部形成工程を示す平面図
【図6】本発明の第2実施形態のコンデンサの座板を示す底面図
【図7】本発明の第2実施形態のコンデンサの座板を示す正面図
【図8】本発明の第3実施形態のコンデンサの座板を示す底面図
【図9】本発明の第3実施形態のコンデンサの座板を示す正面図
【図10】本発明の第4実施形態のコンデンサを示す斜視図
【図11】本発明の第4実施形態のコンデンサを示す底面図
【図12】従来のコンデンサを示す正面図
【図13】従来のコンデンサを示す底面図
【図14】従来のコンデンサの座板を示す正面断面図
【図15】従来のコンデンサの座板を示す底面図
【図16】従来のコンデンサの座板の成形時の状態を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。説明の便宜上、前述の図12〜図15に示す従来例と同様の部分には同一の符号を付している。図1、図2は第1実施形態のチップ形のコンデンサの正面図及び底面図を示している。コンデンサ1はコンデンサ本体10及び座板20を備えている。
【0036】
コンデンサ本体10は有底筒状の金属ケース14内にコンデンサ素子13を収納し、金属ケース14の開放端がゴム等の封口部材15により封止される。コンデンサ素子13は陽極箔及び陰極箔(いずれも不図示)を電解紙等のセパレータ(不図示)を介して巻回して形成される。陽極箔はアルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン等の弁作用金属から成り、表面に誘電体皮膜が形成される。陰極箔はセパレータを介して陽極箔に対向し、アルミニウム等により形成される。
【0037】
また、陽極箔の誘電体皮膜の表面と陰極箔の表面の間のセパレータを含む空間には駆動用電解液が含浸されたり、導電性ポリマー層が形成されたりする。これらが実質的な陰極の機能を持つ。
【0038】
陽極箔及び陰極箔にはそれぞれリード線11、12が取り付けられている。リード線11、12は封口部材13を貫通し、封口部材13の表面により形成される導出面10aから導出される。これにより、コンデンサ本体10はリード線11、12が同一方向に延びた所謂リード線端子同一方向形(JISC5101−1形状記号04形)に形成される。
【0039】
座板20は樹脂成形品から成り、一面をコンデンサ本体10の導出面10aに接して他面に基板実装面20aを形成する。座板20の基板実装面20aには溝部20cが凹設され、溝部20c内にはリード線11、12が挿通される挿通孔20bが設けられる。
【0040】
挿通孔20bに挿通されたリード線11、12は先端を折曲して端子部11a、12aが形成され、溝部20c内に端子部11a、12aが収納される。これにより、コンデンサ1は基板実装面20aの表面に端子部11a、12aを配して面実装化されたチップ形(JISC5101−1形状記号32形)に形成される。
【0041】
座板20の基板実装面20a上には回路基板に半田付けされる補助端子部21が設けられる。補助端子部21は後述するようにメッキ工程を含む製造工程により形成される。本実施形態の一例を挙げれば、補助端子部21が端子部11aの両側部及び端子部12aの両側部の4箇所に離れて配置される。
【0042】
コンデンサ1は端子部11a、12a及び補助端子部21に半田が塗布され、240℃〜260℃の鉛フリーリフローを通して回路基板に実装される。座板20はコンデンサ本体10と回路基板との間に配されて回路基板上に載置される実装部を構成する。補助端子部21によって半田付け面積が大きくなるためコンデンサ1の耐振動性を高く維持することができる。
【0043】
尚、図3に示すように、座板20の四隅にはコンデンサ本体10に被嵌される支柱部24が一体に成形される。支柱部24によって座板20に対するコンデンサ本体10の揺れを抑制し、コンデンサ1の耐振動性を向上することができる。
【0044】
図4は補助端子部21を含む座板20の製造工程を示している。実装部形成工程はレーザ光で活性化する有機金属錯体化合物を含む熱可塑性高分子材料から成る耐熱性樹脂によって座板20を形成する。
【0045】
レーザ光で活性化する有機金属錯体化合物の一例として、Ferro GmbH社製の銅含有のSpinells PK 3095(特許文献3、特許文献4参照)等を用いることができる。
【0046】
リフロー半田付け時の温度が240℃〜260℃であるため、座板20はASTM規格 D648、荷重0.455MPaで定義した熱変形温度が200℃以上の耐熱性が要求される。このような耐熱性の樹脂として、芳香族ナイロン、ポリフタルアミド(PPA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド、ポリイミド、液晶ポリマー (LCP)等を用いることができる。
【0047】
また、座板20はUL規格のUL94(2.0mm厚)で測定したときにV0またはV1相当の難燃性を有するとより望ましい。更に、支柱部24は最小肉厚が例えば0.4mmでコンデンサ本体10を保持する必要があり、座板20には耐衝撃性が必要である。このため、ASTM規格 D4812の3.2mm幅、ノッチ無しの条件のアイゾット試験による衝撃強度が50J/m以上の樹脂が望ましい。
【0048】
具体的には、SABIC社製UX08325(ポリフタルアミド、熱変形温度:263℃、衝撃強度:351J/m)、SABIC社製EXTC0015(芳香族ナイロン、熱変形温度:261℃)、RTP社製4099X117359D(ポリフタルアミド、熱変形温度:279℃)、RTP社製299X113399H(ポリアミド、熱変形温度:249℃)、RTP社製3499-3X113393C(LCP、熱変形温度:274℃)、BASF社製ウルトラアミドT4381LDS(ポリアミド、熱変形温度:265℃)等の市販品を用いることができる。
【0049】
そして、耐熱性樹脂に予め数重量%の有機金属錯体化合物を混練して樹脂ペレット(顆粒)を形成し、射出成形によって座板20が形成される。この時、インサート成形を伴わないため、図5に示すように1ショットの成形で大量の座板20を形成することができる。
【0050】
次に、レーザ照射工程では座板20の基板実装面20a上の補助端子部21を形成する領域にレーザが照射される。これにより、該領域の樹脂表面が活性化され、約10μmの深さでスポンジ状に生地荒れして粗面化されたスポンジ層が形成される。同時に当該領域の有機金属錯体化合物が分子破壊され、スポンジ層に銅等の金属が析出して露出する。析出した金属は樹脂のスポンジ層に絡まった形で存在し、後述するメッキのシーズとなる。
【0051】
実際にコンデンサ本体10の外形をφ10mm、座板20の底面積を106mm2(10.3mm×10.3mm)とし、補助端子部21の面積を18.7mm2(1.3mm×3.6mm×4箇所)として波長1064nmのレーザ光を照射した際に座板20の1個当たりのレーザ照射時間は約0.3秒であった。これは、従来例のインサート成形による座板20の1個当たりの成形時間の約1/3になっている。また、多数個の座板20を予め整列させておくことで無人で加工することが可能である。
【0052】
次に、メッキ工程では座板20を化学還元メッキ液に浸漬する。化学還元メッキ液として例えば、硫酸銅等の銅塩と、塩化銅やホスフィン酸塩等の還元剤との溶液を用いることができる。これにより、レーザ照射工程で露出した金属をシーズとして銅等の金属メッキ層を形成し、座板20の基板実装面20a上に補助端子部21が形成される。
【0053】
尚、銅等の金属メッキ層の半田付け性の改善のため、置換メッキ法により錫無電解メッキ等による表面仕上げが行われる。この時、銅のメッキ厚は数μm、錫のメッキ厚は1μm以下でよい。これにより、基板実装面20aからの補助端子部21の突出量D(図3参照)は数μmとなり、補助端子部21と基板実装面20aとの同一面性を容易に確保することができる。従って、クリーム半田の厚みが多少薄い場合でも半田付け不良を防止することができる。
【0054】
メッキによって補助端子部21を形成するので一度に大量の処理が可能で作業能率がよい。また、レーザが照射された領域にのみ選択的にメッキが施されるので、メッキ液を削減することができる。また、従来例のようなレジストによるパターニングの工程、レジストを除去する工程、余分なメッキを除去する工程を省くことができる。従って、座板20及びコンデンサ1の製造工数を削減するとともに環境負荷も少なくすることができる。
【0055】
以下に、上記構成のコンデンサ1の振動試験を行った結果を示す。試験片としてφ10mm×10.5mmHのチップ形の3種のアルミ電解コンデンサ(300μF/35Vの電解液含浸アルミ電解コンデンサ、220μF/50Vの電解液含浸アルミ電解コンデンサ、33μF/63Vの導電性高分子陰極アルミ電解コンデンサ)を用いた。座板20は上記と同様に、底面積が106mm2(10.3mm×10.3mm)、補助端子部21の面積が18.7mm2である。
【0056】
また、厚さ1.6mmの回路基板にクリーム半田を用いてリフローを通してコンデンサ1を固着し、以下の試験条件で評価試験した。尚、該試験条件は車載用電子部品標準規格であるAEC−Q200の振動規格(カッコ内に示す)に準拠し、より厳しい条件になっている。
【0057】
試験条件:
振動周波数 5〜2000Hz (AEC−Q200:10〜2000Hz)
最大加速度 30G (AEC−Q200:5G)
最大振幅 5mm (AEC−Q200:1.5mm)
試験時間 X、Y、Z方向 各8h(AEC−Q200:各4h)
【0058】
その結果、3種の計36個の試験片に対して、半田外れ、端子折れ、電気特性不良等の不良は発生しなかった。従って、自動車のエンジンルーム内の装着にも十分実用しうることが確認された。
【0059】
また、コンデンサ1の密着力についても試験を行った。即ち、上記振動試験と同様に回路基板に実装したコンデンサ1を半田付け面に垂直な方向に8mm/分の速度で引き剥がして密着力を測定した。
【0060】
その結果、試験片10個の平均値で7.4kg(72.5N)という非常に強い密着力を観測した。φ10mmのコンデンサ1は座板20を含む自重が1.5グラム程度であるため、30Gの衝撃にも余裕を持って耐えることができる。この時、基板実装面20aに対する補助端子部21の面積比が約18%であり、メッキの面積1mm2あたりに換算すると密着力は3.9N/mm2となる。
【0061】
密着力の試験後に座板20の破壊箇所を観察したところ、補助端子部21の面積の約90%において樹脂(PPA)自身の破断面が観察された。従って、樹脂と金属メッキとの間の強い密着力が裏付けられ、これはレーザ照射による樹脂のスポンジ構造中に金属メッキ層が絡まっているためと考えられる。
【0062】
コンデンサ1の実用上の剥離強度は補助端子部21の半田付け面積に略比例するため、補助端子部21の面積を大きくするとより望ましい。この時、従来の金属板22(図14参照)を有するコンデンサ1との互換性のため、回路基板上のランドパターンにより許容される最大限の面積を取ることが好ましい。
【0063】
尚、補助端子部21はリード線11、12にそれぞれ導通してもよい。この時、陽極のリード線11に導通する部分と陰極のリード線12に導通する部分との距離B(図2参照)が1mm以上離れて形成される。これにより、陽極のリード線11と陰極のリード線12との短絡を確実に防止することができる。
【0064】
コンデンサ本体10がφ8mmの場合は座板20の面積が小さくなるが、同様の剥離強度を得るために補助端子部21の面積は上記と同程度必要である。このため、基板実装面20aの面積に対する補助端子部21の面積が大きくなる。更に、コンデンサ本体10の高さが高い場合は大きな剥離強度を必要とするため、基板実装面20aの面積に対する補助端子部21の面積をより大きくする必要がある。
【0065】
この時、基板実装面20aの面積に対して補助端子部21の面積が80%を超えると、陽極側の補助端子部21と陰極側の補助端子部21とを十分離す事が困難となる。このため、基板実装面20aの面積に対して補助端子部21の面積を80%以下にすると、短絡防止を容易に行うことができる。また、従来例のように基板実装面20aの全面にメッキを施した後に不要部分を除去する場合に比してコストを削減することができる。
【0066】
本実施形態によると、基板実装面20aを有する座板20(実装部)が有機金属錯体化合物を含む樹脂により形成され、補助端子部21が基板実装面20a上にレーザ照射して金属を露出させた領域にメッキを施して形成される。これにより、補助端子部21を回路基板に半田付けすることによってチップ形のコンデンサ1の耐振動性を向上することができる。
【0067】
また、レーザの照射によってスポンジ層に下地となる金属が露出するため、従来の錯体を形成する工程やメッキの下地層を形成する工程を省くことができる。また、レジストのパターニングの工程、レジストを除去する工程、不要なメッキ部分を除去する工程を省くことができる。従って、座板20の製造工数を削減し、チップ形のコンデンサ1のコストを削減することができる。加えて、補助端子部21と基板実装面20aとの同一面性を容易に確保することができ、半田付け不良を防止することができる。
【0068】
また、陽極のリード線11と陰極のリード線12とがコンデンサ本体10の同一の導出面10aから導出され、導出面10aと回路基板との間に配される座板20に端子部11a、12a及び補助端子部21を形成したので、低コストで耐振動性の高いコンデンサ1を容易に実現することができる。
【0069】
また、座板20のASTM D648に基づく荷重が0.455MPa時の熱変形温度を200℃以上にしたので、耐熱性が求められる座板20の用途に対しても実用に供することができる。
【0070】
次に、図6、図7は第2実施形態のコンデンサ1の座板20を示す底面図及び正面図を示している。説明の便宜上、前述の図1〜図5に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は補助端子部21が座板20の溝部20cの両側部に加えて溝部20c内にも形成される。その他の部分は第1実施形態と同一である。
【0071】
コンデンサ1をリフローに通す際に半田がリード線11、12の端子部11a、12aを伝って溝部20c内の補助端子部21に付着する。これにより、溝部20c内の補助端子部21とリード線11、12とが固着され、コンデンサ本体10と座板20との固着強度を向上することができる。従って、コンデンサ1の耐振動性をより向上することができる。
【0072】
次に、図8、図9は第3実施形態のコンデンサ1の座板20を示す底面図及び正面図を示している。説明の便宜上、前述の図1〜図5に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は補助端子部21が座板20の溝部20cの両側部に加えて挿通孔20b及び溝部20c内に延設される。その他の部分は第1実施形態と同一である。
【0073】
挿通孔20bは回路基板側を広げる方向に周壁20dを傾斜して形成され、溝部20cは回路基板側を広げる方向に壁面20eを傾斜して形成される。このため、レーザ照射工程で周壁20d及び壁面20eに容易にレーザを照射することができる。これにより、メッキ工程で周壁20d及び壁面20eに金属メッキ層が形成される。従って、補助端子部21を溝部20cの両側部に加えて挿通孔20b及び溝部20c内に連続して延設させることができる。尚、周壁20d及び壁面20eの傾斜角度を80゜以下にすると確実にレーザを照射できるためより望ましい。
【0074】
コンデンサ1をリフローに通す際に半田が周壁20d及び壁面20eを伝って挿通孔20b及び溝部20c内の補助端子部21に付着する。これにより、補助端子部21と回路基板との半田付け面積を大きくすることができる。
【0075】
本実施形態では補助端子部21の面積は30.2mm2(4.2mm×3.6mm×2箇所)となり、第1実施形態の約1.6倍となっている。また、基板基準面20aに対する補助端子部21の面積比は約28%である。従って、コンデンサ1の耐振動性をより向上することができる。
【0076】
本実施形態によると、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、挿通孔20bの周壁20dが傾斜して挿通孔20b内に補助端子部21を延設したので、補助端子部21の半田付け面積が増加してコンデンサ1の耐振動性をより向上することができる。同様に、溝部20cの壁面20eが傾斜して溝部20c内に補助端子部21を延設したので、補助端子部21の半田付け面積が増加してコンデンサ1の耐振動性をより向上することができる。
【0077】
次に、図10、図11は第4実施形態のコンデンサ1を示す斜視図及び底面図を示している。説明の便宜上、前述の図1〜図5に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態のコンデンサ1は第1実施形態と同様のコンデンサ本体10を備え、導出面10aに対して基板実装面20aが直交したJISC5101−1形状記号88形に形成される。
【0078】
コンデンサ本体10は導出面10aに対向する開口部25bを有した筒状の外装カバー25に周面を覆われる。導出面10aから導出されるリード線11、12は外装カバー25の周面に沿って折曲される。これにより、外装カバー25の一周面の端部に設けた溝部25c内に基板実装面25a上に端子部11a、12aが形成される。従って、外装カバー25はコンデンサ本体10の周面と回路基板との間に配されて回路基板上に載置される実装部を構成する。
【0079】
また、基板実装面25aには第1実施形態と同様の補助端子部21が形成される。補助端子部21を有した実装部を構成する外装カバー25は第1実施形態の座板20(図1参照)と同様に、有機金属錯体化合物を含む樹脂により形成される。また、補助端子部21は第1実施形態と同様にレーザ照射工程とメッキ工程により形成される。
【0080】
これにより、第1実施形態と同様に、基板実装面25aを有する外装カバー25(実装部)が有機金属錯体化合物を含む樹脂により形成され、補助端子部21が基板実装面25a上にレーザ照射して金属を露出させた領域にメッキを施して形成される。これにより、補助端子部21を回路基板に半田付けすることによってチップ形のコンデンサ1の耐振動性を向上することができる。
【0081】
また、従来の錯体を形成する工程、メッキの下地層を形成する工程、レジストのパターニングの工程、レジストを除去する工程、不要なメッキ部分を除去する工程が不要となる。従って、外装カバー25の製造工数を削減し、チップ形のコンデンサ1のコストを削減することができる。
【0082】
また、JISC5101−1形状記号88形状のチップ形のコンデンサはリフローを通したときリード線11、12に這い上がる半田の重さで端子部11a、12aが引っ張られる。これにより、端子部11a、12aと反対側の端部が持ち上がる現象(マンハッタン現象やツームストン現象と呼ばれる)が生じ、半田付け不良となる場合がある。しかしながら、補助端子部21を設けることにより、マンハッタン現象を防止することができる。
【0083】
尚、補助端子部21の面積を大きくすると、コンデンサ1の剥離強度を大きくすることができる。この時、上記と同様に、補助端子部21の陽極のリード線11に導通する部分と陰極のリード線12に導通する部分との距離Bを1mm以上離すとより望ましい。また、溝部25c内に補助端子部21を延設してもよい。
【0084】
本実施形態において、コンデンサ本体10を覆う筒状の外装カバー25に基板実装面25aを設けて実装部を形成しているが、板状の実装部をコンデンサ本体10の周面に配置して基板実装面25aを設けてもよい。
【0085】
第1〜第4実施形態において、座板20及び外装カバー25のメッキ工程を化学メッキにより行っているが、電気メッキ(電解メッキ)により行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によると、基板に面実装されるチップ形コンデンサに利用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 コンデンサ
10 コンデンサ本体
10a 導出面
11、12 リード線
11a、12a 端子部
13 コンデンサ素子
14 金属ケース
15 封口部材
20 座板
20a、25a 基板実装面
20b 挿通孔
20c、25c 溝部
21 補助端子部
22 金属板
23 フレーム
24 支柱部
25 外装カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極及び陰極のリード線が導出されるコンデンサ本体と、前記コンデンサ本体に装着されるとともに前記リード線の端子部を一面の基板実装面に配して回路基板上に載置される実装部とを備え、前記端子部が回路基板に半田付けされるチップ形コンデンサにおいて、前記実装部が有機金属錯体化合物を含む樹脂により形成され、前記基板実装面上にレーザ照射して金属を露出させた領域にメッキを施して形成される補助端子部を設けたことを特徴とするチップ形コンデンサ。
【請求項2】
陽極の前記リード線と陰極の前記リード線とが前記コンデンサ本体の同一の導出面から導出され、前記導出面と回路基板との間に配される座板により前記実装部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のチップ形コンデンサ。
【請求項3】
前記座板が前記リード線を挿通する挿通孔を有し、前記挿通孔は回路基板側を広げる方向に周壁を傾斜して形成されるとともに前記挿通孔内に前記補助端子部を延設したことを特徴とする請求項2に記載のチップ形コンデンサ。
【請求項4】
前記実装部が前記コンデンサ本体の周面に配され、前記リード線の導出面に対して前記基板実装面が直交することを特徴とする請求項1に記載のチップ形コンデンサ。
【請求項5】
前記実装部が前記端子部を収納する溝部を有し、前記溝部は回路基板側を広げる方向に壁面を傾斜して形成されるとともに前記溝部内に前記補助端子部を延設したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のチップ形コンデンサ。
【請求項6】
前記補助端子部は、陽極の前記リード線に導通する部分と陰極の前記リード線に導通する部分とが1mm以上離れて形成されることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のチップ形コンデンサ。
【請求項7】
前記基板実装面の面積に対する前記補助端子部の面積を80%以下にしたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のチップ形コンデンサ。
【請求項8】
前記実装部のASTM D648に基づく荷重が0.455MPa時の熱変形温度を200℃以上にしたことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載のチップ形コンデンサ。
【請求項9】
前記実装部をポリフタルアミドに有機銅錯体化合物を混練して形成し、前記補助端子部が銅メッキを施されることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載のチップ形コンデンサ。
【請求項10】
陽極及び陰極のリード線が導出されるコンデンサ本体と、前記コンデンサ本体に装着されるとともに前記リード線の端子部を一面の基板実装面に配して回路基板上に載置される実装部とを備え、前記端子部が回路基板に半田付けされるチップ形コンデンサの製造方法において、有機金属錯体化合物を含む樹脂により前記実装部を形成する実装部形成工程と、前記基板実装面の所定領域にレーザ照射して金属を露出させるレーザ照射工程と、前記レーザ照射工程で金属が露出した領域にメッキを施して回路基板に半田付けされる補助端子部を形成するメッキ工程とを備えたことを特徴とするチップ形コンデンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−138414(P2012−138414A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288402(P2010−288402)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(595122132)サン電子工業株式会社 (17)