説明

チャンネルへ適用するための水溶液及び適用方法

緩衝液及び有機シリコーン界面活性剤を含有する水溶液、並びに緩衝液及び有機シリコーン界面活性剤を含有する水溶液をチャンネルに適用する方法が提供される。水溶液は、緩衝液及び有機シリコーン界面活性剤を含み、また、ブロッキング剤を含んでいてもよい。本方法は、緩衝液及び有機シリコーン界面活性剤を含有する水溶液を用意し、該水溶液を疎水性表面を有するチャンネルに適用することを含む。有機シリコーン界面活性剤は、疎水性チャンネル上の溶液の表面張力を低下させるために使用される。有機シリコーン界面活性剤は、チャンネル表面と水溶液中の成分間の相互作用を防止するためのブロッキング剤と併用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝液及び有機シリコーン界面活性剤を含む水溶液、及び特に、疎水性表面上の気泡形成を防止又は最小化するために、緩衝液及び有機シリコーン界面活性剤を含む水溶液を、デバイス、特にマイクロ流体デバイスにおける疎水性表面を有するチャンネルに適用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤は、頭と呼ばれている親水性基、及び尾と呼ばれている疎水性基の両方の基を有する両親媒性化合物である。界面活性剤の親水性基及び疎水性基の組み合せは、この化合物が水及び有機溶媒の両者に可溶性であることを可能にする。両親媒性が一つの理由となって、有機シリコーン界面活性剤が良好な湿潤剤であることは知られており、このことは、界面活性剤が水性媒体に加えられた場合、疎水性表面上での水性媒体の広がりを改善することを意味する。
【0003】
免疫測定法、酵素測定法又は酵素免疫測定法のための医療用及び分析用デバイスにおける湿潤剤としての有機シリコーン界面活性剤の使用、特にマイクロ流体デバイスにおける湿潤剤としての使用は、未だ十分知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、デバイスの疎水性チャンネルに導入されたある種の有機シリコーン界面活性剤の混合物が、チャンネル表面の湿潤性を促進し、そしてチャンネル、特にマイクロ流体チャンネルの表面におけるバブルの形成を防止又は最小化できることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
マイクロ流体チャンネルに水溶液を適用する方法が提供される。水溶液は、緩衝液と有機シリコーン界面活性剤を含み、また、チャンネル表面と水溶液中の成分との間の相互作用を防止するためのブロッキング剤を含んでいてもよい。
【0006】
混合物中における有機シリコーン界面活性剤の構造は、下式に示すものであってよい。

式中、Rはそれぞれ独立して、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表し;Zは、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、又はポリエーテル基を表し;Zは、OH基を有する若しくは有さない炭素数1〜4のアルキル基、又はポリエーテル基を表し;Rは、OH基を有する若しくは有さない炭素数1〜4のアルキル基、又は

(式中、Rは、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表す。)を表し;yは、1以上の整数を表し、xは、0以上の整数を表す。
【0007】
混合物中における有機シリコーン界面活性剤の構造は、下式に示すものであってよい。


式中、Rはそれぞれ独立して、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表し;Zはポリエーテル基を表し;yは1以上の整数を表し;xは0以上の整数を表す。
【0008】
1例として、有機シリコーン界面活性剤は、下式に示されるものであってよい。

式中、Rはそれぞれ独立して、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表し;Rは、アルキル基、アセチル基、水素原子又はOH基を表し;Rは、アルキレン基を表し;Rは、水素原子、又はOH基を有する若しくは有さない炭素数1〜4のアルキル基を表し;Rは、OH基を有する若しくは有さない炭素数1〜4のアルキル基、又は

(式中、Rは、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表す。)を表し;yは、1以上の整数を表し;x、m、n、p及びqはそれぞれ独立して、0以上の整数を表す。
【0009】
有機シリコーン界面活性剤の別の例は、下式[1]又は[1-2]に示されるものであってよい。



式中、Rは、それぞれ独立して、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表し;Rは、炭素数1〜4のアルキル基、アセチル基、水素原子、又はOH基を表し;Rは、水素原子、又はOH基を有する若しくは有さない炭素数1〜4のアルキル基を表し;Rは、OH基を有する若しくは有さない炭素数1〜4のアルキル基、又は

(式中、Rは、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表す。)を表し;y、m'及びp'はそれぞれ独立して、1以上の整数を表し、x、n'及びq'はそれぞれ独立して、0以上の整数を表す。
【0010】
更なる例において、RはCHであってよい。また、n又はn'はゼロであってもよく、その結果、上記構造はエチレンオキサイドを含みプロピレンオキサイドを含まないことになる。更に、xはゼロであってもよく、yは1であってもよく、その結果、上記構造はトリシロキサン化合物となる。また、xは、0〜130、0〜40、0〜10、又は0〜4の範囲でよく;yは、1〜40、1〜30、1〜20又は1〜4の範囲でよく;mは、1〜50、2〜30、3〜20、又は4〜16の範囲でよく;nは、0〜50、0〜25、0〜10、又は0〜4の範囲でよい。
【0011】
チャンネル表面と水溶液中の成分間の相互作用を防止するためのブロッキング剤は、ポリ(アルキレンオキサイド)オリゴマー又は/及びポリ−ジメチルアクリルアミド(p-DMA)であってよい。
【0012】
ブロッキング剤である、ポリ(アルキレンオキサイド)オリゴマーの構造は、下式に示されるものであってよい。

式中、Qはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し;Qはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し;Qはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し;Qはそれぞれ独立して、水素原子又は−OH基を表し;a、b及びcはそれぞれ独立して、1以上の整数を表す。
【0013】
はそれぞれ独立して、水素原子であってよく、Qはそれぞれ独立して、水素原子であってよい。更に、Qはそれぞれ独立して、水素原子であってよく、Qはそれぞれ独立して、水素原子であってよく、そして3つのQは水素原子であり、1つのQは炭素数1〜4のアルキル基である。また、「a」は、0〜130又は12〜101の範囲であってよく;「b」は、0〜100又は2〜56の範囲であってよく;「c」は、0〜130又は12〜101の範囲であってよい。
【0014】
別の例において、ブロッキング剤は、ポリ−ジメチルアクリルアミド(p-DMA)であってよい。低分子量から高分子量のp-DMAを、湿潤剤と一緒に加えてもよい。
【0015】
有機シリコーン界面活性剤の量は、水溶液中、0.001〜0.5質量%であってよい。
【0016】
更に、チャンネル表面と水溶液中の成分間の相互作用を防止するためのブロッキング剤を加えてもよい。それ故、有機シリコーン界面活性剤は、緩衝液及びブロッキング剤と組み合わされる。ブロッキング剤は、緩衝液及び有機シリコーン界面活性剤を含有する水溶液中に、又は有機シリコーン界面活性剤を含まない他の水溶液中に含有させてもよい。分子を引き延ばした状態で、ブロッキング剤の鎖長は、有機シリコーン界面活性剤の鎖長より長い。
【0017】
疎水性チャンネル上の溶液の表面張力を低下させ、それによりマイクロ流体チャンネルの湿潤性を増加させることにより、疎水性表面を有するマイクロ流体チャンネルへ水溶液を適用する方法が提供される。
有機シリコーン界面活性剤を含む溶液は、有機シリコーン界面活性剤の性能を向上させるためにブロッキング剤を更に含有していてもよい。
【0018】
本発明の更なる特徴は、一部は以下に続く明細書の中で説明され、そして一部は明細書から明白であり、又は本発明の実施により学ぶことができるであろう。本発明の特徴は、添付の特許請求の範囲で特別に指摘した要素及び組み合わせを用いて、実現され、達成されるであろう。
【0019】
当然のことながら、前述の一般的説明及び以下の詳細な説明の両者は、単に例示し説明するためのものであり、本発明の特許請求される本発明を制限するものではない。本明細書で引用される全ての参考文献は、参照することにより取り込まれている。
【0020】
本明細書に取り込まれ、そしてその一部を構成する添付の図面は、本発明の1つ又はそれ以上の実施態様を説明し、そして本明細書と共に、本発明の原理を説明する働きを有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1A及び図1Bは、電流がマイクロ流体システムを通過して流れる際の電流特性を示す。図1Aは、気泡が適正な電流電導を妨げていることを、図1Bは、気泡が生成せず、電流が適正に流ていることを示す。
【図2】図2A及び図2Bは、本発明の実施態様に従う電気泳動図を示す。
【図3】本発明の実施態様に従うマイクロ流体の免疫測定法に使用するためのマイクロチップを示す。
【図4】図4Aは、本発明の実施態様に従う試薬中の有機シリコーン界面活性剤(トリシロキサン)を用いた、典型的な電気泳動図を示す。図4Bは、マイクロ流体デバイスのチャンネルにおいて、アルコールを予備充填した場合の典型的な電気泳動図を示す。
【図5】図5A及び図5Bは、本発明の別の実施態様に従って、pHが上昇するにつれて測定ピークの形状がシャープになる影響を示す。
【図6】本発明の実施態様に従う電気泳動図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
マイクロ流体デバイスを含む多くのデバイスの部品は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、シクロオレフィン重合体(COP)、シクロオレフィン共重合体(COC)などの疎水性プラスチック又は高分子材料より作られている。プラスチックの使用は、部品の互換性、廃棄性を促進したが、例えば、水性媒体が分析法に含まれる場合、プラスチックスの疎水性は、別の問題をもたらしている。水性媒体と接触する疎水性表面は、表面で気泡の形成を促進させる傾向にあり、それが分析を妨げる可能性がある。例えば、水性試薬をマイクロ流体デバイスのプラスチック製マイクロチャンネルに充填させる場合、気泡がチャンネルに捕捉され、それが分析を失敗に導く可能性がある。深さ約1,000μm未満又は深さ約100μm未満と定義されているマイクロチャンネルは、気泡の形成又は捕捉を抑えるため、圧力下でチャンネルを水性試薬で充填する前に、イソプロピルアルコールなどのアルコール単体又は水と一緒に予備充填してもよいが、必然的に分析手順が複雑となり、多くの時間や費用がかかる。更に、アルコールを導入することは、試薬を汚染し、そして分析結果を妨げる可能性がある。
【0023】
水性試薬を拡散させるための湿潤剤としての有機シリコーン界面活性剤は、疎水性表面を有するマイクロ流体チャンネルなどのチャンネルにおける気泡の形成を防止又は最小化することにおいて効果的であることが分かった。用語「有機シリコーン界面活性剤類」、又は単数形の「有機シリコーン界面活性剤」は、例えば、重量平均分子量に基づく有機シリコーン界面活性剤の単独の化学種、又は分布を意味する。本明細書で言及されるチャンネルは、材料内の管状の閉鎖した通路、又は材料表面上の溝若しくは小溝であり得る。チャンネルは、キャピラリー又は狭い管を含んでもよい。1例として、チャンネルの深さは約1,000μm以下又は約100μm以下であってよく、チャンネルの内径は、約1〜1,000μm、約1〜200μm、又は約1〜100μmであってよく、チャンネルの長さは、約0.1mm〜100cm、約0.1mm〜20cm、又は約0.1mm〜10cmであってよい。試薬又は試料と共に有機シリコーン界面活性剤を用いることにより、アルコールで予備充填することによる事前処理なしでこれらを直接チャンネルに充填することができる。有機シリコーン界面活性剤/試薬(試料)の組み合せは、チャンネルの疎水性表面を湿潤させ、気泡が表面に付着するのを防ぎ、又は気泡を表面から解放し、そして溶液中に発生した気泡は、例えば、圧力の負荷により、チャンネルから廃棄ウエルに流し出す。アルコールで予備充填する技術と比較して、有機シリコーン界面活性剤/試薬(試料)の組み合せの直接充填は、分析を行う時間及び費用の低減をもたらす。
【0024】
混合物中の有機シリコーン界面活性剤の構造は、下式に示すものであってよい。

式中、Rはそれぞれ独立して、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表し;Zは、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、又はポリエーテル基を表し;Zは、OH基を有する若しくは有さない炭素数1〜4のアルキル基、又はポリエーテル基を表し;Rは、OH基を有する若しくは有さない炭素数1〜4のアルキル基、又は

(式中、Rは、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表す。)を表し;yは、1以上の整数を表し、xは、0以上の整数を表す。
【0025】
混合物中の有機シリコーン界面活性剤の構造は、下式に示すものであってよい。

式中、Rはそれぞれ独立して、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表し;Zはポリエーテル基を表し;yは1以上の整数を表し;xは0以上の整数を表す。
【0026】
Z、Z及びZで表わされるポリエーテル基としては繰り返し単位の鎖を含むものが挙げられる。ここで、繰り返し単位の鎖は、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどの炭素数2〜4のアルキレンオキサイド単量体に由来する2価の基を少なくとも1つ含むものである。
【0027】
使用可能な有機シリコーン界面活性剤の1例は、以下の式のような構造を有する。

式中、Rはそれぞれ独立して、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表し;Rは、アルキル基、アセチル基、水素原子又はOH基を表し;Rは、アルキレン基を表し;Rは、水素原子、又はOH基を有する若しくは有さない炭素数1〜4のアルキル基を表し;Rは、OH基を有する若しくは有さない炭素数1〜4のアルキル基、又は

(式中、Rは、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表す。)を表し;yは、1以上の整数を表し;x、m、n、p及びqはそれぞれ独立して、0以上の整数を表す。
【0028】
で表わされるアルキレン基としては、炭素数1〜4のアルキレン基が挙げられ、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、メチルメチレン基、メチルエチレン基、エチルメチレン基、ブチレン基、メチルプロピレン基、エチルエチレン基などが挙げられる。
式中のRは、トリメチレン基であってよい。
【0029】
指数xは、ゼロ(0)以上の整数である。具体的には、xは、下限がゼロ(0)以上であり、上限が130以下、40以下、10以下、又は4以下であってよい。Xは0(ゼロ)であってよい。
指数yは、1以上の整数である。具体的には、yは、下限が1以上であり、上限が40以下、30以下、20以下、又は4以下であってよい。yは1であってよい。
指数x+yは、下限が1以上であり、上限が170以下、70以下、30以下、又は8以下であってよい。
【0030】
指数m及びpは、それぞれ独立して、ゼロ(0)以上である。具体的には、mは、下限が0以上、1以上、2以上、3以上、又は4以上であってよく、上限が50以下、30以下、20以下、又は16以下である。pは同様に定義することができる。
指数n及びqは、それぞれ独立して、ゼロ(0)以上である。具体的には、nは、下限が0(ゼロ)以上であり、上限が50以下、25以下、10以下、又は4以下であってよい。指数nは、0(ゼロ)であってよい。指数m+nは、下限が1以上、2以上、3以上、又は4以上であり、上限が100以下、55以下、30以下、又は16以下である。q及びp+qは、同様に定義することができる。
少なくとも、m、n、p及びqは1以上である。
【0031】
使用可能な有機シリコーン界面活性剤の別の例は、以下の式のような構造を有する。

又は

式中、Rは、それぞれ独立して、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表し;Rは、炭素数1〜4のアルキル基、アセチル基、水素原子、又はOH基を表し;Rは、水素原子、又はOH基を有する若しくは有さない炭素数1〜4のアルキル基を表し;Rは、OH基を有する若しくは有さない炭素数1〜4のアルキル基、又は

(式中、Rは、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表す。)を表し;y、m'及びp'はそれぞれ独立して、1以上の整数を表し、x、n'及びq'はそれぞれ独立して、0以上の整数を表す。
【0032】
上記の式において、R、R、R、R、R及びZで表わされる、炭素数1〜4のアルキル基、並びにZ及びZで表わされるヒドロキシアルキル基のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状であってよく、又は直鎖状であってよい。また、炭素数1〜2のアルキル基であってよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基及びtert-ブチル基が挙げられる。
は、メチル基であってよい。
及びRは、メチル基、水素原子又はアセチル基であってよく、又はOH基であってよい。
【0033】
指数xは、ゼロ(0)以上の整数である。具体的には、xは、下限が0(ゼロ)以上であり、上限が130以下、40以下、10以下、又は4以下である。Xは0(ゼロ)であってよい。
指数yは、1以上の整数である。具体的には、yは、下限が1以上であり、上限が40以下、30以下、20以下、又は4以下である。yは1であってよい。
指数x+yは、下限が1以上であり、上限が170以下、70以下、30以下、又は8以下である。
【0034】
指数m'及びp'は、それぞれ独立して、1以上の整数である。具体的には、m'は下限が1以上、2以上、3以上、又は4以上であってよく、上限が50以下、30以下、20以下、又は16以下である。p'は、同様に定義することができる。
指数n'及びq'は、それぞれ独立して、ゼロ(0)以上の整数である。具体的には、n'は、下限が0(ゼロ)以上であり、上限が50以下、25以下、10以下、又は4以下であってよい。指数n'は、0(ゼロ)であってよい。指数m'+n'は、下限が1以上、2以上、3以上、又は4以上であり、上限が100以下、55以下、30以下、又は16以下である。q'及びp'+q'は、同様に定義することができる。
【0035】
有機シリコーン界面活性剤の重量平均分子量(Mw)は、100〜10,000、又は400〜2,000である。
【0036】
式[1]で表わされる有機シリコーン界面活性剤は、W. Noll, Chemistry and Technology of Silicones(シリコーンの化学と技術), Academic Press, New York: 1968に開示された内容に従って合成することができる。本開示は参照することにより本明細書に取り入れられている。
【0037】
従って、上記式[1]を含む有機シリコーン界面活性剤は、更に、下式[1']に示されるものを含む有機シリコーン界面活性剤、下式[1'']に示されるものを含む有機シリコーン界面活性剤又は下式[1''']に示されるものを含む有機シリコーン界面活性剤であってよい。

式中、R、x、y、m'及びn'は上記に同じ。
【0038】

式中、R、x、y及びm'は上記に同じ。
【0039】

式中、R及びm'は上記に同じ。
【0040】
従って、上記式[1-2]を含む有機シリコーン界面活性剤は、更に、下式[1-2']に示されるものを含む有機シリコーン界面活性剤、下式[1-2'']に示されるものを含む有機シリコーン界面活性剤、又は下式[1-2''']に示されるものを含む有機シリコーン界面活性剤であってよい。

式中、R、R、x、y、p'及びq'は上記に同じ。
【0041】

式中、R、R及びp'は上記に同じ。
【0042】

式中、R及びp'は上記に同じ。
【0043】
有機シリコーン界面活性剤の量は、水溶液中で、下限が0.001%(v/v)以上、0.01%(v/v)以上、又は0.03%(v/v)以上であり、上限が1.5%(v/v)以下、1.0%(v/v)以下、0.5%(v/v)以下、0.2%(v/v)以下、又は0.1%(v/v)以下である。
【0044】
1例として、気泡を防止又は最小化する用途に好適な有機シリコーン界面活性剤の1つは、トリシロキサン界面活性剤(「トリシロキサン」)である。トリシロキサンは、以下の式に示される構造を有するものであってよい。

式中、R、y、m'及びn'は上記と同じであり、m'+n'=4〜12である。
【0045】

式中、R、R、y、p'及びq'は上記と同じであり、p'+q'=4〜12である。
【0046】
気泡の生成を防止又は最小化するために、範囲で言えば、1.5%〜0.001%(v/v)のトリシロキサンのような有機シリコーン界面活性剤を、緩衝液及び試薬に含有させることができる。トリシロキサンなどの有機シリコーン界面活性剤の添加剤の範囲は、0.2%〜0.01%であってよく、更に、0.1%〜0.01%に限定されてよい。トリシロキサンは、単独で、又は、例えば、60.0%超のメチル(プロピルヒドロキシド、エトキシ化)ビス(トリメチルシロキシ)シラン;15〜20%のポリエチレンオキサイドモノアリルエーテル;9%以下のポリエチレングリコールを含むSuperwetting Agent(登録商標)(SWA)の形態であってもよく、或いはDow-Corning社製のDow-309(3-(3-ヒドロキシプロピル)-ヘプタメチルトリシロキサン、エトキシ化、酢酸塩)のような精製された形態のものでもよい。Silwet 408、Silwet L-77などの、Silwet(登録商標)と呼ばれているGE社製の有機シリコーン界面活性剤、及びKF-640、KF-642及びKF-643などの、信越化学工業社製の有機シリコーン界面活性剤も、また、使用可能である。
【0047】
図1A及び1Bは、(A)トリシロキサンなど有機シリコーン界面活性剤を用いず、その結果チャンネル内に気泡が生成する場合と、(B)界面活性剤を用いて気泡の発生を防止又は最小化する場合での、分析システムに生じる現象をそれぞれ示す。図1Aは、不完全なチャンネル湿潤に起因した電流障害の例である。水性の緩衝液を、有機シリコーン界面活性剤を使用せずに又はアルコールによる予備湿潤を行わずに、マイクロ流体デバイスの乾燥した疎水性マイクロチャンネルへ直接提供し、その結果気泡がチャンネル内に生成した。分析手順を進めるため、チャネルを通して電流を負荷した場合、得られた電流値は、気泡により引き起こされた電流の不連続性のため激しく変動し、それが電流障害をもたらした。図1Bは、トリシロキシサン0.1%(v/v)を含有する試薬を直接マイクロ流体デバイスのマイクロチャンネルに充填し、その結果、全てではないが、気泡の生成が殆ど防止された例を示す。気泡なしのチャンネルに期待される通り、激しく電流が変動することなく、比較的安定した電流電導が見られた。従って、例えば、チャンネルを通しての駆動電流を必要とするキャピラリー電気泳動法(CE)や等速電気泳動法(ITP)などの分析手順を進めるために、試薬中にトリシロキサンなどの有機シリコーン界面活性剤を使用することは、気泡による分析障害を避けることに貢献する。
【0048】
緩衝液は、電気泳動法のために使用することができるが、この技術に限定されない。緩衝液を使用することができる他の技術としては、例えば、ハイブリダイゼイション分析や免疫分析が挙げられる。緩衝液としては、例えば、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、ホウ酸緩衝液、グッドの緩衝液、SSC緩衝液、TBE緩衝液、TAE緩衝液、ヒスチジン緩衝液、イミダゾール緩衝液が挙げられる。緩衝液の濃度は、例えば、0.1mM〜10M、1mM〜5M、又は5mM〜1Mであってよい。また、緩衝液のpHは、例えば、2〜13、4〜11、5〜9、6〜8、6〜9、又は6〜10であってよい。
【0049】
水溶液は、チャンネル、特にマイクロチャンネルに適用される。
水溶液は、少なくとも緩衝液及び有機シリコーン界面活性剤を含み、また、ブロッキング剤を含有していてもよい。更に、水溶液は、リーディング・イオン、トレーリング・イオン、分析物、試料、アナログ、標識物質、抗体、抗原、核酸鎖、タンパク質、荷電ポリマー、ミセルを形成する荷電物質、分離媒体(高分子−篩マトリックス)から成る群より選ばれる少なくとも1つの成分を含んでいてもよい。
【0050】
リーディング・イオンとしては、分析物又はアナログより早い電気泳動速度を有するイオンであれば、いずれも使用することができる。その様なイオンとしては、例えば、Clが挙げられる。イオン濃度は、例えば、1μM〜10M、100μM〜1M、又は1mM〜500mMの範囲で変動してよい。
【0051】
トレーリング・イオンとしては、分析物又はアナログより遅い電気泳動速度を有するイオンであれば、いずれも使用することができる。その様なイオンとしては、例えば、HEPES、TAPS、MES、MOPSなどのグッドの緩衝液、グリシン、スレオニンなどのアミノ酸が挙げられる。濃度は、例えば、1μM〜10M、100μM〜1M、1mM〜500mMであってよい。
【0052】
検体としては、例えば、ヌクレオチド鎖(例えば、配列特異的オリゴヌクレオチド鎖及びポリヌクレオチド鎖);染色体;ペプチド鎖(例えば、C−ペプチド及びアンジオテンシンI)、血清タンパク質[例えば、プロカルシトニン、免疫グロブリンA(IgA)、免疫グロブリンE(IgE)、アルブミン、フェリチン];酵素[例えば、アミラーゼ(膵型、唾液腺型、及びX型)、アルカリホスファターゼ(例えば、肝性、骨性、胎盤性、小腸性)、酸性ホスファターゼ(例えば、PAP)、γ−グルタミルトランスフェラーゼ(例えば、腎性、膵性、肝性)];細菌(例えば、結核菌、肺炎球菌、ジフテリア菌、髄膜炎菌、淋菌)、ウイルス(例えば、ルベラウイルス、ヘルペスウイルス、肝炎ウイルス、ATLウイルス、AIDSウイルス)、真菌(例えば、カンジダ及びクリプトコッカス)、スピロヘータ(例えば、レプトスピラ菌、梅毒トレポネーマ)、クラミジア及びマイコプラズマなどの微生物;気管支喘息、アレルギー性鼻炎及びアトピー性皮膚炎のアレルギーの原因となる各種アレルゲン(例えば、ハウスダスト、コナヒョウダニ及びヤケヒョウダニのようなダニ、スギ、ヒノキ、スズメニヒエ、ブタクサ、オオアワガエリ、ハルガヤ及びライムギなどの花粉、ネコ、犬またはカニのような動物);腫瘍マーカータンパク抗原(例えば、PSA、PGI及びPGII);糖鎖抗原[AFP(例えば、L1〜L3)、hCG(例えば、hCGファミリー)、トランスフェリン、IgG、サイログロブリン、癌胎児性抗原(例えば、CEA、NCA、NCA-2及びNFA)、CA19-9、PIVKA-II、CA125、前立腺特異抗原];糖鎖[例えば、ヒアルロン酸、β−グルカン及び上記の糖鎖抗原が有する糖鎖];糖鎖に結合するタンパク質(例えば、ヒアルロン酸結合タンパク質及びβ−グルカン結合タンパク質);レクチン(例えば、コンカナバリンA、レンズマメレクチン);リン脂質(例えば、カルジオリピン);リポ多糖(例えば、エンドトキシン);化学物質(PTH、T3、T4、TSH、インスリン、LH、FSH及びプロラクチンなどのホルモン);レセプター(例えば、エストロゲンやTSHに対するレセプター);リガンド(例えば、エストロゲン及びTSH);及びそれらに対する抗体が挙げられる。
【0053】
抗体には、パパインやペプシンのようなタンパク質分解酵素(例えば、プロテイナーゼ)による分解、或いは化学的分解によって生じるFab及びF(ab')フラグメントなどの分解産物も包含される。
【0054】
また、検体は、直接的に又は検体に結合する物質を介して、標識物質で標識されていてもよい。
【0055】
試料は、以下によって例示される:血清、血漿、髄液、滑液、リンパ液などの体液、尿、糞などの排出物、喀たん、膿、皮膚剥離物などの生体由来試料;食品、飲料、水道水、海水、湖沼水、河川水、工場廃液、半導体用洗浄水、医療器具を洗浄した後の洗浄液などの環境試料;及び水やトリス緩衝液、リン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、ホウ酸緩衝液及びグッドの緩衝液などの緩衝液に溶解することによって再構成された処理物が挙げられる。試料には、化学的に合成により生成された上記の分析物を含有するものも包含される。
【0056】
アナログには、例えば、分析のターゲットである試料中の分析物と同じもの;試料中の分析物の構造の一部を、例えば、修飾、改変、変性、又は除去したもの(いわゆる、アナログ)が挙げられる。他のアナログの例はとしては、部分的な変異のある組み換えタンパク質;部分的に修飾されたペプチド配列のあるペプチド;部分的に変更されたヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列である。試料中の、分析のターゲットである分析物の具体例は、上記した通りである。
また、アナログは、直接的に又はアナログに結合する物質を介して、標識物質で標識されていてもよい。
【0057】
標識物質としては、例えば、酵素免疫測定法(EIA),放射免疫測定法(RIA)、蛍光免疫測定法(FIA)及びハイブリダイゼーション法で使用されているものであればよい。標識物質としては、例えば、アルカリホスファターゼ(ALP)、β−ガラクトシダーゼ (β-Gal)、パーオキシダーゼ(POD)、マイクロパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ(GOD)、グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PDH)、リンゴ酸脱水素酵素及びルシフェラーゼなどの酵素が挙げられる。これらの酵素はすべて、アッセイ感度を高めるために酵素で増幅したシグナルを与えるために使用することができる。標識物質としては、色素、特に、Alexa Fluor色素(Molecular Probes Inc.)又はHilyte色素(AnaSpec Inc.)又は異なる色素アナログに対応する各種の励起及び発光スペクトルを持つCyDyes(Amersham Bioscience Inc.)などの高量子収率の蛍光色素が使用できる。更に、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フルオレスカミン、クマリンなど他の蛍光物質や、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)またはディスプロシウム(Dy)などの希土類蛍光色素と4,4'-ビス(1'',1'',1'',2'',2'',3'',3''-ヘプタフルオロ-4'',6''-ヘキサンジオン-6''-イル)クロロスルホ-O-テルフェニル(BHHCT)、4,7-ビス(クロロスルホニル)-1,10-フェナントロリン-2,9-ジカルボン酸(BCPDA)、β−ナフチルトリフルオロ酢酸(β-NTA)などのキレート化合物を標識物質として使用することができる。
エチジウムブロマイド、エチジウムホモダイマー−1(EthD-1)などのインターカレーター色素、POPO-1、BOBO-1、YOYO-1、TOTO-1などのシアニンダイマー系色素、及び他の蛍光核酸染色色素が、特定の核酸配列を検出するための核酸プローブ用標識として用いることができる。発光やスピン標識も、また、標識物質として使用することができる。
また、標識物質は、分析物又はアナログに結合する物質に結合させてもよい。
【0058】
分析物に結合する物質又はアナログに結合する物質とは、分析物又はアナログとの間の複合体、即ち、上記した如き分析物又はアナログと結合することによって、分析物又はアナログを構成成分として含む複合体を形成することができる性質を有する物質を意味する。
【0059】
そのような物質としては、「抗原」−「抗体」間反応、「糖鎖」−「タンパク質」間反応、「糖鎖」−「レクチン」間反応、「酵素」−「インヒビター」間反応、「タンパク質」−「ペプチド鎖」間反応又は「染色体又はヌクレオチド鎖」−「ヌクレオチド鎖」間反応などの相互反応により、分析物又はアナログと結合する物質を意味する。上記のペアーにおける物質の1つが分析物又はアナログである場合、もう一方は分析物又はアナログに結合する物質である。例えば、分析物又はアナログが「抗原」である場合、分析物又はアナログに結合する物質は「抗体」であり、分析物又はアナログが「抗体」である場合、分析物又はアナログに結合する物質は、「抗原」である(同じことが、上記の他のペアーにも適用される)。
具体的には、分析物又はアナログに結合する物質は、分析物又はアナログに対する抗体、又は分析物又はアナログに結合する抗原、又は分析物又はアナログに結合するタンパク質であってもよい。
【0060】
抗体には、パパインやペプシンのようなタンパク質分解酵素(例えば、プロテイナーゼ)による分解、或いは化学的分解によって生じるFab及びF(ab')フラグメントのような分解産物も包含される。分析物又はアナログの電気泳動移動度を変えることができる物質を使用してもよく、このような物質としては、シリカ及びアルミナなどの無機金属酸化物;金、チタン、鉄及びニッケルなどの金属;シランカップリング処理などの操作によって官能基が導入された無機金属酸化物;各種微生物及び真核生物細胞などの生物;アガロース、セルロース及び不溶性デキストランなどの多糖類;ポリスチレンラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、アクロレイン−エチレングリコールジメタクリレート共重合体、スチレン−スチレンスルホン酸ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸グリシジル、ポリアクロレイン被覆粒子、架橋ポリアクリロニトリル、アクリル酸又はアクリレートエステルを基本にしたポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−アクリレートエステル共重合体及びポリ酢酸ビニル−アクリレート共重合体などの合成高分子化合物;赤血球、糖、核酸鎖(RNA,DNAなどのポリヌクレオチド)、タンパク質、ポリペプチド及びポリアミノ酸(ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリリジン)、脂質などの生体分子;が挙げられる。分析物又はアナログの電気泳動移動度を変えることができる物質は、核酸(ヌクレオチド鎖)、タンパク質、ポリペプチド又はポリアミノ酸であってもよく、又は核酸(ヌクレオチド鎖)若しくはポリアミノ酸であってもよい。核酸鎖は一本鎖、二本鎖若しくはそれ以上であってもよく、又は二本鎖であってもよい。
【0061】
分析物又はアナログの電気泳動移動度を変えることができる物質は、直接的に、又は分析物又はアナログと結合する物質を介して、分析物又はアナログと結合させてもよい。
【0062】
また、分析物又はアナログの電気泳動移動度を変えることができる物質は、標識物質で標識されても、又は/及び分析物又はアナログに結合する物質に結合させてもよい。
【0063】
非特異的干渉を阻止するための荷電ポリマーとしては、試料中の共存物質とは反対の電荷(プラス又はマイナス)を有するものが使用される。
【0064】
荷電ポリマーの例としては、ポリアニオン性ポリマー及びポリカチオン性ポリマーが挙げられる。
【0065】
ポリアニオン性ポリマーとしては、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、ポリタングステン酸、タングステンリン酸、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸及びポリアネトール硫酸などのポリサッカライド;DAN(例えば、プラスミドDNA、仔ウシ胸腺DNA、サケ精子DNA、セルロース結合DNA及び合成DNA)、及びRNAなどのポリヌクレオチド;ポリアミノ酸(例えば、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸)、合成ポリペプチドなどのポリペプチド;ポリ-dIdC、ポリビニル硫酸及びポリアクリル酸などの合成高分子化合物;ガラス粒子、コロイドガラス及びグラスミルクなどのセラミック;及び、それらの複合体が挙げられる。
【0066】
また、ポリカチオン性ポリマーとしては、キトサン、及びその誘導体などのポリサッカライド;ポリリジン、ポリヒスチジン、ポリアルギニン、プロタミン、ヒストン及びオルニチンなどのポリペプチド;ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン及びポリビニルアミンなどの合成高分子化合物;スペルミン及びスペルミジンなどのポリアミン;カチオン性脂質;セラミック;及びそれらの複合体が挙げられる。
【0067】
ポリアニオン系ポリマーは、アニオン性ポリサッカライドでもよいし、又はヘパリンであってもよい。
【0068】
上記の荷電ポリマーは単独で用いてもよく、又は2種以上を適宜組み合せて用いてもよい。
【0069】
電気泳動速度が分析物又はアナログのより早いものであれば、どのようなミセル荷電物質も使用することができる。その様な荷電物質としては、例えば、SDSなどの界面活性剤が挙げられる。限界ミセル濃度を超える量を使用してよい。荷電物質の濃度としては、例えば、1μM〜10M、100μM〜1M、又は1mM〜500mMであってよい。
【0070】
充填剤の例としては、限定されないが、ポリエチレンオキサイド(ポリエチレングリコール)、ポリプロピレンオキサイドなどのポリエーテル類;ポリエチレンイミンなどのポリアルキレンイミン;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、及びポリ(アクリル酸メチル)などのポリアクリル酸系ポリマー;ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドなどのポリアミド系ポリマー;ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル及びポリ(メタクリル酸メチル)などのポリポリメタクリル酸系ポリマー;ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン及びポリビニルオキサゾリドンなどのポリビニル系ポリマー;プルラン、エルシナン、キサンタン、デキストラン、及びグアガムなどの水溶性ヒドロキシルポリマー;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなどの水溶性セルロース系化合物;これらの誘導体、及びこれらのポリマーを構成するモノマーユニットを複数種含有するコポリマーが挙げられる。これらの充填剤は、単独で使用しても、又は2種以上組み合せて使用してもよい。
【0071】
上記の充填剤の分子量は、500Da〜6,000kDa、1〜1,000kDa、又は50〜500kDaであってよい。
【0072】
上記の充填剤の濃度は、0.01〜40%(w/v)、0.01〜20%(w/v)、又は0.1〜10%(w/v)の範囲から、適宜選択することができる。
【0073】
免疫測定法などの分析を実施する場合、トリシロキサンなどの有機シリコーン界面活性剤は、ブロッキング剤と組み合わせてもよく、それは、チャンネル表面と水溶液中の成分間の相互作用を防ぐために用いられる。ブロッキング剤は、緩衝液及び有機シリコーン界面活性剤を有する水溶液中、又は有機シリコーン界面活性剤を含まない他の水溶液中に含有させてもよい。緩衝液、有機シリコーン界面活性剤及びブロッキング剤を含む水溶液を、チャンネルに適用してもよく、或いは緩衝液及び有機シリコーン界面活性剤を含む水溶液、及びブロッキング剤を含むが有機シリコーン界面活性剤を含まない水溶液を、別々にチャンネルに適用してもよい。
【0074】
ブロッキング剤は、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー又は/及びポリ−ジメチルアクリルアミド(p-DMA)であってよい。
【0075】
ブロッキング剤である、ポリ(アルキレンオキサイド)オリゴマーは、以下の式に示される構造を有していてよい。

式中、Qはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し;Qはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し;Qはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し;Qはそれぞれ独立して、水素原子又は−OH基を表し;a、b及びcはそれぞれ独立して、1以上の整数を表す。
【0076】
式[2]において、Q、R及びQで表わされる炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状であってもよく、好ましくは炭素数1〜2の直鎖状のアルキル基である。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。式[2]におけるQは、水素原子であってよい。
【0077】
式[2]におけるQの内の3個はそれぞれ、水素原子であってよく、残りの1つは炭素数1〜4のアルキル基であってよい。又はQの内の3個は、それぞれ、水素原子であってよく、残りの1つはメチル基であってよい。
【0078】
式[2]におけるQは、水素原子であってよい。
【0079】
式[2]において、aは1以上の整数である。具体的には、aは、下限が1以上、又は12以上であってよく、上限が130以下、101以下、又は50以下であってよい。
式[2]において、bは1以上の整数である。具体的には、bは、下限が1以上、2以上、50以上であり、上限が100以下、又は70以下である。
式[2]において、cは1以上の整数である。具体的には、cは、下限が1以上、12以上であってよく、上限が130以下、101以下、又は50以下であってよい。
指数a+b+cは、下限が3以上、20以上、又は40以上であってよく、上限が500以下、350以下、又は250以下であってよい。
【0080】
式[2]で表わされるポリ(アルキレンオキサイド)オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、4,700〜13,000、又は8,400〜12,600である。
【0081】
上記の一般式[2]を含むポリ(アルキレンオキシド)オリゴマーとしては、以下の一般式[2']に示されるものを含むポリ(アルキレンオキシド)オリゴマー、以下の一般式[2'']に示されるものを含むポリ(アルキレンオキシド)オリゴマー、又は以下の一般式[2''']に示されるものを含むポリ(アルキレンオキシド)オリゴマーであってよい。

式中、Q、a、b及びcは上記に同じ。
【0082】

式中、Qは、上記した如き炭素数1〜4のアルキル基と同じであり、a、b及びcは上記に同じ。
【0083】

式中、a、b及びcは上記に同じ。
【0084】
ブロッキング剤の量は、水溶液中、下限が0.001%(v/v)以上、0.01%(v/v)以上、又は0.03%(v/v)以上であり、水溶液中、上限が5%(v/v)以下、0.5%(v/v)以下、又は0.1%(v/v)以下である。
【0085】
分析性能を強化するために使用可能なブロッキング剤の一例は、Pluronic(登録商標)F-127である。例えば、トリシロキサンとPluronic(登録商標)F-127などのポリ(アルキレンオキサイド)オリゴマーの組み合わせは、α−フェトプロテイン(AFP)アイソフォームのL1及びL3などのような試料の最適の分離を得ることができる。L3はAFPのフコシル化されたアイソフォームである。図2Aは、COPマイクロチップ、即ち、チャンネル及び相互連結したウエルを有するマイクロ流体デバイスを用い、緩衝液及び試薬に有機シリコーン界面活性剤湿潤剤を含有する(最終濃度:0.1%トリシロキサン)が、Pluronic(登録商標)F-127などのポリ(アルキレンオキサイド)オリゴマーを含有しない場合の、AFPアイソフォームの免疫測定法の電気泳動図を示す。試薬をマイクロチャンネルに直接充填することは、気泡を発生せず、反応を成功裏に実施できた。しかしながら、図2Aにおける2つのピークの重なりから分かる様に、ブロッキング剤なしではAFPアイソフォームは、分離しなかった。Pluronic(登録商標)F-127などのポリ(アルキレンオキサイド)オリゴマー及び有機シリコーン界面活性剤をそれぞれ、試薬に対して最終濃度0.1%になるよう加えた場合、図2Bに見られるようにL1及びL3ピークは分離した。Pluronic(登録商標)F-127などのポリ(アルキレンオキサイド)オリゴマーは、試薬及び緩衝剤に、0.5%〜0.01%(v/v)、より具体的には0.1%〜0.01%の範囲で添加されてよい。
【0086】
別の例において、ポリ−ジメチルアクリルアミド(p-DMA)が、免疫測定法のブロッキング剤として使用可能である。低分子量のp-DMAの適用は、AFPアイソフォーム免疫測定法などの免疫測定法に対して良好なピーク分離能を与えるため、Pluronic F-127などの別のブロッキング剤を必要とする可能性があるが、高分子量のp-DMAではその可能性はない。
【0087】
p-DMA-Aは、Mn=56,114、Mw=114,474、ピークMw=88,461、及びMw/Mn=2.04の低分子量p-DMAの一例であり、ここで、Mnはp-DMAの数平均分子量、Mwはp-DMAの重量平均分子量である。「数平均分子量」及び「重量平均分子量」の概念は、高分子化学の技術分野において、よく定義されたパラメータであり、実験的に決定することができる。代表的には、数平均分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー、粘度測定法(Mark-Houwinkの式)、及び蒸気圧浸透圧法又は末端基滴定法などの束一的方法で測定され、また、ポリマーの重量平均分子量は、光散乱法、小角中性子散乱法(SANS)、X線散乱、及び沈降速度法で測定される。ピークは、ポリマーの分子サイズを測定するために用いられる、分子サイジング・クロマトグラフィーのピークを言う。
【0088】
低分子量(LMW)のp-DMA Aを単独で使用した場合には、0.9%(v/v)で、AFPアイソフォーム免疫測定用の高分子チップを、ブロックするようには見えなかった。しかし、p-DMA Aに0.1%のPluronic F-127を併用することにより、良好なピーク分離能が得られた。一方、Mn=411,696、Mw=1,009,890、ピークのMw=1,042,960、及びMw/Mn=2.453を有する高分子量(HMW)のp-DMA Bを0.9%(v/v)使用した場合には、Pluronic F-127なしで、AFPのアイソフォーム免疫測定法に対して良好なピーク分離能が得られた。更に、Mn=356,223、Mw=1,114,600、ピークMw=1,080,200及びMw/Mn=3.126を有するp-DMA Cを使用した場合も、HMW p-DMA Bと同様の結果が得られた。より長い重合体であるHMW p-DMAは、プラスチック表面に対するより高い結合親和性を有し、LMW p-DMAより効果的に表面をブロックすることができると考えられる。
【0089】
ブロッキング剤の使用例は、AFPアイソフォーム免疫測定法の項目に記載されているが、しかし、ブロッキング剤の使用としては、いずれか1つの特別の測定法に限定されるものではない。
【0090】
特別の測定システムのみならず、疎水性チャンネルを通して水性液体を充填又は移動させる必要のある何れの分析的又は臨床的方法においても、トリシロキサンなどの有機シリコーン界面活性剤添加物を使用すれば、重合体材料の疎水性表面の湿潤/充填特性を強化することができる。
【0091】
有機シリコーン界面活性剤を直接、構成成分として試薬に組み入れることに加えて、水性試薬でチャンネルを充填する前に、高濃度の界面活性剤(>1%)により疎水性表面を処理することができる。処理された表面を水ですすぎ、吸着していない界面活性剤を除去する。次いで、有機シリコーン界面活性剤を含まない試薬を、続いて充填することができる。この技法は、ミセル動電クロマトグラフィー(MECC)に対して有用であり、その場合、ターゲット分析物を結合したり分離したりするために、両親媒性界面活性剤が選択されることが多い。トリシロキサンなどの有機シリコーン界面活性剤を疎水性表面に吸着させ、そして何れの過剰分をも洗浄することは、バルク流体中への有機シリコーン界面活性剤の導入によってMECCにおいて望ましくない干渉が引き起こされるのを避けることができる。何故なら高濃度(臨界ミセル濃度(CMC)より高い濃度)の界面活性剤は、ミセルを形成するからである(Terabe, S et al. Electrokinetic separations with micellar solutions and open-tubular capillaries(ミセル溶液及び開放管毛細管を用いた動電的分離), Anal Chem, 1984; 56:111)。
【0092】
別の応用において、有機シリコーン界面活性剤を、分析装置の壁への細胞又は気泡の付着を防止/最小化するため、マイクロチャンネル内で又はそれに沿って分類又はカウントされる細胞を含む、水性緩衝液に添加することができる(Bacterial cell sorting in microchannels(マイクロチャンネルにおける細菌細胞の分類), Lastoskie, C.M.; Sastry, A.M.; Forrester, S.B.; Kim, T.Y. Bio-, Micro-, and Nanosystems(マイクロ−及びナノ−システム, 2003. ASM Conferences, 7-10 July 2003)。検出システムに依存して、気泡は偽陽性データの発生割合を増加させる傾向にある。
【0093】
疎水性壁を有するマイクロチャンネルで実施される低圧液体クロマトグラフィー(LC)(Regnier FE et al. Chromatography and electrophoresis on chip: critical elements of future integrated, microfluidics analytical systems for life science(チップ上のクロマトグラフィー及び電気泳動:生命科学のための将来の総合的なマイクロ流体工学分析システムの重大な要素), Trends Biotechnol, 1999; 17:101)に対して、有機シリコーン界面活性剤を、LCの移動相に添加することができる。トリシロキサンなどの有機シリコーン界面活性剤を含む水性緩衝液は、気泡を残さずに、直接マイクロカラムへポンプ注入することができる。捕捉された気泡は、μ−LCにおける分離損失又は/及びカラム障害の原因となることが多い。
【0094】
キャピラリーゾーン電気泳動法(CZE)(Jorgenson JW and Lukacs KD, Capillary zone electrophoresis(キャピラリーゾーン電気泳動法), Science, 1983, 222: 266)は、小さなイオン、高分子(タンパク質、脂質、糖質、及びDNA又はRNAなどの核酸)から、全細胞に至るサイズの範囲の荷電化学種並びに非イオン化学種を、分離・検出するために適用されている。この分析技術は、環境監視から、医薬製品(生化学製品又は化学製品)の品質管理及び生物医学研究に広がる多様な分野において有用である。CZE分離で使用される電解質は、一般的には、水性の性質を有する。従って、プラスチック又は疎水性のチャンネルを使用する場合、気泡を発生させることなくマイクロチャンネルに充填することは非常に困難である。緩衝液中にトリシロキサンなどの有機シリコーン界面活性剤を含有させることにより、気泡の生成を防止又は最小化することができ、高分子マイクロチップを用いたCZEの実施を可能にする。更に、上記の分離される分子の吸着を防ぐブロッキング剤、及び抗体などの標識結合対象物、又はDNA又はRNAインターカレーティング蛍光色素若しくはタンパク質染色蛍光色素などの標識色素分子などの検出試薬を含有させることによっても、CZE分析の信頼性及び再現性を向上することができる。
【0095】
多くの場合、合成、精製、又は製造プロセスの一部として、位置異性体、キラル又は立体異性体の存在又は/及びレベルを定量する必要性がある(構造異性体分析)。これは、従来のキャピラリーやマイクロチップ上でのマイクロチャンネルのいずれにおいても、ミセル動電クロマトグラフィーにより達成することができる。分離チャンネルが疎水性表面を有している場合、水溶液中の分析物、電解質の充填を容易にするために、トリシロキサンなどの有機シリコーンを添加することが望ましい。しかしながら、他の界面活性剤を分離に影響を与えるための擬似相として用いる場合は、有機シリコーンの濃度をCMCより低くなるように選択することにより干渉を回避することができる。
【0096】
マイクロ−トータル分析システム(μTAS)の基礎を形成するために作られ、又はラボ・オン・チップ(Lab-on-a-Chip)として知られている、マイクロスケールのチャンバー又は/及びチャンネルを備えたデバイスは、通常の化学、臨床及び酵素研究と同様、ゲノミクス及びプロテオミクス・スケールでの生体分子のハイスループット分析に適用することができる。幾つかの主要な利点としては、試薬及び試料の消費量が低いこと、自動化の容易性、低コスト、多数の手段を途切れなく1つのデバイスに統合することができる能力が挙げられる。そのようなデバイスは、部分的又は全体的に、荷電特性が殆ど又は全くない高分子基材又は被覆で作られる。
【0097】
実質的に非荷電の表面を有することは、荷電化学種(例えば、タンパク質及び核酸)の吸着を最小化させるなどの望ましい特徴を与えるが、重要な不利益は、その疎水性にある。疎水性の表面は、生命科学において一般的に採用されている水性緩衝液及び試薬と相性がよくない。疎水性チャンネルの部分的な濡れは、一般的には、気泡の生成を引き起こし、液体及び電流の不連続性を生み出す。そのようなデバイスの完全な濡れは、トリシロキサンを含む有機シリコーン界面活性剤の水性試薬への添加で可能となる。有機シリコーン界面活性剤は、水性試薬と疎水性表面の間の界面で、表面張力を大きく低下させ、そうすることにより、水溶液による疎水性マイクロチャンネルの完全な濡れを促進し、それが、気泡の生成を防止又は最小化する結果となる。
【0098】
水溶液を適用する方法としては、チャンネルに電圧を印加することにより、水溶液をチャンネルへ電気的に適用する方法;チャンネルを加圧又は減圧することにより、水溶液をチャンネルへ適用する方法;及び、毛管現象を用いることにより、水溶液をチャンネルへ適用する方法が挙げられるが、それらに限定されない。
【0099】
種々の原理(分離モード)に基づく電気泳動法を用いることができる。電気泳動法としては、例えば、以下のようなキャピラリー中での電気泳動移動度の差を用いる方法が挙げられる。
(1)フィールド・アンプリフィケーション・サンプル・スタッキング法;Field Amplification Sample Stacking Method(FASS) [US-A-2003-0057092 A1; Weiss, D. J., Saunders, K., Lunte, C.E. Electrophoresis 2001, 22, 59-65; Britz-McKibbin, P., Bebault, G.M., Chen, D.D.Y. Anal Chem. 2000, 72, 1729-1735; and Ross, D., Locascio, L.E. Anal Chem. 2002, 71, 5137-5145];
(2)フィールド・アンプリフィケーション・サンプル・インジェクション法;Field Amplification Sample Injection Method(FASI)[Chien, R.L et al. J. Chromatogr. 1991, 559, 141-148, and the like];
(3)等速電気泳動法;Isotachophoresis(ITP)[Everaerts, F.M., Geurts, M. Mikkers, F.E.P., Verheggen, T.P.E.M J Chromatogr. 1976, 119, 129-155;Mikkers, F.E.P., Everaerts, F.M., Peek, J.A.F. J. Chromatogr. 1979, 168, 293-315;Mikkers, F.E.P., Everaerts, F.M., Peek, J.A.F. J. Chromatogr. 1979, 168, 317-332; Hirokawa, T, Okamoto, H. Ikuta, N., and Gas, B., Analytical Sciences 2001, Vol. 17 Supplement il85, and the like];
(4)等電点電気泳動法;Isoelectric Focusing method(IF)[Wehr T, et al., Am. Biotechnol. Lab. 1990, 8, 22;Kilar F. et al., and Electrophoresis 1989, 10, 23-29];
(5)ラージ−ボリューム・サンプル・スタッキング法;Large-volume sample stacking method(LVSS)[Siri, N. et al., J. Chormatogr. B, (2003), 793, 151-157];
(6)pHジャンクション法;pH junction method(pH-メディエイテッド・スタッキング法;pH-mediated stacking)[P. Britz-McKibbin et al., 2000, Anal. Chem., 72, 1242, P. Britz-McKibbin et al., 2002, Anal. Chem., 74, 3736];
(7)スィーピング法;Sweeping method(スタッキングミセル動電クロマトグラフィー;stacking micellar electrokinetic chromatography)[J. P. Quirino et al., 1998, Science, 282, 465, J. P. Quirino et al., 1999, Anal. Chem., 71, 1638, Y. Sera et al., 2001, Electrophoresis, 22, 3509];
・それぞれの物質を荷電強度に依存して異なる速度で移動させることにより目的物質を分離する、所謂キャピラリー・ゾーン電気泳動法(CZE)、なお、この方法では、キャピラリーは、基本的に電気泳動用の緩衝溶液でのみ充填される[Reference: H. Hisamoto at al., Chem. Commun., (2001), 2662, and the like];
・イオン性ミセルを形成する荷電物質を用い、当該ミセルとの相互作用により目的物質を分離する、所謂ミセル動電クロマトグラフィー(MEKC)[Reference: S. Terabe, Trends Anal. Chem., (1989), 8, 129, and the like];
・分子ふるい効果を有するポリマーなどの充填剤を使用し、当該ポリマーとの相互作用を誘導する分子の荷電及び分子のサイズにより目的物質を分離する、所謂キャピラリーゲル電気泳動法(CGE)[Reference: S. Hjerten, J.Chromatogr., (1987), 397, 409]。
上記及び本明細書で引用したいずれの参考文献も、参照することにより本明細書に取り込まれている。
【0100】
電圧としては、電界強度が、下限が5V/cm以上、10V/cm以上、50V/cm以上、500V/cm以上、又は1000V/cm以上、上限が10,000V/cm以下、5,000V/cm以下、又は2,000V/cm以下の範囲になるように、印加される。
【実施例】
【0101】
実施例1
最初に、有機シリコーン界面活性剤の原液(1%v/v)を、1容量のトリシロキサン(CAS番号67674-67-3、2-[ヒドロキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]-ヘプタメチルトリシロキサン8 EO)(TS-HY)に対して99容量の水とを混合して調製した。マイクロ流体システムのマイクロチャンネルを満たすために用いる試薬類を調製するために、有機シリコーン界面活性剤の最終濃度に応じて、この1%有機シリコーン界面活性剤を濃縮された試薬に異なる量添加した。1例として、75mMトリス−塩酸、pH7.5の0.1%有機シリコーン界面活性剤溶液を調製するために、1部の1%有機シリコーン界面活性剤、5部の150mMトリス−塩酸、pH7.5、及び4部の水を室温で混合した。
【0102】
図3は、廃棄用ウェルW1〜W4、トレーリング・バッファー用ウェルTB、リーディングバッファー用ウェルLB、試薬用ウェルR1及びR2、ハンドオフ(hand-off)用ウェルHO、及び試料用ウェルSとそれぞれ標示されている各ウェルを接続する相互接続チャンネル(110)を備えた、例示的なCOP製のマイクロ流体マイクロチップ(100)を示す。有機シリコーン界面活性剤を用いる効果を示すための例として、チップ(100)を、マイクロチップに基づくAFPアイソフォームの免疫測定を行うために使用した。AFPは、肝細胞癌(HCC)細胞によって異所的に発現する腫瘍マーカーであり、しばしばHCC患者の血清で上昇する。また、肝硬変患者又はHCVやHBVに感染した患者からの肝細胞によっても産生され、HCCのマーカーとしてのAFPの特異性を低下させる。HCCが産生するAFPの場合には、レンズマメ(Lens culinaris)凝集素(LCA)と反応するアスパラギン結合糖鎖のAFP-L3上への出現が増大し、HCC早期発見のための改善された診断パラメーターや予後パラメータを提供している。
【0103】
図3において、チップ(100)は電気泳動的に駆動された混合法の働きをしており、試薬R1及びR2並びに試料Sは、減圧(廃棄用ウェルW1〜W4への陰圧の印加)によって中央チャンネル(120)中に移動度の順に引き出され、TBとLBの間に電圧をかけることによってそれらを一緒にして反応させる。この手順は、等速電気泳動(ITP)スタッキングと呼ばれる。R1に供給されたDNA抗体は高い電荷を持っており、試料よりも速く移動する、そのため試料と結合する前にITPスタッキングによって濃縮される。DNA抗体は、形成される免疫複合体の電気泳動移動度を加速させる働きがある。反応した試料(免疫複合体)が、R2中の蛍光色素結合抗体よりも速く移動すると、さらにこの抗体と反応し結合する。次に、ITPスタッキングは反応した試料を狭いバンドに集合させ、この狭い試料のバンドは次に、キャピラリー電気泳動法(CE)による分離および検出に引き渡される(handed off)。従って、結合反応及びITPスタッキングが完了した後、CEにより免疫複合体を分離・検出するために、HOとLBの間にハンドオフ電圧が印加される。
【0104】
表1に、各種ウェルに供給された試薬の種類を示す。それぞれの試薬及び試料に対して、有機シリコーン界面活性剤を0.1%(v/v)の最終濃度で添加し、気泡が無いか又は最低量でマイクロチャンネル(110)に充填するために、これらの試薬及び試料をマイクロチップ(100)の所定のウェルに供給した。
【0105】
【表1】

【0106】
即ち、図3をに照らして、TBゾーンと標示された試薬をTB用ウェルに供給し、DNAゾーンと標示された試薬及びHyliteゾーンと標示された試薬をそれぞれR1及びR2に供給し、試料ゾーンと標示された試料の入った試薬をSに供給し、HO及びLBゾーンと標示された試薬をHO及びLBに供給し、廃棄と標示された試薬を廃棄用ウェルW1〜W4に供給した。
【0107】
表1において、pDMAは、ポリジメチルアクリルアミド(#26、分子量114.5キロダルトン)であり;PF-127は、プルロニック(Pluronic:登録商標)F-127(ブロッキング剤:HO(CO)(CO)(CO)H、a=101、b=56)であり;DNA-Abは、DNAをヒトAFPに特異的なモノクローナル抗体に結合させたものであり;Hilyte-Abは、Hilyte蛍光色素をヒトAFPに特異的なモノクローナル抗体に結合させたものである。AFP L1及びL3は、精製されたヒトα−フェトプロテインのアイソフォームL1及びL3である。
【0108】
0.1%の有機シリコーン界面活性剤及び0.1%のPF-127をそれぞれ含有する上記の試薬及び試料(50pM AFP L1及び50pM AFP L3を含有するリン酸緩衝生理食塩水)を、ウェルから乾燥したマイクロチャンネル内に直接導入した。液体をチャンネルに押し出すために、ウェルを加圧することも可能である。或いは、有機シリコーン界面活性剤−試薬及び試料をチャンネル内に引き出すために、廃棄用ウェルを減圧することも可能である。引き出された後の試薬及び試料が占める領域は、ゾーンと呼ばれる。例えば、いずれか適切な廃棄用ウェルの1つに−5psiを20秒間印加することによって、試薬及び試料をロードした。次いで、TBからLBへの1,500Vの印加による等速電気泳動(ITP)によって、反応物を動電学的に移行させた。得られた免疫複合体を、狭いバンドに集積させ、HOからLBへの800Vの印加によるキャピラリー電気泳動(CE)によって分離した。データ収集速度は20Hzであった。蛍光検出光学装置を使用し、LB用ウェル近傍の検出窓を通過した蛍光標識免疫複合体を、赤色ダイオード・レーザーによって励起して検出した。これは、非特異的な蛍光ピークから免疫複合体を分離し、例えば、AFP-L3に選択的に結合するレンズマメ(L. culinaris)凝集素(LCA)を含有した篩ゲル内の電気泳動によってAFP-L1と-L3を分離する。
【0109】
界面活性剤無しで、水性の液体を乾燥したマイクロチャンネル内に直接導入した場合、それに伴って気泡が形成されチャンネル壁に付着したが、試薬類に有機シリコーン界面活性剤を添加した場合には、気泡の発生は殆ど防止されるか最小限になり、その結果アッセイが効果的に行われた。図4A(図2Bと同じ)に、チップ(100)を使用してAFP L1(最初のピーク)及びAFP L3(2番目のピーク)を分離・同定した結果を示す。図4Bに、試薬及び試料に有機シリコーン界面活性剤を添加せずに、同じAFPアイソフォーム免疫測定であるを実施した典型的な結果を示す。有機シリコーン海面下製剤を用いる代りに、気泡の形成を抑えるためにチャンネルにアルコールを予備充填し、次に圧力で試薬をチャンネルに導入してアルコールを置換した。この方法によっても同様の効果が観察されたが、アルコールを使って疎水性チャンネルを予め湿らせるという余分な工程が必要であった。更に、実際の日常的な機器への活用という点において、アルコール類は保存及び使用が難しい。
【0110】
実施例2
別の実施例では、疎水性チャンネルの湿潤性を高めることに加えて、試薬への有機シリコーン界面活性剤のような有機シリコーン界面活性剤の添加は、オン・チップAFPアイソフォーム免疫測定の再現性も改善した(表2)。この実施例は、実施例1と同じ試薬を使用して、実施例1と同様に実施した。
【0111】
【表2】

【0112】
オン・チップAFP免疫測定のAFPアイソフォームのピーク面積についての変動係数(CV)は、L1ピーク面積については2.83%であり、L3ピーク面積については3.21%であった。有機シリコーン界面活性剤を使わずにチャンネルにアルコールを予備充填した場合の、AFPアイソフォーム免疫測定のCV値は、L1ピーク面積については5.79%であり、L3ピーク面積については5.8%であった。上記の結果は、6回反復の平均であった。CV値は、再現性が確実にあるという結果を示し、且つその再現性はアルコールの予備充填よりも有機シリコーン界面活性剤使用の方がより良い傾向であることを示した。
【0113】
実施例3
甲状腺刺激ホルモン(TSH)のオン・チップ免疫測定に関する別の実施態様では、上記のようなリーディングバッファーのpHを変化させ、ピーク形状(ピークの高さ及び幅)に及ぼす影響を調べた。この実施例は、ヒトAFPに対するモノクローナル抗体の代わりにTSHに対して特異的なモノクローナル抗体を使用したこと、及びAFPを含む試料の代わりにTSH(血清中100mIU/L)を含む試料を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施した。上記のような試薬及び有機シリコーン界面活性剤を含む試料(100 mIU/LのTSHを含む血清)を、乾燥したプラスチック製マイクロ流体チップのウェルに加え、それを廃棄用ウェルからの陰圧によって乾燥したマイクロチャンネルに充填した。結果は、リーディングバッファーのpHがpH7.5からpH9に上昇するにつれてTSHのピーク形状が鋭くなることを示した。その結果を、図5A及び5Bにまとめる。図5Aに示したように、ピークの高さはpHがpH7.5からpH9.0に上昇するにつれて高まった。一方、図5Bに示したように、ピーク幅はpHがpH7.5からpH9.0に上昇するにつれて減少した。これらの結果は、pHが上昇するにつれてピーク形状が鋭くなることを示している。
【0114】
実施例4
別の実施態様において、各種の湿潤剤について、DCP(デス−カルボキシプロトロンビン)アッセイにおけるチップ充填と分析性能の有効性に関して、試験を行った。このアッセイは、正常な補体のカルボキシ末端アミノ酸の側鎖が欠損した、翻訳後修飾されたプロトロンビンタンパク質である、肝細胞癌のタンパク質バイオマーカーに対するものである。DCPのアッセイでは、AFPアッセイと同様の組成の緩衝液と、電気泳動移動度調整剤としてのDNA又は蛍光標識としてのHilyte色素のいずれかで標識された、DCPタンパク質に特異的な抗体とを使用する。有機シリコーン界面活性剤湿潤剤として、0.1%のTS-HY(3-[ヒドロキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]-ヘプタメチルトリシロキサン)、1%のKF-642、1%のKF-640及び0.04%のTS-ME(2-[メトキシ(ポリエチレンオキシ)-プロピル]ヘプタメチルトリシロキサン)について試験を行った。無気泡チャンネル充填活性を最適化するため、及びそれと同時に、湿潤剤の厄介な性質である発泡活性を低減するために、各種有機シリコーン界面活性剤を所定の濃度に調整した。各種有機シリコーン界面活性剤湿潤剤及びプルロニックF-127を表に明記した通りに添加して、下記の表3に記載したアッセイ試薬を調製した。
【0115】
【表3】

【0116】
pDMA Dは、87,024のMn及び231,127のMwを有する。5μLの試料DCP標準液を、11μLのHilyte緩衝液+34μLの試料緩衝液に加えて希釈した。この希釈試料を、図3に示すマイクロ流体チップの試料用ウェル(S)に添加した。マイクロチップでのAFPアッセイの実施例1及び図3に記載したように、試薬及び試料(TB、DNA緩衝液、試料希釈DCP標準液、及びLB)をマイクロ流体装置の所定のウェルに配置し、実施例1に記載したようにアッセイを実施した。DCPアッセイの電気泳動図を図6に示す。DCP試薬に対して各種有機シリコーン界面活性剤を試験した結果は、以下の通りであった。
【0117】
1.試験したすべての有機シリコーン界面活性剤は、試験した濃度でチップをプライミング及びローディングした後、マイクロ流体装置を気泡無しで充填するのに役立った。
2.移動時間安定性は、試験したすべての有機シリコーン界面活性剤について同等であった。
3.ピーク面積回収率は、KF-640を用いた場合は他の有機シリコーン界面活性剤と比較してピークがブロードになったため、KF-640がDCPアッセイで試験した他のものほど有用ではなかったことを除けば、試験したすべての有機シリコーン界面活性剤について同等であった。
4.発泡活性は、最高から最低の順に、TS-HY>TS-ME=KF-642(KF-640 ND)であった。
【0118】
要約すれば、0.1%のTS-HY(3-[ヒドロキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]-ヘプタメチルトリシロキサン)、0.04%のTS-ME(2-[メトキシ(ポリエチレンオキシ)-プロピル]ヘプタメチルトリシロキサン)及び1%のKF-642(ポリシロキサン)が、DCPアッセイに対して良い分析性能をもたらした。また、1%のKF-642は、DCPアッセイに対する更なる試験の場合と同様、AFPアッセイに対しても良好なチップ充填及び分析性能をもたらすことが判った。添加されたこれらの湿潤剤を含有する試薬の発泡性に関しては、KF-642及びTS-MEが、より発泡活性が低かった。最後に、試薬製剤中の原材料の長期安定性に関しては、KF-642が、加速安定性試験で良好な安定性を示した
【0119】
まとめれば、0.1%のDow-309(2-ヒドロキシ末端トリシロキサン)、0.04%のトリシロキサンSilwet408及び1%のKF-642(ポリシロキサン)が、DCPアッセイに対して良好な分析性能をもたらした。また1%のKF-642は、AFPアッセイに対して良好なチップ充填及び分析性能をもたらすことも判った。添加されたこれらの湿潤剤を含有する試薬の発泡性に関しては、KF-642及びSilwet-408が、より発泡活性が低かった。最後に、試薬製剤中の原材料の長期安定性に関しては、KF-642が、加速安定性試験において非常に安定であった。
【0120】
本発明の他の実施態様は、本明細書に開示された本発明の明細書及び実施を考慮すれば、当業者には明白である。明細書及び実施例は単に例示と考えるべきであり、本発明の真の範囲及び精神は、以下の特許請求の範囲によって示されることが意図されている。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、緩衝液及び有機シリコーン界面活性剤を含む水溶液、及び特に、疎水性表面上の気泡形成を防止又は最小化するために、緩衝液及び有機シリコーン界面活性剤を含む水溶液を、デバイス、特にマイクロ流体デバイスにおける疎水性表面を有するチャンネルに適用する方法に関する。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性表面を有するマイクロ流体チャンネルへ水溶液を適用する方法であって:
緩衝液及び有機シリコーン界面活性剤を含む水溶液を用意し;
その水溶液を疎水性表面を有するマイクロ流体チャンネルへ適用する;
ことを含む当該方法。
【請求項2】
有機シリコーン界面活性剤が、シロキサン基及びシロキサン基に結合するポリエーテル基を含むものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機シリコーン界面活性剤が、下式で示されるものを含むものである、請求項1に記載の方法:

〔式中、Rはそれぞれ独立して、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表し;Zは、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、又はポリエーテル基を表し;Zは、OH基を有する若しくは有さない炭素数1〜4のアルキル基、又はポリエーテル基を表し;Rは、OH基を有する若しくは有さない炭素数1〜4のアルキル基、又は

(式中、Rは、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表す。)を表し;yは、1以上の整数を表し、xは、0以上の整数を表す。〕。
【請求項4】
有機シリコーン界面活性剤が、下式で示されるものを含むものである、請求項1に記載の方法:

〔式中、Rはそれぞれ独立して、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表し;Rは、アルキル基、アセチル基、水素原子又はOH基を表し;Rは、アルキレン基を表し;Rは、水素原子、又はOH基を有する若しくは有さない炭素数1〜4のアルキル基を表し;Rは、OH基を有する若しくは有さない炭素数1〜4のアルキル基、又は

(式中、Rは、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表す。)を表し;yは、1以上の整数を表し;x、m、n、p及びqはそれぞれ独立して、0以上の整数を表す。〕。
【請求項5】
有機シリコーン界面活性剤が、下式[1]又は[1-2]で示されるものを含むものである、請求項1に記載の水溶液:



〔式中、Rは、それぞれ独立して、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表し;Rは、炭素数1〜4のアルキル基、アセチル基、水素原子、又はOH基を表し;Rは、水素原子、又はOH基を有する若しくは有さない炭素数1〜4のアルキル基を表し;Rは、OH基を有する若しくは有さない炭素数1〜4のアルキル基、又は

(式中、Rは、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表す。)を表し;y、m'及びp'はそれぞれ独立して、1以上の整数を表し、x、n'及びq'はそれぞれ独立して、0以上の整数を表す。〕。
【請求項6】
水溶液が、更にブロッキング剤を含むものであって、ブロッキング剤が、ポリ(アルキレンオキサイド)オリゴマー又は/及びポリ−ジメチルアクリルアミド(p-DMA)である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ポリ(アルキレンオキサイド)オリゴマーが、下式で示されるものを含むものである、請求項6に記載の方法:

(式中、Qはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し;Qはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し;Qはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し;Qはそれぞれ独立して、水素原子又は−OH基を表し;a、b及びcはそれぞれ独立して、1以上の整数を表す。)。
【請求項8】
がそれぞれ水素原子であり、Qがそれぞれ水素原子である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
水溶液が、更にブロッキング剤を含むものであり、ブロッキング剤が、有機シリコーン界面活性剤よりも長い鎖長を有するポリ(アルキレンオキオキサイド)オリゴマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ポリ(アルキレンオキサイド)オリゴマーが、下式で示されるものを含むものである、請求項6に記載の方法:

(式中、a=約99〜約101、b=約56〜約69、a=cである。)。
【請求項11】
p-DMAが、50,000以上の数平均分子量及び100,000以上の重量平均分子量を有するものである、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
トレーリング・イオン、リーディング・イオン、分析物、試料、アナログ、標識物質、抗体、抗原、核酸鎖、タンパク質、荷電ポリマー、ミセルを形成する荷電物質及び充填剤から成る群より選ばれる少なくとも1つの成分を水溶液中に含有させること、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
疎水性表面を有するチャンネルが、試料の電気泳動分離用及び/又は試料の免疫測定用の疎水性マイクロ流体チャンネルである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
疎水性表面を有するチャンネルが、マイクロ流体チャンネル内で又はそれに沿って細胞を分類又は計量するための疎水性マイクロ流体チャンネルである、請求項1記載の方法。
【請求項15】
疎水性表面を有するチャンネルが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用、キャピラリーゾーン電気泳動法用又はミセル動電クロマトグラフィー用の疎水性マイクロチャンネル又はマイクロキャピラリーである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
チャンネルに適用するための水溶液であって、
緩衝液及び
有機シリコーン界面活性剤
を含み、
有機シリコーン界面活性剤が下式で示されるものを含むものである、ことを特徴とする当該水溶液:

〔式中、Rはそれぞれ独立して、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表し;Zは、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基又はポリエーテル基を表し;Zは、OH基を有する若しくは有さない炭素数1〜4のアルキル基、又はポリエーテル基を表し;Rは、OH基を有する若しくは有さない炭素数1〜4のアルキル基、又は

(式中、Rは、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表す。)を表し;yは、1以上の整数を表し、xは、0以上の整数を表す。〕。
【請求項17】
有機シリコーン界面活性剤が、下式で示されるものを含むものである、請求項16に記載の水溶液:

〔式中、Rはそれぞれ独立して、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表し;Rは、アルキル基、アセチル基、水素原子、又はOH基を表し;Rはアルキレン基を表し;Rは、水素原子、又はOH基を有する若しくは有さない炭素数1〜4のアルキル基を表し;Rは、OH基を有する若しくは有さない炭素数1〜4のアルキル基、又は

(式中、Rは、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表す。)を表し;yは、1以上の整数を表し、x、m、n、p及びqはそれぞれ独立して、0以上の整数を表す。〕。
【請求項18】
有機シリコーン界面活性剤が、下式[1]又は[1-2]で示されるものを含むものである、請求項16に記載の水溶液:



〔式中、Rはそれぞれ独立して、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表し;Rは、炭素数1〜4のアルキル基、アセチル基、水素原子、又はOH基を表し;Rは、水素原子、又はOH基を有する若しくは有さない炭素数1〜4のアルキル基を表し;Rは、OH基を有する若しくは有さない炭素数1〜4のアルキル基、又は

(式中、Rは、OH基を有する又は有さない炭素数1〜4のアルキル基を表す。)を表し;y、m'及びp'はそれぞれ独立して、1以上の整数を表し;x、n'及びq'はそれぞれ独立して、0以上の整数を表す。〕。
【請求項19】
緩衝液が、約pH6〜約pH8、約pH6〜約pH9、又は約pH6〜約pH10を有するものである、請求項16に記載の水溶液。
【請求項20】
が、−CH基である、請求項16に記載の水溶液。
【請求項21】
更にブロッキング剤を含む、請求項16に記載の水溶液。
【請求項22】
ブロッキング剤が、ポリ(アルキレンオキサイド)オリゴマー又は/及びポリ−ジメチルアクリルアミド(p-DMA)である、請求項21に記載の水溶液。
【請求項23】
ポリ(アルキレンオキサイド)オリゴマーが、下式で示されるものを含むものである、請求項22に記載の水溶液:

(式中、Qはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し;Qはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し;Qはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し;Qはそれぞれ独立して、水素原子又は−OH基を表し;a、b及びcはそれぞれ独立して、1以上の整数を表す。)。
【請求項24】
がそれぞれ水素原子であり、Qがそれぞれ水素原子である、請求項23に記載の水溶液。
【請求項25】
ブロッキング剤が、ポリ(アルキレンオキサイド)オリゴマーであり、有機シリコーン界面活性剤よりも長い鎖長を有するポリ(アルキレンオキシド)オリゴマーである、請求項21に記載の水溶液。
【請求項26】
ポリ(アルキレンオキサイド)オリゴマーが、下式で示されるものを含むものである、請求項22に記載の水溶液:

(式中、a=約99〜約101、b=約56〜約69、a=cである。)。
【請求項27】
p-DMAが、50,000以上の数平均分子量及び100,000以上の重量平均分子量を有するものである、請求項22に記載の水溶液。
【請求項28】
トレーリング・イオン、リーディング・イオン、分析物、試料、アナログ、標識物質、抗体、抗原、核酸鎖、タンパク質、荷電ポリマー、ミセルを形成する荷電物質及び充填剤から成る群より選ばれる少なくとも1つの成分を更に含む、請求項16に記載の水溶液。

【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−515699(P2011−515699A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501817(P2011−501817)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/001907
【国際公開番号】WO2009/120363
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000252300)和光純薬工業株式会社 (105)