説明

チャンバ式インキ供給装置

【課題】チャンバ式インキ供給装置及び方法に関し、チャンバ下部からインキを供給し余剰インキをチャンバ下部からオーバーフローさせて排出するものにおいて、簡素な構成でインキの塗布ムラの発生を抑制することができるようにする。
【解決手段】チャンバ1の上部に配置されるシールブレード3と、チャンバ1の下部に配置されるドクターブレード4と、チャンバ1の下部に配置されるインキ供給口14と、チャンバ1の上部に配置され余剰インキをオーバーフローさせて排出するインキ排出口15と、を有し、インキ排出口15の鉛直方向位置は、シールブレード3の先端エッジ3aとアニロックスローラ6の表面6aとの接触位置よりも上方に設定され、チャンバ1内のインキの液面が接触位置よりも上方に保持されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキソ印刷機のアニロックスロールにインキを供給するために用いて好適な、チャンバ式インキ供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷機には、インキをチャンバ内に貯留して、チャンバ内に面しながら回転する印刷ロールの表面にインキを供給してドクターブレードによって余分なインキを掻き取る方式のチャンバ式インキ供給装置を備えたものがある。例えば、フレキソ印刷機には、アニロックスロールにインキを供給するためにチャンバ式インキ供給装置を備えたものがある(例えば、特許文献1,2参照)。また、グラビア印刷機或いはグラビアコータにも、グラビアロールにインキを供給するためにチャンバ式インキ供給装置を備えたものがある(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
ここで、チャンバ式インキ供給装置を備えたフレキソ印刷機の概要を説明する。
図6は、チャンバ式インキ供給装置を備えたフレキソ印刷機の要部構成を示す図である。図6に示すように、かかるフレキソ印刷機は、チャンバ本体2と、チャンバ本体2に取り付けられたシールブレード3,ドクターブレード4及びサイドシール5とを有するチャンバ1に加えて、アニロックスロール6と、版胴(ゴムロール)7と、圧胴(硬質ロール、ここでは、Crロール)8とを備えている。
【0004】
チャンバ1のインキ貯留空間は、チャンバ本体2と、シールブレード3,ドクターブレード4及びサイドシール5と、アニロックスロール6の円筒状表面6aとによって包囲されて形成される。なお、シールブレード3及びドクターブレード4は、それぞれ先端のエッジ3a,4a(図7参照)をアニロックスロール6の円筒状の表面6aに摺接する。
アニロックスロール6の表面6aには、セル(極めて細かな溝)6bが刻まれておりインキはこのセル6b内に供給される。
【0005】
このようなチャンバ1内には、インキ給排装置10によってインキが蓄えられるようになっており、このチャンバ2内のインキが、回転するアニロックスロール6の表面6aに付着し、アニロックスロール6の表面6aに摺接するドクターブレード4によってセル6b内に付着したインキを残して他の余分なインキが掻き落とされる。その後、アニロックスロール6のセル6b内に残留するインキがゴムロール7外周の印刷絵柄に応じた凸面に転移し、ゴムロール7の凸面上のインキが、ゴムロール7とCrロール8とのニップ部に搬送された被印刷媒体(ここではウェブ)9の印刷対象面(印刷面)9aにインキ像として転写されるようになっている。
【0006】
インキ給排装置10は、図7に示すように、インキタンク11に貯留されたインキを、チャンバ1に設けられたインキ供給口14からチャンバ1内に送り込むポンプ12及びインキ供給路13と、チャンバ1に設けられたインキ排出口(インキ戻り口)15からチャンバ1内の余剰インキをインキタンク11に排出するインキ排出路(インキ戻り路)16と、を有している。
【0007】
なお、チャンバ本体2には、図6,7に示すように、アニロックスロール6に向かって予め設定された一定の圧力(エア圧)が付与されており、チャンバ本体2の支持部2Aに背面を固定されたシールブレード3、及びチャンバ本体2の支持部2Bに固定されたバックプレート、20により背面を支持されたドクターブレード4には、アニロックスロール6に対してこの圧力に応じた適度な押し付け力が作用する。シールブレード3及びドクターブレード4の各先端のエッジが摩耗した場合にも、チャンバ1がアニロックスロール6に接近するように移動しながら、シールブレード3及びドクターブレード4のアニロックスロール6に対する押付力が保持される。
【0008】
サイドシール5は、図6,図7には詳細に図示しないが、シールブレード3とドクターブレード4との間(アニロックスロール6の周方向)に延びるようにその背面をチャンバ本体2に固着され、その両端をシールブレード3及びドクターブレード4に密着され、さらに、その頂面(アニロックスロール7側の面)をアニロックスロール6の表面6aに摺接することにより、チャンバ1内部のインキが漏れないようにシールする。
【0009】
また、シールブレード3は、チャンバ1内部からのインキ漏れ防止のためのシールとして機能する。
ドクターブレード4は、上述のように、先端エッジ4aがアニロックスロール6の表面6aに摺接するが、アニロックスロール6の表面6aを摩耗させない範囲で高い耐摩耗性を有しているものが使用される。
【0010】
ところで、グラビアロールに関する技術として、以下の技術が特許文献3に提案されている。
つまり、グラビアロールの外周面に設けた一群の微少セルに塗液を充填し、ドクターブレードで掻き取って塗工する際に、塗工後のセル内の空気がチャンバ内に取り込まれやすい。そのため、チャンバ内の塗液に気泡を生じやすく、気泡を含む塗液がセルに充填され、あるいは微少気泡をセル内に閉じ込めた状態のままで塗工され、塗工むらを生じる。
【0011】
これに対して、チャンバ内圧を高めると気泡が充填されるのをある程度までは解消できるが、内圧が高くなるとチャンバのシール部から塗液が漏出しやすく、ドクターブレード側から漏出した塗液がドクターブレード外面で固化すると、固化した塗液塊によってグラビアロールの外周面が擦られて、筋状の塗布疵を生じてしまう。
そこで、チャンバのドクターブレード側の端に気層部が存在する状態で、負圧装置で気層部に負圧空気を作用させて塗工を行うようにして、チャンバ内の塗液に含まれる気泡を気層部へ浮上させ、拡散させて積極的に排出する。これにより、気泡を含む塗液がセルに充填されるのを解消して、気泡に由来する塗工むらを解消できる。また、シール部から塗液が漏出するのを阻止でき、ドクターブレードのグラビアロールとの接触部に塗液塊が形成されるのを解消して、常に適正な塗工を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第2716457号公報
【特許文献2】特許第3377466号公報
【特許文献3】特開2003−236429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、フレキソ印刷は、無溶剤のUVインキや水性インキを使用できるため、印刷工程で大気を汚染することが少なく、環境に優しい印刷方法である。また、刷り始めに多量の紙の無駄が発生するオフセット印刷に比べ、フレキソ印刷は、刷り始めから色の安定までが短いため紙の無駄が少なく、経済面においても優れている。
さらに、非常に薄く均一なベタ刷りを得意とし、平滑性の悪い紙(厚紙、段ボール等)やフィルム、布、不織布にも柔軟に対応でき、伸縮性のある薄い素材や肉厚に変化があるフィルムにも高い印刷再現性を発揮することができる。
【0014】
このような利点を有することから、フレキソ印刷は様々な分野に適用されており、その中でも特に、新聞用の印刷用紙の紙面改良を行う技術において、フレキソ印刷は好適である。
つまり、一般的な新聞用紙は、一般的な印刷用紙(事務用紙、書籍等)に比べ、白色度が低い。そのため、文字の印刷を施す前に、白色インキを新聞用紙の印刷面に印刷し紙面改良を行う技術が提案されている。新聞印刷は、一度に大量の印刷を高速で行うものであるため、非常に薄く均一なベタ刷りを得意とするフレキソ印刷は好適である。
【0015】
このように、フレキソ印刷方式によって白色インキ(ホワイトアンカー、以下、WAインキともいう)を用いて紙面改良を行う場合、紙面にこのWAインキを印刷した直後に下流の印刷ユニットにて通常の印刷(つまり、絵柄や文字の印刷)を行うことになる。
そこで、本願発明者らは、速乾性の水性WAインキを利用して紙面改良の試験を繰り返した。その結果、印刷速度を新聞印刷速度に近づくように高速にしていくと、印刷機のローラ周速が6m/s程度以上の高速域において、いわゆる「雨降り」と称されるインキの塗布ムラ(おおよそ幅1mm×長さ3〜20mm程度の縦筋状にインキが塗布されない部分が発生する現象)が発生することが判明した。
【0016】
そして、この「雨降り」が発生する原因が、空気の噛み込みであることを究明した。
なお、今回の紙面改良に適用したフレキソ印刷機用のインキ供給装置は、図6,7に示すように、チャンバ1に対して降下する側にアニロックスロール(印刷ロール)6が回転し、ドクターブレード4をチャンバ1の下方に、シールブレード3をチャンバ1の上方に、それぞれ配置したものである。そして、チャンバ1内の余剰インキはインキ排出口1Bからオーバーフローしてインキタンク11に戻される。チャンバ1内の上部には空気が残存するが、特にエア抜きはされない。こうしたインキ供給装置はフレキソ印刷機には比較的広く適用されている。
【0017】
このように、ドクターブレード4がチャンバ1の下方に配置されるものでは、通常、ドクターブレード4の先端はチャンバ1内の鉛直方向最下部にあってチャンバ1内のインキ液面よりも十分下方にあるので、空気の噛み込みは想定し得なかった。しかし、アニロックスロール6の回転速度が高まると、チャンバ1の上部のシールブレード3の先端エッジアニロックスロール6の表面6aとの間に生じる隙間からチャンバ1内に入り込む空気量が増大し、この入り込んだ空気(気泡等)がインキに混入し、インキに混入した空気の一部がアニロックスロール6のセル6b内に入り込んで、インキが塗布されない部分が発生するものと考えられる。
【0018】
そこで、このようなインキの塗布ムラを抑制することが要望されている。
特許文献3の技術は、気泡を含む塗液がセルに充填されることから塗工むらを生じるものであるが、ここで対象としているインキ供給装置とは、前提とする構成が異なり、セル6b内に空気が入り込むメカニズムも異なるため、かかる課題を解決し得ない。
また、特許文献3に記載されているように、チャンバ1内を加圧したり減圧したりする手法は、加圧装置又は減圧装置が必要になるので、装置の複雑化やコスト増を招くためより簡便な手法で装置の複雑化やコスト増を抑えながら上記課題を解決することが望まれている。
【0019】
本発明、はかかる課題を解決するために創案されたもので、チャンバ下部からインキを供給し余剰インキをチャンバ上部からオーバーフローさせて排出するものにおいて、簡素な構成でインキの塗布ムラの発生を抑制することができるようにした、チャンバ式インキ供給装置及びチャンバ式インキ供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の目的を達成するために、本発明のチャンバ式インキ供給装置は、チャンバの上部に配置され先端をアニロックスロールの表面に摺接するシールブレードと、前記チャンバの下部に配置され先端を前記アニロックスロール表面に摺接するドクターブレードと、前記チャンバの下部に配置され前記チャンバ内にインキを供給するインキ供給口と、前記チャンバの上部に配置され前記チャンバ内の余剰インキをオーバーフローさせて排出するインキ排出口と、を有するチャンバ式インキ供給装置であって、前記インキ排出口の鉛直方向位置は、前記シールブレードの先端エッジと前記アニロックスローラの表面との接触位置よりも上方に設定され、前記チャンバ内のインキの液面が前記接触位置よりも上方に保持されることを特徴としている。
【0021】
前記チャンバ内に、前記チャンバに面する前記アニロックスロール表面に沿う方向に延びて前記チャンバ内のスペースを区切る案内板が設けられていることが好ましい。
また、前記インキ供給口から供給されるインキ供給量が、前記アニロックスロールへの供給により消費されるインキ消費量の2倍以上に設定されていることが好ましい。
また、前記アニロックスロール表面のうちのセルが形成されるセル領域では、ロール軸方向の何れの箇所でも、インキ供給量が前記アニロックスロールのインキ消費量の1倍以上に設定されていることが好ましい。
【0022】
さらに、前記インキ供給口と前記インキ排出口とを結ぶ前記チャンバ内のインキ最短流路が、前記アニロックスロール表面のうちのセルが形成されるセル領域のロール軸方向全域に及んで形成されることが好ましい。
この場合、例えば、前記インキ供給口が前記アニロックスロールの一端側の前記セル領域の内端又は外部に配置され、前記インキ排出口が前記アニロックスロールの他端側の前記セル領域の内端又は外部に配置されていることが好ましい。
【0023】
本発明のチャンバ式インキ供給方法は、シールブレードを上部に配置されドクターブレードを下部に配置されたチャンバ内に、下部のインキ供給口からインキを供給し、さらに、前記チャンバ内からアニロックスロールへ供給し、前記チャンバ内の余剰インキを前記チャンバの上部のインキ排出口からオーバーフローさせて排出する、チャンバ式インキ供給方法であって、前記チャンバ内でのインキ液面が、前記シールブレードの先端エッジと前記アニロックスローラの表面との接触位置よりも上方に保持するようにインキを供給することを特徴としている。
【0024】
前記インキ供給口から供給されるインキ供給量を、前記アニロックスロールへの供給により消費されるインキ消費量の2倍以上になるように調整することが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明のチャンバ式インキ供給装置及びチャンバ式インキ供給方法によれば、チャンバ内のインキの液面が接触位置よりも上方に保持されるので、アニロックスロールの回転速度が高まっても、チャンバ上部のシールブレードの先端エッジとアニロックスローラの表面との間に生じる隙間からチャンバ内への空気の進入が抑制され、チャンバ内に入り込んだ空気(気泡等)がインキに混入して、アニロックスロールの表面(セル)へ付着することが抑制される。また、空気(気泡等)がインキに混入した場合にも、下方のインキ供給口から上方のインキ排出口に向かうインキの流れによって、空気(気泡等)がチャンバ上部に排出され、アニロックスロールの表面(セル)へ付着することが抑制される。これにより、いわゆる「雨降り」と称されるインキの塗布ムラの発生が抑えられる。
【0026】
チャンバ内に、アニロックスロール表面に沿う方向に延びてチャンバ内のスペースを区切る案内板を設けると、チャンバ内においてアニロックスロールの回転に伴い発生する渦流が小型化されて、チャンバ内のインキの液面が接触位置よりも上方に保持され易くなって、空気がインキに混入した場合にも、気泡がチャンバ上部に排出され易くなって、インキの塗布ムラの発生を一層確実に抑えられる。
【0027】
インキ供給口から供給されるインキ供給量が、アニロックスロールへの供給により消費されるインキ消費量の2倍以上に設定されると、チャンバ内のインキの液面が接触位置よりも上方に保持され易くなって、空気がインキに混入した場合にも、気泡がチャンバ上部に排出され易くなって、インキの塗布ムラの発生を一層確実に抑えられる。
または、アニロックスロール表面のうちのセルが形成されるセル領域では、ロール軸方向の何れの箇所でも、インキ供給量がアニロックスロールのインキ消費量の1倍以上に設定されれば、チャンバ内のインキの液面が接触位置よりも上方に保持され易くなって、空気がインキに混入した場合にも、気泡がチャンバ上部に排出され易くなって、インキの塗布ムラの発生を一層確実に抑えられる。
【0028】
あるいは、インキ供給口がアニロックスロールの一端側のセル領域の内端又は外部に配置され、インキ排出口がアニロックスロールの他端側のセル領域の内端又は外部に配置されるなど、インキ供給口とインキ排出口とを結ぶチャンバ内のインキ最短流路が、アニロックスロール表面のうちのセルが形成されるセル領域のロール軸方向全域に及んで形成されると、チャンバ内のインキの液面が接触位置よりも上方に保持され易くなって、空気がインキに混入した場合にも、気泡がチャンバ上部に排出され易くなって、インキの塗布ムラの発生を一層確実に抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態にかかるチャンバ式インキ供給装置の特徴を説明する要部構成図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるチャンバ式インキ供給装置にかかるチャンバを説明する図であって、(a)はチャンバ内の要部斜視図、(b)はチャンバの要部断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるチャンバ式インキ供給装置のチャンバのインキ供給口とインキ排出口との配置理由を説明する模式的正面図であり、(a)は比較配置例を示し、(b)は本実施形態にかかる配置例を示す。
【図4】本発明の一実施形態にかかるチャンバ式インキ供給装置のチャンバのインキ供給口とインキ排出口との配置を説明する模式的正面図であり、(a)〜(d)にそれぞれ比較配置例を示す。
【図5】本発明の一実施形態にかかるチャンバ式インキ供給装置のチャンバのインキ供給口とインキ排出口との配置を説明する模式的正面図であり、(a)〜(d)にそれぞれ本実施形態にかかる配置例を示す。
【図6】一般的なチャンバ式インキ供給装置を備えたフレキソ印刷機の要部構成を示す模式的な斜視図である。
【図7】一般的なチャンバ式インキ供給装置を備えたフレキソ印刷機の模式的な要部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面により、本発明の実施形態を説明する。
まず、図1〜図3を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
なお、本実施形態では、新聞用紙の印刷面の紙面改良、つまり、白色度向上のために、印刷面に例えば水性の白色インキを印刷するために、フレキソ印刷を適用する場合を想定して説明するが、本発明にかかるチャンバ式インキ供給装置及び方法がこのようなフレキソ印刷機に限定されずに広く適用できることは言うまでもない。
【0031】
また、本実施形態にかかるフレキソ印刷機については、既に説明した図6,図7を参照する。
まず、本実施形態にかかるチャンバ式インキ供給装置をそなえたフレキソ印刷機を説明すると、図6に示すように、かかるフレキソ印刷機は、チャンバ本体2と、チャンバ本体2に取り付けられたシールブレード3,ドクターブレード4及びサイドシール(シール部材)5とを有するチャンバ1に加えて、アニロックスロール6と、版胴(ゴムロール)7と、圧胴(硬質ロール、ここでは、Crロール)8と、を備えている。
【0032】
チャンバ1のインキ貯留空間は、チャンバ本体2と、シールブレード3,ドクターブレード4及びサイドシール5と、アニロックスロール6の円筒状表面6aとによって包囲されて形成される。なお、シールブレード3及びドクターブレード4は、図1に示すように、それぞれ先端のエッジ3a,4aをアニロックスロール6の円筒状の表面6aに摺接する。
【0033】
アニロックスロール6の表面6aには、セル(極めて細かな溝)6bが刻まれておりインキはこのセル6b内に供給される。
このようなチャンバ1内には、インキ給排装置10によってインキが蓄えられるようになっており、このチャンバ2内のインキが、回転するアニロックスロール6の表面6aに付着し、アニロックスロール6の表面6aに摺接するドクターブレード4によってセル6b内に付着したインキを残して他の余分なインキが掻き落とされる。その後、アニロックスロール6のセル6b内に残留するインキがゴムロール7外周の印刷絵柄に応じた凸面に転移し、ゴムロール7の凸面上のインキが、ゴムロール7とCrロール8とのニップ部に搬送された被印刷媒体(例えば、ウェブ9等)にインキ像として転写されるようになっている。
【0034】
インキ給排装置10は、図7及び図1に示すように、インキタンク11に貯留されたインキを、チャンバ1に設けられたインキ供給口14からチャンバ1内に送り込むポンプ12及びインキ供給路13と、チャンバ1に設けられたインキ排出口(インキ戻り口)15からチャンバ1内の余剰インキをインキタンク11に排出するインキ排出路(インキ戻り路)16と、を有している。
【0035】
なお、チャンバ本体2には、アニロックスロール6に向かって予め設定された一定の圧力(エア圧)が付与されており、チャンバ本体2の支持部2Aに背面を固定されたシールブレード3、及びチャンバ本体2の支持部2Bに固定されたバックプレート2A0により背面を支持されたドクターブレード4には、アニロックスロール6に対してこの圧力に応じた適度な押し付け力が作用する。シールブレード3及びドクターブレード4の各先端のエッジが摩耗した場合にも、チャンバ1がアニロックスロール6に接近するように移動しながら、シールブレード3及びドクターブレード4のアニロックスロール6に対する押付力が保持される。
【0036】
なお、チャンバ本体2には、アニロックスロール6に向かって予め設定された一定の圧力(エア圧)が付与されており、チャンバ本体2の支持部2Aに支持されたシールブレード3、及びチャンバ本体2の支持部2Aにバックプレート20を支持されたドクターブレード4には、アニロックスロール6に対してこの圧力に応じた適度な押し付け力が作用する。シールブレード3及びドクターブレード4の各先端のエッジが摩耗した場合にも、チャンバ1がアニロックスロール6に接近するように移動しながら、シールブレード3及びドクターブレード4のアニロックスロール6に対する押付力が保持される。
【0037】
サイドシール5は、シールブレード3とドクターブレード4との間(アニロックスロール6の周方向)に延びるようにその背面5aをチャンバ本体2に固着され、その両端(図2(a)中、上端部及び下端部)をシールブレード3及びドクターブレード4に密着され、さらに、その頂面(アニロックスロール7側の面)をアニロックスロール6の表面6aに摺接することにより、チャンバ1内部のインキが漏れないようにシールする。
【0038】
また、シールブレード3は、チャンバ1内部からのインキ漏れ防止のためのシールとして機能するものであれば、材質は樹脂、金属を問わない。シールブレード3には、アニロックスロール6の表面6aと接触するその先端エッジ3aの真直度が高い(寄り直線に近い)ことや、その先端エッジ3aの近傍の面の平面度が高い(寄り平面に近い)ことや、シールブレード3の固定の際のうねりを吸収でき、且つ、未使用の戻りのインキを掻き取らない程度の適度な剛性があり、アニロックスロール6に軽く接触させられるものであればよい。
【0039】
また、ドクターブレード4は、アニロックスロール6に接触する先端エッジ4aの真直度が高く(より直線に近い)、先端エッジ4a近傍の面の平面度が高く(より平面に近い)、且つ、過剰に変形せず、ドクターブレード4の固定の際のうねりを吸収できる程度の適度な剛性があり、アニロックスロール6の全面にフィットするもの、つまり、アニロックスロール6の回転時に、ドクターブレード4の先端エッジ4aが常時アニロックスロール6の表面に接触するもの、が好しい。
【0040】
さらに、ドクターブレード4は、先端エッジ4aがアニロックスロール6の表面6aに摺接するが、アニロックスロール6の表面6aを摩耗させない範囲で高い耐摩耗性を有しているものが好ましい。そこで、ドクターブレード4は、例えばステンレス鋼(SUS)の帯状板材で形成され、その先端エッジ4aの部分近傍のアニロックスロール6の表面6aに摺接する面に、硬化処理としてセラミック溶射によるセラミックコーティングが施され、アニロックスロール6の表面6aを摩耗させない範囲で高い耐摩耗性が確保されている。
【0041】
ここで、本チャンバ式インキ供給装置及び方法にかかる特徴的な構成を説明する。
本装置では、図1に示すように、チャンバ内1aにインキを供給するインキ供給口14がチャンバ1の鉛直方向下部に配置され、チャンバ内1aの余剰インキをオーバーフローさせて排出するインキ排出口15がチャンバ1の上部に配置されたものにおいて、インキ排出口15の鉛直方向位置が、シールブレード3の先端エッジ3aとアニロックスローラ表面6aとの接触位置Pcよりも上方に設定されている。
【0042】
そして、本装置及び方法では、かかる構成に加えて、装置の作動時においても、チャンバ内1aのインキの液面LPcが接触位置Pcよりも上方に保持されるように設定されている。
チャンバ内1aのインキの液面Sが接触位置Pcの鉛直方向レベルLPcよりも上方に保持されるためには、インキ排出口15の鉛直方向位置が接触位置Pcよりも上方に設定されることが必須である。
【0043】
ただし、装置の作動時には、アニロックスロール表面6aのセル6bによる引き込み力によって、チャンバ内1aのインキの液面Sが図1に符号S´で示すように、アニロックスロール表面6aの側で低下し、チャンバ内1aのインキの液面Sがアニロックスロール表面6aの側で低下するおそれが生じる。
そこで、装置の作動時においても、チャンバ内1aのインキの液面Sが接触位置Pcの鉛直方向レベルLPcよりも上方に保持されるように、本実施形態では、下記の構成を採っている。
【0044】
(1)インキ供給口14から供給されるインキ供給量(平均インキ供給量)Qが、アニロックスロールへの供給により消費されるインキ消費量(平均インキ消費量)Qの2倍以上(Q≧2Q)に設定されている。
(2)アニロックスロール表面6aのうちのセル6bが形成される領域(セル領域)では、ロール軸方向(印刷ウェブの幅方向)の何れの箇所でも、インキ供給量(単位長さ当たりのインキ供給量)QS1がアニロックスロールへの供給により消費されるインキ消費量QE1(単位長さ当たりのインキ消費量)の1倍以上(QS1≧QE1)に設定されている。
【0045】
(3)インキ供給口14がアニロックスロール6の一端側のセル領域の外部に配置され、インキ排出口15がアニロックスロール6の他端側のセル領域の外部に配置されている。この構成は、セル領域のロール軸方向全域に及んでインキが通過する構成の一例であり、かかる構成には種々のバリエーションがあり、これについては後述する。
(4)チャンバ1内に、チャンバ1に面するアニロックスロール表面6aに沿う方向に延びてチャンバ1内のスペース(チャンバ内空間)1aをアニロックスロール表面6aの側とチャンバ本体2側とに区切る案内板21が設けられている(図2参照)。案内板21はここでは鉛直方向に延びる薄板平板で構成され、チャンバ内空間1aの上部(上下方向の中間部から上)にのみ設けられている。また、インキ排出口15の近傍は除去されている。
【0046】
(5)チャンバ1内にインキを供給するポンプ12に、例えば一軸偏心ネジポンプなどの無脈動ポンプが用いられている。
構成(1)は、換言すれば、インキタンク11に戻されるインキ戻り量Qがインキ消費量Qと同量以上(1倍以上)に設定されていると言うこともでき、この構成(1)は、インキ戻り量Qとして一定以上、つまり、インキ消費量Qと同量以上の戻り量を与えると、例えば、印刷機のローラ周速が6m/s程度以上の高速域においても、チャンバ内1aのインキの液面Sが接触位置Pcの鉛直方向レベルLPcよりも上方に保持され易いことが試験により判明したために設けられたものである。
【0047】
なお、かかる試験では、インキ供給量(平均インキ供給量)Qはインキ供給路13におけるインキ流量を測定することで把握でき、インキ戻り量Qはインキ排出路16におけるインキ流量を測定することで把握できる。また、インキ消費量(平均インキ消費量)Qはインキ供給量(平均インキ供給量)Qからインキ戻り量Qを減算して求めることもできるが、実測によりインキを印刷した後の乾燥後のウェブ9の単位面積当たりの重量Gaと、インキを印刷する前のウェブ9の単位面積当たりの重量Gbとを得て、印刷後の重量Gから印刷前の重量Gbを減算した値G[=Ga−Gb(g/m)]を算出し、この値(インキの固形分重量)Gと、インキの固形分比αとから、単位面積当たりのインキ塗布量v(g/m)[=G(g/m)/α]を求め、インキ消費量Qを導出することもできる。
【0048】
このようにして、得られた試験結果から、上記の事項が判明した。
構成(2)は、構成(1)とも関係するが、以下の理由により設けられる。
ロール軸方向(印刷ウェブの幅方向)において、インキ供給量QS1は必ずしも均一にはならず、インキ供給量QS1が低いと、インキ供給量(平均インキ供給量)Qがインキ消費量(平均インキ消費量)Qの2倍以上であっても、局所的には、ロール軸方向の一部に、インキ供給量QS1がインキ消費量QE1を下回る(QS1<QE1)場合が考えられ、このような箇所では、チャンバ内1aのインキの液面Sが接触位置Pcの鉛直方向レベルLPcよりも低下するおそれがある。そこで、インキの液面Sが接触位置Pcの鉛直方向レベルLPcよりも上方に保持されるように、ロール軸方向の何れの箇所でも、インキ供給量QS1がインキ消費量QE1の1倍以上(QS1≧QE1)に設定されているのである。
【0049】
構成(3)は、構成(1),(2)とも関係するが、以下の理由により設けられる。
例えば、図3(b)に示すように、チャンバ1を正面(アニロックスロール6側)から見て、インキ供給口14がアニロックスロール6の一端側(図中、右端側)におけるセル領域の外部(若しくはセル領域の内端)に配置され、インキ排出口15がアニロックスロール6の他端側(図中、左端側)におけるセル領域の外部(若しくはセル領域の内端)に配置されていれば、インキ供給口14から供給されたインキはインキ排出口15から排出される過程で、少なくとも、アニロックスロール表面のうちのセルが形成されるセル領域のロール軸方向全域に及んで通過することになる。
【0050】
このように、セル領域のロール軸方向全域に及んでインキが通過すると、ロール軸方向へのインキ供給量QS1が均一化され、ロール軸方向の一部に、局所的にインキ供給量QS1がインキ消費量QE1を下回る(QS1<QE1)といった事態が回避され易くなる。特に、インキ供給量(平均インキ供給量)Qをインキ消費量(平均インキ消費量)Qに対して余裕を持って与えておく(ここでは、Q≧2Q)ことによって、ロール軸方向の何れの箇所でもインキの供給不足が起こらずに、インキ供給量QS1がインキ消費量QE1の1倍以上(QS1≧QE1)の状態を達成できる。
【0051】
このようにロール軸方向の何れの箇所でもインキの供給量不足が起こらないインキ供給口14とインキ排出口15との位置関係は、次のように定義することもできる。
つまり、インキ供給口14とインキ排出口15とを結ぶチャンバ1内のインキ最短流路が、アニロックスロール表面6aのうちのセル6bが形成されるセル領域のロール軸方向全域に及んで形成される。
【0052】
ここで、インキ最短流路とは、チャンバ1を正面(アニロックスロール6側)から見て、インキ供給口14の開口範囲からインキ排出口15の開口範囲までを直線で結んだ領域であって、図3(a),(b)にそれぞれ破線で示すような領域Aである。図3(b)に示すように、このインキ最短流路(領域A)が、ロール軸方向の何れのセル領域にも存在すると、インキ最短流路が、アニロックスロール表面6aのうちのセル6bが形成されるセル領域のロール軸方向全域に及んで形成されると言える。一方、図3(a)に示すように、このインキ最短流路(領域A)が、ロール軸方向の一部のセル領域に存在するが、他のセル領域には存在しなければ、インキ最短流路が形成されないセル領域では、インキの流通量が低下してインキの供給量不足を招き、チャンバ1内への空気の噛み込みによる気泡の発生によって、「雨降り」と称されるインキの塗布ムラが発生するおそれが生じる。
【0053】
例えば、図4(a)〜(d)にそれぞれ示すように、インキ供給口14とインキ排出口15とを配置すると、インキ最短流路(領域A)がセル領域のロール軸方向全域に及んで形成されなくなり、インキ最短流路が形成されないセル領域では、インキの流通量が低下してインキの供給量不足を招き、空気噛み込みによる気泡の発生によって、「雨降り」と称されるインキの塗布ムラが発生するおそれが生じる。
【0054】
一方、図5(a)〜(d)にそれぞれ示すように、インキ供給口14とインキ排出口15とを配置すると、インキ最短流路(領域A)がセル領域のロール軸方向全域に及んで形成され、ロール軸方向の何れの箇所でもインキの供給不足が起こらずに、インキ供給量QS1がインキ消費量QE1の1倍以上(QS1≧QE1)の状態を達成できる。この場合、「雨降り」と称されるインキの塗布ムラが発生するおそれは大幅に抑制される。なお、図5(d)の例では、横並びの3つのインキ供給口14に対してインキ排出口15が横長に連続するので、各インキ供給口14から共通のインキ排出口15へのインキ最短流路(領域A)は、それぞれ破線で囲む領域となるものと考える。
【0055】
また、インキの流れは、インキ供給口14が設けられたチャンバ1の下部からインキ排出口15が設けられたチャンバ1の上部に向かうので、チャンバ1内に気泡等が生じてもこのチャンバ1内を下方から上部に向かう流れに沿ってインキの液面Sに到達し、アニロックスロール表面6aからは離れることになる。したがって、インキ最短流路(領域A)がセル領域のロール軸方向全域に及んで形成されると、このインキの流れによる気泡等の排出効果もセル領域のロール軸方向全域に及ぶことになる。
【0056】
もちろん、インキ供給量(平均インキ供給量)Qをインキ消費量(平均インキ消費量)Qに対して余裕を持って十分に与えておく(ここでは、Q≧2Q)ことが、このインキの流れによる気泡等の排出効果の上でも重要である。
次に、構成(4)は、以下の理由により設けられる。
案内板21は、図2に示す(図1では省略している)ように、チャンバ内空間1aをアニロックスロール表面6aの側とチャンバ本体2側とに区切る。チャンバ内空間1aのアニロックスロール表面6aの側では、セル6bによってアニロックスロール表面6aに沿って渦Vが発生するが、チャンバ内空間1aのアニロックスロール表面6a側は、案内板21により仕切られて狭められているので、発生する渦Vを小さくすることができる。渦Vが小さくなると、チャンバ1内のインキに空気が混入しても気泡が発生し難く、また、発生した気泡も上記の気泡排出効果により排出され易い。また、チャンバ1内のインキの液面の低下も抑制される。
【0057】
構成(5)は、チャンバ1内にインキを供給するポンプ12の脈動は、特に、吐出量が低下すると、インキの供給量不足を招き、上記のように、空気噛み込みによる気泡の発生によって、「雨降り」と称されるインキの塗布ムラが発生するおそれが生じる。勿論、脈動があっても常に十分な吐出量が得られるようにポンプ12の吐出容量を大きいものにすればこのような事態は回避されるが、装置の大型化やコスト増を招く。そこで、ポンプ12に無脈動ポンプを用いて、装置の大型化やコスト増を招くことなく、インキの供給量不足を招かないようにしているのである。
【0058】
本発明の一実施形態にかかるチャンバ式インキ供給装置及び方法は、上述のごとく構成され、装置の作動時においても、チャンバ内1aのインキの液面LPcが接触位置Pcよりも上方に保持されるので、アニロックスロール6の回転時に、シールブレード3の先端エッジ3aとアニロックスローラ表面6aとの間に生じる隙間からチャンバ1内への空気の進入が抑制され、チャンバ1内に入り込んだ空気(気泡等)がインキに混入して、アニロックスロール表面6aのセル6b内へ空気(気泡等)が付着することが抑制される。
【0059】
また、空気(気泡等)がチャンバ1内のインキに混入した場合にも、下方のインキ供給口14から上方のインキ排出口15に向かうインキの流れによって、空気(気泡等)がチャンバ1上部に排出され、これによっても、アニロックスロール表面6aのセル6b内へ空気(気泡等)が付着することが抑制される。
このように、アニロックスロール6のセル6b内へ空気(気泡等)が付着しなければ、いわゆる「雨降り」と称されるインキの塗布ムラの発生が抑えられる。
【0060】
特に、インキ供給口14から供給されるインキ供給量Qが、アニロックスロール6への供給により消費されるインキ消費量Qの2倍以上に設定されること[構成(1)]や、アニロックスロール表面6aのうちのセル6bが形成されるセル領域では、ロール軸方向の何れの箇所でも、インキ供給量QS1がアニロックスロールのインキ消費量QE1の1倍以上に設定されること[構成(2)]や、インキ供給口14とインキ排出口15とを結ぶチャンバ1内のインキ最短流路が、アニロックスロール表面6aのうちのセル6bが形成されるセル領域のロール軸方向全域に及んで形成されること[構成(3)]が、いずれも、シールブレード3の先端エッジ3aとアニロックスローラ表面6aとの間に生じる隙間からチャンバ1内へ空気が進入することを抑制し、空気(気泡等)がチャンバ1内のインキに混入した場合にも、インキ流れによってこの空気(気泡等)がチャンバ1上部に排出されることを促進し、アニロックスロール表面6aのセル6b内へ空気(気泡等)が付着することがより確実に抑制される。
【0061】
また、チャンバ1内に、アニロックスロール表面6aに沿う方向に延びてチャンバ1内のスペース1aを区切る案内板21を設ける[構成(4)]と、チャンバ1内においてアニロックスロール6の回転に伴い発生する渦流Vが小型化されて、チャンバ1内のインキの液面が接触位置よりも上方に保持され易くなって、チャンバ1内への空気の進入を抑制する効果や、空気(気泡等)がチャンバ1内のインキに混入した場合にも、空気(気泡等)をチャンバ1上部に排出する効果を促進する。
【0062】
さらに、ポンプ12に無脈動ポンプを用いること[構成(5)]により、装置の大型化やコスト増を招くことなく、インキの供給量不足を招かないようにすることができ、チャンバ1内への空気の進入を抑制する効果や、空気(気泡等)がチャンバ1内のインキに混入した場合にも、空気(気泡等)をチャンバ1上部に排出する効果を促進する。
【0063】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
例えば、上記実施形態では、インキ供給口14がチャンバ1の鉛直方向下部に配置され、インキ排出口15がチャンバ1の上部に配置されたものにおいて、上記の構成(1)〜(5)を何れも設ける構成としたが、構成(1)〜(5)の何れか1つ又は複数を選択的に適用してもよい。
また、本発明では、インキ供給口14がチャンバ1の鉛直方向下部に配置され、インキ排出口15がチャンバ1の上部に配置されたものにおいて、チャンバ内1aのインキの液面LPcが接触位置Pcよりも上方に保持されるように設定されていればよく、上記の構成(1)〜(5)に限定されるものではない。
【0064】
また、上記実施形態では、紙面改良剤として白色インキを印刷するフレキソ印刷機に用いるチャンバ式インキ供給装置を説明したが、本発明は、新聞印刷やその紙面改良に関するだけでなく、フレキソ印刷機やグラビア印刷機或いはグラビアコータなどの印刷技術に広く適用しうる。
【符号の説明】
【0065】
1 チャンバ
2 チャンバ本体
2A,2B 支持部
3 シールブレード
3a 先端エッジ
4 ドクターブレード
4a 先端エッジ
5 サイドシール
6 アニロックスロール
6a 円筒状表面
6b セル(極めて細かな溝)
7 版胴(ゴムロール)
8 圧胴(硬質ロール、Crロール)
9 被印刷媒体(ウェブ)
9a 印刷対象面(印刷面)
10 インキ給排装置
11 インキタンク
12 ポンプ
13 インキ供給路
14 インキ供給口
15 インキ排出口(インキ戻り口)
16 インキ排出路(インキ戻り路)
20 バックプレート
21 案内板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバの上部に配置され先端をアニロックスロールの表面に摺接するシールブレードと、前記チャンバの下部に配置され先端を前記アニロックスロール表面に摺接するドクターブレードと、前記チャンバの下部に配置され前記チャンバ内にインキを供給するインキ供給口と、前記チャンバの上部に配置され前記チャンバ内の余剰インキをオーバーフローさせて排出するインキ排出口と、を有するチャンバ式インキ供給装置であって、
前記インキ排出口の鉛直方向位置は、前記シールブレードの先端エッジと前記アニロックスローラの表面との接触位置よりも上方に設定され、前記チャンバ内のインキの液面が前記接触位置よりも上方に保持される
ことを特徴とする、チャンバ式インキ供給装置。
【請求項2】
前記チャンバ内に、前記チャンバに面する前記アニロックスロール表面に沿う方向に延びて前記チャンバ内のスペースを区切る案内板が設けられている
ことを特徴とする、請求項1記載のチャンバ式インキ供給装置。
【請求項3】
前記インキ供給口から供給されるインキ供給量が、前記アニロックスロールへの供給により消費されるインキ消費量の2倍以上に設定されている
ことを特徴とする、請求項1又は2記載のチャンバ式インキ供給装置。
【請求項4】
前記アニロックスロール表面のうちのセルが形成されるセル領域では、ロール軸方向の何れの箇所でも、インキ供給量が前記アニロックスロールのインキ消費量の1倍以上に設定されている
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のチャンバ式インキ供給装置。
【請求項5】
前記インキ供給口と前記インキ排出口とを結ぶ前記チャンバ内のインキ最短流路が、前記アニロックスロール表面のうちのセルが形成されるセル領域のロール軸方向全域に及んで形成される
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載のチャンバ式インキ供給装置。
【請求項6】
前記インキ供給口が前記アニロックスロールの一端側の前記セル領域の内端又は外部に配置され、前記インキ排出口が前記アニロックスロールの他端側の前記セル領域の内端又は外部に配置されている
ことを特徴とする、請求項5記載のチャンバ式インキ供給装置。
【請求項7】
シールブレードを上部に配置されドクターブレードを下部に配置されたチャンバ内に、下部のインキ供給口からインキを供給し、さらに、前記チャンバ内からアニロックスロールへ供給し、前記チャンバ内の余剰インキを前記チャンバの上部のインキ排出口からオーバーフローさせて排出する、チャンバ式インキ供給方法であって、
前記チャンバ内でのインキ液面が、前記シールブレードの先端エッジと前記アニロックスローラの表面との接触位置よりも上方を保持するようにインキを供給する
ことを特徴とする、チャンバ式インキ供給方法。
【請求項8】
前記インキ供給口から供給されるインキ供給量を、前記アニロックスロールへの供給により消費されるインキ消費量の2倍以上になるように調整する
ことを特徴とする、請求項7記載のチャンバ式インキ供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−67977(P2011−67977A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219179(P2009−219179)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(310016522)三菱重工印刷紙工機械株式会社 (75)
【Fターム(参考)】