説明

チューブクリップの装着装置

【課題】チューブクリップを正確な位置と角度に取り付けると共に、チューブクリップの組み付け違いを防止するようにしたチューブクリップの装着装置を提供する。
【解決手段】チューブ14を所定の向きに案内するチューブガイド20と、リングを拡径するチューブクリップ拡径手段22と、チューブ14の端部に予め施されたマーキング16の位置と色を検出し、検出された位置が所定範囲内にあり、かつ検出された色が規定色のとき、出力を生じるマーキング検出手段24と、作業員に操作されるとき、出力を生じるスイッチ26と、スイッチ26とマーキング検出手段24に接続され、スイッチ26の出力が生じるとき、チューブクリップ拡径手段22を作動させる一方、マーキング検出手段24の出力が生じるとき、チューブクリップ拡径手段22を停止させるコントローラ30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はチューブクリップの装着装置に関し、より具体的には車両の燃料系などに使用されるゴムチューブにチューブクリップを装着する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した従来技術としては、例えば下記の特許文献1記載の技術を挙げることができる。特許文献1記載の技術にあっては、基台に上下動自在に収容されるロッド状のガイドと、その下端に固定される金属製のロッドと、チューブクリップのクリップを押圧してリングを拡径するプランジャと、チューブが挿入されて光電スイッチの出力が生じたとき、エアを供給してプランジャを前進させると共に、ロッドが近接して近接スイッチの出力が生じたとき、エアの供給を停止させるコントローラとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−113178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の装置において、作業員がガイドにチューブクリップのリングを挿通させた後、チューブを挿入してロッドを下方に変位させたとき、チューブの挿入端から所定距離に相当する距離だけ離間した位置にチューブクリップのリングを装着することができ、チューブの差込に加え、チューブクリップの投入も作業員の手作業とすることで、構成を簡易にして装置としての製造コストを低減することができ、よって零細な企業などでも導入が容易となる。
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の装置は、チューブの挿入端から所定距離に相当する距離だけ離間した位置にチューブクリップを装着することができるものの、チューブがその挿入方向を軸にして回転自在のため、チューブに対するクリップの取り付け角度が不安定になることがあった。さらに、チューブの両端に異なる角度でクリップを装着する必要がある場合、チューブの端部を識別する機能がないため、クリップの組み付け違いが発生することがあった。
【0006】
この発明の目的は上記した課題を解決し、チューブクリップを正確な位置と角度に取り付けると共に、チューブクリップの組み付け違いを防止するようにしたチューブクリップの装着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、請求項1にあっては、弾性変形自在な円形のリングと、前記リングの両端を延長されてなると共に、両側から押圧されるとき前記リングを拡径するクリップとからなるチューブクリップをチューブの両端に異なる角度で装着するチューブクリップの装着装置において、前記チューブを所定の向きに案内するチューブガイドと、前記リングを拡径するチューブクリップ拡径手段と、前記チューブの端部に予め施されたマーキングの位置と色を検出し、前記検出された位置が所定範囲内にあり、かつ前記検出された色が規定色のとき、出力を生じるマーキング検出手段と、作業員に操作されるとき、出力を生じるスイッチと、前記スイッチとマーキング検出手段に接続され、前記スイッチの出力が生じるとき、前記チューブクリップ拡径手段を作動させる一方、前記マーキング検出手段の出力が生じるとき、前記チューブクリップ拡径手段を停止させるコントローラとを備えるように構成した。
【0008】
請求項2に係るチューブクリップの装着装置にあっては、前記チューブガイドは断面視略C字状を呈する溝を備えると共に、前記溝に前記チューブが案内されるように構成した。
【0009】
請求項3に係るチューブクリップの装着装置にあっては、前記チューブクリップ拡径手段は、少なくとも圧縮空気を供給されると前進するプランジャを備え、前記プランジャが前記クリップを押圧して前記リングを拡径するように構成した。
【発明の効果】
【0010】
請求項1にあっては、弾性変形自在な円形のリングと、リングの両端を延長されてなると共に、両側から押圧されるときリングを拡径するクリップとからなるチューブクリップをチューブの両端に異なる角度で装着するチューブクリップの装着装置において、チューブを所定の向きに案内するチューブガイドと、リングを拡径するチューブクリップ拡径手段と、チューブの端部に予め施されたマーキングの位置と色を検出し、検出された位置が所定範囲内にあり、かつ前記検出された色が規定色のとき、出力を生じるマーキング検出手段と、作業員に操作されるとき、出力を生じるスイッチと、スイッチとマーキング検出手段に接続され、スイッチの出力が生じるとき、チューブクリップ拡径手段を作動させる一方、マーキング検出手段の出力が生じるとき、チューブクリップ拡径手段を停止させるコントローラとを備えるように構成したので、チューブクリップを正確な位置に所望の角度に取り付けることができると共に、チューブクリップの組み付け違いを防止することができる。
【0011】
請求項2に係るチューブクリップの装着装置にあっては、チューブガイドは断面視略C字状を呈する溝を備えると共に、溝にチューブが案内されるように構成したので、上記した効果に加え、チューブを確実に所望の方向(角度)に向けることができ、よってチューブクリップを所望の角度に取り付けることができる。
【0012】
請求項3に係るチューブクリップの装着装置にあっては、チューブクリップ拡径手段は、少なくとも圧縮空気を供給されると前進するプランジャを備え、プランジャがクリップを押圧してリングを拡径するように構成したので、上記した効果に加え、弾性力が強いチューブクリップであっても、簡易な構成で拡径させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施例に係るチューブクリップの装着装置の斜視図である。
【図2】図1に示す装置を全体的に示す概略正面断面図である。
【図3】図1に示すチューブクリップの斜視図である。
【図4】図1に示すチューブおよびチューブクリップ装着時の斜視図である。
【図5】図1に示すチューブガイドの近傍を拡大した斜視図である。
【図6】図1に示すチューブクリップ拡径手段の説明図である。
【図7】図1に示すマーキング検出手段の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に即してこの発明に係るチューブクリップの装着装置を実施するための形態について説明する。
【実施例】
【0015】
図1はこの実施例に係るチューブクリップの装着装置(以下「装置」という)10の斜視図、図2は図1に示す装置10を全体的に示す概略正面断面図、図3は図1に示すチューブクリップ12の斜視図、図4は図1に示すチューブ14およびチューブクリップ12装着時の斜視図である。
【0016】
最初に図3を使用して実施例に係る装置10が対象とするチューブクリップ12を説明すると、チューブクリップ12は弾性変形自在な金属材からなり、図示の如く、弾性変形自在な1枚の板ばねを環状に湾曲させたリング12aと、リング12aの両端部にリング12aを拡径するクリップ12bが形成される。
【0017】
クリップ12bは、具体的に、一端の一部分が延長されてから軸方向外方にわずかに突出した第1のツマミ12b1が形成される一方、他端の中央部分には第1のツマミ12b1が交差される係合穴12b2が穿設されると共に、端部が軸方向外方にわずかに突出した第2のツマミ12b3が形成される。
【0018】
チューブクリップ12はクリップ12bの両側から押圧、具体的には、第1、第2のツマミ12b1,12b3が互いに近接する方向に押圧されるとき、リング12aが拡径され、押圧から開放されるとき、弾性力によって復元されて図3に示す形状に復帰する。
【0019】
チューブ14は車両の燃料系などに使用されるゴム製のチューブからなり、図4に示す如く、リング12aの内径に相応した外径の円形断面を備える。チューブ14は、チューブクリップ12のクリップ12bが押圧されて拡径されるときリング12aに挿通され、次いでクリップ12bが押圧から開放されると、リング12aで挟持される。
【0020】
また、チューブ14の両端の外壁には装着方向を示すマーキング16が施されている。具体的には、チューブ14の端部付近にチューブクリップ12の組み付け方向に応じて端部ごとに直径2mmから4mm程度の円形状の異なる色、例えば、黄色と白色のマーキング16が予め印されている。
【0021】
上記を前提として説明すると、装置10は、図1と図2に示す如く、チューブ14を所定の向きに案内するチューブガイド20と、リング12aを拡径するチューブクリップ拡径手段22と、チューブ14の端部に予め施されたマーキング16の位置と色を検出し、検出された位置が所定範囲内にあり、かつ検出された色が規定色のとき、出力を生じるマーキング検出手段24と、作業員に操作されるとき、出力を生じるスイッチ26と、スイッチ26とマーキング検出手段24に接続され、スイッチ26の出力が生じるとき、チューブクリップ拡径手段22を作動させる一方、マーキング検出手段24の出力が生じるとき、チューブクリップ拡径手段22を停止させるコントローラ30とを備える。
【0022】
チューブガイド20が設けられる基台32は、開口部分が下に向いているコ字状を呈し、上部の中央位置付近に円形状に穿設される貫通孔32aと、貫通孔32aの周囲に形成されてチューブクリップ12が載置される載置台32bと、基台32の片方の側面の中央位置付近に円形状に穿設される孔32cを備える。この基台32は作業員の腰付近の高さを備える作業台(図示せず)の上に置かれる。
【0023】
図5は図1に示すチューブガイド20の近傍を拡大した斜視図である。チューブガイド20は、図5に示す如く、基台32の上部にボルトで固定されると共に、上方に開口する断面視略C字状を呈する溝20aが形成される。溝20aはチューブ14の外径と略同一の太さを有し、溝20aにチューブ14を案内自在に構成される。溝20aの長さはチューブ14の直径程度に設定され、チューブ14の長手方向に対して垂直方向への位置ずれを防止する。
【0024】
図1、図2の説明に戻ると、チューブクリップ拡径手段22は、基台32の貫通孔32aの付近に配置されるエアシリンダ22aと、エアシリンダ22aの内部に収容されるプランジャ22bと、エアシリンダ22aに圧縮空気を供給するコンプレッサ22cとを備える。
【0025】
図6は図1に示すチューブクリップ拡径手段22の説明図である。図6に示す如く、エアシリンダ22aがコンプレッサ22c(共に図示せず)からエア(圧縮空気)を供給されると、プランジャ22bは前進し、チューブクリップ12のクリップ12bの一端(具体的には、第1のツマミ12b1)を押圧する。クリップ12bの他端(具体的には、第2のツマミ12b3)は、後述するようにストッパ32dに当接することから、プランジャ22bが前進するにつれ、リング12aを拡径する。プランジャ22bは、エアの供給を停止されると、クリップ12bの反発力によって初期位置に後退する。
【0026】
基台32において、エアシリンダ22aに対向してストッパ32dが配置される。ストッパ32dは、第2のツマミ12b3の形状に合わせて形成され、チューブクリップ12のクリップ12b、具体的には、第1のツマミ12b1がプランジャで押圧されたとき第2のツマミ12b3が移動しないように押さえる役割をする。
【0027】
図1の説明に戻ると、マーキング検出手段24は基台32の近傍に配置され、図7はマーキング検出手段24の説明図である。
【0028】
マーキング検出手段24は、図2、図7に示す如く、赤色、青色、緑色の3色のLEDからなる発光素子がチューブ14のマーキング16に向けて図7の矢印の方向に投射され、3色それぞれの光の反射光を受光素子が受光し、それぞれの光の反射光の比率などからマーキング16の色を検出し、検出された色が予め設定された色であるとき出力を生じるように構成される。
【0029】
また、投射される光のスポットサイズは、マーキング16の直径と略同一であるため、マーキング検出手段24は色を検出することにより、マーキング16の位置が所定範囲内にあるときのみ出力を生じる。
【0030】
このように、マーキング検出手段24はチューブ14が挿入されてマーキング16の位置と色を検出し、検出された位置が所定範囲内にあり、かつ検出された色が規定色のとき、出力を生じるように構成される。別言すると、マーキング検出手段24は逆にマーキング16が検出されなかったとき、もしくはマーキング16の色が設定された色と異なったときは、出力が生じないように構成される。
【0031】
図1の説明に戻ると、基台32の付近には、クリップ拡径指示を入力するスイッチ26が作業員に手動操作自在に設けられる。スイッチ26は、作業員がチューブクリップ12をチューブ14に装着する作業を開始する際に操作され(押され)、作業員に操作されると出力が生じる。
【0032】
コントローラ30はCPU、メモリなどを備えたマイクロコンピュータからなり、スイッチ26とマーキング検出手段24とチューブクリップ拡径手段22に接続され、スイッチ26の出力が生じるとき、チューブクリップ拡径手段22を作動、具体的には、コンプレッサ22cからエアを供給させてプランジャ22bを動作させる。
【0033】
また、コントローラ30はマーキング検出手段24の出力が生じるとき、チューブクリップ拡径手段22を停止、具体的には、エアの供給を停止させてプランジャ22bの動作を停止させる。その結果、プランジャ22bは、クリップ12bの反発力(復元力)で初期位置に復帰させられる。
【0034】
次に、本実施例のチューブクリップの装着装置10の動作について説明する。
【0035】
上記した構成により、装置10は、作業員によって載置台32bにチューブクリップ12が載置されてスイッチ26が操作されたとき、コントローラ30がチューブクリップ拡径手段22を作動し、プランジャ22bを前進させてクリップ12bを押圧してチューブクリップ12を拡径させる。
【0036】
次いでチューブ14がチューブガイド20に案内されて拡径されたリング12a内に挿入されるとき、マーキング検出手段24によってチューブ14に施されたマーキング16が検出され、マーキング検出手段24から出力が生じる場合、コントローラ30はチューブクリップ拡径手段22を停止し、拡径されたリング12aがチューブクリップ12自体の復元力によって初期の形状に戻されることにより、チューブ14の挿入端から所定距離だけ離間した位置にチューブクリップ12のリング12aを装着する。
【0037】
尚、チューブクリップ12が初期の形状に戻ることによって、プランジャ22bも初期位置に復帰する。また、マーキング検出手段24から出力が生じない場合、コントローラ30はチューブクリップ拡径手段22を作動し続け、リング12aを拡径させた状態に保つ。
【0038】
この実施例は上記の如く、弾性変形自在な円形のリング12aと、前記リング12aの両端を延長されてなると共に、両側から押圧されるとき前記リング12aを拡径するクリップ12bとからなるチューブクリップ12をチューブ14の両端に異なる角度で装着するチューブクリップの装着装置10において、前記チューブ14を所定の向きに案内するチューブガイド20と、前記リング12aを拡径するチューブクリップ拡径手段22と、前記チューブ14の端部に予め施されたマーキング16の位置と色を検出し、前記検出された位置が所定範囲内にあり、かつ前記検出された色が規定色のとき、出力を生じるマーキング検出手段24と、作業員に操作されるとき、出力を生じるスイッチ26と、前記スイッチ26とマーキング検出手段24に接続され、前記スイッチ26の出力が生じるとき、前記チューブクリップ拡径手段22を作動させる一方、前記マーキング検出手段24の出力が生じるとき、前記チューブクリップ拡径手段22を停止させるコントローラ30とを備えるように構成したので、チューブクリップを正確な位置に所望の角度に取り付けることができると共に、チューブクリップ12の組み付け違いを防止することができる。
【0039】
また、マーキング16を検出すると同時に自動的にチューブクリップ12がチューブ14に装着されるため、作業工数を削減することができる。尚、障害を持つ者であっても、正確にチューブクリップ12の装着作業ができるようになった。
【0040】
また、前記チューブガイド20は断面視略C字状を呈する溝20aを備えると共に、前記溝20aに前記チューブ14が案内されるように構成したので、上記した効果に加え、チューブ14を確実に所望の方向(角度)に向けることができ、よってチューブクリップ12を所望の角度に取り付けることができる。
【0041】
また、前記チューブクリップ拡径手段22は、少なくとも圧縮空気を供給されると前進するプランジャ22bを備え、前記プランジャ22bが前記クリップ12bを押圧して前記リング12aを拡径するように構成したので、上記した効果に加え、弾性力が強いチューブクリップ12であっても、簡易な構成で拡径させることができる。
【0042】
尚、上記において、スイッチ26などは例示であり、同じような機能を奏するものであれば、どのような手段であっても良い。
【0043】
また、マーキング検出手段24を1個だけ設けたが、2個以上備えても良い。
【符号の説明】
【0044】
10 チューブクリップの装着装置、12 チューブクリップ、12a リング、12b クリップ、14 チューブ、16 マーキング、20 チューブガイド、20a 溝、22 チューブクリップ拡径手段、22b プランジャ、24 マーキング検出手段、26 スイッチ、30 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形自在な円形のリングと、前記リングの両端を延長されてなると共に、両側から押圧されるとき前記リングを拡径するクリップとからなるチューブクリップをチューブの両端に異なる角度で装着するチューブクリップの装着装置において、
a.前記チューブを所定の向きに案内するチューブガイドと、
b.前記リングを拡径するチューブクリップ拡径手段と、
c.前記チューブの端部に予め施されたマーキングの位置と色を検出し、前記検出された位置が所定範囲内にあり、かつ前記検出された色が規定色のとき、出力を生じるマーキング検出手段と、
d.作業員に操作されるとき、出力を生じるスイッチと、
e.前記スイッチとマーキング検出手段に接続され、前記スイッチの出力が生じるとき、前記チューブクリップ拡径手段を作動させる一方、前記マーキング検出手段の出力が生じるとき、前記チューブクリップ拡径手段を停止させるコントローラと、
を備えることを特徴とするチューブクリップの装着装置。
【請求項2】
前記チューブガイドは断面視略C字状を呈する溝を備えると共に、前記溝に前記チューブが案内されることを特徴とする請求項1記載のチューブクリップの装着装置。
【請求項3】
前記チューブクリップ拡径手段は、少なくとも圧縮空気を供給されると前進するプランジャを備え、前記プランジャが前記クリップを押圧して前記リングを拡径することを特徴とする請求項1または2記載のチューブクリップの装着装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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