説明

チューブ及びそれを用いた吐出容器

【課題】容器内面に張り付くことを防止できる可撓性チューブを用いた吐出容器を提供する。
【解決手段】液体W又は粉体の内容物を収容する収容部11と、収容部11の開口に取り付けられ内容物を吸い上げると共に外部に吐出する吐出部13と、を備えた吐出容器10であって、一方の端部を吐出部13に取り付け他方の端部に錘16を取り付け収容部内の内容物を吐出部13へ案内する可撓性のチューブ15を備え、チューブ15の外面が凹凸した粗面に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器を倒立した状態或いは横に向けた状態でも内容物を吐出させることができる吐出容器に係り、特に吐出容器の可撓性チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器内の液体を霧状に噴出する噴霧容器は、通常は、容器を正立させた姿勢で使用に供され、倒立した姿勢では噴霧することができない。例えば、従来の噴霧容器は、容器内の液体を吸い上げるポンプ装置と、このポンプ装置に取り付けられたパイプと、を備えている。このパイプは例えば低密度ポリエチレンなどで硬く形成されているため倒立姿勢ではパイプの口部が液体から出てしまい、液体を当該口部から吸い上げることができなくなるからである。この噴霧容器では、正立時にのみパイプを介して液体を吸い上げることができるので、噴霧容器の利用の範囲が制限される。
【0003】
また、従来では、正立時だけでなく、姿勢が逆さまになった倒立時でも、容器内の液体を霧状に噴出することが可能な噴霧容器が知られている。
特許文献1には正倒立両用スプレー容器が開示されている。この正倒立両用スプレー容器は、吸込弁と空気阻止弁のそれぞれの弁体の移動を規制するストッパを一体化し、このストッパがシリンダ内を摺動可能に構成されている(特許文献1の図1)。
しかし、特許文献1の正倒立両用スプレー容器は、正立専用の噴霧容器と比べて、そのポンプ機構が複雑な構成であるため、製造が容易ではなく、その結果、価格も高くなってしまう。また、特許文献1の正倒立両用スプレー容器では、容器を横向きにした場合、液体を吸い込むシリンダ部分が液体から出てしまうと、液体を容器外に噴出させることができない問題がある。
【0004】
そこで、従来、正倒立両用に対応したポンプ機構を備えることなく、正倒立が兼用可能な噴霧容器が考案されている。
図8は従来の噴霧容器50を示す図である。噴霧容器50は、液体Wを収容する容器本体51と、この容器本体51の上部に形成された口部(図示省略)に着脱自在に取り付けられるキャップ52と、このキャップ52を介して容器本体51に取り付けられるポンプ装置53と、このポンプ装置53から容器本体51へ延出する基筒部54と、この基筒部54に一端が取り付けられるチューブ55と、このチューブ55の他端に取り付けられる錘56と、から構成されている。チューブ55は柔軟な素材で構成されている。
ここで、ポンプ装置53には、液体Wを吸い上げるポンプ機構などが搭載され、容器本体51内の液体Wは、ポンプ機構の動作によってチューブ55と基筒部54を経てポンプ機構内に案内され、さらに圧縮された後にノズル53Aを介して外部へ霧状に噴出される。
この噴霧容器50は、図8に実線で示すように、倒立した姿勢でチューブ55がヘアピン状に曲がってチューブ先端の液体吸込口が常に液体W内に位置するように構成されている。
【0005】
図8に示す噴霧容器50が特許文献2の図4(b)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−102754号公報
【特許文献2】特開2000−289764号公報(図4(b))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、可撓性チューブ55を備えた従来の噴霧容器50では、図8に破線で示すように、容器を倒立させた姿勢でチューブ55が容器内面51Cに張り付いてしまう場合がある。これでは、チューブ55が柔らかくても、液体吸込口が液内に位置しないため、倒立姿勢で噴霧することはできない。
【0008】
この問題を解決するために、チューブ55の液体吸込口付近に設けた錘56を重くすることで、チューブ55を容器内面51Cから剥がすことができるが、噴霧容器50自体の重量増加になってしまう。また、錘56が重くなると、容器内面51Cとの衝突荷重も増し、異音の発生の原因にもなりかねない。
【0009】
本発明は上記の問題を解決し、容器内面に張り付くことを防止できる可撓性チューブ及びそのチューブを用いた吐出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、液体又は粉体の内容物を収容する収容部と、収容部の開口に取り付けられ内容物を吸い上げると共に外部に吐出する吐出部と、を備えた吐出容器であって、一方の端部を吐出部に取り付け他方の端部に錘を取り付けた可撓性のチューブを備え、チューブの外面が凹凸した粗面に形成されていることを特徴としている。
本発明の吐出容器が収容する内容物、つまり液体又は粉体は、香水、整髪料などの化粧用、防虫剤などの衛生用、アルコール等の消毒剤や液状の薬剤などの医療用、植物育成用の薬液や殺虫剤などの農作用の用途に限定されるものではなく、その利用場所も家庭用、工業用、学術用に限定されるものではない。また、液体には、ジェル状、クリーム状等の粘性を有する液状物を含む。
【0011】
本発明の吐出容器において、好ましくは、チューブの内面は凹凸した粗面に形成されている。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、液体又は粉体の内容物を収容する収容部と収容部の開口に取り付けられ内容物を吸い上げると共に外部に吐出する吐出部とを備えた吐出容器に使用され、一方の端部を吐出部に取り付け、他方の端部に錘を取り付ける可撓性のチューブであって、外面が凹凸した粗面に形成されていることを特徴としている。
本発明のチューブにおいて、好ましくは、チューブ内面は凹凸した粗面に形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、正立した姿勢から倒立した姿勢へ移るときに、チューブが容器内面に接触してもチューブ表面が凹凸した粗面に形成されているため、チューブは素早く容器内面から離れることができる。従って、本発明は、図8に示す従来の噴霧容器50のようにチューブ55が容器内面51Cに貼り付いて、使用できない状態に陥ることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る吐出容器を示す図である。
【図2】図1の吐出容器の分解図である。
【図3】図2のA−A線に沿った図1の吐出容器のチューブの模式的断面図である。
【図4】図2のA−A線に沿った図1の吐出容器のチューブの断面図である。
【図5】(A)及び(B)は図1の吐出容器の倒立姿勢での使用状態、(C)は図1の吐出容器の横向きでの使用状態を示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る吐出容器を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係るエアゾールを示す図である。
【図8】従来の噴霧容器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の実施形態に係る噴霧容器10を示す図であり、図2は図1の噴霧容器10の分解図である。
【0016】
噴霧容器10は、液体Wを収容する収容部11と、この収容部11の上部に形成された口部11Aに着脱自在に取り付けられるキャップ12と、このキャップ12を介して収容部11に取り付けられる吐出部であるポンプ装置13と、このポンプ装置13から収容部11へ延出する基筒部14と、この基筒部14に一端が取り付けられるチューブ15と、このチューブ15の他端に取り付けられる錘16と、から構成されている。
【0017】
収容部11は、図2に示すように、円板上の底部11Bと、底部11Bの外周から上方へ連成された筒状部11Dと、筒状部11Dの上部から上方へ行くにつれて縮径化したテーパー部11Eと、テーパー部11Eの上部に形成された口部11Aと、から構成されている。この収容部11は、低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene : LDPE)、高密度ポリエチレン(High Density Polyethylene : HDPE)、ポリプロピレン (Polypropylene : PP)、ポリエチレンテレフタラート (Polyethylene terephthalate : PET)、ポリスチレン (polystyrene : PS)、ポリカーボネート (Polycarbonate : PC)などの樹脂で構成されたものに限らず、アルミニウム、ステンレスなどで構成された金属容器、ガラス容器、セラミック容器を利用してもよい。
【0018】
キャップ12は、収容部11と同様に、樹脂材料で円筒状に形成されている。このキャップ12には、図示省略するが、内面に雌螺子が形成されており、この雌螺子と収容部11の口部11A外面の雄螺子11F(図2参照)とが螺合してキャップ12が収容部11に取り付けられる。キャップ12を収容部11に取り付けた際、それらの間に、例えばポンプ装置13のフランジ13D(図2参照)が挟み込まれることで、ポンプ装置13が収容部11に取り付けられる。
【0019】
ポンプ装置13には、液体Wを吸い上げるポンプ機構(図示省略)などが搭載されている。このポンプ機構の一部が基筒部14で構成されており、基筒部14はポンプ装置13の底部から下方へ突出している。
【0020】
さらに、ポンプ装置13はノズル13Aとトリガー13Bとを備えている。トリガー13Bは弧状に形成されており、一端がポンプ装置13のケース13Cに回転可能に支持されている。
【0021】
利用者がトリガー13Bを引くとポンプ機構が動作して、収容部11内の液体Wがチューブ15と基筒部14とを経てポンプ機構内に案内され、さらに圧縮された後、ノズル13Aを介して外部へ霧状に噴出される。なお、このポンプ機構は、容器内の液体を所定量くみ上げるようにも構成されている。
【0022】
チューブ15は可撓性、つまり弾力があって折れずに柔らかに曲がるように構成されている。
図3は本発明の実施形態に係るチューブ15の模式的断面図であり、下記の表1に示す寸法に設計されている。なお、図3は図2のA−A線に沿った断面図である。
【表1】


上記表1のチューブは、例えばシリコンを原料に構成されている。具体的には主鎖にケイ素と酸素をもつゴムとして構成されている。
【0023】
さらに、本実施形態のチューブ15は図4に示すようにチューブ外面150に、複数の凹部15Aと凸部15Bとを有する。これらの凹凸によってチューブ外面150が粗面、つまり凹凸した粗面に構成されている。図4は図3同様に図2のA−A線に沿った断面図である。
【0024】
このチューブ15は、押出成形機によって製造する際、製造するチューブの押し出し速度を調節することで、表面を凹凸した粗面に形成することができる。
また、このような、チューブ外面150の粗し加工方法に代えて、艶やかな表面のチューブを製造した後に研磨材やサンドペーパーなどで表面を削って粗面に形成してもよい。
【0025】
チューブ15は、図1に示すように、基筒部14の取付位置から容器底11Bまでの距離Lよりも長くなるように寸法が選定されている。
【0026】
このチューブ15の先端部に取り付けられる錘16は、例えば金属又はセラミックなどで構成されている。図示例の錘は球形であるが、形状は図示例に限定されるものではない。なお、錘16は収容部11の内容物より比重の重い材料で構成される。
【0027】
このように構成された、噴霧容器10は、図5(A)及び(B)に示すように倒立させた姿勢でチューブ15が容易に曲がり、錘16が付いている吸込口が液体内に常に入る。また、図5(C)に示すように、容器を横にした状態でも吸込口が液内に常に入る。よって、倒立した姿勢や横にした姿勢でも、液体Wを霧状にして容器外へ噴出させることができる。
【0028】
また、正立した姿勢から倒立した姿勢へ移るとき、チューブ15が容器内面11Cに接触したとしても、チューブ表面が凹凸した粗面に形成されているため、チューブ15は素早く容器内面11Cから離れることができる。
【0029】
このように、本実施形態の噴霧容器10では、可撓性チューブ15の外面が粗面として形成されているため、図8に示す従来の噴霧容器50のようにチューブ55が容器内面51Cに貼り付いて、使用できない状態に陥ることを回避できる。
【0030】
図6は本発明の他の実施形態に係る噴霧容器20の模式図である。
この噴霧容器20は、図1の噴霧容器10と異なり、ポンプ装置23がスプレイガン式ではなく、プッシュボタン式に構成されている。図6のポンプ装置23は、ケース23Cの内側に容器11内の液体を所定量くみ上げるポンプ機構(図示省略)と、このポンプ機構によって吸い上げた液体Wを霧状にするノズル23Aと、を備える点では、図1の噴霧容器10のポンプ装置13と同様の構成であるが、ポンプ機構がボタン23Bを押すことで動作する点で異なる。
【0031】
本発明は、発明の趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施をすることができる。
例えば、ポンプ装置の構造は上記した実施形態に限定されるものではない。
本発明の吐出容器は、吐出部を上記説明のポンプ装置に代えて、バルブ装置を用いて構成されてもよい。例えば、本発明の吐出容器は、図7に示すように、収容部11を缶で構成しこの缶の中に液状・粉状の内容物と液化ガスとを詰めて構成されるエアゾール30として構成することもできる。この場合、ボタン31を押すとバルブ装置32の弁が開いて、つまり収容部内側が容器外と導通して、内容物(図示省略)が液化ガス圧によって容器外へ吐き出される。
また、容器,キャップの形状、サイズも図示例に限定されるものではない。
また、チューブは、シリコン材料だけでなく、他の樹脂材料によってしなることが出来る、つまり可撓性を有するように構成されてもよい。
【0032】
本発明のチューブは、チューブ外面150だけでなく、図4に示すように、内面160も、凹凸した粗面に形成されてもよい。この場合、チューブ内の負圧によってチューブ内面同士が張り合わそうになっても、内面が凸凹しているため、チューブが不通になることを防止できる。
チューブ外面の粗し加工方法と同様に、押出成形機によってチューブの押し出し速度を調節することで、チューブ内面160を粗面に形成することができる。また、成形機のノズルの形状を工夫して、内面160にリブを設けて、凹凸した粗面に形成しても良い。
【0033】
本発明の吐出容器及びチューブは、容器内の内容物を霧状に噴出する所謂『スプレー』に限定されるものでなく、容器内の内容物をそのまま容器外へ吐出させてもよい。また、ポンプ装置やバルブ装置などの吐出部の口部にノズルに代えて、プロペラやメッシュ部材等を設けることで内容物、例えば液体を泡状に吐き出させたり、吐出部の口部に複数の孔を設けて液体をシャワー状に吐き出させたり、吐出部の口部に一つの孔を設けて液体を糸状に吐き出させたりできるように、本発明の吐出容器は構成することができる。
【符号の説明】
【0034】
10,20 噴霧容器
11 収容部
11A 収容部の口部
11B 収容部の容器底
11C 容器内面
12 キャップ
13,23 ポンプ装置
13A,23A ノズル
13B トリガー
13C,23C ケース
14 基筒部
15 チューブ
15A チューブ外面の凹部
15B チューブ外面の凸部
16 錘
23B,31 ボタン
30 エアゾール
32 バルブ装置
W 液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体又は粉体の内容物を収容する収容部と、上記収容部の開口に取り付けられ上記内容物を吸い上げると共に外部に吐出する吐出部と、を備えた吐出容器であって、
一方の端部を上記吐出部に取り付け他方の端部に上記錘を取り付けた可撓性のチューブを備え、
上記チューブの外面が凹凸した粗面に形成されていることを特徴とする、吐出容器。
【請求項2】
前記チューブの内面が凹凸した粗面に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の吐出容器。
【請求項3】
液体又は粉体の内容物を収容する収容部と、上記収容部の開口に取り付けられ上記内容物を吸い上げると共に外部に吐出する吐出部と、を備えた吐出容器に使用され、一方の端部を上記吐出部に取り付け他方の端部に錘を取り付ける可撓性のチューブであって、
外面が凹凸した粗面に形成されていることを特徴とする、吐出容器用のチューブ。
【請求項4】
前記チューブの内面が凹凸した粗面に形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の吐出容器用のチューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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