チューブ型燃料電池
【課題】電池性能が高く、燃料電池の単セルの端部構造により燃料気体及び酸化剤気体のガスシール性能が向上でき、OCVの低下を抑制できる燃料電池を提供する。
【解決手段】燃料電池用チューブ型単セル1は、軸芯から順に内側集電体11、第1触媒電極層12、電解質層13、第2触媒電極層14、外側集電体15を同軸的に積層配置して形成された燃料電池用チューブ型単セル1において、単セル1の少なくとも一方の端部は、少なくとも電解質層13が第2触媒電極層14及び外側集電体15より突出し、突出した電解質層13の外周面が表出していることを特徴とする。
【解決手段】燃料電池用チューブ型単セル1は、軸芯から順に内側集電体11、第1触媒電極層12、電解質層13、第2触媒電極層14、外側集電体15を同軸的に積層配置して形成された燃料電池用チューブ型単セル1において、単セル1の少なくとも一方の端部は、少なくとも電解質層13が第2触媒電極層14及び外側集電体15より突出し、突出した電解質層13の外周面が表出していることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチューブ型燃料電池、特にチューブ型燃料電池を構成するチューブ状単セルの端部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、世界の経済成長と共にエネルギの消費が急激に大きくなり、環境の悪化が懸念されている。そのような状況下、環境問題やエネルギ問題などの解決策として、酸素や空気などの酸化剤ガスと、水素やメタンなどの還元剤ガス(燃料ガス)あるいはメタノールなどの液体燃料を原料として電気化学反応により化学エネルギを電気エネルギに変換して発電する燃料電池の開発が注目されている。特に、出力密度が大きく、しかも変換効率の高い燃料電池がクローズアップされている。
【0003】
従来の平板構造の固体高分子電解質型燃料電池(以下、単に燃料電池と称する)の最小発電単位である単セル(Unit cell)は、一般に固体電解質膜の両側に触媒電極層が接合されている膜電極複合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を有し、この膜電極複合体の両側にはガス拡散層が配置されている。さらに、この二つのガス拡散層の外側にはガス流路を備えたセパレータが配置される。このため、ガス拡散層を介してセパレータを流れた反応気体(燃料ガス及び酸化剤ガス)が膜電極複合体の触媒電極層へ通流されるとともに、発電反応により得られた電流が外部へ伝導される。
【0004】
しかしながら、このような従来の平板構造の燃料電池においては、単セルを構成する固体電解質膜、触媒電極層、ガス拡散層、セパレータの厚さや耐久性等の設計要素が技術上に制限されている。例えば、単位体積当たりの発電反応面積を大きくするために薄い固体電解質膜が要求されている。現在、実用化可能な固体電解質膜として、ナフィオン膜(登録商標:Nafion)が汎用されている。しかしながら、ナフィオン膜は膜厚が一定以下になるとガス透過性が大きくなりすぎる。このため、単セル内部に燃料ガスと酸化剤ガスは漏れやすくなり、クロスリーク(Cross leak)現象が発生し、発電電圧が低下するなどの問題がある。即ち、従来の平板構造の燃料電池において現在以上に単位体積当たりの出力密度を向上することは困難である。
【0005】
これらの問題を解決する方法として、チューブ型(円柱型、円筒型、中空形状)の燃料電池の開発が検討されている。例えば、電解質膜を径の小さいチューブ状とすることにより、発電反応面積を増大させることが可能である。また、型燃料電池をチューブ型形状とすることにより、平板型燃料電池では必要であったセパレータが不要となり、構造上は簡素化されやすいなどの利点がある。さらに、複数本の単セルを束ね、単セルの燃料電極(または酸化剤電極)を並列接続して電池ケースに収容することができる。従って、燃料気体及び酸化剤気体をケース内部に接続し、化学反応により燃料電池として運転させることができる。
【0006】
燃料気体及び酸化剤気体を電池ケース内に供給する際、燃料気体、または酸化剤気体の一方は単セルの軸方向中心部を流れ、他方は単セルの外側を流れることとなる。つまり、電解質層の両側に第1、第2触媒電極層がそれぞれ形成され、燃料気体及び酸化剤気体がそれぞれ第1、第2触媒電極層へ流れることとなる。このため、単セルを収容する電池ケース内で、燃料気体と酸化剤気体が混ざらないように隔壁を設ける必要がある。
【0007】
一般的に、単セルの端部において、第1、第2触媒電極を隔てている電解質層の端面と電池ケースとの間にポッティング部材を接着して介在させることにより、隔壁を形成する。第1触媒電極層(又は第2触媒電極層)に流れる燃料気体及び第2触媒電極層(または第1触媒電極)に流れる酸化剤気体の流路がこの隔壁により分けられ、電池ケース内部に燃料気体室及び酸化剤気体室が形成される。図14または図15は隔壁が設置された燃料電池の内部構造を示している。図14及び図15に示すように、単セルの端部には隔壁が設けられ、電池ケースの内部空間は酸化剤気体室及び燃料気体室に分けられている。
【0008】
隔壁の設置方法として、図14に示すように、単セルの外側集電体の外周面と電池ケースの内壁との間に、ポッティング部材を接着させて隔壁を設ける方法が検討されている。しかしながら、隔壁は外側集電体の外周面に接着して設けられているので、電解質層とは直接接続されていない。このため、酸化剤気体及び燃料気体それぞれが流れる第1、第2触媒電極層の端部(端面)が同じ酸化剤気体(または燃料気体)の雰囲気に露出しているので、触媒電極層の端部(端面)での気体の混合により発電反応の効率が低下する。
【0009】
また、図15に示すように、単セルの端部をポッティング部材により全体的に埋め込む方法も検討されている。図14に示す方法に比べ、図15に示す方法では触媒電極層の端部での気体の混合が軽減されている。しかしながら、平板型燃料電池に比べ、この方法でのポッティング部材によるガスシール性能が依然不十分であり、開回路電圧(Open Circuit Voltage:OCV)の低下を招く要因となる。図16は平板型燃料電池とチューブ型燃料電池のOCVを比較したものである。図16から分かるように、平板型燃料電池のOCVが1.0Vであるのに対して、従来のチューブ型燃料電池のOCVは0.1V低下し、0.9V程度になっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図15に示す隔壁(ポッティング部材)の配置方法はガスシール性能がある程度改善されていたが、電解質層を構成するナフィオン膜が薄く、ポッティング部材と接着する際、接着できるナフィオン膜の端面の幅(膜の厚さ)が小さく、電解質層両側にある反応気体の圧力や分子拡散などの作用により気体の混合が依然発生しやすく、開回路電圧(OCV)が低下するといった燃料電池の性能上の問題が存在している。さらに、極めて薄い膜厚を持つ電解質層の両側に触媒電極層が付着しているため、隔壁を設置する際ポッティング部材を選択的に電解質層の端面に接着することが困難である。結果的に、隔壁を形成する際ポッティング部材が触媒電極層に混入する可能性が高くなる。このため、触媒電極層でポッティング部材による気体詰まりが発生しやすくなり、燃料電池の性能に悪い影響を与えるという問題がある。
【0011】
本発明は上記実状に鑑みでなされたものであり、電池性能が高く、燃料電池の単セルの端部構造により燃料気体及び酸化剤気体のガスシール性能が向上でき、OCVの低下を抑制できる燃料電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の燃料電池用チューブ型単セルは、軸芯から順に内側集電体、第1触媒電極層、電解質層、第2触媒電極層、外側集電体を同軸的に積層配置して形成された燃料電池用チューブ型単セルにおいて、単セルの少なくとも一方の端部は、少なくとも電解質層が第2触媒電極層及び外側集電体より突出し、突出した電解質層の外周面が表出していることを特徴とする。これにより、単セルの端部において、電解質層が第2触媒電極層及び外側集電体より突出しているので、ポッティング部材により隔壁を形成する際、ポッティング部材を電解質層に直接接着することができる。つまり、突出した電解質層の外周面が表出しているため、ポッティング部材を選択的に電解質層の突出した部分の外周面に直接接着することが容易になる。さらに、突出した部分の長さ、即ち突出した部分の外周面の面積を自由に調整することができるため、ガスシール性能を決定するポッティング部材との充分な接着面積及び接着幅を自在に設定することができる。よって、従来方法より高いガスシール性能を確保することができる。
【0013】
また、本発明の燃料電池用チューブ型単セルの端部は、電解質層が第1触媒電極層より突出し内側集電体の外周面を覆うとともに、第1触媒電極層の端部を覆う電解質層先端部を有することが好ましい。これにより、第1触媒電極層の端面が電解質層先端部により包囲されている。このため、ポッティング部材を単セルの端部の電解質層に接着させる際、第1触媒電極層にポッティング部材が混入するのを回避することができる。
【0014】
本発明の燃料電池用チューブ型単セルの端部は、軸芯を中心線とする円錐台形状に突出し、電解質層の部分は円錐台形状の側周面の少なくとも一部として表出していることが好ましい。これにより、単セルの端部は軸芯を中心線とする円錐台形状の側周面に電解質層の端面が表出される。つまり、単セルの端部を円錐台形状に形成することにより、膜厚が小さい電解質層が円錐台形状の側周面に沿って表出され、斜面構造となる。即ち、単セルは、電解質層の膜厚より大きい電解質層表出端面面積を有する端部構造を持っている。従って、ポッティング部材を選択的に電解質層の突出した部分の外周面に直接接着することが容易になる。さらに、側周面(斜面)の勾配を自由に調整すれば、円錐台形状の側周面に表出している電解質層の端面面積を自由に調整することができる。このため、ガスシール性能を決定するポッティング部材との充分な接着面積及び接着幅を自在に設定することができる。よって、従来方法より高いガスシール性能を確保することができる。
【0015】
本発明の燃料電池用チューブ型単セルの製造方法は、軸芯から順に内側集電体、第1触媒電極層、電解質層、第2触媒電極層、外側集電体を同軸的に積層配置して形成された燃料電池用チューブ型単セルの製造方法において、内側集電体の軸方向の所定始点位置より他端部方向に同軸的に第1触媒電極層を形成する第1触媒電極層形成工程と、第1触媒電極層の始点位置近くの所定位置より他端部方向に同軸的に電解質層を形成する電解質層形成工程と、電解質層の所定位置より他端部方向に所定間隔を隔てた位置より他端部方向に同軸的に、順次に第2触媒電極層、外側集電体を形成する第2触媒電極層及び外側集電体形成工程とを有することを特徴とする。これにより、単セルの端部において、電解質層が所定位置から第2触媒電極層の端面までの外周面が表出される。所定位置を設定することにより電解質層の表出する面積が調整され、ポッティング部材と接着する十分な電解質層表出面積を確保することができる。
【0016】
本発明の燃料電池用チューブ型単セルの製造方法は、軸芯から順に内側集電体、第1触媒電極層、電解質層、第2触媒電極層、外側集電体を同軸的に積層配置して形成された燃料電池用チューブ型単セルの製造方法において、内側集電体の外周面上、第1触媒電極層、電解質層、第2触媒電極層をそれぞれ順次形成する第1触媒電極層形成工程、電解質層形成工程、第2触媒電極層形成工程からなる膜電極複合体形成工程と、単セルの少なくとも一方の端部の電解質層を覆う第2触媒電極層の部分を除去する第2電解質層部分除去工程を有することを特徴とする。これにより、膜電極複合体は第2電極層部分除去工程により第2触媒電極層が部分的に除去される。即ち、第2触媒電極層に覆われていた電解質層を表出させることができる。よって、容易にポッティング部材と接着する十分な電解質層表出面積を確保することができる。例えば、レーザービームを用いて、レーザの照射強度及び照射速度を適切に調節し、第2触媒電極層が除去できる程度に制御して照射することにより、電解質層に触れずに第2触媒電極層のみ除去することができる。
【0017】
また、本発明の燃料電池用チューブ型単セルの製造方法の第2触媒電極層部分除去工程は、端部を軸芯を中心線とする円錐台形状に加工し、得られる円錐台形状の側周面の少なくとも一部を電解質層として表出させる円錐台形状に加工する円錐台形状加工工程とすることが好ましい。例えば、単セルの軸芯に対して所定入射角度を持つレーザービームを単セルの端部に照射させ、単セルの端部を円錐台形状に形成することにより、電解質層の部分を円錐台形状の側周面に表出させることができる。よって、電解質層の膜厚よりも大きい電解質層表出幅(端面)を形成することができる。また、レーザービームの入射角度を調節すれば、形成された円錐台形状の側周面の面積を調整することができるため、表出された電解質層の端面は十分な面積を確保することができる。よって、容易にポッティング部材と接着することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の燃料電池用チューブ型単セルによれば、単セルの端部において、電解質層が第2触媒電極層及び外側集電体より突出しているので、ポッティング部材により隔壁を形成する際、ポッティング部材を電解質層に直接接着することができる。つまり、突出した電解質層の外周面が表出しているため、ポッティング部材を選択的に電解質層の突出した部分の外周面に直接接着することが容易になる。さらに、突出した部分の長さ、即ち突出した部分の外周面の面積を自由に調整することができるため、ガスシール性能を決定するポッティング部材との充分な接着面積及び接着幅を自在に設定することができる。よって、従来方法より高いガスシール性能を確保有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る燃料電池用チューブ型単セルの製造方法により製造された単セルについて説明する。
【0020】
(第1実施形態)
本実施形態に係るチューブ型単セルを含む燃料電池の概略構成を図1と図2に示す。図1に示すように、本実施形態に係るチューブ型単セルを含む燃料電池は、チューブ型単セル1(以下、単セル1と称する)と電池ケース2とからなる。電池ケース2は複数本の単セル1を並列に接続し、束ねて収容している。電池ケース2には、燃料気体を送入する燃料ガス送入口201と、酸化剤気体を送入する酸化剤ガス送入口202と、排気口203とが備えられている。また、単セル1が並列に接続され、導電体(図示せず)を介して電流を外部へ伝える。
【0021】
なお、本実施形態の単セル1は、チューブ状であり、その横断面は円形であるが、円形以外の形状、例えば楕円形、あるいは方形などとすることもできる。
【0022】
本実施形態の単セル1を有する燃料電池には、燃料気体は主に水素ガスやメタンなどの気体、場合によってはメタノールのような液体を使用することができる。酸化剤気体は主に酸素ガスや空気などの気体を使用することができる。
【0023】
また、本実施形態の単セル1は図2に示すように、ポッティング部材21を介して、電池ケース2内に固定されている。ポッティング部材21を電池ケース2に設けることにより、電池ケース2の内部空間は酸素ガス室221と水素ガス室222とに分けられ、酸素ガス流路及び水素ガス流路の一部として形成されている。
【0024】
次に、本実施形態の単セル1の構造を図3により説明する。図3に示すように、単セル1は軸芯から順に内側集電体11、第1触媒電極層12、電解質層13、第2触媒電極層14、外側集電体15を同軸的に積層配置して形成されている。なお、第1触媒電極層12と、電解質層13と、第2触媒電極層14とから膜電極複合体(MEA)が構成される。
【0025】
内側集電体11は円柱状支持部材から構成され、内部には気体が通過できるように連続細孔が形成されている。このため、単セル1の中心部に位置する内側集電体11を介して、空気(酸素ガス)が運ばれ、第1触媒電極層(燃料極)に提供される。また、内側集電体11を構成する円柱状支持部材は通電性を備えているので、電気を外部へ伝えることができる。
【0026】
なお、本実施形態において、内側集電体11としては、膜電極複合体MEAにおける発電時に電子を通すために導電性の高い材料であれば特に制限はないが、原料ガスなどの原料の供給路として原料が拡散しやすいように、粉末焼結体、繊維状焼結体、繊維状発泡体などの導電性多孔材料であることが好ましい。導電性の高い材料としては、例えば、金や白金などの金属、カーボン、チタンやカーボンの表面を金や白金などの金属でコーティングしたもの等の導電性を有する材料の多孔質体、またはそれらの筒状中空体でその壁面にパンチング等により孔を設けたもの等が挙げられる。中でも導電性、原料拡散性、耐腐食性等の点から多孔カーボン材料であることが好ましい。内側集電体11が中空体である場合、膜厚は例えば、0.5mm〜10mm、好ましくは1mm〜3mmの範囲である。内側集電体11が中実体である場合、膜厚は、例えば0.5mm〜10mm、好ましくは1mm〜3mmの範囲である。
【0027】
また、ハンチングなどにより筒状中空体である内側集電体11の壁面に設けられる孔の孔径は、通常0.01mm〜1mmの範囲である。
【0028】
本実施形態において筒状支持体として、内側集電体11が使用されているが、これに制限されるものではなく、例えば、内側集電体11の変わりに、テフロン(登録商標)などの離型性のよい樹脂の棒やワイヤなどの円筒状等の支持体を用いることができる。この場合、膜電極複合体MEAを形成後に、支持体から膜電極複合体MEAを取り出せることが可能である。なお、筒状支持体としては、筒状であればよく、例えば、円筒状:三角筒、四角筒、五角筒、六角筒などの多角筒状、楕円筒状などいずれの形状であってもよいが、通常は円筒状である。また、本明細書では、特に説明されない場合には、「筒状」とは、中空体および中実体を含む。
【0029】
本実施形態の単セル1の第1触媒電極層12(空気極)としては、例えば、白金(Pt)等を担持したカーボンなどの触媒をナフィオン(登録商標)などの固体高分子電解質等の樹脂に分散させて成膜されたものである。第1触媒電極層12の膜厚は例えば1μm〜100μm、好ましくは、1μm〜20μmの範囲である。
【0030】
本実施形態の単セル1の電解質層13としては、プロトン(H+)や酸素イオン(O2−)などのイオン伝導性の高い材料であれば特に制限はなく、例えば、固体高分子電解質膜、安定化ジルコニア膜などが挙げられるが、好ましくはパーフルオロスルホン酸系等の固体高分子電解質膜が用いられる。具体的には、ジャパンゴアデックス(株)のゴアセレクト(Goreselect、登録商標)、デュポン社(Du Pont)のナフィオン(Nafion、登録商標)、旭化成(株)のアシプレックス(Aciplex、登録商標)、旭硝子(株)のフレミオン(Flemion、登録商標)などのパーフルオロスルホン酸系固体高分子電解質膜を使用することができる。電解質膜13の膜厚は、例えば10μm〜200μm、好ましくは30μm〜50μmの範囲である。
【0031】
本実施形態の単セル1の第2触媒電極層14(燃料極)としては、白金(Pt)などをルテニウム(Ru)等の他の金属と共に担持したカーボン等の触媒をナフィオンなどの固体高分子電解質等の樹脂に分散させて成膜されたものである。第2触媒電極層14の膜厚は、例えば、1μm〜100μm、好ましくは1μm〜20μmの範囲である。
【0032】
本実施形態の単セル1の外側集電体15は通孔性、通電性を有すると共に、弾性変形可能な部材からなる。具体的に、外側集電体15はSUS(ステンレス鋼)材質の帯状部材(商品名:セルメット、住友電工)で構成される。なお、外側集電体15はこれに限定されるものではなく、通孔性、通電性に優れ且つ弾性変形可能な部材を用いて構成することができる。また、内側集電体11の上にコーティングにより積層した第1触媒電極層12、電解質層13及び第2触媒電極層14の内、径方向の最外面に位置する第2触媒電極層14の外周面にSUS材質の帯状部材を所定の斜角で巻きつけて外側集電体15を形成する。このように、単セル1の内側集電体11と外側集電体15とを、外部回路に電気的に接続し、第1触媒電極層12及び第2触媒電極層14にそれぞれ原料を供給して運転すれば、燃料電池として機能させることができる。
【0033】
次に、本発明の特徴である単セル1の端部の構造について説明する。
【0034】
図3に示したように、単セル1の一方の端部には、電解質層13が第2触媒電極層14及び外側集電体15より突出し、電解質層13の端面131と第2触媒電極層14の端面141との間に所定距離の段差Hが設けられている。また、突出した電解質層13の外周面132が表出している。これにより、後述する隔壁形成工程により形成されるポッティング部材21が突出した電解質層13の外周面132に直接接着可能になっている。つまり、単セル1の端部において、電解質層13が第2触媒電極層14及び外側集電体15より突出し、突出した部分の外周面132が表出しているので、ポッティング部材21を用いて隔壁を形成する際、ポッティング部材21を選択的に電解質層13に直接接着することができる。さらに、突出した部分の長さ、即ち突出した部分の外周面132の面積を自由に調整することができるため、ガスシール性能を決定するポッティング部材21との接着面積及び接着幅Hを自由に設計することができる。よって、従来方法に比べ、ポッティング部材21の設置がより容易となり、かつ高いガスシール性能を有することができる。
【0035】
また、本実施形態の変形例として、図4に示すように、単セル1の一方の端部には、電解質層13が第1触媒電極層12より突出し第1触媒電極層12の端面121を覆う電解質層先端部130を形成している。即ち、単セル1の電解質層13の電解質層先端部130は、その外周面132が表出していると共に、第1触媒電極層12の端面121を包囲するように内側集電体11の外周面112に接触している。よって、第1触媒電極層12は電解質層13と内側集電体11とで包囲されている。このため、ポッティング部材21を電解質層13の外周面132に接着させる際、第1触媒電極層12にポッティング部材21が混入するのを回避することができる。
【0036】
次に、本実施形態の単セル1の製造方法について説明する。
【0037】
本実施形態の単セル1の製造方法は、軸芯から順に内側集電体11、第1触媒電極層12、電解質層13、第2触媒電極層14、外側集電体15を同軸的に積層配置して形成し、内側集電体11の軸方向の所定始点位置より他端部方向に同軸的に第1触媒電極層12を形成する第1触媒電極層形成工程と、第1触媒電極層12の始点位置近くの所定位置より他端部方向に同軸的に電解質層13を形成する電解質層形成工程と、電解質層の所定位置より他端部方向に所定間隔を隔てた位置より他端部方向に同軸的に、順次に第2触媒電極層14、外側集電体15を形成する第2触媒電極層及び外側集電体形成工程とからなる。なお、単セル1の製造に係る単セル加工装置を図5に示す。図5に示すように、単セル加工装置は、主に単セル成形型S1、コーティング用溶液流入通路S11、通路S11を開閉するバルブS12、単セル1の画像情報を採取するセンサーS2及び制御部S3とで構成される。
【0038】
単セル1が単セル成形型S1内に挿入され、センサーS2により単セル1が認識される。なお、センサーS2はCCDカメラなどから構成される。センサーS2からの画像信号情報に基づき、画像処理技術を用いた制御部S3はバルブS12を制御し、コーティング用溶液をコーティング用溶液流入通路S11から単セル成形型S1内に流入させ、単セル1をコーティングすることになる。このように、センサーS2による画像認識とバルブS12の開閉により、単セル1の外周上の必要な部分をコーティング溶液によりコーティングすることができる。なお、本実施形態では、センサーS2はキーエンス製FU−10を使用している。バルブS12はユニコントロールズ製V40を使用している。
【0039】
以下、フローチャートを参照しながら、単セル1の製造方法を説明する。図6は単セル1の製造方法に係るフローチャートである。図6に示すように、単セル成形型S1に単セル1を構成する筒状内側集電体11が挿入され(P1)、センサーS2により内側集電体11が認識される(P2)。センサーS2からの画像情報に基づき、バルブS12の開閉が制御部S3により制御され、第1触媒電極層を形成する第1触媒溶液が通路S11を通して単セル成形型S1に流入される。内側集電体11の軸方向の所定始点位置より他端部方向に同軸的に第1触媒電極層12が形成される(P3)。そして、形成された第1触媒電極層12がセンサーS2により認識され(P4)、センサーS2で出力された第1触媒電極層12の画像情報が制御部S3で処理され、第1触媒電極層12の所定位置(第1触媒電極層の始点の近くの位置)より他端部方向に同軸的に電解質層13が形成される(P5)。次に、形成された電解質層13がセンサーS2により認識され(P6)、電解質層13の始点より所定間隔(図3に示す、段差H)を隔てた位置より他端部方向に同軸的に、第2触媒電極層14が形成される(P7)。最後に、第2触媒電極層14の外周に外側集電体15が形成される(P8)。
【0040】
また、電解質層13を形成する具体的な工程について図7を用いて説明する。図7に示すように、内側集電体11の外周には第1触媒電極層12が形成され、形成された第1触媒電極層12がセンサーS2にて認識される(P41)。センサーS2により採取された第1触媒電極層12の画像情報が制御部S3にて画像処理された後、単セル1の外周面の所定位置から必要な部分が単セル成形型S11に挿入され、制御部S3の指令に従ってバルブS12が開通される(P51)。バルブS12が開通されると、電解質層13を形成する電解質層用高分子溶液が単セル成形型S11に流入される(P52)。そして、電解質層13の形成が開始する(P53)。コーティングにより形成された電解質層13の画像情報がセンサーS2にて採取され、電解質層13の形成状況が認識される(P54)。必要な部位に電解質層13が形成されたことが認識された時点で、制御部S3の指令に従ってバルブS12が閉じられ、(P55)電解質層13の形成が終了する(P56)。
【0041】
このように、単セル1を形成する際、センサーS2及び制御部S3を用いて画像処理を行うため、コーティングする位置、コーティングを行う回数などが制御される。特に、電解質層13の表出している外周面132を正確に形成することができる。また、必要な部分へのコーティングができるため、使用する材料が少量で済み、コスト低減に有利である。
【0042】
本実施形態では、単セル1を成形するために、コーティング溶液の粘度と濃度から、第1触媒電極層12、第2触媒電極層14を形成するのに、それぞれ2回塗布(コーティング)する必要があり、電解質層13を形成するのに10回塗布する必要がある。また、成形速度は1m/minである。なお、電解質層用高分子溶液はデュポン製DE2020を使用している。第1、2触媒電極層溶液はDE2020と触媒溶液の混合液を使用している。
【0043】
第1触媒電極層12を形成する際、所定の間隔(10mm)と長さ(100mm)で第1層(一回目のコーティング)を塗布する。そして第2層(二回目のコーティング)を塗布する。第1層、第2層合わせて第1触媒電極層12の膜厚は20μmになる。電解質層13は図7に示すように成形を行う。単セル1の端部において、第1触媒電極層12の端面121より5mm(H)長くなるように、バルブS12の開閉の制御を変更し電解質層13の成形を行う。10回まで繰り返し塗布し、電解質層13の膜厚は50μmになる。そして、第2触媒電極層14を形成する際、再度制御系を変更し、第1触媒電極層12の形成条件と同様に、2回塗布を行う。第2触媒電極層の膜厚は20μmになる。最後に、所定の長さ(120mm)に切断すると図4に示すような構造体になる。
【0044】
本実施形態の単セル1を電池ケース2に収容しディッピングにてシール処理を行い、燃料電池として電池性能の測定を行った。評価結果は図8に示す。図8から分かるように、従来チューブ型燃料電池の開回路電圧(OCV、約0.9V)に比べ、高いOCV(約1.0V)を有している。図16に比較すると、平板型燃料電池と同じ程度のOCV(約1.0V)を有することも分かる。
【0045】
(第2実施形態)
第2実施形態例を図9に示す。第2実施形態例は、第1実施形態例と基本的に同様の構成である。共通機能を奏する部位には共通の符号を付する。以下、異なる部分を中心として説明する。
【0046】
まず、本実施形態の単セル1の端部について説明する。図9に示すように、本実施形態の単セル1は、主に軸芯から順に内側集電体11、第1触媒電極層12、電解質層13、第2触媒電極層14、外側集電体15を同軸的に積層配置して形成されている。単セル1の一方の端部には、第1触媒電極層12の端面1211、電解質層13の端面1311、第2触媒電極層14の端面1411は、軸芯を中心線とする円錐台形状の側周面Sとして表出している。側周面Sと軸芯との角度Aは90度より小さければ、円錐台形状の側周面Sに表出している電解質層端面1311の表出幅Lは電解質層13の膜厚dより大きくなる。つまり、角度Aを小さくすることにより、電解質層端面1311の表出幅Lを大きくすることができる。従って、電解質層13の表出する端面1311が大きく形成できるため、ポッティング部材21により接着される際、ポッティング部材21が選択的に電解質層13に接着しやすくなる。また、角度Aを調整できることから、ポッティング部材21との接着面(1311)に十分な面積が取れるので、燃料電池のガスシール性能が向上される。
【0047】
このように、電解質層13の端面1311を軸芯に対して所定角度Aを持った円錐台形状の側周面Sに沿って表出させることにより、膜厚幅dより大きい電解質層端面1311(幅L)を有することができる。従って、ポッティング部材21を選択的に電解質層13の突出した部分の外周面1311に直接接着することが容易になる。さらに、角度Aを自由に調整すれば、円錐台形状の側周面Sに表出している電解質層13の端面1311の面積を自由に調整することができる。このため、ガスシール性能を決定するポッティング部材21との接着面積及び接着幅を自在に設定することができる。よって、従来方法より高いガスシール性能を有することができる。
【0048】
次に、本実施形態の単セル1の製造方法について説明する。
【0049】
本実施形態の単セル1の製造方法は、軸芯から順に内側集電体11、第1触媒電極層12、電解質層13、第2触媒電極層14、外側集電体15を同軸的に積層配置して形成し、第1触媒電極層12を形成する第1触媒電極層形成工程と、同軸的に電解質層13を形成する電解質層形成工程と、そして順次に第2触媒電極層14、外側集電体15を形成する第2触媒電極層及び外側集電体形成工程と、単セル1の端部の電解質層13を覆う第2触媒電極層14の部分を除去する第2触媒電極層部分除去工程とからなる。
【0050】
なお、本実施形態では、第2触媒電極層部分除去工程は、単セル1の端部の電解質層13の部分を軸芯を中心線とする円錐台形状に加工し、得られる円錐台形状の側周面Sの一部を電解質層13の端面1311として表出させる円錐台形状に加工する円錐台形状加工工程である。
【0051】
以下、単セル1の端部を円錐台形状として加工する加工工程について詳細に説明する。図10は単セル1の端部の加工方法を示している。図10に示すように、軸芯から内側集電体11、第1触媒電極層12、電解質層13、第2触媒電極層14の順に積層して形成された筒状の単セル1に対して、軸芯Xとは入射角度Aを持つレーザービーム(入射軸Y)を用いて単セル1の端部を加工する。なお、本実施形態例では三菱電機製C02レーザー(ML80R−CP7A)を使用した。レーザービームの出力は5Wで、入射角Aは0.4度かつ照射時間は1sである。一方、単セル1は回転可能な固定手段に支持され、レーザービームの照射により加工される。なお、固定手段の回転速度は30rpmである(回転方向R)。このように、単セル1の端部が斜めにカットすることによりストリップされ、円錐台形状が形成される。また、本実施形態で使用されたレーザービームの強度は調整可能なので、第1触媒電極層12と電解質層13と第2触媒電極層14とで構成されたMEAがストリップされる程度のレーザー強度に調整することにより、内側集電体11はストリップされない。このように、単セル1の端部は円錐台形成に形成され、円錐台形状の側周面Sには少なくとも電解質層13の端面1311が表出されている。表出した電解質層13の端面1311の幅Lは電解質層13の膜厚dより大きく形成できる。このため、電解質層13に直接ポッティング部材21を接着することができる。従って、ガスシール性能が向上でき、OCVの低下を抑制できる。
【0052】
また、レーザービームの入射位置及び入射角Aを予め設定すれば、単セル1のMEAの表出位置及び表出幅が決められる。具体的に、本実施形態では、内側集電体11の表出長さH1(内側集電体11の端面から第1触媒電極層12が表出する位置までの距離)は5mmであり、単セル1のMEAの端面が軸芯方向での長さH2は10mmである。そして、単セル1の端部が円錐台形状に形成された後、第2触媒電極層14の外周面に外側集電体15が形成される。
【0053】
次に、単セル1をポッティング部材21により電池ケース2にてガスシール(ポッティング)を行う。図11はポッティング部材21の設置方法を示す。なお、本実施形態で使用されたポッティング部材21はコニシボンド(MOS7)である。図11に示すように、電池ケース2の両端の開口部にはキャップCが付けられ、キャップCはオーリングなどを用いて電池ケース2の両端の開口部を密閉するように取付けられている。図12はキャップCの正面図を示すものであり、図13はキャップCのI−I縦断面を示すものである。図12、または図13に示すように、キャップCの上部には、所定位置に穴C10が形成されている。また、穴C10は同軸的に形成されている逆円錐台形状部C12及び円筒状部C11を備えている。逆円錐台形状部C12の側周面と軸との間に角度Aが維持されている。また、図11から分かるように、単セル1の端部は穴C10に挿入される。内側集電体11の端部が円筒状部C13まで挿入され、第1触媒電極層12がキャップCの逆円錐台形状部C12まで挿入される。つまり、第1触媒電極層12の端面121が逆円錐台形状部C12の側周面に接触するようになっている。このように、単セル1の端部の一部がギャップCに形成された穴C10に嵌まり込んでいる。穴C10の位置により単セル1の配置が決められる。キャップCの穴C10は単セル1の端部から所定長さH3をキャップ(カバー)することができる。なお、本実施形態では、H3は8mmである。このように、電池ケース2内に単セル1が収容され、さらに開口部にキャップCが取付けられる。電池ケース2内にポッティング部材21を構成する所定量のコニシボンド溶液を注入し、単セル1を収容した電池ケース2を単セル1の軸方向Xの中心部を回転中心として、電池ケース2を回転すれば、電池ケース2内のコニシボンド溶液が遠心力の作用を受け、キャップCの端面C101に接触(付着)した状態で固体化される(常温固化、24時間)。そして、ポッティング部材21が固体化された後にキャップCを除去すれば、ポッティング部材21による単セル1のガスシールが完成する。
【0054】
なお、ポッティング部材21がキャップCに入り込まないようにするために、キャップCは樹脂(LDPE)素材を使用している。また、電池ケース2の内径が一定であるので、ポッティング部材21を形成するコニシボンド溶液の用量によりポッティング部材21のポッティングする領域(ポッティング層の厚み)が調整される。即ち、所定用量のコニシボンドを用いて、ポッティング部材21が単セル1の端部に表出している電解質13の端面131に接着してポッティングを行うことができる。
【0055】
また、キャップCを使用することにより、ポッティング部材21は容易に単セル1の端部にて形成できると共に、第1触媒電極層12に混入しにくくなり、ポッティング部材の混入による気体詰まりを回避することができる。
【0056】
第2実施形態の単セル1を電池ケース2にポッティングし、OCVを測定した結果、図8に示す第1実施形態例と同様に、従来チューブ型燃料電池より高いOCVを有することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の燃料電池用チューブ型単セル及びその製造方法は、チューブ型燃料電池に使用され、工業、例えば自動車産業などの分野に利用でき、または家庭などにもエネルギ源として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施形態に係わるチューブ型燃料電池の概念図である。
【図2】本実施形態に係わるチューブ型燃料電池の縦断面図である。
【図3】第1実施形態の燃料電池用チューブ型単セルの縦断面図である。
【図4】第1実施形態の変形形態の燃料電池用チューブ型単セルの縦断面図である。
【図5】第1実施形態の燃料電池用チューブ型単セルを製造する製造装置の概略図である。
【図6】第1実施形態の燃料電池用チューブ型単セルの製造工程を示すフローチャート図である。
【図7】第1実施形態の燃料電池用チューブ型単セルの電解質層形成工程を示すフローチャート図である。
【図8】本実施形態の燃料電池用チューブ型単セルにおける開回路電圧と従来品との比較図である。
【図9】第2実施形態の燃料電池用チューブ型単セルの縦断面図である。
【図10】第2実施形態の燃料電池用チューブ型単セルの端部の形成方法を示したものである。
【図11】第2実施形態の燃料電池用チューブ型単セルの端部におけるポッティング方法を示したものである。
【図12】第2実施形態の燃料電池用チューブ型単セルに係わるキャップの平面図である。
【図13】第2実施形態の燃料電池用チューブ型単セルに係わるキャップのI−I断面図である。
【図14】従来チューブ型燃料電池用単セルの端部におけるポッティング方法を示したものである。
【図15】従来チューブ型燃料電池用単セルの端部におけるポッティング方法を示したものである。
【図16】従来チューブ型燃料電池における開回路電圧と平板型燃料電池との比較図である。
【符号の説明】
【0059】
1:単セル 2:電池ケース 21:ポッティング部材(隔壁)
201:燃料ガス送入口 202:酸化剤ガス送入口 203:排気口
221:酸素ガス室 222:水素ガス室
11:内側集電体 12:第1触媒電極層 13:電解質層
14:第2触媒電極層 15:外側集電体
131:電解質層端面 132:電解質層外周面 H:段差
130:電解質層先端部 121:第1触媒電極層端面
141:第2触媒電極層端面 111:内側集電体端面 112:内側集電体外周面
S1:成形型 S1センサー S3:制御手段
S11:コーティング用溶液流入通路 S12:バルブ
d:電解質層膜厚 L:電解質層表出端面幅
S:円錐台形状側周面 1211:第1触媒電極層端面
1311:電解質層端面 1411:第2触媒電極層端面
A:円錐台形状の側周面と軸との角(レーザービーム入射角、加工角度)
H1:表出する内側集電体の長さ
H2:表出するMEAの軸方向距離(長さ)R:回転方向
X:単セル軸 Y:レーザービーム照射軸
C:キャップ C10:穴 C11:円筒状部 C12:逆円錐台形状部
H3:キャップ距離(深さ)C101:キャップ端面
【技術分野】
【0001】
本発明はチューブ型燃料電池、特にチューブ型燃料電池を構成するチューブ状単セルの端部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、世界の経済成長と共にエネルギの消費が急激に大きくなり、環境の悪化が懸念されている。そのような状況下、環境問題やエネルギ問題などの解決策として、酸素や空気などの酸化剤ガスと、水素やメタンなどの還元剤ガス(燃料ガス)あるいはメタノールなどの液体燃料を原料として電気化学反応により化学エネルギを電気エネルギに変換して発電する燃料電池の開発が注目されている。特に、出力密度が大きく、しかも変換効率の高い燃料電池がクローズアップされている。
【0003】
従来の平板構造の固体高分子電解質型燃料電池(以下、単に燃料電池と称する)の最小発電単位である単セル(Unit cell)は、一般に固体電解質膜の両側に触媒電極層が接合されている膜電極複合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を有し、この膜電極複合体の両側にはガス拡散層が配置されている。さらに、この二つのガス拡散層の外側にはガス流路を備えたセパレータが配置される。このため、ガス拡散層を介してセパレータを流れた反応気体(燃料ガス及び酸化剤ガス)が膜電極複合体の触媒電極層へ通流されるとともに、発電反応により得られた電流が外部へ伝導される。
【0004】
しかしながら、このような従来の平板構造の燃料電池においては、単セルを構成する固体電解質膜、触媒電極層、ガス拡散層、セパレータの厚さや耐久性等の設計要素が技術上に制限されている。例えば、単位体積当たりの発電反応面積を大きくするために薄い固体電解質膜が要求されている。現在、実用化可能な固体電解質膜として、ナフィオン膜(登録商標:Nafion)が汎用されている。しかしながら、ナフィオン膜は膜厚が一定以下になるとガス透過性が大きくなりすぎる。このため、単セル内部に燃料ガスと酸化剤ガスは漏れやすくなり、クロスリーク(Cross leak)現象が発生し、発電電圧が低下するなどの問題がある。即ち、従来の平板構造の燃料電池において現在以上に単位体積当たりの出力密度を向上することは困難である。
【0005】
これらの問題を解決する方法として、チューブ型(円柱型、円筒型、中空形状)の燃料電池の開発が検討されている。例えば、電解質膜を径の小さいチューブ状とすることにより、発電反応面積を増大させることが可能である。また、型燃料電池をチューブ型形状とすることにより、平板型燃料電池では必要であったセパレータが不要となり、構造上は簡素化されやすいなどの利点がある。さらに、複数本の単セルを束ね、単セルの燃料電極(または酸化剤電極)を並列接続して電池ケースに収容することができる。従って、燃料気体及び酸化剤気体をケース内部に接続し、化学反応により燃料電池として運転させることができる。
【0006】
燃料気体及び酸化剤気体を電池ケース内に供給する際、燃料気体、または酸化剤気体の一方は単セルの軸方向中心部を流れ、他方は単セルの外側を流れることとなる。つまり、電解質層の両側に第1、第2触媒電極層がそれぞれ形成され、燃料気体及び酸化剤気体がそれぞれ第1、第2触媒電極層へ流れることとなる。このため、単セルを収容する電池ケース内で、燃料気体と酸化剤気体が混ざらないように隔壁を設ける必要がある。
【0007】
一般的に、単セルの端部において、第1、第2触媒電極を隔てている電解質層の端面と電池ケースとの間にポッティング部材を接着して介在させることにより、隔壁を形成する。第1触媒電極層(又は第2触媒電極層)に流れる燃料気体及び第2触媒電極層(または第1触媒電極)に流れる酸化剤気体の流路がこの隔壁により分けられ、電池ケース内部に燃料気体室及び酸化剤気体室が形成される。図14または図15は隔壁が設置された燃料電池の内部構造を示している。図14及び図15に示すように、単セルの端部には隔壁が設けられ、電池ケースの内部空間は酸化剤気体室及び燃料気体室に分けられている。
【0008】
隔壁の設置方法として、図14に示すように、単セルの外側集電体の外周面と電池ケースの内壁との間に、ポッティング部材を接着させて隔壁を設ける方法が検討されている。しかしながら、隔壁は外側集電体の外周面に接着して設けられているので、電解質層とは直接接続されていない。このため、酸化剤気体及び燃料気体それぞれが流れる第1、第2触媒電極層の端部(端面)が同じ酸化剤気体(または燃料気体)の雰囲気に露出しているので、触媒電極層の端部(端面)での気体の混合により発電反応の効率が低下する。
【0009】
また、図15に示すように、単セルの端部をポッティング部材により全体的に埋め込む方法も検討されている。図14に示す方法に比べ、図15に示す方法では触媒電極層の端部での気体の混合が軽減されている。しかしながら、平板型燃料電池に比べ、この方法でのポッティング部材によるガスシール性能が依然不十分であり、開回路電圧(Open Circuit Voltage:OCV)の低下を招く要因となる。図16は平板型燃料電池とチューブ型燃料電池のOCVを比較したものである。図16から分かるように、平板型燃料電池のOCVが1.0Vであるのに対して、従来のチューブ型燃料電池のOCVは0.1V低下し、0.9V程度になっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図15に示す隔壁(ポッティング部材)の配置方法はガスシール性能がある程度改善されていたが、電解質層を構成するナフィオン膜が薄く、ポッティング部材と接着する際、接着できるナフィオン膜の端面の幅(膜の厚さ)が小さく、電解質層両側にある反応気体の圧力や分子拡散などの作用により気体の混合が依然発生しやすく、開回路電圧(OCV)が低下するといった燃料電池の性能上の問題が存在している。さらに、極めて薄い膜厚を持つ電解質層の両側に触媒電極層が付着しているため、隔壁を設置する際ポッティング部材を選択的に電解質層の端面に接着することが困難である。結果的に、隔壁を形成する際ポッティング部材が触媒電極層に混入する可能性が高くなる。このため、触媒電極層でポッティング部材による気体詰まりが発生しやすくなり、燃料電池の性能に悪い影響を与えるという問題がある。
【0011】
本発明は上記実状に鑑みでなされたものであり、電池性能が高く、燃料電池の単セルの端部構造により燃料気体及び酸化剤気体のガスシール性能が向上でき、OCVの低下を抑制できる燃料電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の燃料電池用チューブ型単セルは、軸芯から順に内側集電体、第1触媒電極層、電解質層、第2触媒電極層、外側集電体を同軸的に積層配置して形成された燃料電池用チューブ型単セルにおいて、単セルの少なくとも一方の端部は、少なくとも電解質層が第2触媒電極層及び外側集電体より突出し、突出した電解質層の外周面が表出していることを特徴とする。これにより、単セルの端部において、電解質層が第2触媒電極層及び外側集電体より突出しているので、ポッティング部材により隔壁を形成する際、ポッティング部材を電解質層に直接接着することができる。つまり、突出した電解質層の外周面が表出しているため、ポッティング部材を選択的に電解質層の突出した部分の外周面に直接接着することが容易になる。さらに、突出した部分の長さ、即ち突出した部分の外周面の面積を自由に調整することができるため、ガスシール性能を決定するポッティング部材との充分な接着面積及び接着幅を自在に設定することができる。よって、従来方法より高いガスシール性能を確保することができる。
【0013】
また、本発明の燃料電池用チューブ型単セルの端部は、電解質層が第1触媒電極層より突出し内側集電体の外周面を覆うとともに、第1触媒電極層の端部を覆う電解質層先端部を有することが好ましい。これにより、第1触媒電極層の端面が電解質層先端部により包囲されている。このため、ポッティング部材を単セルの端部の電解質層に接着させる際、第1触媒電極層にポッティング部材が混入するのを回避することができる。
【0014】
本発明の燃料電池用チューブ型単セルの端部は、軸芯を中心線とする円錐台形状に突出し、電解質層の部分は円錐台形状の側周面の少なくとも一部として表出していることが好ましい。これにより、単セルの端部は軸芯を中心線とする円錐台形状の側周面に電解質層の端面が表出される。つまり、単セルの端部を円錐台形状に形成することにより、膜厚が小さい電解質層が円錐台形状の側周面に沿って表出され、斜面構造となる。即ち、単セルは、電解質層の膜厚より大きい電解質層表出端面面積を有する端部構造を持っている。従って、ポッティング部材を選択的に電解質層の突出した部分の外周面に直接接着することが容易になる。さらに、側周面(斜面)の勾配を自由に調整すれば、円錐台形状の側周面に表出している電解質層の端面面積を自由に調整することができる。このため、ガスシール性能を決定するポッティング部材との充分な接着面積及び接着幅を自在に設定することができる。よって、従来方法より高いガスシール性能を確保することができる。
【0015】
本発明の燃料電池用チューブ型単セルの製造方法は、軸芯から順に内側集電体、第1触媒電極層、電解質層、第2触媒電極層、外側集電体を同軸的に積層配置して形成された燃料電池用チューブ型単セルの製造方法において、内側集電体の軸方向の所定始点位置より他端部方向に同軸的に第1触媒電極層を形成する第1触媒電極層形成工程と、第1触媒電極層の始点位置近くの所定位置より他端部方向に同軸的に電解質層を形成する電解質層形成工程と、電解質層の所定位置より他端部方向に所定間隔を隔てた位置より他端部方向に同軸的に、順次に第2触媒電極層、外側集電体を形成する第2触媒電極層及び外側集電体形成工程とを有することを特徴とする。これにより、単セルの端部において、電解質層が所定位置から第2触媒電極層の端面までの外周面が表出される。所定位置を設定することにより電解質層の表出する面積が調整され、ポッティング部材と接着する十分な電解質層表出面積を確保することができる。
【0016】
本発明の燃料電池用チューブ型単セルの製造方法は、軸芯から順に内側集電体、第1触媒電極層、電解質層、第2触媒電極層、外側集電体を同軸的に積層配置して形成された燃料電池用チューブ型単セルの製造方法において、内側集電体の外周面上、第1触媒電極層、電解質層、第2触媒電極層をそれぞれ順次形成する第1触媒電極層形成工程、電解質層形成工程、第2触媒電極層形成工程からなる膜電極複合体形成工程と、単セルの少なくとも一方の端部の電解質層を覆う第2触媒電極層の部分を除去する第2電解質層部分除去工程を有することを特徴とする。これにより、膜電極複合体は第2電極層部分除去工程により第2触媒電極層が部分的に除去される。即ち、第2触媒電極層に覆われていた電解質層を表出させることができる。よって、容易にポッティング部材と接着する十分な電解質層表出面積を確保することができる。例えば、レーザービームを用いて、レーザの照射強度及び照射速度を適切に調節し、第2触媒電極層が除去できる程度に制御して照射することにより、電解質層に触れずに第2触媒電極層のみ除去することができる。
【0017】
また、本発明の燃料電池用チューブ型単セルの製造方法の第2触媒電極層部分除去工程は、端部を軸芯を中心線とする円錐台形状に加工し、得られる円錐台形状の側周面の少なくとも一部を電解質層として表出させる円錐台形状に加工する円錐台形状加工工程とすることが好ましい。例えば、単セルの軸芯に対して所定入射角度を持つレーザービームを単セルの端部に照射させ、単セルの端部を円錐台形状に形成することにより、電解質層の部分を円錐台形状の側周面に表出させることができる。よって、電解質層の膜厚よりも大きい電解質層表出幅(端面)を形成することができる。また、レーザービームの入射角度を調節すれば、形成された円錐台形状の側周面の面積を調整することができるため、表出された電解質層の端面は十分な面積を確保することができる。よって、容易にポッティング部材と接着することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の燃料電池用チューブ型単セルによれば、単セルの端部において、電解質層が第2触媒電極層及び外側集電体より突出しているので、ポッティング部材により隔壁を形成する際、ポッティング部材を電解質層に直接接着することができる。つまり、突出した電解質層の外周面が表出しているため、ポッティング部材を選択的に電解質層の突出した部分の外周面に直接接着することが容易になる。さらに、突出した部分の長さ、即ち突出した部分の外周面の面積を自由に調整することができるため、ガスシール性能を決定するポッティング部材との充分な接着面積及び接着幅を自在に設定することができる。よって、従来方法より高いガスシール性能を確保有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る燃料電池用チューブ型単セルの製造方法により製造された単セルについて説明する。
【0020】
(第1実施形態)
本実施形態に係るチューブ型単セルを含む燃料電池の概略構成を図1と図2に示す。図1に示すように、本実施形態に係るチューブ型単セルを含む燃料電池は、チューブ型単セル1(以下、単セル1と称する)と電池ケース2とからなる。電池ケース2は複数本の単セル1を並列に接続し、束ねて収容している。電池ケース2には、燃料気体を送入する燃料ガス送入口201と、酸化剤気体を送入する酸化剤ガス送入口202と、排気口203とが備えられている。また、単セル1が並列に接続され、導電体(図示せず)を介して電流を外部へ伝える。
【0021】
なお、本実施形態の単セル1は、チューブ状であり、その横断面は円形であるが、円形以外の形状、例えば楕円形、あるいは方形などとすることもできる。
【0022】
本実施形態の単セル1を有する燃料電池には、燃料気体は主に水素ガスやメタンなどの気体、場合によってはメタノールのような液体を使用することができる。酸化剤気体は主に酸素ガスや空気などの気体を使用することができる。
【0023】
また、本実施形態の単セル1は図2に示すように、ポッティング部材21を介して、電池ケース2内に固定されている。ポッティング部材21を電池ケース2に設けることにより、電池ケース2の内部空間は酸素ガス室221と水素ガス室222とに分けられ、酸素ガス流路及び水素ガス流路の一部として形成されている。
【0024】
次に、本実施形態の単セル1の構造を図3により説明する。図3に示すように、単セル1は軸芯から順に内側集電体11、第1触媒電極層12、電解質層13、第2触媒電極層14、外側集電体15を同軸的に積層配置して形成されている。なお、第1触媒電極層12と、電解質層13と、第2触媒電極層14とから膜電極複合体(MEA)が構成される。
【0025】
内側集電体11は円柱状支持部材から構成され、内部には気体が通過できるように連続細孔が形成されている。このため、単セル1の中心部に位置する内側集電体11を介して、空気(酸素ガス)が運ばれ、第1触媒電極層(燃料極)に提供される。また、内側集電体11を構成する円柱状支持部材は通電性を備えているので、電気を外部へ伝えることができる。
【0026】
なお、本実施形態において、内側集電体11としては、膜電極複合体MEAにおける発電時に電子を通すために導電性の高い材料であれば特に制限はないが、原料ガスなどの原料の供給路として原料が拡散しやすいように、粉末焼結体、繊維状焼結体、繊維状発泡体などの導電性多孔材料であることが好ましい。導電性の高い材料としては、例えば、金や白金などの金属、カーボン、チタンやカーボンの表面を金や白金などの金属でコーティングしたもの等の導電性を有する材料の多孔質体、またはそれらの筒状中空体でその壁面にパンチング等により孔を設けたもの等が挙げられる。中でも導電性、原料拡散性、耐腐食性等の点から多孔カーボン材料であることが好ましい。内側集電体11が中空体である場合、膜厚は例えば、0.5mm〜10mm、好ましくは1mm〜3mmの範囲である。内側集電体11が中実体である場合、膜厚は、例えば0.5mm〜10mm、好ましくは1mm〜3mmの範囲である。
【0027】
また、ハンチングなどにより筒状中空体である内側集電体11の壁面に設けられる孔の孔径は、通常0.01mm〜1mmの範囲である。
【0028】
本実施形態において筒状支持体として、内側集電体11が使用されているが、これに制限されるものではなく、例えば、内側集電体11の変わりに、テフロン(登録商標)などの離型性のよい樹脂の棒やワイヤなどの円筒状等の支持体を用いることができる。この場合、膜電極複合体MEAを形成後に、支持体から膜電極複合体MEAを取り出せることが可能である。なお、筒状支持体としては、筒状であればよく、例えば、円筒状:三角筒、四角筒、五角筒、六角筒などの多角筒状、楕円筒状などいずれの形状であってもよいが、通常は円筒状である。また、本明細書では、特に説明されない場合には、「筒状」とは、中空体および中実体を含む。
【0029】
本実施形態の単セル1の第1触媒電極層12(空気極)としては、例えば、白金(Pt)等を担持したカーボンなどの触媒をナフィオン(登録商標)などの固体高分子電解質等の樹脂に分散させて成膜されたものである。第1触媒電極層12の膜厚は例えば1μm〜100μm、好ましくは、1μm〜20μmの範囲である。
【0030】
本実施形態の単セル1の電解質層13としては、プロトン(H+)や酸素イオン(O2−)などのイオン伝導性の高い材料であれば特に制限はなく、例えば、固体高分子電解質膜、安定化ジルコニア膜などが挙げられるが、好ましくはパーフルオロスルホン酸系等の固体高分子電解質膜が用いられる。具体的には、ジャパンゴアデックス(株)のゴアセレクト(Goreselect、登録商標)、デュポン社(Du Pont)のナフィオン(Nafion、登録商標)、旭化成(株)のアシプレックス(Aciplex、登録商標)、旭硝子(株)のフレミオン(Flemion、登録商標)などのパーフルオロスルホン酸系固体高分子電解質膜を使用することができる。電解質膜13の膜厚は、例えば10μm〜200μm、好ましくは30μm〜50μmの範囲である。
【0031】
本実施形態の単セル1の第2触媒電極層14(燃料極)としては、白金(Pt)などをルテニウム(Ru)等の他の金属と共に担持したカーボン等の触媒をナフィオンなどの固体高分子電解質等の樹脂に分散させて成膜されたものである。第2触媒電極層14の膜厚は、例えば、1μm〜100μm、好ましくは1μm〜20μmの範囲である。
【0032】
本実施形態の単セル1の外側集電体15は通孔性、通電性を有すると共に、弾性変形可能な部材からなる。具体的に、外側集電体15はSUS(ステンレス鋼)材質の帯状部材(商品名:セルメット、住友電工)で構成される。なお、外側集電体15はこれに限定されるものではなく、通孔性、通電性に優れ且つ弾性変形可能な部材を用いて構成することができる。また、内側集電体11の上にコーティングにより積層した第1触媒電極層12、電解質層13及び第2触媒電極層14の内、径方向の最外面に位置する第2触媒電極層14の外周面にSUS材質の帯状部材を所定の斜角で巻きつけて外側集電体15を形成する。このように、単セル1の内側集電体11と外側集電体15とを、外部回路に電気的に接続し、第1触媒電極層12及び第2触媒電極層14にそれぞれ原料を供給して運転すれば、燃料電池として機能させることができる。
【0033】
次に、本発明の特徴である単セル1の端部の構造について説明する。
【0034】
図3に示したように、単セル1の一方の端部には、電解質層13が第2触媒電極層14及び外側集電体15より突出し、電解質層13の端面131と第2触媒電極層14の端面141との間に所定距離の段差Hが設けられている。また、突出した電解質層13の外周面132が表出している。これにより、後述する隔壁形成工程により形成されるポッティング部材21が突出した電解質層13の外周面132に直接接着可能になっている。つまり、単セル1の端部において、電解質層13が第2触媒電極層14及び外側集電体15より突出し、突出した部分の外周面132が表出しているので、ポッティング部材21を用いて隔壁を形成する際、ポッティング部材21を選択的に電解質層13に直接接着することができる。さらに、突出した部分の長さ、即ち突出した部分の外周面132の面積を自由に調整することができるため、ガスシール性能を決定するポッティング部材21との接着面積及び接着幅Hを自由に設計することができる。よって、従来方法に比べ、ポッティング部材21の設置がより容易となり、かつ高いガスシール性能を有することができる。
【0035】
また、本実施形態の変形例として、図4に示すように、単セル1の一方の端部には、電解質層13が第1触媒電極層12より突出し第1触媒電極層12の端面121を覆う電解質層先端部130を形成している。即ち、単セル1の電解質層13の電解質層先端部130は、その外周面132が表出していると共に、第1触媒電極層12の端面121を包囲するように内側集電体11の外周面112に接触している。よって、第1触媒電極層12は電解質層13と内側集電体11とで包囲されている。このため、ポッティング部材21を電解質層13の外周面132に接着させる際、第1触媒電極層12にポッティング部材21が混入するのを回避することができる。
【0036】
次に、本実施形態の単セル1の製造方法について説明する。
【0037】
本実施形態の単セル1の製造方法は、軸芯から順に内側集電体11、第1触媒電極層12、電解質層13、第2触媒電極層14、外側集電体15を同軸的に積層配置して形成し、内側集電体11の軸方向の所定始点位置より他端部方向に同軸的に第1触媒電極層12を形成する第1触媒電極層形成工程と、第1触媒電極層12の始点位置近くの所定位置より他端部方向に同軸的に電解質層13を形成する電解質層形成工程と、電解質層の所定位置より他端部方向に所定間隔を隔てた位置より他端部方向に同軸的に、順次に第2触媒電極層14、外側集電体15を形成する第2触媒電極層及び外側集電体形成工程とからなる。なお、単セル1の製造に係る単セル加工装置を図5に示す。図5に示すように、単セル加工装置は、主に単セル成形型S1、コーティング用溶液流入通路S11、通路S11を開閉するバルブS12、単セル1の画像情報を採取するセンサーS2及び制御部S3とで構成される。
【0038】
単セル1が単セル成形型S1内に挿入され、センサーS2により単セル1が認識される。なお、センサーS2はCCDカメラなどから構成される。センサーS2からの画像信号情報に基づき、画像処理技術を用いた制御部S3はバルブS12を制御し、コーティング用溶液をコーティング用溶液流入通路S11から単セル成形型S1内に流入させ、単セル1をコーティングすることになる。このように、センサーS2による画像認識とバルブS12の開閉により、単セル1の外周上の必要な部分をコーティング溶液によりコーティングすることができる。なお、本実施形態では、センサーS2はキーエンス製FU−10を使用している。バルブS12はユニコントロールズ製V40を使用している。
【0039】
以下、フローチャートを参照しながら、単セル1の製造方法を説明する。図6は単セル1の製造方法に係るフローチャートである。図6に示すように、単セル成形型S1に単セル1を構成する筒状内側集電体11が挿入され(P1)、センサーS2により内側集電体11が認識される(P2)。センサーS2からの画像情報に基づき、バルブS12の開閉が制御部S3により制御され、第1触媒電極層を形成する第1触媒溶液が通路S11を通して単セル成形型S1に流入される。内側集電体11の軸方向の所定始点位置より他端部方向に同軸的に第1触媒電極層12が形成される(P3)。そして、形成された第1触媒電極層12がセンサーS2により認識され(P4)、センサーS2で出力された第1触媒電極層12の画像情報が制御部S3で処理され、第1触媒電極層12の所定位置(第1触媒電極層の始点の近くの位置)より他端部方向に同軸的に電解質層13が形成される(P5)。次に、形成された電解質層13がセンサーS2により認識され(P6)、電解質層13の始点より所定間隔(図3に示す、段差H)を隔てた位置より他端部方向に同軸的に、第2触媒電極層14が形成される(P7)。最後に、第2触媒電極層14の外周に外側集電体15が形成される(P8)。
【0040】
また、電解質層13を形成する具体的な工程について図7を用いて説明する。図7に示すように、内側集電体11の外周には第1触媒電極層12が形成され、形成された第1触媒電極層12がセンサーS2にて認識される(P41)。センサーS2により採取された第1触媒電極層12の画像情報が制御部S3にて画像処理された後、単セル1の外周面の所定位置から必要な部分が単セル成形型S11に挿入され、制御部S3の指令に従ってバルブS12が開通される(P51)。バルブS12が開通されると、電解質層13を形成する電解質層用高分子溶液が単セル成形型S11に流入される(P52)。そして、電解質層13の形成が開始する(P53)。コーティングにより形成された電解質層13の画像情報がセンサーS2にて採取され、電解質層13の形成状況が認識される(P54)。必要な部位に電解質層13が形成されたことが認識された時点で、制御部S3の指令に従ってバルブS12が閉じられ、(P55)電解質層13の形成が終了する(P56)。
【0041】
このように、単セル1を形成する際、センサーS2及び制御部S3を用いて画像処理を行うため、コーティングする位置、コーティングを行う回数などが制御される。特に、電解質層13の表出している外周面132を正確に形成することができる。また、必要な部分へのコーティングができるため、使用する材料が少量で済み、コスト低減に有利である。
【0042】
本実施形態では、単セル1を成形するために、コーティング溶液の粘度と濃度から、第1触媒電極層12、第2触媒電極層14を形成するのに、それぞれ2回塗布(コーティング)する必要があり、電解質層13を形成するのに10回塗布する必要がある。また、成形速度は1m/minである。なお、電解質層用高分子溶液はデュポン製DE2020を使用している。第1、2触媒電極層溶液はDE2020と触媒溶液の混合液を使用している。
【0043】
第1触媒電極層12を形成する際、所定の間隔(10mm)と長さ(100mm)で第1層(一回目のコーティング)を塗布する。そして第2層(二回目のコーティング)を塗布する。第1層、第2層合わせて第1触媒電極層12の膜厚は20μmになる。電解質層13は図7に示すように成形を行う。単セル1の端部において、第1触媒電極層12の端面121より5mm(H)長くなるように、バルブS12の開閉の制御を変更し電解質層13の成形を行う。10回まで繰り返し塗布し、電解質層13の膜厚は50μmになる。そして、第2触媒電極層14を形成する際、再度制御系を変更し、第1触媒電極層12の形成条件と同様に、2回塗布を行う。第2触媒電極層の膜厚は20μmになる。最後に、所定の長さ(120mm)に切断すると図4に示すような構造体になる。
【0044】
本実施形態の単セル1を電池ケース2に収容しディッピングにてシール処理を行い、燃料電池として電池性能の測定を行った。評価結果は図8に示す。図8から分かるように、従来チューブ型燃料電池の開回路電圧(OCV、約0.9V)に比べ、高いOCV(約1.0V)を有している。図16に比較すると、平板型燃料電池と同じ程度のOCV(約1.0V)を有することも分かる。
【0045】
(第2実施形態)
第2実施形態例を図9に示す。第2実施形態例は、第1実施形態例と基本的に同様の構成である。共通機能を奏する部位には共通の符号を付する。以下、異なる部分を中心として説明する。
【0046】
まず、本実施形態の単セル1の端部について説明する。図9に示すように、本実施形態の単セル1は、主に軸芯から順に内側集電体11、第1触媒電極層12、電解質層13、第2触媒電極層14、外側集電体15を同軸的に積層配置して形成されている。単セル1の一方の端部には、第1触媒電極層12の端面1211、電解質層13の端面1311、第2触媒電極層14の端面1411は、軸芯を中心線とする円錐台形状の側周面Sとして表出している。側周面Sと軸芯との角度Aは90度より小さければ、円錐台形状の側周面Sに表出している電解質層端面1311の表出幅Lは電解質層13の膜厚dより大きくなる。つまり、角度Aを小さくすることにより、電解質層端面1311の表出幅Lを大きくすることができる。従って、電解質層13の表出する端面1311が大きく形成できるため、ポッティング部材21により接着される際、ポッティング部材21が選択的に電解質層13に接着しやすくなる。また、角度Aを調整できることから、ポッティング部材21との接着面(1311)に十分な面積が取れるので、燃料電池のガスシール性能が向上される。
【0047】
このように、電解質層13の端面1311を軸芯に対して所定角度Aを持った円錐台形状の側周面Sに沿って表出させることにより、膜厚幅dより大きい電解質層端面1311(幅L)を有することができる。従って、ポッティング部材21を選択的に電解質層13の突出した部分の外周面1311に直接接着することが容易になる。さらに、角度Aを自由に調整すれば、円錐台形状の側周面Sに表出している電解質層13の端面1311の面積を自由に調整することができる。このため、ガスシール性能を決定するポッティング部材21との接着面積及び接着幅を自在に設定することができる。よって、従来方法より高いガスシール性能を有することができる。
【0048】
次に、本実施形態の単セル1の製造方法について説明する。
【0049】
本実施形態の単セル1の製造方法は、軸芯から順に内側集電体11、第1触媒電極層12、電解質層13、第2触媒電極層14、外側集電体15を同軸的に積層配置して形成し、第1触媒電極層12を形成する第1触媒電極層形成工程と、同軸的に電解質層13を形成する電解質層形成工程と、そして順次に第2触媒電極層14、外側集電体15を形成する第2触媒電極層及び外側集電体形成工程と、単セル1の端部の電解質層13を覆う第2触媒電極層14の部分を除去する第2触媒電極層部分除去工程とからなる。
【0050】
なお、本実施形態では、第2触媒電極層部分除去工程は、単セル1の端部の電解質層13の部分を軸芯を中心線とする円錐台形状に加工し、得られる円錐台形状の側周面Sの一部を電解質層13の端面1311として表出させる円錐台形状に加工する円錐台形状加工工程である。
【0051】
以下、単セル1の端部を円錐台形状として加工する加工工程について詳細に説明する。図10は単セル1の端部の加工方法を示している。図10に示すように、軸芯から内側集電体11、第1触媒電極層12、電解質層13、第2触媒電極層14の順に積層して形成された筒状の単セル1に対して、軸芯Xとは入射角度Aを持つレーザービーム(入射軸Y)を用いて単セル1の端部を加工する。なお、本実施形態例では三菱電機製C02レーザー(ML80R−CP7A)を使用した。レーザービームの出力は5Wで、入射角Aは0.4度かつ照射時間は1sである。一方、単セル1は回転可能な固定手段に支持され、レーザービームの照射により加工される。なお、固定手段の回転速度は30rpmである(回転方向R)。このように、単セル1の端部が斜めにカットすることによりストリップされ、円錐台形状が形成される。また、本実施形態で使用されたレーザービームの強度は調整可能なので、第1触媒電極層12と電解質層13と第2触媒電極層14とで構成されたMEAがストリップされる程度のレーザー強度に調整することにより、内側集電体11はストリップされない。このように、単セル1の端部は円錐台形成に形成され、円錐台形状の側周面Sには少なくとも電解質層13の端面1311が表出されている。表出した電解質層13の端面1311の幅Lは電解質層13の膜厚dより大きく形成できる。このため、電解質層13に直接ポッティング部材21を接着することができる。従って、ガスシール性能が向上でき、OCVの低下を抑制できる。
【0052】
また、レーザービームの入射位置及び入射角Aを予め設定すれば、単セル1のMEAの表出位置及び表出幅が決められる。具体的に、本実施形態では、内側集電体11の表出長さH1(内側集電体11の端面から第1触媒電極層12が表出する位置までの距離)は5mmであり、単セル1のMEAの端面が軸芯方向での長さH2は10mmである。そして、単セル1の端部が円錐台形状に形成された後、第2触媒電極層14の外周面に外側集電体15が形成される。
【0053】
次に、単セル1をポッティング部材21により電池ケース2にてガスシール(ポッティング)を行う。図11はポッティング部材21の設置方法を示す。なお、本実施形態で使用されたポッティング部材21はコニシボンド(MOS7)である。図11に示すように、電池ケース2の両端の開口部にはキャップCが付けられ、キャップCはオーリングなどを用いて電池ケース2の両端の開口部を密閉するように取付けられている。図12はキャップCの正面図を示すものであり、図13はキャップCのI−I縦断面を示すものである。図12、または図13に示すように、キャップCの上部には、所定位置に穴C10が形成されている。また、穴C10は同軸的に形成されている逆円錐台形状部C12及び円筒状部C11を備えている。逆円錐台形状部C12の側周面と軸との間に角度Aが維持されている。また、図11から分かるように、単セル1の端部は穴C10に挿入される。内側集電体11の端部が円筒状部C13まで挿入され、第1触媒電極層12がキャップCの逆円錐台形状部C12まで挿入される。つまり、第1触媒電極層12の端面121が逆円錐台形状部C12の側周面に接触するようになっている。このように、単セル1の端部の一部がギャップCに形成された穴C10に嵌まり込んでいる。穴C10の位置により単セル1の配置が決められる。キャップCの穴C10は単セル1の端部から所定長さH3をキャップ(カバー)することができる。なお、本実施形態では、H3は8mmである。このように、電池ケース2内に単セル1が収容され、さらに開口部にキャップCが取付けられる。電池ケース2内にポッティング部材21を構成する所定量のコニシボンド溶液を注入し、単セル1を収容した電池ケース2を単セル1の軸方向Xの中心部を回転中心として、電池ケース2を回転すれば、電池ケース2内のコニシボンド溶液が遠心力の作用を受け、キャップCの端面C101に接触(付着)した状態で固体化される(常温固化、24時間)。そして、ポッティング部材21が固体化された後にキャップCを除去すれば、ポッティング部材21による単セル1のガスシールが完成する。
【0054】
なお、ポッティング部材21がキャップCに入り込まないようにするために、キャップCは樹脂(LDPE)素材を使用している。また、電池ケース2の内径が一定であるので、ポッティング部材21を形成するコニシボンド溶液の用量によりポッティング部材21のポッティングする領域(ポッティング層の厚み)が調整される。即ち、所定用量のコニシボンドを用いて、ポッティング部材21が単セル1の端部に表出している電解質13の端面131に接着してポッティングを行うことができる。
【0055】
また、キャップCを使用することにより、ポッティング部材21は容易に単セル1の端部にて形成できると共に、第1触媒電極層12に混入しにくくなり、ポッティング部材の混入による気体詰まりを回避することができる。
【0056】
第2実施形態の単セル1を電池ケース2にポッティングし、OCVを測定した結果、図8に示す第1実施形態例と同様に、従来チューブ型燃料電池より高いOCVを有することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の燃料電池用チューブ型単セル及びその製造方法は、チューブ型燃料電池に使用され、工業、例えば自動車産業などの分野に利用でき、または家庭などにもエネルギ源として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施形態に係わるチューブ型燃料電池の概念図である。
【図2】本実施形態に係わるチューブ型燃料電池の縦断面図である。
【図3】第1実施形態の燃料電池用チューブ型単セルの縦断面図である。
【図4】第1実施形態の変形形態の燃料電池用チューブ型単セルの縦断面図である。
【図5】第1実施形態の燃料電池用チューブ型単セルを製造する製造装置の概略図である。
【図6】第1実施形態の燃料電池用チューブ型単セルの製造工程を示すフローチャート図である。
【図7】第1実施形態の燃料電池用チューブ型単セルの電解質層形成工程を示すフローチャート図である。
【図8】本実施形態の燃料電池用チューブ型単セルにおける開回路電圧と従来品との比較図である。
【図9】第2実施形態の燃料電池用チューブ型単セルの縦断面図である。
【図10】第2実施形態の燃料電池用チューブ型単セルの端部の形成方法を示したものである。
【図11】第2実施形態の燃料電池用チューブ型単セルの端部におけるポッティング方法を示したものである。
【図12】第2実施形態の燃料電池用チューブ型単セルに係わるキャップの平面図である。
【図13】第2実施形態の燃料電池用チューブ型単セルに係わるキャップのI−I断面図である。
【図14】従来チューブ型燃料電池用単セルの端部におけるポッティング方法を示したものである。
【図15】従来チューブ型燃料電池用単セルの端部におけるポッティング方法を示したものである。
【図16】従来チューブ型燃料電池における開回路電圧と平板型燃料電池との比較図である。
【符号の説明】
【0059】
1:単セル 2:電池ケース 21:ポッティング部材(隔壁)
201:燃料ガス送入口 202:酸化剤ガス送入口 203:排気口
221:酸素ガス室 222:水素ガス室
11:内側集電体 12:第1触媒電極層 13:電解質層
14:第2触媒電極層 15:外側集電体
131:電解質層端面 132:電解質層外周面 H:段差
130:電解質層先端部 121:第1触媒電極層端面
141:第2触媒電極層端面 111:内側集電体端面 112:内側集電体外周面
S1:成形型 S1センサー S3:制御手段
S11:コーティング用溶液流入通路 S12:バルブ
d:電解質層膜厚 L:電解質層表出端面幅
S:円錐台形状側周面 1211:第1触媒電極層端面
1311:電解質層端面 1411:第2触媒電極層端面
A:円錐台形状の側周面と軸との角(レーザービーム入射角、加工角度)
H1:表出する内側集電体の長さ
H2:表出するMEAの軸方向距離(長さ)R:回転方向
X:単セル軸 Y:レーザービーム照射軸
C:キャップ C10:穴 C11:円筒状部 C12:逆円錐台形状部
H3:キャップ距離(深さ)C101:キャップ端面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯から順に内側集電体、第1触媒電極層、電解質層、第2触媒電極層、外側集電体を同軸的に積層配置して形成された燃料電池用チューブ型単セルにおいて、
前記単セルの少なくとも一方の端部は、少なくとも前記電解質層が前記第2触媒電極層及び前記外側集電体より突出し、突出した前記電解質層の外周面が表出していることを特徴とする燃料電池用チューブ型単セル。
【請求項2】
前記端部は、前記電解質層が前記第1触媒電極層より突出し前記内側集電体の外周面を覆うとともに、前記第1触媒電極層の端部を覆う電解質層先端部を有する請求項1に記載の燃料電池用チューブ型単セル。
【請求項3】
前記端部は、前記軸芯を中心線とする円錐台形状に突出し、前記電解質層の部分は該円錐台形状の側周面の少なくとも一部として表出している請求項1に記載の燃料電池用チューブ型単セル。
【請求項4】
軸芯から順に内側集電体、第1触媒電極層、電解質層、第2触媒電極層、外側集電体を同軸的に積層配置して形成された燃料電池用チューブ型単セルの製造方法において、
前記内側集電体の軸方向の所定始点位置より他端部方向に同軸的に前記第1触媒電極層を形成する第1触媒電極層形成工程と、
前記第1触媒電極層の前記始点位置近くの所定位置より前記他端部方向に同軸的に前記電解質層を形成する電解質層形成工程と、
前記電解質層の前記所定位置より前記他端部方向に所定間隔を隔てた位置より前記他端部方向に同軸的に、順次に前記第2触媒電極層、前記外側集電体を形成する第2触媒電極層及び外側集電体形成工程と、を有することを特徴とする燃料電池用チューブ型単セルの製造方法。
【請求項5】
軸芯から順に内側集電体、第1触媒電極層、電解質層、第2触媒電極層、外側集電体を同軸的に積層配置して形成された燃料電池用チューブ型単セルの製造方法において、
前記内側集電体の外周面上、前記第1触媒電極層、前記電解質層、前記第2触媒電極層をそれぞれ順次形成する第1触媒電極層形成工程、電解質層形成工程、第2触媒電極層形成工程からなる膜電極複合体形成工程と、
前記単セルの少なくとも一方の端部の前記電解質層を覆う前記第2触媒電極層の部分を除去する第2電解質層部分除去工程を有することを特徴とする燃料電池用チューブ型単セルの製造方法。
【請求項6】
前記第2触媒電極層部分除去工程は、前記端部を前記軸芯を中心線とする円錐台形状に加工し得られる該円錐台形状の側周面の少なくとも一部を該電解質層として表出させる円錐台形状に加工する円錐台形状加工工程である請求項5に記載の燃料電池用チューブ型単セルの製造方法。
【請求項1】
軸芯から順に内側集電体、第1触媒電極層、電解質層、第2触媒電極層、外側集電体を同軸的に積層配置して形成された燃料電池用チューブ型単セルにおいて、
前記単セルの少なくとも一方の端部は、少なくとも前記電解質層が前記第2触媒電極層及び前記外側集電体より突出し、突出した前記電解質層の外周面が表出していることを特徴とする燃料電池用チューブ型単セル。
【請求項2】
前記端部は、前記電解質層が前記第1触媒電極層より突出し前記内側集電体の外周面を覆うとともに、前記第1触媒電極層の端部を覆う電解質層先端部を有する請求項1に記載の燃料電池用チューブ型単セル。
【請求項3】
前記端部は、前記軸芯を中心線とする円錐台形状に突出し、前記電解質層の部分は該円錐台形状の側周面の少なくとも一部として表出している請求項1に記載の燃料電池用チューブ型単セル。
【請求項4】
軸芯から順に内側集電体、第1触媒電極層、電解質層、第2触媒電極層、外側集電体を同軸的に積層配置して形成された燃料電池用チューブ型単セルの製造方法において、
前記内側集電体の軸方向の所定始点位置より他端部方向に同軸的に前記第1触媒電極層を形成する第1触媒電極層形成工程と、
前記第1触媒電極層の前記始点位置近くの所定位置より前記他端部方向に同軸的に前記電解質層を形成する電解質層形成工程と、
前記電解質層の前記所定位置より前記他端部方向に所定間隔を隔てた位置より前記他端部方向に同軸的に、順次に前記第2触媒電極層、前記外側集電体を形成する第2触媒電極層及び外側集電体形成工程と、を有することを特徴とする燃料電池用チューブ型単セルの製造方法。
【請求項5】
軸芯から順に内側集電体、第1触媒電極層、電解質層、第2触媒電極層、外側集電体を同軸的に積層配置して形成された燃料電池用チューブ型単セルの製造方法において、
前記内側集電体の外周面上、前記第1触媒電極層、前記電解質層、前記第2触媒電極層をそれぞれ順次形成する第1触媒電極層形成工程、電解質層形成工程、第2触媒電極層形成工程からなる膜電極複合体形成工程と、
前記単セルの少なくとも一方の端部の前記電解質層を覆う前記第2触媒電極層の部分を除去する第2電解質層部分除去工程を有することを特徴とする燃料電池用チューブ型単セルの製造方法。
【請求項6】
前記第2触媒電極層部分除去工程は、前記端部を前記軸芯を中心線とする円錐台形状に加工し得られる該円錐台形状の側周面の少なくとも一部を該電解質層として表出させる円錐台形状に加工する円錐台形状加工工程である請求項5に記載の燃料電池用チューブ型単セルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−41493(P2008−41493A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−215814(P2006−215814)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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