説明

チューブ容器及びこのチューブ容器の印刷方法

【課題】 複数の多角形状の模様を表現した加飾性に優れるチューブ容器
【解決手段】 チューブ容器の表面に、境界線によって仕切られる複数の多角形状の単位面を有するチューブ容器において、
該単位面は、各々平面又は湾曲面で構成され、該単位面を軸方向に対して折れ線状に若干傾斜すると共に、単位面の間に形成される凹部と凸部に、若干の寸法差を設けたことを特徴とするチューブ容器

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ容器及びその印刷方法に関し、さらに詳しくは、表面に凹部凸部を有し、複数の多角形状の模様を表現した加飾性に優れるチューブ容器及びこのチューブ容器の印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷面に凹凸部を有し、このような凹凸部に印刷を施す場合、パット(タンポ)印刷等の印刷方法があったが、パット印刷の場合、溶剤が被写体への媒体となって、溶剤が揮発することによって、インキが付着する。したがって、揮発性の溶剤を使用しなければならず、溶剤が揮発するまで時間を要し、又被写体へ転写した後の乾燥時間が長いという欠点があった。さらに、インキ及び溶剤の粘度、添加量の調整、印刷機のスピードの調整、被写体の凹部凸部の深さ等の調整等が難しいため、インキむら、印刷のにじみ、小さな気泡ができる等の印刷トラブルが多く安定した印刷が不可能であった。このように、パット(タンポ)印刷は、印刷の仕上がりが不十分であり、短時間で大量に、凹部凸部を有する被写体に印刷を施すことは不可能であり、生産性が悪く、かつ生産コストも高いという欠点があった。
【0003】
又、図9及び図10は、従来のオフセット印刷を示すものであり、オフセット印刷は、版が直接被写体と接触しないため、版胴が長持ちし、鮮明な印刷が可能であり、大量印刷にも適し、生産コストも安価であることから、チューブ容器の表面印刷に適するという利点があった。すなわち、チューブ容器104の表面(平面)に印刷を施す場合、ブランケット胴100の回転に伴って、ブランケット101の周囲に配置された版胴102、103の版より、インキ画像が順次ブランケット101に転写され、版胴102、103の版と接触するブランケット101面に、インキ画像が合成されて転写される。次ぎに、このブランケット101と、被写体であるチューブ容器104が接触することにより、チューブ容器104の表面に、インキ画像が転写されるものである。被写体であるチューブ容器104は、回転盤105の外周に等間隔ごとに設けられた、マンドレル106に挿入されて支持され、回転盤105の回転により、チューブ容器104が移動し、チューブ容器104とブランケット100が接触することによりインキ画像が転写されるものである(特許文献1)。
【特許文献1】特公昭60−26038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の図9及び図10に示すオフセット印刷は、チューブ容器104の表面に凹凸が形成されない、平らな状態の面に印刷を施すものであり、表面に凹部凸部が施された形状模様を有するチューブ容器に、印刷を施すものではなかった。そのため、凹部凸部を有するチューブ容器の表面に、インキ画像を転写することは難しく、従来のオフセット印刷において、平面印刷と同程度の印刷模様を認識できる、安定的に美麗な印刷画像を得ることは困難であった。
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、表面に凹部凸部を有し、複数の多角形状の模様を表現した加飾性に優れるチューブ容器を提供すると共に、このような加飾性に優れるチューブ容器の凹部凸部表面に、版胴からのインキ画像が完全に転写される条件を見い出し、凹部凸部を有するチューブ容器の表面印刷が、仕上がりが安定して美麗で意匠的効果に優れる、チューブ容器の印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するため、請求項1記載の発明の解決手段は、チューブ容器の表面に、境界線によって仕切られる複数の多角形状の単位面を有するチューブ容器において、単位面は、各々平面又は湾曲面で構成され、単位面を軸方向に対して折れ線状に若干傾斜すると共に、単位面の間に形成される凹部と凸部に、若干の寸法差を設けたことを特徴とするチューブ容器である。
【0006】
請求項2記載の発明の解決手段は、単位面の形状が、三角形、四角形、五角形、六角形又は八角形のいずれかから選ばれる1つであるチューブ容器である。
【0007】
請求項3記載の発明の解決手段は、複数の多角形状の単位面が、チューブ容器の表面全体又は一部に形成されることを特徴とするチューブ容器である。
【0008】
請求項4記載の発明の解決手段は、請求項1〜3記載のチューブ容器の印刷において、平面印刷と同程度の印刷模様が印刷できるように、チューブ容器表面の凹部凸部を加圧することにより、印刷面を平面に近付けて、印刷を施すことを特徴とするチューブ容器の印刷方法である。
【0009】
請求項5記載の発明の解決手段は、請求項1〜3記載の印刷において、平面印刷と同程度の印刷模様が印刷できるように、印刷機のブランケットの押圧力とチューブ容器を支持するマンドレルの挿入圧力で、チューブ容器表面の凹部凸部を加圧することにより、印刷面を平面に近付けて、印刷を施すことを特徴とするオフセット印刷方法である。オフセット印刷はブランケットが、チューブ容器の印刷面へ押圧する力が大きく、又チューブ容器内へのマンドレルの挿入圧力の相乗作用により、チューブ容器の印刷面である凹部及び凸部を押圧して、平面形状に近づけることができる。これにより、チューブ容器の凹部凸部表面に、版胴からのインキ画像を完全に転写することができる。
【0010】
請求項6記載の発明の解決手段は、チューブ容器の内径寸法A及び最内径寸法Bと、チューブ容器に挿入されるマンドレルの外径寸法Cとの間に、A≧C>Bが成立することを特徴とするオフセット印刷方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明において、表面に凹部凸部を有し、複数の多角形状の模様を表現した加飾性に優れるチューブ容器を提供できる効果を奏し、又本発明に係るチューブ容器の印刷方法によれば、表面の凹部凸部に、版胴からのインキ画像が、完全に転写されるので、印刷の仕上がりが美麗で意匠的効果に優れる印刷方法を提供することができる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例の一例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例1を示す図面である。図1において、図1(a)は、チューブ容器1の表面全体に、複数の三角形状の単位面2を有する実施例である。
【実施例2】
【0014】
図1(b)は、チューブ容器1の表面の一部に、複数の三角形状の単位面2を有する実施例2である。実施例1及び2は、図1(c)に示すように、単位面2が、境界線3で取り囲むように仕切られており、縦断面は、折れ線状に若干の傾斜角θを有すると共に、各々の単位面2間に形成される凹部4と凸部5に、若干の寸法差tが設けられている。
【0015】
発明者は、チューブ容器1の表面に形成された、複数の単位面2の傾斜角θ及び表面の凹部4及び凸部5の寸法差tが、共に大きくない場合には、オフセット印刷等の印刷において、平面印刷と同程度の印刷模様の印刷が可能であることを見出した。すなわち、図3(a)(b)に示すように、単位面2の傾斜角θ及び表面の凹部4及び凸部5の寸法差tが存在しても若干であれば、オフセット印刷の印刷機のブランケット6とチューブ容器1を支持するマンドレル7の双方の押圧力により、チューブ容器1の傾斜した単位面2が、印刷時において、平面に近い状態に延伸されるので、平面印刷と同程度の印刷模様の印刷が可能であることを見出した。具体的には、単位面2の傾斜角θは0<θ≦8°であり、0<θ≦5°が好ましい。又チューブ容器1の表面の凹部4及び凸部5の寸法差tは0<θ≦0.5mmであり、0.1mm≦θ≦0.3mmが好ましい。θが8°より大きく、又寸法差tが、0.5mmより大きい場合は、凹部4、凸部5の深さが大き過ぎるため、インキ画像が凹部4にのらないので印刷むらが生じる欠点がある。
【0016】
また、発明者は、図4に示すように、チューブ容器1の内径寸法A及び最内径寸法Bと、チューブ容器1に挿入されるマンドレル7の外径寸法Cとの関係において、各寸法差の大小により、美麗な印刷な可能な場合と、印刷ムラができる場合があることを発見した。そして、印刷ムラは、チューブ容器1の傾斜した単位面2が、印刷時において、マンドレル7によって、平面に近い状態にまで延伸されないために生じることをつきとめた。オフセット印刷において、平面印刷と同程度の印刷模様の印刷が可能であるための条件として、A≧C>B が成立するような条件の場合に、チューブ容器1の傾斜した単位面2が、平面に近い状態にまで延伸され、印刷ムラが生じないで、平面印刷と同程度の十分認識できる印刷が可能となることを発見した。なお、A=Cの場合は、マンドレル7がチューブ容器1に圧入される状態を示す。
【0017】
C>Aの場合は、マンドレル7がチューブ容器1を挿入できない。又、B>Cの場合は、チューブ容器1の最内径Bに対して、マンドレル7の外径寸法Cが小さ過ぎるため、印刷時に、チューブ容器1の傾斜した単位面2が、平面に近い状態にまで延伸されない。したがって、印刷むらが生じる。本発明は、オフセット印刷のみならず、その他のスクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷等へ応用できることはいうまでもない。
【0018】
オフセット印刷において、印刷ムラ等がない、良好な印刷が可能な条件を、具体的な
試験結果から、以下に示す。
(1)試験条件
イ.チューブ容器の外径φ=40mm。
ロ.単位面2の一辺の長さ=約5.7mmで頂点が下向きの三角形が、円周方向に22個形成。
ハ.図4に示す、チューブ容器内径寸法A=39.0mm、最内径寸法B=38.6mm、マンドレルの外径寸法C=39.0mm(マンドレル7がチューブ容器1に対して、圧入状態)
ニ.単位面2の傾斜角θは平均で、0<θ≦5°、表面の凹部4及び凸部5の寸法差tは、平均で、0.1mm≦t≦0.3mm。
(2)試験結果
上記試験条件で、オフセット印刷を行うと、印刷時にチューブ容器1の傾斜した単位面2に、平面印刷と同程度の十分認識できる印刷模様を得ることができた。
【実施例3】
【0019】
図5(a)は、本発明の実施例3を示す図面であり、チューブ容器11の表面の全体に、複数のひし形の単位面12が形成された実施例である。チューブ容器11の表面の一部のみに形成することも可能である。ひし形の単位面12は平面又は湾曲面を構成している。この実施例3は、図5(b)に示すように、単位面12が、境界線13で取り囲むように仕切られており、縦断面は、折れ線状に若干の傾斜角θを有すると共に、各々の単位面12間に形成される凹部14と凸部15に、若干の寸法差tが設けられている。
【実施例4】
【0020】
図6(a)は、本発明の実施例4を示す図面であり、チューブ容器21の表面全体に、複数の四角形の単位面22が形成された実施例である。一部のみに形成することも可能である。個々の四角形の単位面22は平面又は湾曲面を形成している。この実施例4は、単位面22が、境界線23で取り囲むように仕切られている。縦断面は同様に、折れ線状に若干の傾斜角θを有すると共に、各々の単位面22間に形成される凹部と凸部に、若干の寸法差tが設けられている(図示せず)。
【実施例5】
【0021】
図6(b)は、本発明の実施例5を示す図面であり、チューブ容器31の表面全体に、複数の六角形の単位面32が形成された実施例である。一部のみに形成することも可能である。個々の六角形の単位面32が、平面又は湾曲面を形成している。この実施例5は、単位面32が、境界線33で取り囲むように仕切られている。縦断面は同様に、折れ線状に若干の傾斜角θを有すると共に、各々の単位面22間に形成される凹部と凸部に、若干の寸法差tが設けられている(図示せず)。
【実施例6】
【0022】
図7(a)は、本発明の実施例6を示す図面であり、チューブ容器41の表面の一部に、複数のひし形の単位面42が形成された実施例である。個々のひし形の単位面42は平面又は湾曲面を形成している。この実施例6は、単位面42が、境界線43で取り囲むように仕切られている。縦断面は同様に、折れ線状に若干の傾斜角θを有すると共に、各々の単位面42間に形成される凹部と凸部に、若干の寸法差tが設けられている。この実施例6の特徴は、凹部44及び凸部45が、一定の面積を有する面で構成されており、図7(b)に示すように、境界線43が交差しない実施例である。
【実施例7】
【0023】
図8(a)は、本発明の実施例7を示す図面であり、チューブ容器51の表面の一部に、複数の三角形の単位面52(横に連続)を有する実施例である。
【実施例8】
【0024】
図8(b)は、本発明の実施例8を示す図面であり、チューブ容器61の表面の一部に、複数の三角形の単位面62(縦に連続)を有する実施例である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係るチューブ容器は、胴部が平面ではなく、境界線によって仕切られる複数の多角形状の単位面を有し、かつ適度な凹凸を有する。そして、凹凸を有する面に、さらに美麗な印刷を施すことができるので、外観形状と印刷模様の相乗効果により、美麗で意匠的に斬新なデザインのチューブ容器を提供でき、広く化粧品、食品、医薬品等を充填できるチューブ容器として、広く多岐にわたって利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る実施例1及び2のチューブ容器を示す正面図(a)(b)及び縦断面図(c)。
【図2】本発明に係る実施例1及び2のチューブ容器を印刷している状態を示す一部切欠平面図。
【図3】本発明に係る実施例1のチューブ容器を印刷している状態を示す拡大断面図。
【図4】本発明に係る実施例1のチューブ容器に、マンドレルを挿入する状態を示す一部切欠平面図。
【図5】本発明に係る実施例3のチューブ容器を示す正面図(a)及び縦断面図(b)。断面図。
【図6】本発明に係る実施例4及び5のチューブ容器を示す正面図(a)(b)。
【図7】本発明に係る実施例6のチューブ容器を示す正面図(a)及び縦断面図(b)。
【図8】本発明に係る実施例7及び8のチューブ容器を示す正面図(a)(b)。
【図9】従来のチューブ容器の印刷機を示す正面図。
【図10】従来のチューブ容器の印刷機を示す平面断面図。
【符号の説明】
【0027】
1 11 21 31 41 51 61 チューブ容器
3 13 23 33 43 境界線
2 12 22 32 42 多角形状の単位面
4 14 44 凹部
5 15 45 凸部
6 ブランケット
7 マンドレル
θ 傾斜
t 寸法差
A チューブ容器の内径寸法
B チューブ容器の最内径寸法
C マンドレルの外径寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ容器の表面に、境界線によって仕切られる複数の多角形状の単位面を有するチューブ容器において、
該単位面は、各々平面又は湾曲面で構成され、該単位面を軸方向に対して折れ線状に若干傾斜すると共に、単位面の間に形成される凹部と凸部に、若干の寸法差を設けたことを特徴とするチューブ容器
【請求項2】
前記単位面の形状が、三角形、四角形、五角形、六角形又は八角形のいずれかから選ばれる1つである請求項1記載のチューブ容器。
【請求項3】
前記複数の多角形状の単位面が、チューブ容器の表面全体又は一部に形成されることを特徴とする請求項1〜3記載のチューブ容器。
【請求項4】
請求項1〜3記載のチューブ容器の印刷において、平面印刷と同程度の印刷模様が印刷できるように、チューブ容器表面の凹部凸部を加圧することにより、印刷面を平面に近付けて、印刷を施すことを特徴とするチューブ容器の印刷方法。
【請求項5】
請求項1〜3記載のチューブ容器の印刷において、平面印刷と同程度の印刷模様が印刷できるように、印刷機のブランケットの押圧力とチューブ容器を支持するマンドレルの挿入圧力で、チューブ容器表面の凹部凸部を加圧することにより、印刷面を平面に近付けて、印刷を施すことを特徴とするオフセット印刷方法。
【請求項6】
前記チューブ容器の内径寸法A及び最内径寸法Bと、チューブ容器に挿入されるマンドレルの外径寸法Cとの間に、A≧C>B が成立することを特徴とする請求項5記載のオフセット印刷方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−44662(P2008−44662A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224029(P2006−224029)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(000238614)武内プレス工業株式会社 (72)
【Fターム(参考)】