説明

チロシン含有飲料の結晶析出の抑制方法

【課題】
本発明は、透明度の高い飲料に対しても風味や見栄えを損なうことのない、チロシン含有飲料の結晶析出の抑制方法及びその抑制方法を用いて製造されたチロシン含有飲料を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、チロシン含有飲料において結晶析出の抑制を試みた結果、チロシンが過飽和状態にある透明度の高い飲料において、チロシン結晶の析出と関連する因子には、糖質および食物繊維の種類、糊料(増粘安定剤)の種類、溶液のpHがあることを解明し、それらの因子を制御することによって、チロシンの結晶析出速度を低くすることができるとの知見に基づくものである。その結果として、結晶析出を防止・抑制したチロシン含有飲料を安定して製造することが可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チロシン含有飲料の結晶析出の抑制方法及びその抑制方法を用いて製造されたチロシン含有飲料に関する。より詳しくは、安価で風味への悪影響がない、一般的な飲料で使用する素材により、チロシンの結晶析出を防止・抑制することを特徴とする、チロシン含有飲料の結晶析出の抑制方法及びその抑制方法を用いて製造されたチロシン含有飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
運動時等における主なエネルギー源として、体脂肪と糖質(グリコーゲン)の2つがある。体脂肪は持久力に関係し、体内の蓄積量が多く、膨大なエネルギー源である。一方、糖質は瞬発力を生み出すために必要とされるが、体内の蓄積量が少なく、貴重なエネルギー源である。例えば、過酷な運動であるマラソン等のエネルギー源として、体脂肪を優先的に利用することにより、疲労物質とされる乳酸が発生しにくく、集中力が維持されると言われている。また、マラソンほどの過酷な運動ではなく、適度に運動する人達にとっても、体脂肪を優先的に利用し、体脂肪そのものを減らすことは、体重を制御する上で有効である。
【0003】
エアロビクスは体脂肪を優先的に利用するために有効な運動とされるが、それでも運動の開始から約30分間は糖質を優先的に利用し、体脂肪は利用しないと言われている。運動の開始から約30分以内に糖質を消費してしまえば、スタミナ切れを起こすこととなる。しかし、膨大なエネルギー源である体脂肪を運動の開始から優先的に利用することができれば、スタミナ切れを起こすことなく、運動を持続できることになる。運動が持続できれば、その分、体脂肪を減らすことができ、短時間で効果的に体重を減量できることとなる。このように、運動時において体脂肪を優先的に利用できる方法を提供することが望まれていた。
【0004】
体脂肪を優先的に利用し、膨大なエネルギーを生み出す「脂質代謝調節剤」が特開平04-112825号公報(特許文献1)に記載されている。これは、17種類のアミノ酸をバランス良く含有する組成物であり、スズメバチの幼虫の栄養液を起源とする。体長が5 cm程度にも拘わらず、スズメバチは1日に100 kmもの距離を移動できると言われている。この驚異的なスタミナが、幼虫の栄養液(17種類のアミノ酸バランス組成物)による体脂肪の有効利用に起因している。ところで、この17種類のアミノ酸バランス組成物を人間が摂取しようとした場合、その形態としては、液状(飲料)、粉状(粉体)、固形状(錠剤)等が考えられる。しかし、水分を同時に補給できることや体内への吸収性が良いこと等の観点からは、液状(飲料)が最も望ましい形態であると言える。ところが、この17種類のアミノ酸バランス組成物を所定の濃度で液状(飲料)にすると、沈殿が発生することがあった。これは、溶解度の異なる各種のアミノ酸を様々な濃度で含有しているため、溶解度の小さいアミノ酸が結晶として析出したためであった。そして、この沈殿した結晶は、チロシンであった。チロシンは、常温水(20℃)への溶解度が0.038g/100g程度であり、水に難溶性である。この17種類のアミノ酸バランスを維持しつつ、所定の濃度でアミノ酸飲料を作成すると、チロシンは過飽和状態となる。
【0005】
飲料における沈殿は、製品の見栄えを悪くするだけでなく、摂取時に容器へ付着すると損失(ロス)になる。また、口腔内や喉越しにおいては違和感となり、さらには、体内への吸収性が低下する可能性もある。このように、飲料における沈殿は、商品への悪影響が多いため、沈殿を防止・抑制することが必要となる。特に、ウォーター系ドリンクやスポーツドリンクの様な透明度の高い飲料において、沈殿を防止・抑制することは必須となる。ここでは、透明度の高いチロシン含有飲料の結晶析出を防止・抑制することが必要であり、その解決策を見いだすことが望まれていた。
【0006】
チロシンの結晶析出の抑制方法に関する先行技術としては特開平03-198755号公報(特許文献2)、特開平08-317768号公報(特許文献3)及び特開2001-000145号公報(特許文献4)などがある。特開平03-198755号公報には、乳清及び/又は乳清由来の副生成物を添加することにより、筍水煮、味噌、水産畜産缶詰等の結晶析出を抑制する方法が記載されている。一方、特開平08-317768号公報には、アルギン酸を添加することにより、味噌の結晶析出を抑制する方法が記載されている。しかし、何れも透明度の高い水系飲料について記載されていない。さらに、乳清や乳清由来の副生成物の水溶液は濁っていて、透明度が低かったり、風味への影響が大きかったりするため、透明度の高い水系飲料には使用できない。特開2001-000145号公報には、アミノ酸飲料において、チロシン結晶の析出と関連する因子には、甘味料の種類、糊料(増粘安定剤)の種類、溶液のpHがあることが記載されている。しかし、難消化性デキストリン等の食物繊維の添加や加熱処理を行った際の外観や風味等の変化(例えば、褐変化)については記載されていない。
【0007】
【特許文献1】特開平04-112825号公報
【特許文献2】特開平03-198755号公報
【特許文献3】特開平08-317768号公報
【特許文献4】特開2001-000145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の課題点を鑑みてなされたものであり、チロシン含有飲料の結晶析出の抑制方法及びその抑制方法を用いて製造されたチロシン含有飲料を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、安価で風味への悪影響がない、一般的な飲料で使用する素材により、チロシンの結晶析出を防止・抑制することを特徴とする、チロシン含有飲料の結晶析出の抑制方法及びその抑制方法を用いて製造されたチロシン含有飲料を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、チロシンの濃度が0.05g/100g以上の過飽和状態にある透明度の高い飲料において、チロシンの結晶析出の抑制には、難消化性デキストリンの添加が有効であり、このとき、還元難消化性デキストリンでは加熱処理を行っても褐変化が起こらないとの知見を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
[1] チロシン含有飲料において、難消化性デキストリンを添加することを特徴とする結晶析出の抑制方法、
[2] チロシン含有飲料において、ジェランガム、大豆多糖類のうちの1つ以上を添加することを特徴とする、前記[1]に記載の結晶析出の抑制方法、
[3] チロシン含有飲料において、溶液のpHを低くすることを特徴とする、前記[1]又は[2]のいずれかに記載の結晶析出の抑制方法、
[4] 前記[1]〜[3]のいずれかに記載の抑制方法を用いて製造されたチロシン含有飲料
からなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、チロシン含有飲料の結晶析出の抑制方法及びその抑制方法を用いて製造されたチロシン含有飲料を提供することができる。
【0013】
本発明によれば、安価で風味への悪影響がない、一般的な飲料で使用する素材により、チロシンの結晶析出を防止・抑制することを特徴とする、チロシン含有飲料の結晶析出の抑制方法及びその抑制方法を用いて製造されたチロシン含有飲料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の結晶析出の抑制方法は、チロシン含有飲料において、難消化性デキストリンを添加することを特徴とする。難消化性デキストリンとは、馬鈴薯等のデンプンをアミラーゼにより加水分解し、未分解の難消化性成分を集めたものであり、この難消化性デキストリンへ、さらに水素添加処理した還元難消化性デキストリンも含むものである。難消化性デキストリンは主に食物繊維として使用されるが、用途は特に限定されない。また、難消化性デキストリンは単独でも結晶析出の抑制効果があるが、風味や物性等の使用目的に合わせ、何種類かの難消化性デキストリンを組み合わせて使用しても良い。チロシンに対する難消化性デキストリンの重量比として、好ましくは2.0以上、より好ましくは4.0以上である。このとき、還元難消化性デキストリンでは加熱処理を行っても、褐変化を起こさないため、外観や風味等の観点から、還元難消化性デキストリンが望ましい。
【0015】
本発明の結晶析出の抑制方法は、チロシン含有飲料において、ジェランガム、大豆多糖類のうちの1つ以上を、さらに添加することを特徴とする。ジェランガム、大豆多糖類は主に糊料(増粘安定剤)として使用されるが、用途は特に限定されない。また、ジェランガム、大豆多糖類は単独でも結晶析出の抑制効果があるが、風味や物性等の使用目的に合わせ、組み合わせて使用しても良い。さらに、ジェランガムや大豆多糖類とは異なる糊料(例えば、ペクチン等)と組み合わせて使用しても良い。
【0016】
本発明の結晶析出の抑制方法は、チロシン含有飲料において、溶液のpHを低くすることを特徴とする。溶液のpHを低くするためには主に、クエン酸等の酸味料が使用されるが、pHを低くする方法や装置は特に限定されない。本発明の結晶析出の抑制方法は、pHが3〜4の高酸性飲料に対して特に有効である。
【0017】
本発明の結晶析出の抑制方法は、難消化性デキストリンを添加することに加え、甘味料、糊料(増粘安定剤)、pH調整を適宜、選択して添加することが可能であり、それらを組み合わせて使用することも可能である。組合せの方法として例えば、ショ糖とジェランガムを使用し、溶液のpHを低くする等がある。本発明の結晶析出の抑制方法は、飲料で一般的な素材(糖質、食物繊維、増粘安定剤、酸味料等)を使用することに特徴がある。特殊な素材を使用していないため、安価な方法であり、風味への悪影響もない。
【実施例】
【0018】
以下、本発明に関して実施例を挙げて説明するが、本発明は、これにより限定されるものではない。
【0019】
[実施例1](チロシンの結晶析出と糖質、食物繊維の種類との関係)
チロシンの結晶析出への糖質および食物繊維の種類の影響を検討した。糖質および食物繊維の種類を変えて、模擬液(チロシン含有飲料のモデル溶液)を調製し、結晶析出の程度を比較した。本実験で使用した糖質および食物繊維は、ショ糖、トレハロース、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール、難消化性デキストリン(ニュートリオースFB、ロケットジャパン(株)製)、還元難消化性デキストリン(ファイバーソル2H、松谷化学工業(株)製)である。模擬液の組成を表1に示した。チロシン濃度を0.11%(w/v)、クエン酸濃度を0.02%(w/v)、各種の糖質および食物繊維の濃度を0%(w/v)(無添加)あるいは3%(w/v)とした。このとき、溶液のpHは糖質および食物繊維の種類により幾らか変化し、3.43〜3.47であった。
【0020】
【表1】

【0021】
模擬液の調製方法及び結晶析出の評価方法は以下の通りである。すなわち、(1) 前記した組成の各種成分を、温度95℃の熱水に撹拌しながら5分間を掛けて溶解し、模擬液を調製した。(2) 模擬液を冷水浴に入れ、急冷した後に温度4℃で保持(保管)した。急冷により模擬液の温度が4℃となった時点を0日(評価開始)とした。(3) 模擬液の上澄を10倍に希釈した試料について経過時間毎に吸光度(254 nm)を測定した。同条件の模擬液について測定回数は3回とし、その平均値を求めた。(4) チロシン濃度を変えた標準液を調製して、吸光度(254 nm)を測定し、検量線を作成した。(5) 検量線より、模擬液の上澄のチロシン濃度を求めた。(6) 評価開始(0日)のチロシン濃度から、上澄みのチロシン濃度を減じて、経過時間毎の結晶析出量を評価した。
【0022】
糖質および食物繊維の種類を変えて調製した模擬液の結晶析出量を図1に示した。安定剤を不使用なため、全ての模擬液で結晶析出が起こったが、糖質および食物繊維の種類により結晶析出量(結晶析出速度)に差があった。トレハロース、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトールの模擬液は、無添加の模擬液と比較すると、結晶析出量が少なく、結晶析出速度が遅かったが、ショ糖の模擬液と比較すると、結晶析出量が多く、結晶析出速度が速かった。つまり、トレハロース、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトールの模擬液は、無添加の模擬液と比較すると、幾らか結晶析出の抑制効果があったが、ショ糖の模擬液と比較すると、結晶析出の抑制効果が小さかった。一方、ショ糖、難消化性デキストリン(ニュートリオースFB)、還元難消化性デキストリン(ファイバーソル2H)の模擬液は、無添加の模擬液と比較すると、結晶析出量が少なく、結晶析出速度が遅かった。つまり、ショ糖、難消化性デキストリン、還元難消化性デキストリンの模擬液は、無添加の模擬液と比較すると、結晶析出の抑制効果が大きかった。
【0023】
[実施例2](チロシンの結晶析出と還元難消化性デキストリンの濃度との関係)
チロシンの結晶析出への還元難消化性デキストリン(ファイバーソル2H)の濃度の影響を検討した。還元難消化性デキストリンの濃度を変えて、模擬液(チロシン含有飲料のモデル溶液)を調製し、結晶析出の程度を比較した。模擬液の組成を表2に示した。チロシン濃度を0.11%(w/v)、クエン酸濃度を0.02%(w/v)、還元難消化性デキストリン濃度を2.5%(w/v)、1.5%(w/v)、0.5%(w/v)とした。このとき、溶液のpHは還元難消化性デキストリン濃度の違いにより幾らか変化し、3.49〜3.52であった。なお、比較対象として調製した模擬液は、チロシン濃度を0.11%(w/v)、クエン酸濃度を0.02%(w/v)、ショ糖濃度を2.5%(w/v)とした。
【0024】
【表2】

【0025】
還元難消化性デキストリン濃度を変えて調製した模擬液の結晶析出量を図2に示した。実施例1と同じ方法により、模擬液を調製し、結晶析出量を評価した。安定剤を不使用なため、全ての模擬液で結晶析出が起こったが、還元難消化性デキストリン濃度の違いにより結晶析出量(結晶析出速度)に幾らか差があった。還元難消化性デキストリン濃度が2.5%(w/v)、1.5%(w/v)、0.5%(w/v)の模擬液は、ショ糖濃度が2.5%(w/v)の模擬液と比較すると、結晶析出量が同等であった。つまり、還元難消化性デキストリン濃度が2.5%(w/v)、1.5%(w/v)、0.5%(w/v)の模擬液は、ショ糖濃度が2.5%(w/v)の模擬液と比較すると、結晶析出の抑制効果が同等であった。還元難消化性デキストリン濃度を小さくしても、結晶析出の抑制効果がショ糖と同等であった。
【0026】
[実施例3](チロシンの結晶析出と糊料(増粘安定剤)の種類との関係)
チロシンの結晶析出への糊料(増粘安定剤)の種類の影響を検討した。糊料の種類を変えて、模擬液(チロシン含有飲料のモデル溶液)を調製し、結晶析出の程度を比較した。本実験で使用した糊料は、ペクチン(UNIPECTINE AYD 30M、太陽化学(株)製)、大豆多糖類(大豆食物繊維 SM-1200、三栄源FFI(株)製)、ジェランガム(ネオソフト J-51、太陽化学(株)製)である。模擬液の組成を表3に示した。チロシン濃度を0.20%(w/v)、クエン酸濃度を0.33%(w/v)、還元難消化性デキストリン濃度を2.5%(w/v)とし、この溶液に、所定濃度の糊料を添加した。
【0027】
【表3】

【0028】
糊料の種類を変えて調製した模擬液の結晶析出量を図3に示した。実施例1と同じ方法により、模擬液を調製し、結晶析出量を評価した。他の実施例に比べて、チロシン濃度が高いため、全ての模擬液で結晶析出が起こったが、糊料の種類により結晶析出量(結晶析出速度)に差があった。大豆多糖類単独、大豆多糖類とジェランガム混合の模擬液は、ペクチン単独の模擬液と比較すると、結晶析出量が少なく、結晶析出速度が遅かった。つまり、大豆多糖類では、結晶析出の抑制効果が大きかった。一方、ジェランガム単独の模擬液は、3日目までで実験を終了したが、結晶析出が殆どなく、結晶析出速度が遅かった。また、大豆多糖類とジェランガム混合の模擬液は、大豆多糖類単独の模擬液と比較すると、幾らか結晶析出量が少なく、結晶析出速度が遅かった。つまり、ジェランガムに結晶析出の抑制効果があった。大豆多糖類とジェランガムの混合使用(併用)により、単独使用よりも、結晶析出の抑制効果が大きくなった。
【0029】
[実施例4](チロシンの結晶析出と溶液のpHとの関係)
チロシンの結晶析出への溶液のpHの影響を検討した。溶液のpHを変えて、模擬液(チロシン含有飲料のモデル溶液)を調製し、結晶析出の程度を比較した。本実験で使用した溶液のpHは、3.89、3.49、3.19、3.05である。模擬液の組成を表4に示した。チロシン濃度を0.11%(w/v)、還元難消化性デキストリン濃度を2.5%(w/v)とし、この溶液に、所定濃度のクエン酸を添加した。
【0030】
【表4】

【0031】
溶液のpHを変えて調製した模擬液の結晶析出量を図4に示した。実施例1と同じ方法により、模擬液を調製し、結晶析出量を評価した。安定剤を不使用なため、全ての模擬液で結晶析出が起こったが、溶液のpHにより結晶析出量(結晶析出速度)に差があった。溶液のpHが3〜4の範囲では、pHが低い程、結晶析出量が少なく、結晶析出速度が遅かった。つまり、高酸性飲料では、溶液のpHが低い程、結晶析出の抑制効果が大きかった。
【0032】
[実施例5](還元難消化性デキストリンを含む模擬液の褐変化と加熱時間との関係)
還元難消化性デキストリン(ファイバーソル2H)を含む模擬液の加熱処理における褐変化を検討した。アミノ酸のメイラード反応の程度を、還元難消化性デキストリンの無添加と添加について評価した。模擬液の組成を表5に示した。アミノ酸バランス組成物(17種類のアミノ酸を含む)濃度を1.58%(w/v)、クエン酸濃度を0.70%(w/v)、トレハロース濃度を1.0%(w/v)、還元難消化性デキストリン濃度を0%(w/v)(無添加)あるいは1.5%(w/v)とした。アミノ酸バランス組成物を表6に示した。
【0033】
【表5】

【0034】
【表6】

【0035】
褐変化(加熱時)の評価方法は以下の通りである。すなわち、(1) 前記した組成の各種成分を、温度90℃の熱水に保持した。(2) 経過時間毎に、模擬液を冷水浴に入れ、急冷した後に、吸光度(440 nm)を測定した。吸光度が440 nmの測定値は、褐変化の指標とされている。
【0036】
還元難消化性デキストリンの無添加と添加の模擬液について褐変化(加熱時)の程度を図5に示した。還元難消化性デキストリンの無添加と添加の模擬液で褐変化に殆ど差がなかった。何れの模擬液も異臭や異味の発生はなく、還元難消化性デキストリンを使用しても風味劣化や品質低下は起こらないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
透明度の高い飲料に対しても風味や見栄えを損なうことのない、チロシン含有飲料の結晶析出の抑制方法及びその抑制方法を用いて製造されたチロシン含有飲料を提供することができる。具体的には、安価で風味への悪影響がない、一般的な飲料で使用する素材により、チロシンの結晶析出を防止・抑制することを特徴とする、チロシン含有飲料の結晶析出の抑制方法及びその抑制方法を用いて製造されたチロシン含有飲料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、チロシン含有飲料における糖質および食物繊維の種類と結晶析出量の関係を示したグラフである。
【図2】図2は、チロシン含有飲料における還元難消化性デキストリンの濃度と結晶析出量の関係を示したグラフである。
【図3】図3は、チロシン含有飲料における糊料(増粘安定剤)の種類と結晶析出量の関係を示したグラフである。
【図4】図4は、チロシン含有飲料におけるpHと結晶析出量の関係を示したグラフである。
【図5】図5は、チロシン含有飲料における還元難消化性デキストリンの添加と加熱時の褐変化の関係を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チロシン含有飲料において、難消化性デキストリンを添加することを特徴とする結晶析出の抑制方法。
【請求項2】
チロシン含有飲料において、ジェランガム、大豆多糖類のうちの1つ以上を添加することを特徴とする、請求項1に記載の結晶析出の抑制方法。
【請求項3】
チロシン含有飲料において、溶液のpHを低くすることを特徴とする、請求項1又は2のいずれか1項に記載の結晶析出の抑制方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の抑制方法を用いて製造されたチロシン含有飲料。























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−314260(P2006−314260A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−140467(P2005−140467)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000006138)明治乳業株式会社 (265)
【Fターム(参考)】