説明

ツールホルダー及びツールホルダーを装備する工作機械

【課題】複合加工旋盤等の工作機械に交換自在に装備されるツールホルダーを提供する。
【解決手段】複合加工旋盤1は、ワークを把持する主軸20,30と、B軸まわりに旋回動する加工主軸ヘッド50を備える。旋盤の機内にはストッカーS,Sが用意され、ツールホルダー200,300が格納される。ツールホルダー200は、ハウジング210に主軸のテーパーシャンク部230と主軸のテーパーシャンク部230のまわりに4個のプルスタッドPSを有し、加工主軸ヘッド50のコレットシャックに把持される。主軸のテーパーシャンク部230の回転は、歯車機構を介してシャフト250に伝達され、ドリルツール252を駆動し、深穴加工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の旋削工具や特殊な回転工具を装備するツールホルダーと、このツールホルダーを装備する複合加工旋盤等の工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、深穴等を加工するボーリングバーを装備するものは、下記の特許文献1に開示されている。
この特許文献に記載されたものは、次の構成を備えている。
(1)先端工具のATCが可能で、工具支持装置を備えたロングボーリングバー。
(2)ロングボーリングバーを主軸軸線方向に着脱出来るロングボーリングバー装着部を伴うロングボーリングバー支持装置が備えられている刃物台。
しかし、従来技術による構成では、例えば、深穴対応のミル加工は対応出来なかった。
【特許文献1】特開2003−80408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、工作機械の主軸ヘッド側に装着されるツールホルダーであって、工作機械の主軸に対する切削抵抗の負荷を軽減する機構を備えるツールホルダー及びこのツールホルダーを装備する工作機械を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明の工作機械の加工主軸ヘッドに交換自在に装着されるツールホルダーは、ハウジングと、ハウジングの中央部に配置されるテーパーシャンク部を有する駆動主軸と、駆動主軸に平行に配置されてベアリングにより支持される駆動軸と、駆動主軸と駆動軸を伝達する歯車機構と、駆動軸の先端に設けられるツールと、ハウジングの外周部に配設される4本のプルスタッドを備える。そして、ハウジングは、4本のプルスタッドが工作機械の加工主軸ヘッド側に設けられた4基のコレットチャックに把持されることにより加工主軸ヘッドに剛性高く保持されるとともに、駆動主軸は工作機械の加工主軸に挿入されることにより加工主軸側のベアリングにより支持されるものである。
【0005】
また、本発明の工作機械の加工主軸ヘッドは、テーパーシャンク穴を有する加工主軸と、加工主軸の周囲に配置される4基のコレットチャックを備え、コレットチャックは、ツールホルダーに設けられた4本のプルスタッドを把持することによりツールホルダーを保持するものである。
なお、プルスタッド及びコレットチャックの個数は、適宜に選択することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上の手段を有することにより、ツールホルダーを工作機械の加工主軸に装着して深穴の加工等の重切削を行う際に、切削抵抗はツールホルダーの駆動軸が受け持ち、工作機械の加工主軸に大きな負荷がかかることが防止でき、耐久性等を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、本発明のツールホルダーを装備する工作機械の一例としての複合加工旋盤の概要を示す説明図である。
全体を符号1で示す複合加工旋盤は、ベッド10上に配設されてワークを把持する第1主軸20と、第1主軸20に対向して配設される第2主軸30を備える。
第1主軸20と第2主軸30の間には、振止め40と加工主軸ヘッド50が配設される。
【0008】
加工主軸ヘッド50は、図示しないATC装置から供給される旋削工具と回転工具を選択的に装着して必要な加工を行う。加工主軸ヘッド50は、そのスピンドルを第1主軸20側に対向する位置から第2主軸30に対向する位置を越えて旋回動することができる。
【0009】
そして、この複合加工旋盤1は、機内の第1主軸20側にツールホルダー200を格納するストッカーSと第2主軸30側にツールホルダー300を格納するストッカーSを備える。
【0010】
図2は、加工主軸ヘッド50の概要を示す説明図である。
加工主軸ヘッド50は、加工主軸60を有し、加工主軸60は、交換工具のテーパーシャンクを受け入れるテーパーシャンク穴62と工具シャンクを引き込むドローバー64を備える。加工主軸60は、ベアリング66により高速回転自在にヘッド側に支持される。
加工主軸ヘッド50は、X軸、Y軸、Z軸方向に移動制御されるとともに、B軸まわりに回転制御される。
【0011】
また、加工主軸ヘッド50は、加工主軸60を中心として、クランプ装置である4基のコレットチャックユニット70を備える。各コレットチャックユニット70は、油圧で操作されるピストン74とピストン74により開閉されるコレット爪72を有し、交換自在に装着されるツールホルダー100側に設けられた4本のプルスタッドPSを把持する。
【0012】
図3は、本発明のツールホルダーの一例としてのツールホルダー100の構造を示す説明図である。
ツールホルダー100はハウジング110を有し、ハウジング110には、テーパーシャンク部130を有する駆動主軸132が回転自在に装備される。駆動主軸132は小歯車134を有し、駆動軸140の歯車142に噛み合う。駆動主軸132はベアリング等で支持されていない、いわゆるフローティング状態で装備されていて、テーパーシャンク部130が工作機械側の加工主軸に挿入されることにより、工作機械側の加工主軸に一体化されて駆動される。駆動軸140は、ボルト122によってハウジング110に装着されている長尺のロングバー120内にベアリング146を介して支持される。
【0013】
ハウジング110は、4個のプルスタッドPSと位置決めピン112を有する。
ツールホルダー100は、クーラント用のカップリングや通路を備えて、工作機械側からクーラントの供給を受けることもできる。
【0014】
ロングバー120の先端にアングルツールユニット160を連結することができる。このアングルツールユニット160は、駆動軸140の回転を直角に変換して回転工具162を駆動する機構を備える。このアングルツールユニット160を用いて、例えば800mmの深穴の内壁面に穴明け加工等を施すことが可能である。
このような加工にあっては、ツールホルダー100に大きな曲げ応力等が作用するが、曲げ応力はアングルツールユニット160が装着されるロングバー120、ハウジング110が支持する。
また、ツールホルダー100のハウジング110は、4本のプルスタッドPSで工作機械の加工主軸ヘッド側に剛性高く保持されているので、駆動主軸132側から工作機械の加工主軸60側への曲げ応力等の抵抗力の伝達も防止され、加工主軸60側の支持構造に負担をかけることも防止される。
【0015】
図4は、図1で示したツールホルダー200の構造を示す説明図である。
ツールホルダー200は、ハウジング210を有し、テーパーシャンク部230を有する駆動主軸232が回転自在に装備されている。テーパーシャンク部230の先端にはプルスタッドPSが設けてあり、小歯車234を有する。駆動主軸232に平行に配置される駆動軸240はベアリング246により高剛性でハウジング210内に支持される。駆動軸240は歯車242を有し、駆動主軸232の歯車234と噛み合う。駆動軸240の中心には、クーラント通路244が形成される。
【0016】
駆動軸240の先端の穴には、長尺のドリル工具250が挿入される。ドリル工具250の先端にはドリルカッター252と、芯出しカッター254がとりつけられる。ドリルカッター252部には、必要に応じてクーラントが供給される。
ドリル加工を行うと、ツールホルダー200にスラスト方向の大きな力が働くが、その力はベアリング246を介してハウジング210が支持する。
このツールホルダー200もハウジング210の端面に4個のプルスタッドPSを備え、加工主軸ヘッドに対して剛性高く装着される。また、位置決めピン212を有する。
【0017】
図5は、本発明の他のツールホルダー300の構造を示す説明図である。
ツールホルダー300は、ハウジング310を有し、テーパーシャンク部330を有する駆動主軸332が回転自在に装備されている。テーパーシャンク部330の先端にはプルスタッドPSが設けてあり、小歯車334を有する。駆動主軸332に平行に配置される駆動軸340はベアリング346により高剛性でハウジング310内に支持される。駆動軸340は歯車342を有し、駆動主軸332の歯車334と噛み合う。
【0018】
ハウジング310には、サイドカッターホルダーのハウジング350がボルト360により固定される。サイドカッターホルダーのハウジング350内には、駆動軸340に連結される入力軸が設けられ、入力軸の動力は、ギヤボックス370内の歯車機構により直角方向の動力に変換され、出力軸372に伝達される。出力軸372にはサイドカッター380がとりつけられる。
このツールホルダー300も、ハウジング310の端面に4個のプルスタッドPSを備え、加工主軸ヘッド側に剛性高く装着される。また、位置決めピン312を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のツールホルダーを装備する工作機械の一例としての複合加工旋盤の概要を示す説明図。
【図2】加工主軸ヘッドの概要を示す説明図。
【図3】本発明のツールホルダーの構造を示す説明図。
【図4】本発明の他のツールホルダーの構造を示す説明図。
【図5】本発明の他のツールホルダーの構造を示す説明図。
【符号の説明】
【0020】
1 複合加工旋盤
10 ベッド
20 第1主軸
30 第2主軸
50 加工主軸ヘッド
100 ツールホルダー
110 ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の加工主軸ヘッドに交換自在に装着されるツールホルダーであって、
ツールホルダーは、ハウジングと、ハウジングの中央部に配置されるテーパーシャンク部を有する駆動主軸と、駆動主軸に平行に配置されてベアリングにより支持される駆動軸と、駆動主軸と駆動軸を伝達する歯車機構と、駆動軸の先端に設けられるツールと、ハウジングの外周部に配設される4本のプルスタッドを備え、
ハウジングは、4本のプルスタッドが工作機械の加工主軸ヘッド側に設けられた4基のコレットチャックに把持されることにより加工主軸ヘッドに剛性高く保持されるとともに、駆動主軸は工作機械の加工主軸に挿入されることにより加工主軸側のベアリングにより支持されることを特徴とするツールホルダー。
【請求項2】
ツールホルダーを交換自在に装備する工作機械であって、
工作機械の加工主軸ヘッドは、テーパーシャンク穴を有する加工主軸と、加工主軸の周囲に配置される4基のコレットチャックを備え、コレットチャックは、ツールホルダーに設けられた4本のプルスタッドを把持することによりツールホルダーを保持することを特徴とする工作機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−284643(P2008−284643A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131337(P2007−131337)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000114787)ヤマザキマザック株式会社 (80)
【Fターム(参考)】