説明

テクスチャード加工機

本発明は、テクスチャード加工機であって、マルチフィラメント糸である複数の糸をテクスチャード加工する複数の加工箇所と、該加工箇所の内部において糸をそれぞれ案内、延伸及びテクスチャード加工するための、各加工箇所における複数の供給機構及びテクスチャード加工ユニットと、中央の加熱装置とが設けられており、該加熱装置が、複数の糸を熱処理するための加工箇所に配属されており、加工箇所の、加熱装置の出口側に配置されたテクスチャード加工ユニットが、加工箇所の内部における各1つのテクスチャード加工区間を画成している形式のものに関する。このような形式のテクスチャード加工機において、すべての糸を同じ品質で処置するために、本発明では、加工箇所の、加熱装置の糸出口に配属されたテクスチャード加工ユニットが、加熱装置に対して均整の取れた配置形式で保持されていて、糸が加工箇所の内部で等しい長さのテクスチャード加工区間において案内されているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載された形式のテクスチャード加工機、すなわちであって、マルチフィラメント糸である複数の糸をテクスチャード加工する複数の加工箇所と、該加工箇所の内部において糸をそれぞれ案内、延伸及びテクスチャード加工するための、各加工箇所における複数の供給機構及びテクスチャード加工ユニットと、複数の糸を熱処理するために加工箇所に配属されている中央の加熱装置とが設けられており、加工箇所の、加熱装置の出口側に配置されたテクスチャード加工ユニットが、加工箇所の内部における各1つのテクスチャード加工区間を画成している形式のテクスチャード加工機に関する。
【0002】
このような形式のテクスチャード加工機は、EP0039938A1に基づいて公知である。
【0003】
このような公知のテクスチャード加工機では、加工箇所は、糸を案内し、延伸しかつテクスチャード加工するために、複数の供給機構とテクスチャード加工ユニットとを有しており、これらの供給機構及びテクスチャード加工ユニットは機械側壁に沿って配置されている。テクスチャード加工プロセスのために必要な糸の熱処理を実施できるようにするために、中央に加熱装置が設けられており、この加熱装置を通して、複数の糸を同時に熱処理することができる。中央の加熱装置は加工箇所に対して真ん中に配置されているので、テクスチャード加工ユニットの位置に応じて異なった長さのテクスチャード加工区間が形成されている。テクスチャード加工区間は糸の案内区間であり、この案内区間において、仮撚りされた糸はテクスチャード加工ユニットと加熱装置との間において案内されている。例えば一般的に公知の構成では、糸のテクスチャード加工された構造を得るために糸は加熱装置の内部において撚られた状態で、糸材料のガラス固化温度よりも上の処理温度に加熱される。そしてテクスチャード加工区間内において同時に糸の延伸を実施することができる。
【0004】
公知のテクスチャード加工機には、加工箇所においてそれぞれ異なった長さを有するテクスチャード加工区間が存在している、という問題がある。これによって糸において、不均一なテクスチャード加工が施されることになる。特に加熱装置とテクスチャード加工ユニットとの間におけるテクスチャード加工区間においては、長さの差に基づいて、種々異なった冷却状態や種々異なった撚り伝達(Dralluebertragung)が発生してしまう。この理由から、上記形式のテクスチャード加工機は実地においては定着することができなかった。
【0005】
DE3723200A1に基づいて公知のテクスチャード加工機では、加工箇所は平行な配置形式で機械側壁に沿って保持されている。この場合には、ほぼ機械の全幅にわたって延びている複数の加熱装置が使用されており、これらの加熱装置は、各加工箇所のために1つの処理通路を有している。このようなテクスチャード加工機は、糸を加工箇所において均一に案内し、延伸し、かつテクスチャード加工することを可能にしている。この場合通常、216又はそれ以上の加工箇所が1つの機械側壁に並んで配置されている。しかしながらこのようなテクスチャード加工機は、特に糸を熱処理するために著しく多くのエネルギを必要とする。
【0006】
ゆえに本発明の課題は、マルチフィラメント糸である多数の糸をテクスチャード加工するためのテクスチャード加工機を改良して、糸をテクスチャード加工及び延伸するための均一な処理が僅かなエネルギ使用で可能になるようにすることである。
【0007】
この課題を解決するために本発明の構成では、冒頭に述べた形式のテクスチャード加工機において、
加工箇所の、加熱装置の糸出口に配属されたテクスチャード加工ユニットが、加熱装置に対して等間隔に均整の取れた配置形式で保持されていて、糸が加工箇所の内部で等しい長さのテクスチャード加工区間において案内されているようにした。
【0008】
本発明の別の有利な構成は、請求項2以下に記載されている。
【0009】
本発明の利点としては次のことが挙げられる。すなわち本発明によるテクスチャード加工機では、プロセスユニットが加工箇所において特にコンパクトな配置形式で保持されることができ、その結果本発明によるテクスチャード加工機は汎用のテクスチャード加工機に比べて著しく僅かな所要スペースしか必要としない。さらに、加工箇所において案内される糸はすべて、同じ条件下でテクスチャード加工される。加工箇所における等しい長さのテクスチャード加工区間によって、テクスチャード加工ユニットと加熱装置との間に形成された冷却区間においても等しい熱処理が可能になり、かつテクスチャード加工ユニットから加熱装置に至るまでの等しい撚り戻り伝達(Drallrueckuebertragung)が可能になる。中央の加熱装置はさらに、すべての糸を狭い空間にまとめて熱処理することを可能にする。これによって断熱体及び加熱手段のためのコストを最小に減じることができる。
【0010】
加工箇所において可能な限り等しい長さの案内区間を得るために、本発明の別の有利な構成では、加工箇所の、テクスチャード加工ユニットに糸走行路において後置された供給機構が、個別供給機構として加熱装置に対して等間隔に均整の取れた配置形式で保持されている。例えばゴデット式の供給機構を使用することができ、このような供給機構は、糸を特に優しく案内することができる。
【0011】
空間利用に関して特に有利な構成では、加熱装置が鉛直方向に方向付けられており、テクスチャード加工ユニットが加熱装置の糸出口に対して間隔をおいて、円弧形状の配置形式で互いに並んで保持されている。このように構成されていると、テクスチャード加工機内において、特に作業しやすい糸走行路を実現することができ、このような糸走行路は例えばプロセス開始に際して簡単に作業を行うことができる。
【0012】
加工箇所における糸の延伸時に均一な延伸長さを得るために、本発明の別の有利な構成では、加工箇所の、加熱装置に糸走行路において前置された供給機構が、個別供給機構として加熱装置の糸入口に対して等間隔に均整の取れた配置形式で保持されている。これによって、加熱装置に前置された個別供給機構と加熱装置の糸入口との間における案内区間は、加工箇所内において等しい長さに形成されることができる。そしてこれにより、加工箇所内におけるすべての延伸長さは等しい長さに形成される。
【0013】
本発明の特に有利な配置構成では、糸入口が加熱装置の下側に形成され、糸出口が加熱装置の上側に形成されており、テクスチャード加工ユニットが、加熱装置の上側において一平面に配置されている。このように構成されていると、糸供給装置を機械の下側領域において有利に形成することができる。
【0014】
糸型式及び糸材料に応じて、テクスチャード加工の後で巻縮処理が実施され、そのためには糸は新たに加熱されねばならない。そこで本発明の別の有利な構成では、加熱装置が少なくとも2つの別体の処理通路を有しており、これらの処理通路は同時に単数又は複数の糸によって熱処理のために貫通走行されるようになっている。このように構成されていると、糸は、テクスチャード加工のために加熱装置内において加熱され、テクスチャード加工の後で、加熱装置を通る第2の貫通走行時に巻縮処理のために加熱されることができる。
【0015】
機械、つまりテクスチャード加工機内における糸の自由な案内区間を可能な限り短く保つために、本発明によるテクスチャード加工機の有利な構成では、処理通路のうちの1つの処理通路の糸入口と、他方の処理通路の糸出口とが、加熱装置の1つの端部に形成されていて、糸が処理通路内において逆向きに案内されている。
【0016】
さらに本発明の別の構成では、加熱装置の処理通路が、等しい糸長さを有する糸又は異なった糸長さを有する糸を、異なった温度に調整できるように、形成されているもしくは加熱可能である。このように構成されていると、糸のテクスチャード加工や糸の巻縮処理のための個々の要求を最適に実現することができる。そのために加熱装置内部の処理通路は、異なった長さをもって形成されていてもよい。
【0017】
加熱装置内部において多数の糸が存在する場合にこれらの糸を別個に案内できるようにするために、本発明によるテクスチャード加工機の特に有利な構成では、加熱装置が複数の加熱可能な加熱管を有しており、各加熱管内において少なくとも1つの糸が案内可能であるようにした。複数の加熱管は例えば束状に配置されていることができ、このようになっていると、1つの加熱手段を介して一緒に加熱することが可能になる。この場合に、例えば加熱管内における温度差を実現するためには、加熱管に異なった断熱材料を配属させることができる。
【0018】
マルチフィラメント糸を連続的にテクスチャード加工するためには、各加工箇所が、供給スプールからそれぞれ糸を引き出すための別体の供給ステーションを有しており、該供給ステーションが加熱装置に対して均整を取って配置されていて、隣接した加工箇所における糸の自由な案内区間が、ほぼ等しい長さを有していると、有利である。
【0019】
さらに別の有利な構成では、各加工箇所が、テクスチャード加工された糸をスプールに巻き上げるための別体の巻上げ装置を有しており、該巻上げ装置が加熱装置に対して均整を取って配置されていて、隣接した加工箇所における糸の自由な案内区間が、ほぼ等しい長さを有している。
【0020】
しかしながらまた基本的には、供給ステーションと巻上げ装置とが複数の加工グループに分割されており、供給ステーション及び巻上げ装置の加工グループが、加熱装置に対して対称的に配置されている、という構成も可能である。
【0021】
供給スプールの交換と巻上げ装置における満管スプールの交換とを、1つの作業通路から行えるようにするために、本発明の有利な構成では、供給ステーション及び巻上げ装置の加工グループが、互いに直交するように方向付けられた2つの機械側壁を形成しており、供給ステーションが、巻上げ装置の2つの部分グループの間におけるクリールに保持されており、巻上げ装置の両部分グループが機械側壁に沿って配置されている。このように構成されていると、機械側壁から巻上げ装置とクリールにおける供給ステーションとの両方に対して作業を行うことができる。
【0022】
本発明の別の有利な構成では、供給ステーション及び巻上げ装置の加工グループが、全部で4つの機械側壁を備えた正方形の配置形式で保持されており、加熱装置が中央の設置領域に配置されている。このように構成されていると、すべての玉揚げ作業(Doffarbeiten)を機械の外側から実施することができる。これに対して糸をセットするプロセス作業は、内部で、つまり供給ステーションと巻上げ装置及び加熱装置との間の中間室において実施することができる。
【0023】
100を越える多数の加工箇所が存在する場合に、すべての加工箇所における簡単かつ迅速な作業もしくは操作できるようにするために、本発明の別の有利な構成では、加熱装置が複数の別体の加熱モジュールによって形成されていて、供給ステーション及び巻上げ装置の各加工グループに配属されているようにした。この場合各加工グループに配属された供給ステーション、巻上げ装置、加熱モジュール、供給機構及びテクスチャード加工ユニットは、それぞれ1つの機械モジュールに組み合わせられており、これらの機械モジュールは互いに無関係に独立して制御可能である。加工グループが正方形に配置されている場合には、これによって、それぞれ別個にかつ互いに無関係に制御可能及び操作可能な、4つの加工グループを有利に得ることができる。
【0024】
本発明によるテクスチャード加工機は、極めてコンパクトでかつエネルギを節約する機械コンセプトによって傑出しており、この機械コンセプトは、自動化されたテクスチャード加工機のためにも、半自動化された繊維機械のためにも使用可能である。
【0025】
次に図面を参照しながら、本発明によるテクスチャード加工機の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明によるテクスチャード加工機の第1実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明によるテクスチャード加工機の別の実施形態を示す平面図である。
【図3】図2に示された実施形態の加工箇所を示す横断面図である。
【図4】本発明によるテクスチャード加工機のさらに別の実施形態を示す平面図である。
【0027】
図1には本発明によるテクスチャード加工機の第1実施形態が略示されている。図1に示された実施形態では、数少ない加工箇所だけが並んで配置されている。通常、このようなテクスチャード加工機は、100又は200又はそれ以上の多数の加工箇所を有している。図1に示された実施形態では、全部で5つの加工箇所1.1〜1.5が示されている。これらの加工箇所1.1〜1.5は、同一に構成されているので、それぞれの加工箇所1.1〜1.5において各1つの糸5を案内し、延伸しかつテクスチャード加工することができる。
【0028】
加工箇所1.1〜1.5におけるプロセスユニットの構造及び配置形式については、これらの加工箇所のうちの1つを参照して述べる。例えば第1の加工箇所1.1において糸5は、供給スプール14を用いて供給ステーション2に蓄えられる。供給ステーション2は例えば隣接した供給ステーションと共に1つのクリール(Gatter)に配置される。例えば1グループの供給ステーション2を、1グループの供給スプール14を備えた1つのクリールによって形成することが、公知である。
【0029】
供給ステーション2には糸ヘッドガイド3が配属されており、その結果糸はこの糸ヘッドガイド3を介して、供給スプール14の上から引出し可能である。そのために糸5は第1の供給機構4によって案内される。この第1の供給機構4は、複数回巻き掛けられるゴデット18.1を備えた個別供給機構(Einzellieferwerk)として形成されている。加工箇所の内部において第1の供給機構4には中央の加熱装置6が続いており、この加熱装置6を通して、加工箇所1.1〜1.5のすべての糸が同時に加熱のために案内される。そのために加熱装置6は一端部に糸入口21を有し、反対側の端部に糸出口22を有している。
【0030】
加工箇所1.1の内部におけるさらなる糸走行路において、加熱装置6の出口側には、冷却装置8とテクスチャード加工ユニット7が続いている。このテクスチャード加工ユニット7には第2の供給機構9が後置されており、この第2の供給機構9もまた同様に、ゴデット18.2として形成された個別供給機構によって形成されている。
【0031】
加工箇所1.1の端部には巻上げ装置10が配置されており、この巻上げ装置10は、テクスチャード加工された糸5をスプール12に巻き上げる。そのために巻上げ装置10はスプールホルダ24と、巻上げ中にスプール12を均一に駆動する駆動ローラ11とを有している。駆動ローラ11には綾振り装置13が前置されており、これにより糸5は綾巻きされる。
【0032】
加工箇所1.1〜1.5の内部においてそれぞれ糸の均一な処理と案内とを可能にするために、加熱装置6の糸出口22に配属されたテクスチャード加工ユニット7は、加熱装置6に対して等間隔に均整の取れた配置形式で保持されていて、各糸が加工箇所1.1〜1.5の内部において均一な長さのテクスチャード加工区間で案内され得るようになっている。図1において加工箇所1.1には、糸出口22とテクスチャード加工ユニット7との間におけるテクスチャード加工区間が符号Tで示されている。テクスチャード加工区間内には冷却装置8が配置されている。図示の加工箇所1.1〜1.5のそれぞれにおいて、テクスチャード加工区間Tは等しい長さを有している。
【0033】
加工箇所1.1〜1.5の第1の供給機構4と加工箇所1.1〜1.5の第2の供給機構9との間において、糸を延伸するために等しい長さの案内区間を得ることを目的として、加熱装置の出口側には糸走行路においてテクスチャード加工ユニット7に後置された供給機構9は、加熱装置6に対して等間隔に均整の取れた配置形式で保持されている。加熱装置6の糸出口22と第2の供給機構9との間における案内区間は符号S2で示されている。同様に糸走行路において加熱装置6に前置された、加工箇所1.1〜1.5の第1の供給機構4は、加熱装置6の糸入口21に対して等間隔に均整の取れた配置形式で保持されている。ここでは案内区間S1は第1の供給機構4と加熱装置6の糸入口21との間に示されている。このようになっていることによって、テクスチャード加工区間Tのみならず、加工箇所1.1〜1.5において第1の供給機構4と加熱装置6と第2の供給機構9との間におけるすべての案内区間S1,S2は等しい長さで構成されている。図1に示された実施形態では、供給ステーション2と巻上げ装置10とは互いに平行な配置形式で並んで配置されており、これによって供給ステーション2に対して平行に第1の機械側壁が形成され、巻上げ装置10に対して平行に第2の機械側壁が形成されている。供給スプール及び完全に巻き上げられたスプールのスプール搬送は、従って機械側壁にそれぞれ配属もしくは対応配置された作業通路を通して有利に行われる。基本的にはしかしながらまた、供給ステーション2と巻上げ装置10とを対称的に、中央の加熱装置6に対して等しい間隔をもって配置することも可能である。
【0034】
図2及び図3に示された、本発明によるテクスチャード加工機の別の実施形態では、供給ステーションと巻上げ装置とは、加熱装置に対して等しい間隔をもって配置されている。図2にはこの実施形態が平面図で、図3には横断面図で示されている。図に対して特別な断り書きがない場合には、以下の記載は両方の図に対してのものである。
【0035】
図示の実施形態では、全部で12の加工ステーション1.1〜1.12が1つの中央の加熱装置6に対して配属されている。
【0036】
図2から分かるように、加熱装置6はテクスチャード加工機の中央の設置領域に配置されている。加工箇所1.1〜1.12のプロセスユニットは、それぞれ加熱装置6に対して間隔をおいて周囲に円弧状に互いに並んで保持されている。加熱装置6は機械配置構成の中央を形成している。残りのすべてのプロセスユニットは、加熱装置6を中心にして星形に配置されている。例えばテクスチャード加工ユニット7と同じ型式のプロセスユニットは、加工箇所1.1〜1.12においてそれぞれ、加熱装置に対して等間隔を有している。その結果加工箇所1.1〜1.12内においては等しい長さのテクスチャード加工区間が生ぜしめされている。
【0037】
加工箇所1.1〜1.12は、プロセスユニットの構造及び配置形式において同一に形成されている。従って以下においては、これらの加工箇所1.1〜1.12のうちの1つを例として加工箇所の基本的な構造を説明する。
【0038】
図3には、互いに鏡像的に位置している2つの加工箇所1.3,1.10が横断面図で示されている。加工箇所1.3は供給ステーション2を有しており、この供給ステーション2は、加熱装置に対して最大の間隔をおいてテクスチャード加工機の外側領域に配置されている。供給ステーション2は供給スプール14を有しており、この供給スプール14から糸5が第1の供給機構4を介して引き出される。糸案内のために第1の供給機構4と供給ステーション2との間にはヘッド糸ガイド3が配置されている。第1の供給機構4は、ゴデット18.1とオーバフローローラ17.1とによって形成される。ゴデット18.1はゴデットモータ16.1によって駆動される。供給スプール14から糸5を引き出すために必要な引張り力を生ぜしめることができるようにするために、ゴデット18.1とオーバフローローラ17.1には糸5が複数回巻き掛けられる。
【0039】
さらなる糸走行路において、糸5は加熱装置6の糸入口21.1に導かれる。そのために加熱装置6は鉛直に方向付けられていて、下側に糸入口21.1を有している。反対側の上側には糸出口22.1が形成されている。糸入口21.1及び糸出口22.1は処理通路23.1の両端部に形成されている。処理通路23.1は加熱装置6内において加熱可能に構成されている。この実施形態において処理通路23.1は、加熱管25によって形成され、この加熱管25は例えば蒸気又は電気式の加熱手段によって加熱可能である。糸入口21.1と糸出口22.1とにはそれぞれ1つの入口糸ガイド19.1及び出口糸ガイド20.1が配属されており、これらの糸ガイドによって走入する糸もしくは走出する糸5が変向される。
【0040】
加熱装置6の上に加工箇所1.3は、冷却装置8、テクスチャード加工ユニット7及び第2の供給機構9を有している。この冷却装置8、テクスチャード加工ユニット7及び第2の供給機構9は、直線的な糸走行路のために相前後して配置されており、この場合テクスチャード加工ユニット7はテクスチャード加工区間を画成している。
【0041】
第2の供給機構9はゴデット18.2とオーバフローローラ17.2とによって形成されていて、この場合ゴデット18.2はゴデットモータ16.2によって駆動される。第2の供給機構9のゴデット18.2、第1の供給機構4のゴデット18.1に比べて高い速度で駆動され、これによって糸5はテクスチャード加工区間内において延伸される。加工箇所1.1〜1.12のそれぞれにおいて、第1の供給機構4と第2の供給機構9との間における糸5の案内区間は等しい長さに形成されている。
【0042】
加工箇所1.3の内部において糸5は第2の供給機構9のところで180°変向されて、加熱装置6に戻される。加熱装置6の内部には第2の別の処理通路23.2が形成されていて、この処理通路23.2によって、テクスチャード加工された糸5の後処理が行われる。第2の処理通路23.2は加熱装置6の上側に糸入口21.2を有し、下側に糸出口22.2を有している。これによって糸5は処理通路23.1と処理通路23.2とを逆方向で貫通することになる。処理通路23.2はこの実施形態においても同様に加熱管25によって形成されており、この加熱管25は図示されていない加熱手段によって加熱可能である。この場合、断熱状態の変化や別個の加熱手段によって、処理通路23.1,23.2において異なった温度調整を実施し、その結果、加熱装置6内部における同じ長さの案内区間において糸に対して異なった加熱を行うことができる。
【0043】
糸5を案内するために、加熱装置6の下には第3の供給機構15が設けられており、この供給機構15も同様に駆動されるゴデット18.3と自由回転可能なオーバフローローラ17.3とによって形成されている。この場合第2の供給機構9のゴデット18.2と第3の供給機構15のゴデット18.3との間には、巻縮処理のために必要な速度差が調節されている。糸案内のために、糸入口21.2と糸出口22.2とにも同様に2つの糸ガイド19.2,20.2が配属されている。入口糸ガイド19.2及び出口糸ガイド20.2は変向ローラ又は変向ピンによって形成されていることができる。
【0044】
第3の供給機構15には加工箇所1.3において巻上げ装置10が後置されている。この巻上げ装置10はスプールホルダ24を有していて、このスプールホルダ24には、巻成されるスプール12が回転可能に保持されている。スプール12はその周囲で、駆動ローラ11に接触しており、この駆動ローラ11によってスプール12は一定の周速度で駆動される。駆動ローラ11には糸走行路において綾振り装置13が前置されており、これによってテクスチャード加工された糸5はスプール12に綾巻きされる。糸を案内するために第3の供給機構15と巻上げ装置10との間には変向ロッド33が配置されており、この変向ロッド33によって糸5は巻上げ装置10へと案内されている。
【0045】
この実施形態に示されたプロセスユニットの構造は、1例であり、糸を案内、延伸及びテクスチャード加工するための主要なプロセスユニットだけを有している。基本的には、糸5を巻上げ装置10の前に減摩剤もしくは滑剤によって湿らすことが通常である。例えば第3の供給機構15と巻上げ装置10との間に滑剤装置(Praeparationseinrichtung)が設けられている。さらに、巻縮処理の前でかつテクスチャード加工の後において糸を交絡(verwirbeln)させることが公知である。例えば案内区間において第2の供給機構9と加熱装置6の糸入口21.2との間に、交絡装置及び別の供給機構を配置することも可能である。
【0046】
さらに、巻上げ装置10が、加工箇所において前置された供給機構4,9,15の幅よりも著しく大きな幅を有していることが公知である。例えば、巻上げ装置10の幅内に、通常、互いに隣接配置された複数の加工箇所の全部で3つの並んで位置するテクスチャード加工区間を配置することができ、これによって隣接配置された複数の巻上げ装置を、階層を成して互いに上下に保持することができる。
【0047】
図2及び図3に示された実施形態では、スプール交換のための作業は内側の作業通路34から行われる。この作業通路34は加工箇所1.1〜1.12の加熱装置6と巻上げ装置10との間の中間室に形成されている。テクスチャード加工機の、巻上げ装置10とは反対側の外側にも同様に作業通路35が形成されており、この作業通路35は、供給ステーション2に供給スプール14を搬送するために使用される。加工箇所1.1〜1.12においてプロセス開始のために糸をセットすることは、内側の作業通路34から行われる。
【0048】
図2から分かるように、加工箇所1.1と加工箇所1.12との間には通路32が形成されており、この通路35によって内側の作業通路34と外側の作業通路35とは互いに接続されている。
【0049】
図2及び図3に示された本発明によるテクスチャード加工機の実施形態は、加工箇所1.1及び加工箇所1.12の内部においてすべての案内区間及びテクスチャード加工区間が等しい長さで形成されていることによって、傑出している。従って糸はそれぞれ加工箇所1.1〜1.12の内部において等しい条件下で引き出され、案内され、延伸され、テクスチャード加工され、そして巻き上げられる。
【0050】
しかしながら実際の運転においては、しばしば、200よりも多くの加工箇所が組み込まれているようなテクスチャード加工機が使用される。このような大型のテクスチャード加工機のためには、特に、図4に平面図で示された本発明によるテクスチャード加工機の実施形態が適している。
【0051】
この実施形態は、中央の設置領域に配置された加熱装置6を有している。加熱装置6には全部で96の加工箇所が配属されており、これらの加工箇所は加熱装置6に対して対称的に配置されている。加工箇所はそれぞれ同一に形成されていて、図3について既に述べた基本的な構造を有しているので、説明の繰り返しは省く。
【0052】
図4に示された実施形態では、供給ステーション及び巻上げ装置は、複数の加工グループ26.1,26.2,26.3,26.4は分割されている。各加工グループ26.1,26.2,26.3,26.4、供給ステーション2及び巻上げ装置10は、互いに直交するように方向付けられた2つの機械側壁を形成している。例えば加工グループ26.1は外側に向かって機械側壁31.1,31.2を形成している。供給ステーション2はクリール29内に配置されており、このクリール29は巻上げ装置10の2つの部分グループ27.1,27.2の間に配置されている。巻上げ装置10は階層を成して巻上げモジュール28によって保持されており、この巻上げモジュール28は、それぞれ部分グループ27.1,27.2において機械側壁31.1,31.2に沿って延びている。この場合巻上げ装置10の部分グループ27.1は機械側壁31.1を形成し、巻上げ装置10の部分グループ27.2は機械側壁31.2を形成している。
【0053】
加工グループ26.1,26.4は正方形の配置形式で加熱装置6の回りに配置されており、その結果全部で4つの機械側壁31.1〜31.4が生ぜしめられている。角隅領域にはそれぞれ加工グループ26.1〜26.4のクリール29が配置されている。
【0054】
多数の加工箇所における作業を可能にするために、加熱装置は、別個の複数の加熱モジュールによって形成されており、各加工グループ26.1〜26.4にはそれぞれ加熱モジュール30は配属されている。例えば加工グループ26.1〜26.4に配属された加工箇所は、制御しやすいように1つの機械モジュール36.1〜36.4にまとめられている。これらの機械モジュール36.1〜36.4は互いに無関係に独立して制御されることができるので、その結果加工グループ26.1〜26.4に配属された加工箇所は、テクスチャード加工機全体の内部において、グループ毎に作業及び制御可能である。
【0055】
プロセス開始に際して加工箇所の内部における糸をセットする作業は、巻上げモジュール28と加熱装置6との間に形成された内側の作業通路34から行われる。スプール交換及び新たな供給スプールを備えたクリール29の装着は、機械側壁31.1〜31.4に沿って延びている外側の作業通路35から行われる。また複数の通路32を介して、内側の作業通路34と外側の作業通路35とは互いに接続されている。通路32はこの場合それぞれ互いに隣接した加工グループ26.2と26.3等の間に形成されている。
【0056】
本発明によるテクスチャード加工機の、図1〜図4に示された実施形態は、プロセスユニットの形態及び構成を例示しているものである。テクスチャード加工ユニットは有利には摩擦式仮撚り装置(Friktionsfalschdrallvorrichtung)によって形成され、このような仮撚り装置では、複数の摩擦円板が全部で3つの摩擦スピンドルにおいて駆動され、糸は、仮撚りを生ぜしめるために摩擦円板のオーバラップ領域を通して案内される。また例えば冷却装置としては、糸が接触しながら案内される冷却レールや冷却管を使用することができる。本発明にとって重要なことは、機械、つまりテクスチャード加工機の中心が加熱装置によって形成されていることである。このような配置構成によって、糸を熱処理するためのエネルギを著しく節約することができる。そしてさらに、僅かな断熱手段しか有していない極めてコンパクトな加熱装置を実現することができる。
【符号の説明】
【0057】
1.1〜1.12 加工箇所、 2 供給ステーション、 3 ヘッド糸ガイド、 4 第1の供給機構、 5 糸、 6 加熱装置、 7 テクスチャード加工ユニット、 8 冷却装置、 9 第2の供給機構、 10 巻上げ装置、 11 駆動ローラ、 12 スプール、 13 綾振り装置、 14 供給スプール、 15 第3の供給機構、 16.1,16.2,16.3 ゴデットモータ、 17.1,17.2,17.3 オーバフローローラ、 18.1,18.2,18.3 ゴデット、 19.1,19.2 入口糸ガイド、 20.1,20.2 出口糸ガイド、 21,21.1,21.2 糸入口、 22,22.1,22.2 糸出口、 23.1,23.2 処理通路、 24 スプールホルダ、 25 加熱管、 26.1,26.2,26.3,26.4 加工グループ、 27.1,27.2 部分グループ、 28 巻上げモジュール、 29 クリール、 30 加熱モジュール、 31.1,31.2,31.3,31.4 機械側壁、 32 通路、 33 変向ロッド、 34 内部の作業通路、 35 外部の作業通路、 36.1,36.2,36.3,36.4 機械モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テクスチャード加工機であって、マルチフィラメント糸である複数の糸(5)をテクスチャード加工する複数の加工箇所(1.1〜1.5)と、該加工箇所(1.1〜1.5)の内部において糸(5)をそれぞれ案内、延伸及びテクスチャード加工するための、各加工箇所(1.1〜1.5)における複数の供給機構(4,9)及びテクスチャード加工ユニット(7)と、複数の糸(5)を熱処理するために加工箇所(1.1〜1.5)に配属されている中央の加熱装置(6)とが設けられており、加工箇所(1.1〜1.5)の、加熱装置(6)の出口側に配置されたテクスチャード加工ユニット(7)が、加工箇所(1.1〜1.5)の内部における各1つのテクスチャード加工区間(T)を画成している形式のものにおいて、
加工箇所(1.1〜1.5)の、加熱装置(6)の糸出口(22)に配属されたテクスチャード加工ユニット(7)が、加熱装置(6)に対して均整の取れた配置形式で保持されていて、糸(5)が加工箇所(1.1〜1.5)の内部で等しい長さのテクスチャード加工区間(T)において案内されていることを特徴とするテクスチャード加工機。
【請求項2】
加工箇所(1.1〜1.5)の、テクスチャード加工ユニット(7)に糸走行路において後置された供給機構(9)が、個別供給機構(18.2)として加熱装置(6)に対して均整の取れた配置形式で保持されている、請求項1記載のテクスチャード加工機。
【請求項3】
加熱装置(6)が鉛直方向に方向付けられており、テクスチャード加工ユニット(7)が加熱装置(6)の糸出口(22)に対して間隔をおいて、円弧形状の配置形式で互いに並んで保持されている、請求項1又は2記載のテクスチャード加工機。
【請求項4】
加工箇所(1.1〜1.5)の、加熱装置(6)に糸走行路において前置された供給機構(4)が、個別供給機構(18.1)として加熱装置(6)の糸入口(21)に対して均整の取れた配置形式で保持されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のテクスチャード加工機。
【請求項5】
糸入口(21)が加熱装置(6)の下側に形成され、糸出口(22)が加熱装置(6)の上側に形成されており、テクスチャード加工ユニット(7)が、加熱装置(6)の上側において一平面に配置されている、請求項3又は4記載のテクスチャード加工機。
【請求項6】
加熱装置(6)が少なくとも2つの別体の処理通路(23.1,23.2)を有しており、これらの処理通路(23.1,23.2)は同時に単数又は複数の糸(5)によって熱処理のために貫通走行される、請求項1から5までのいずれか1項記載のテクスチャード加工機。
【請求項7】
処理通路(23.1,23.2)のうちの1つの処理通路(23.1)の糸入口(21.1)と、他方の処理通路(23.2)の糸出口(22.2)とが、加熱装置(6)の1つの端部に形成されていて、糸(5)が処理通路(23.1,23.2)内において逆向きに案内されている、請求項6記載のテクスチャード加工機。
【請求項8】
加熱装置(6)の処理通路(23.1,23.2)が、糸(5)を異なった温度に調整できるように、形成されているもしくは加熱可能である、請求項6又は7記載のテクスチャード加工機。
【請求項9】
加熱装置(6)が複数の加熱可能な加熱管(25)を有しており、各加熱管(25)内において少なくとも1つの糸が案内可能である、請求項1から8までのいずれか1項記載のテクスチャード加工機。
【請求項10】
各加工箇所(1.1〜1.5)が、供給スプール(14)からそれぞれ糸(5)を引き出すための別体の供給ステーション(2)を有しており、該供給ステーション(2)が加熱装置(6)に対して均整を取って配置されていて、隣接した加工箇所(1.1〜1.5)における糸の案内区間が、ほぼ等しい長さを有している、請求項1から9までのいずれか1項記載のテクスチャード加工機。
【請求項11】
各加工箇所(1.1〜1.5)が、テクスチャード加工された糸(5)をスプール(12)に巻き上げるための別体の巻上げ装置(10)を有しており、該巻上げ装置(10)が加熱装置(6)に対して均整を取って配置されていて、隣接した加工箇所(1.1〜1.5)における糸の案内区間が、ほぼ等しい長さを有している、請求項1から10までのいずれか1項記載のテクスチャード加工機。
【請求項12】
各加工箇所(1.1〜1.5)が、供給スプール(14)からそれぞれの糸(5)を引き出すための別体の供給ステーション(2)と、テクスチャード加工された糸をスプール(12)に巻き上げるための別体の巻上げ装置(10)とを有しており、供給ステーション(2)と巻上げ装置(10)とが複数の加工グループ(26.1,26.2)に分割されており、供給ステーション(2)及び巻上げ装置(10)の加工グループ(26.1,26.2)が、加熱装置(6)に対して対称的に配置されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のテクスチャード加工機。
【請求項13】
供給ステーション(2)及び巻上げ装置(10)の加工グループ(26.1)が、互いに直交するように方向付けられた2つの機械側壁(31.1,31.2)を形成しており、供給ステーション(2)が、巻上げ装置(10)の2つの部分グループ(27.1,27.2)の間におけるクリール(29)に保持されており、巻上げ装置(10)の両部分グループ(27.1,27.2)が機械側壁(31.1,31.2)に沿って配置されている、請求項12記載のテクスチャード加工機。
【請求項14】
供給ステーション(2)及び巻上げ装置(10)の加工グループ(26.1〜26.4)が、全部で4つの機械側壁(31.1〜31.4)を備えた正方形の配置形式で保持されており、加熱装置(6)が中央の設置領域に配置されている、請求項12又は13記載のテクスチャード加工機。
【請求項15】
加熱装置(6)が複数の別体の加熱モジュール(30)によって形成されており、供給ステーション(2)及び巻上げ装置(10)の各加工グループ(26.1,26.2)にそれぞれ、1つの加熱モジュール(30)が配属されている、請求項12から14までのいずれか1項記載のテクスチャード加工機。
【請求項16】
加工グループ(26.1,26.2)のうちの1つに配属された供給ステーション(2)、巻上げ装置(10)、加熱モジュール(30)、供給機構(4,9)及びテクスチャード加工ユニット(7)が、1つの機械モジュール(36.1)を形成しており、複数の機械モジュール(36.1,36.2)が互いに無関係に独立して制御可能である、請求項15記載のテクスチャード加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−529138(P2011−529138A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519124(P2011−519124)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059031
【国際公開番号】WO2010/010016
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(307031976)エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (105)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & CO. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D−42897 Remscheid, Germany
【Fターム(参考)】