説明

テストソケットのテストヘッドとその製造方法

【課題】 テストソケットの導電子を成すワイヤの配置ピッチを小さくしてICの高集積化及び多ピン化(多端子化)に対応できるようにする。
【解決手段】テストヘッドのボードとして、一方向に平行に延びる複数のスリット32、32、・・・を有する複数枚の絶縁シート30a・30bどうしを、一方の絶縁シート30aの複数のスリット32、32、・・・と他方の絶縁シート30bの複数のスリット32、32、・・・どうしが交差し、各交差部にそのスリット32、32、・・・からなる断面多角形の線状導電子嵌合孔34が生じるように積層したもの36を用いる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の電極とピッチアダプタとの間に介在するテストソケットのテストヘッドと、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の電子機器類を出荷するにはその電気的特性を測定し、基準をクリアする電気的特性を有するものだけを合格品として出荷対象とすることが必要である。そして、その電気的測定には、その電子機器、例えば半導体素子の各電極と測定回路の各電極との間を測定に必要な時間一時的に電気的に接続するテストソケットが必要である。
特開平07−198780号公報(:特許文献1)には、そのようなテストソケットの例が公表されているが、図2はより新しいタイプのソケットの概略を示す断面図で、(A)はピッチアダプタを組み付けた状態を示し、(B)はピッチアダプタを示す。
【0003】
図2において、2aはテストソケット、4はつまみで、回すことによりICチップ6の各電極をソケット2aの端子に圧接させた状態にしたり、その圧接状態を解除した状態にしたりするためのものである。8はソケット本体、10はソケット本体8内のテストヘッドで、複数本のテーパー状の線状導電子(ワイヤ)12、12、・・・の一端部が貫通状に固定されている。
このテストヘッド10は、上記ワイヤ12、12、・・・の一端部が突出した側の面にてICチップ6の裏面を、その突出した各端部にそのICチップ6の電極が接する状態で、受ける。
【0004】
14はピッチ変換部(ピッチアダプタ)で、ソケット本体8の裏面側に設けられ、上記複数本のワイヤ12、12、・・・のテストヘッド10から裏面側に突出した部分が、ピッチが大きくなるように通っている。16はピッチ変換部(ピッチアダプタ)14の裏面で、半田からなる電極18、18、・・・が形成されている。この電極18、18、・・・は、上記テストヘッド10における上記ワイヤ12、12、・・・の配置ピッチより配置ピッチが大きく設定されている。
そして、その電極18、18、・・・には、テーパー状ワイヤ12、12、・・・の他端部がはんだ付けされている。使用時には、その電極18、18、・・・をテスター回路の各端子に接続させた状態にする。
【0005】
このソケット2aは、そのテストヘッド10の上面にICチップ6を電極側が下向きになる向きでセットし、つまみ4を回してICチップ6を下向きに押圧すると、ICチップ6の各電極がテストヘッド10の上側に突出したワイヤ12、12、・・・の一端に接触し、このワイヤ12、12、・・・を介してテスター回路に接続された状態にし、ICチップ2aがソケット2aによりテスター回路に電気的に接続された状態にする。
【0006】
テストヘッド10は、従来、図3に示すように、絶縁性樹脂からなるシート状のフィルム20にワイヤを通す導電子嵌合孔22、22、・・・を形成したものが用いられていた。その導電子嵌合孔22、22、・・・は一般にドリルを用いて穿孔するという方法で形成されており、その導電子嵌合孔22、22、・・・は平面形状直径が最小で50μm程度であり、縦及び横方向における配置ピッチが最小で100μm程度であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07−198780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ICは高集積化、多ピン化(多端子化)の一途を辿っており、テストヘッドとして、線状導電子(ワイヤ)を通す導電子嵌合孔の大きさ(直径或いは幅)が25μm或いはそれ以下、ピッチが50μm或いはそれ以下というようなことが要求される状況になりつつある。
しかし、従来のドリルを用いて穿孔する方法によるワイヤを通す孔を形成によれば、そのような多ピン化(多端子化)の要求には応えることが難しかった。
【0009】
また、従来においては孔をドリルで形成していたので、孔の平面形状は円形であった。そのため、その孔に通すワイヤとして断面形状円形のものを用いる必要があり、そのため、テストヘッド組立中において、ワイヤを孔に通した後、ワイヤが孔に対して回転し、緩みが生じ、外れが生じるような問題もあった。
そこで、本願発明者は、テストヘッドとしてワイヤを通す孔の大きさが20μm或いはそれ以下、ピッチが30μm或いはそれ以下というような要求に応えるべく、模索をし、その結果として本発明を為すに至った。
【0010】
即ち、本発明は、テストソケットのテストヘッドの線状導電子(ワイヤ)の配置ピッチを小さくしてICの高集積化及び多ピン化(多端子化)に対応できるようにし、更に、作業中に導電子嵌合孔に嵌合させた線状導電子(ワイヤ)が抜けるおそれを少なくして作業性を良くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1のテストヘッドは、一方向に平行に延びる複数のスリットを有する複数枚の絶縁シートどうしを、一方の絶縁シートの複数のスリットと他方の絶縁シートの複数のスリットどうしが交差し、各交差部にそのスリットからなる断面多角形の線状導電子嵌合孔が生じるように積層したボードと、このボードの上記各交差部に嵌合され、被測定体の各電極とそれに対応するテスター側の電極との間を電気的に接続する導電子と、からなることを特徴とする。
【0012】
請求項2のテストソケットのテストヘッドの製造方法は、一方向に平行に延びる複数のスリットを有する絶縁シートを複数枚用意し、この複数枚の絶縁シートどうしを、一方の絶縁シートの複数のスリットと他方の絶縁シートの複数のスリットどうしが上から視て交差し、各交差部にそのスリットからなる多角形の導電子嵌合孔が生じるように積層し、その後、それ等各交差部の多角形の導電子嵌合孔に被測定体の各電極とそれに対応するテスター側の電極との間を電気的に接続する導電子を嵌合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1、2の発明によれば、絶縁シートのスリットをエッチングにより従来のドリルにより形成される孔径よりも幅を狭くすることが容易に為し得る。そして、スリットどうしを交差させることにより交差部分に線状導電子を通す導電子嵌合孔を形成することができる。
従って、円形ではない多角形であって従来の導電子嵌合孔の直径よりも小さい幅の導電子嵌合孔を、線状導電子(ワイヤ)を通す孔として形成することができる。
【0014】
依って、テストソケットの線状導電子(ワイヤ)の配置ピッチを小さくしてICの高集積化及び多ピン化(多端子化)に対応できるようにすることができる。
また、導電子嵌合孔は円形ではなく、矩形なので、線状導電子として断面矩形状のものを用いることができ、そのようにした場合、組立中に導電子嵌合孔に嵌合した線状導電子の端部が回ってしまうおそれが無く、組立作業性が優れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)〜(C)は本発明テストソケットのテストヘッドを製造する製造方法の一つの実施例を工程順に示す斜視図であり、そのうち(C)が本発明テストソケットのテストヘッドの一つの実施例を示す。
【図2】(A)、(B)は背景技術を説明するための新しいタイプのソケットの概略を示す断面図で、(A)はピッチアダプタを組み付けた状態を示し、(B)はピッチアダプタを示す。
【図3】テストヘッドの従来例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明においては、テストヘッドのボードとして、一方向に平行に延びる複数のスリットを有する複数枚のの絶縁シートどうしを、一方の絶縁シートの複数のスリットと他方の絶縁シートの複数のスリットどうしが交差し、各交差部にそのスリットからなる断面多角形の線状導電子嵌合孔が生じるように積層したものを用いるが、そのボードを構成する絶縁シートの材料としてはポリイミド樹脂が好適である。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の詳細を図示実施例に基いて説明する。
図1(A)〜(C)は本発明テストソケットのテストヘッドの製造方法の一つの実施例を工程順示す斜視図であり、そのうち(C)が本発明のテストヘッドの一つの実施例を示す図となる。
【0018】
(A)図1(A)に示すように、テストヘッド1個分として絶縁シートを2枚30a、30b用意する。
その絶縁シート30aと30bは、共に例えばポリイミド樹脂からなり、厚さが例えば50μmであり、フォトリソグラフィ技術により形成されたスリット32、32、・・・を有する。
スリット32、32、・・・は互いに平行に且つ幅、長さ及び配置ピッチが同じに形成されており、スリット幅は全て例えば25μmと相当に狭い。また、配置ピッチが50μmと従来よりも相当に小さい。
【0019】
(B)次に、図1(B)に示すように、絶縁シート30aと30bとを、そのスリット32、32、・・・どうしが上から視て直交するように積層し、接着して一体化する。すると、スリット32、32、・・・どうしが交差する部分に絶縁シート積層体を貫通する導電子嵌合孔34、34、・・・が形成されたボード36ができる。
各導電子嵌合孔34、34、・・・は、一辺が25μmの正方形を有し、厚さは例えば100μmである。
【0020】
(C)次に、図1(C)に示すように、上記ボード36の各導電子嵌合孔34、34、・・・に、導電子である、断面形状が矩形の線状導電子(テーパー状ワイヤ)38、38、・・・の細い側の端部を下側から通し、一定の寸法に先端を突出させる。
この図1(C)が本発明テストソケットのテストヘッドの一つの実施例40を示す。
この各ワイヤ38、38、・・・のボード36から下側へ突出した部分は、図2(A)、(B)に示すピッチ変換器(ピッチアダプタ)にてピッチ変換されて下端が半田バンプによる電極に接続される。
【0021】
このようなテストヘッド40は、導電子嵌合孔34、34、・・・を、一辺が25μmの正方形という小ささにでき、配置ピッチが50μmと小ささにでき、高集積化及び多ピン化(多端子化)に対応できるようにすることができる。
また、導電子嵌合孔34、34、・・・は円形ではなく、矩形であり、線状導電子36、36、・・・として断面矩形状のものを用いるので、組立中に導電子嵌合孔34、34、・・・に嵌合した線状導電子の端部が回ってしまうおそれが無く、組立作業性が優れる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、半導体素子等の電極とピッチアダプタとの間に介在するテストソケットのテストヘッドと、その製造方法に広く産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0023】
30a、30b・・・絶縁シート、32・・・スリット、
34・・・導電子嵌合孔、36・・・ボード、38・・・導電子線子、
40・・・本発明テストソケットのテストヘッドの一実施例。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に平行に延びる複数のスリットを有する複数枚の絶縁シートどうしを、一方の絶縁シートの複数のスリットと他方の絶縁シートの複数のスリットどうしが交差し、各交差部にそのスリットからなる多角形の導電子嵌合孔が生じるように積層したボードと、
このボードの上記各交差部に嵌合され、被測定体の各電極とそれに対応するテスター側の電極との間を電気的に接続する導電子と、
からなることを特徴とするテストソケットのテストヘッド。
【請求項2】
一方向に平行に延びる複数のスリットを有する絶縁シートを複数枚用意し、
この複数枚の絶縁シートどうしを、一方の絶縁シートの複数のスリットと他方の絶縁シートの複数のスリットどうしが交差し、各交差部にそのスリットからなる多角形の導電子嵌合孔が生じるように積層し、
その後、それ等各交差部の多角形の導電子嵌合孔に被測定体の各電極とそれに対応するテスター側の電極との間を電気的に接続する導電子を嵌合する
ことを特徴とするテストソケットのテストヘッドの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−159368(P2012−159368A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18643(P2011−18643)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(595041280)東洋電子技研株式会社 (7)
【Fターム(参考)】