説明

テトラアザポルフィリン化合物

【課題】鮮明な青色で耐光性に優れた、溶剤溶解性の高い新規なテトラアザポルフィリン化合物の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物。


(式中A、A、A及びAで表される環は、


を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真トナーやインクジェット用インクに用いられる、溶解性に優れ、鮮明な青色で耐光性に優れた新規のテトラアザポルフィリン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フルカラーの電子写真用トナーや、インクジェット記録用インク用途に溶解性に優れ鮮明な青色で耐光性に優れた色素が要望されている。
金属フタロシアニン化合物は、青色色素として種々の用途に使用されている。例えば、特開平3−195783号公報では、インクジェット記録用インクに金属フタロシアニンスルホン酸アミド化合物を使用しているが、金属フタロシアニンスルホン酸アミド化合物の最大吸収波長が670nm附近であるため、鮮明な青色は得られない。
また特開平2−276866号公報では、光記録媒体用の色素として、本発明の化合物とは中心金属が異なる化合物であるが、テトラアザポルフィン化合物が開示されている。しかしながら、この化合物をインクジェット用インク等に使用した場合、最大吸収波長は650nm附近であり鮮明な青色とは言えない。
そこで、特に600nm附近に強い吸収をもつ有機溶媒可溶型の着色剤に対する要望が強くなってきている。
また、最近では、高分子材料の着色剤等に、作業環境および安全性に優れる極性有機溶媒、例えば乳酸メチル、乳酸エチル等に対する溶解性の高い着色剤が特に求められている。
【特許文献1】特開平3−195783号公報
【特許文献2】特開平2−276866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、鮮明な青色で耐光性に優れ、600nm附近に強い吸収をもつ有機溶媒可溶型テトラアザポルフィン化合物を提供することである。即ち、より具体的には、透明性の高いトナーや鮮明な青色インクジェット用インク等に使用できる、有機溶媒や樹脂への溶解性が高いテトラアザポルフィン化合物を提供することである。また、他の課題は高分子材料の着色剤に使用でき、乳酸メチル、乳酸エチル等の極性有機溶媒に対する溶解性の高い色素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、前記の課題を解決するために鋭意検討した。その結果特定の構造のテトラアザポルフィン化合物が600nm附近に強い吸収を有し、鮮明な青色で耐光性に優れ、有機溶媒や樹脂への溶解性が高いとの知見を得て前記課題を解決するに至った。
すなわち、本発明は下記一般式(1)
【0005】
【化1】

(式(1)中A、 A、 A及びAで表される環は、それぞれ独立に
【0006】
【化2】

を表し、A、 A、 A及びAの少なくとも1つは、
【0007】
【化3】

である。R、Rは独立に、水素原子または置換もしくは非置換のアルキル基を表し、mは1〜8の整数を表し、nは1〜4の整数を表す。ただしRとRが同時に水素原子であることはない。)
で表されるテトラアザポルフィリン化合物を提供するものである。
【発明の詳細な記述】
【0008】
本発明の前記一般式(1)のテトラアザポルフィリン化合物において、R、Rが非置換のアルキル基であるものとしては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、2−エチルへキシル基、nーオクチル基、nードデシル基等の直鎖または分岐アルキル基が挙げられるが、中でも炭素数4〜12の直鎖又は分岐アルキル基が好ましい。
【0009】
、Rが置換アルキル基であるものとしては、酸素原子をエーテル結合、カルボニル結合、および/またはエステル結合の形で含むアルキル基が好ましく、特に酸素原子を1〜4個含む炭素数2〜12の直鎖、分岐、環状アルキル基が好ましい。例としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、ブトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、3−メキシプロピル基、3−エトキシプロピル基、3−ブトキシプロピル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、ブトキシエトキシエチル基、メトキシエトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエトキシエチル基、ブトキシエトキシエトキシエチル基、アセチルメチル基、アセチルエチル基、プロピオニルメチル基、プロピオニルエチル基、テトラヒドロフルフリルオキシメチル基、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メトキシメチル基、2−(1,3−ジオキソラン)エトキシメチル基、2−(1,3−ジオキサン)エトキシメチル基、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルエチル基、プロポキシカルボニルエチル基、ブトキシカルボニルエチル基、ペントキシカルボニルブチル基、1−(ブトキシメチル)エチル基、1−(メトキシメチル)プロピル基、1−(エトキシメチル)プロピル基、1−(ブトキシメチル)プロピル基、1−(2−メトキシ−エトキシ−メチル)プロピル基、1−(2−エトキシ−エトキシ−メチル)プロピル基、1−(2−メトキシ−2−エトキシ−2−エトキシメチル)エチル基、1−(2−エトキシ−2−エトキシ−2−エトキシメチル)エチル基、1−(2−ブトキシ−2−エトキシ−2−エトキシメチル)エチル基、1−(2−メトキシ−2−エトキシ−2−エトキシメチル)プロピル基、1−(2−エトキシ−2−エトキシ−2−エトキシメチル)プロピル基、1−(2−プロポキシ−2−エトキシ−2−エトキシメチル)プロピル基、1−(2−ブトキシ−2−エトキシ−2−エトキシメチル)プロピル基、1−(2−メトキシ−2−エトキシ−2−エトキシメチル)ブチル基、1−(2−エトキシ−2−エトキシ−2−エトキシメチル)ブチル基、1−(2−プロポキシ−2−エトキシ−2−エトキシメチル)ブチル基、
【0010】
1−(2−メトキシ−2−エトキシ−2−エトキシメチル)ペンチル基、1−(2−エトキシ−2−エトキシ−2−エトキシメチル)ペンチル基、1−(2−メトキシ−2−エトキシ−2−エトキシ−2−エトキシメチル)エチル基、1−(2−エトキシ−2−エトキシ−2−エトキシ−2−エトキシメチル)エチル基、1−(2−メトキシ−2−エトキシ−2−エトキシ−2−エトキシメチル)プロピル基、1−(2−エトキシ−2−エトキシ−2−エトキシ−2−エトキシメチル)プロピル基、1−(2−メトキシ−2−エトキシ−2−エトキシ−2−エトキシメチル)ブチル基、1−(2−メトキシ−2−エトキシ−2−エトキシ−2−エトキシエチル)エチル基、1−(2−エトキシ−2−エトキシ−2−エトキシ−2−エトキシエチル)エチル基、1−(2−メトキシ−2−エトキシ−2−エトキシ−2−エトキシエチル)プロピル基、1,1−ジ(メトキシメチル)メチル基、1,1−ジ(エトキシメチル)メチル基、1,1−ジ(プロポキシメチル)メチル基、1,1−ジ(ブトキシメチル)メチル基、1,1−ジ(2−メトキシ−エトキシメチル)メチル基、1,1−ジ(2−エトキシ−エトキシメチル)メチル基、1,1−ジ(2−プロポキシ−エトキシメチル)メチル基、1,1−ジ(2−ブトキシ−エトキシメチル)メチル基が挙げられる。
これらのうちでも、R、Rの少なくとも一方が、下記式(2)であるものが特に好ましい。
【0011】
【化4】

(式(2)中、 R、Rはそれぞれ独立に、水素原子;非置換アルキル基;酸素原子をエーテル結合、カルボニル結合、および/またはエステル結合の形で含むアルキル基;アルキルカルボニル基;またはアルコキシカルボニル基を示す。ただしR、Rのうち少なくとも一方は、酸素原子をエーテル結合、カルボニル結合、および/またはエステル結合の形で含むアルキル基;アルキルカルボニル基;またはアルコキシカルボニル基である。)
【0012】
式(2)において、R、Rが非置換のアルキル基であるものとしては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基が挙げられる。
、Rが酸素原子をエーテル結合、カルボニル結合、および/またはエステル結合の形で含むアルキル基であるものとしては、酸素原子を1〜4個含む炭素数2〜10のアルキル基が好ましい。例としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、エトキシエトキシメチル基、プロポキシエトキシメチル基、ブトキシエトキシメチル基、メトキシエトキシエトキシメチル基、エトキシエトキシエトキシメチル基、プロポキシエトキシエトキシメチル基、ブトキシエトキシエトキシメチル基、メトキシエトキシエトキシエトキシメチル基、エトキシエトキシエトキシエトキシメチル基、プロポキシエトキシエトキシエトキシメチル基、ブトキシエトキシエトキシエトキシメチル基、アセチルメチル基、プロピオニルメチル基、テトラヒドロフルフリルオキシメチル基、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メトキシメチル基、2−(1,3−ジオキソラン)エトキシメチル基、2−(1,3−ジオキサン)エトキシメチル基、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、プロポキシカルボニルメチル基、ブトキシカルボニルメチル基、ペントキシカルボニルメチル基が挙げられる。
【0013】
、 Rがアルキルカルボニル基またはアルコキシカルボニル基であるものとしては、総炭素数2〜10であるものが好ましい。例としては、アセチル基、プロピオニル基、プロピルカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペントキシカルボニル基が挙げられる。
【0014】
本発明の一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物としては、R、Rがそれぞれ独立に、水素原子(ただし R、Rが同時に水素原子であることはない);非置換アルキル基;または酸素原子をエーテル結合、カルボニル結合、および/またはエステル結合の形で含む置換アルキル基であるものが好ましい。
【0015】
またR、Rがそれぞれ独立に、水素原子(ただし R、Rが同時に水素原子であることはない);炭素数1〜12の非置換アルキル基;または酸素原子をエーテル結合、カルボニル結合および/またはエステル結合の形で1〜4個含む炭素数2〜12の置換アルキル基であるものが特に好ましく、さらにその中でもR、Rの少なくとも一方が,酸素原子をエーテル結合、カルボニル結合および/またはエステル結合の形で1〜4個含む炭素数2〜12の置換アルキル基であるものが極性有機溶剤に対する溶解性が高く好ましい。
特にR、Rの少なくとも一方が、下記一般式(2)
【0016】
【化5】

(式(2)中、 R、Rはそれぞれ独立に、水素原子;非置換アルキル基;酸素原子をエーテル結合、カルボニル結合、および/またはエステル結合の形で含むアルキル基;アルキルカルボニル基;またはアルコキシカルボニル基を示す。ただしR、Rのうち少なくとも一方は、酸素原子をエーテル結合、カルボニル結合、および/またはエステル結合の形で含むアルキル基;アルキルカルボニル基;またはアルコキシカルボニル基である。)
で表される置換アルキル基であるテトラアザポルフィリン化合物が特に好ましい。
一般式(1)のテトラアザポルフィリン化合物におけるmは1〜8個の整数であるが、1〜6個が好ましく、吸光度の高さから、1〜4個が特に好ましい。
またnは1〜4の整数であるが、2〜3が好ましく,2が特に好ましい。
本発明のテトラアザポルフィリン化合物は、一般式(1)で表され、 A、 A、 A及びAで表わされる環は、
【化6】

で表わされる芳香環であり、その縮環方向及びそこに結合する置換基の置換位置により多数の異性体が存在する。具体的には、環の基本骨格として下記式(3)〜(7)の5種類の構造があり、さらにピリジン環の縮合方向の違いで、Nの位置が異なる位置異性体が存在する。更に臭素等の置換基の置換位置が異なる異性体がまたそれぞれに存在する。
【0017】
【化7】

本発明のテトラアザポルフィリン化合物は、これら多数の異性体の一部又は、すべてを含むものである。
【0018】
本発明の前記一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物の具体例を表−1に示す。これらの具体例は本発明化合物の範囲を限定するものではない。
【0019】
【表1−(1)】

【0020】
【表1−(2)】

【0021】
【表1−(3)】

【0022】
【表1−(4)】

【0023】
【表1−(5)】

【0024】
【表1−(6)】

【0025】
【表1−(7)】

【0026】
【表1−(8)】

【0027】
【表1−(9)】

【0028】
(テトラアザポルフィリン化合物の製造方法)
本発明の前記一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物の製造方法を以下に説明する。
代表的な製造方法の概略は、次のとおりである。
(1)フタル酸、ブロモ置換フタル酸、ピリジン−2,3−ジカルボン酸およびブロモ置換ピリジン−2,3−ジカルボン酸の群から適宜選択される混合物を反応させてブロモ置換テトラアザポルフィリン化合物の基本骨格を製造する。
(2)次いでこれをクロルスルホニル化する。
(3)得られたブロモ置換テトラアザポルフィリンのクロルスルホニル化物にアミンを反応させてアミド化することにより目的物を得る。
別の合成法として、フタル酸およびピリジン−2,3−ジカルボン酸の混合物を反応させてテトラアザポルフィリン化合物を合成し、クロルスルホニル化し、アミド化した後臭素化するか、若しくは、テトラアザポルフィリン化合物を臭素化した後、クロルスルホニル化し、アミド化することによっても得ることが可能である。
【0029】
次に製造法をより詳しく説明する。
(1)のブロモ置換テトラアザポルフィリン環形成工程
テトラアザポルフィリン環を形成させる方法としては、フタル酸、ブロモ置換フタル酸、ピリジン−2、3ージカルボン酸およびブロモ置換ピリジン−2,3−ジカルボン酸の群から適宜選択される混合物と銅粉、銅酸化物または銅塩とを、アンモニアガス、アンモニウム化合物叉は尿素の存在下で、モリブデン酸アンモニウム塩等を触媒として、無溶媒またはテトラリン、1−クロロナフタリン、ニトロベンゼン、トリクロロベンゼン、DMI等の溶媒中で120〜300℃に加熱して得られる。
【0030】
上記の環形成反応における、フタル酸(A)、ブロモ置換フタル酸(B)、ピリジン−2、3ージカルボン酸(C)およびブロモ置換ピリジン−2、3ージカルボン酸(D)の群から選ばれる混合物の成分比は、モル比で(A)+(B):(C)+(D)が3.5:0.5〜0:4、好ましくは3:1〜0.5:3.5、より好ましくは3:1〜1:3であり、かつ(A)+(C):(B)+(D)が3.5:0.5〜0:4、好ましくは3:1〜0.5:3.5,より好ましくは3:1〜1:3である。またフタル酸、ブロモ置換フタル酸あるいはピリジン−2、3ージカルボン酸、ブロモ置換ピリジン−2、3−ジカルボン酸の代わりに、それらのジシアノ体、酸無水物を用いることもできる。
ブロモ置換フタル酸の具体例としては、3−ブロモフタル酸、4−ブロモフタル酸、3、4、5、6−テトラブロモフタル酸等が挙げられる。ブロモ置換ピリジン−2、3ージカルボン酸の具体例としては、5−ブロモピリジン−2、3ージカルボン酸、6−ブロモピリジン−2、3ージカルボン酸等が挙げられる。
【0031】
(2)クロルスルホニル化工程
上記(1)の工程で得られたブロモ置換テトラアザポルフィリン化合物を5〜20倍重量のクロロスルホン酸中に20℃以下を保つように少量ずつ添加する。同温で1時間攪拌後、155〜160℃で4時間反応させる。80℃まで冷却し、テトラアザポルフィリン化合物の2〜5倍重量の塩化チオニルを70〜80℃に保ちながら、1〜2時間要して滴下する。同温で2〜10時間攪拌後、15〜20℃まで冷却し、同温で12時間攪拌する。この反応液を、使用したクロロスルホン酸量の50〜200倍重量の氷水中に少量ずつ排出後、析出物を濾別、氷水で中性になるまで洗浄、ブロモ置換テトラアザポルフィリン化合物のスルホニルクロリド体を得る。
上記した反応条件は主としてテトラスルホニルクロリドを得る条件であるが、モノ、ジあるいはトリ置換スルホニルクロリドを得たい場合には、クロロスルホン酸中での反応条件をより穏和にしていくことで可能となる。即ち、反応温度を下げるまたは反応時間を短縮することにより達成される。
【0032】
(3)スルホンアミド化工程
上記で得たブロモ置換テトラアザポルフィリンスルホニルクロリドを氷水中に懸濁させ、
下記式(8):
NHR (8)
(式中、R,Rは前記式(1)におけるものと同じ)
で表される有機アミン化合物(ブロモ置換テトラアザポルフィリン化合物の2〜8倍モル比)を15℃以下を保つように滴下する。滴下後、20〜30℃で15〜24時間攪拌し、濾別、水洗、乾燥することにより、目的とする式(1)のブロモ置換テトラアザポルフィリン化合物が得られる。
【0033】
かくして得られた生成物は、前述した複数の異性体の混合物となっている場合が多いが、混合物であっても、本発明の目的を達成することができ、本発明の範囲内である。
この混合物は、必要に応じ、酢酸エチル、アセトン、メタノール等の有機溶剤で再結晶したり、さらにカラムクロマトグラフィーを用いて精製する等の通常の精製法により、精製でき、単品の化合物を得ることもできる。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
[実施例1] テトラアザポルフィリン化合物具体例−28の合成
無水フタル酸29.6g、4−ブロモフタル酸無水物22.2g、ピリジン−2,3−ジカルボン酸16.7g、尿素144g、塩化第一銅9.9g、モリブデン酸アンモニウム1.6gを1ークロロナフタレン400mLに懸濁させ190℃〜220℃で5時間撹拌した。反応混合物をメタノール250mL中にあけ、ろ過し、メタノール、水、アセトンの順で洗浄した後、乾燥させ青色のブロモ置換テトラアザポルフィリン化合物31.3gを得た。
【0036】
このブロモ置換テトラアザポルフィリン化合物13.1gをクロロスルホン酸100gに20℃以下で少量ずつ30分かけて装入した。次に70〜80℃に昇温し、同温度で1時間撹拌後、2時間かけて140〜145℃に昇温し、同温度で4時間反応した後、80℃に冷却した。さらに塩化チオニル30gを70〜80℃に保ちながら1時間かけて滴下した後、70〜80℃にて4時間撹拌した。15〜20℃まで冷却し、同温度で12時間撹拌した。反応液を氷水1000gに少量づつ排出した後、析出物を濾過分離し、氷水で中性になるまで洗浄し、含水ペースト状のブロモ置換テトラアザポルフィリン化合物のスルホニルクロリドを得た。直ちにこれを、氷水400gに注入し、10℃以下で30分間分散撹拌後、2−アミノ−1(2−エトキシエトキシ)ブタン30gを滴下した。次に、20〜30℃まで昇温し、同温度で18時間撹拌後、生成物を濾過分離し、水200gにて分散、濾過の操作を2回行った後、60℃で16時間乾燥し、青色粉末18gを得た。さらに酢酸エチルで再結晶し、青色結晶10gを得た。
【0037】
この青色結晶は、蛍光X線分析の結果、ブロモ置換テトラアザポルフィリン骨格の中心金属である銅とスルホンアミド基の硫黄原子および臭素の強度比により1分子あたりの平均スルホンアミド基は1.9個、臭素原子は1.2個であることが確認された。
この青色結晶0.3gとアクリル系樹脂(デルペット80N:旭化成株式会社製)0.5g及び乳酸エチル9.5gの色素樹脂溶液を調製し、ガラス板にスピンコート法で塗布し、60℃にて1時間乾燥させた後、透過スペクトルの測定を行った。この透過スペクトルを図1に示す。
この青色結晶5gを、酢酸エチル/メタノール混合溶液にてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製し、1.5gの精製青色粉末を得た。この精製青色粉末は、蛍光X線分析の結果、ブロモ置換テトラアザポルフィリン骨格の中心金属である銅とスルホンアミド基の硫黄原子および臭素の強度比により1分子あたりのスルホンアミド基は2個、臭素1個であることが確認され、FD−MS分析の結果:m/z1100.2よりピリジン環が1個導入された具体例−28の化合物を主成分とした化合物であることを確認した。
【0038】
[実施例2] テトラアザポルフィリン化合物具体例―29の合成
無水フタル酸14.8g、4−ブロモフタル酸無水物45.4g、ピリジン−2,3−ジカルボン酸16.7g、尿素144g、塩化第一銅9.9g、モリブデン酸アンモニウム1.6gを1,3−ジメチルー2−イミダゾリジノン400mLに懸濁させ190℃〜220℃で5時間撹拌した。実施例1と同様の後処理を行いブロモ置換テトラアザポルフィリン化合物41.1gを得た。実施例1と同様にクロロスルホン化、アミド化及び後処理を行って青色結晶15.5gを得た。
この青色結晶は、蛍光X線分析の結果、ブロモ置換テトラアザポルフィリン骨格の中心金属である銅とスルホンアミド基の硫黄原子および臭素の強度比により1分子あたりの平均スルホンアミド基は2.1個、臭素原子は2.2個であることが確認された。この青色結晶の透過スペクトルの測定を実施例1と同様に行った。この透過スペクトルを図2に示す。
この青色結晶5gを、酢酸エチル/メタノール混合溶液にてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製し、1.0gの精製青色粉末を得た。この精製青色粉末は、蛍光X線分析の結果、ブロモ置換テトラアザポルフィリン骨格の中心金属である銅とスルホンアミド基の硫黄原子および臭素の強度比により1分子あたりのスルホンアミド基は2個、臭素原子は2個であることが確認され、FD−MS分析の結果:m/z1178.1よりピリジン環が1個導入された具体例―29の化合物を主成分とした化合物であることを確認した。
【0039】
[実施例3] テトラアザポルフィリン化合物具体例―30の合成
4−ブロモフタル酸無水物68.1g、ピリジン−2,3−ジカルボン酸16.7g、尿素144g、塩化第一銅9.9g、モリブデン酸アンモニウム1.6gを1,3−ジメチルー2−イミダゾリジノン400mLに懸濁させ190℃〜220℃で5時間撹拌した。実施例1と同様の後処理を行いブロモ置換テトラアザポルフィリン化合物25gを得た。実施例1と同様にクロロスルホン化、アミド化及び後処理を行って青色結晶9.9gを得た。
この青色結晶は、蛍光X線分析の結果、ブロモ置換テトラアザポルフィリン骨格の中心金属である銅とスルホンアミド基の硫黄原子および臭素の強度比により1分子あたりの平均スルホンアミド基は1.9個、臭素原子は3.1個であることが確認された。この青色結晶の透過スペクトルの測定を実施例1と同様に行った。この透過スペクトルを図3に示す。
この青色結晶5gを、酢酸エチル/メタノール混合溶液にてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製し、3.0gの精製青色粉末を得た。この精製青色粉末は、蛍光X線分析の結果、ブロモ置換テトラアザポルフィリン骨格の中心金属である銅とスルホンアミド基の硫黄原子および臭素の強度比により1分子あたりのスルホンアミド基は2個、臭素原子は3個であることが確認され、FD−MS分析の結果:m/z1256.0よりピリジン環が1個導入された具体例―30の化合物を主成分とした化合物であることを確認した。
【0040】
[実施例4] テトラアザポルフィリン化合物具体例―7の合成
実施例1において、2−アミノ−1(2−エトキシエトキシ)ブタン30gの代わりに、3−ブトキシプロピルアミン25gを用いた以外は実施例1と同様に行って青色結晶13gを得た。
この青色結晶は、蛍光X線分析の結果、ブロモ置換テトラアザポルフィリン骨格の中心金属である銅とスルホンアミド基の硫黄原子および臭素の強度比により1分子あたりの平均スルホンアミド基は1.9個、臭素原子は1.1個であることが確認された。この青色結晶の透過スペクトルの測定を実施例1と同様に行った。
この青色結晶5gを、酢酸エチル/メタノール混合溶液にてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製し、3.0gの精製青色粉末を得た。この精製青色粉末は、蛍光X線分析の結果、ブロモ置換テトラアザポルフィリン骨格の中心金属である銅とスルホンアミド基の硫黄原子および臭素の強度比により1分子あたりのスルホンアミド基は2個、臭素原子は1個であることが確認され、FD−MS分析の結果:m/z1040.1よりピリジン環が1個導入された具体例―7の化合物を主成分とした化合物であることを確認した。
【0041】
[実施例5] テトラアザポルフィリン化合物具体例―16の合成
実施例1において、2−アミノ−1(2−エトキシエトキシ)ブタン30gの代わりに、2−エチルヘキシルアミン40gを用いた以外は実施例1と同様に行って青色結晶11gを得た。
この青色結晶は、蛍光X線分析の結果、ブロモ置換テトラアザポルフィリン骨格の中心金属である銅とスルホンアミド基の硫黄原子および臭素の強度比により1分子あたりの平均スルホンアミド基は2.2個、臭素原子は1.2個であることが確認された。この青色結晶の透過スペクトルの測定を実施例1と同様に行った。
この青色結晶5gを、酢酸エチル/メタノール混合溶液にてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製し、1.0gの精製青色粉末を得た。この精製青色粉末は、蛍光X線分析の結果、ブロモ置換テトラアザポルフィリン骨格の中心金属である銅とスルホンアミド基の硫黄原子および臭素の強度比により1分子あたりのスルホンアミド基は2個、臭素原子は1個であることが確認され、FD−MS分析の結果:m/z1036.2よりピリジン環が1個導入された具体例―16の化合物を主成分とした化合物であることを確認した。
【0042】
[実施例6] テトラアザポルフィリン化合物具体例―65の合成
無水フタル酸14.8g、4−ブロモフタル酸無水物22.7g、ピリジン−2,3−ジカルボン酸33.4g、尿素144g、塩化第一銅9.9g、モリブデン酸アンモニウム1.6gを1ークロロナフタレン400mLに懸濁させ190℃〜220℃で5時間撹拌した。実施例1と同様の後処理を行いブロモ置換テトラアザポルフィリン化合物28gを得た。実施例1と同様にクロロスルホン化、アミド化及び後処理を行って青色結晶6.8gを得た。
この青色結晶は、蛍光X線分析の結果、ブロモ置換テトラアザポルフィリン骨格の中心金属である銅とスルホンアミド基の硫黄原子および臭素の強度比により1分子あたりの平均スルホンアミド基は1.8個、臭素原子は0.9個であることが確認された。この青色結晶の透過スペクトルの測定を実施例1と同様に行った。
この青色結晶5gを、酢酸エチル/メタノール混合溶液にてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製し、1.0gの精製青色粉末を得た。この精製青色粉末は、蛍光X線分析の結果、ブロモ置換テトラアザポルフィリン骨格の中心金属である銅とスルホンアミド基の硫黄原子および臭素の強度比により1分子あたりのスルホンアミド基は2個、臭素原子は1個であることが確認され、FD−MS分析の結果:m/z1179.1よりピリジン環が2個導入された具体例―65の化合物を主成分とした化合物であることを確認した。
【0043】
[実施例7] テトラアザポルフィリン化合物具体例―33の合成
実施例1において、2−アミノ−1(2−エトキシエトキシ)ブタン30gの代わりに、L−バリンメチル塩酸塩20g、トリエチルアミン15gを用いた以外は実施例1と同様に行って、青色結晶6.7gを得た。 この青色結晶は、蛍光X線分析の結果、ブロモ置換テトラアザポルフィリン骨格の中心金属である銅とスルホンアミド基の硫黄原子および臭素の強度比により1分子あたりの平均スルホンアミド基は1.9個、臭素原子は1.2個であることが確認された。この青色結晶の透過スペクトルの測定を実施例1と同様に行った。
この青色結晶5gを、酢酸エチル/メタノール混合溶液にてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製し、0.5gの精製青色粉末を得た。この精製青色粉末は、蛍光X線分析の結果、ブロモ置換テトラアザポルフィリン骨格の中心金属である銅とスルホンアミド基の硫黄原子および臭素の強度比により1分子あたりのスルホンアミド基は2個、臭素原子は1個であることが確認され、FD−MS分析の結果:m/z1040.1よりピリジン環が1個導入された具体例―33の化合物を主成分とした化合物であることを確認した。
【0044】
[実施例8] テトラアザポルフィリン化合物具体例―101の合成
4−ブロモフタル酸無水物22.7g、ピリジン−2,3−ジカルボン酸50.1g、尿素144g、塩化第一銅9.9g、モリブデン酸アンモニウム1.6gを1ークロロナフタレン400mLに懸濁させ190℃〜220℃で5時間撹拌した。実施例1と同様の後処理を行いブロモ置換テトラアザポルフィリン化合物15gを得た。実施例1と同様にクロロスルホン化(反応温度125〜130℃)、アミド化及び後処理を行って青色結晶4.5gを得た。
この青色結晶は、蛍光X線分析の結果、ブロモ置換テトラアザポルフィリン骨格の中心金属である銅とスルホンアミド基の硫黄原子および臭素の強度比により1分子あたりの平均スルホンアミド基は1.2個、臭素原子は1.1個であることが確認された。この青色結晶の透過スペクトルの測定を実施例1と同様に行った。
この青色結晶3.5gを、酢酸エチル/メタノール混合溶液にてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製し、0.8gの精製青色粉末を得た。この精製青色粉末は、蛍光X線分析の結果、ブロモ置換テトラアザポルフィリン骨格の中心金属である銅とスルホンアミド基の硫黄原子および臭素の強度比により1分子あたりのスルホンアミド基は1個、臭素原子は1個であることが確認され、FD−MS分析の結果:m/z879.1よりピリジン環が3個導入された具体例―101の化合物を主成分とした化合物であることを確認した。
【0045】
[比較例1] 銅フタロシアニン(東京化成株式会社製)12gをクロロスルホン酸120gに20℃以下で少量ずつ30分かけて装入した。次に70〜80℃に昇温し、同温度で1時間撹拌後、2時間かけて130〜135℃に昇温し、同温度で4時間反応した後、80℃に冷却した。さらに塩化チオニル20gを70〜80℃に保ちながら1時間かけて滴下した後、70〜80℃にて4時間撹拌した。15〜20℃まで冷却し、同温度で12時間撹拌した。
反応液を氷水1000gに少量づつ排出した後、析出物を濾過分離し、氷水で中性になるまで洗浄し、含水ペースト状のフタロシアニンのスルホニルクロリドを得た。直ちにこれを、氷水400gに注入し、10℃以下で30分間分散撹拌後、3−ブトキシプロピルアミン20gを滴下した。次に、20〜30℃まで昇温し、同温度で18時間撹拌後、生成物を濾過分離し、水200gにて分散、濾過の操作を2回行った後、60℃で15時間乾燥し、青色粉末15gを得た。さらに酢酸エチルで再結晶し、青色結晶6.4gを得た。蛍光X線分析よりフタロシアニン骨格の中心金属である銅とスルホンアミド基の硫黄原子との強度比により1分子あたりの平均スルホンアミド基は3.8個であった。
この青色結晶の透過スペクトルの測定を実施例1と同様に行った。この透過スペクトルを図4に示す。
本願発明のテトラアザポルフィリン化合物の透過スペクトルが、600nm附近に強い吸収を持ち、鮮明な青色であるのに対して、本比較例化合物の透過スペクトルは、680nm付近に吸収を示し、緑味の青色であった。
【0046】
[耐光性試験]
各実施例及び比較例で透過スペクトル測定時作成した各ガラス基板に対して、キセノンランプを5万luxで20時間照射(100万lux・h相当)した後、色度計MCPD−1000(大塚電子(株)製)を用いて照射前後でのパターン像における色度変化、すなわち△Eab値を測定した。得られた色差△Eab値は耐光性の程度を示す指標として、下記基準に基づいて評価した。△Eab値の小さい方が耐光性に優れることを示す。
○:△Eab値が2未満
△:△Eab値が2以上5未満
×:△Eab値が5以上
【表2】

本発明のテトラアザポルフィリン化合物は、非常に耐光性に優れていた。
【0047】
[産業上の利用可能性]
本発明のテトラアザポルフィリン化合物は、鮮明な青色で耐光性に優れ、600nm附近に強い吸収をもち有機溶媒や樹脂への溶解性が高いため、透明性の高いトナーや鮮明な青色インクジェット用インク、高分子材料の着色用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例1で得られた青色結晶の透過スペクトルである。
【図2】実施例2で得られた青色結晶の透過スペクトルである。
【図3】実施例3で得られた青色結晶の透過スペクトルである。
【図4】比較例1で得られた結晶の透過スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物。
【化1】

(式(1)中A、 A、 A及びAで表される環は、それぞれ独立に
【化2】

を表し、A、 A、 A及びAの少なくとも1つは、
【化3】

である。R、Rは独立に、水素原子または置換もしくは非置換のアルキル基を表し、mは1〜8の整数を表し、nは1〜4の整数を表す。ただしRとRが同時に水素原子であることはない。
【請求項2】
、Rがそれぞれ独立に、水素原子(ただし R、Rが同時に水素原子であることはない);非置換アルキル基;または酸素原子をエーテル結合、カルボニル結合、および/またはエステル結合の形で含む置換アルキル基である請求項1のテトラアザポルフィリン化合物。
【請求項3】
、Rがそれぞれ独立に、水素原子(ただし R、Rが同時に水素原子であることはない);炭素数1〜12の非置換アルキル基;または酸素原子をエーテル結合、カルボニル結合および/またはエステル結合の形で1〜4個含む炭素数2〜12の置換アルキル基であり、mが1〜4の整数である請求項1または2のテトラアザポルフィリン化合物。
【請求項4】
、Rの少なくとも一方が、酸素原子をエーテル結合、カルボニル結合および/またはエステル結合の形で1〜4個含む炭素数2〜12の置換アルキル基である請求項1〜3いずれかのテトラアザポルフィリン化合物。
【請求項5】
、Rの少なくとも一方が、下記一般式(2)
【化4】

(式(2)中、 R、Rはそれぞれ独立に、水素原子;非置換アルキル基;酸素原子をエーテル結合、カルボニル結合、および/またはエステル結合の形で含むアルキル基;アルキルカルボニル基;またはアルコキシカルボニル基を示す。ただしR、Rのうち少なくとも一方は、酸素原子をエーテル結合、カルボニル結合、および/またはエステル結合の形で含むアルキル基;アルキルカルボニル基;またはアルコキシカルボニル基である。)
で表される置換アルキル基である請求項4のテトラアザポルフィリン化合物。
【請求項6】
、Rがそれぞれ独立に、水素原子;炭素数1〜8の非置換アルキル基;酸素原子をエーテル結合、カルボニル結合、および/またはエステル結合の形で1〜4個含む炭素数2〜10の置換アルキル基;炭素数2〜10のアルキルカルボニル基;または炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基であり、R、Rのうち少なくとも一方は、酸素原子をエーテル結合、カルボニル結合、および/またはエステル結合の形で含むアルキル基;アルキルカルボニル基;またはアルコキシカルボニル基である請求項5のテトラアザポルフィリン化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−249321(P2006−249321A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69442(P2005−69442)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000179904)山本化成株式会社 (70)
【Fターム(参考)】