説明

テトラゾリウムメソイオン構造を有する高分子の合成法

【目的】
テトラゾリウムメソイオン構造を有する高分子の合成法を提供することを目的とする。
【構成】
テトラゾリウムメソイオンの、高分子化合物中の一級アミノ基を利用した共有結合による高分子化合物への結合方法によることを特徴とするテトラゾリウムメソイオン構造を有する高分子の合成法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテトラゾリウムメソイオン構造を有する高分子の合成法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非特許文献1の低分子のテトラゾリウムメソイオンに関する文献が開示されている。これらのテトラゾリウムメソイオンは、低分子化合物であることから、反応試薬として用いた場合に回収困難であり、溶剤類に対する溶解などの問題点を有していた。
【非特許文献1】S. Araki, K. Yamamoto, T. Inoue, et al., J. Chem. Soc., Perkin Trans. 2, 1999, 985-995.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来の低分子のテトラゾリウムメソイオンは、知られていたがこれを高分子化合物に導入した例はなかった。
【0004】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、テトラゾリウムメソイオン構造を有する高分子の合成法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のテトラゾリウムメソイオン構造を有する高分子の合成法は、これまで可逆な酸化還元反応など特殊な電気化学的性質を有することが明らかになっているテトラゾリウムメソイオンの、高分子化合物中の一級アミノ基を利用した共有結合による高分子化合物への結合方法によることを特徴とする。
本発明のテトラゾリウムメソイオン構造を有する高分子の合成法は、図1に示すように、1,3-二置換-5-ハロテトラゾリウム塩 (I) (ここに、R1, R2 は炭化水素置換基を、X はハロゲン原子を、B- はテトラゾリウムカチオンの対アニオンを表す)と高分子鎖のペンダントまたは末端に存在する一級アミノ基(H2N-R3 のうちのH2N, ここにR3 は高分子主鎖または高分子主鎖と一級アミノ基の結合するペンダント部分を表す)から塩基による脱ハロゲン化水素により、1,3-二置換テトラゾリウム-5-アミノ基を有する高分子化合物(II)を得、さらに図2に示すように、この(II)に塩基を反応させることにより 1,3-二置換テトラゾリウム-5-アミドメソイオンを有する高分子化合物(III)を得ることができるものである。なお、この図1および図2は (I) と用いる塩基のモル比によっては一段階で行うことも可能である。
【発明の効果】
【0006】
本発明で合成される1,3-二置換テトラゾリウム-5-アミドメソイオン構造を有する高分子化合物は高分子電解質であり、リチウム電池などの電解液代替の固体高分子電解質として用いることができる。また、可逆な酸化還元過程を有することから、酸化還元反応における回収容易な高分子試薬として用いることができると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0008】
実施例1のテトラゾリウムメソイオン構造を有する高分子の合成法は、図3に示すように、1,3-ジフェニル-5-クロロテトラゾリウムテトラフルオロホウ酸塩 228 mg (0.66 mmol) とポリ-3-アミノプロピル(メチル)シロキサン(ここにn = 5.1)332 mg(アミノ基のモル数 2.68 mmol)を 1.35 mmol の水酸化ナトリウムを溶解したN,N-ジメチルホルムアミド 11 mL 中で攪拌することにより、一段階で1,3-ジフェニルテトラゾリウムメソイオンを有するポリシロキサン 421 mg を得たというものである。
【実施例2】
【0009】
実施例2のテトラゾリウムメソイオン構造を有する高分子の合成法は、図4に示すように、1,3-ジフェニル-5-クロロテトラゾリウムテトラフルオロホウ酸塩 328 mg (0.10 mmol) とペプチド末端モデルであるL-アラニンプロピルアミド 295 mg (2.0 mmol) をジクロロメタン10 mLに加え、固体が溶けるまで加熱還流して反応させた後、室温で3時間攪拌し、溶媒留去後、残さをジエチルエーテルで洗浄し、再びジクロロメタンに溶解して炭酸水素ナトリウム水溶液を加え反応させることにより1,3-ジフェニルテトラゾリウムメソイオンを有するL-アラニン誘導体を得たというものである。
その他の実施形態として、テトラゾリウムメソイオンを高分子鎖に結合する方法としては、5位に結合した原子に結合する以外に1位または3位の置換基において結合する方法も考えられる。ただし、この方法は1位または3位の置換基がテトラゾリウム環の合成反応の際にも存在していることから、予め高分子鎖に結合しておくことまたは高分子鎖に結合しうる官能基を導入しておく必要があり、合成上の困難を伴う。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明で合成されるテトラゾリウムメソイオン構造を有する高分子は、リチウム電池などの電解液代替の固体高分子電解質等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のテトラゾリウムメソイオン構造を有する高分子の合成法を説明する図である。
【図2】本発明のテトラゾリウムメソイオン構造を有する高分子の合成法を説明する図である。
【図3】実施例1のテトラゾリウムメソイオン構造を有する高分子の合成法を説明する図である。
【図4】実施例2のテトラゾリウムメソイオン構造を有する高分子の合成法を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラゾリウムメソイオンの、高分子化合物中の一級アミノ基を利用した共有結合による高分子化合物への結合方法によることを特徴とするテトラゾリウムメソイオン構造を有する高分子の合成法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−297561(P2007−297561A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128717(P2006−128717)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】