説明

テレスコープ型リフト及び自動車整備用リフト

【課題】 降下止め装置のためのスペースを別途必要とせず、また降下止め装置が受け台の回転も防止できるテレスコープ型リフト及び自動車整備用リフトを提供する。
【解決手段】 外筒2内に下段ラム3を摺動自在に収容すると共に、この下段ラム3内に更に上段ラム4を摺動自在に収容し、下段ラム3内に下向きピストンロッド5aを設けた下向きシリンダ5と、上向きピストンロッド6aを設けた上向きシリンダ6とを並列配置した並列シリンダを収容し、上段ラム3内に上段ラム3の降下止め装置20を設け、下段ラム4側面及び外筒2側面に下段ラム3の降下止め装置30を設けた。下向きピストンロッド5aの伸張により下段ラム3が外筒2内から上方に摺動し、上向きピストンロッド6aの伸張により上段ラム4が下段ラム3内から上方に摺動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレスコープ型リフト及びテレスコープ型リフトを使用した自動車整備用リフトに関する。
【背景技術】
【0002】
ラムを多段に備えたテレスコープ型のリフトを使用した車両整備用リフトが、ピットを浅く出来るため普及している。一方、このような伸縮動作により昇降動するリフトには故障等で自然に降下しないよう安全装置が設けられている。
例えば、特許文献1の自動車整備用リフトは、シリンダと多段式のプランジャを備えたリフトをピット内に収容し、リフトにプランジャと同動可能な係合杆を設け、係合杆の長さをプランジャの最高揚程と同長に形成すると共に、係合杆と係合可能な係合爪を進退可能に設けた安全装置が記載され、係合杆を複数に分割し、その少なくとも最下位置の係合杆を上下方向に回動可能に設け、最下位置の係合杆とシリンダ上部間を、可撓性の連結部材で連結している。
また、特許文献2では、複数の昇降手段により昇降台がリフト本体より順次昇降する複数段式リフトにおいて、昇降台の下方に、端部で互いに係合する内外複数の筒体を連結すると共に、昇降台の急激な下降に際し、複数の筒体の降下を規制する規制手段を具備している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2719500号公報
【特許文献2】特開平10−297445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の構成は、降下止めのための係合杆は多段式のプランジャの外側に取り付けられているため、特にリフトがピット内を移動する構成においてはピット幅を大きくする必要があり、工事費が増大した。また、ピットを塞ぐためのピットカバーも大きくしなければならなかった。更に、リフトが自然降下して降下止めが作用した場合は、リフト中心に対して偏心した係合杆で荷重を支えるためリフト安定感が損なわれ易く、左右一対の係合杆を必要としたし、多段式では関節部で係合部のガタ等により屈曲し易いので、不安定感は顕著に表れる恐れがある。
また、ラム上部に設けた受け台は安全のため回転しないのが望ましいが、回転を防止する構成となっていない。
一方、上記特許文献2の構成は、降下止めとして、2連の爪部及びラックが設けられ、比較的安定して降下止めを行うことができるが、解除確認センサを使用する等構造が複雑であり、信頼性に不安があった。また、受け台に回転力が作用した場合、安全装置である降下止め装置が破損する恐れがあった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、降下止め装置のための専用スペースを別途必要とせず、また簡易な構成で受け台の回転止めを実施できるテレスコープ型リフト及び自動車整備用リフトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明に係るテレスコープ型リフトは、起立配置した外筒内に筒状の下段ラムを摺動自在に収容し、前記下段ラム内に更に筒状の上段ラムを摺動自在に収容し、油圧により下向きに伸張するピストンロッドを備えた下向きシリンダと、油圧により上向きに伸張するピストンロッドを備えた上向きシリンダとを並列に設けた並列シリンダを前記下段ラム内に収容して成り、前記上段ラム内に前記上段ラムの降下止め手段を設ける一方、下段ラム側面及び前記外筒側面に前記下段ラムの降下止め手段を設け、前記下向きのピストンロッドの伸張動作により前記下段ラムが前記外筒内から上方に摺動すると共に、前記上向きピストンロッドの伸張動作により前記上段ラムが前記下段ラム内から上方に摺動し、リフトアップすることを特徴とする。
この構成によれば、上段ラムの降下止め手段は上段ラム内に収容されるし、下段ラム降下止め手段は下段ラムの側面、及び外筒側面に設けられるので、外筒外に設けられる降下止め手段の設置スペースは比較的わずかにでき、省スペースでリフトを設置できる。
また、テレスコープ型とすることで、ラム長に比べて長いリフト長を得ることができる。
更に、ラム内に並列シリンダを配置した構成とすることで高圧テレスコープ式となるが、低圧式油圧シリンダに比べて作動油を少量にできる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、前記上段ラムの降下止め手段は、上段ラム内側面に設けた上ラックと、前記並列シリンダ上部に設置されて前記上ラックに係合する降下止めツメとを備え、前記下段ラムの降下止め手段は、下段ラム側面に設けた下ラックと、前記外筒側部に配置されて前記下ラックに係合する降下止めツメとを備えたことを特徴とする。
この構成によれば、ラックとラックに係合するツメとから成る機械式の降下止め手段であるため、確実に降下止めを実施できる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、前記上ラックは、前記並列シリンダ上部を固定するシリンダ固定板の端部に凹設した上ラックガイドによりガイドされる一方、前記下ラックは、前記外筒に設けられた下段ラム摺動用ヘッドシリンダに凹設した下ラックガイドによりガイドされることを特徴とする。
この構成によれば、上段ラムに設けられたラックを案内する上ラックガイド手段、下段ラムに設けられたラックを案内する下ラックガイド手段を有するので、ラムが回転することがなく、安定した昇降動作を実施できる。そして、双方のラックガイドは、元々必要な部材を使用して形成されるので、新たな部材を必要としないし安価に形成できる。
【0009】
請求項4の発明に係る自動車整備用リフトは、請求項1乃至3の何れかに記載のテレスコープ型リフトを、作業床面に凹設したピット内に複数配置し、全ての前記テレスコープ型リフトを同期させて伸張することで、前記ピット内に配置した受け台をリフトアップ可能としたことを特徴とする。
この構成によれば、省スペースでテレスコープ型リフトを設置できるので、テレスコープ型リフトを移動可能としてもピット全体を大きくする必要がないので、ピットカバーを小さくできる。また、リフト量に比べてラムの長さを小さくできるので、ピットも浅くできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上段ラムの降下止め手段は上段ラム内に収容されるし、下段ラム降下止め手段は外筒側面に設けられるので、外筒外に設置される降下止め手段の設置スペースを僅かにでき、省スペースでテレスコープ型リフトを設置できる。また、テレスコープ型とすることで、ラム長に比べて大きなリフト長を得ることができる。
そして、このテレスコープ型リフトを使用した車両整備用リフトは、ピットカバーを小さくできるし、ピットの深さも浅くできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る自動車整備用リフトの一例を示す一部断面説明図であり、主要部を構成するテレスコープ型リフトの正面視断面説明図である。
【図2】テレスコープ型リフトの右側面視断面説明図である
【図3】テレスコープ型リフトを伸張させた状態の右側面視断面説明図である。
【図4】テレスコープ型リフトを伸張させた状態の背面視断面説明図である。
【図5】テレスコープ型リフトの平面透視説明図である。
【図6】並列シリンダ上部の斜視図であり、上段ラム降下止め装置を示している。
【図7】上段ラム降下止め装置の(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図8】A−A線断面図である。
【図9】下段ラム降下止め装置の斜視図である。
【図10】下段ラム降下止め装置の(a)は平面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1〜図5は本発明に係る自動車整備用リフトの一例を示し、図1は自動車整備用リフトの昇降手段を構成するテレスコープ型リフトの正面視断面説明図、図2はその右側面視断面説明図、図3はテレスコープ型リフトを伸張させた状態の右側面視断面説明図、図4は同様に伸張させた状態の背面視断面説明図、図5はテレスコープ型リフトの平面透視説明図である。
自動車整備用リフトは、このテレスコープ型リフト1を、作業床面Fに凹設された図示しないピットに複数(例えば4機)設置して構成され、設置した全てのテレスコープ型リフト1を同期させて伸縮させることで、ピット上に配置した自動車をリフトアップ/リフトダウン可能としている。
【0013】
テレスコープ型リフト1は、起立配置した断面略四角形の外筒2内に、円筒状の下段ラム3を上方に摺動可能に収容し、この下段ラム3内に更に円筒状の上段ラム4を上方に摺動可能に収容している。下段ラム3には、下向きに伸張するピストンロッド5aを配置した下向きシリンダ5と、上向きに伸張するピストンロッド6aを配置した上向きシリンダ6とを並列に配置して固定した並列シリンダ10を収容し、双方のシリンダ5,6を伸張させることで、下段ラム3及び上段ラム4の双方が上方に摺動してリフトアップ動作する。
【0014】
上向きシリンダ6のピストンロッド6a先端(上端)には、自動車を支持するための受け台7が設置され、この受け台7はリフトダウン時に作業床面Fと同一の面を形成するよう配置される。尚、テレスコープ型リフト1の周囲のピット上はピットカバー8により覆われ、作業床面Fを構成している。
【0015】
並列シリンダ10は、下段ラム3の下端フランジ部に設けられた底板11に固定されている。この底板11には、下向きシリンダ5のピストンロッド(以下、下向きピストンロッドと称する)5aを挿通するピストンロッド挿通孔11aが設けられ、ピストンロッド挿通孔11aから突出した下向きピストンロッド5aの先端が、外筒2の底板13に固定されている。
【0016】
一方、並列シリンダ10の上部を固定するシリンダ固定板15には、シリンダ6のピストンロッド(以下、上向きピストンロッドと称する)6aを挿通するピストンロッド挿通孔15aが形成され、ピストンロッド挿通孔15aから突出した上向きピストンロッド6aの先端は、上段ラム4上のラムキャップ14に固定されている。そして、下向きシリンダ5の後端部に設けられた底板5bと、上向きシリンダの後端部に設けられた底板6bとは、駆動オイルを供給するシリンダ配管17により連通されている。
【0017】
シリンダ固定板15上には、上段ラム4の自然降下を防止する降下止め手段の一方を構成する上段ラム降下止め装置20がボルトにより固定され、対応する上段ラム4の内側面には、降下止め手段の他方を構成する上ラック21が配設されている。上ラック21は、上下に亘り棒状に配置され、鋸状に適宜間隔で係止溝21aが設けられ、上段ラム4内に上段ラム4の降下止め手段が設けられている。上段ラム降下止め装置20は、上段ラム4の上端にボルト止めされたラムキャップ14を外すことで組み付けることができる。
また、シリンダ固定板15側部の所定箇所には、上ラック21の断面形状に合わせてコ字状に切り欠いた上ラックガイド15bが形成され、上ラック21の挿通をガイドするよう構成されている。
【0018】
外筒2の外側面には、下段ラム3の自然降下を防止する降下止め手段の一方を構成する下段ラム降下止め装置30がボルトにより固定され、対応する下段ラム3の外側面には、降下止め手段の他方を構成する下ラック31が配設されている。下ラック31は、上下に亘り棒状に配設され、鋸状に適宜間隔で係止溝31aが設けられ、下段ラム3と外筒2側面に下段ラム3の降下止め手段が設けられている。下ラック31は、ラム3,4の中心から見て同一方向に配置されている。
また、外筒2の内側部には、下段ラム3の摺動をガイドするヘッドシリンダ16が設けられ、このヘッドシリンダ16の所定部位には、下ラック31の断面形状に合わせてコ字状に切り欠いた下ラックガイド16aが形成され、下ラック31の挿通をガイドするよう構成されている。
【0019】
図6〜図8は上段ラム降下止め装置20の詳細を示している。図6は斜視図、図7(a)は平面図、図7(b)は側面図、図8はA−A線断面図である。シリンダ固定板15上に上ツメ支持ブロック23がボルトにより固定され、横方向に進退動作して上ラック21の係止溝21aに係止する上降下止めツメ22がその中に摺動可能に設けられている。
【0020】
上降下止めツメ22は、上ツメ支持ブロック23を貫通するように後方に伸びた係合杆22aを有し、回転可能に支持された上クランクアーム25がこの係合杆22aに嵌合している。上クランクアーム25は、上ツメ支持ブロック23上に設けられた上ツメ押しバネ24により付勢され、後方から係合杆22aを押し、上降下止めツメ22を前方進出方向に付勢している。
また、上ツメ支持ブロック23の上部には、上ツメ押しバネ24に隣接して上エアシリンダ26が設けられ、この上エアシリンダ26の作用により上降下止めツメ22は後退動作する。即ち、上エアシリンダ26の伸張動作により、上クランクアーム25の軸が上ツメ押しバネ24の付勢方向とは逆の方向に回動し、上ツメ押しバネ24に抗して上降下止めツメ22が後退動作する。
【0021】
更に、上ツメ支持ブロック23の側部には、上降下止めツメ22の位置を検知するための上ツメ検知レバー27が軸支されている。上ツメ検知レバー27は、上降下止めツメ22に設けられた係合片22bに係合し、上ツメ検知レバー27の進退動作を受けて回動する。この上ツメ検知レバー27の回動状態が、上ツメ検知レバー27に隣接して設けられている上ツメIN検知バルブ28によって検知される。
【0022】
図9,図10は下段ラム降下止め装置30を示し、図9は斜視図、図10(a)は平面図、図10(b)は側面図を示している。下段ラム降下止め装置30は、外筒2にボルトにより固定された支持台30a上に設置され、上ツメ支持ブロック23がボルトにより固定され、横方向に進退動作して下ラック31の係止溝31aに係止する下降下止めツメ32がその中に摺動可能に設けられている。
【0023】
下降下止めツメ32は、下ツメ支持ブロック33を貫通するように後方に伸びた係合杆32aを有し、回転可能に支持された下クランクアーム35がこの係合杆32aに嵌合している。係合杆32aには、下ツメ支持ブロック33内で下ツメ押しバネ34が外嵌され、下降下止めツメ32は前方進出方向に付勢されている。
尚、下降下止めツメ32が配置された外筒2の所定の部位には、下降下止めツメ32を挿通する挿通孔が設けられ、下段ラム4に設置されている下ラック31に突出した下降下止めツメ32が係止する。
【0024】
下クランクアーム35は、下ツメ支持ブロック33に隣接して支持台30a上に取り付けられている下エアシリンダ36により回動し、下エアシリンダ36の伸張動作で下ツメ押しバネ34の作用に抗して下降下止めツメ32を後退させる。
【0025】
下ツメ支持ブロック33の他方の側面には、下降下止めツメ32の突出動作を検知するための下ツメ検知レバー37が軸支されている。下ツメ検知レバー37は、下降下止めツメ32に設けられた係合片32bに係合し、下ツメ検知レバー37の進退動作を受けて回動する。この下ツメ検知レバー37の回動状態が、下ツメ検知レバー37に隣接して設けられている下ツメIN検知バルブ38によって検知される。
【0026】
そして、上下ツメIN検知バルブ28,38には、空電リレー(図示せず)にエア配管41により接続され、上下降下止めツメ22,32の状態は空電リレーの動作で検出できる。尚、エア配管41は、上下ツメIN検知バルブ28,38の動作を検出するための往き/戻り検知エアチューブ41aと、後述する上下エアシリンダ26,36を駆動する往き/戻りエアチューブ41bとで構成されている。
【0027】
以下、リフト動作を説明する。操作部(図示せず)の上昇ボタンを押すと、油圧ポンプ(図示せず)からオイルが下向きシリンダ5に供給され、その後シリンダ配管17を通って上向きシリンダ底板6bから上向きシリンダ6に供給される。この油圧により下向きピストンロッド5a及び上側ピストンロッド6aが進出動作を開始し、下向きピストンロッド5aが外筒2底部を押圧して下向きシリンダ5aを上昇させ、上向きピストンロッド6aは受け台7を上昇させる。この結果、外筒2から下段ラム3が上方に進出すると共に、上段ラム4が下段ラム3から上方に進出し、受け台7が上昇する。即ち、リフトアップ動作する。
【0028】
このとき、上段ラム降下止め装置20の上降下止めツメ22は、上ツメ押しバネ24により進出方向に付勢された状態にあり、上ラック21に係合しながら上段ラム4は上昇する。同時に、下段ラム降下止め装置30の下降下止めツメ32は、下ツメ押しバネ34にて進出方向に付勢された状態にあり、下ラック31に係合しながら下段ラム3は上昇する。尚、上昇動作中は、上ラックガイド15bが上ラック21を常時ガイドするし、ヘッドシリンダ16の下ラックガイド部16aが下ラック31を常時ガイドするため、自動車の荷重を支持する受け台7は、回転すること無く安定し上昇する。
【0029】
上下ツメ検知レバー27,37は、上下降下止めツメ22,32の動作に連動して支点を中心に回転動作し、リフト上昇中は上下降下止めツメ22,32は進出状態となることで、上下ツメ検知レバー27,37は上下ツメIN検知バルブ28,38を開く方向に傾倒し、その状態を維持する。
よって、この時下ツメIN検知バルブ38は開いているので、流入したエアはラム内の往き/戻り検知エアチューブ41aの往路を通り、上ツメIN検知バルブ28のIN側に流入する。そして、同様に上ツメIN検知バルブに流入したエアは、OUT側から往き/戻り検知エアチューブ41aの戻り路を通り、図示しない油圧ユニット内のツメIN空電リレーに入る。
【0030】
この結果、ツメIN空電リレーがONし、上下降下止めツメ22,32が上下ラック21,31に係合しながら上昇していることが検知され、この状態を表示等させることで、上下降下止めツメ22,32の作動を直接目視出来なくても、確認できる。
尚、ツメIN空電リレーは、上昇ボタン回路に直列につながれており、万一両降下止めツメが係合せずに上昇しようとすると、ツメIN空電リレーがOFFになるため、リフトが上昇することがないよう構成されている。
【0031】
次に、操作部の降下ボタン(図示せず)を押すと、下エアシリンダ36にエアが流入し、下降下止めツメ32が後退する。同時に往き/戻りエアチューブ41bの往路を通り、上エアシリンダ26のIN側にエアが流入し、上降下止めツメ22を後退させる。上降下止めツメ22が完全に後退すると、上エアシリンダ26のOUT側からエアーが戻りエアチューブ41bの戻り路を通って、油圧ユニット内のツメOUT空電リレー(図示せず)に入り、ツメOUT空電リレーがONして上下降下止めツメ22,32が後退したことが検知される。
【0032】
また、上下降下止めツメ22,32が後退すると、その動作に連動して上下ツメ検知レバー27,37が支点軸を中心に回転動作し、上下ツメIN検知バルブ28,38を閉じる。こうして、エアは油圧ユニット内のツメIN空電リレーから抜け、上下降下止めツメ22,32が後退したことを検知でき、双方の空電リレーにより上下降下止めツメ22,32の後退を検知できる。
尚、ツメOUT空電リレーとツメIN空電リレーは、下降ボタン回路に直列につながれており、ツメOUT空電リレーがONして、且つツメIN空電リレーがOFFしたときに下降制御が実施されるよう構成されている。
【0033】
上下降下止めツメ22,32が後退して上下ラック21,31との係合が解除されたら、リフトの降下が開始される。油圧ポンプ(図示せず)の作用により、リフトアップとは逆の経路で、下向きシリンダ5及び上向きシリンダ6からオイルが抜かれて、外筒2内に下段ラム3及び上段ラム4が入り込み、受け台7が降下する。即ち、リフトダウン動作する。このとき、上ラックガイド15bが上ラック21を常時ガイドするし、ヘッドシリンダ16の下ラックガイド部16aが下ラック31を常時ガイドするため、自動車の荷重を支持する受け台7は、回転すること無く安定し下降する。
【0034】
このように、上段ラムの降下止め手段は上段ラム内に収容されるし、下段ラム降下止め手段は下段ラムの側面、及び外筒側面に設けられるので、外筒外に設けられる降下止め手段の設置スペースは比較的わずかにでき、省スペースでリフトを設置できる。
また、テレスコープ型とすることで、ラム長に比べて長いリフト長を得ることができるし、ラム内に並列シリンダを配置した構成とすることで高圧テレスコープ式となるが、低圧式油圧シリンダに比べて作動油を少量にできる。
更に、ラックとラックに係合するツメとから成る機械式の降下止め装置であるため、確実に降下止めを実施できる。
また、上段ラムに設けられたラックを案内する上ラックガイド手段、下段ラムに設けられたラックを案内する下ラックガイド手段を有するので、ラムが回転することがなく、安定した昇降動作を実施できる。そして、双方のラックガイドは、元々必要な部材を使用して形成されるので、新たな部材を必要とせず安価に形成できる。
そして、省スペースでテレスコープ型リフトを設置できるので、テレスコープ型リフトを移動可能としてもピット全体を大きくする必要がなく、ピットカバーを小さくできる。また、リフト量に比べてラムの長さを小さくできるので、ピットも浅くできる。
【0035】
尚、上記実施形態では、下向きシリンダ5と上向きシリンダ6の駆動オイルをシリンダ配管17により縦続に連結しているが、独立した配管としても良い。また、上段ラムの降下止め手段と下段ラムの降下止め手段を背中合わせに配置しているが、異なる位置としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0036】
上記実施形態は、自動車整備用リフトに関して説明したが、テレスコープ型リフト1は他の用途にも適用でき、例えば高所作業車、エレベータ等昇降して利用されるリフトとして好適である。
【符号の説明】
【0037】
1・・テレスコープ型リフト、2・・外筒、3・・下段ラム、4・・上段ラム、5・・下向きシリンダ、5a・・下向きピストンロッド、6・・上向きシリンダ、6a・・上向きピストンロッド、7・・受け台、10・・並列シリンダ、15・・シリンダ固定板、15b・・上ラックガイド、16a・・下ラックガイド、20・・上段ラム降下止め装置、21・・上ラック、22・・上降下止めツメ、30・・下段ラム降下止め装置、31・・下ラック、32・・下降下止めツメ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起立配置した外筒内に筒状の下段ラムを摺動自在に収容し、前記下段ラム内に更に筒状の上段ラムを摺動自在に収容し、油圧により下向きに伸張するピストンロッドを備えた下向きシリンダと、油圧により上向きに伸張するピストンロッドを備えた上向きシリンダとを並列に設けた並列シリンダを前記下段ラム内に収容して成り、
前記上段ラム内に前記上段ラムの降下止め手段を設ける一方、下段ラム側面及び前記外筒側面に前記下段ラムの降下止め手段を設け、
前記下向きのピストンロッドの伸張動作により前記下段ラムが前記外筒内から上方に摺動すると共に、前記上向きピストンロッドの伸張動作により前記上段ラムが前記下段ラム内から上方に摺動し、リフトアップすることを特徴とするテレスコープ型リフト。
【請求項2】
前記上段ラムの降下止め手段は、上段ラム内側面に設けた上ラックと、前記並列シリンダ上部に設置されて前記上ラックに係合する降下止めツメとを備え、
前記下段ラムの降下止め手段は、下段ラム側面に設けた下ラックと、前記外筒側部に配置されて前記下ラックに係合する降下止めツメとを備えたことを特徴とする請求項1記載のテレスコープ型リフト。
【請求項3】
前記上ラックは、前記並列シリンダ上部を固定するシリンダ固定板の端部に凹設した上ラックガイドによりガイドされる一方、前記下ラックは、前記外筒に設けられた下段ラム摺動用ヘッドシリンダに凹設した下ラックガイドによりガイドされることを特徴とする請求項1又は2記載のテレスコープ型リフト。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載のテレスコープ型リフトを、作業床面に凹設したピット内に複数配置し、全ての前記テレスコープ型リフトを同期させて伸張することで、前記ピット内に配置した受け台をリフトアップ可能としたことを特徴とする自動車整備用リフト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−275067(P2010−275067A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129391(P2009−129391)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(390018326)株式会社スギヤス (35)