説明

テンプレート位置矯正用具

【課題】鋼管柱を据え付けるためのアンカーボルト組立て体のアンカーボルト上端の二次元平面上の位置ずれを簡単かつ精度良く矯正出来る手段を提供する。
【解決手段】鋼管柱据付け用のアンカーボルト組立て体におけるアンカーボルトの上端を位置決めしているテンプレート10の位置矯正用具であって、長さ調整用ターンバックル27の一端側ネジ軸体28に連結された鉄筋挟持具30と、ターンバックル27の他端側ネジ軸体31に連結されたテンプレートへの取付け具33とから成り、鉄筋挟持具30は、鉄筋に対して周方向の任意の位置から嵌合可能な本体35と当該本体を鉄筋に固定する締結ボルト36を備え、ターンバックルの一端側ネジ軸体28と鉄筋挟持具30の本体35との間には第一自在関節手段29が介装され、ターンバックルの他端側ネジ軸体31は、取付け具33に第二自在関節手段32を介して連結された構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管柱据付け用のアンカーボルト組立て体におけるテンプレートの位置矯正用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
先行技術文献を示すことは出来ないが、ベース上に立設された複数本のアンカーボルトと、このアンカーボルトの上端部に仮止め支持されたテンプレートとから成る鋼管柱据付け用のアンカーボルト組立て体が知られている。このアンカーボルト組立て体は、地盤上に築造された水平梁の交点部などの上に鋼管柱を据え付けるために使用されるもので、地盤上の所定位置に前記ベースを利用して据え付けられ、上端のテンプレートが所定レベルで水平に位置するように前記ベースに対する各アンカーボルトの高さ調整が行われる。そしてこのアンカーボルト組立て体を含む水平梁築造用コンクリート型枠内にコンクリートを打設養生し、最後に前記テンプレートを取り外した後の各アンカーボルトを利用して鋼管柱の下端のベースプレートを据え付けるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような鋼管柱据付け用のアンカーボルト組立て体は、地盤上の所定位置に前記ベースを利用して据え付けられた後に水平梁用の配筋作業が行われるので、この配筋作業に際して当該アンカーボルト組立て体のアンカーボルト間に水平方向の鉄筋を挿通させるとき、当該鉄筋とアンカーボルト又は当該アンカーボルトを支持する支柱部材とが互いに衝突するなどして、アンカーボルトを水平方向に変位させてしまうことがあった。このようなアンカーボルトの水平方向の変位が生じたままでコンクリートの打設により水平梁が築造されてしまうと、アンカーボルトの上端で支持されているテンプレートの位置が変動し、正規の位置に鋼管柱を据え付けることが出来なくなる。従って、コンクリート打設前にテンプレートの位置ずれを測定し、位置ずれがあれば修正する必要があるが、従来は、専用のテンプレート位置矯正用具がなかったため、周囲の型枠とテンプレートやアンカーボルトとの間に木切れを押し込むなどの原始的方法によりテンプレートの位置矯正を行っていた。従って、テンプレートの位置矯正作業に多大の手間と時間を要するにもかかわらず、正確な位置矯正が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできるテンプレート位置矯正用具を提案するものであって、請求項1に記載の本発明に係るテンプレート位置矯正用具は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、ベース(5)上に立設された複数本のアンカーボルト(9)と、このアンカーボルト(9)の上端部に仮止め支持されたテンプレート(10)とから成る鋼管柱据付け用のアンカーボルト組立て体(1)における前記テンプレート(10)の位置矯正用具であって、長さ調整用ターンバックル(27)と、このターンバックル(27)の一端側ネジ軸体(28)に連結された鉄筋挟持具(30)と、前記ターンバックル(27)の他端側ネジ軸体(31)に連結されたテンプレートへの取付け具(33)とから成り、前記鉄筋挟持具(30)は、鉄筋に対して周方向の任意の位置から嵌合可能な本体(35)と、当該本体(35)を前記鉄筋に固定する締結ボルト(36)とから成り、前記ターンバックル(27)の一端側ネジ軸体(28)は、前記鉄筋挟持具(30)の本体(35)に第一自在関節手段(29)を介して連結され、前記ターンバックル(27)の他端側ネジ軸体(31)は、前記テンプレートへの取付け具(33)に第二自在関節手段(32)を介して連結された構成になっている。
【0005】
上記本発明を実施する場合、具体的には請求項2に記載のように、前記第一自在関節手段(29)は、前記鉄筋挟持具(30)の本体(35)に、当該鉄筋挟持具(30)が挟持固定する鉄筋の長さ方向に対して直角向きの軸心の周りに回転自在に取り付けられた回転軸体(37)から構成し、前記ターンバックル(27)の一端側ネジ軸体(28)を前記回転軸体(37)に直角向きに結合することが出来る。又、請求項3に記載のように、前記第二自在関節手段(32)は、前記ターンバックル(27)の他端側ネジ軸体(31)の遊端に、貫通孔部(42a)が当該他端側ネジ軸体(31)の長さ方向に対して直角向きに貫通するように形成されたリング部(42)と、このリング部(42)を水平向きに貫通するように前記テンプレートへの取付け具(33)に設けられた連結軸(43)から構成することが出来る。
【0006】
この場合、請求項4に記載のように、前記テンプレートへの取付け具(33)は、取付け孔(39)を備えた取付け板部(40)と、この取付け板部(40)の左右両側辺から折曲連設された左右両側板部(41a,41b)から構成し、この左右両側板部(41a,41b)間に前記第二自在関節手段(32)の連結軸(43)を架設することが出来るし、請求項5に記載のように、前記テンプレートへの取付け具(52)は、門形本体(53)と、この門形本体(53)の左右両側板部(53a)に形成されたテンプレートへの嵌合用凹入部(54)と、前記門形本体(53)の天板部(53b)を螺嵌貫通して前記嵌合用凹入部(54)に嵌合したテンプレート(10)を締結する締結ボルト(55)から構成し、前記門形本体(53)の左右両側板部(53a)間に前記第二自在関節手段(32)の連結軸(43)を架設することが出来る。
【発明の効果】
【0007】
本発明のテンプレート位置矯正用具によれば、鋼管柱据付け用のアンカーボルト組立て体が据え付けられると共に水平梁用の鉄筋を含むコンクリート型枠構造体が完成した後に、アンカーボルト組立て体の上端のテンプレートに水平方向の位置ずれが認められたとき、その位置ずれ方向と平面視においてほぼ平行な向きにある水平方向の鉄筋に鉄筋挟持具を挟持固定すると共に、ターンバックルがテンプレートの位置ずれ方向と出来る限り平行になる状態でテンプレートへの取付け具をテンプレートに取り付け、この状態で前記ターンバックルを伸長又は縮小させるように操作してテンプレートを押し引き操作し、以てテンプレートの位置ずれを矯正することが出来る。勿論、テンプレートの位置ずれがXY両方向に関して生じているときは、少なくとも2つの本発明のテンプレート位置矯正用具を上記のように取り付けて、テンプレートのXY両方向の位置ずれを各別に矯正することが出来るし、平面視においてテンプレートが回転した状態(鉛直軸心の周りに捩じられた状態)に位置ずれしているときは、ターンバックルの押し引き動作でその捩じれ方向の位置ずれを解消出来る向きで鉄筋とテンプレートとの間に本発明のテンプレート位置矯正用具を介装して前記位置矯正操作をターンテーブルの伸長又は縮小操作を行なえば良い。
【0008】
以上のように本発明のテンプレート位置矯正用具によれば、鉄筋とテンプレートとにターンバックルの両端を取り付ける作業と当該ターンバックルの伸長又は縮小操作を行うだけで、テンプレートの位置ずれを矯正することが出来、テンプレートの位置ずれ矯正作業を簡単容易且つ精度良く行うことが出来る。
【0009】
尚、ターンバックル両端と鉄筋挟持具及びテンプレートへの取付け具との間の各自在関節手段としては、如何なる構成のものでも良いが、必須要件としては、前記のようにテンプレートの水平方向の位置ずれ方向と平面視においてほぼ平行な向きにある水平方向の鉄筋に鉄筋挟持具を挟持固定すると共に、ターンバックルがテンプレートの位置ずれ方向と出来る限り平行になる状態でテンプレートへの取付け具をテンプレートに取り付けることが出来る自由度を備えたものでなければならない。なぜならば、鉄筋挟持具を挟持固定する鉄筋の向きがテンプレートの位置ずれ方向と直交するか又はこれに近い向きとなる場合、仮にターンバックルがテンプレートの位置ずれ方向と出来る限り平行になる状態にあっても、ターンバックルの押し引き操作によって鉄筋挟持具が挟持固定されている鉄筋が移動し、テンプレートが位置矯正方向に移動しないか又はその移動量が僅かになって実用レベルで位置矯正効果が得られなくなるからである。
【0010】
而して、ターンバックル両端と鉄筋挟持具及びテンプレートへの取付け具との間の各自在関節手段を請求項2や請求項3に記載のように構成すれば、鉄筋挟持具とターンバックルとの間の自由度は多少少ないが、組立てが容易で安価に実施することが出来る。又、請求項3に記載の構成を採用する場合で、テンプレートの表面に取付け具をネジ止めしなければならない場合には、請求項4に記載のテンプレートへの取付け具を採用し、テンプレートの周縁に取付け具に設けた嵌合用凹入部を嵌合させることが出来るような場合には、請求項5に記載のテンプレートへの取付け具を採用することにより、テンプレートへの取付け具とターンバックルとの間の第二自在関節手段とを安価に構成出来ると共に、両者の組立て一体化も簡単に行える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、鋼管柱据付け用のアンカーボルト組立て体の据付け状態を示す側面図である。
【図2】図2は、同上アンカーボルト組立て体の据付け状態を示す平面図である。
【図3】図3は、同上アンカーボルト組立て体に鋼管柱を据え付けた状態を示す要部の側面図である。
【図4】図4は、同上アンカーボルト組立て体に対する本発明のテンプレート位置矯正用具の使用方法を説明する平面図である。
【図5】図5Aは、本発明の一実施例のテンプレート位置矯正用具の側面図、図5Bは、同上テンプレート位置矯正用具の平面図である。
【図6】図6Aは、同上テンプレート位置矯正用具の使用状態を示す平面図、図6Bは、同使用状態を示す側面図、図6Cは、図6BのA矢視図である。
【図7】図7は、テンプレート位置矯正用具の鉄筋挟持具の別実施例を示す要部の一部縦断側面図である。
【図8】図8は、テンプレート位置矯正用具のテンプレートへの取付け具の別実施例を示す要部の一部縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び図2に基づいて、鋼管柱据付け用のアンカーボルト組立て体の構造と使用方法について説明すると、1はアンカーボルト組立て体であって、X方向の水平梁築造箇所2と当該Y方向の水平梁築造箇所2に対して直角に接続されるY方向の水平梁築造箇所3との交点部上で地盤4上に据え付けられる。このアンカーボルト組立て体1は、地盤4上に固定される矩形枠状のベース5と、このベース5上から矩形枠状に並ぶように固着立設されたアングル材などから成る支柱部材6と、各支柱部材6の上端側部に固着された筒状支持部材7に対して昇降自在に挿通されてボルト8により所定高さに固定されるアンカーボルト9と、当該矩形枠状に並ぶ複数本のアンカーボルト9によって支持される矩形枠状のテンプレート10から構成されている。各アンカーボルト9の下端には、アンカープレート11が固定ナット12により取り付けられている。テンプレート10は、各アンカーボルト9に螺嵌された受けナット13により支持されると共に、テンプレート10の上から各アンカーボルト9に螺嵌された固定ナット14により固定されたもので、内周縁から下向きに折曲連設されて矩形枠状に連続する短い筒状内壁部10aを備えている。尚、図示のようにテンプレート10には、必要に応じて支柱部材6に支持されないアンカーボルト9も取り付けることが出来る。
【0013】
上記のように所定位置に据え付けられたアンカーボルト組立て体1には、その周囲を取り囲むように配置された垂直鉄筋15やこれら垂直鉄筋15を包み込むフープ筋16などの必要な配筋が施工される。又、各水平梁築造箇所2,3には、アンカーボルト組立て体1内を水平に通るように水平主鉄筋17,18や、この水平主鉄筋17,18を包み込むフープ筋19,20などの必要な配筋が施工される。
【0014】
アンカーボルト組立て体1の据付けと必要な配筋が完了すると、各水平梁築造箇所2,3にコンクリート打設空間を形成する型枠が、アンカーボルト組立て体1も包含するように組み立てられ、この後、当該コンクリート打設空間にコンクリートが打設されて所要期間養生される。而して、アンカーボルト組立て体1を内蔵し且つ築造されたX方向の水平梁21AとY方向の水平梁21Bとも一体化された鋼管柱支持用柱体部21Cの上端面21aは、テンプレート10よりも所要間隔だけ低くなるように設定されており、テンプレート10を取り外した後、当該鋼管柱支持用柱体部21Cの上端面21aから所要高さを隔てた状態で、図3に示すように鋼管柱22の下端に固着されているベースプレート23の周囲を各アンカーボルト9の上端に嵌合して締結ナット24により固定し、係る状態で鋼管柱支持用柱体部21Cの上端面21aと鋼管柱22のベースプレート23との間の隙間にグラウト層25が形成される。
【0015】
以上のようにして鋼管柱支持用柱体部21Cに対する鋼管柱22の据付けが行われるが、据え付けられた鋼管柱22の二次元水平面上の据付け位置精度は、その据付け直前のアンカーボルト組立て体1における各アンカーボルト9の二次元水平面上の位置精度によって決まることになる。この各アンカーボルト9の二次元水平面上の位置は、これら各アンカーボルト9の上端部で支持されたテンプレート10の二次元水平面上の位置によって決まるので、コンクリート打設直前にアンカーボルト組立て体1のテンプレート10の二次元水平面上の位置を許容誤差内に矯正しておく必要がある。
【0016】
上記テンプレート10の二次元水平面上の位置矯正に使用される位置矯正用具の一実施例を、図5に基づいて説明すると、この位置矯正用具26は、長さ調整用ターンバックル27と、このターンバックル27の一端側ネジ軸体28に第一自在関節手段29を介して連結された鉄筋挟持具30と、前記ターンバックル27の他端側ネジ軸体31に第二自在関節手段32を介して連結されたテンプレートへの取付け具33とから構成されている。前記ターンバックル27は、その中央本体34の正逆回転により、互いに同心状の両ネジ軸体28,31が互いに逆方向に接近離間移動するものである。
【0017】
鉄筋挟持具30は、本体35と締結ボルト36から構成されたもので、本体35には、V字形の鉄筋嵌合部35aと当該鉄筋嵌合部35aの一端につながって前記鉄筋嵌合部35aに対面する片持ち状の腕部35bが設けられ、この腕部35bを締結ボルト36が前記鉄筋嵌合部35aに向かって螺合貫通している。前記第一自在関節手段29は、鉄筋挟持具30の本体35の鉄筋嵌合部35aに嵌合する鉄筋Bの長さ方向に対して直角向きの軸心の周りに回転自在に、前記鉄筋嵌合部35aの腕部35bに近い側の外側に取り付けられた回転軸体37から構成され、この回転軸体37の回転軸心に対して直交する向きに当該回転軸体37に設けられた貫通ネジ孔に、前記ターンバックル27の一端側ネジ軸体28の外端螺軸部28aを螺合して、カシメ38により両者を互いに固着している。
【0018】
又、テンプレートへの取付け具33は、取付け孔39を備えた取付け板部40と、この取付け板部40の左右両側辺から折曲連設された左右両側板部41a,41bから構成され、前記第二自在関節手段32は、ターンバックル27の他端側ネジ軸体31の遊端に、貫通孔部42aが当該他端側ネジ軸体31の長さ方向に対して直角向きに貫通するように形成されたリング部42と、このリング部42を水平向きに貫通するように前記テンプレートへの取付け具33の左右両側板部41a,41b間に架設された連結軸43から構成されている。尚、リング部42の貫通孔部42aの内径は、連結軸43の外径の2倍以上と大きく、そしてテンプレートへの取付け具33の左右両側板部41a,41b間の間隔は、前記リング部42の厚みより十分に大きく設定され、テンプレートへの取付け具33に対するテンプレート27の方向自由度は非常に大きくなっている。
【0019】
次に上記構成の位置矯正用具26の使用方法について説明すると、図4に示すように、据え付けられたアンカーボルト組立て体1におけるテンプレート10の二次元水平面上の位置がX方向の水平梁21Aの長さ方向(X方向)にずれているときは、上記構成の位置矯正用具26をX方向の水平梁21Aの長さ方向(X方向)と出来る限り平行になるように向きを定めた状態で、テンプレート10とX方向の水平梁21Aの長さ方向と平行な水平主鉄筋17との間に介装する。又、テンプレート10の二次元水平面上の位置がY方向の水平梁21Bの長さ方向(Y方向)にずれているときは、上記構成の位置矯正用具26をY方向の水平梁21Bの長さ方向(Y方向)と出来る限り平行になるように向きを定めた状態で、テンプレート10とY方向の水平梁21Bの長さ方向と平行な水平主鉄筋18との間に介装する。尚、位置矯正用具26は、テンプレート10の外側に配置しても良いが、コンクリート打設養生後のコンクリート面から突出している露出部分を切り取った後の始末を考慮すると、図示のように、テンプレート10の内側に配置するのが望ましい。
【0020】
具体的に説明すると、図6に示すように、全長を調整可能範囲内の中間適当長さに前以て調整してある位置矯正用具26を上記のように配置し、テンプレートへの取付け具33をテンプレート10の上面の内側辺近傍位置に配置し、取付け孔39を利用してドリルビス44により取付け具33の取付け板部40をテンプレート10の上面に固定する。そして位置矯正用具26のターンバックル27及び鉄筋挟持具30をテンプレート10の内側で斜め下方に倒伏させ、鉄筋挟持具30の本体35の鉄筋嵌合部35aを取付け対象の水平主鉄筋17,18に対して嵌合させると共に締結ボルト36を締め付けて、当該水平主鉄筋17,18に鉄筋挟持具30を固定する。上記のテンプレート10に対する取付け具33の取付けと水平主鉄筋17,18に対する鉄筋挟持具30の取付けを無理なく行えると同時に、ターンバックル27の長さ方向が、平面視においてテンプレート10の位置ずれを矯正する方向と出来る限り平行となるように、位置矯正用具26の鉄筋挟持具30とテンプレートへの取付け具33の位置と向きを定めるのに、第一自在関節手段29と第二自在関節手段32の存在が役立つ。
【0021】
以上のようにして位置矯正用具26をテンプレート10と水平主鉄筋17,18との間に介装し終わったならば、ターンバックル27の中央本体34を正逆回転させ、テンプレート10が位置矯正用具26のある側とは反対側へ位置ずれしているときはターンバックル27を縮小させてテンプレート10を引き寄せ、逆にテンプレート10が位置矯正用具26のある側に位置ずれしているときはターンバックル27を伸長させてテンプレート10を押し退けるように操作することにより、テンプレート10の水平二次元方向の位置ずれを矯正することが出来る。尚、テンプレート10がその中央の垂直仮想軸心の周りに捩じれるように位置ずれしているときは、ターンバックル27の押し引き操作により当該テンプレート10を位置ずれ方向とは逆方向に前記垂直仮想軸心の周りに回転させることが出来る方向に、位置矯正用具26をテンプレート10と水平主鉄筋17,18との間に介装させれば良いが、この場合、そのターンバックル27の押し引き操作により、当該位置矯正用具26の鉄筋挟持具30が取り付けられている水平主鉄筋17,18が移動して、テンプレート10の位置矯正が実質的に行われなくなるというようなことがないように、位置矯正用具26(ターンバックル27)の方向を考えなくてはならない。
【0022】
以上のようにテンプレート10を介してアンカーボルト9の上端の水平二次元方向の位置ずれを矯正したならば、先に説明した要領でコンクリート打設により鋼管柱支持用柱体部21Cが築造されるが、その後、鋼管柱支持用柱体部21Cの上面21aから突出している位置矯正用具26のターンバックル27の他端側ネジ軸体31を前記上面21aの際で切断し、取付け具33とこれに連結状態のターンバックル27の他端側ネジ軸体31の一部と一体にテンプレート10を取り外せば良い。この場合、鋼管柱支持用柱体部21Cの上面21aに露出しているターンバックル27の他端側ネジ軸体31の切断部は、その後に鋼管柱支持用柱体部21Cの上面21aと鋼管柱22のベースプレート23との間に形成されるグラウト層25内に埋め込むことが出来る。
【0023】
尚、上記実施例の鉄筋挟持具30に代えて、図7に示すような鉄筋挟持具45を利用することも出来る。この鉄筋挟持具45は、内側辺に鉄筋嵌合凹部46a,47aを備えた左右一対の鉄筋挟持部46,47を、薄肉にしたヒンジ部48を介して一体に形成した本体49と、締結用ボルトナット50とから構成されたものである。締結用ボルトナット50のボルト50aは、一方の鉄筋挟持部46に基部が、当該鉄筋挟持部46の長さ方向に揺動自在であると共に自転が阻止される状態に取り付けられ、ナット50bが螺嵌する遊端の螺軸部は、他方の鉄筋挟持部47の遊端から当該鉄筋挟持部47の長さ方向に沿って形成された凹入溝部51に嵌合している。而してこの鉄筋挟持具45では、図示のように左右一対の鉄筋挟持部46,47が開かれた状態で取付け対象の鉄筋に嵌合させた後、ナット50bを締め付けて左右一対の鉄筋挟持部46,47を、ヒンジ部48を支点に閉動させ、左右一対の鉄筋挟持部46,47の鉄筋嵌合凹部46a,47aによって鉄筋を挟持締結することが出来る。尚、この鉄筋挟持具45とターンバックル27の一端側ネジ軸体28とを連結する前記第一自在関節手段29の回転軸体37は、左右一対の鉄筋挟持部46,47の内、基部が突出しないように締結用ボルトナット50のボルト50aが取り付けられている側の鉄筋挟持部46の先端部付近に取り付けられる。
【0024】
又、上記実施例のテンプレートへの取付け具33に代えて、図8に示すようなテンプレートへの取付け具52を利用することも出来る。この取付け具52は、門形本体53と、この門形本体53の左右両側板部53aに形成されたテンプレートへの嵌合用凹入部54と、前記門形本体53の天板部53bを螺嵌貫通して前記嵌合用凹入部54に嵌合したテンプレートを締結する締結ボルト55から成り、前記門形本体53の左右両側板部53aの遊端部間に前記第二自在関節手段32の連結軸43が架設されている。この取付け具52では、前記テンプレート10の内側辺(又は外側辺)に左右一対の前記嵌合用凹入部54を嵌合させることが出来る板厚部がありさえすれば、ドリルビスなどを使用せずに前記テンプレート10の内側辺(又は外側辺)に取付け具52を簡単に取り付けることが出来る。図1及び図2に示したようなテンプレート10の場合、その内側辺の筒状内壁部10aの下端周縁に、取付け具52の左右一対の前記嵌合用凹入部54を下から上向きに嵌合させると共に、締結ボルト55を締め付ければ良い。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明のテンプレート位置矯正用具は、鋼管柱を据え付けるためのアンカーボルト組立て体のアンカーボルト上端の二次元平面上の位置ずれを、当該アンカーボルト組立て体のテンプレートを利用して簡単かつ精度良く矯正出来る手段として活用出来る。
【符号の説明】
【0026】
1 アンカーボルト組立て体
5 ベース
6 支柱部材
7 アンカーボルト
10 テンプレート
15〜20 鉄筋
21A X方向の水平梁
21B Y方向の水平梁
21C 鋼管柱支持用柱体部
22 鋼管柱
23 ベースプレート
24 締結ナット
25 グラウト層
26 位置矯正用具
27 ターンバックル
28 一端側ネジ軸体
29 第一自在関節手段
30,45 鉄筋挟持具
31 他端側ネジ軸体
32 第二自在関節手段
33,52 テンプレートへの取付け具
35a 鉄筋嵌合部
36,55 締結ボルト
37 回転軸体
40 取付け板部
41a,41b 左右両側板部
42 リング部
43 連結軸
44 ドリルビス
46,47 鉄筋挟持部
48 ヒンジ部
50 締結用ボルトナット
53 門形本体
53a 左右両側板部
54 テンプレートへの嵌合用凹入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース上に立設された複数本のアンカーボルトと、このアンカーボルトの上端部に仮止め支持されたテンプレートとから成る鋼管柱据付け用のアンカーボルト組立て体における前記テンプレートの位置矯正用具であって、長さ調整用ターンバックルと、このターンバックルの一端側ネジ軸体に連結された鉄筋挟持具と、前記ターンバックルの他端側ネジ軸体に連結されたテンプレートへの取付け具とから成り、前記鉄筋挟持具は、鉄筋に対して周方向の任意の位置から嵌合可能な本体と、当該本体を前記鉄筋に固定する締結ボルトとから成り、前記ターンバックルの一端側ネジ軸体は、前記鉄筋挟持具の本体に第一自在関節手段を介して連結され、前記ターンバックルの他端側ネジ軸体は、前記テンプレートへの取付け具に第二自在関節手段を介して連結されている、テンプレート位置矯正用具。
【請求項2】
前記第一自在関節手段は、前記鉄筋挟持具の本体に、当該鉄筋挟持具が挟持固定する鉄筋の長さ方向に対して直角向きの軸心の周りに回転自在に取り付けられた回転軸体から構成され、前記ターンバックルの一端側ネジ軸体が前記回転軸体に直角向きに結合されている、請求項1に記載のテンプレート位置矯正用具。
【請求項3】
前記第二自在関節手段は、前記ターンバックルの他端側ネジ軸体の遊端に、貫通孔部が当該他端側ネジ軸体の長さ方向に対して直角向きに貫通するように形成されたリング部と、このリング部を水平向きに貫通するように前記テンプレートへの取付け具に設けられた連結軸から構成されている、請求項1又は2に記載のテンプレート位置矯正用具。
【請求項4】
前記テンプレートへの取付け具は、取付け孔を備えた取付け板部と、この取付け板部の左右両側辺から折曲連設された左右両側板部から成り、この左右両側板部間に前記第二自在関節手段の連結軸が架設されている、請求項3に記載のテンプレート位置矯正用具。
【請求項5】
前記テンプレートへの取付け具は、門形本体と、この門形本体の左右両側板部に形成されたテンプレートへの嵌合用凹入部と、前記門形本体の天板部を螺嵌貫通して前記嵌合用凹入部に嵌合したテンプレートを締結する締結ボルトから成り、前記門形本体の左右両側板部間に前記第二自在関節手段の連結軸が架設されている、請求項3に記載のテンプレート位置矯正用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−87439(P2013−87439A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226603(P2011−226603)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000143558)株式会社国元商会 (64)