説明

テープ切断機構とそれを備えたテープ巻き装置及びテープ巻き方法

【課題】伸長性の高いテープや厚いテープでも確実に切断して、電線等の被結束体にテープを確実に巻回させる。
【解決手段】被結束体33をテープ17と共に挿通させる切欠部8を有する回転ドラム6と、回転ドラムの外周に近接して配置された刃部18aと、刃部に向けて回転ドラムの外周を回動する円弧状の切断帯7を備え、切断帯と刃部でテープを剪断するテープ切断機構21を採用する。切欠部8に連通する切欠開口26を有する環状帯18に刃部18aを形成した。刃部18aを切断帯7に向けて回動させる。回転ドラム6の近くでテープ17を挟んで固定するロック手段34を備え、テープを固定した状態で剪断を行う。切断帯7の外面に沿うテープ17を外面に押圧固定する弾性部材38を刃部18a側に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープを電線等の被結束体に巻回させるために所要長さに切断するテープ切断機構とそれを備えたテープ巻き装置及びテープ巻き方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6(a)は、従来のテープ切断機構とそれを備えたテープ巻き装置の一形態を示すものである(特許文献1参照)。
【0003】
このテープ切断機構65は、長板状の可動側のカッタ59と、カッタ59を固定したアーム64と、アーム64をカッタ59と共に進退させる駆動手段(図示せず)と、カッタ59と対向する位置に配置された固定側のカッタガイド60とで構成されている。
【0004】
駆動手段で後退したカッタ59と固定側のカッタガイド60との間を経て粘着テープ54がテープ繰り出し機構51で回転ドラム57側に供給される。
【0005】
テープ繰り出し機構51は、一対の繰り出しローラ52と、一対の繰り出しローラ52を同方向に回転させる駆動歯車53と、一方の繰り出しローラ52に接して粘着テープ54を案内するガイドローラ55と、両繰り出しローラ52に接して粘着テープ54を摺接させるテープ押さえ板56とで構成されている。
【0006】
テープ繰り出し機構51と回転ドラム57との間に可動側のカッタ59と固定側のカッタガイド60が配置されている。粘着テープ54は合成樹脂材で形成され、ロール状に巻かれて内側のテープの外面(非粘着面)に外側のテープの内面(粘着面)を密着させたものである。
【0007】
テープ巻き装置50は、上記テープ切断機構65と、テープ繰り出し機構51と、テープ繰り出し機構51から粘着テープ54を供給する回転ドラム57と、回転ドラム57を駆動する一対の歯車58とを備えたものである。
【0008】
図6(b)の如く、回転ドラム57は径方向の切欠部61を有し、切欠部61内に電線保持用のブラシ62を対向して有している。
【0009】
切欠部61の開口61aに粘着テープ54の端部が供給され、粘着テープ54の粘着面に接しつつ複数本の電線63がテープ54と共に切欠部61内に挿入され、リミットスイッチがそれを検知してカッタ59を駆動して粘着テープ54を切断し、回転ドラム57が駆動歯車58を介してモータ又はラック・ピニオン(図示せず)で回転され、複数本の電線64の外周にブラシ62の摩擦力で粘着テープ54が巻回される。
【特許文献1】特開平9−183413号公報(図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来のテープ切断機構65にあっては、テープ押さえ板56に沿って真直に移動する粘着テープ54の面(粘着面)にほぼ直交してテープ厚み方向にカッタ59を進入させるものであるために、伸長性の高い粘着テープや厚い粘着テープに対しては切断性が悪いという懸念があった。また、粘着テープ54の切断後に、カッタ59と回転ドラム57との間で粘着テープ54の切断端側がフリーになるために、粘着テープ54の切断端側が装置の他の部位等に付着しやすく、その場合にテープ巻きが綺麗に行われないという懸念があった。
【0011】
これらの懸念は、電線63に代えて、電線63を覆うコルゲートチューブ(ハーネス保護チューブ)や、電線以外の線条体等を被結束体として用いた場合や、粘着テープ54に代えて非粘着性のテープを用いて被結束体を結束等する場合でも同様に生じ得るものである。以下に「テープ」と言う場合は粘着性と非粘着性のものを含むものとする。
【0012】
本発明は、伸長性の高いテープや厚いテープを用いた場合でも、スムーズ且つ確実に切断することができて、電線等の被結束体にテープを綺麗に且つ確実に巻回させることのできるテープ切断機構とそれを備えたテープ巻き装置及びテープ巻き方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るテープ切断機構は、被結束体をテープと共に挿通させる切欠部を有する回転ドラムと、該回転ドラムの外周に近接して配置された刃部と、該刃部に向けて該回転ドラムの外周を回動する円弧状の切断帯とを備え、該切断帯と該刃部とで該テープが剪断されることを特徴とする。
【0014】
上記構成により、切断帯の先端と刃部との間を通ってテープと被結束体とが回転ドラムの切欠部内に挿入され、切断帯が回転ドラムの外周に沿って回動し、切断帯の例えば先端のテープ押し部を押し下げることにより、固定側の刃部によりテープが円弧状の切断帯の接線方向に剪断される。また、テープの切断後と同時に切断帯が回転ドラムの切欠部の開口を覆うから、切断されたテープは切断帯の内側で回転ドラムに沿って配索され、テープの粘着面が外部に付着することがない。また、テープ押し部に刃部(可動刃)を設けてもよい。この場合は固定側の刃部は設けずに押し部としてもよい。
【0015】
請求項2に係るテープ切断機構は、請求項1記載のテープ切断機構において、前記切欠部に連通する切欠開口を有する環状帯に前記刃部が形成されたことを特徴とする。
【0016】
上記構成により、回転ドラムが円弧状の環状帯の内面に沿って回転し、テープは回転ドラムの外面と環状帯の内面に沿って配索され、環状帯の例えば切欠開口端に形成された刃部と、切断帯とで接線方向に剪断される。
【0017】
請求項3に係るテープ切断機構は、請求項1又は2記載のテープ切断機構において、前記刃部が前記切断帯に向けて回動することを特徴とする。
【0018】
上記構成により、切断帯と刃部(刃部を有する環状帯)が相互に近接する方向に逆向きに回動して、テープを高速度で確実に剪断する。
【0019】
請求項4に係るテープ切断機構は、請求項1〜3の何れかに記載のテープ切断機構において、前記回転ドラムの近くで前記テープを挟んで固定するロック手段を備え、該ロック手段で該テープが固定された状態で前記剪断が行われることを特徴とする。
【0020】
上記構成により、回転ドラムへのテープの供給時にロック手段によるテープロックが解除され、テープの切断時にロック手段でテープがロック(固定)される。切断帯と刃部とでテープを剪断する際に、テープの伸びや、弛みによる引き出しを生じ得る範囲が刃部とロック手段との間のみに短く限定される。ロック手段としては、カムと固定ローラでの挟持や、エアシリンダと固定板での挟持等が挙げられる。
【0021】
請求項5に係るテープ切断機構は、請求項4記載のテープ切断機構において、前記ロック手段が前記切断帯の回動と連動してロック及びロック解除されることを特徴とする。
【0022】
上記構成により、切断帯の先端又は刃部でテープ引き出し時にテープが切断される。テープ切断時にロック手段でテープロックされ、切断帯と刃部とでテープが伸びなく確実に切断される。切断帯とロック手段との連動はギヤ機構等でコンパクトに行うことができる。
【0023】
請求項6に係るテープ切断機構は、請求項1〜5の何れかに記載のテープ切断機構において、前記切断帯の外面に沿う前記テープを該外面に押圧固定する弾性部材が前記刃部側に設けられ、該テープの固定状態で前記剪断が行われることを特徴とする。
【0024】
上記構成により、刃部の直近でテープがロックされ、刃部と切断帯によるテープの切断が伸びや弛み変位なく正確な長さで確実に行われる。弾性部材によるテープロックと請求項4記載のロック手段によるテープロックを同時に行わせれば、相乗効果でテープの伸びや弛み変位が一層確実に防止されて、テープ切断性が高まる。また、切断帯が弾性部材で刃部側に押されることで、切断帯と刃部との剪断時の接触が隙間なく行われ、テープ切断性が高まる。
【0025】
請求項7に係るテープ切断機構は、請求項1〜6の何れかに記載のテープ切断機構において、前記切断帯の先端側部分が前記刃部の外側に逃げ、該先端側部分の付け根側に該刃部が押接して前記テープを切断することを特徴とする。
【0026】
上記構成により、切断帯を刃部に向けてテープ切断方向に回動した際に、切断帯の先端側部分が刃部に干渉せずに外側に逃げ、テープが切断帯の先端側部分に沿って略U字状に折り返されて延長され、その時点で刃部が先端側部分の付け根側に押接してテープが剪断される。テープが延長された分だけ次のテープ巻き始め時のテープ端部側の巻回長さが長くなる。
【0027】
請求項8に係るテープ切断機構を備えたテープ巻き装置は、請求項1〜7の何れかに記載のテープ切断機構を備え、前記切断帯と刃部とで切断した前記テープを前記回転ドラムの回転動作で前記被結束体に巻回させることを特徴とする。
【0028】
上記構成により、請求項1〜7の何れかに記載の作用効果で、電線等の被結束体にテープが弛みや寸足らずなく確実に且つ綺麗に巻回される。
【0029】
請求項9に係るテープ巻き方法は、請求項1〜7の何れかに記載のテープ切断機構を用い、前記切断帯と刃部とで前記テープを切断し、切断した該テープを前記回転ドラムの回転動作で前記被結束体に巻回させることを特徴とする。
【0030】
上記構成により、請求項1〜7の何れかに記載の作用効果で、電線等の被結束体にテープが弛みや寸足らずなく確実に且つ綺麗に巻回される。
【発明の効果】
【0031】
請求項1記載の発明によれば、回動する円弧状の切断帯と固定側の刃部との間でテープが切断帯の接線方向に剪断されるから、テープの伸びが極力抑えられ、厚いテープでも切断可能となる。また、切断されたテープが切断帯の内側に位置するから、テープの粘着面が外部に付着することがなく、電線等の被結束体にテープを綺麗に確実に巻回することができる。
【0032】
請求項2記載の発明によれば、円弧状の切断帯と円弧状の環状帯との接線方向にテープを剪断することで、伸びやすいテープや厚いテープでも確実に切断することができる。
【0033】
請求項3記載の発明によれば、対向方向に回動する切断帯と刃部又は刃部を有する環状帯とでテープを高速で切断することで、伸びやすいテープや厚いテープや粘着性の高いテープでもスムーズ且つ確実に切断することができる。
【0034】
請求項4記載の発明によれば、回転ドラムの近くでテープを固定することで、テープ切断時のテープの伸びや弛み変位が極力小さく抑えられるから、伸びやすいテープや厚いテープでも切断を確実に行うことができる。
【0035】
請求項5記載の発明によれば、切断帯を切断方向へ回動してテープ切断する際に、切断帯と連動してロック手段でテープをロックさせることで、テープロックが必要時にタイミング良く確実に行われ、テープ切断時のテープの伸びや弛み変位が確実に抑えられる。
【0036】
請求項6記載の発明によれば、刃部の直近でテープを固定することで、テープ切断時のテープの伸びや弛み変位が確実に防止され、伸びやすいテープや厚いテープでも切断を確実に行うことができる。また、弾性部材が切断帯を刃部側に押し付けることで、切断が一層確実に行われる。
【0037】
請求項7記載の発明によれば、切断帯の先端側部分に沿ってテープを延長して、テープの垂れ下がり部の長さを長くすることができるため、電線等の被結束体へのテープ端部側の巻き始め時にテープ同士の貼り付き性が良くなり、テープ巻きがしっかりと確実に行われる。
【0038】
請求項8記載の発明によれば、請求項1〜7の何れかに記載された効果で、電線等の被結束体にテープを弛みや寸足らずなく確実に且つ綺麗に巻回することができ、ワイヤハーネス等の商品価値が高まる。
【0039】
請求項9記載の発明によれば、請求項1〜7の何れかに記載された効果で、電線等の被結束体にテープを弛みや寸足らずなく確実に且つ綺麗に巻回することができ、ワイヤハーネス等の商品価値が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
図1(a)(b)は、本発明に係るテープ切断機構を備えたテープ巻き装置及びテープ巻き方法の一実施形態、図2〜図4は、同じくテープ切断機構の一実施形態をそれぞれ示すものである。
【0041】
図1(a)(b)の如く、このテープ巻き装置1は、ケース2の前側にテープ切断機構21を含むテープ巻き部3を備え、ケース2の後側にテープ繰り出し機構5を備え、ケース2の中間部に、これらテープ切断機構21を含むテープ巻き部3やテープ繰り出し機構5を作動させるための駆動部4を備えている。テープ巻き部3をテープ切断機構と呼称してもよい。
【0042】
テープ巻き部3は、径方向の切欠部8を有する金属製の回転ドラム6と、回転ドラム6の切欠部8の片側又は両側に配置された電線チャック(図示せず)と、テープ切断機構21とを備えている。テープ繰り出し機構5や駆動部4については後述する。
【0043】
図2にも示す如く、テープ切断機構21は、回転ドラム6の外周面に沿って配置された円弧状(円形に近い)の金属製の環状帯18と、環状帯18の切欠部26の下端に形成されたエッジ状の固定刃(刃部)18aと、環状帯18の外周面に沿って回動自在に配置された略半円形(円弧状)の金属製の切断帯7と、切断帯7の上部先端に形成されたテープ押し部7aとを備えている。
【0044】
図2の如く、切断帯7は外周面に円弧状ラック(ギヤ)25を一体に有し、円弧状ラック25に歯車14が歯合し、歯車14はモータ等の駆動手段で正逆方向に回動され、切断帯7を環状帯18の外面に沿って進退させる。切断帯7は幅方向両端部をケース2側の一対の対向する円弧状のガイド溝(図示せず)にスライド自在に係合させることで進退自在に支持されている。
【0045】
本例の環状帯18はケース側に固定され、例えば環状帯18の内周面で回転ドラム6の外周面両側の鍔状大径部(図示せず)を摺動(回転)自在に支持し、回転ドラム6の外周面と環状帯18の内周面との間の隙間41に粘着テープ(テープ)17を導入可能となっている。切断帯7の内周面は環状帯18の外周面にほぼ摺動自在に接していることが好ましい。
【0046】
環状帯18の固定刃18aは環状帯本体18bとは別体に形成して環状帯本体18bに固着してもよい。これは切断帯7の押し部7a又は可動刃(図示せず)についても同様である。回転ドラム6の切欠部8の開口8aと環状帯18の切欠部26の長さは同程度である。切欠部8は回転ドラム6の中心よりも深く形成されている。
【0047】
図2の切断帯の後退位置で切断帯7の先端のテープ押し部7aは環状帯18の切欠部26の上端18c側に位置する。切断帯7の外面に近接して切欠部26の上端18cの前方にテープガイドローラ32が配置され、ガイドローラ32の両端はケース側に固定されている。
【0048】
切断帯7の上側にテープガイド板40が水平に配置され、ガイド板40の先端側の湾曲部40aがガイドローラ32に近接している。ガイド板40の後方に隣接してテープロック手段34が配置されている。
【0049】
テープロック手段34は、下側のカム35と、カム35に対向する上側の固定部36とで構成されている。固定部36は楕円のローラであることが好ましいが、断面が角状であってもよく、粘着テープ17の上面(粘着面)との接触面積は小さいことが好ましい。粘着テープ17は固定部36の下面からガイド板40の上面に沿って誘導される。
【0050】
カム35は歯車(図示せず)に固定され、その歯車が切断帯7の円弧状ラック25側の歯車14に歯合している。切断帯7の回動に伴ってカム35が図2で時計回りに回動して粘着テープ17を固定部36との間で挟んで固定する(ロックさせる)。テープロック手段34については図5の例を参照。
【0051】
粘着テープ17の先端部17aは図2に点線で示す如く回転ドラム6の切欠部8の前方に垂れ下げて供給される。垂れ下げられたテープ先端部17aと環状帯18の下側の固定刃18aとの間に、断面三角形状のブロックが配置され、ブロック37の左右両端はケース2側に固定され、固定刃18aのやや下側に対向してブロック37の内側の傾斜面37aに、略三角形状に屈曲された自由端側の弾性部38aを有する板ばね(弾性部材)38が固定されている。
【0052】
ブロック37と環状帯18との間には、切断帯7の先端部7bを進入させる隙間39が設けられ、板ばね38の弾性部38aは隙間39内に突出している。図3〜図4に示す如く、切断帯7の先端部7bが隙間39内に進入した際に、板ばね38の弾性部38aが切断帯7の外面に沿う粘着テープ17の外面(粘着面)に押接し、粘着テープ17を切断帯7の外面との間で挟んで固定する(ロックさせる)。板ばね38はブロック37と共に第二のテープロック手段43として作用する。断面三角形状の弾性部38aの頂点が線接触で小さな接触面積で粘着テープ17の粘着面に接触する。
【0053】
以下に図2〜図4を用いてテープ切断機構21の作用を説明する。
【0054】
図2の如く、切断帯7が後退して、粘着テープ17の先端側部分17aが点線の如く垂れ下げられた状態から、上側のガイドローラ32を支点にして、複数本の電線33と共に回転ドラム6の切欠部8内に挿入される。それと同時に、電線33の外周面に粘着テープ17の先端側部分17aの内面(粘着面)が弱く接着される。テープロック手段34はロック解除されている。電線33はチャック(図示せず)で把持されている。
【0055】
図3の如く、回転ドラム6が駆動部4(図1)で半時計回りに約1/4回転駆動され、粘着テープ17がガイド板40に沿って引き出されつつ、電線33の周囲にほぼ一巻きされる。回転ドラム6の切欠部8の開口8aは下側に移動する。巻き付ける電線33の太さによって引き出すテープ長さが異なるので、回転ドラム6の回転量は、予めプログラムされた値が計算されている。
【0056】
次いで、切断帯7が歯車機構14,25で前方に回動し、環状帯18の切欠開口26を覆いつつ、環状帯18の下側の固定刃18aの外側を通って、図4の如く、ブロック37と環状帯18の開口下端側との間の隙間39に進入し、切断帯7の先端のテープ押し部7aと環状帯18の固定刃18aとで粘着テープ17を切断(剪断)する。本例では、環状帯18に固定刃18aを形成したが、テープ押し部7aを刃部として、テープ17を切断してもよい。
【0057】
粘着テープ17の切断に際して、図3の時点でカム35が固定部36に向けて時計回りに回動し、図4においてカム35が起立して固定部36とで粘着テープ17をロックさせる。それとほぼ同時に、切断帯7の先端部7bが外面側の粘着テープ17を板ばね38の弾性部38aに押接させてロックさせる。
【0058】
このように、二箇所で粘着テープ17がロックされることで、粘着テープ17が伸びることなく確実に且つ綺麗に固定刃18aで裂かれるように切断される。特に、テープ押し部7aや刃部18aの近傍で粘着テープ17がロックされることで、刃部18aとロック部(板ばね)38との間の距離が極めて短いから、その間での粘着テープ17の伸びは無視できる程に極めて僅かであり、粘着テープ17の切断がスムーズ且つ確実に行われる。
【0059】
粘着テープ17が伸びることなく切断されるから、テープ巻回のための粘着テープ長さが常に一定に正確に規定され、粘着テープ17による電線33の巻回が常に一定の品質で正確に行われる。また、刃部7a,18aの近傍での近傍で粘着テープ17がロックされることで、厚い粘着テープであっても、滑りなく確実に切断される。
【0060】
また、固定刃18aとロック手段34との間で粘着テープ17が伸びないで維持されるから、回転ドラム6による次のテープ巻き時にその伸びないで維持されたテープ17が使われて、正確な巻回長さが確保される。
【0061】
板ばね38は切断帯7の自由端部7bを回転ドラム6の中心方向に押圧して、自由端部7bの位置を正確に規制する作用も行う。切断帯7は金属製であるが、薄板状に形成した場合に自由端部7bが外向きに撓み易く、その撓みを抑えて正確な軌跡で自由端部7bを固定刃18aに近接して進入させるのに板ばね38は有効である。
【0062】
図4のテープ切断状態から回転ドラム6がさらに反時計回りに回転して、切欠部8から固定刃18aまでの粘着テープ17’が電線33の外周に巻き付けられて、電線33の結束が完了する。巻付完了時に切断帯7は歯車14の逆回転で図2の原位置に後退し、回転ドラム6の切欠部8の開口8aも図2の水平位置に復帰する。電線束33を固定したチャック(図示せず)が開き、テープ巻きされた電線束(ワイヤハーネス)33が作業者によって取り出される。
【0063】
環状帯18の切欠開口26を塞ぐ切断帯7は、図4におけるテープ巻きが完了した時点で上昇(後退)させてもよく、図4においてテープ17を巻く前に上昇させてもよい。どちらかと言えば前者の方が、次の待機テープ17の巻き込み防止や安全性等の上で好ましい。
【0064】
以下に図1を用いて、テープ巻き装置1の駆動部4とテープ繰り出し機構5について説明する。
【0065】
駆動部4は、回転ドラム6を駆動する手段と、切断帯7を駆動する手段と、粘着テープ繰り出し機構5を駆動する手段とを備えている。以下に説明する駆動部4の構造はあくまでも一例であり、駆動部4の構造は必要に応じて適宜設定される。
【0066】
回転ドラム6に一体に歯車9が設けられ、歯車9の上下に駆動用の一対の歯車10,11が歯合し、一対の歯車10,11はベルト12等を介してモータ13で同方向に回動され、何れか一方の歯車(10又は11)が回転ドラム6の切欠部8の位置に関係なく常時回転ドラム6を図1で反時計回りに駆動する。また、切断帯7のギヤ25に歯合した歯車14はモータ15で例えば90゜程度の角度で駆動される。各モータ13,15はケース2に固定されている。
【0067】
粘着テープ繰り出し機構5は、粘着テープリール16を回動自在に保持する軸部27と、軸部27を設けた円形の回転板19と、回転板19の外周側に突設されたローラ柱状の一方向ベアリング20及び複数の小径のピン状のガイドローラ(図示せず)と、一方向ベアリング20の軸部22に設けられた小歯車23と、小歯車23に歯合する大径のリング状の内歯車(固定歯車)24とを備えている。
【0068】
一方向ベアリング20は反時計回りに自転し、内歯車24に沿って時計回りに公転する。粘着テープリール16とは紙筒26の外側に粘着テープ17を多数層に螺旋状に巻いたものを言う。
【0069】
内歯車24の裏側において軸部27の中心部に歯車(プーリ)28が固定され、歯車28に歯付きベルト29が歯合し、ベルト29は減速ベルト30を介してモータ31で駆動される。
【0070】
回転板19が時計回り(公転方向)に回転し、小歯車23が内歯車24に沿って回転し、一方向ベアリング20が小歯車23と一体に回転しつつ回転板19と共に公転して、粘着テープ17をテープリール16から繰り出して(解いて)、前方のテープロック手段34を経て回転ドラム6側へ供給する。
【0071】
図5(a)〜(c)は、本発明に係るテープ切断機構の他の実施形態を示すものである。
【0072】
このテープ切断機構21’は、テープ切断帯7’の形状を変えることで、粘着テープ17の垂れ下がり部の長さを増して、電線13への巻き始め時(一巻き目)のテープ巻き長さをアップさせ、中心部側の貼り付け性を高めたものである。切断帯7’以外の構成は基本的に上記図2の実施形態と同様であるので、同様の構成部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0073】
図5(a)の如く、この切断帯7’は、先端側部分7b’を外径方向に少し突出させて大径に形成し、先端側部分7b’と帯主体部(符号7’で代用)との間の屈曲部7c’の内面を押し部7a’とし、図5(b)の如く、先端側部分7b’を環状帯18の前端下側の固定刃18aに接触させずに、図5(c)の如く、先端側部分7b’を粘着テープ17と共に環状帯18の外側に逃がして、粘着テープ17の延長部17a’を形成し、延長部17a’に続くテープ部分17’を帯主体部の先端の(先端部分7b’の基端の)押し部7a’と、環状帯18の固定刃18aとで切断するものである。
【0074】
切断帯7’の先端側部分7b’は帯主体部とほぼ同心円に形成されている。本例の押し部7a’はエッジ状に尖っておらず、どちらかと言えば湾曲状の面で構成されており、固定刃18aがエッジ状に尖って形成されている。切断帯7’の湾曲状の内面7a’で粘着テープ17が固定刃18aに押し付けられることで粘着テープ17が切断される。なお、切断帯7’の先端側部分7b’を帯主体部から直角ないし鋭角的に屈曲させて、押し部7a’を可動刃としてをエッジ状に鋭く形成することも可能である。
【0075】
上記構成の切断帯7’によって、図5(a)において粘着テープ17の点線で示す延長部分17a’が得られる。延長部分17a’は回転ドラム6の切欠部8の開口8aよりも下方に垂れ下がって位置する。
【0076】
図5(b)の如く、回転ドラム6を半回転して電線13を粘着テープ17でほぼ一巻きした状態で、歯車14でギヤ25を駆動して切断帯7’を前方に回動させる。切断帯7’の先端7b”で粘着テープ17が下方に押されて固定刃18aを通過して、図5(c)の如く、環状帯18の外周面に沿って延長され、粘着テープ17が切断帯7’の先端側部分7b’を略U字状に折り返して配索された状態で、固定刃18aが粘着テープ17を押し部7a’に押し当てて切断する。
【0077】
歯車14は大径の歯車42に歯合し、歯車42にカム35が固定され、歯車42と一体にカム35が回動して、カム35の長径部と固定側のローラ状の固定部36との間で粘着テープ17を挟んで、粘着テープ17をロックさせる。
【0078】
図5の実施形態に図2の実施形態のブロック37と板ばね38を採用することも有効である。切断帯7の先端側部分7b’が粘着テープ17と共に板ばね38で押圧されて、粘着テープ17のロックと切断帯7の先端側部分7b’の位置決めとが確実に行われる。
【0079】
なお、上記各実施形態においては、固定刃18aを環状帯18に設けたが、環状帯18とは別に(例えば環状帯18の外面に近接して)板状や円弧状等の固定刃(刃部)を設けることも可能である。
【0080】
また、上記各実施形態においては、固定刃18aを有する環状帯18を固定式としたが、切断帯7のように(切断帯7とは逆方向に)回動可能として、切断帯7と環状帯18とを対向方向に回動させて押し部7aと刃部18a又は両可動刃7a,18aで粘着テープ17を切断することも可能である。この場合、環状帯18は切断帯7と同様にギヤ14,25等の駆動機構で駆動される。この構造においても、図2の第一のテープロック手段34や、第二のテープロック手段である板ばね38や、図5の切断帯7’の先端側部分7b’の刃部7a’の構造を適用可能である。
【0081】
ギヤ14,25に代えてベルト駆動(図示せず)で切断帯7や環状帯18を駆動することも可能である。この場合、例えば、ベルトの一端は切断帯7等の上端側に固定され、ベルトの他端は切断帯7等の下端側に固定され、ベルトはクロスしてガイドプーリに掛けられ、ガイドプーリからモータのプーリに掛けられる。
【0082】
上記各実施形態において、粘着テープ17に代えて非粘着性のテープを用いることも無論可能である。この場合、予め被結束体側に接着材を塗布したり、テープの巻き始めと巻き終りに接着材を塗布しておくことができる。
【0083】
また、上記実施形態の板ばね38に代えてコイルばね等を用い、コイルばね等の先端に、粘着テープ17と線接触等で小さな面積で接触するガイド板等(図示せず)を設けておくことも可能である。
【0084】
また、板ばね38を廃除して、上側(第一)のテープロック手段34のみを用いた場合でも、板ばね38を用いた場合には及ばないが、粘着テープ17を一箇所でロックさせることで、粘着テープ17の伸びを抑え、それにより厚い粘着テープでも切断性を高めることができる。
【0085】
また、上下のテープロック手段34,43を廃除した場合でも、これらロック手段34,43を用いる場合には及ばないが、円弧状の切断帯7と円弧状の環状帯18とで粘着テープ17を接線方向に剪断することで、粘着テープ17の伸びを極力抑えて、比較的厚い粘着テープでも切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係るテープ切断機構を備えたテープ巻き装置及びテープ巻き方法の一実施形態を示す、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図2】テープ切断機構の一実施形態を示すテープ切断前の正面図である。
【図3】同じくテープ切断機構を示すテープ切断直前の正面図である。
【図4】同じくテープ切断機構を示すテープ切断時の正面図である。
【図5】(a)〜(c)はテープ切断機構の他の形態をテープ切断順に示す正面図である。
【図6】従来のテープ切断機構を備えたテープ巻き装置の一実施形態を示す、(a)は正面図、(b)は回転ドラムの正面図である。
【符号の説明】
【0087】
1 テープ巻き装置
6 回転ドラム
7,7’ 切断帯
7b’ 先端側部分
8 切欠部
17 粘着テープ(テープ)
18 環状帯
18a 刃部
21 テープ切断機構
26 切欠開口
33 電線(被結束体)
34 ロック手段
38 板ばね(弾性部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被結束体をテープと共に挿通させる切欠部を有する回転ドラムと、該回転ドラムの外周に近接して配置された刃部と、該刃部に向けて該回転ドラムの外周を回動する円弧状の切断帯とを備え、該切断帯と該刃部とで該テープが剪断されることを特徴とするテープ切断機構。
【請求項2】
前記切欠部に連通する切欠開口を有する環状帯に前記刃部が形成されたことを特徴とする請求項1記載のテープ切断機構。
【請求項3】
前記刃部が前記切断帯に向けて回動することを特徴とする請求項1又は2記載のテープ切断機構。
【請求項4】
前記回転ドラムの近くで前記テープを挟んで固定するロック手段を備え、該ロック手段で該テープが固定された状態で前記剪断が行われることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のテープ切断機構。
【請求項5】
前記ロック手段が前記切断帯の回動と連動してロック及びロック解除されることを特徴とする請求項4記載のテープ切断機構。
【請求項6】
前記切断帯の外面に沿う前記テープを該外面に押圧固定する弾性部材が前記刃部側に設けられ、該テープの固定状態で前記剪断が行われることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のテープ切断機構。
【請求項7】
前記切断帯の先端側部分が前記刃部の外側に逃げ、該先端側部分の付け根側に該刃部が押接して前記テープを切断することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のテープ切断機構。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載のテープ切断機構を備え、前記切断帯と刃部とで切断した前記テープを前記回転ドラムの回転動作で前記被結束体に巻回させることを特徴とするテープ切断機構を備えたテープ巻き装置。
【請求項9】
請求項1〜7の何れかに記載のテープ切断機構を用い、前記切断帯と刃部とで前記テープを切断し、切断した該テープを前記回転ドラムの回転動作で前記被結束体に巻回させることを特徴とするテープ巻き方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−168929(P2008−168929A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4145(P2007−4145)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(592129774)株式会社FDKエンジニアリング (11)
【Fターム(参考)】