説明

テープ巻体、その製造方法、およびテープ巻取り方法

【課題】離型紙付きのフィルムテープをトラバース巻きするときに巻き崩れやフィルムと離型紙の間の浮きが生じない
【解決手段】原反から巻き出され、スリッタによって4mm幅もしくは5mm幅に切りそろえられた離型紙付きのフィルムテープ10が、ガイドローラ111,112,113,114を介して巻取り部130で芯材に巻き取られる。この巻取り時に、線圧を1000〔g〕にし、巻取張力が36.5〜486〔g〕であり、かつ送り幅が0.1〜4.0〔mm〕で巻き取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ巻体、その製造方法、およびテープ巻取り方法に関し、特に離型紙が付いたテープフィルムをロールの芯にトラバース巻きで巻き取ったテープ巻体、その製造方法、およびテープ巻取り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テープなどの長尺物の保管のしやすさ、取り扱いやすさを向上させるために長尺物を芯材に巻き付けて巻体にすることは広く知られている。
【0003】
この巻体を製造するとき、レコード巻きと呼ばれる巻き方により長尺物を芯材に巻き付けることが多い。なお、レコード巻きとは、芯材に対する巻き付け位置を軸方向にずらすことなく完全に重ねて巻き付けていく巻き方をいう。
【0004】
しかし、このレコード巻きによると一定の長さ以上の長尺物を巻き取るには限界が生じる。つまり、芯材の径方向への厚みが増すにつれて、巻取り中や、巻体の搬送中などに巻かれた長尺物にずれが生じやすくなる。
【0005】
そこで、トラバース巻きにすることによって巻きずれを防止しつつ、より長尺のものを巻けるようにした巻体が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。なお、トラバース巻きとは、芯材に対する巻き付け位置を軸方向にずらしながら長尺物を巻き付けていく巻き方をいう。
【特許文献1】特開平8−301533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
離型紙には、フィルムテープに比べて剛性が高いという特性があるため、離型紙付きのフィルムテープを巻き付ける際には、その剛性の違いから引っ張り力を強くすればするほど離型紙とフィルムテープの間に浮きが生じるリスクが高くなるという問題がある。
離型紙とフィルムテープの間に浮きが生じると、フィルムテープの信頼性が低下することに問題がある。
【0007】
また、離型紙付きのフィルムテープは、フィルムテープ単体よりも離型紙が付いている分だけ厚みがあるため、重なり部分の段差が厚みによって大きい上、離型紙の剛性が高いため、重なり部分に滑りが生じてしまう。したがって、巻取り時にフィルムテープを重ねながら巻き取ろうとすると、巻きずれが生じて巻くことができないという問題があった。
【0008】
一方で、芯材の軸方向に大きくずらすことによって、芯材に巻かれた隣接するフィルム間同士の間隔が大きすぎると、巻き付けられて重なったフィルムが隣接フィルム間の隙間に崩れてしまうことや、軸方向にずらすときの折り返し部分において、折り返し角度が急になることにより、当該部分のフィルムと離型紙との間に浮きが生じやすいという問題があった。
【0009】
さらに、そのようなずれを生じないように巻き付け力をあげようとしても、フィルムテープと離型紙の粘着力がフィルムを使用するときの取り扱い上それほど強くすることができないため、巻き付け時に過度に力を加えすぎても、剛性の違いから離型紙とフィルムテープの間に浮きが生じるという問題があった。
【0010】
つまり、実質上離型紙付きのフィルムテープをトラバース巻きすることは困難であって、レコード巻きするほかなく、1つの巻体に巻き付けられるテープ長には限界があり、テープを巻き付けた巻体から引き出してテープを使用する際に巻体の交換頻度が高くなってしまうという問題があった。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、トラバース巻きをしてもなお巻き崩れやフィルムと離型紙の間の浮きが生じないテープ巻体、その製造方法、およびテープ巻取り方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では上記問題を解決するために、離型紙が付いたテープフィルムをロールの芯にトラバース巻きで巻き取ったテープ巻体において、前記テープフィルムの幅が4〜5〔mm〕であって、線圧が1000〔g〕のとき、巻取張力が36.5〜486〔g〕であり、かつ送り幅が0.1〜4.0〔mm〕で巻き取られたことを特徴とするテープ巻体が提供される。
【0013】
また、本発明では、離型紙が付いたテープフィルムをロールの芯にトラバース巻きで巻き取るテープ巻体の製造方法において、前記テープフィルムの幅が4〜5〔mm〕であって、線圧が1000〔g〕のとき、巻取張力が36.5〜486〔g〕であり、かつ送り幅が0.1〜4.0〔mm〕で巻き取ることを特徴とするテープ巻体の製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明では、離型紙が付いたテープフィルムをロールの芯にトラバース巻きで巻き取るテープ巻取り方法において、前記テープフィルムの幅が4〜5〔mm〕であって、線圧が1000〔g〕のとき、巻取張力が36.5〜486〔g〕であり、かつ送り幅が0.1〜4.0〔mm〕で巻き取ることを特徴とするテープ巻取り方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明のテープ巻体、その製造方法、およびテープ巻取り方法によれば、線圧が1000〔g〕のとき、巻取張力が36.5〜486〔g〕であり、かつ送り幅が0.1〜4.0〔mm〕で巻き取るので、巻き崩れやフィルムと離型紙の間の浮きが生じることがなく、信頼性を保持しつつ長尺の離型紙付きのフィルムテープを巻体とすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態の巻取り装置の概要側面図である。
図1に示すように、巻取り装置100は、ガイドローラ111,112,113,114、テンションコントローラ120、巻取り部130、およびタッチロール140を備えている。
【0017】
不図示の原反から巻き出され、不図示のスリッタによって4mm幅もしくは5mm幅に切りそろえられた離型紙付きのフィルムテープ10が、ガイドローラ111,112,113,114を介して巻取り部130で芯材に巻き取られる。
【0018】
フィルムテープ10において、離型紙の厚みは0.05mm〜0.3mmであり、離型紙とテープ本体の剥離強度が、およそ0.07N/50mm〜0.20N/50mmに設定される。
【0019】
なお、離型紙は紙材料に限らず、テープ本体との剥離強度が上記範囲に設定できれば、PET(Polyethylene Terephthalate)やPP(Polypropylene)などのプラスチックフィルム、もしくはプラスチックシートでもよい。
【0020】
巻取り部130には一定量で回転する回転ローラが備えられ、その回転ローラにフィルムテープ10を巻き付ける芯材を挿着する。
また、巻取り部130にはタッチロール140によって一定の圧力が負荷され、押さえつけられながらフィルムテープ10が芯材に巻き取られる。
【0021】
テンションコントローラ120は、アーム121の一端にガイドローラ112が回動可能なように取り付けられており、アーム121が支持部122を中心に回転可能になっている。
【0022】
アーム121の支持部122近傍には不図示のばねが取り付けられており、このばねによってアーム121のガイドローラ112側が下向きに押し下げられ、フィルムテープ10に対して張力を与えるように力が加えることができる。
【0023】
一方で、アーム121のガイドローラ112が取り付けられた逆の端部には荷重調整部123が設けられている。
荷重調整部123には、調整ねじ124が設けられおり、アーム121の支持部122近傍に設けられているばねの強さを調整することができる。
これにより、調整ねじ124によってばねの強さを調整することによりフィルムテープ10にかかる張力を調整することが可能となっている。
【0024】
したがって、フィルムテープ10にかかる張力は、巻取り部130の巻取り速度と、原反の送り出し速度に加えて、テンションコントローラ120によるフィルムテープ10に対する圧力によって決定される。
【0025】
図2は、本実施の形態の巻取り装置の巻取り部の上方斜視図である。
上述の通り、巻取り部130にはタッチロール140によって一定の圧力が負荷され、押さえつけられながらフィルムテープ10が芯材に巻き取られる。この負荷される圧力を線圧と呼び、1000gの圧力がかかっているものとする。
【0026】
また、ガイドローラ114と、巻取り部130およびタッチロール140の接触点との間には、不図示のテープガイドが設けられており、このテープガイドがテープ軸方向に左右に動くことにより、フィルムテープ10が巻取り部130に備えられた芯材にトラバース巻きによって巻き取られる。
【0027】
次に、上述した巻取り装置100によってフィルムテープ10を巻き取る取ったときの結果を表1に示す。
表1は、4mm幅のフィルムテープ10を50mm幅のプラスチック製の芯材に0.1mm送りで巻き取ったときの巻取り結果である。なお、0.1mm送りとはフィルムテープ10を芯材にトラバース巻きで巻き取るときに、隣り合うフィルムテープ10同士を0.1mmの間隔をあけて巻き取ることをいう。
【0028】
【表1】

【0029】
表1の巻き状態の項目は、○が浮きや巻き崩れなく巻けていることを示しており、×は浮きや巻き崩れが発生してしまったことを示している。
表1に示すように、巻取張力が36.5〔g〕〜486〔g〕のときには浮きや巻き崩れなく巻けていることがわかる。
【0030】
ここで、引張荷重とはテンションコントローラ120によってフィルムテープ10を下向きに引っ張るようにかける荷重を示しており、この引張荷重から巻取部分の巻取張力を知ることができる。
【0031】
巻取り装置100においては、ガイドローラ113とガイドローラ114との間の距離が、ガイドローラ112とガイドローラ113との間の距離の2倍になっていることから以下の式(1)が成り立つ。
巻取張力=引張荷重/2 ………(1)
ここからわかるように、張力は高すぎても低すぎても巻けないことがわかる。
【0032】
次に、5mm幅のフィルムテープ10を50mm幅のプラスチック製の芯材に0.1mm送りで巻き取ったときの巻取り結果を表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
表2の巻き状態の項目においても、表1と同様に○が浮きや巻き崩れなく巻けていることを示しており、×は浮きや巻き崩れが発生してしまったことを示している。
表2に示すように、5mm幅のフィルムテープ10を巻き取るときにおいても巻取張力が36.5〔g〕〜486〔g〕のときには浮きや巻き崩れなく巻けていることがわかる。
これまで0.1mm送りのトラバース巻きについて検討してきたが、次に、一定割合ずつ重ねてトラバース巻きしたときの結果を表3に示す。
【0035】
【表3】

【0036】
表3に示すように、フィルムテープ10を一定割合ずつ重ねてトラバース巻きによって巻き取ろうとすると重ね幅が0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、および0.5mmのいずれのときにおいても浮きや巻き崩れが発生してしまったことを示している。
つまり、隣り合うフィルムテープ10同士を重ねてはトラバース巻きすることができないことを示している。
次は、送り幅を変化させてトラバース巻きしたときの結果を表4に示す。
【0037】
【表4】

【0038】
表4の巻き状態の項目において、△は巻き取ることは可能であるが、所々に浮きが生じてしまったことを示している。
表4に示すように、送り幅が0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、1mm、および2mmのいずれのときにおいても浮きや巻き崩れが発生せずにトラバース巻きをすることができたことを示している。
【0039】
一方、送り幅が3mm、および4mmのときにおいては、所々に浮きが生じてしまったことを示している。所々に浮きが生じてしまった場合には、信頼性は若干低下するが、フィルムテープ10が使用されるときに要求される信頼性の度合いによっては使用することも可能な場合がある。
さらに、送り幅が5mmのときにおいては、浮きや巻き崩れが生じてしまったことを示している。
【0040】
以上説明したように、巻取張力、線圧、および送り幅の複合的な条件下においてのみ離型紙付きのフィルムテープをトラバース巻きすることができ、レコード巻きよりも長尺のフィルムを1つの巻体とすることが可能となる。
【0041】
トラバース巻きをする際に、送り幅が4mmまでであればフィルムテープ10をトラバース巻きすることが可能となり、長尺のフィルムテープ10を1つの巻体とすることが可能となる。
【0042】
一方で、要求される信頼性が高くても使用できるフィルムテープ10を巻き取ろうとするときは送り幅を2mmまでに制限することによって、より信頼性を保持しつつフィルムテープ10をトラバース巻きすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施の形態の巻取り装置の概要側面図である。
【図2】本実施の形態の巻取り装置の巻取り部の上方斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
100 巻取り装置
111,112,113,114 ガイドローラ
120 テンションコントローラ
121 アーム
122 支持部
123 荷重調整部
124 調整ねじ
130 巻取り部
140 タッチロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型紙が付いたテープフィルムをロールの芯にトラバース巻きで巻き取ったテープ巻体において、
前記テープフィルムの幅が4〜5〔mm〕であって、線圧が1000〔g〕のとき、
巻取張力が36.5〜486〔g〕であり、かつ送り幅が0.1〜4.0〔mm〕で巻き取られたことを特徴とするテープ巻体。
【請求項2】
前記送り幅が0.1〜2.0〔mm〕であることを特徴とする請求項1記載のテープ巻体。
【請求項3】
離型紙が付いたテープフィルムをロールの芯にトラバース巻きで巻き取るテープ巻体の製造方法において、
前記テープフィルムの幅が4〜5〔mm〕であって、線圧が1000〔g〕のとき、
巻取張力が36.5〜486〔g〕であり、かつ送り幅が0.1〜4.0〔mm〕で巻き取ることを特徴とするテープ巻体の製造方法。
【請求項4】
離型紙が付いたテープフィルムをロールの芯にトラバース巻きで巻き取るテープ巻取り方法において、
前記テープフィルムの幅が4〜5〔mm〕であって、線圧が1000〔g〕のとき、
巻取張力が36.5〜486〔g〕であり、かつ送り幅が0.1〜4.0〔mm〕で巻き取ることを特徴とするテープ巻取り方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−269738(P2009−269738A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123000(P2008−123000)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(591012392)日本マタイ株式会社 (17)
【Fターム(参考)】