説明

ディジタルビデオ信号の記録/再生装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、回転ヘッドにより磁気テープにディジタルビデオ信号を記録/再生するようにしたディジタルビデオ信号の記録/再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ディジタルビデオ信号を記録/再生するディジタルVTRでは、記録とテープ速度が等しい通常再生に比して、このテープ速度がより高速とされる高速再生時には、図7に示すように、磁気テープ上に形成された複数のトラックV1、V2、・・・、V8を跨がって回転ヘッドがT0で示すように、磁気テープを走査していた。図7の例は、テープ速度が通常に比して8倍とされる再生動作の例である。ディジタルVTRの場合には、記録/再生データ量が多いので、マルチトラックの構成が採られたりするが、図7は、説明の簡単のために、各トラックには、1フレームのビデオデータが記録されるものとしている。
【0003】上述のように、8本のトラックV1〜V8のそれぞれから再生された再生信号は、8フレーム期間にわたっている。ディジタル画像メモリを使用して、これらの8フレームのデータを寄せ集めることによって、1フレームの再生画像を形成していた。かかる高速再生の方法は、基本的にアナログVTRによるものと同じである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】高速再生時には、通常再生時と高速再生時のテープ速度の比に関係した複数フレーム期間にそれぞれ含まれるデータが1フレームの画面の形成のために使用される。しかしながら、この比が大きくなるにつれて、1フレームの画面を構成するデータが相関が弱いデータとなり、高速再生時の再生画像の画質が劣化する。特に、動きがある時には、この傾向が強く、例えばパニング等のシーンでは、殆どその内容がわからない。
【0005】従って、この発明の目的は、高速再生時に再生画像の画質を向上できるディジタルビデオ信号の記録/再生装置をを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明は、記録すべきディジタルビデオ信号の内で画面中の特定領域と対応する信号を記録媒体の記録トラックの所定位置に対応するように記録すると共に、複数の再生ヘッドH1〜H4を設け、記録時とテープ速度が等しい通常再生に比して、テープ速度がより高速とされる高速再生時に、複数の再生ヘッドH1〜H4を所定周期で切り替えることによって、特定領域に対応する信号を順次得るようにしたことを特徴とするディジタルビデオ信号の記録/再生装置である。
【0007】
【作用】記録トラックの所定位置に記録されている特定略線図の信号を複数の再生ヘッドH1〜H4により得るので、相関が強い信号によって、再生画像を構成することができる。
【0008】
【実施例】以下、この発明の一実施例を図面を参照して説明する。図1は、この一実施例の記録系の構成を示す。1で示す入力端子に、記録すべきアナログビデオ信号が供給される。このビデオ信号がA/D変換器2によりディジタル信号に変換される。1サンプルが8ビットにディジタル化されたディジタルビデオ信号がブロック化回路3に供給される。ビデオデータは、ブロック化回路3で、走査線の順序からブロックの順序にデータの配列が変換される。1フレーム或いは1フィールドの画面が多数のブロック例えば(4×4=16画素)のブロックに細分化される。ブロック化回路3の出力信号がブロック符号化回路4及びバッファリング回路5に供給される。
【0009】ブロック符号化回路4は、一例として本願出願人の提案にかかわるダイナミックレンジに適応した符号化である。すなわち、本願出願人は、特開昭61−144989号公報に記載されているような、2次元ブロック内に含まれる複数画素の最大値及び最小値により規定されるダイナミックレンジを求め、このダイナミックレンジに適応した符号化を行う高能率符号化装置を提案している。また、特開昭62−92620号公報に記載されているように、複数フレームに夫々含まれる領域の画素から形成された3次元ブロックに関してダイナミックレンジに適応した符号化を行う高能率符号化装置を提案している。更に、特開昭62−128621号公報に記載されているように、量子化を行った時に生じる最大歪が一定となるようなダイナミックレンジに応じてビット数が変換する可変長符号化方法を提案している。これらの符号化がブロック符号化として使用できる。
【0010】先に提案されているダイナミックレンジに適応した符号化方法(ADRCと称する)は、ダイナミックレンジDR(最大値MAXと最小値MINの差)をブロック毎に算出し、また、入力画素データからそのブロック内で最小のレベル(最小値)が除去される。この最小値除去後の画素データを代表レベルに変換する。この量子化は、元の量子化ビット数より少ないビット数例えば2ビットと対応する4個のレベル範囲に検出されたダイナミックレンジDRを分割し、ブロック内の各画素データが属するレベル範囲を検出し、このレベル範囲を示すコード信号を発生する処理である。2ビットの量子化を行う時には、ブロックのダイナミックレンジDRが4個のレベル範囲に分割され、最小のレベル範囲から最大のレベル範囲にそれぞれ含まれる画素データが(00)から順に、(01)、(10)、(11)と符号化される。従って、各画素の8ビットのデータが2ビットに圧縮されて伝送される。受信側では、受信されたコード信号が代表レベルに復元される。この代表レベルは、量子化の基準となる4個のレベル範囲の夫々の中央のレベルである。
【0011】上述のダイナミックレンジに適応したADRC符号化は、伝送すべきデータ量を大幅に圧縮できるので、ディジタルVTRに適用して好適である。特に、可変長ADRCは、圧縮率を高くすることができる。しかし、可変長ADRCは、伝送データの量が画像の内容によって変動するため、所定量のデータを1トラックとして記録するディジタルVTRのような固定レートの伝送路を使用する時には、バッファリングの処理が必要とされる。バッファリング回路5は、このために設けられている。バッファリング回路5としては、特願昭61−257586号明細書に記載されているように、累積型のダイナミックレンジの度数分布を形成し、この度数分布に対して、予め用意されている割り当てビット数を定めるためのしきい値を適用し、所定期間例えば1フレーム期間の発生情報量を求め、発生情報量が目標値を超えないように、制御するものを使用できる。
【0012】ここで、本願発明は、ADRCのみに限定されるものではなく、DCT(Discrete Cosine Transform)等のブロック符号化を使用できる。
【0013】ブロック符号化回路4の符号化出力及びバッファリング回路5からのしきい値データ等のバッファリングに必要なデータがフレーミング回路6に供給される。フレーミング回路6は、ダイナミックレンジDR、最小値MIN及びコード信号DTがバイトシリアルに配列され、同期信号が付加された記録データを形成する。また、フレーミング回路6は、1フレームの記録データの順序を変更し、1フレームの画面の中央部の画像が磁気テープのヘッド突入側(すなわち、トラックの始端近傍)に記録されるようにする。さらに、フレーミング回路6では、付加的コード(DR、MIN)とコード信号DTの夫々に対するエラー訂正符号の符号化がなされる。
【0014】フレーミング回路6からの記録データが記録回路7に供給され、チャンネル符号化、記録増幅等の処理が記録回路7によりされる。記録回路7からの記録信号が図示せずも、回転トランスを介して回転ヘッドH1に供給される。この実施例では、1フレーム分の記録データを1本のトラックとして記録している。また、図3R>3に示すように、フレーム周波数で回転するドラム8に対して、90°間隔で4個のヘッドH1、H2、H3及びH4が取り付けられている。ドラム8の周面には、図示せずも、300°程度より大きな巻き付け角で、磁気テープが巻き付けられている。記録時には、4個の回転ヘッドの内の1個の回転ヘッドH1が使用される。
【0015】フレーミング回路6では、図4に示すように、1フレームの画面9が等しい面積の4個の領域A1、A2、A3及びA4に分割した時に、その中央部の領域A1がトラック上に最初に記録されるように、記録データの順序を並び替えている。すなわち、図5は、磁気テープ上のトラックパターンを示しており、磁気テープをその下から上に向かって回転ヘッドH1が走査することで、斜めのトラックV1、V2、・・・が順次形成される。トラックV1〜V8のそれぞれに1フレーム分の記録データが記録される。各トラックの始端の近傍に、領域A1に関する記録データが記録され、次に領域A2の記録データが記録され、その次に領域A3の記録データが記録され、終端の近傍に、領域A4の記録データが記録される。
【0016】上述のように記録された磁気テープは、通常再生時には、記録時と等しい速度で磁気テープが送られ、回転ヘッドH1により各トラックが走査される。また、高速再生時には、4個の回転ヘッドH1〜H4が使用される。図2は、再生系の構成を示し、回転ヘッドH1〜H4の再生信号が図示せずも、回転トランスをそれぞれ介して再生回路11a〜11dにそれぞれ供給される。再生回路11a〜11dは、再生増幅、再生クロックのリカバリー、チャンネル復号等を行う。
【0017】再生回路11a〜11dの出力信号が切り換え合成回路12に供給される。この切り換え合成回路12は、切り換え信号発生回路13からの切り換え信号により制御される。切り換え信号発生回路13には、入力端子14からのモード制御信号が供給される。モード制御信号は、システムコントローラで形成されたもので、n倍速再生のnの値を示すもので、(n=1)が通常再生モードを意味する。このモード制御信号は、後述のバッファメモリ18に対する制御信号を発生する制御信号発生回路15にも供給される。
【0018】切り換え合成回路12は、通常再生モードでは、回転ヘッドH1でピックアップされ、再生回路11aから出力される再生信号のみが選択的に出力され、高速再生モード(すなわち、n>1)では、4個の回転ヘッドH1〜H4の再生信号が順に出力されるように、切り換え信号により制御される。この実施例では、倍速の比nとして、(n=4m、m:1、2、3、・・)が可能とされている。
【0019】切り換え合成回路12からの出力信号がブロック復号回路16に供給される。ブロック復号回路16は、記録系に設けられているブロック符号化回路4による符号化を復号するためのもので、例えばADRCのデコーダである。ブロック復号回路16の出力信号がブロック分解回路17に供給され、ブロックの順序のデータがテレビジョンのラスター走査の順に戻される。このブロック分解回路17の出力信号がバッファメモリ18に供給される。バッファメモリ18は、例えば1フレームの画像データを記憶できる容量を有している。
【0020】バッファメモリ18に対して、制御信号発生回路15からの制御信号が供給される。前述のように、各トラックには、領域A1、A2、A3、A4の順に各領域の記録データが記録されている。回転ヘッドH1のみが使用される通常再生モードでは、この記録順序で、且つラスター走査の順の再生データがバッファメモリ18に書き込まれ、1フレームの画面の左上から始まる通常のラスター走査の順のデータが読み出される。この並び替えは、バッファメモリ18のアドレスの制御で行うことができる。
【0021】高速再生モードでは、4個の回転ヘッドH1〜H4の再生信号が全て使用される。例えば8倍速再生モードでは、各ヘッドが1/4フレーム期間ずつの時間遅れをもって、すなわち、2トラックずつのずれをもって、磁気テープを走査する。回転ヘッドH1〜H4の1フレーム分の走査軌跡の内で、走査開始から1/4フレーム期間に相当する走査(図6におけるT1、T2、T3、T4)で得られた再生信号が切り換え合成回路12で選択され、1フレーム分の再生データが形成される。この図6から分かるように、各部分的な走査で得られる再生データは、2フレーム期間のデータから構成された中央部のデータである。
【0022】上述の8倍速再生モードでは、1フレーム期間で、走査T1〜T4とそれぞれ対応して、領域A1の再生データが4回得られる。8倍速再生に限らず、4個の回転ヘッドH1〜Hを使用した4m倍速再生では、1フレーム期間で、領域A1の再生データが4回得られる。ここで、領域A1の再生データは、同一フレームのデータからなるものではなく、mフレームのデータからなるものである。8倍速再生であれば、2フレームに含まれる領域A1を合成したものである。また、領域A1は、1フレームの面積の1/4の大きさであるので、4個の領域A1の再生データによって、1フレームの大きさの画面が構成できる。
【0023】この実施例では、1フレームの画面を4等分した範囲にそれぞれ4個の領域A1の再生データを表示する。8倍速再生モードの例では、走査T1で得られた再生データによる画像を画面を左上に表示し、走査T2で得られた再生データによる画像を画面を右上に表示し、走査T3で得られた再生データによる画像を画面を左下に表示し、走査T4で得られた再生データによる画像を画面を右下に表示する。このような分割表示のためのデータの並び替えは、バッファメモリ18においてなされる。通常再生モードと高速再生モードとで異なる並び替えの処理は、制御信号発生回路15からの制御信号によって制御される。
【0024】上述のように、高速再生モードでは、それぞれが2フレーム期間の各領域A1の信号で構成される画面の中央部の画像が4分割表示される。2フレーム期間の信号から構成されているので、相関が強く、動きがある場合でも、画質が良好である。画面の中央部のみが再生されるが、記録内容の把握を行うという高速再生の目的を達成することができる。しかも、連続した4枚の分割画像が表示されるので、内容の把握がより容易である。なお、この発明は、画面の中央部に限らず、任意の位置の画像を切り出すことができる。
【0025】この発明は、可変長符号化を行う場合に適用した場合には、とりわけ有効なものである。すなわち、可変長符号化、例えば可変長ADRCの場合では、ブロックのダイナミックレンジ及び最小値MIN等の固定長のデータが規則的に配置され、可変長の画素の符号化データが順に前の方へ詰められた記録データを形成している。この方式では、1トラックの記録データのうちで、その後半となるほど、エラーの伝搬の影響を受けやすい。しかしながら、上述のように、トラックの始端の付近に中央部の画像データを記録しているので、通常再生モードで、中央部の画像がエラーとなりにくい利点がある。
【0026】また、この発明は、ハイビジョン信号等の高解像度ビデオ信号をブロック符号化して記録/再生するディジタルVTRにも適用できる。ハイビジョン信号は、標準解像度の信号に比して、約5倍の情報量があり、アスペクト比も異なるために、標準のモニタによって、ハイビジョンVTRの再生画像を見る時には、ダウンコンバートが必要とされる。しかしながら、ダウンコンバートを行うにしても、上下に画像がない領域ができたり、左右の画像が削られたりする問題がある。この発明を適用すると、ハイビジョン信号の画面の中央部を(4:3)のアスペクト比で切り出し、テープ上のトラックの所定の位置に記録し、標準モードでは、1/5のデータ量だけを出力する。これによって、ハイビジョンVTRの再生画像を標準モニタで見ることが可能となる。
【0027】
【発明の効果】この発明は、高速再生時に、相関が強い画像データを使用した再生画像を形成するので、再生画像の画質を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例の記録系の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の一実施例の再生系の構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の一実施例のヘッド配置を示す略線図である。
【図4】この発明の一実施例における1フレームの画面の分割を示す略線図である。
【図5】この発明の一実施例におけるテープパターンを示す略線図である。
【図6】この発明の一実施例における高速再生動作の説明に用いる略線図である。
【図7】従来の高速再生動作の説明に用いるテープパターンの略線図である。
【符号の説明】
4 ブロック符号化回路
6 フレーミング回路
H1〜H4 回転ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】 記録すべきディジタルビデオ信号の内で画面中の特定領域と対応する信号を記録媒体の記録トラックの所定位置に対応するように記録すると共に、複数の再生ヘッドを設け、記録時とテープ速度が等しい通常再生に比して、上記テープ速度がより高速とされる高速再生時に、上記複数の再生ヘッドを所定周期で切り替えることによって、上記特定領域に対応する信号を順次得るようにしたことを特徴とするディジタルビデオ信号の記録/再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【特許番号】特許第3082302号(P3082302)
【登録日】平成12年6月30日(2000.6.30)
【発行日】平成12年8月28日(2000.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−140884
【出願日】平成3年5月16日(1991.5.16)
【公開番号】特開平4−340881
【公開日】平成4年11月27日(1992.11.27)
【審査請求日】平成10年5月8日(1998.5.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【参考文献】
【文献】特開 平2−219385(JP,A)
【文献】特開 平3−22687(JP,A)