説明

ディスク付検査器具

【課題】本当の意味でのワンステップ処理を可能とする検査カップを提供する。
【解決手段】薬剤検査用採尿カップは、頭部と、底部と、透明で平坦な側壁部とを有するカップ本体を備えている。少なくとも1片の試験片が、流体サンプルを評価し、評価結果を視覚的に表示する為に設けられている。カップに挿入可能な寸法のディスクが、カップ本体内の平坦な側壁部の近辺で、透明で平坦な側壁部を通して評価結果を目視できる距離に試験片を吊下げている。カップの移送を可能とする為にカップ頭部を密閉する為の蓋部が設けられている。更に、蓋部は必要に応じて、ディスクをカップから取出す為にディスクと係合することもできる。また、試験片を簡単に取出した後、ディスクをそのまま蓋部に残しておくこともできる。この場合、ディスクは、確認試験サイトへの移送の為に、カップを蓋部で密閉することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断用検査器具に関し、より具体的には、例えば尿サンプル等の流体サンプルを収容するカップ及びその流体サンプルの特性を表示する為の挿入ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
流体サンプル、特に尿等の体液サンプルは通常、カップ等に採取されて保存される。このカップは蓋で密閉されるが、その後サンプルを別の試験器具に移す為に、この蓋に穴を開けるか又は蓋を外すのが一般的である。
このような処理を行う際に、サンプル液がこぼれて周囲を汚すことがあり得る。このようなユーザの処理上のミスが誤った検査結果の原因となることもあり得る。
【0003】
流体サンプルの保存及び検査の為に、多くの器具が開発され、市販されているが、これらの器具は使用法が簡単でなく、使い勝手がよくない。例えば、下記特許文献1に記載の尿検査カップにおいては、スロット入りの蓋が付いており、使用の際にユーザは多くの手作業を強いられる。また、検査後にカップを密閉するのに更に手作業を必要とする。
更に下記特許文献2に記載の別のタイプのカップでは、検査を遂行する為にカップを激しく振とうする必要がある。更に下記特許文献3では、蓋を規定の位置に配置し、カップを所定時間所定の角度だけ傾け、検査解析を行う為に検査有効信号が現れるまで待つ必要がある。
【特許文献1】米国特許第5,976,895号明細書
【特許文献2】米国特許第5,916,815号明細書
【特許文献3】米国特許第5,403,551号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの、又は別の従来の検査カップ器具には、本当の意味でのワンステップ処理を可能とするものはない。本発明においては、予めカップに採取した尿サンプルにディスク付検査器具を挿入すると、何もしなくても検査結果が表示される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による薬剤検査採取カップは、頭部と、底部と、透明で平坦な側壁部とを有するカップ本体を含む。
尿等の流体サンプルを評価し、評価結果を視覚的に表示する為の、少なくとも一片の試験片が設けられている。
カップ内に挿入できる寸法のディスクが、カップ内の平坦な側壁部の近辺であって、評価結果を透明で平坦な側壁部を通して目視できる距離に、試験片を吊下げている。
【0006】
安全に保存し且つ移送することを可能とする為に、カップの頭部を密閉する為の蓋部が設けられている。透明な側壁部近辺に試験片がある為に、カップを開けずに検査結果を簡単に判定することができる。更に、カップ内の流体サンプルの評価を行う為の攪拌作業や手作業やその他の処理は一切不要である。
特に、平坦な側壁部はカップの底部からカップ頭部近辺まで延びており、該試験片はその平坦な側壁部と略平行に配されている。このような構造構成により、比較的長い複数の試験片を使用し、側壁部の平坦な覗き面から観察することが可能となる。
【0007】
更に、ディスクは、試験片を離脱可能に把持する為にディスクの下面から垂下している部材を少なくとも1つ含む。複数の試験片をディスクで支持することも可能である。更に必要に応じて、複数の試験片を永久的にディスクで取付けることも可能である。だがより好ましいのは、最終的にユーザが特定の評価試験片を選択できるようにする為に、試験片を把持する部材が、本発明においていろいろ異なる構成の試験片の使用を可能とすることである。
【0008】
ディスクを扱い易くする為に、ディスクの上面にフィンガーグリップが設けられ、必要に応じて、手作業によりディスクをカップに挿入したり、カップから取出したりすることを可能としている。
カップ頭部は円形で、取外し可能に蓋部と係合するねじ山を含むのが好適である。この構成により、流体を密封することができる。更に、ユーザがディスクをカップに簡単に挿入できるようにする為に、ディスクは円形の外周部を有する。
【0009】
蓋部は、蓋部がカップを密閉するとディスクと係合する手段を含んでもよい。この手段は、蓋部をカップから取外すと、蓋部と共にディスクも取外すことを可能とする。この実施形態は、試験片を入れない状態でカップを保存又は移送する場合に好適である。この場合、第1蓋部とディスクとをカップから取外した後にカップを密閉する為の第2蓋部が設けられる。また、試験片は、ディスクを蓋部に付けたまま、ディスクから簡単に取出す(引出す)ことができる。蓋部/ディスクアセンブリをカップに載せて回し、カップを密閉して移送することができる。ディスクは、蓋部とカップとの間のパッキンとしての薄い密閉面をその外周に有する。
【0010】
本発明の利点及び特徴は、添付図を参照しつつ以下の説明を考察することにより明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1〜図3に、本発明による薬剤検査用採取カップ10を示す。このカップ10は、透明で平坦な側壁部14を含むカップ本体12を有する。これにより、図2及び図3に示す試験片又はカード20の透明で平坦な観察の為の構造が実現する。
図4も参照して、ディスク22は、カップ頭部(トップ)24に挿入できる寸法を有する。このディスク22は、カップ本体12内の平坦で透明な側壁部14近辺であって、試験片により示される評価結果を、側壁部14を通して目視できる距離の所に試験片20を吊下げる。
【0012】
カップ12、ディスク22、及び蓋部28(図3参照)は、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の適当な材料で形成されるが、これらには限定されない。試験片20は、尿等の液体サンプルを評価し、評価結果を視覚的に表示する為の任意の適当なメーカーのものとすることができる。
カップ10同士を嵌め込んで積重ねた場合に、カップ10同士が離れなくなることのないようにする為に、リブ30が設けられていてもよい。カップ10の構造により可能となるそのようなカップの積重ねは、保存や輸送の観点から好適である。
【0013】
堅牢な側壁部14により、カード又は試験片20と側壁部との間に約0.10インチから0.20インチの間隔を確保することができる。これらの寸法は、実際の設計として引用したものであり、場合によっては他の間隔も適当であることは理解できよう。
図4において、ディスク22は、ディスクの下面40から垂下した部材34,36を含む。これらの部材34,36は、試験片やカード20を挿入する為のギャップ42をその間に形成するよう間隔をおいてディスクと一体成形されていることが好ましい。これらの部材34,36は弾性を有するので、試験片20を圧入したり、試験片20を外したり、位置調整をしたり、複数の試験片を平行に並べることが可能である。また、図4〜7に示すように、ディスク22は、その上面48と一体成形されたフィンガーグリップ46を含む。
【0014】
凹部50により、グリップ46に指をかける空きスペースが設けられている。この構成により、ディスク上面48から突出するものが無くても、ディスクを取り扱うことが可能となる。
カップ本体12は、円形の頭部24を有する。この頭部24は、カップ頭部24を密閉する為に、ねじ山54を有する蓋部28をねじ締めすることができる。ディスク22は更に、円形の外周部と、カップとの接触面を密閉する外周フランジとして作用する突条58を有するのが好適である。この突条はディスクから延出して、蓋部28をカップ頭部24にねじ締めしたときに蓋部28と係合する手段となる。図7に示すように、強制的に突条28を蓋部のねじ山を越えさせることにより、係合が達成される。
【0015】
つまり、突条28を備えたディスクと共に蓋部28を回して外すことにより、試験片20をカップ12から取出すことができる。ディスク22は可撓性を有するので、試験片20を取出す間、ディスク22は蓋部28及びカップ本体12内で回転することができる。
その後カップ12を第2蓋部で密閉する。この蓋部は、添付図に参照番号28で示されたものと同一とすることができる。また、試験片を取出した後、シールとして作用する外周突条又はフランジ58と共に、ディスク22を蓋部28内に残しておくこともできる。
【0016】
突条58とねじ山54とによりディスク22を蓋部28と係合させる手段を実現したが、ディスク22と蓋部28との係合を可能とする他の適当な手段も本発明の範囲内において考えられる。
だが、突条28と蓋部のねじ山54とは、図示を省略した他の係合装置では実現できないような簡単且つ経済的な係合手段を実現する。
【0017】
以上のように、本発明による薬剤検査採取法を、本発明を有利に使用できるような方法を例示する目的で説明したが、本発明はこの例には限られないことが理解できよう。従って、当業者の考えうるような変更態様や改変例や同等構成は何れも、特許請求の範囲に規定される本発明の範囲に含まれるものと見なされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による薬剤検査用採取カップの斜視図であって、平坦な側面を有すると共に、その上にディスクが配されたカップ全体を示す。
【図2】図1と同様の斜視図であり、透明なカップと、ディスクによりカップ内部に配された薬剤試験片の位置を示す。
【図3】図1及び図2の器具を、カップを密閉する為の蓋部と共に切断した状態を示す側面図である。
【図4】本発明によるディスクの側面図で、取外し可能に試験片又はカードを把持する手段と、ディスクの取扱いを簡単にするフィンガーグリップとを示す。
【図5】図4に示したディスクの上面斜視図である。
【図6】図4に示したディスクの底面斜視図である。
【図7】ディスクをカップから取外し易くする為に蓋部と係合したディスクの底面斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部と、底部と、平坦な側壁部とを有するカップ本体であって、上記平坦な側壁部が透明であるカップ本体と、
尿サンプルを評価し、評価結果を視覚的に表示する為の少なくとも1つの試験片と、
上記カップ頭部に挿入できる寸法を有し、上記カップ本体内の上記平坦な側壁部近辺であって、上記透明で平坦な側壁部を通して上記評価結果を目視できる距離に上記試験片を吊下げるディスクと、
上記カップの移送を可能とする為に上記カップ頭部を密閉する為の蓋部とを備えた薬剤検査用尿採取カップ。
【請求項2】
上記平坦な側壁部が上記カップ底部から上記カップ頭部近辺まで延び、上記試験片が上記平坦な側壁部と略平行に配されている請求項1に記載の採取カップ。
【請求項3】
上記カップ頭部が円形であり、上記蓋部を取外し可能に係合する為のねじ山を含む請求項2に記載の採取カップ。
【請求項4】
上記ディスクが、上記試験片を離脱させたり、把持するために上記ディスクの下面から垂下している少なくとも1つの部材を含む請求項3に記載の採取カップ。
【請求項5】
上記ディスクが、上記ディスクの上面に配され、手作業により上記ディスクを上記カップ内に挿入したり、上記カップから取出すことを可能にするフィンガーグリップを含む請求項4に記載の採取カップ。
【請求項6】
上記ディスクの下面から垂下した少なくとも2つの部材が隣接して設けられていることにより、上記試験片を圧入し把持することが可能である請求項5に記載の採取カップ。
【請求項7】
上記ディスクが、上記蓋部と上記ディスクとの間を密閉する為の円形外周部を含む請求項3に記載の採取カップ。
【請求項8】
上記蓋部で上記カップを密閉する際に上記ディスクと蓋部とを係合させる手段であって、上記蓋部を上記カップから取外すと、上記蓋部と共に上記ディスクを取外すことを可能とする手段を更に備えた請求項6に記載の採取カップ。
【請求項9】
上記ディスクと上記蓋部とを係合させる上記手段が、上記ディスクに形成されたフランジと、上記蓋部に形成されたねじ山とを含む請求項8に記載の採取カップ集成体。
【請求項10】
頭部と、底部と、平坦な側壁部とを有するカップ本体であって、上記平坦な側壁部が透明であるカップ本体と、
流体サンプルを評価し、評価結果を視覚的に表示する為の少なくとも1つの試験片と、
上記カップ頭部に挿入できる寸法を有し、上記カップ本体内の上記平坦な側壁部近辺であって、上記透明で平坦な側壁部を通して上記評価結果を目視できる距離に上記試験片を吊下げるディスクと、
上記カップ頭部を密閉すると共に上記ディスクと係合する第1蓋部であって、この係合により上記ディスクと試験片とを上記カップから取外すことが可能である第1蓋部と、
上記カップの移送を可能とする為に上記カップ頭部を密閉する為の第2蓋部とを備えた薬剤検査用採取カップ。
【請求項11】
上記平坦な側壁部が上記カップ底部から上記カップ頭部近辺まで延び、上記試験片が上記平坦な側壁部と略平行に配されている請求項10に記載の採取カップ。
【請求項12】
上記カップ頭部が円形で、上記第1及び第2蓋部を取外し可能に係合する為のねじ山を含む請求項11に記載の採取カップ。
【請求項13】
上記ディスクが、上記試験片を離脱させたり、把持するために上記ディスクの下面から垂下している少なくとも1つの部材を含むことを特徴とする請求項12に記載の採取カップ。
【請求項14】
上記ディスクが、上記ディスクの上面に配され、手作業により上記ディスクを上記カップ内に挿入することを可能にするフィンガーグリップを含む請求項13に記載の採取カップ。
【請求項15】
上記ディスクの下面から垂下した少なくとも2つの部材が隣接して設けられていることにより、上記試験片を圧入し把持することが可能である請求項14に記載の採取カップ。
【請求項16】
上記ディスクが、上記蓋部が上記カップを密閉する為の円形外周部を含む請求項12に記載の採取カップ。
【請求項17】
上記ディスクが、上記カップのねじ山と係合することで、上記ディスクと上記カップとを係合させる外周フランジを含む請求項16に記載の採取カップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−504072(P2006−504072A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−583228(P2003−583228)
【出願日】平成15年3月12日(2003.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2003/007719
【国際公開番号】WO2003/086200
【国際公開日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【出願人】(599060928)バリアン・インコーポレイテッド (81)
【Fターム(参考)】