説明

ディスク状記録媒体及びその製造方法

【課題】
ペーパーディスクのような層構成の一部に、紙の層が設けられたディスク状記録媒体を、長期に渡り保存または使用した場合に紙が水分を吸湿または乾燥し伸縮するためディスク状記録媒体を構成する他の樹脂層との間に伸縮による寸法の差が生じディスク状記録媒体が反る。
【解決手段】
上記課題を解決するため、本発明のディスク状記録媒体では従来のディスク状記録媒体と同等の性能を有し、かつ従来のディスク状記録媒体の樹脂層を薄くし樹脂の使用量を低減したものであり、さらにディスクの強度を補強するため、支持層の一部に、例えば紙からなる層を設け、更に紙層の水分の吸湿または乾燥による寸法変動が原因で生じるディスク状記録媒体の反りを抑える目的で、ディスク状記録媒体を構成する層全体の一部、若しくは支持層の一部にプレス加工等で局所的凹凸が形成されていることを特徴とする本発明のディスク状記録媒体及びその製造方法の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レコードや、コンパクトディスク(CD)、ハードディスクーデジタル・ヴァーサタイル・ディスク(HD−DVD)ブルーレイ・ディスク(BD)、デジタル・ヴァーサタイル・ディスク(DVD)などの光ディスクであるディスク状記録媒体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク状記録媒体は、一般的に記録層と、これを支持する支持層とを備えている。記録層は記録が刻まれる記録領域と、そのマージンとしての非記録領域から構成されている。記録層は微細な凹凸(ピット)が刻まれ、これを光や針で読み取ることで情報を引き出すことが可能となっている。その多くは記録層の保護のために記録層表面は透明な保護層で覆われている。
このようなディスク状媒体の一つとして、光ディスクがある。ここで光ディスクの作製方法について述べる。ポリカーボネートやエポキシ樹脂は、インジェクション成形等で、外形が光ディスクの形状で、その表面にピットが形成されるように熱成形し、前記ピット上に、アルミニウムや銀等の金属を蒸着もしくはスパッタを施すことにより記録層を形成する。
次に上記に記録層を形成したインジェクション成形品と、必要に応じて記録層を支持するため上記方法で形成されたインジェクション成形品、もしくは、前記記録層を保護するため前記保護層の上層にポリカーボネート、エポキシ樹脂等からできたインジェクション成形品を貼り合わせて光ディスクが作製される。
【0003】
従来の光ディスクには、安定した読み取りまたは書き込みが出来るように、異物や不純物の含有が少なく、透過性が高く、複屈折率が小さい材料が選択されている。また光ディスクが変形しないように吸水性が低く、耐熱性に優れ、更に成形加工性のために高流動性を有し、離型性に優れる必要があるため、これらの条件を満たすポリカーボネートやエポキシ樹脂等が多く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
しかし近年の環境問題や石油資源の枯渇により、上記光ディスクに使用する樹脂の量を減らす必要性が生じてきた。
【0004】
しかし光ディスクの樹脂層を薄くすると、光ディスク自体の剛性がなくなり、記録ドライブ装置に前記光ディスクを設置しても光ディスクが偏心回転するため光ディスクの記録情報を読み取れないという問題があった。
【0005】
そこで、光ディスクに使用する樹脂の量を削減する方法の一つとして、ディスクの剛性を保持するために、支持層の一部に紙を使用した紙製のディスク、いわゆるペーパーディスクが提案されている(特許文献2)。
しかしペーパーディスクの主要構成材料である紙は、水分の吸湿または乾燥により伸縮するため寸法が変動する特性があり、ペーパーディスクを長期に渡り使用若しくは保存した場合、紙が水分を吸湿または乾燥することで大きく伸縮するため、ペーパーディスクを構成する他の樹脂層等との間に伸縮による寸法の差が生じペーパーディスクが反るという問題があった。

【特許文献1】特開平05−258349号公報
【特許文献2】特開2005−504774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述のような、例えば、樹脂の量を減らしたディスク状記録媒体や、あるいはペーパーディスクのような支持層の一部に、紙の層が設けられたディスク状記録媒体であっても、形状を保持し、良好な読み取り、取り扱いができるとともに、紙のような吸湿性のある支持体を用いたディスク状記録媒体を長期に渡り保存または使用した場合に、紙が水分を吸湿または乾燥することで大きく伸縮するため、前記ディスク状記録媒体を構成する他の樹脂層との間に伸縮による寸法の差が生じディスク状記録媒体が反ることのないディスク状記録媒体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1は、保護層で覆われた記録層と前記記録層および保護層を支持する単数または複数の樹脂または紙を材料とした層で構成された支持層を備えたディスク状記録媒体において、前記記録層表面は記録領域と当該記録領域の周辺部にある非記録領域から構成され、前記支持層を構成する一部または全部の層の前記非記録領域を支持する領域は局所的凹凸を備えていることを特徴とする前記ディスク状記録媒体を提供することである。
請求項2は保護層で覆われた記録層と前記記録層および保護層を支持する単数または複数の樹脂または紙を材料とした層で構成された支持層を備えたディスク状記録媒体において、前記記録層表面は記録領域と当該記録領域の周辺部にある非記録領域から構成され、ディスク状記録媒体を構成する全ての層が前記非記録領域に対応する領域でディスク状記録媒体の一方の面から他方の面まで追従する局所的凹凸を備えていることを特徴とする前記ディスク状記録媒体を提供することである。
請求項3は請求項1記載のディスク状記録媒体の作製方法であって、前記支持層の一部が局所的凹凸であり、前記支持層の前記局所的凹凸を凹凸の形状を形成した金型でプレス加工し凹凸の型を形成し、凹凸の型が形成された前記支持層に、少なくとも記録層、保護層を積層して前記ディスク状記録媒体の製造方法を提供することである。
請求項4は請求項2記載のディスク状記録媒体の作製方法であって、前記局所的凹凸が前記ディスク状記録媒体を構成する全層に、前記ディスク状記録媒体の前記局所的凹凸に凹凸の形状を形成した金型でプレス加工し凹凸の型を形成して前記ディスク状記録媒体の製造方法を提供することである。
上記の本願発明により、支持層が薄くてもディスク全体の剛性を保持することができ、さらに支持層の一部に紙を使用しても、湿度による伸縮によりディスクを構成する層同士のずれによるディスクの反りを防ぐことができるディスク状記録媒体を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の局所的な凹凸形状が設けられたディスク状記録媒体は、反りが無く平らで、しかも、高温高湿(80℃・85%)に4日間保存しても、層の伸縮によるずれを抑えることができたので記録媒体に反りが生じず、ディスクは剛性を備えているのでディスク状記録媒体としても、安定して情報を読み取り若しくは書き込みが出来るディスク状記録媒体を提供することが出来た。
このように、本発明のディスク状記録媒体は、ディスク状記録媒体のそりや使用時の偏心回転を抑えることができ、また従来の光ディスクよりプラスチック材料の使用量を削減することが出来た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のディスク状記録媒体は、支持層、記録層、保護層が積層されて構成される。
【0010】
(保護層)
反射層に傷が付くのを防止するため、またレーザーの焦点をピットに合わせるためのレンズの役目を担う目的で、反射層の上層に平滑性が高く、光透過度が良好で、比較的硬度が高い、例えばポリカーボネートやエポキシ樹脂等をインジェクションで形成したものに接着剤を用いて貼り合わせて保護層を形成する。
また保護層の厚さは、CDの場合は約1.1mm、DVDの場合は0.5mm、ブルーレイディスクの場合は、95から105μmである。
【0011】
(記録層)
記録層はビットを保持する記録保持層を備えている。記録保持層はインジェクションで加工でき、ピットを転写できる樹脂材料が好ましいが、ピットだけでも転写できていれば、どんな材料でもよく、例えば、ポリプロピレンの基板の上にUV硬化アクリル樹脂等を積層し、ピットをスタンパで転写して、UVを照射して硬化しても良い。また記録保持層11の厚さは10から30μmで構成する。
光を照射して情報を予に取るタイプのディスク状記録媒体である場合には、記録保持層の上に金属または合金を蒸着またはスパッタ等の乾式成膜を施して反射膜を形成する。記録層としては、レーザー光を照射して、反射する光の状態によって、記録内容を再現するタイプに用いる場合は、記録保持層として、紙基材等不透明材料も使用できるように、記録層を読み取るレーザー光の波長が短く、焦点が短い青色レーザーに対応している記録層、例えば、ブルーレイディスク等が好ましく用いられる。
この記録層は、記録が刻まれる記録領域と、そのマージンとしての非記録領域から構成され、非記録領域は記録領域を取りまいている。非記録領域には必ずしもピットや反射層を形成しなくても良い。
【0012】
(支持層)
支持層は記録層を支持する役目を担い、紙層の表面に樹脂層を接着剤等で貼り合わせて積層して構成される場合と、薄い樹脂層のみで構成される場合とがある。
ここで、支持層が紙と樹脂層から構成される場合は、紙層を樹脂層で両面から挟み込む構成とすることが好ましい。
また支持層が薄い樹脂層でのみ構成される場合は樹脂層の厚さが0.6mm程度であり、材質は、ポリカーボネートのフィルムが強度面から好ましく用いられる。
【0013】
(樹脂層)
紙層の表面に貼り合わせる樹脂層は、紙の表面の凹凸を無くす目的で用いられ、例えばプラスチックフィルムとして、膜厚が50から200μmで、表面平滑性は、JISBO601−1982の表面粗さ(中心線平均粗さRa=0.1μm以下、最大高さRmax=3.0μm以下の平滑性のあるフィルムが好ましく用いられる。
また材質に関して特に制限はないが、記録層を形成する材料との密着性の観点から、ポリカーボネートのフィルムが一般的に用いられ、コストが安いということで、ポリエチレン、ポリプロピレン等ポリオレフィン系のフィルム、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系のフィルム、ナイロン等のポリアミド系のフィルム等も用いられる。ポリ乳酸等の生分解性プラスチックを用いても良い。
【0014】
(紙層)
紙層は厚さが0.5から1mm程度であり、材料としては、パルプを用いた紙であれば特に限定されないが、パルプの代わりに木材チップから製造した紙、ケナフなど非木材系材料から製造された紙であっても良い。また紙の場合、一般的にコート紙と呼ばれる紙の表面にピグメントがコートしてある、紙が好ましく、更に好ましくは抄紙時にキャレンダー処理したものが良い。ピグメントをコートし、キャレンダー処理を行うことにより、紙表面の繊維間にピグメントが埋まり込み、紙が平滑になるためである。
コート紙でない場合は、紙表面に貼るとき、紙表面の凹凸を接着剤を塗布することで平滑にする工夫が必要である。ベースとして使用できる紙としては、製紙用天然繊維を主体とする紙が使用できる。またこの紙に、合成繊維(例えば、ポリオレフィン系繊維)を混抄してあるものでもよく、さらにはコットンパルプや精製木材パルプから作製された原料紙を、塩化亜鉛溶液の膨潤作用を利用して、任意の厚さに積層後、塩化亜鉛を除去し、乾燥してできる、剛直な、バルカナイズドファイバーの様な素材を利用してもよい。
一般的に紙は、表裏がある、これは、抄紙のとき、水に膨潤したパルプを細かい網目状の上に流し、水を取り除く際、網目に接する面と、網目に接しない面ができるためである。
この紙の表裏の差が、反り等の物性に影響を及ぼすことがある。この網目に接する面と、網目に接しない面は、表面形状だけが異なるだけでなく、内面のパルプの大きさ、配向等も異なる。そのため、厚み方向で半分に切った場合に、上半分とした半分の密度、物理的強度等が異なる。この点に注意して、紙を貼り合わせたものを好ましく用いる。表裏のバランスが良くなり、反りの少ない紙を作ることが出来る。
具体的には、2枚の紙を貼り合わせる場合には、紙の裏面同士を貼り合わせて、表裏を無くす。また4層等偶数の紙の場合も同様に、貼りあわせの中心から表裏が対称になるように貼り合わせる。また表裏のバランスから偶数の紙を貼り合わせることが好ましいが、記録媒体の厚みを調整する目的で、奇数の紙を積層する必要があるときは、反り等の影響の小さい中央にあまった紙を積層することが好ましい。
また、紙は、水により伸縮し形状が変化する材料であるため、樹脂層の水蒸気バリア性能という観点から、蒸着フィルム、金属箔が貼られることがある。
【0015】
(接着剤)
紙層と樹脂層の貼り合わせは接着剤を用いる。接着材料としては、一般的な接着剤で良く、例えば、天然高分子系樹脂、生分解樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、湿気硬化性樹脂、光硬化性樹脂、電子線硬化樹脂など紙とフィルムが接着する材料を用いても良い。
また、紙面には凹凸があり、フィルムを貼り合わせても、凹凸が吸収されないときは、接着剤で、紙面の凹凸を埋めることが可能であり、この方法を使用するときは、接着剤塗工直後は塗面が平滑であるが溶剤が揮発するときに塗面が凹凸になってしまうことがない無溶剤タイプの接着剤が好ましい。接着剤は支持層と記録層の貼り合せにも用いる。記録層は、記録領域の記録が読み書きできれば良いので支持層を中心にして両面に貼り合わせることもできる。
【0016】
(局所的凹凸)
ディスク状記録媒体に局所的凹凸を形成することで、支持層が薄くてもディスク全体の剛性を保持することができ、さらに支持層の一部に紙を使用しても、湿度による伸縮によりディスクを構成する層同士のずれによるディスクの反りを防ぐことができる。
ここで局所的凹凸の形状は、図2(a)に示すローレットと呼ばれるギザギザ形状が好ましく用いられるが、図2(b)(c)(d)に示すように線でも点線でも、部分的若しくは連続してつぶれた凹凸の形状になっていれば問題ない。
また局所的凹凸を形成する位置は、内径15mm、外径120mmのドーナツ形状のディスク状記録媒の非記録領域である。例えばブルーレイディスクであれば、直径44mm以下の、ディスクをプレイヤーにセットするための領域(以下クランピングエリアと呼ぶ)、あるいは直径119mmから120mmの外周部(以下外周25と呼ぶ)、CDであれば、直径46mm以下のクランピングエリア内、あるいは直径119mmから120mmの外周である。
【0017】
局所的凹凸はクランピングエリア内若しくは外周のいずか一方でもディスク状記録媒体の反りを低減する効果はあるが、より好ましくは、両方に局所的凹凸を形成した方が好ましい。
更に局所的凹凸を形成する面は、図1の記録層19が形成された面F、記録層19が形成されていない面Gのどちらか一方の面でよいが、反りの低減という目的では、両面F、Gにパターンを設けた方が効果的である。
ディスク状記録媒体の反りを低減させる目的で局所的凹凸を形成する面積を大きくした結果、ピットが形成されている記録領域1と、局所的凹凸が干渉しそうなとき、あるいは記録領域1と局所的凹凸の境目が少ない場合は、記録層19が形成されていない面Gのみに局所的凹凸を設けたほうが、局所的凹凸が記録領域1に影響を与えないので好ましい。
【0018】
また局所的凹凸を形成する前のディスク状記録媒体に反りが生じている場合は、反りの向きによって局所的凹凸を形成する面を変えるとより効果的に反りを低減させることが出来る。例えば、記録面Fを上にして凹に反っている場合、記録面F側に局所的凹凸を形成し、記録層19が形成されていない面Gに凹の場合は、記録層19が形成されていない面G側に局所的凹凸を形成した方がより効果的にディスク状記録媒体の反りを低減出来る。
通常プレス加工にて、局所的凹凸を形成する際、金型を加温せず常温で行うが、局所的凹凸の効果をより顕著なものにする場合は、金型を加温することがある。この場合、加温条件は100℃未満で行うことが好ましい。100℃以上に加温すると、紙中の水分が水蒸気となり、パブリングを起こすからである。
【0019】
また本発明者らは、前記のディスク状記録媒体が反るという課題を解決すべく鋭意検討を積み重ねた結果、非記録領域に記録領域を取り巻くように記録領域の内周と外周とに凹凸が形成された金型で0.1MPa以上の圧力を加えて局所的凹凸を形成する場合において極めてディスク状記録媒体に反りが小さくなることを見出した。
【0020】
(製法について)
本願発明のディスク状記録媒体の作製方法を以下に示す。
第一の方法は、局所的凹凸がディスク状記録媒体を構成する全層に形成されている場合であり、全ての層の積層が済んだディスク状記録媒体の非記録領域に局所的凹凸の形状を形成した金型でプレス加工し局所的凹凸の型を形成してディスク状記録媒体を作製する方法である(第1の製法)。
もう一方の方法は、支持層を構成する一部または全部の層に局所的凹凸が形成されている場合であり、支持層へ局所的凹凸を凹凸の形状を形成した金型でプレス加工し凹凸の型を形成し、凹凸の型が形成された支持層に少なくとも記録層、保護層を積層してディスク状記録媒体を作製する方法である(第2の製法)。
【0021】
(第1の製法)
次に図3に示すディスク状記録媒体の支持層18に紙層15があり、記録層19の非記録領域3の下層若しくは上層にある紙層15の非記録領域3にのみプレス加工等で局部的凹凸5が形成されているディスク状記録媒体についての第1の製法を以下に示す。
【0022】
まず図7(a)について、紙層15が、紙のシートまたはロール状原反の場合、プレス機を用いて、図4(B)に示すような、局部的凹凸5の形状が彫られた金型21を0.1MPa以上の圧力で押し当て、図7(b)に示すように紙のシートまたはロール状原反に局部的凹凸5を形成する。
【0023】
次に上記局所的凹凸5が形成された紙のシートまたはロール状原反の両面にそれぞれ局所的凹凸の凹凸部分が十分に隠れる程度の厚さに接着剤を塗工し硬化させる。
次に図7(c)に示すように、上記接着剤が塗工された紙シートまたはロール状原反のいずれか一方の面にポリカーボネートやエポキシ樹脂等からできた第2樹脂層13を貼り合わせる。
【0024】
また図7(c)の記録構成部27について、記録保持層11は、例えば、ポリカーボネートやエポキシ樹脂を使用し、インジェクション成形等で、例えば、図3(A)に示すようなディスク状記録媒体の形状に熱成形する。ここで、例えば、記録保持層11の上にUV硬化アクリル樹脂等を積層し、ピットをスタンパで転写して、UVを照射して作製してもよい。
次に記録保持層11のいずれか一方もしくは両面にアルミニウムまたは銀ITO合金等の金属または合金を蒸着もしくはスパッタにより成膜した反射層9を形成する。
【0025】
図7の27の形成方法は、第1の製法の図6(a)から図6(b)までの工程と同じである。すなわち、記録保持層11には、例えば、ポリカーボネートやエポキシ樹脂を使用し、インジェクション成形等で、例えば、図6(a)に示す内径15mm、外径120mmのドーナツ形状に熱成形し、その一方の面の上にアルミニウムまたは銀ITO合金等の金属または合金を蒸着もしくはスパッタにより成膜した反射層9を形成し、該反射層9を保護する為に該反射層9の上にポリカーボネートやエポキシ樹脂等からできたインジェクション成形品を保護層7として、接着剤を用いて貼り合わせて記録構成部27を形成する。
【0026】
次に上記紙シートまたはロール状原反のいずれか一方の面に第2樹脂層13が貼り合わされた面と上記記録構成部27の保護層7が貼り合わされていない面とを接着剤を用いて貼り合わせる。
【0027】
図7(d)の工程は、上記記録構成部27が貼り合わされたものを、内径が15mmで外径が120mmのドーナツ形状にプレス抜きして、図7(e)に示すようなディスク状記録媒体200を作製する。
【0028】
(第2の製法)
図1に示すディスク状記録媒体は、記録層19の前記非記録領域3を含み、かつ前記非記録領域3の上層及び下層にある、前記ディスク状記録媒体を構成する全層7〜17に、プレス加工等で局部的凹凸5が形成されている。このディスク状記録媒体についての製造方法を以下に詳細に記す。
【0029】
記録保持層11には、例えば、ポリカーボネートやエポキシ樹脂を使用し、インジェクション成形等で、例えば、図6(a)に示す内径15mm、外径120mmのドーナツ形状に熱成形する。
ここで、例えば記録保持層11の上層にUV硬化アクリル樹脂等を積層し、その上にピットをスタンパで転写し、UVを照射して硬化させてピットを作製してもよい。
【0030】
次に図6(a)の上にアルミニウムまたは銀ITO合金等の金属または合金を蒸着もしくはスパッタにより成膜した反射層9を形成する。ここで記録保持層11と反射層9を合わせて、記録層19と呼ぶ。
また前記反射層9を保護する為に前記反射層9の上にポリカーボネートやエポキシ樹脂等からできたインジェクション成形品を保護層7として、接着剤を用いて貼り合わせる。この接着剤は、支持層の貼り合わせにも用いることができる。
ここで記録層19と保護層7を合わせて記録構成部27と呼ぶ。
【0031】
一方、図6(c)に示す支持層18は、例えば、図1に示すような第1樹脂層17、紙層15、第2樹脂層13で構成されるような、樹脂または紙でできた層が単数または複数の層で構成される。ここで紙層の両面には紙層の保護及び紙の表面は粗く平滑性に欠けるので平滑性を向上させるため樹脂層があることが好ましい。
そこで、例えば、紙の表裏面にそれぞれアクリル系UV硬化樹脂等の接着剤を塗工し、ポリカーボネートフィルム等の表面が平滑なフィルムを貼り合わせて、紙層15の両面に第1樹脂層17,第2樹脂層13を形成して支持層18とする。
【0032】
続いて、図6(c)に示すように、記録層19の上層に保護層7が形成されたものと、支持層18を接着剤等で貼り合せる。
【0033】
更にプレス抜きを用いて、図6(d)に示す内径15mm、外径120mmのドーナツ形状に型抜きをする。
【0034】
次に図6(d)の非記録領域3に、凹凸の形状、例えば図2(a)〜(d)に示す局所的凹凸を形成するために、プレス機を用いて、図4(A)に示すように、局所的凹凸が彫られた金型21の中に内径15mm、外径120mmのドーナツ形状に型抜きされたものを入れ、図5に示すように0.1MPa以上の圧力を加え、局所的凹凸5を形成することにより、図6(e)に示すような、一方の面から他方の面まで追従する局所的凹凸5が設けられたディスク状記録媒体100が作製される。
【0035】
ここで、局所的凹凸5は上記プレス機を用いなくても、図6の(c)から(d)の工程、すなわち記録層19と支持層18を接着剤等で貼り合せたものを、プレス抜きで内径15mm、外径120mmのドーナツ形状に型抜する際に、ドーナツ状の金属プレスの表面に局所的凹凸の彫りを形成することで、図6(e)に示す局所的凹凸を形成するプレス工程を省略することもできる。
【0036】
またディスク状記録媒体に局所的凹凸5を形成する箇所は、情報の記録がされる記録領域の周辺の非記録領域3であり、例えばブルーレイディスクであれば、直径44mm以下のクランピングエリア内、あるいは直径119mmから120mmの外周、CDであれば、直径46mm以下のクランピングエリア内、あるいは直径119mmから120mmの外周である。
また局所的凹凸5はクランピングエリア内若しくは外周のいずか一方でもディスク状記録媒体の反りを低減する効果はあるが、より好ましくは、両方に局所的凹凸5を形成した方が好ましい。
プレス金型21としては、一方の面に対応して凹凸が設けられたものも使用できるが層の伸縮によるずれを抑えるためにはディスクの両面に対応して同じ凹凸を刻むことのできる金型21を用いディスクの両面に局所的凹凸5を形成するのが好ましい。
【実施例】
【0037】
以下に本発明の実施例を示す。
(実施例1)
【0038】
(紙層15の作製)
図1に示す支持層を構成する紙層15を形成するため紙の貼り合わせを行った。ここで紙の貼り合わせは、熱プレスにて、0.2mm厚のコート紙を4枚貼り合わせて、厚み0.8mmの紙を作製した。ここで、圧力0.5MPa,加熱温度は90℃、加熱時間1分、冷却温度20℃、冷却時間2分の条件で行った。
【0039】
(支持層18の作製)
次に図1に示す上記貼り合せた紙層15の表面は、表面形態が粗いため、表面の平滑性を得る目的で、紙層15の両面にそれぞれ、アクリル系UV硬化樹脂を、ワイヤーバーで30μmの厚さに塗工して、0.15mmのポリカーボネートフィルム(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ユーピロンFE−2000)をラミネートし、UVを照射して紙層上に第1樹脂層13、第2樹脂層17を作製して支持層18を得た。
【0040】
(記録層19の作製)
図1に示す、ドーナツ形状(内径22mm、外径120mm)に打ち抜いた紫外線硬化型樹脂フィルムを、ゴムパッドで圧着することにより記録保持層11の上に貼り合せた後、紫外線硬化型樹脂フィルムに、ROMの信号が入ったスタンパを圧着し、紫外線を照射して硬化させ、ピットとなる凹凸を転写した。その上に、厚さ20nmの銀合金をスパッタすることで反射膜9を形成し、記録層19とした。
【0041】
(記録構成部27の作製)
さらに反射膜9の上に、保護層7として、厚さ80μmのポリカーボネートフィルムに厚さ20μmの粘着剤があらかじめラミネートされたものを介して貼り合わせて記録構成部27を形成した(図6(c))。ここでROM信号の変調方式は1−7変調を用い、トラックチッピ0.32μm、線密度11.7nm/bitとした。
【0042】
(打ち抜き)
上記支持層18の一方の面にウレタン系接着剤を20μm塗工し、上記記録構成部27の保護層7とは反対の面を貼り合せ、円盤状刃型で直径12cmのディスク状に打ち抜いた(図6(d))。
【0043】
(局所的凹凸5の作製)
さらに上記ディスク状に打ち抜かれたディスクは、ディスク作製時のアクリル系UV硬化樹脂の硬化収縮等により、ディスク自体が反っていた為、記録層19の非記録領域5を含み、かつ非記録領域5の上層及び下層にある、前記ディスク状記録媒体を構成する全層7〜17に局所的凹凸5が形成されるように、プレス機(日本オートマチックマシン株式会社製 HYP2000)用いて、リブ形成金型に0.1MPaの圧力で1分間プレス加工して局所的凹凸5を形成し、ディスク状記録媒体100を形成した(図6(e))。
ここで、リブ形成領域は外周25に、ピッチ2mmで深さ0.2mmのローレットパターンのリブを形成した。
【0044】
(ディスク状記録媒体の評価)
次に上記の製法で作製されたディスク状記録媒体100について、80℃・85%条件に4日間、80℃20%に1日間、23℃50%に3日間の計8日間の環境試験を行った結果、ディスク状記録媒体100に反りは発生せず、ディスク状記録媒体100をドライブ装置(パルステック工業(株)製、DDU−1000)を用いて再生したところ、安定して再生が可能であった。
(実施例2)
【0045】
(支持層18作製)
図1に示す紙層15として、厚さ0.8mmのコート紙を用い、該紙層15の両面にそれぞれ湿気硬化型ウレタン樹脂を、120℃のロールコーターで50μm厚に塗工し、更に第1樹脂層17,第2樹脂層13として0.1mmのポリカーボネートフィルム(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ユーピロンFE−2000)を貼り合せて支持層18を形成した。
【0046】
(記録構成部27の作製)
図1に示す記録層19は、記録保持層11には、0.85mmのポリカーボネートフィルム(帝人化成(株)製、キャストフィルム)を用いて、一方の面にアクリル系UV硬化樹脂を塗工し、ブルーレイのピットに対応する型が形成された版に押し付け、UVを照射し、記録保持層11にピットを転写、形成した。
また上記記録保持層のピットが形成された面に、厚さ20nmの銀合金をスパッタすることで反射層9を形成し、記録層19を作製した。
さらに反射膜9の上に、保護層7として、厚さ80μmのポリカーボネートフィルムに厚さ20μmの粘着剤があらかじめラミネートされたものを介して貼り合わせて記録構成部27を形成した(図6(b))。
(ラミネート)
【0047】
上記支持層18の一方の面にウレタン系接着剤を20μm塗工し、上記記録構成部27の保護層7とは反対の面を貼り合せた(図6(c))。
【0048】
(打ち抜き)
上記記録構成部27が貼り合されたものを、ブルーレイディスクの形状に打ち抜いた(図6(d))。
【0049】
(凹凸の形状5の作製)
次に上記ブルーレイディスクの形状に打ち抜かれたものをリブ形成金型に入れ、金型温度を80℃に加温し、0.1MPaの圧力で、加熱1分間、冷却1分間の条件でプレスしてディスク状記録媒体100を形成した(図6(e))。
ここでリブの形状は、図2(a)に示すようなローレット状のリブである。またリブの形成領域は、ディスク状記録媒体100の非記録領域3であり、直径15〜17mmの位置と直径が119mm〜120mmの位置に、ピッチ2mmで深さ0.1mmのローレットパターンのリブを形成した。
【0050】
(ディスク状記録媒体100の評価)
次に上記の製法で作製されたディスク状記録媒体100について、80℃・85%条件に4日間、80℃20%に1日間、23℃50%に3日間の計8日間の環境試験を行った結果、ディスク状記録媒体に反りは発生せず、ディスク状記録媒体100をドライブ装置(パルステック工業(株)製、DDU−1000)を用いて再生したところ、安定して再生が可能であった。
(実施例3)
【0051】
局所的凹凸5を形成していないこと以外は、実施例2と同様の方法でディスク状記録媒体を作製した。
【0052】
(記録ディスクの評価)
加工直後は、比較的ディスク状記録媒体には反りが少なく、ブルーレイのレコーダー装置でディスク状記録媒体の記録内容を読み取ることが出来たが、実施例2と同様の環境試験を行ったところ、反りが顕著になり、ディスク状記録媒体をドライブ装置(パルステック工業(株)製、DDU−1000)を用いて再生したところ、ドライブに設置出来ないほど反っており、再生することが出来なかった。
(実施例4)
【0053】
市販されている、ポリカーボネートからなるコンパクトディスク(CD)の直径118mm以上の外周に、直径0.5mm、深さ0.2mmの円錐状のポッチを、1mm間隔でリブを形成した。ここでリブを形成するプレス加工は80℃、1MPaで行った。
【0054】
(ディスク状記録媒体の評価)
上記条件で作製されたCDを90℃のオーブンに4日間保管したところ、該CDに反りは発生せず、該CDをドライブ装置(パルステック工業(株)製、DDU−1000)を用いて再生したところ、安定して再生が可能であった。
しかし、リブが形成されていない、通常のCDを90℃のオーブンに4日間保管したところ該CDに反りが発生し、ドライブ装置(パルステック工業(株)製、DDU−1000)を用いて再生したところ、再生することが出来なかった。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明により製造方法(1)で作製された記録媒体の構成を示す図
【図2】本発明により記録媒体に形成された局所的凹凸の形状を示す図(図1Hの局所的凹凸5の拡大図)
【図3】本発明により製造方法(1)で作製された記録媒体の構成を示す図
【図4】本発明によるディスク状記録媒体の断面図
【図5】本発明によるプレスによる局所的凹凸の形成方法を示す図
【図6】第1の製法によるディスク状記録場体の製造工程を示す図
【図7】第2の製法によるディスク状記録場体の製造工程を示す図
【符号の説明】
【0056】
1・・・記録領域
3・・・非記録領域
5・・・局所的凹凸
7・・・保護層
9・・・反射層
11・・・記録保持層
13・・・第2樹脂層
15・・・形状保持層
17・・・第1樹脂層
18・・・支持層
19・・・記録層
21・・・金型
23・・・クランピングエリア
25・・・外周
27・・・記録構成部
100・・・製法1のディスク状記録媒体
200・・・製法2のディスク状記録媒体
F・・・記録面
G・・・記録層が形成されていない面
H・・・局所的凹凸5の切抜部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護層で覆われた記録層と
前記記録層および保護層を支持する単数または複数の樹脂または紙を材料とした層で構成された支持層を備えたディスク状記録媒体において、
前記記録層表面は記録領域と当該記録領域の周辺部にある非記録領域から構成され、
前記支持層を構成する一部または全部の層について
前記非記録領域に対応する領域は局所的凹凸を備えている
ことを特徴とする前記ディスク状記録媒体。
【請求項2】
保護層で覆われた記録層と
前記記録層および保護層を支持する単数または複数の樹脂または紙を材料とした層で構成された支持層を備えたディスク状記録媒体において、
前記記録層表面は記録領域と当該記録領域の周辺部にある非記録領域から構成され、
ディスク状記録媒体を構成する全ての層が前記非記録領域に対応する領域でディスク状記録媒体の一方の面から他方の面まで追従する局所的凹凸を備えている
ことを特徴とする前記ディスク状記録媒体。
【請求項3】
請求項1記載のディスク状記録媒体の作製方法であって、
前記支持層を構成する層の一部または全部を
凹凸の形状を形成した金型でプレス加工し局所的な凹凸の型を形成し、
必要に応じて支持層を構成する残りの層を積層して支持層とし、
凹凸の型が形成された前記支持層に、
さらに記録層と保護層を積層することを含むディスク状記録媒体の作製方法。
【請求項4】
請求項2記載のディスク状記録媒体の作製方法であって、
保護層で覆われた記録層と
前記記録層および保護層を支持する単数または複数の樹脂または紙を材料とした層で構成された支持層を備えたディスク状記録媒体を作製し、
凹凸の形状を形成した金型でプレス加工し局所的凹凸を形成することを含む前記ディスク状記録媒体の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−77749(P2008−77749A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255496(P2006−255496)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】