説明

ディスク装置及びディスク装置のブレーキ制御方法

【課題】フォーカスオフやトラッキングオフ時であっても、ディスクが正確に停止した状態でイジェクト動作に移行するようにしたディスク装置を提供する。
【解決手段】光ピックアップのサーボが起動してフォーカス及びトラッキングの自働調整が完了するまでのスピンドルモータの強制加速時間を計測し、強制加速時間からスピンドルモータのブレーキ制御時間を算出する算出部と、スピンドルモータを停止させる際に、光ピックアップがフォーカスオフのときにはブレーキ制御時間を経過するまでスピンドルモータにブレーキ電圧を印加し、フォーカスオンのときには光ピックアップで読み取った情報を検出してスピンドルモータにブレーキをかけ、ブレーキ期間がブレーキ制御時間に満たない場合はブレーキ制御時間を経過するまでブレーキ電圧を印加するブレーキ制御部と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CDやDVD等の光ディスクに記録された情報を再生可能なディスク装置に係り、特にスピンドルモータのブレーキ制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載用等のディスク装置は、ディスクの再生が終了した後、イジェクトボタンを操作することでディスクを装置本体から取り出すようにしている。このとき、ディスクを回転駆動するスピンドルモータが停止し、そのあとでディスクが取り出される。ディスクの回転を停止する際、一般にはスピンドルモータにブレーキをかけてディスクの回転速度を低下させ、再生信号波形(RF信号)のパルス幅を検出してスピンドルモータを完全に停止させるようにしている。
【0003】
ディスクの回転速度が低下するとRF信号のパルス幅が長くなるため、複数種類のパルス幅のうち、最大周期を有するパターン(CDであれば11T、DVDであれば14T)のパルス幅(最長パターン信号Tmax)を計測することによって、ディスクの回転速度に比例したデータを得ることができる。したがって、最長パターン信号Tmaxの長さが所定値を越えたときにディスクが停止したと判断することができる。
【0004】
一方、CDでは情報がEFM(Eight to Fourteen Modulation)形式で記録されており、再生したRF信号を2値化し、2値化したEFM信号をデコードするようにしている。また再生したRF信号からトラッキングエラー信号とフォーカスエラー信号を生成し、光ピックアップのフォーカス及びトラッキング制御を行うようにしている。
【0005】
このように、再生したEFM信号のTmaxを確認しながらスピンドルモータのブレーキ制御を行う方式では、ディスクの再生中にイジェクト操作がなされると、EFM信号を確認しながらスピンドルモータのブレーキ制御を行い、ディスクを停止させてから排出動作を行う。しかしながら、ブレーキ制御を行う際に、フォーカス制御やトラッキング制御が不十分な場合は、EFM信号を正確に再生することができない。このため、最長パターン信号(Tmax)が検出されず、ブレーキ制御が行えなかったり、ブレーキが十分にかからないことがある。
【0006】
つまり、ジャストフォーカスしていないとき(フォーカスオフ時)は、EFM信号が生成されないためスピンドルモータのブレーキ制御が行えなくなる。またフォーカス制御が十分(フォーカスオン)であってもトラッキング制御が不十分のとき(トラッキングオフ時)は、EFM信号を誤検出してブレーキ完了と判断してしまい、ディスクが十分に減速されないままイジェクト動作に移行することがある。このため、ディスクが回転したままイジェクト動作に移行してしまい、ディスクと機構部品の干渉により擦れ音が発生する。また擦れにより部品が磨耗することがあった。
【0007】
特許文献1には、スピンドルモータの回転数が所定値に低下するまでの時間を測定してブレーキ時間を決定するようにしたディスクプレーヤが開示されている。また特許文献2には、ディスクのウォブル信号からディスクの回転速度を読み取ってスピンドルモータの停止制御を行い、ウォブル信号が読み取れない場合は、ブレーキコマンドを送って所定時間の経過後に強制停止処理を行う光ディスク装置について開示されている。
【0008】
しかしながら、フォーカスオフやトラッキングオフ時のブレーキ制御については記載されておらず、ディスクのブレーキ時間が正確でなかったり、強制停止処理までの時間設定が正確でない場合は、ディスクが回転している状態でイジェクト動作が行われ、ディスクと機構部品の干渉により擦れ音が発生し、ユーザに不快感を与えることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−212998号公報
【特許文献2】特開2007−287224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のディスク装置では、ディスクが停止せず回転状態のままイジェクト動作に移行することがあり、ディスクと機構部品が干渉して擦れ音を生じたり、部品の磨耗が発生することがあった。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みて、フォーカスオフやトラッキングオフ時であっても、ディスクが正確に停止した状態でイジェクト動作に移行するようにしたディスク装置及びブレーキ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の本発明のディスク装置は、光ディスクを回転駆動するスピンドルモータと、前記光ディスクに記録された情報を読み取り可能な光ピックアップと、前記光ピックアップの少なくともフォーカス制御及びトラッキング制御を行うサーボ制御部と、前記光ピックアップのサーボが起動してフォーカス及びトラッキングの自働調整が完了するまでの前記スピンドルモータの強制加速時間を計測し、前記強制加速時間から前記スピンドルモータのブレーキ制御時間を算出する算出部と、前記スピンドルモータを停止させる際に、前記光ピックアップがフォーカスオフのときには前記ブレーキ制御時間を経過するまで前記スピンドルモータにブレーキ電圧を印加し、フォーカスオンのときには前記光ピックアップで読み取った情報を検出して前記スピンドルモータにブレーキをかけ、ブレーキ期間が前記ブレーキ制御時間に満たない場合は前記ブレーキ制御時間を経過するまで前記ブレーキ電圧を印加して前記スピンドルモータを停止させるブレーキ制御部と、を具備したことを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の本発明のディスク装置のブレーキ制御方法は、光ディスクを回転駆動するスピンドルモータと、前記光ディスクに記録された情報を読み取り可能な光ピックアップを備え、サーボ制御部によって前記光ピックアップの少なくともフォーカス制御及びトラッキング制御を行い、前記光ピックアップのサーボが起動してフォーカス及びトラッキングの自働調整が完了するまでの前記スピンドルモータの強制加速時間を計測し、前記強制加速時間から前記スピンドルモータのブレーキ制御時間を算出し、前記スピンドルモータを停止させる際に、前記光ピックアップがフォーカスオフのときには前記ブレーキ制御時間を経過するまで前記スピンドルモータにブレーキ電圧を印加し、フォーカスオンのときには前記光ピックアップで読み取った情報を検出して前記スピンドルモータにブレーキをかけ、ブレーキ期間が前記ブレーキ制御時間に満たない場合は前記ブレーキ制御時間を経過するまで前記ブレーキ電圧を印加して前記スピンドルモータを停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のディスク装置では、 フォーカスオフやトラッキングオフの状態であってもスピンドルモータが正確に停止したあとでディスクを排出することができるため、イジェクト時にディスクと機構部品が干渉して擦れ音を生じたり、部品の磨耗やディスクの損傷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るディスク装置の構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態におけるスピンドルモータの強制加速時間を説明する波形図。
【図3】同実施形態におけるフォーカスオフ時のブレーキ制御を説明する波形図。
【図4】同実施形態におけるトラッキングオフ時のブレーキ制御を説明する波形図。
【図5】同実施形態に係るディスク装置のブレーキ制御動作を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明のディスク装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、ディスク装置100の構成を示すブロック図であり、CDの再生装置を例に示している。図1において、ディスクDは、ターンテーブル10に載置されスピンドルモータ11によって一定の線速度で回転される。ディスクDからの情報の読み取りは、光ピックアップ12によって行われ、ディスクDにレーザ光を照射し、その反射光によってディスクDに記録されているデータを読み出す。
【0018】
光ピックアップ12は、スレッドモータ13によってディスクDの半径方向に移動制御され、再生位置を決定する。サーボ制御部14は、後述するシステム制御部25等から供給される制御信号に応じて、スピンドルモータ11の回転を制御する。またサーボ制御部14は、光ピックアップ12のトラッキング制御、フォーカス制御、及びスレッドモータ12の駆動制御を行う。スレッドモータ12は、ディスクDがターンテーブル10に装填され再生状態になると光ピックアップ12をディスクDの径方向に移動させる役割を有する。
【0019】
RFアンプ15からは、光ピックアップ12によって読み取ったデータに対応するEFM信号(RF信号)が出力される。またRFアンプ15は、RF信号からフォーカスエラー信号Sfとトラッキングエラー信号Stを分離して、サーボ制御部14に送る。サーボ制御部14は、トラッキングエラー信号Stに基づいてトラッキングアクチュエータ16を制御し、光ピックアップ12のトラッキング方向の移動を制御する。またサーボ制御部14は、フォーカスエラー信号Sfに基づいてフォーカスアクチュエータ17を制御し、光ピックアップ12からの光ビームが、ディスクD上にジャストフォーカスするように制御する。これにより、データの再生を正確に行うことができる。
【0020】
一方、RFアンプ15からのEFM信号は、2値化回路18に供給され、2値化回路18は、EFM信号を2値化(デジタル化)してデジタル信号処理部19に供給する。デジタル信号処理部19は、デジタル化されたEFM信号の復調処理と誤り訂正処理を行い、信号処理の過程で得られたデータをRAM20に格納する。またデジタル信号から制御信号を分離し、分離した制御信号をサーボ制御部14及び後述するシステム制御部25に送る。
【0021】
オーディオデコーダ21は、オーディオデータを復号化処理し、復号化処理の過程で得られたデータをRAM22に格納する。オーディオデコーダ21の出力はオーディオ出力部23に供給される。オーディオ出力部23は、D/A変換器を含みデジタルオーディオ信号をアナログオーディオ信号に変換してスピーカ24に出力する。
【0022】
システム制御部25は、CPU、ROM、RAM等を含むマイクロコンピュータであり、ROMに格納されたプログラムに従ってディスク装置100の機構系及び信号処理部の動作を制御する。またシステム制御部25には、メモリ26、表示部27、操作部28が接続されている。
【0023】
メモリ26には、システム制御部25の制御のもとに生成された各種のデータ(後述)が格納される。表示部27は、例えば液晶パネルで構成され、現在再生中のトラック番号や再生経過時間等を表示する。また操作部28は、リモートコントローラ等の操作部であり、再生、停止、早送り、イジェクト等の各種の操作を行う複数のキーを備えている。
【0024】
ディスク装置100は、ディスクDの再生途中又は再生が終了した後、操作部28のイジェクトボタンを操作することでディスクDを装置本体から排出することができる。排出機構の詳細については省略するが、例えば、本体シャーシの前方部の上面にディスクDを搬送(搬入及び排出)する搬送ローラを設け、搬送ローラの回転によってディスクDを排出する。尚、スレッドモータ13は、ディスクDがターンテーブル10に装填され再生状態になると光ピックアップ12をディスクDの径方向に移動させる役割を有するが、それ以外にディスクDの搬入・排出時に搬送ローラを駆動してディスクDをターンテーブル10へ搬入したり、装置本体から排出する役割も有する。
【0025】
ディスクDを排出するときは、ディスクDを回転駆動するスピンドルモータ11が停止し、そのあとでディスクDが排出される。ディスクDの回転を停止する際、システム制御部25はサーボ制御部14に停止コマンドを送り、サーボ制御部14は、スピンドルモータ11にブレーキをかけてディスクDの回転速度を低下させ、再生信号波形(RF信号)のパルス幅を検出してスピンドルモータ11を停止させる。したがって、システム制御部25とサーボ制御部14は、スピンドルモータ11を停止させる際のブレーキ制御部を構成する。
【0026】
ディスクDの回転速度が低下するとRF信号のパルス幅が長くなるため、最大周期を有するパターン(CDであれば11T、DVDであれば14T)のパルス幅(最長パターン信号Tmax)を計測することによって、ディスクの回転速度に比例したデータを得ることができ、最長パターン信号Tmaxの長さが所定値を越えたとき(例えばディスクDの回転数が1/20程度に低下したとき)に、システム制御部25はディスクDが停止したものと判断し、停止コマンドの送信を停止する。
【0027】
ところで、再生したEFM信号のTmaxを確認しながらスピンドルモータ11のブレーキ制御を行う方式では、ディスクDの再生中にイジェクト操作がなされると、EFM信号を確認しながらスピンドルモータのブレーキ制御を行うが、ブレーキ制御されたときに、フォーカス制御やトラッキング制御が不十分な場合は、EFM信号を正確に読み取ることができない。
【0028】
例えば、フォーカスオフ時は、EFM信号が生成されないためスピンドルモータのブレーキ制御が一切行えない。またフォーカスオンしていてもトラッキングオフ時は、EFM信号を誤検出してブレーキ完了と判断してしまい、ディスクが十分に減速されないままイジェクト動作に移行する場合がある。
【0029】
そこで本発明では、以下に述べるような制御を行うことで、ディスクDが完全に停止した後でイジェクト動作に移行するようにしている。尚、以下の説明では、フォーカス制御が正常な状態をフォーカスオンと言い、フォーカス制御が不十分な状態をフォーカスオフと言う。同様にトラッキング制御が正常な状態をトラッキングオンと言い、トラッキング制御が不十分の状態をトラッキングオフと言う。
【0030】
システム制御部25は、フォーカス制御部14によって光ピックアップ12のサーボが起動されると、起動してから正常なフォーカス状態に引き込み、かつトラッキング制御が正常に行われるまで、つまりサーボが起動してフォーカスとトラッキングの自働調整が完了するまでのスピンドルモータ11の強制加速時間T1を計測する。強制加速時間T1は、サーボが起動して、スピンドルモータが回転を開始し定常の回転速度に到達するまでの間に、ディスクDの回転を加速している時間である。尚、加速の途中でディスク停止要求があった場合は、その時点で強制加速時間の計測を停止する。
【0031】
図2は、強制加速時間T1を示す波形図である。図2の(a)はトラッキング制御信号、(b)はフォーカス制御信号、(c)はスピンドルモータのドライブ信号を示し、タイミングt1でサーボが起動したことを示している。フォーカス状態に引き込みトラッキング制御がかかったタイミングをt2とすると、t1からt2までの期間T1がスピンドルモータ11の強制加速時間である。
【0032】
次にシステム制御部25は、スピンドルモータ11の強制加速時間T1から、スピンドルモータ11のブレーキ制御時間T2を算出する。ブレーキ制御時間T2は、スピンドルモータ11を停止する際に、ブレーキ電圧(逆方向の電圧)をかけてブレーキをかける時間であり、経験則に基づいて上記強制加速時間T1の70%程度の時間に設定される。計測した強制加速時間T1と、ブレーキ制御時間T2は、メモリ26に格納される。
【0033】
ディスク装置100の環境温度が低温時はスピンドルモータ11のブレーキが効き過ぎる傾向にあるため、強制加速時間T1の約50%程度の時間に設定すると良い。尚、システム制御部25は、強制加速時間T1を計測しブレーキ制御時間T2を算出する算出部を構成する。
【0034】
そして、ディスクDの停止要求があると、システム制御部25は、サーボ制御部14に停止コマンドを送り、サーボ制御部14はスピンドルモータ11にブレーキ電圧(逆電圧)を印加してブレーキ制御を行う。またサーボ制御部14は、光ピックアップ12からのRF信号を用いてフォーカス状態を判別し、フォーカスオンか、フォーカスオフかを判断する。
【0035】
フォーカスオンであれば、通常のブレーキ処理を行う。通常のブレーキ処理では、再生したEFM信号の最長パターン信号Tmaxを計測し、Tmaxの長さが所定値を越えたときに、システム制御部25はディスクDが停止したものと判断し、スピンドルモータ11を停止させる。一方、フォーカスオフの状態では、通常のブレーキ処理は実行できないため、強制ブレーキモードに移行し、前述したブレーキ制御時間T2を経過するまで逆電圧を印加してスピンドルモータ11を停止させる。
【0036】
図3は、フォーカスオフ時のスピンドルモータ11のブレーキ制御を示す波形図である。
【0037】
図3の(a)は従来のスピンドルモータのドライブ波形を示し、(b)は本発明のスピンドルモータ11のドライブ波形を示す。タイミングt3でシステム制御部25からサーボ制御部14に停止コマンドが送られたとすると、従来の場合、フォーカスオフ状態ではブレーキ制御がかからず、ディスクDは回転したそのままイジェクトされることになる。
【0038】
これに対し本発明では、イジェクト操作時にフォーカスオフと判断した場合、サーボ制御部14は、ブレーキ制御時間T2だけスピンドルモータ11に逆電圧を印加しブレーキをかける。したがって、図3(c)で示すようにディスクDが回転を停止したあとイジェクト動作が行われる。
【0039】
一方、イジェクト操作時にフォーカスオンであっても、トラッキングオフ時には通常のブレーキ処理を行い、Tmaxの長さを監視してスピンドルモータ11を停止させる。トラッキングオフ時には、Tmaxが変動する可能性があるため、通常のブレーキ処理を終了した時間がブレーキ制御時間T2よりも短い場合は、強制ブレーキモードに切り替え、ブレーキ制御時間T2を経過するまで、つまり不足した時間分だけスピンドルモータ11に逆電圧を印加してブレーキ処理を行う。
【0040】
図4は、フォーカスオン、トラッキングオフ時のスピンドルモータ11のブレーキ制御を示す波形図である。
【0041】
図4の(a)は従来のスピンドルモータのドライブ波形を示し、(b)は本発明のスピンドルモータ11のドライブ波形を示す。タイミングt3で停止コマンドが送られたとする。従来の場合、通常のブレーキ処理が行われるが、トラッキングオフのためEFM信号を正確に読み取ることができない。このためブレーキ期間T3が短くなってしまい、ブレーキが早めに解除されディスクDが回転したそのままイジェクトされることがある。
【0042】
これに対し本発明では、イジェクト操作時にフォーカスオンのときは、通常のブレーキ処理によるブレーキ期間T3を監視し、ブレーキ期間T3がブレーキ制御時間T2よりも短い場合は、不足時間T0(=T2−T3)の期間だけさらにスピンドルモータ11に逆電圧を印加しブレーキをかける。したがって、ブレーキ制御時間T2に相当する時間だけ強制的にブレーキをかけて停止させることができる。したがって、図4(c)で示すようにディスクDが回転を停止したあとイジェクト動作が行われる。
【0043】
こうして、フォーカスオフでEFM信号が取得できない場合でも十分にディスクDの回転を減速して停止させることができる。またフォーカスオンでトラッキングオフのときは、スピンドルモータ11のブレーキが早めに解除されても、強制ブレーキモードに移行してブレーキ量を補えるため、ディスクDを十分に減速して停止させることができる。
【0044】
ブレーキ制御時間T2は、スピンドルモータ11の加速時間T1を計測し、その計測結果をもとに算出するため、ブレーキ制御時間T2を適切に設定することができ、ブレーキ不足をなくし、ブレーキ過多による逆回転を防止することができる。またシステム制御部25は、ブレーキ制御時間T2を経過した後にイジェクト動作が開始するようにディスク排出機構に指示を出し、スピンドルモータ11が正確に停止したあとでディスクDを排出するように制御する。
【0045】
図5は、スピンドルモータ11のブレーキ処理の動作を説明するフローチャートである。図5においてS0は、ブレーキ処理開始ステップであり、ステップS1では、計測した強制加速時間T1をもとに算出したブレーキ制御時間T2をセットする。ステップS2では、ブレーキを開始し、ステップS3ではフォーカスオフか否かを判断する。フォーカスオフであればステップS4の強制ブレーキ処理に移行し、スピンドルモータ11に逆電圧を印加する。
【0046】
ステップS3でフォーカスオンと判断した場合は、ステップS5で通常のブレーキ処理を行う。ステップS6では通常のブレーキ処理を終了したか否かを判断し、終了した場合はステップS7に進む。
【0047】
ステップS7では、ブレーキ制御時間T2を経過したか否かを判断する。即ち、強制ブレーキモードではブレーキ制御時間T2に達するまでブレーキをかけ続ける。また通常のブレーキ処理を終了してもトラッキングオフの場合は、ブレーキが不十分の状態でブレーキを解除することがあるため、ブレーキ制御時間T2に達していない場合は、ステップS4に戻ってブレーキ制御時間T2に達するまでブレーキをかける。こうしてブレーキ制御時間T2を経過したあと、ステップS8でブレーキ処理を終了し、ステップS9でサーボ停止処理を行い、ステップS10で終了する。このあと、ディスクDはイジェクトされる。
【0048】
このように本発明の実施形態では、フォーカスオフやトラッキングオフの状態であってもスピンドルモータが正確に停止したあとでディスクDを排出するため、イジェクト時にディスクと機構部品が干渉して擦れ音を生じたり、部品の磨耗を低減することができる。またディスクの損傷を低減することができる。
【0049】
尚、本発明の実施形態は、以上説明した構成に限定されるものではない。例えば、複数のトレイにディスクを収納して、いずれか1枚のディスクを再生するようにした収納型ディスク装置に適用することができる。またCDプレーヤに限らずDVDプレーヤに適用することもできる。また特許請求の範囲を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0050】
100…ディスク装置
D…ディスク
10…ターンテーブル
11…スピンドルモータ
12…光ピックアップ部
13…スレッドモータ
14…サーボ制御部
15…RFアンプ
16…トラッキングアクチュエータ
17…フォーカスアクチュエータ
18…2値化回路
19…デジタル信号処理部
20,22…RAM
21…オーディオデコーダ
23…オーディオ出力部
24…スピーカ
25…システム制御部
26…メモリ
27…表示部
28…操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクを回転駆動するスピンドルモータと、
前記光ディスクに記録された情報を読み取り可能な光ピックアップと、
前記光ピックアップの少なくともフォーカス制御及びトラッキング制御を行うサーボ制御部と、
前記光ピックアップのサーボが起動してフォーカス及びトラッキングの自働調整が完了するまでの前記スピンドルモータの強制加速時間を計測し、前記強制加速時間から前記スピンドルモータのブレーキ制御時間を算出する算出部と、
前記スピンドルモータを停止させる際に、前記光ピックアップがフォーカスオフのときには前記ブレーキ制御時間を経過するまで前記スピンドルモータにブレーキ電圧を印加し、フォーカスオンのときには前記光ピックアップで読み取った情報を検出して前記スピンドルモータにブレーキをかけ、ブレーキ期間が前記ブレーキ制御時間に満たない場合は前記ブレーキ制御時間を経過するまで前記ブレーキ電圧を印加して前記スピンドルモータを停止させるブレーキ制御部と、
を具備したことを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記強制加速時間をT1としたとき、前記強制加速時間T1に所定の比率を乗算して前記ブレーキ制御時間T2(T2<T1)を算出することを特徴とする請求項1記載のディスク装置。
【請求項3】
前記ブレーキ制御部は、前記ディスクのイジェクト要求があったとき、前記ブレーキ制御時間を経過したあとに前記ディスクの排出を指示することを特徴とする請求項1記載のディスク装置。
【請求項4】
光ディスクを回転駆動するスピンドルモータと、前記光ディスクに記録された情報を読み取り可能な光ピックアップを備え、
サーボ制御部によって前記光ピックアップの少なくともフォーカス制御及びトラッキング制御を行い、
前記光ピックアップのサーボが起動してフォーカス及びトラッキングの自働調整が完了するまでの前記スピンドルモータの強制加速時間を計測し、
前記強制加速時間から前記スピンドルモータのブレーキ制御時間を算出し、
前記スピンドルモータを停止させる際に、前記光ピックアップがフォーカスオフのときには前記ブレーキ制御時間を経過するまで前記スピンドルモータにブレーキ電圧を印加し、
フォーカスオンのときには前記光ピックアップで読み取った情報を検出して前記スピンドルモータにブレーキをかけ、ブレーキ期間が前記ブレーキ制御時間に満たない場合は前記ブレーキ制御時間を経過するまで前記ブレーキ電圧を印加して前記スピンドルモータを停止させることを特徴とするディスク装置のブレーキ制御方法。
【請求項5】
前記強制加速時間をT1としたとき、前記強制加速時間T1に所定の比率を乗算して前記ブレーキ制御時間T2(T1>T2)を算出することを特徴とする請求項4記載のディスク装置のブレーキ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−282690(P2010−282690A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135276(P2009−135276)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(504113008)東芝アルパイン・オートモティブテクノロジー株式会社 (110)
【Fターム(参考)】