説明

ディスク装置及び異常診断方法

【課題】ハードウェア及びソフトウェアの状態遷移を示す情報を用いてエラー発生の原因を解析できるようにしたディスク装置を提供する。
【解決手段】ディスクをターンテーブルに装填するとともに筐体から排出する搬送機構と、ターンテーブルに装填されたディスクを回転駆動しディスクの再生処理を行う信号処理部と、筐体内でのディスクの状態を検出する検出部と、規定したプログラムに従って搬送機構を含む機構系及び信号処理部の動作を制御するシステム制御部と、複数の記憶領域を有しプログラムの遷移及び検出部の検出結果を表すソフトウェア・ハードウェアの状態遷移情報を複数の記憶領域に循環的に保存するRAMと、エラー発生に応答してRAMから読み出した状態遷移情報をエラー解析用の診断情報として記憶する不揮発性メモリと、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディスク装置に係り、特にディスクの異常挿入や異型ディスクの挿入等によるエラー発生時の問題解析や診断を可能にしたディスク装置及び異常診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載用等のディスク装置は、筐体の前面に挿入口(スリット)を設け、CD(コンパクト・ディスク)等のディスクを挿入口から挿入すると、ディスクは筐体内部に設けた搬送機構によってターンテーブルに向けて搬入されるようになっている。このようなディスク装置では、挿入口から挿入されたディスクを光学センサで検出し、この検出結果を受けて搬送機構が始動する。
【0003】
また複数の光学センサを用いて、ディスクが正常に搬入されたか、或いは正規寸法のディスクが搬入されたか否かの判別を行い、規格(例えば12cm)よりも直径の小さいディスクや、カード状のディスク等、異型ディスクが挿入されたときは、挿入口から強制的に排出して誤挿入を防止している。
【0004】
つまり誤挿入防止機能を備えたディスク装置では、複数の光学センサの状態や、ディスクを挿入してローディンするまでの時間を監視し、通常の12cmディスクが挿入された時には起こり得ない状態や、規定外のローディング時間を検出した場合に、ディスクを排出し筐体内部への異物の挿入を防止している。
【0005】
また従来のディスク装置では、エラー発生時のディスク装置の状態を不揮発性メモリに記憶しておき、問題発生時に不揮発性メモリに記憶した情報を読み出し、エラー発生の原因を把握できるようにしている。不揮発性メモリには、例えば異型ディスクが挿入されたときの光学センサの検出結果等が記憶され、診断情報として使用する。
【0006】
しかしながら、従来のディスク装置では、不揮発性メモリの診断情報を読み取ることでエラー発生時の状態を把握することができても、なぜエラーが発生したかという根本原因を解明することができないため、解析に難航することが多々ある。
【0007】
市場で発生する問題に関しては、使用したディスクや、どのような操作をしたか等の詳細内容をユーザにヒアリングすることは少なく、またユーザに起因する原因以外でエラーが発生することもあり、ユーザから苦情があった場合に、根本原因を知ることは難しい。
特に、どのような過程を経てエラーに至ったかということが分からないため、診断情報を確認しても根本原因やエラー発生のメカニズムを解明することは困難である。また市場では問題発生時に、問題点の原因究明と対策立案までの時間短縮や、原因不明の問題を撲滅する要求があり、大きな課題となっている。
【0008】
特許文献1には、不具合解析用のログを保存する表示装置が開示されている。
【0009】
この例では、例えばファームウェアアップデートによる不具合等、放送受信に関連して発生する機器状態をログ保存部に保存するようにしている。しかしながら特許文献1の例では、エラーが発生した場合に、何故そのエラーに至ったかという根本原因については解明できず、解析に難航するという不具合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−60968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のディスク装置及び特許文献1に記載の例では、不揮発性メモリの診断情報やログ保存部の情報を読み取ることでエラー発生時の状態を把握することができるが、なぜエラーが発生したかという根本原因を解明することができないため、解析に難航することが多々あった。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みて、ハードウェア及びソフトウェアの状態遷移を示す情報を、時間軸要素を含めてRAMに随時保存し、エラーが発生した時にRAM内のデータを不揮発性メモリに記憶し、問題解析時に不揮発性メモリに記憶した情報を読み取ってタイミングチャートを復元することでエラー発生の原因を解析できるようにしたディスク装置及び異常診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の本発明のディスク装置は、筐体の挿入口から挿入されたディスクをターンテーブルに装填するとともに前記筐体から排出する搬送機構と、前記ターンテーブルに装填された前記ディスクを回転駆動し前記ディスクの再生処理を行う信号処理部と、前記筐体内での前記ディスクの状態を検出する検出部と、規定したプログラムに従って前記搬送機構を含む機構系及び前記信号処理部の動作を制御するシステム制御部と、複数の記憶領域を有し、前記プログラムの遷移及び前記検出部の検出結果を含むソフトウェア・ハードウェアの状態遷移情報を前記複数の記憶領域に循環的に保存するRAMと、エラー発生に応答して前記RAMから読み出した前記状態遷移情報をエラー解析用の診断情報として記憶する不揮発性メモリと、を具備したことを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の本発明の異常診断方法は、ディスクを筐体内のターンテーブルに装填するとともに前記筐体から排出する搬送機構と、前記ディスクの信号を処理する信号処理部を備え、前記筐体内での前記ディスクの状態を検出部で検出し、規定したプログラムに従って前記搬送機構を含む機構系及び前記信号処理部の動作を制御し、前記プログラムの遷移及び前記検出部の検出結果を含むソフトウェア・ハードウェアの状態遷移情報をRAMの複数の記憶領域に循環的に保存し、前記RAMに保存した前記状態遷移情報をエラー発生に応答して読み出し、エラー解析用の診断情報として不揮発性メモリに記憶し、前記不揮発性メモリに記憶した前記診断情報を用いてエラー発生の原因を解析することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のディスク装置では、市場で発生する問題に対して解析能力を向上させ、問題点の原因究明から対策までの時間短縮を図り、かつ原因不明という問題を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るディスク装置の全体構成を示す斜視図。
【図2】同実施形態におけるディスク挿入時の動作を示す平面図。
【図3】同実施形態におけるディスク装置の全体構成を示すブロック図。
【図4】同実施形態に係るディスク装置の主要部の構成を示すブロック図。
【図5】エラー・トレース情報(状態遷移情報)の一覧を示す説明図。
【図6】トレースデータのフォーマットを示す説明図。
【図7】Fixed Time Statusのフォーマットを示す説明図。
【図8】BUS Statusのフォーマットを示す説明図。
【図9】ZIPC Informationのフォーマットを示す説明図。
【図10】Device Statusのフォーマットを示す説明図。
【図11】RAMへのバッファリング処理を示す説明図。
【図12】Time Stampのフォーマットを示す説明図。
【図13】Trace End Pointerのフォーマットを示す説明図。
【図14】EEPROMへの記憶方法を示す説明図。
【図15】EEPROMへの1セット分の記憶処理を示す説明図。
【図16】EEPROMに記憶した診断情報から復元したタイミングチャートのイメージ図。
【図17】本発明の一実施形態に係る異常診断処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明のディスク装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、ディスク装置100の外観構造を示す斜視図である。図1において、ディスク装置100は、筐体10内にドライブユニット11を収容している。ドライブユニット11は、筐体10内に設けたダンパやスプリング等の弾性部材により支持されている。筐体10の前面には開口12を形成しており、この開口12を介してディスクDをドライブユニット11に挿入し、かつディスクDをドライブユニット11から排出することができる。ディスクDの挿入方向を矢印Aで示す。
【0019】
図2は、筐体10内の構成を概略的に示した平面図である。図2で示すように、ドライブユニット11は、本体シャーシ13の略中央部に設けられ、スピンドルモータにて回転するターンテーブル20を有している。本体シャーシ13の前方部の上面には、ディスクDを搬送(挿入及び排出)するローラ14(図4)を設けている。ローラ14はゴム製であり、図4で示すようにディスクDの搬送方向と直交して設けられ、直径が中央部に向かって小さくなるテーパ状を成しており、モータの動力によって正逆両方向に回転し、ディスクDを挿入又は排出する。
【0020】
本体シャーシ13の所定位置には、ターンテーブル20上にセットされたディスクDの情報の読み出しを行なう光ピックアップ22(図3)が配置されており、ディスクDの搬送路にはディスクDの状態を検出する複数の検出器(光学センサPD1〜PD4と、ロードエンドスイッチSW5)を設けている。
【0021】
複数の検出器のうち、光学センサPD1〜PD4は、例えばフォトダイオード等の発光素子とフォトトランジスタ等の受光素子を対向配置し、発光素子と受光素子の間をディスクDが通過することで、ディスクの搬入・排出状態を検出する。例えば、発光素子と受光素子との間にディスクDが存在しないときは、発光素子から発せられた光が受光素子で検出され、検出出力がロウ「L」になり、発光素子と受光素子との間にディスクDが存在するときは、発光素子からの光がディスクDで遮られ、受光素子の検出出力がハイ「H」になる。
【0022】
図2では、光学センサPD1とPD2が開口12(図1参照)側に位置し、光学センサPD3とPD4がPD1、PD2よりも奥側に位置しており、光学センサPD1が、開口12に最も近い位置にあり、PD1よりも僅かに奥側に光学センサPD2が位置している。また光学センサPD3は、光学センサPD2よりも奥側に位置し、PD3よりも僅かに奥側に光学センサPD4が位置している。
【0023】
正規のディスクDの直径が12cmである場合、光学センサPD1とPD2の間隔は8cm以下に設定され、光学センサPD3とPD4の間隔は、12cm以下で8cmよりも長く設定されている。ディスクDがターンテーブル20に正常にローディングされたときに、光学センサPD1〜PD4は、ディスクDの外周縁よりも内側にあり、且つディスクDの外周部に対向した位置にある。
【0024】
したがって、仮に直径8cmの異型ディスクがターンテーブル20に装填された場合は、光学センサPD1〜PD4の全てがディスクから外れる。また直径12cmの正規のディスクDがターンテーブル20上に装填(ローディング)されたときに、ロードエンドスイッチSW5(以下、スイッチSW5と呼ぶ)がオンし、ディスクDのローディング完了を検出する。
【0025】
ディスク装置100では、正規のディスク(直径12cmのCDやDVD等)が挿入されたときに、ディスクDが搬入されてターンテーブル20にクランプされる。しかしながら、それ以外の異型ディスク(例えば直径8cmの小径ディスク)が挿入されると、異物であると判別して排出し誤挿入を防止するようにしている。
【0026】
図2においてディスクDは、矢印A方向から挿入される。図2では直径12cmの正規のディスクDが挿入され、ターンテーブル20に載置されるまでの搬送状態を模式的に示している。実線D1はディスクDが開口12から挿入された初期の状態を示し、ディスクが光学センサPD1,PD2の直前まで挿入された状態を示している。一点鎖線D2はディスクが光学センサPD1,PD2を通過し、光学センサPD3,PD4の直前まで挿入された状態を示している。
【0027】
二点鎖線D3は、ディスクが半分以上挿入され、光学センサPD1〜PD4の位置を通過し、ディスクの周縁部がターンテーブル20上を通過した状態を示し、点線D4は、ディスクの中心穴がターンテーブル20に装填され、スイッチSW5がオンした状態を示している。このように、正規のディスクDが正常に挿入されると、搬入に合わせて光学センサPD1〜PD4の状態が遷移し最終的にスイッチSW5が動作する。
【0028】
図3は、ディスク装置100の構成を示すブロック図である。図3において、ディスクDは、ターンテーブル20に載置されスピンドルモータ21によって一定の線速度で回転される。ディスクDからの情報の読み出しは、光ピックアップ22によって行われ、ディスクDにレーザ光を照射し、その反射光によってディスクDに記録されているデータを読み出す。
【0029】
光ピックアップ22は、スレッドモータ23によってディスクDの半径方向に移動制御され、再生位置を決定する。サーボ制御部24は、後述するシステム制御部32等から供給される制御信号に応じて、スピンドルモータ21の回転を制御する。またサーボ制御部24は、光ピックアップ22のトラッキング制御、フォーカス制御、及びスレッドモータ23の駆動制御を行う。
【0030】
スレッドモータ23は、ディスクDがターンテーブル20に装填され再生状態になると光ピックアップ22をディスクDの径方向に移動させる役割を有するが、それ以外にディスクDの挿入時にローラ14を駆動してディスクDを搬入したり、排出する役割も有する。
【0031】
RFアンプ25は、光ピックアップ22によって読み出したデータに対応するRF信号を増幅してデジタル信号処理部26に供給する。又、このRFアンプ25は、RF信号からフォーカス制御用の信号及びトラッキング制御用の信号を分離して、これらの制御信号をサーボ制御部24に送る。
【0032】
サーボ制御部24は、フォーカス制御用の信号に基づいて光ピックアップ22のアクチュエータ(図示せず)を制御し、光ビームが、ディスクD上に常時ジャストフォーカスとなるように制御する。また、トラッキング制御用の信号に基づいてアクチュエータを制御し、光ピックアップ22のトラッキング方向の移動を制御する。これにより、データの再生を正確に行うようにしている。
【0033】
デジタル信号処理部26は、RFアンプ25からのRF信号をデジタル化し、デジタル化された信号の復調処理と誤り訂正処理を行い、信号処理の過程で得られたデータをRAM27に格納する。またデジタル信号から制御信号を分離し、分離した制御信号をサーボ制御部24及び後述するシステム制御部32に送る。
【0034】
オーディオデコーダ28は、オーディオデータを復号化処理し、復号化処理の過程で得られたデータをRAM29に格納する。オーディオデコーダ28の出力はオーディオ出力部30に供給される。オーディオ出力部30は、D/A変換器を含みデジタルオーディオ信号をアナログオーディオ信号に変換してスピーカ31に出力する。スピンドルモータ21からスピーカ31までの回路は、ディスクDを回転駆動しディスクDの再生処理を行う信号処理部を構成する。
【0035】
システム制御部32は、CPU、ROM、RAM33(Random Access Memory )等を含むマイクロコンピュータであり、ROMに格納されたプログラムに従ってディスク装置100の機構系及び信号処理部の動作を制御する。またシステム制御部32は、操作部34からの各種の指示信号、及びデジタル信号処理部26からの信号を受けて、サーボ制御部24等を制御する。操作部34は、リモートコントローラ等の操作部であり、再生、停止、早送り、ボリューム設定などの各種操作を行う複数のボタンを有している。
【0036】
システム制御部32には、不揮発性メモリ35、検出部36が接続されている。検出部36は、前述した複数の検出器(光学センサPD1〜PD4と、スイッチSW5)を含み、光学センサPD1〜PD4は、例えば発光ダイオードとフォトトランジスタで構成されている。光学センサPD1〜PD4とスイッチSW5はディスクDの搬送に応じて出力が変化する。
【0037】
例えば、ディスク装置100にディスクが挿入される前は、光学センサPD1〜PD4は、発光素子からの光が受光素子に透過するため、受光素子がオン(L)となっているが、正規のディスクD(12cm)が挿入されると、ディスクDの搬入に合わせて光学センサPD1〜PD4は、順次にLからHに遷移する。またディスクDがターンテーブル20に装填された状態でスイッチSW5がオン(H)になる。
【0038】
またいずれかの光学センサPD1〜PD4がオフ(H)になると、モータ23が回転し、ローラ14を回転してディスクDを搬入し、スイッチSW5がオンするとディスクDがターンテーブル20にローディングされたものとして、光ピックアップ22を駆動する。
【0039】
光学センサPD1〜PD4及びスイッチSW5が、予め設定した状態以外の遷移をするとき、例えば直径8cmのディスクが挿入された場合は、光学センサPD1,PD2はオフ(H)になるが、光学センサPD3,PD4はオン(L)のままであるため、システム制御部32は、異型ディスクが挿入されたものと判断して、搬送機構(ローラ14等)を制御してディスクの排出動作を行う。
【0040】
こうして、システム制御部32は、光学センサPD1〜PD4及びスイッチSW5の状態によって正規のディスクが正常に挿入されたか否かを判断し、正常にディスクが挿入されたときは再生に移行する。また光学センサPD1〜PD4及びスイッチSW5が、予め設定した状態以外の動作を示した場合、ディスクが誤挿入されたものと判断してディスクを排出し、誤挿入を防止する。
【0041】
図4は、ディスク装置100の主要部の構成を示すブロック図である。図4において、11はドライビングユニットであり、センター部にターンテーブル20を有している。光学センサPD1〜PD4及びスイッチSW5は検出部36を構成するものであり、光学センサPD1〜PD4及びスイッチSW5の遷移を示す情報が、検出部36介してシステム制御部32に送られる。
【0042】
システム制御部32は、モータM(スレッドモータ23)を制御して光ピックアップ22の位置及びローラ14の回転を制御する。検出部36には、モータMの回転状態(正転/逆転/停止等)を示す情報も送られる。ローラ14は、ディスクDの搬送方向と直交するように配置され、ローラ14の回転によってディスクDを搬入・排出する。システム制御部32は、誤挿入防止の機能を有し、光学センサPD1〜PD4、スイッチSW5の検出結果によってディスクの異常挿入や異型ディスクの挿入といった誤挿入が行われた場合は、ディスクDの排出を行う。
【0043】
またシステム制御部32には、EEPROM等の不揮発性メモリ35が接続されている。本実施形態では、ディスクDの誤挿入等によってエラーが発生した場合に、エラーの原因を解析する診断情報を不揮発性メモリ35に記憶するが、診断情報として、エラー発生時の各種デバイス(光学センサPD1〜PD4及びスイッチSW5)の情報だけでなく、エラーに至るまでのソフトウェア・ハードウェアの状態遷移を示す情報(以下、エラー・トレース情報という)を記憶する点に特徴がある。
【0044】
即ち、システム制御部32内のRAM33にリングバッファ形式で、ソフトウェアのプログラム遷移や、各端子の論理値の変化等を時間軸要素含めて随時保持する。そしてエラー発生時にRAM33に随時保存しているデータを不揮発性メモリ35(以下、EEPROM35)にエラー解析用の診断情報として記憶する。EEPROM35に記憶した診断情報は問題の解析時に読み出され、異常診断に利用される。
【0045】
診断情報には、エラー発生までの状態遷移が記憶されているため、この診断情報をもとにタイミングチャートを復元することができ、どの様な過程を経てエラーに至ったのか、発生メカニズムが把握可能となる。復元するタイミングチャートは、スイッチやセンサの論理値やモータ端子の物理的な情報だけでなく、プログラム遷移等のソフト的な情報も得られるため、エラー発生状況の把握をスムーズに行うことができ、解析効率が向上する。
【0046】
尚、エラー発生とは、ディスク装置100が正常な動作をしない状態をいう。例えば、正規のディスクD(12cm)を正常に挿入したにも拘わらずディスクが装填できない場合や、筐体10内に装填されたディスクが排出できない場合、或いはディスクを異常挿入したり、異型ディスクを挿入したにも拘わらず自動排出機能が働かず、そのまま挿入されて取り出せなくなった場合等をいう。
【0047】
以下、ソフトウェア・ハードウェアの状態遷移情報(エラー・トレース情報)の詳細と、RAM33及びEEPROM35への情報の記憶方法の一例を説明する。尚、以下の説明では、光学センサPD1〜PD4はディスクDの挿入の状態に応じて出力が変化するメカニカルスイッチとして機能するため、光学センサPD1〜PD4をメカニカルスイッチSW1〜SW4と呼び、スイッチSW5もメカニカルスイッチと呼ぶ。また“メカ”とはディスク装置100の機構系(メカニズム)を意味する。
【0048】
図5は、エラー・トレース情報として記憶される情報の一覧を示すもので、問題解析用に確認できる情報(トレース・ターゲット)を示している。図5のトレース・ターゲット(Trace Target)は、「BUS Status」 、「ZIPC Information」、「Device Status」の種類(Category)を含む。BUS Status とZIPC Informationは、時間軸上で変化するソフトウェアの遷移を示す情報であり、BUS Statusは、「M. Status」で示すマスタ−スレーブ間の通信上のメカステータスと、「Error Code」で示すマスタ−スレーブ間の通信上のエラーステータスの情報で成る。ZIPC Informationは、「STM No.」で示すZIPCの状態遷移表番号と、「State No.」で示す状態番号の情報で成る。
【0049】
Device Statusは、「Driver Mute Control Port」、「Load/Eject Motor」、「Switch Logical Value」の3つの種類(Category)でなる。Driver Mute Control Portは、「Mute 1」で示すメカ側のDriver Mute Control端子の出力状態の情報である。Load/Eject Motorは、「Stop/Load/Eject」で示すモータMの出力状態(3値)の情報である。Switch Logical Valueは、「SW1」〜「SW5」で示すメカニカルスイッチ(SW1〜SW5)の論理値の情報である。各情報のサイズ(Bit)は「Size」で示している。
【0050】
図6は、エラー・トレース情報のデータフォーマットを示す図である。図6では、15〜14の2Bitでなる「FMT」と、13〜8の6Bitでなる「Trace time」と、7〜0の8Bitでなる「Status Information」で構成される。
【0051】
FMTは、Status Informationのフォーマットを示し、FMT=0は固定時間情報「Fixed Time Status」を表し、FMT=1は「BUS Status」を表し、FMT=2は「ZIPC Information」を表し、FMT=3は「Device Status」を表している。またTrace Timeは、FMT=0以外の書込み発生時の詳細時間MTTS(Mechanism Trace Time Stamp)を記憶し、Status Informationは、FMTで指定されたフォーマットで各種データを記憶することを意味する。
【0052】
図7〜図10は、図6のFMTで指定されたFixed Time Status、BUS Status、ZIPC Information、Device Statusのフォーマットを示す図である。図7は15〜14の2Bitが「0,0」、つまりFMT=0のFixed Time Statusのフォーマットを示し、「異検」、「回避」、「保持」、「Retry Count」、「有効CMD」の項目で成る。「異検」は、ディスクの異常挿入や異型ディスクの挿入検出の有無に関する情報であり、「回避」は、デッドポイント回避処理の起動の有無を示す情報、つまりディスクの異常挿入や異型ディスクの挿入があったときに排出処理を起動したか否かを示す情報である。「保持」は、現在保留としている保持コマンドの有無を示し、「Retry Count」は、異常発生時にリトライを試みた回数を示し、「有効CMD」は現在有効となっているコマンドを示す。
【0053】
図8は、15〜14の2Bitが「0,1」、つまりFMT=1のBUS Statusのフォーマットを示し、「Trace time」、「BUS status」の項目で成る。Trace timeは、メカステータスが変化したときの詳細時間MTTSを記憶することを意味し、BUS statusは、「M. Status」で示すメカニズムの状態と、「Error Code」で示すエラーコードの値を示す。
【0054】
図9は、15〜14の2Bitが「1,0」、つまりFMT=2のZIPC Informationのフォーマットを示し、「Trace time」、「ZIPC Information」の項目で成る。Trace timeは、ZIPC STM No.又はStatus No.が変化したときの詳細時間MTTSを記憶することを意味する。ZIPC Informationは、「STM No.」で示す動作要求受信の情報及び状態遷移番号表と、「Status No.」で示す動作要求の種別及び状態番号である。
【0055】
図10は、15〜14の2Bitが「1,1」、つまりFMT=3のDevice Statusのフォーマットを示し、「Trace time」と「Device Status」の項目で成る。Trace timeは、モータMの出力状態又はメカニカルスイッチの論理値が変化したときの詳細時間MTTSを記憶することを意味する。
【0056】
Device Statusは、「LEM」、「MU」、「SW Logical Value」の項目でなり、LEMは、E(Eject)とL(Load)の値でモータMの状態を示す。E,Lが「0,0」のときは、stop(モータMの停止)を示し、E,Lが「0,1」のときは、Load(モータMによりディスクをロードした状態)を示し、E,Lが「1,0」のときは、Eject(モータMによりディスクを排出した状態)を示す。MUは、メカ側のDriver Mute Control端子の出力状態を示し、SW Logical Valueは、ロードエンドスイッチSW5の論理情報と、メカニカルスイッチSW4〜SW1の論理情報をそれぞれ示す。
【0057】
図6のエラー・トレース情報のデータ(トレースデータ)は、Step1〜Step 62の62ステップでRAM33に循環的に保存され、MTTS(Mechanism Trace Time Stamp)がオーバーフローする1008msec.毎に一律バッファリングされる。
【0058】
図11は、RAM33へのバッファリング処理を説明する図である。RAM33は、124Byteの容量を有し、図5で示すTrace Targetが変化したことを検出したとき、対応するフォーマット(FMT=0〜3)にて、1Step(2Byte)をRAM33の次アドレスに記憶する。
【0059】
状態遷移情報は、エラー発生の有無に関わらずリングバッファ形式で随時RAM33に保存される。但し、バッファリングのトリガが発生した(変化を検出した)場合でも、RAM33の前アドレスに記憶した値と同じフォーマットで同じTrace Timeの情報は、RAM33の前アドレスに上書きし、次アドレスへの新規バッファリングを極力抑え、記憶効率を向上させるようにしている。
【0060】
またRAM33には、図12のTime Stamp、及び図13のTrace End Pointerの情報がエラー発生時にステップ63とステップ64に追加して保存される。図12のTime Stampは、エラー発生時の通電時間TATS(Total Active Time Stamp)の情報であり、例えば5分毎に更新されるタイマー値を示す。つまりディスク装置100を車両に搭載した場合、エンジンをかけて走行したときのトータル時間に対して、どの辺りでエラーが発生したかを示す時間情報であり、エンジンをかける毎に累算される。
【0061】
図13のTrace End Pointerは、「Trace End Pointer」と「Check Sum」で成る。Trace End Pointerは、最後に記憶されたトレースデータのステップ数を示し、RAM33の62ステップのどのステップに相当するかを示す情報である。Check Sumは、Byte0〜127までのXOR値であり、Trace End Pointerのデータが信用できるデータか否かを示す情報である。
【0062】
図14は、EEPROM35への記憶方法を説明する図である。図14は、エラー解析用の診断情報(トレースデータ、Time Stamp、Trace End Pointer)が記憶されるEEPROM35の記憶領域を示している。記憶領域「Error Trace(7Set)」は、通番1〜3で示す「Oldest Error Area(3Set)」と、通番4〜7で示す「Latest Error Area(4Set)」の領域で構成される。
【0063】
トレースデータ、Time Stamp、Trace End Pointerを含む診断情報は、それぞれ2Byteの記憶サイズを有し、トレースデータは62ステップを1セットとし、Time Stampは1ステップを1セットとし、Trace End Pointerも1ステップを1セットとする。これらトレースデータ、Time Stamp、Trace End Pointerは、通番1〜7の記憶領域に7セット分記憶される。
【0064】
ディスク装置100において、エラーが発生する都度、EEPROM35の次のアドレス領域にRAM33に保存したデータが診断情報として書き込まれるが、情報量が多く記憶領域にも制限があるため、多くの情報は保持できない。したがって、限られた記憶領域で有効なデータを保持するため、EEPROM35の記憶領域を7セット分としている。また記憶する7セットの構成は、1〜3セットは上書き不可のエリアとし、4〜7セットを上書き可能エリアとしている。
【0065】
つまり、Oldest Error Area(3Set)には、初期のエラー発生事象に関する診断情報が記憶される。これらの情報は、初期のエラー発生事象を解析するにあたって重要なデータとなるため、上書きせずに保存する。一方、Oldest Error Area(3Set)が満杯になったときは、Latest Error Area(4Set)に診断情報が記憶される。
【0066】
そして、Latest Error Area(4Set)のオーバーフローした時は、古い情報を消し、新たな診断情報をサイクリックに上書きして記憶する。即ち、Latest Error Area(4Set)は、通番4に対応する記憶領域から順に診断情報を記憶し、もし通番7に対応する記憶領域まで情報を記憶したあと新たな診断情報を書き込む場合は、通番4に対応する記憶領域に戻って上書きする。
【0067】
図15は、EEPROM35への1セット分のデータの記憶処理を説明する図である。エラー発生時(Mechanism Status = Give-Up)に、RAM33の先頭アドレスを取得し、RAM33の124Byte分のデータをEEPROM35に一気に書き込み、診断情報を取得する。
【0068】
このあとに図12のTime Stampのデータ(2Byte)を付加し、最後に図13のTrace End Pointer のデータ(2Byte)を付加して、128Byteの記憶データとなる。例えば、一括書き込みの最大数が32Byteであった場合、トータル4回、EEPROM35への書き込みを行って完了する。
【0069】
図15において、通番1〜62で示す領域は、トレースデータの記憶領域を示し、その内、通番6,28,47,50はFixed Time Status(図7)のデータである。通番63及び64で示す領域は、Time Stamp(図12)及びTrace End Pointer (図13)のデータである。
【0070】
図16は、EEPROM35に記憶した診断情報から復元したタイミングチャートのイメージ図である。図16において、「STATE」は、ソフトウェアの状態遷移を示すデータであり、BUS State(図8)とZIP Information(図9)を示す。「OUTPUT」は、モータMの状態を示すデータであり、Driver Mute(図10のMU)と、Load/Eject Motor(図10のLEM)のデータを示す。また「INPUT」は、センサやスイッチの論理値データであり、Switch Logical Value(図10のSW5〜SW1)のデータを示す。
【0071】
図16の横軸(0〜18)は、Trace Time(sec.)を表しており、エラー発生のタイミングが例えば18Sec.であったとき、エラー発生までの状態(0〜18Sec.)を復元することができる。したがって、図16のタイミングチャートをもとに、エラー発生に至るまでの詳細な状態遷移をソフトウェア、ハードウェアの両面から把握することができ、エラー発生の根本原因を特定することができる。
【0072】
図17は、本発明における異常診断処理の流れを説明するフローチャートである。ステップS1は、RAM33にエラー・トレース情報をバッファリングするステップであり、システム制御部32内のRAM33にリングバッファ形式で、ソフトウェアのプログラム遷移や、各端子の論理値の変化を時間軸要素含めて随時保存する。
【0073】
ステップS2では、エラー発生時にRAM33に保存している62ステップ分のデータをEEPROM35にエラー解析用の診断情報として一括記憶する。EEPROM35への記憶は、メカニズムエラーの発生をトリガにして行う。
【0074】
ステップS3では、EEPROM33に記憶した診断情報を、問題の解析時に読み出し、ステップS4では、タイミングチャートを復元する。読み出した診断情報には、エラー発生までの状態遷移が記憶されているため、タイミングチャートを復元することができ、どの様な過程を経てエラーに至ったのか、発生メカニズムを解析することができる。こうして解析が終了するとステップS5で終了する。
【0075】
このように、本発明のディスク装置では、ディスクの誤挿入等によってエラーが発生した場合に、不揮発性メモリ35に記憶した診断情報を読み取ることによってエラーの原因を解析することができる。また診断情報として、エラー発生時の各種デバイスの情報だけでなく、エラーに至るまでのハードウェア及びソフトウェアの状態遷移を示す情報を得ることができるため、エラー発生の根本原因を解明することができる。したがって、市場で発生する問題に対して解析能力を向上させ、迅速に対処することができる。
【0076】
尚、本発明の実施形態は、以上説明した構成に限定されるものではない。例えば、複数のトレイにディスクを収納して、いずれか1枚のディスクを再生するようにした収納型ディスク装置に適用することができる。収納型ディスク装置の場合、新たにトレイのチェンジ回数等の情報が不揮発性メモリに記憶される。また車載用ディスク装置に限らず家庭用ディスク装置に適用することもできる。また特許請求の範囲を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0077】
100…ディスク装置
D…ディスク
10…筐体
11…ドライブユニット
12…開口
13…シャーシ本体
14…ディスク搬送ローラ
20…ターンテーブル
21…スピンドルモータ
22…光ピックアップ部
23,M…スレッドモータ
24…サーボ制御部
25…RFアンプ
26…デジタル信号処理部
27,29…RAM
28…オーディオデコーダ
30…オーディオ出力部
31…スピーカ
32…システム制御部
33…RAM
34…操作部
35…不揮発性メモリ(EEPROM)
36…検出部
PD1〜PD4…光学センサ
SW5…スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の挿入口から挿入されたディスクをターンテーブルに装填するとともに前記筐体から排出する搬送機構と、
前記ターンテーブルに装填された前記ディスクを回転駆動し前記ディスクの再生処理を行う信号処理部と、
前記筐体内での前記ディスクの状態を検出する検出部と、
規定したプログラムに従って前記搬送機構を含む機構系及び前記信号処理部の動作を制御するシステム制御部と、
複数の記憶領域を有し、前記プログラムの遷移及び前記検出部の検出結果を含むソフトウェア・ハードウェアの状態遷移情報を前記複数の記憶領域に循環的に保存するRAMと、
エラー発生に応答して前記RAMから読み出した前記状態遷移情報をエラー解析用の診断情報として記憶する不揮発性メモリと、
を具備したことを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
前記システム制御部は、時間軸上で変化するソフトウェアのプログラム遷移をもとに前記ソフトウェアの状態遷移情報を生成し、
前記検出部は、前記ディスクの搬送に応じて変化する複数のメカニカルスイッチの論理値と、前記ディスクの搬送又は回転を制御するモータの回転状態によって変化する論理値をもとに前記ハードウェアの状態遷移情報を生成することを特徴とする請求項1記載のディスク装置。
【請求項3】
前記システム制御部は、前記RAMの複数の記憶領域に前記ソフトウェア・ハードウェアの状態遷移情報をリングバッファ形式で保存し、前記RAMにバッファリングされた情報を、前記エラー発生時に一括して読み出し前記不揮発性メモリに記憶することを特徴とする請求項1記載のディスク装置。
【請求項4】
前記システム制御部は、前記RAMに、所定の時間間隔で更新される通電時間情報と、前記RAMに最後に保存された情報のステップ位置を示す情報を付加して保存することを特徴とする請求項3記載のディスク装置。
【請求項5】
ディスクを筐体内のターンテーブルに装填するとともに前記筐体から排出する搬送機構と、前記ディスクの信号を処理する信号処理部を備え、
前記筐体内での前記ディスクの状態を検出部で検出し、
規定したプログラムに従って前記搬送機構を含む機構系及び前記信号処理部の動作を制御し、
前記プログラムの遷移及び前記検出部の検出結果を含むソフトウェア・ハードウェアの状態遷移情報をRAMの複数の記憶領域に循環的に保存し、
前記RAMに保存した前記状態遷移情報をエラー発生に応答して読み出し、エラー解析用の診断情報として不揮発性メモリに記憶し、
前記不揮発性メモリに記憶した前記診断情報を用いてエラー発生の原因を解析することを特徴とする異常診断方法。
【請求項6】
前記不揮発性メモリに記憶したエラー解析用の情報を用いてタイミングチャートを復元し、エラー発生の原因を解析することを特徴とする請求項5記載の異常診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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