ディスク記憶装置
【課題】ディスク面上の凹凸比の均一化を図ることが可能で、かつ特に微細な物理的加工を要するサーボパターンの形成を省略することでディスク媒体の製造歩留まりを向上する。
【解決手段】サーボ領域(サーボセクタ)43は、プリアンブル領域50、サーボマーク領域51、アドレス情報領域52、及びサーボバーストパターン領域53を有する。プリアンブル領域50、サーボマーク領域51、及びサーボバーストパターン領域53は、非磁性部500及び磁性部510からなる凹凸パターン(サーボパターンA)から構成されている。アドレス情報領域52は、N極の凸状の磁性部510、S極の凸状の磁性部520、及び凹状の非磁性部500から構成されている。即ち、アドレス情報領域52は、シリンダコードを含むサーボパターンBを、N極の凸状の磁性部510とS極の凸状の磁性部520の磁化パターン(磁化方向パターン)から構成されている。
【解決手段】サーボ領域(サーボセクタ)43は、プリアンブル領域50、サーボマーク領域51、アドレス情報領域52、及びサーボバーストパターン領域53を有する。プリアンブル領域50、サーボマーク領域51、及びサーボバーストパターン領域53は、非磁性部500及び磁性部510からなる凹凸パターン(サーボパターンA)から構成されている。アドレス情報領域52は、N極の凸状の磁性部510、S極の凸状の磁性部520、及び凹状の非磁性部500から構成されている。即ち、アドレス情報領域52は、シリンダコードを含むサーボパターンBを、N極の凸状の磁性部510とS極の凸状の磁性部520の磁化パターン(磁化方向パターン)から構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体として、ディスクリート・トラック型またはパターンドメディア型のディスク媒体を使用するディスク記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスクドライブを代表とするディスク記憶装置(以下、ディスクドライブと表記する場合がある)の分野では、磁気記録媒体として、ディスクリート・トラック(discrete track)型ディスク媒体、パターンドメディア型ディスク媒体、あるいはデイスクリート・トラック・記録(DTR)型ディスク媒体と呼ばれるディスク媒体が注目されている(例えば、特許文献1,2,3を参照)。
【0003】
このようなディスク媒体は、基本的な構造としては、凸状の磁性部と凹状の非磁性部(空隙)とからなる凹凸磁性パターンにより、サーボ情報が記録されたサーボ領域と、データトラックが形成されているデータ領域とがディスク基板上に構成されている。
【0004】
ところで、ディスク媒体の製造工程では、特に磁性体の物理的加工時において均一に加工するためには、加圧比率を均一化する上で、凹凸磁性パターンを形成する上での磁性部の面積比率(凹凸比)が全体的に均一であることが要求される。この磁性部の面積比率(凹凸比)が全体的に均一化させるためには、サーボ領域(サーボセクタ)における凹凸磁性パターンからなるサーボパターンの均一化を図る必要がある。サーボパターンは、ヘッドの位置決め制御に使用されるサーボ情報である。
【特許文献1】特開2006−31846号公報
【特許文献2】特開2006−228348号公報
【特許文献3】特開平11−45528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2の先行技術文献には、ディスク媒体上にサーボ情報を追記する領域を設けることが開示されている。しかしながら、このような構造は、ディスク媒体の加工時での前記凹凸比が変化するため、加工圧力のばらつきを招く問題がある。また、当該先行技術文献には、サーボパターンに含まれるシリンダコード(アドレス情報)をエッチングなどの物理的方法により生成することが開示されている。しかしながら、シリンダコードを生成するには、非常に微細な物理的加工を要するため、ディスク媒体の製造歩留まりの悪化を招く要因となる。また、特許文献3の先行技術文献には、ディスク媒体の一方の片面には凹凸パターンでサーボパターンを形成し、他方面には磁化反転パターンでサーボパターンを形成することが開示されている。従って、一方の片面については、シリンダコードを微細な物理的加工により形成するため、ディスク媒体の製造歩留まりの悪化を招く要因となる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ディスク面上の凹凸比の均一化を図ることが可能で、かつ特に微細な物理的加工を要するサーボパターンの形成を省略することでディスク媒体の製造歩留まりを向上できるディスク記憶装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の観点は、同一記録面上に、サーボパターンを、凹凸状磁化パターンとN極,S極の磁化パターンとを混在させて構成するディスク媒体を使用するディスクドライブである。
【0008】
本発明の観点に従ったディスク記憶装置は、データの読出し、書き込みを実行するヘッドと、同一記録面上に、磁性部からなる複数のデータトラックが半径方向に形成されているデータ領域と、磁性部と非磁性部とから構成される第1のサーボパターン及び磁性部でN極とS極の磁化パターンから構成される第2のサーボパターンを有するサーボ領域とが形成されているディスク媒体と、前記ディスク媒体の前記サーボ領域から、前記ヘッドにより読出されたリード信号を処理して前記ヘッドの位置決め制御に使用されるサーボ情報を再生する再生処理手段とを備えた構成である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ディスク面上の凹凸比の均一化を図ることが可能で、かつ特に微細な物理的加工を要するサーボパターンの形成を省略することでディスク媒体の製造歩留まりを向上できるディスク記憶装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0011】
(ディスクドライブの構成)
図1は、本実施形態に関するディスクドライブの要部を示すブロック図である。
【0012】
ディスクドライブ1は、ディスク媒体10と、スピンドルモータ11と、磁気ヘッド12と、アクチュエータ13と、ヘッドアンプ(ヘッドIC)14と、プリント回路基板(PCB)20とを有する。
【0013】
ディスク媒体10は、スピンドルモータ11により高速回転される。本実施形態では、ディスク媒体10は、ディスクリート・トラック型ディスク媒体である。なお、ディスクリート・トラック型ディスク媒体は、パターンドメディア型ディスク媒体あるいはデイスクリート・トラック・記録(DTR)型ディスク媒体とも呼ばれている。さらに、ディスク媒体10は、垂直磁気記録方式の磁気記録媒体である。
【0014】
磁気ヘッド12は、リードヘッド12Rとライトヘッド12Wとを有し、リードヘッド12Rにより、ディスク媒体1上に形成されたサーボ領域(サーボセクタ)からサーボパターンを読出す。サーボパターンは、後述するように、トラックアドレス(シリンダコード)及びセクタアドレスを含むアドレス情報や、サーボバーストパターンを有するサーボ情報である。ライトヘッド12Wは、データ領域のデータトラック上にユーザデータを書き込むと共に、セルフサーボ書込み動作時にアドレス情報などをサーボセクタに書き込む。
【0015】
アクチュエータ13は、ボイスコイルモータ(VCM)により駆動し、搭載している磁気ヘッド12をディスク媒体10上の半径方向に移動制御する。ボイスコイルモータは、PCB20上に実装されているモータドライバ18により駆動制御される。ヘッドアンプ14は、リードヘッド12Rにより読出されたリード信号(サーボパターン及びユーザデータ)を増幅して、PCB20上に実装されているリード/ライトチャネル(信号処理ユニット)15に出力する。
【0016】
PCB20には、リード/ライトチャネル15と、マイクロプロセッサ(CPU)17と、モータドライバ18と、ハードディスクコントローラ(HDC)19とが実装されている。リード/ライトチャネル15は、リード/ライト信号を処理する信号処理ユニットであり、リードヘッド12Rからのリード信号からサーボ情報の再生処理を行なうサーボコントローラ16を含む。
【0017】
サーボコントローラ16は、再生したサーボ情報をCPU17に出力する。なお、サーボコントローラ16は、再生したサーボ情報のサーボバーストパターン(A〜D)から位置誤差データを生成してCPU17に出力する。CPU17は、ディスクドライブ1のメインコントローラであり、サーボ情報及び位置誤差データに基づいて、磁気ヘッド12の位置決め制御を実行する。モータドライバ18は、CPU170の制御により、アクチュエータ13のボイスコイルモータに駆動電流を供給するVCMドライバ、及びスピンドルモータ11に駆動電流を供給するSPMドライバを含む。
【0018】
HDC19は、ディスクドライブ1と外部のホストシステムとのデータ転送などを行なうインターフェースであり、CPU17の制御に基づいて、リード/ライトチャネル15から出力されるユーザデータをホストシステムに転送する。また、HDC19は、ホストシステムからのデータを受信し、リード/ライトチャネル15に転送する。
【0019】
(ディスク媒体の構造及び製造工程)
まず、図2及び図3を参照して、本実施形態に関するディスク媒体10の製造工程の概略を説明する。なお、図3は、ディスク媒体の断面を示す概念図である。
【0020】
図3(A)に示すような基板30上に磁性層31が形成されているディスク媒体を用意し、図3(B)に示すように、磁性層31に対する磁性加工処理を実行する(ブロック100)。さらに、磁性層31に対して磁化(着磁)することにより、図3(C)に示すようなディスクリート・トラック型ディスク媒体10を形成する(ブロック110)。
【0021】
次に、サーボライト工程により、図3(D)に示すように、ディスク媒体10上のサーボ領域(サーボセクタ)に対して、サーボパターン(サーボ情報)A,Bが磁気記録される(ブロック120)。ここで、ディスク媒体10は垂直磁気記録方式であるため、直流磁界を印加することにより、再生可能なサーボパターンを記録する。
【0022】
図4は、ディスクリート・トラック型ディスク媒体10上に形成されたデータ領域42と、サーボライト工程により形成されたサーボ領域43A,43Bの構成を示す概念図である。なお、図4において、符号40はディスク面の半径方向を示し、符号41は周方向を示す。
【0023】
データ領域42は、ユーザデータを記録するための凸状の磁性部からなる複数のデータトラックが形成されている。各データトラック間は、凹状の非磁性部からなるガードバンドである。
【0024】
サーボ領域43A,43Bは、半径方向に形成される放射状の各サーボセクタに含まれる領域である。各サーボセクタは、ディスク媒体10上の周方向41に所定の間隔をもって形成されている。ここで、サーボ領域43Aには、凸状の磁性部と凹状の非磁性部とから構成されるサーボパターンA(第1のサーボパターン)が記録される。このサーボパターンAは、サーボ情報の中で、例えばプリアンブル領域(同期信号などの記録領域)及びサーボマーク領域(サーボパターンの検出信号)に対応するパターンである。
【0025】
サーボ領域43Bには、N極とS極の磁化パターンから構成されるサーボパターンB(第2のサーボパターン)が記録される。このサーボパターンBは、サーボ情報の中で、シリンダコード(トラックアドレス)及びセクタアドレスを含むアドレス情報に対応するパターンである。なお、サーボ情報の中で、サーボバーストパターンは、サーボパターンAに相当する凸状の磁性部と凹状の非磁性部とから構成されるパターンにより構成される。
【0026】
以上のようなディスク媒体10が組み込まれたディスクドライブ1において、リード/ライトチャネル15は、リードヘッド12Rにより読出されたサーボパターンA,B、及び図示しないサーボバーストパターンを含むサーボ情報を再生し、CPU17に出力する。CPU17は、再生されたサーボ情報を使用して、アクチュエータ13を駆動制御し、時期ヘッド12をディスク媒体10上の目標位置である目標データトラックに位置決め制御する。
【0027】
以上のような本実施形態のディスク媒体10であれば、シリンダコード(トラックアドレス)及びセクタアドレスを含むアドレス情報は、N極とS極の磁化パターンから構成されるサーボパターンBとして記録することができる。これにより、特にシリンダコードを非常に微細な物理的加工を要する凸状の磁性部と凹状の非磁性部とから構成される凹凸パターンにより形成する必要がないため、ディスク媒体の製造歩留まりを向上できる。サーボ領域43BはN極とS極の磁化パターンから構成されるサーボパターンBを記録する領域であるため、ディスクドライブ1によりセルフサーボライト方法により、シリンダコードを含むアドレス情報を追記することができる。
【0028】
また、各サーボセクタ毎に、凹凸パターンではなく、N極とS極の磁化パターンを構成する領域を設けるため、サーボ領域における凹凸比の均一化を図ることが容易となり、ディスクリート媒体製造時の加工圧力を均一化を図ることができる。換言すれば、サーボ領域において、シリンダコードを含むアドレス情報を構成するサーボパターンBに対応する凹凸パターンの面積を削除できるため、サーボ領域における凹凸パターン全体の凹凸比の均一化を図ることが容易となる。
【0029】
(第1の具体例)
図5は、本実施形態に関するディスク媒体10において、具体的構造の一例を示す概念図である。図5において、黒の部分は凹状の非磁性部500で、白の部分は凸状の磁性部510である。
【0030】
図5に示すように、複数のデータトラックを有するデータ領域42及びアドレス情報領域52を除くサーボ領域(サーボセクタ)43は、非磁性部500及び磁性部510からなる凹凸パターンから構成されている。即ち、データ領域42では、磁性部510からなるデータトラックと、各トラック間で非磁性部500からなるガードバンドが設けられている。
【0031】
サーボ領域(サーボセクタ)43は、プリアンブル領域50、サーボマーク領域51、アドレス情報領域52、及びサーボバーストパターン領域53を有する。プリアンブル領域50、サーボマーク領域51、及びサーボバーストパターン領域53は、非磁性部500及び磁性部510からなる凹凸パターン(サーボパターンA)から構成されている。
【0032】
ここで、アドレス情報領域52は、N極の凸状の磁性部510、S極の凸状の磁性部520、及び凹状の非磁性部500から構成されている。即ち、アドレス情報領域52は、シリンダコードを含むサーボパターンBを、N極の凸状の磁性部510とS極の凸状の磁性部520の磁化パターン(磁化方向パターン)から構成されている。また、図5に示すように、アドレス情報領域52は、周方向に対してパターンの偶数番目が非磁性部500から構成されている。
【0033】
図6は、図5の変形例を示す図であり、アドレス情報領域52は、サーボバーストパターン領域53に隣接して、サーボ領域43の最後端に配置された構成である。
【0034】
図7は、ディスク媒体10の製造工程の一部を示す図である。前述の図3(B)を参照して説明したように、磁性層31をエッチングにより加工する磁性加工処理により、図7に示すパターンが形成される。このパターンに対して磁化(着磁)することにより、図6に示すようなディスクリート・トラック型ディスク媒体10を形成する。
【0035】
図8は、ディスクリート・トラック型ディスク媒体10の製造工程に含まれるディスクリートトラックの測定方法を説明するための図である。
【0036】
即ち、本実施形態では、シリンダコードが存在しない状態で、磁気ヘッド12をディスク媒体10上のアドレス情報領域52に相当する位置に位置決めして、アドレス情報領域52を書き込むセルフサーボライト工程を行なう。この場合、磁気ヘッド12がディスクリートトラック上に位置決めされていることを検出する必要がある。以下、具体的に、ディスクリートトラックの測定方法を説明する。
【0037】
まず、ディスク媒体10上のある特定トラックにおいて、検査用の一定振幅信号を1周に亘って書き込む。ここで、図8(A)は、当該検査用の一定振幅信号を書き込む際に、磁気ヘッド12の相対位置がディスクリートトラックに沿った場合(80)と、ディスクリートトラックを跨ぐ場合(81)を示している。
【0038】
磁気ヘッド12がディスクリートトラックを跨ぐ場合(81)、図8(C)に示すように、非磁性部500を再生することから、再生振幅が小さくなる。このような再生振幅が小さくなる箇所がなくなるように、各サーボセクタにおける磁気ヘッド12の位置を補正し、図8(B)に示すような再生振幅が得られるように、磁気ヘッド12を位置決めする。これにより、磁気ヘッド12を、ディスクリートトラック上に位置決めすることが可能となる。なお、前述のような振幅検査の代わりに、ユーザデータをデータトラックに試験信号として書き込み、振幅が小さくなる時点で起こる再生不良(復号エラー)の発生個数からトラック通過本数を測定する方法でもよい。
【0039】
ところで、ディスクドライブ1の磁気ヘッド12は、リードヘッド12Rとライトヘッド12Wとが同一スライダ上に分離して実装されている。また、磁気ヘッド12は、ロータリ型アクチュエータ13に取り付けられている。一方、磁気ヘッド12の位置は、サーボパターンを再生して得られることから、リードヘッド12R上での位置を検出することとなる。ここで、アドレス情報領域52を書き込むセルフサーボライト工程では、ライトヘッド12Wが書き込むために、ライトヘッド12Wのリードヘッド12Rに対する相対位置を把握しなければならない。
【0040】
そこで、ディスクドライブ1では、リードヘッド12Rとライトヘッド12Wの相対位置を検出するためのヘッドオフセット量を検出する動作が実行される。本実施形態では、テストパターンを、データ領域42であるデータトラック上に記録して、記録されたテストパターンの位置を探すことにより、ライトヘッド12Wのリードヘッド12Rに対する相対位置を測定することができる。従って、本実施形態では、ディスクドライブ1は、当該相対位置を測定した後に、ライトヘッド12Wの位置を調整して、アドレス情報領域52をセルフサーボライトにより書き込む。
【0041】
図9は、本実施形態に関するテストパターンの書き込みクロック位相の検査方法を説明するためのフローチャートである。
【0042】
前述したように、リードヘッド12Rとライトヘッド12Wとのオフセット量のうち、ディスク媒体10の半径方向に寄与する量を測定したが、円周方向に寄与する量を測定する必要がある。円周方向のずれ量については、アドレス情報領域52にテストデータを書き込み、リードヘッド12Rにより再生することで評価することが可能である。以下、図9のフローチャートを参照して、具体的に説明する。
【0043】
まず、テストパターンを、磁性加工により作成されたプリアンブル50から再生される同期信号によりクロック周波数/位相同期を取り、サーボマーク51を始点として、一定時間経過した後に、アドレス情報領域52に書き込む(ブロック200)。このとき、数種類の書き込みクロック位相を使用する。次に、この数種類の書き込みクロック位相から、デコードエラーの起こらない書き込みクロック位相を選択する(ブロック210)。この選択した書き込みクロック位相を使用して、改めてテストパターンをアドレス情報領域52に書き込む(ブロック220)。このテストパターンを再生して、デコード結果に基づいて所定の値からシフトされたシフトエラーでのシフト量を検出する(ブロック230)。
【0044】
このような検査方法により得られたシフト量および書き込みクロック位相を使用して、ディスクドライブ1ではアドレス情報領域52にシリンダコードを書き込むことにより、所望のサーボパターンBを作成することができる。
【0045】
図10は、前述の検査方法におけるデコードエラーの定義と検出方法を説明するための図である。
【0046】
リードヘッド12Rとライトヘッド12Wとのオフセット量のうち、ディスク媒体10の円周方向に寄与する量を考慮しないで書き込むと、図10(A)に示すようなテストパターンを書き込むことになる。これは、プリアンブル50と同様のアドレス情報領域52の磁性部510に磁化反転が起こった場合である。
【0047】
即ち、プリアンブル50にて同期を取ったクロックを用いて再生信号をD/Aコンバータで取り込み、たとえば「磁性・非磁性」で4サンプル1周期となるようなフレームを構成する。当然のように、プリアンブル50では「++00」となる。図5及び図6に示すようサーボパターンを得るには、アドレス情報領域52でのシリンダコードのD/Aコンバータの出力データは、「++00」または「−−00」となることから、「+−00」または「−+00」はエラーとすることができる。これにより、アドレス情報領域52から再生したシリンダコードのデコードエラーを検出できる。
【0048】
図11は、シフトエラーの定義を説明するための図である。
【0049】
図11(A)に示すようなテストパターンをアドレス情報領域52に書き込みしたときに、粗シフト量が適切に調整されていない場合には、図11(B)に示すようなパターンが書き込まれる。このとき、書き込みしたパターンと読出されるパターンとが、合致していないことから、エラーだと判別できる。即ち、図11(C)に示すような書き込みパターンは、正常パターンとして判別される。
【0050】
図12のフローチャートを参照して、粗シフト量の検出方法を説明する。
【0051】
まず、テストパターンAをアドレス情報領域52に書き込む(ブロック300)。アドレス情報領域52から書き込みしたパターンBを読出す(ブロック310)。これらのパターンA,Bを比較する(ブロック320)。この比較結果が不一致のときは、シフトエラーが発生しているため、書き込みパターンAをビットシフトして、読出しパターンBとの比較を繰り返す(ブロック340)。比較結果が一致した場合には、書き込みパターンAのビットシフト量が粗シフト量として検出する(ブロック350)。
【0052】
このような粗シフト量を適切に設定することにより、アドレス情報領域52にシリンダコードを書き込むことにより、図11(C)に示すような所望のサーボパターンを書き込むことができる。
【0053】
実際には、先行するサーボバーストパターン53に、シリンダコードを書き込まないように、十分に大きい粗ディレイを設定してからテストパターンを書き込み、粗ディレイ量を減らすように調整するのが好ましい。そのためにも、アドレス情報領域52は、図6に示すように、サーボパターンの最後端であるほうが好ましい。
【0054】
以上のような検査工程後に、ディスクドライブ1でのセルフサーボライトにより、アドレス情報領域52にシリンダコードを書き込む。このとき、磁性加工により作成されたプリアンブル50を再生してクロック周波数/位相同期を取り、サーボマーク51を始点として、一定時間経過したのちにシリンダコードをアドレス情報領域52に書き込むことで実現できる。
【0055】
さらに、ディスクドライブ1において、データ領域42のデータトラックに対して、ユーザデータを書き込むときは、物理加工で成形されたプリアンブル50、サーボマーク51、サーボバーストパターン53およびアドレス情報領域52に追記されたシリンダコードを再生する。これらのサーボ情報を使用して、CPU17は、ディスク媒体10に対する磁気ヘッド12の相対位置を算出し、磁気ヘッド12を目標データトラックに位置決めした上でユーザデータを書き込む。
【0056】
なお、本実施形態において、ディスク媒体10の物理的加工方法は、非磁性部500の埋め込みの是非を問わない。磁性体に対する加工でも基板に対する加工でもよい。また、磁性部510は記録可能な領域であり、非磁性部500は記録不可能な領域である。
【0057】
(第2の具体例)
図13は、本実施形態に関するディスク媒体10において、具体的構造の一例を示す概念図である。図13においても、図5と同様に、黒の部分は凹状の非磁性部500で、白の部分は凸状の磁性部510である。
【0058】
また、アドレス情報領域52は、N極の凸状の磁性部510、S極の凸状の磁性部520、及び凹状の非磁性部500から構成されている。即ち、アドレス情報領域52は、シリンダコードを含むサーボパターンBを、N極の凸状の磁性部510とS極の凸状の磁性部520の磁化パターン(磁化方向パターン)から構成されている。また、図13に示すように、アドレス情報領域52は、ディスク媒体10の半径方向に一定周期で、かつ円周方向に伸びる非磁性部500が構成されている。
【0059】
図14は、ディスク媒体10の製造工程の一部を示す図である。前述の図3(B)を参照して説明したように、磁性層31をエッチングにより加工する磁性加工処理により、図14に示すパターンが形成される。このパターンに対して磁化(着磁)することにより、図13に示すようなディスクリート・トラック型ディスク媒体10を形成する。
【0060】
ここで、図14のサーボパターンにおいて、シリンダコードを含むアドレス情報領域52での磁性体占有比率は、磁性層の物理加工時の加圧分布を考慮して決めることができる。即ち、サーボバーストの均一な加工を実現するためには、サーボバーストパターン53の磁性体占有比率(図では75%)と同一の磁性体占有比率を、アドレス情報領域52が占める。逆に、ディスクリートトラックの均一な加工を実現するためには、ディスクリートトラック(ユーザデータ領域42)での磁性体占有比率と同一の磁性体占有比率(図では75%)を、アドレス情報領域52が占める。
【0061】
なお、本具体例においても、ディスクリートトラックの測定方法は、前述の図8に示す方法と同様である。また、前述したように、アドレス情報領域52を書き込むセルフサーボライト工程では、ライトヘッド12Wが書き込むために、ライトヘッド12Wのリードヘッド12Rに対する相対位置を把握しなければならない。そこで、ディスクドライブ1では、リードヘッド12Rとライトヘッド12Wの相対位置を検出するためのヘッドオフセット量を検出する動作が実行される。
【0062】
この場合、テストパターンを、データ領域42であるデータトラック上に記録して、記録されたテストパターンの位置を探すことにより、ライトヘッド12Wのリードヘッド12Rに対する相対位置を測定することができる。従って、ディスクドライブ1は、当該相対位置を測定した後に、ライトヘッド12Wの位置を調整して、アドレス情報領域52をセルフサーボライトにより書き込む。
【0063】
さらに、ディスクドライブ1でのセルフサーボライトにより、アドレス情報領域52にシリンダコードを書き込む。このとき、磁性加工により作成されたプリアンブル50を再生してクロック周波数/位相同期を取り、サーボマーク51を始点として、一定時間経過したのちにシリンダコードをアドレス情報領域52に書き込むことで実現できる。さらに、ディスクドライブ1において、データ領域42のデータトラックに対して、ユーザデータを書き込むときは、物理加工で成形されたプリアンブル50、サーボマーク51、サーボバーストパターン53およびアドレス情報領域52に追記されたシリンダコードを再生する。これらのサーボ情報を使用して、CPU17は、ディスク媒体10に対する磁気ヘッド12の相対位置を算出し、磁気ヘッド12を目標データトラックに位置決めした上でユーザデータを書き込む。
【0064】
なお、シリンダコード書き込み時のクロック位相については、事前に調整されてもよいし、されなくてもよい。また、クロック位相の事前調整を省略する代わりに、復号時のクロック同期を考慮して、シリンダコードの先頭にプリアンブルパターンを書き込んでもよい。また、調整されていないときのテストパターン再生信号は、図17(A)に示すように、再生信号をD/Aコンバータで取り込んだ値が0に近い値になり得る。このような特性のテストパターンを利用して、図17(B)に示すように、再生信号をD/Aコンバータで取り込んだ値が0とならなくなるようなクロック位相を求めてから、シリンダコードをライトしてもよい。
【0065】
図15は、図13の変形例を示す図であり、アドレス情報領域として、第1のアドレス情報領域52A及び第2のアドレス情報領域52Bを有する構成を示す。
【0066】
磁気ヘッド12がアドレス情報領域の非磁性部分を通過する位置で、シリンダコードを含むサーボ情報を再生した場合に、特にシリンダコードの再生において十分な利得が得られないことから、シリンダコードのデコードエラーが発生する可能性がある。そこで、本変形例は、図15に示すように、アドレス情報領域として、第1のアドレス情報領域52A及び第2のアドレス情報領域52Bを配置させた構成とする。
【0067】
このような構成において、第1のアドレス情報領域52Aを、サーボバーストパターン53のバーストパターンC,Dの位置と同じ半径位置に配置し、第2のアドレス情報領域52Bを、第1のアドレス情報領域52Aから0.5トラックずらした場所(即ち、バーストパターンA,Bの位置と同じ半径位置)に配置する。
【0068】
図16は、本変形例の第1のアドレス情報領域52A及び第2のアドレス情報領域52Bから再生された再生情報から、磁気ヘッド12の位置情報を生成するための手順を説明するためのフローチャートである。
【0069】
まず、CPU17は、サーボバーストパターン53からリードヘッド12Rにより読出されたサーボバースト信号の振幅を判定する(ブロック400,410)。CPU17は、振幅値の大小関係から最大値を示すバーストパターンの相(A,BまたはC.D)を判定する。即ち、CPU17は、バーストパターンC,Dからの振幅値が最大値を示す場合には、第1のアドレス情報領域52Aからシリンダコードを再生して取得する(ブロック430)。一方、CPU17は、バーストパターンA,Bからの振幅値が最大値を示す場合には、第2のアドレス情報領域52Bからシリンダコードを再生して取得する(ブロック420)。CPU17は、取得したシリンダコードに基づいて、磁気ヘッド12のディスク媒体10に対する相対位置を求める(ブロック440)。
【0070】
以上のようにして、本変形例によれば、0.5トラック分だけ位置がずれて、第1のアドレス情報領域52A及び第2のアドレス情報領域52Bが配置されている構成により、磁気ヘッド12の位置に基づいて、十分な再生利得でシリンダコードを再生することが可能となる。従って、シリンダコードのデコードエラーの発生を抑制することが可能なる。
【0071】
なお、アドレス情報領域52A,52Bの磁性領域の半径位置については、4相振幅バースト(A〜D)を例に示したが、これに限ることはない。即ち、アドレス情報領域52A,52Bの一方を選択できれば、サーボバーストパターンの種類を問わず、位相サーボパターンやナル(null)サーボパターンでもよい。
【0072】
また、本実施形態では、ディスクリート・トラック(discrete track)型ディスク媒体、パターンドメディア型ディスク媒体、あるいはデイスクリート・トラック・記録(DTR)型ディスク媒体として凹凸磁性パターンを例に示したが、これに限ることはない。例えば、磁性部・非磁性部があれば、後工程で凹部に非磁性材料を埋め込み、平坦化したディスク媒体を用いてもよい。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施形態に関するディスクドライブの要部を示すブロック図。
【図2】本実施形態に関するディスク媒体の製造工程を説明するためのフローチャート。
【図3】同製造工程を説明するための概念図。
【図4】本実施形態に関するディスク媒体の構造を説明するための概念図。
【図5】本実施形態の第1の具体例に関するディスク媒体の構造を説明するための概念図。
【図6】第1の具体例に関するディスク媒体の構造の変形例を説明するための概念図。
【図7】同変形例に関するディスク媒体の製造工程を説明するための図。
【図8】本実施形態に関するディスクリートトラックの測定方法を説明するための図。
【図9】本実施形態に関するテストパターンの書き込みクロック位相の検査方法を説明するためのフローチャート。
【図10】同検査方法におけるデコードエラーの定義と検出方法を説明するための図。
【図11】同検査方法におけるシフトエラーの定義を説明するための図。
【図12】同検査方法における粗シフト量検出方法を説明するためのフローチャート。
【図13】本実施形態の第2の具体例に関するディスク媒体の構造を説明するための概念図。
【図14】同第2の具体例に関するディスク媒体の製造工程を説明するための図。
【図15】第2の具体例に関するディスク媒体の構造の変形例を説明するための概念図。
【図16】同変形例において位置情報を生成する手順を説明するためのフローチャート。
【図17】第2の具体例に関するテストパターン再生信号の特性を説明するための図。
【符号の説明】
【0075】
1…ディスクドライブ、10…ディスク媒体、11…スピンドルモータ、
12…磁気ヘッド、12R…リードヘッド、12W…ライトヘッド、
13…アクチュエータ、14…ヘッドアンプ(ヘッドIC)、
15…リード/ライトチャネル、16…サーボコントローラ、
17…マイクロプロセッサ(CPU)、18…モータドライバ、
19…ハードディスクコントローラ(HDC)、20…プリント回路基板(PCB)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体として、ディスクリート・トラック型またはパターンドメディア型のディスク媒体を使用するディスク記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスクドライブを代表とするディスク記憶装置(以下、ディスクドライブと表記する場合がある)の分野では、磁気記録媒体として、ディスクリート・トラック(discrete track)型ディスク媒体、パターンドメディア型ディスク媒体、あるいはデイスクリート・トラック・記録(DTR)型ディスク媒体と呼ばれるディスク媒体が注目されている(例えば、特許文献1,2,3を参照)。
【0003】
このようなディスク媒体は、基本的な構造としては、凸状の磁性部と凹状の非磁性部(空隙)とからなる凹凸磁性パターンにより、サーボ情報が記録されたサーボ領域と、データトラックが形成されているデータ領域とがディスク基板上に構成されている。
【0004】
ところで、ディスク媒体の製造工程では、特に磁性体の物理的加工時において均一に加工するためには、加圧比率を均一化する上で、凹凸磁性パターンを形成する上での磁性部の面積比率(凹凸比)が全体的に均一であることが要求される。この磁性部の面積比率(凹凸比)が全体的に均一化させるためには、サーボ領域(サーボセクタ)における凹凸磁性パターンからなるサーボパターンの均一化を図る必要がある。サーボパターンは、ヘッドの位置決め制御に使用されるサーボ情報である。
【特許文献1】特開2006−31846号公報
【特許文献2】特開2006−228348号公報
【特許文献3】特開平11−45528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2の先行技術文献には、ディスク媒体上にサーボ情報を追記する領域を設けることが開示されている。しかしながら、このような構造は、ディスク媒体の加工時での前記凹凸比が変化するため、加工圧力のばらつきを招く問題がある。また、当該先行技術文献には、サーボパターンに含まれるシリンダコード(アドレス情報)をエッチングなどの物理的方法により生成することが開示されている。しかしながら、シリンダコードを生成するには、非常に微細な物理的加工を要するため、ディスク媒体の製造歩留まりの悪化を招く要因となる。また、特許文献3の先行技術文献には、ディスク媒体の一方の片面には凹凸パターンでサーボパターンを形成し、他方面には磁化反転パターンでサーボパターンを形成することが開示されている。従って、一方の片面については、シリンダコードを微細な物理的加工により形成するため、ディスク媒体の製造歩留まりの悪化を招く要因となる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ディスク面上の凹凸比の均一化を図ることが可能で、かつ特に微細な物理的加工を要するサーボパターンの形成を省略することでディスク媒体の製造歩留まりを向上できるディスク記憶装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の観点は、同一記録面上に、サーボパターンを、凹凸状磁化パターンとN極,S極の磁化パターンとを混在させて構成するディスク媒体を使用するディスクドライブである。
【0008】
本発明の観点に従ったディスク記憶装置は、データの読出し、書き込みを実行するヘッドと、同一記録面上に、磁性部からなる複数のデータトラックが半径方向に形成されているデータ領域と、磁性部と非磁性部とから構成される第1のサーボパターン及び磁性部でN極とS極の磁化パターンから構成される第2のサーボパターンを有するサーボ領域とが形成されているディスク媒体と、前記ディスク媒体の前記サーボ領域から、前記ヘッドにより読出されたリード信号を処理して前記ヘッドの位置決め制御に使用されるサーボ情報を再生する再生処理手段とを備えた構成である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ディスク面上の凹凸比の均一化を図ることが可能で、かつ特に微細な物理的加工を要するサーボパターンの形成を省略することでディスク媒体の製造歩留まりを向上できるディスク記憶装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0011】
(ディスクドライブの構成)
図1は、本実施形態に関するディスクドライブの要部を示すブロック図である。
【0012】
ディスクドライブ1は、ディスク媒体10と、スピンドルモータ11と、磁気ヘッド12と、アクチュエータ13と、ヘッドアンプ(ヘッドIC)14と、プリント回路基板(PCB)20とを有する。
【0013】
ディスク媒体10は、スピンドルモータ11により高速回転される。本実施形態では、ディスク媒体10は、ディスクリート・トラック型ディスク媒体である。なお、ディスクリート・トラック型ディスク媒体は、パターンドメディア型ディスク媒体あるいはデイスクリート・トラック・記録(DTR)型ディスク媒体とも呼ばれている。さらに、ディスク媒体10は、垂直磁気記録方式の磁気記録媒体である。
【0014】
磁気ヘッド12は、リードヘッド12Rとライトヘッド12Wとを有し、リードヘッド12Rにより、ディスク媒体1上に形成されたサーボ領域(サーボセクタ)からサーボパターンを読出す。サーボパターンは、後述するように、トラックアドレス(シリンダコード)及びセクタアドレスを含むアドレス情報や、サーボバーストパターンを有するサーボ情報である。ライトヘッド12Wは、データ領域のデータトラック上にユーザデータを書き込むと共に、セルフサーボ書込み動作時にアドレス情報などをサーボセクタに書き込む。
【0015】
アクチュエータ13は、ボイスコイルモータ(VCM)により駆動し、搭載している磁気ヘッド12をディスク媒体10上の半径方向に移動制御する。ボイスコイルモータは、PCB20上に実装されているモータドライバ18により駆動制御される。ヘッドアンプ14は、リードヘッド12Rにより読出されたリード信号(サーボパターン及びユーザデータ)を増幅して、PCB20上に実装されているリード/ライトチャネル(信号処理ユニット)15に出力する。
【0016】
PCB20には、リード/ライトチャネル15と、マイクロプロセッサ(CPU)17と、モータドライバ18と、ハードディスクコントローラ(HDC)19とが実装されている。リード/ライトチャネル15は、リード/ライト信号を処理する信号処理ユニットであり、リードヘッド12Rからのリード信号からサーボ情報の再生処理を行なうサーボコントローラ16を含む。
【0017】
サーボコントローラ16は、再生したサーボ情報をCPU17に出力する。なお、サーボコントローラ16は、再生したサーボ情報のサーボバーストパターン(A〜D)から位置誤差データを生成してCPU17に出力する。CPU17は、ディスクドライブ1のメインコントローラであり、サーボ情報及び位置誤差データに基づいて、磁気ヘッド12の位置決め制御を実行する。モータドライバ18は、CPU170の制御により、アクチュエータ13のボイスコイルモータに駆動電流を供給するVCMドライバ、及びスピンドルモータ11に駆動電流を供給するSPMドライバを含む。
【0018】
HDC19は、ディスクドライブ1と外部のホストシステムとのデータ転送などを行なうインターフェースであり、CPU17の制御に基づいて、リード/ライトチャネル15から出力されるユーザデータをホストシステムに転送する。また、HDC19は、ホストシステムからのデータを受信し、リード/ライトチャネル15に転送する。
【0019】
(ディスク媒体の構造及び製造工程)
まず、図2及び図3を参照して、本実施形態に関するディスク媒体10の製造工程の概略を説明する。なお、図3は、ディスク媒体の断面を示す概念図である。
【0020】
図3(A)に示すような基板30上に磁性層31が形成されているディスク媒体を用意し、図3(B)に示すように、磁性層31に対する磁性加工処理を実行する(ブロック100)。さらに、磁性層31に対して磁化(着磁)することにより、図3(C)に示すようなディスクリート・トラック型ディスク媒体10を形成する(ブロック110)。
【0021】
次に、サーボライト工程により、図3(D)に示すように、ディスク媒体10上のサーボ領域(サーボセクタ)に対して、サーボパターン(サーボ情報)A,Bが磁気記録される(ブロック120)。ここで、ディスク媒体10は垂直磁気記録方式であるため、直流磁界を印加することにより、再生可能なサーボパターンを記録する。
【0022】
図4は、ディスクリート・トラック型ディスク媒体10上に形成されたデータ領域42と、サーボライト工程により形成されたサーボ領域43A,43Bの構成を示す概念図である。なお、図4において、符号40はディスク面の半径方向を示し、符号41は周方向を示す。
【0023】
データ領域42は、ユーザデータを記録するための凸状の磁性部からなる複数のデータトラックが形成されている。各データトラック間は、凹状の非磁性部からなるガードバンドである。
【0024】
サーボ領域43A,43Bは、半径方向に形成される放射状の各サーボセクタに含まれる領域である。各サーボセクタは、ディスク媒体10上の周方向41に所定の間隔をもって形成されている。ここで、サーボ領域43Aには、凸状の磁性部と凹状の非磁性部とから構成されるサーボパターンA(第1のサーボパターン)が記録される。このサーボパターンAは、サーボ情報の中で、例えばプリアンブル領域(同期信号などの記録領域)及びサーボマーク領域(サーボパターンの検出信号)に対応するパターンである。
【0025】
サーボ領域43Bには、N極とS極の磁化パターンから構成されるサーボパターンB(第2のサーボパターン)が記録される。このサーボパターンBは、サーボ情報の中で、シリンダコード(トラックアドレス)及びセクタアドレスを含むアドレス情報に対応するパターンである。なお、サーボ情報の中で、サーボバーストパターンは、サーボパターンAに相当する凸状の磁性部と凹状の非磁性部とから構成されるパターンにより構成される。
【0026】
以上のようなディスク媒体10が組み込まれたディスクドライブ1において、リード/ライトチャネル15は、リードヘッド12Rにより読出されたサーボパターンA,B、及び図示しないサーボバーストパターンを含むサーボ情報を再生し、CPU17に出力する。CPU17は、再生されたサーボ情報を使用して、アクチュエータ13を駆動制御し、時期ヘッド12をディスク媒体10上の目標位置である目標データトラックに位置決め制御する。
【0027】
以上のような本実施形態のディスク媒体10であれば、シリンダコード(トラックアドレス)及びセクタアドレスを含むアドレス情報は、N極とS極の磁化パターンから構成されるサーボパターンBとして記録することができる。これにより、特にシリンダコードを非常に微細な物理的加工を要する凸状の磁性部と凹状の非磁性部とから構成される凹凸パターンにより形成する必要がないため、ディスク媒体の製造歩留まりを向上できる。サーボ領域43BはN極とS極の磁化パターンから構成されるサーボパターンBを記録する領域であるため、ディスクドライブ1によりセルフサーボライト方法により、シリンダコードを含むアドレス情報を追記することができる。
【0028】
また、各サーボセクタ毎に、凹凸パターンではなく、N極とS極の磁化パターンを構成する領域を設けるため、サーボ領域における凹凸比の均一化を図ることが容易となり、ディスクリート媒体製造時の加工圧力を均一化を図ることができる。換言すれば、サーボ領域において、シリンダコードを含むアドレス情報を構成するサーボパターンBに対応する凹凸パターンの面積を削除できるため、サーボ領域における凹凸パターン全体の凹凸比の均一化を図ることが容易となる。
【0029】
(第1の具体例)
図5は、本実施形態に関するディスク媒体10において、具体的構造の一例を示す概念図である。図5において、黒の部分は凹状の非磁性部500で、白の部分は凸状の磁性部510である。
【0030】
図5に示すように、複数のデータトラックを有するデータ領域42及びアドレス情報領域52を除くサーボ領域(サーボセクタ)43は、非磁性部500及び磁性部510からなる凹凸パターンから構成されている。即ち、データ領域42では、磁性部510からなるデータトラックと、各トラック間で非磁性部500からなるガードバンドが設けられている。
【0031】
サーボ領域(サーボセクタ)43は、プリアンブル領域50、サーボマーク領域51、アドレス情報領域52、及びサーボバーストパターン領域53を有する。プリアンブル領域50、サーボマーク領域51、及びサーボバーストパターン領域53は、非磁性部500及び磁性部510からなる凹凸パターン(サーボパターンA)から構成されている。
【0032】
ここで、アドレス情報領域52は、N極の凸状の磁性部510、S極の凸状の磁性部520、及び凹状の非磁性部500から構成されている。即ち、アドレス情報領域52は、シリンダコードを含むサーボパターンBを、N極の凸状の磁性部510とS極の凸状の磁性部520の磁化パターン(磁化方向パターン)から構成されている。また、図5に示すように、アドレス情報領域52は、周方向に対してパターンの偶数番目が非磁性部500から構成されている。
【0033】
図6は、図5の変形例を示す図であり、アドレス情報領域52は、サーボバーストパターン領域53に隣接して、サーボ領域43の最後端に配置された構成である。
【0034】
図7は、ディスク媒体10の製造工程の一部を示す図である。前述の図3(B)を参照して説明したように、磁性層31をエッチングにより加工する磁性加工処理により、図7に示すパターンが形成される。このパターンに対して磁化(着磁)することにより、図6に示すようなディスクリート・トラック型ディスク媒体10を形成する。
【0035】
図8は、ディスクリート・トラック型ディスク媒体10の製造工程に含まれるディスクリートトラックの測定方法を説明するための図である。
【0036】
即ち、本実施形態では、シリンダコードが存在しない状態で、磁気ヘッド12をディスク媒体10上のアドレス情報領域52に相当する位置に位置決めして、アドレス情報領域52を書き込むセルフサーボライト工程を行なう。この場合、磁気ヘッド12がディスクリートトラック上に位置決めされていることを検出する必要がある。以下、具体的に、ディスクリートトラックの測定方法を説明する。
【0037】
まず、ディスク媒体10上のある特定トラックにおいて、検査用の一定振幅信号を1周に亘って書き込む。ここで、図8(A)は、当該検査用の一定振幅信号を書き込む際に、磁気ヘッド12の相対位置がディスクリートトラックに沿った場合(80)と、ディスクリートトラックを跨ぐ場合(81)を示している。
【0038】
磁気ヘッド12がディスクリートトラックを跨ぐ場合(81)、図8(C)に示すように、非磁性部500を再生することから、再生振幅が小さくなる。このような再生振幅が小さくなる箇所がなくなるように、各サーボセクタにおける磁気ヘッド12の位置を補正し、図8(B)に示すような再生振幅が得られるように、磁気ヘッド12を位置決めする。これにより、磁気ヘッド12を、ディスクリートトラック上に位置決めすることが可能となる。なお、前述のような振幅検査の代わりに、ユーザデータをデータトラックに試験信号として書き込み、振幅が小さくなる時点で起こる再生不良(復号エラー)の発生個数からトラック通過本数を測定する方法でもよい。
【0039】
ところで、ディスクドライブ1の磁気ヘッド12は、リードヘッド12Rとライトヘッド12Wとが同一スライダ上に分離して実装されている。また、磁気ヘッド12は、ロータリ型アクチュエータ13に取り付けられている。一方、磁気ヘッド12の位置は、サーボパターンを再生して得られることから、リードヘッド12R上での位置を検出することとなる。ここで、アドレス情報領域52を書き込むセルフサーボライト工程では、ライトヘッド12Wが書き込むために、ライトヘッド12Wのリードヘッド12Rに対する相対位置を把握しなければならない。
【0040】
そこで、ディスクドライブ1では、リードヘッド12Rとライトヘッド12Wの相対位置を検出するためのヘッドオフセット量を検出する動作が実行される。本実施形態では、テストパターンを、データ領域42であるデータトラック上に記録して、記録されたテストパターンの位置を探すことにより、ライトヘッド12Wのリードヘッド12Rに対する相対位置を測定することができる。従って、本実施形態では、ディスクドライブ1は、当該相対位置を測定した後に、ライトヘッド12Wの位置を調整して、アドレス情報領域52をセルフサーボライトにより書き込む。
【0041】
図9は、本実施形態に関するテストパターンの書き込みクロック位相の検査方法を説明するためのフローチャートである。
【0042】
前述したように、リードヘッド12Rとライトヘッド12Wとのオフセット量のうち、ディスク媒体10の半径方向に寄与する量を測定したが、円周方向に寄与する量を測定する必要がある。円周方向のずれ量については、アドレス情報領域52にテストデータを書き込み、リードヘッド12Rにより再生することで評価することが可能である。以下、図9のフローチャートを参照して、具体的に説明する。
【0043】
まず、テストパターンを、磁性加工により作成されたプリアンブル50から再生される同期信号によりクロック周波数/位相同期を取り、サーボマーク51を始点として、一定時間経過した後に、アドレス情報領域52に書き込む(ブロック200)。このとき、数種類の書き込みクロック位相を使用する。次に、この数種類の書き込みクロック位相から、デコードエラーの起こらない書き込みクロック位相を選択する(ブロック210)。この選択した書き込みクロック位相を使用して、改めてテストパターンをアドレス情報領域52に書き込む(ブロック220)。このテストパターンを再生して、デコード結果に基づいて所定の値からシフトされたシフトエラーでのシフト量を検出する(ブロック230)。
【0044】
このような検査方法により得られたシフト量および書き込みクロック位相を使用して、ディスクドライブ1ではアドレス情報領域52にシリンダコードを書き込むことにより、所望のサーボパターンBを作成することができる。
【0045】
図10は、前述の検査方法におけるデコードエラーの定義と検出方法を説明するための図である。
【0046】
リードヘッド12Rとライトヘッド12Wとのオフセット量のうち、ディスク媒体10の円周方向に寄与する量を考慮しないで書き込むと、図10(A)に示すようなテストパターンを書き込むことになる。これは、プリアンブル50と同様のアドレス情報領域52の磁性部510に磁化反転が起こった場合である。
【0047】
即ち、プリアンブル50にて同期を取ったクロックを用いて再生信号をD/Aコンバータで取り込み、たとえば「磁性・非磁性」で4サンプル1周期となるようなフレームを構成する。当然のように、プリアンブル50では「++00」となる。図5及び図6に示すようサーボパターンを得るには、アドレス情報領域52でのシリンダコードのD/Aコンバータの出力データは、「++00」または「−−00」となることから、「+−00」または「−+00」はエラーとすることができる。これにより、アドレス情報領域52から再生したシリンダコードのデコードエラーを検出できる。
【0048】
図11は、シフトエラーの定義を説明するための図である。
【0049】
図11(A)に示すようなテストパターンをアドレス情報領域52に書き込みしたときに、粗シフト量が適切に調整されていない場合には、図11(B)に示すようなパターンが書き込まれる。このとき、書き込みしたパターンと読出されるパターンとが、合致していないことから、エラーだと判別できる。即ち、図11(C)に示すような書き込みパターンは、正常パターンとして判別される。
【0050】
図12のフローチャートを参照して、粗シフト量の検出方法を説明する。
【0051】
まず、テストパターンAをアドレス情報領域52に書き込む(ブロック300)。アドレス情報領域52から書き込みしたパターンBを読出す(ブロック310)。これらのパターンA,Bを比較する(ブロック320)。この比較結果が不一致のときは、シフトエラーが発生しているため、書き込みパターンAをビットシフトして、読出しパターンBとの比較を繰り返す(ブロック340)。比較結果が一致した場合には、書き込みパターンAのビットシフト量が粗シフト量として検出する(ブロック350)。
【0052】
このような粗シフト量を適切に設定することにより、アドレス情報領域52にシリンダコードを書き込むことにより、図11(C)に示すような所望のサーボパターンを書き込むことができる。
【0053】
実際には、先行するサーボバーストパターン53に、シリンダコードを書き込まないように、十分に大きい粗ディレイを設定してからテストパターンを書き込み、粗ディレイ量を減らすように調整するのが好ましい。そのためにも、アドレス情報領域52は、図6に示すように、サーボパターンの最後端であるほうが好ましい。
【0054】
以上のような検査工程後に、ディスクドライブ1でのセルフサーボライトにより、アドレス情報領域52にシリンダコードを書き込む。このとき、磁性加工により作成されたプリアンブル50を再生してクロック周波数/位相同期を取り、サーボマーク51を始点として、一定時間経過したのちにシリンダコードをアドレス情報領域52に書き込むことで実現できる。
【0055】
さらに、ディスクドライブ1において、データ領域42のデータトラックに対して、ユーザデータを書き込むときは、物理加工で成形されたプリアンブル50、サーボマーク51、サーボバーストパターン53およびアドレス情報領域52に追記されたシリンダコードを再生する。これらのサーボ情報を使用して、CPU17は、ディスク媒体10に対する磁気ヘッド12の相対位置を算出し、磁気ヘッド12を目標データトラックに位置決めした上でユーザデータを書き込む。
【0056】
なお、本実施形態において、ディスク媒体10の物理的加工方法は、非磁性部500の埋め込みの是非を問わない。磁性体に対する加工でも基板に対する加工でもよい。また、磁性部510は記録可能な領域であり、非磁性部500は記録不可能な領域である。
【0057】
(第2の具体例)
図13は、本実施形態に関するディスク媒体10において、具体的構造の一例を示す概念図である。図13においても、図5と同様に、黒の部分は凹状の非磁性部500で、白の部分は凸状の磁性部510である。
【0058】
また、アドレス情報領域52は、N極の凸状の磁性部510、S極の凸状の磁性部520、及び凹状の非磁性部500から構成されている。即ち、アドレス情報領域52は、シリンダコードを含むサーボパターンBを、N極の凸状の磁性部510とS極の凸状の磁性部520の磁化パターン(磁化方向パターン)から構成されている。また、図13に示すように、アドレス情報領域52は、ディスク媒体10の半径方向に一定周期で、かつ円周方向に伸びる非磁性部500が構成されている。
【0059】
図14は、ディスク媒体10の製造工程の一部を示す図である。前述の図3(B)を参照して説明したように、磁性層31をエッチングにより加工する磁性加工処理により、図14に示すパターンが形成される。このパターンに対して磁化(着磁)することにより、図13に示すようなディスクリート・トラック型ディスク媒体10を形成する。
【0060】
ここで、図14のサーボパターンにおいて、シリンダコードを含むアドレス情報領域52での磁性体占有比率は、磁性層の物理加工時の加圧分布を考慮して決めることができる。即ち、サーボバーストの均一な加工を実現するためには、サーボバーストパターン53の磁性体占有比率(図では75%)と同一の磁性体占有比率を、アドレス情報領域52が占める。逆に、ディスクリートトラックの均一な加工を実現するためには、ディスクリートトラック(ユーザデータ領域42)での磁性体占有比率と同一の磁性体占有比率(図では75%)を、アドレス情報領域52が占める。
【0061】
なお、本具体例においても、ディスクリートトラックの測定方法は、前述の図8に示す方法と同様である。また、前述したように、アドレス情報領域52を書き込むセルフサーボライト工程では、ライトヘッド12Wが書き込むために、ライトヘッド12Wのリードヘッド12Rに対する相対位置を把握しなければならない。そこで、ディスクドライブ1では、リードヘッド12Rとライトヘッド12Wの相対位置を検出するためのヘッドオフセット量を検出する動作が実行される。
【0062】
この場合、テストパターンを、データ領域42であるデータトラック上に記録して、記録されたテストパターンの位置を探すことにより、ライトヘッド12Wのリードヘッド12Rに対する相対位置を測定することができる。従って、ディスクドライブ1は、当該相対位置を測定した後に、ライトヘッド12Wの位置を調整して、アドレス情報領域52をセルフサーボライトにより書き込む。
【0063】
さらに、ディスクドライブ1でのセルフサーボライトにより、アドレス情報領域52にシリンダコードを書き込む。このとき、磁性加工により作成されたプリアンブル50を再生してクロック周波数/位相同期を取り、サーボマーク51を始点として、一定時間経過したのちにシリンダコードをアドレス情報領域52に書き込むことで実現できる。さらに、ディスクドライブ1において、データ領域42のデータトラックに対して、ユーザデータを書き込むときは、物理加工で成形されたプリアンブル50、サーボマーク51、サーボバーストパターン53およびアドレス情報領域52に追記されたシリンダコードを再生する。これらのサーボ情報を使用して、CPU17は、ディスク媒体10に対する磁気ヘッド12の相対位置を算出し、磁気ヘッド12を目標データトラックに位置決めした上でユーザデータを書き込む。
【0064】
なお、シリンダコード書き込み時のクロック位相については、事前に調整されてもよいし、されなくてもよい。また、クロック位相の事前調整を省略する代わりに、復号時のクロック同期を考慮して、シリンダコードの先頭にプリアンブルパターンを書き込んでもよい。また、調整されていないときのテストパターン再生信号は、図17(A)に示すように、再生信号をD/Aコンバータで取り込んだ値が0に近い値になり得る。このような特性のテストパターンを利用して、図17(B)に示すように、再生信号をD/Aコンバータで取り込んだ値が0とならなくなるようなクロック位相を求めてから、シリンダコードをライトしてもよい。
【0065】
図15は、図13の変形例を示す図であり、アドレス情報領域として、第1のアドレス情報領域52A及び第2のアドレス情報領域52Bを有する構成を示す。
【0066】
磁気ヘッド12がアドレス情報領域の非磁性部分を通過する位置で、シリンダコードを含むサーボ情報を再生した場合に、特にシリンダコードの再生において十分な利得が得られないことから、シリンダコードのデコードエラーが発生する可能性がある。そこで、本変形例は、図15に示すように、アドレス情報領域として、第1のアドレス情報領域52A及び第2のアドレス情報領域52Bを配置させた構成とする。
【0067】
このような構成において、第1のアドレス情報領域52Aを、サーボバーストパターン53のバーストパターンC,Dの位置と同じ半径位置に配置し、第2のアドレス情報領域52Bを、第1のアドレス情報領域52Aから0.5トラックずらした場所(即ち、バーストパターンA,Bの位置と同じ半径位置)に配置する。
【0068】
図16は、本変形例の第1のアドレス情報領域52A及び第2のアドレス情報領域52Bから再生された再生情報から、磁気ヘッド12の位置情報を生成するための手順を説明するためのフローチャートである。
【0069】
まず、CPU17は、サーボバーストパターン53からリードヘッド12Rにより読出されたサーボバースト信号の振幅を判定する(ブロック400,410)。CPU17は、振幅値の大小関係から最大値を示すバーストパターンの相(A,BまたはC.D)を判定する。即ち、CPU17は、バーストパターンC,Dからの振幅値が最大値を示す場合には、第1のアドレス情報領域52Aからシリンダコードを再生して取得する(ブロック430)。一方、CPU17は、バーストパターンA,Bからの振幅値が最大値を示す場合には、第2のアドレス情報領域52Bからシリンダコードを再生して取得する(ブロック420)。CPU17は、取得したシリンダコードに基づいて、磁気ヘッド12のディスク媒体10に対する相対位置を求める(ブロック440)。
【0070】
以上のようにして、本変形例によれば、0.5トラック分だけ位置がずれて、第1のアドレス情報領域52A及び第2のアドレス情報領域52Bが配置されている構成により、磁気ヘッド12の位置に基づいて、十分な再生利得でシリンダコードを再生することが可能となる。従って、シリンダコードのデコードエラーの発生を抑制することが可能なる。
【0071】
なお、アドレス情報領域52A,52Bの磁性領域の半径位置については、4相振幅バースト(A〜D)を例に示したが、これに限ることはない。即ち、アドレス情報領域52A,52Bの一方を選択できれば、サーボバーストパターンの種類を問わず、位相サーボパターンやナル(null)サーボパターンでもよい。
【0072】
また、本実施形態では、ディスクリート・トラック(discrete track)型ディスク媒体、パターンドメディア型ディスク媒体、あるいはデイスクリート・トラック・記録(DTR)型ディスク媒体として凹凸磁性パターンを例に示したが、これに限ることはない。例えば、磁性部・非磁性部があれば、後工程で凹部に非磁性材料を埋め込み、平坦化したディスク媒体を用いてもよい。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施形態に関するディスクドライブの要部を示すブロック図。
【図2】本実施形態に関するディスク媒体の製造工程を説明するためのフローチャート。
【図3】同製造工程を説明するための概念図。
【図4】本実施形態に関するディスク媒体の構造を説明するための概念図。
【図5】本実施形態の第1の具体例に関するディスク媒体の構造を説明するための概念図。
【図6】第1の具体例に関するディスク媒体の構造の変形例を説明するための概念図。
【図7】同変形例に関するディスク媒体の製造工程を説明するための図。
【図8】本実施形態に関するディスクリートトラックの測定方法を説明するための図。
【図9】本実施形態に関するテストパターンの書き込みクロック位相の検査方法を説明するためのフローチャート。
【図10】同検査方法におけるデコードエラーの定義と検出方法を説明するための図。
【図11】同検査方法におけるシフトエラーの定義を説明するための図。
【図12】同検査方法における粗シフト量検出方法を説明するためのフローチャート。
【図13】本実施形態の第2の具体例に関するディスク媒体の構造を説明するための概念図。
【図14】同第2の具体例に関するディスク媒体の製造工程を説明するための図。
【図15】第2の具体例に関するディスク媒体の構造の変形例を説明するための概念図。
【図16】同変形例において位置情報を生成する手順を説明するためのフローチャート。
【図17】第2の具体例に関するテストパターン再生信号の特性を説明するための図。
【符号の説明】
【0075】
1…ディスクドライブ、10…ディスク媒体、11…スピンドルモータ、
12…磁気ヘッド、12R…リードヘッド、12W…ライトヘッド、
13…アクチュエータ、14…ヘッドアンプ(ヘッドIC)、
15…リード/ライトチャネル、16…サーボコントローラ、
17…マイクロプロセッサ(CPU)、18…モータドライバ、
19…ハードディスクコントローラ(HDC)、20…プリント回路基板(PCB)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データの読出し、書き込みを実行するヘッドと、
同一記録面上に、磁性部からなる複数のデータトラックが半径方向に形成されているデータ領域と、磁性部と非磁性部とから構成される第1のサーボパターン及び磁性部でN極とS極の磁化パターンから構成される第2のサーボパターンを有するサーボ領域とが形成されているディスク媒体と、
前記ディスク媒体の前記サーボ領域から、前記ヘッドにより読出されたリード信号を処理して前記ヘッドの位置決め制御に使用されるサーボ情報を再生する再生処理手段と
を具備したことを特徴とするディスク記憶装置。
【請求項2】
前記サーボ領域は、
周方向に所定の間隔をもって配置される複数のサーボセクタを有し、
前記各サーボセクタに、前記第1及び第2のサーボパターンが記録されている構成であることを特徴とする請求項1に記載のディスク記憶装置。
【請求項3】
前記サーボ領域は、
周方向に所定の間隔をもって配置される複数のサーボセクタを有し、
前記各サーボセクタには、前記第1のサーボパターンが記録されているサーボセクタ及び前記第2のサーボパターンが記録されているサーボセクタのそれぞれが含まれている構成であることを特徴とする請求項1に記載のディスク記憶装置。
【請求項4】
前記第2のサーボパターンは、非磁性部を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のディスク記憶装置。
【請求項5】
前記第1のサーボパターンは、同一方向に磁化されている構成であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のディスク記憶装置。
【請求項6】
前記第2のサーボパターンに含まれる前記非磁性部は、前記ディスク媒体の半径方向に連続して設けられている構成であることを特徴とする請求項4に記載のディスク記憶装置。
【請求項7】
前記第2のサーボパターンに含まれる前記非磁性部は、前記ディスク媒体の周方向に連続して設けられている構成であることを特徴とする請求項4に記載のディスク記憶装置。
【請求項8】
前記第2のサーボパターンは、前記サーボ情報に含まれるアドレス情報を示すパターンであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のディスク記憶装置。
【請求項9】
前記ディスク媒体上に対してサーボ情報を書き込むサーボセルフライト手段を有し、
前記第2のサーボパターンは、前記サーボ情報に含まれるアドレス情報を示すパターンであり、前記サーボセルフライト手段により書き込まれて追記されるパターンであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のディスク記憶装置。
【請求項10】
前記第1のサーボパターンは、前記サーボ情報に含まれるプリアンブル及びサーボマークを示すパターンであることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のディスク記憶装置。
【請求項11】
前記ディスク媒体は、垂直磁気記録方式の磁気ディスクであることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のディスク記憶装置。
【請求項12】
前記ディスク媒体は、前記磁性部が凸状であり、非磁性部が凹状であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のディスク記憶装置。
【請求項1】
データの読出し、書き込みを実行するヘッドと、
同一記録面上に、磁性部からなる複数のデータトラックが半径方向に形成されているデータ領域と、磁性部と非磁性部とから構成される第1のサーボパターン及び磁性部でN極とS極の磁化パターンから構成される第2のサーボパターンを有するサーボ領域とが形成されているディスク媒体と、
前記ディスク媒体の前記サーボ領域から、前記ヘッドにより読出されたリード信号を処理して前記ヘッドの位置決め制御に使用されるサーボ情報を再生する再生処理手段と
を具備したことを特徴とするディスク記憶装置。
【請求項2】
前記サーボ領域は、
周方向に所定の間隔をもって配置される複数のサーボセクタを有し、
前記各サーボセクタに、前記第1及び第2のサーボパターンが記録されている構成であることを特徴とする請求項1に記載のディスク記憶装置。
【請求項3】
前記サーボ領域は、
周方向に所定の間隔をもって配置される複数のサーボセクタを有し、
前記各サーボセクタには、前記第1のサーボパターンが記録されているサーボセクタ及び前記第2のサーボパターンが記録されているサーボセクタのそれぞれが含まれている構成であることを特徴とする請求項1に記載のディスク記憶装置。
【請求項4】
前記第2のサーボパターンは、非磁性部を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のディスク記憶装置。
【請求項5】
前記第1のサーボパターンは、同一方向に磁化されている構成であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のディスク記憶装置。
【請求項6】
前記第2のサーボパターンに含まれる前記非磁性部は、前記ディスク媒体の半径方向に連続して設けられている構成であることを特徴とする請求項4に記載のディスク記憶装置。
【請求項7】
前記第2のサーボパターンに含まれる前記非磁性部は、前記ディスク媒体の周方向に連続して設けられている構成であることを特徴とする請求項4に記載のディスク記憶装置。
【請求項8】
前記第2のサーボパターンは、前記サーボ情報に含まれるアドレス情報を示すパターンであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のディスク記憶装置。
【請求項9】
前記ディスク媒体上に対してサーボ情報を書き込むサーボセルフライト手段を有し、
前記第2のサーボパターンは、前記サーボ情報に含まれるアドレス情報を示すパターンであり、前記サーボセルフライト手段により書き込まれて追記されるパターンであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のディスク記憶装置。
【請求項10】
前記第1のサーボパターンは、前記サーボ情報に含まれるプリアンブル及びサーボマークを示すパターンであることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のディスク記憶装置。
【請求項11】
前記ディスク媒体は、垂直磁気記録方式の磁気ディスクであることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のディスク記憶装置。
【請求項12】
前記ディスク媒体は、前記磁性部が凸状であり、非磁性部が凹状であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のディスク記憶装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−158060(P2009−158060A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338217(P2007−338217)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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