説明

ディスプレイの不変性評価方法

【課題】ディスプレイの性能の信頼性を向上することができるディスプレイの不変性評価方法を提供する。
【解決手段】一時点において、画質評価用のテストパターンを第1のディスプレイ2a〜2dに表示し、これをデジタルカメラ6で撮影した後、記憶手段3cに記憶する。次に、他時点において、テストパターンを第1のディスプレイ2a〜2dに表示し、一時点におけるテストパターンの画像を第2のディスプレイ7に表示し、これらテストパターンの画像を目視で比較し、他時点でのテストパターンの画像の変化の有無を判断することで、ディスプレイの性能の信頼性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、撮像装置によって撮影された画像をディスプレイに表示し、このディスプレイ画像を評価することで、撮像装置の不変性検査を行なうためのディスプレイの不変性評価方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
医療分野において、MRI診断装置、X線診断装置、CR(コンピューテッドラジオグラフィー)等の医療用撮像装置で撮影された患者の画像を、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(液晶表示装置)等のディスプレイに表示し、この診断画像を解析することで、患者の診断を行なっている。
ところが、前記ディスプレイは、経時的な変動等によって画質が変化することがあり、このような画質の変化は、診断画像の高信頼な解析を損ない、誤診の原因とも成り得る。このため、ディスプレイにより診断を行なう場合には、ディスプレイの性能を適正に保つための品質管理(以下、QCという)が必要である。
ディスプレイのQCのうちいくつかの項目は、ディスプレイに品質検査用のテストパターンの画像を表示して、このテストパターン画像の変化を目視で評価することで行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した目視評価において、ユーザーは、ディスプレイに映し出されるテストパターン画像を、記憶の中にある基準画像と比較し、テストパターン画像の経時的な変化を判断しているため、信頼性の高い評価結果が得られないという事情がある。
本発明の技術的課題は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ディスプレイの性能の信頼性を向上することができるディスプレイの不変性評価方法を提供することにある。
なお、本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明は、一時点において、画質評価用のテストパターンを第1のディスプレイに表示する工程と、前記第1のディスプレイに表示された前記テストパターンの画像を、撮影手段で撮影する工程と、前記撮影手段で撮影した前記テストパターンの画像データを記憶手段に記憶する工程と、他時点において、前記テストパターンを前記第1のディスプレイに表示するとともに、前記記憶手段に記憶された一時点における前記テストパターンの画像を、予め表示性能が保証されている第2のディスプレイに表示する工程と、前記第1のディスプレイに表示された他時点での前記テストパターンの画像と、前記第2のディスプレイに表示された一時点での前記テストパターンの画像とを目視で比較し、他時点での前記テストパターンの画像の変化の有無を判断する工程とを含むことを特徴とするディスプレイの不変性評価方法を提供するものである。
【0005】
また、本発明は、一時点において、画質評価用のテストパターンを第1のディスプレイに表示する工程と、前記第1のディスプレイに表示された前記テストパターンの画像を、撮影手段で撮影する工程と、前記撮影手段で撮影した前記テストパターンの画像データを記憶手段に記憶する工程と、他時点において、前記テストパターンを前記第1のディスプレイに表示し、これを前記撮影手段で撮影する工程と、前記撮影手段で撮影した他時点における前記テストパターンの画像とともに、前記記憶手段に記憶された一時点における前記テストパターンの画像を、予め表示性能が保証されている第2のディスプレイに表示する工程と、前記第2のディスプレイに表示された他時点と一時点での前記テストパターンの画像を目視で比較し、他時点での前記テストパターンの画像の変化の有無を判断する工程とを含むことを特徴とするディスプレイの不変性評価方法を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係るディスプレイの不変性評価システムの一実施例を示すブロック図である。図2は、図1の評価システムを用いた不変性評価方法を説明するフローチャートである。
【0007】
図1に示す不変性評価システム1は、主にMRI、X線撮影装置、CTおよびCR等の各種の医療用撮像装置(診断装置)によって撮影された画像データを受け取り、医療診断に供される4台の第1のディスプレイ2a〜2dと、制御手段3と、この制御手段3に接続され、各種の入力を行なうための入力手段であるキーボード4およびマウス5と、第1のディスプレイ2a〜2dに表示される画像を撮影するデジタルカメラ6と、このデジタルカメラ6が撮像した画像データを表示する第2のディスプレイ7とを有している。
【0008】
前記第1のディスプレイ2a〜2dには、特に限定はなく、対応する医療用撮像装置に応じて、適正な読影/診断(モニタ診断)を行える診断画像を表示可能であれば、CRT(Cathode Ray Tube)、LCD(液晶ディスプレイ)、プラズマディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイおよび電界発光ディスプレイ等の各種のディスプレイが利用可能である。例えば、対応する医療用撮像装置がCRであれば、通常、UXGA(1600画素×1200画素)クラス以上の医療用モノクロLCDや同CRTが利用される。また、前記第2のディスプレイ7は、第1のディスプレイ2a〜2dと同様のものが使用できるが、入力に対して正常な表示をする状態にあることが保証されているものとする。
【0009】
なお、前記不変性評価システム1は、4台の第1のディスプレイ2a〜2dを有するものであるが、本発明はこれに限定されず、複数台の診断用のディスプレイを有し、かつ制御手段3によって画像表示等を管理可能であれば、3台以下もしくは5台以上のディスプレイを有してもよい。
【0010】
前記制御手段3は、第1のディスプレイ2a〜2dおよび第2のディスプレイ7に画像を表示させるとともに、不変性評価システム1の全体の制御を行なうもので、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)やワークステーション(WS)を利用して構成される。
また、制御手段3には、表示制御部3aと、この表示制御部3aに接続されたQCツール3bと、デジタルカメラ6が撮像した画像データを記憶する記憶手段3cとを有し、入力手段であるキーボード4およびマウス5がそれぞれ接続されている。なお、前記記憶手段3cとしては、ハードディスク等が用いられる。
【0011】
前記表示制御部3aは、通常の医療診断においては、診断画像の画像データを受け取り、必要に応じて各種の画像処理を施した後、第1のディスプレイ2a〜2dに送信する。
【0012】
一方、表示制御部3aは、第1のディスプレイ2a〜2dのQCを行なう際には、QCツール3bからQC用テストパターンを受け取り、第1のディスプレイ2a〜2dに送信する。さらに、図3に示すようなQC用チェック画面8の画像データを受け取り、第2のディスプレイ7に送信する。なお、QC用チェック画面8は、後述する基礎画像を表示する画像表示領域8aと、対象ディスプレイおよび基準日時選択領域8bと、表示パターン評価項目選択および評価結果入力領域8cと、現時点での対象ディスプレイに表示されたテストパターンのデジタルカメラ撮影画像表示領域8dとを有する。
【0013】
ここで、対象ディスプレイ選択領域においては、ディスプレイシステムの有する全てのQC対象ディスプレイ(本実施例では、第1のディスプレイ2a〜2dにそれぞれ「第1内科第1〜第4ディスプレイ」と名付けられている)から一つを選択することができる。また、基準日時選択領域においては、後述の基礎画像撮影時の日時が表示される他、後述するQC履歴から過去にQCを行なった日時を読み出して表示し、併せて選択することが可能になっている。
【0014】
前記QCツール3bは、第1のディスプレイ2a〜2dのQCを行う際に、記憶手段3cからデジタルカメラ6が撮像した画像データ、QC用テストパターンおよびQC用チェック画面8を読み出し、表示制御部3aに供給して、QCの対象となる第1のディスプレイ2a〜2dにQC用テストパターンを表示させ、第2のディスプレイ7にQC用チェック画面8をそれぞれ表示させる。
【0015】
さらに、QCが終了したら、作成されたQC用チェック画面8を記憶手段3cの所定領域に記憶させ、また、QCの結果を記憶手段3cに記憶されているQC履歴に追加する。ここで、QC履歴とは、ディスプレイシステムの有する全てのQC対象ディスプレイ(第1のディスプレイ2a〜2d)の過去のQCの結果を記録するファイルである。
また、QCツール3bは、キーボード4およびマウス5によって、QC履歴や特定のQCの結果等を表示する旨の指示がされた場合には、記憶手段3cからQC履歴を読み出して、表示制御部3aに供給し、第2のディスプレイ7に表示させる。
【0016】
QC用テストパターンには、特に限定はなく、第1のディスプレイ2a〜2dのQCに用いられる各種のテストパターンが利用可能である。
一例として、JIS Z4752−2−5やDIN V6868−57で規定されている、グレースケールパターン、解像度パターン、画像歪みパターンおよびカラーパターン(カラー画像 DINでは規定されていない)や、SMPTEパターン等の、ディスプレイの目視検査用パターンが例示される。
【0017】
次に、前記不変性評価システム1を用いた不変性評価方法を、図2も含めて説明する。なお、ここでは、テストパターンとして、グレースケールパターンを用いる。また、第1のディスプレイ2a〜2dのうち、第1のディスプレイ2aについて、QCを行なう例を示すが、他の第1のディスプレイ2b〜2dについても同様である。
【0018】
まず、ディスプレイシステムの稼動開始(ステップS1参照)に伴い、一時点、即ち、初期のディスプレイの状態を記録し、グレースケールパターンの画像を第1のディスプレイ2a上に表示する(ステップS2参照)。
【0019】
次に、第1のディスプレイ2aに表示されたグレースケールパターン画像をデジタルカメラ6で撮影し(ステップS3参照)、このときのグレースケールパターン画像を基礎画像として、記憶手段3cに記憶しておく(ステップS4参照)。このとき、前記基礎画像が第1のディスプレイ2a上に表示されたもので、いつ撮影されたものであるかをともに記憶する。
他時点、即ち、ディスプレイの一定の使用期間が経過した(ステップS5参照)後、ディスプレイのQC(不変性試験)を行なう(ステップS6参照)。
【0020】
入力手段を通じてディスプレイシステムのQCを行なうことが指示されると、QCツール3bは、記憶手段3cからQC用チェック画面8を読み出し、表示制御部3aに供給する。さらに、対象ディスプレイおよび基準日時選択領域8bから、対象ディスプレイと不変性評価の基準にする画像の撮影日時(ここでは、第1のディスプレイ2aに相当する「第1内科第1ディスプレイ」とその基準画像を撮影した日である2002/12/15)が入力されると、これに応じて、QCツール3bは、記憶手段3cから第1のディスプレイ2aの基準画像を読み出し、表示制御部3aに供給する。
【0021】
QCツール3bは、QCの対象となる第1のディスプレイ2aにグレースケールパターン画像を表示し、第2のディスプレイ7に、基礎画像およびQCチェック画面8を表示するように、表示制御部3aに指示を出す。
次に、第1のディスプレイ2aに表示されたグレースケールパターン画像と、第2のディスプレイ7の画像表示領域8aに表示された基礎画像とを目視で比較し(ステップS7参照)、第1のディスプレイ2a上のグレースケールパターン画像の不変性評価が行なわれる(ステップS8参照)。
【0022】
ユーザーは、第1のディスプレイ2a上のグレースケールパターン画像が、第2のディスプレイ7上の基礎画像と比較して、それが予め設定された基準内にあるか否かを各評価項目について判断する(ステップS9参照)。
そして、設定基準内にある場合は、QCチェック画面8の各項目の「変化無」のチェックボックスにチェックを入れる。また、設定基準内にない場合は、QCチェック画面8の各項目の「変化有」のチェックボックスにチェックを入れる。最後に、ユーザーは、「総合判定」のチェックボックスに現時点での第1のディスプレイ2aの不変性について、OKまたはNGのチェックを入れる。
【0023】
ユーザーが、入力手段を用いて、QCの終了を指示すると、QCツール3bは、作成したQCチェック画面8をディスプレイシステムのQC履歴の一部として記憶手段3cの所定位置にQC実施日とともに記憶する。QC履歴は、目視検査のみを記録するのに限定されず、例えば、輝度計による最高輝度や最低輝度の測定結果を併せて記録するようにしてもよい。
なお、総合判定がOKの場合は何もせず、次の不変性試験の時期が来るのを待つ。総合判定がNGの場合は、第1のディスプレイ2aのメンテナンス処理を行なう(ステップS10参照)。メンテナンス処理の後、再度の不変性試験を行なうが、ディスプレイシステムが設定基準内に入れば、次の不変性試験の時期を待つことになり、ディスプレイシステムが設計基準内にないのであれば(ステップS11参照)、保守責任者に連絡する(ステップS12参照)。
【0024】
このように、本実施の形態では、QC対象としてのグレースケールパターン画像と、予め記憶された基礎画像としてのグレースケールパターン画像とを第1のディスプレイ2a〜2dおよび第2のディスプレイ7にそれぞれ表示することで、グレースケールパターン画像の比較が容易かつ確実になり、QC対象ディスプレイ画像の変化の程度が高精度に判断される。よって、第1のディスプレイ2a〜2dの不変性の確認が確実にでき、医療診断の信頼性が向上する。
【0025】
以上、本発明の実施の形態のディスプレイの不変性評価方法について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、設計において種々の変更ができるものである。
例えば、テストパターンの画像を、デジタルカメラ6で撮影する際、テストパターンの全ての部分を撮影する必要は必ずしもない。例えば、画質評価項目に応じて、必要な箇所のみを撮影してもよい。
【0026】
また、他時点、即ち各QCの時点において、第1のディスプレイ2a〜2dに表示されたテストパターンの画像をデジタルカメラ6で撮影し、その画像を第2のディスプレイ7上の撮影画像表示領域8dに表示し、これらの画像を比較してもよい。これによって、同一のディスプレイ上での比較が可能となるので、より正確な評価ができるようになる。
さらに、不変性試験毎に、第1のディスプレイ2a〜2dに表示されたテストパターンの画像をデジタルカメラ6で撮影し、これを記憶手段3cに記憶させておいて、後の不変性試験の基準にすることもできる。
【0027】
また、QCツール3bあるいは記憶手段3cに、テストパターン中の各評価項目において、注目すべき領域を記憶させ、評価項目選択および入力領域8c中の評価項目をクリックすると、基礎画像やある時点での画像の注目すべき領域のみを画像表示領域8aおよび撮影画像表示領域8dに表示させるようにしてもよい。
また、本実施例においては、テストパターンの撮影にデジタルカメラ6を用いたが、2次元画像を撮影し、デジタル画像に変換し得る撮影手段ならばよく、例えばデジタルビデオカメラも好適に用いられる。
【0028】
【発明の効果】
以上の説明から理解されるように、本発明によれば、一時点および他時点でのテストパターンの画像をディスプレイの画面上で同時に比較することが可能なので、ディスプレイ性能の変化を容易かつ正確に発見することができる。従って、不変性の確認が確実になり、ディスプレイ性能の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るディスプレイの不変性評価システムのブロック図である。
【図2】本発明の一実施例に係るディスプレイの不変性評価方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施例に係るQC用チェック画面のフォーマット例を示す図である。
【符号の説明】
1 不変性評価システム
2a〜2d 第1のディスプレイ
3 制御手段
3a 表示制御部
3b QCツール
3c 記憶手段
4 キーボード
5 マウス
6 デジタルカメラ
7 第2のディスプレイ
8 QC用チェック画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一時点において、画質評価用のテストパターンを第1のディスプレイに表示する工程と、
前記第1のディスプレイに表示された前記テストパターンの画像を、撮影手段で撮影する工程と、
前記撮影手段で撮影した前記テストパターンの画像データを記憶手段に記憶する工程と、
他時点において、前記テストパターンを前記第1のディスプレイに表示するとともに、前記記憶手段に記憶された一時点における前記テストパターンの画像を、予め表示性能が保証されている第2のディスプレイに表示する工程と、
前記第1のディスプレイに表示された他時点での前記テストパターンの画像と、前記第2のディスプレイに表示された一時点での前記テストパターンの画像とを目視で比較し、他時点での前記テストパターンの画像の変化の有無を判断する工程と、
を含むことを特徴とするディスプレイの不変性評価方法。
【請求項2】
一時点において、画質評価用のテストパターンを第1のディスプレイに表示する工程と、
前記第1のディスプレイに表示された前記テストパターンの画像を、撮影手段で撮影する工程と、
前記撮影手段で撮影した前記テストパターンの画像データを記憶手段に記憶する工程と、
他時点において、前記テストパターンを前記第1のディスプレイに表示し、これを前記撮影手段で撮影する工程と、
前記撮影手段で撮影した他時点における前記テストパターンの画像とともに、前記記憶手段に記憶された一時点における前記テストパターンの画像を、予め表示性能が保証されている第2のディスプレイに表示する工程と、
前記第2のディスプレイに表示された他時点と一時点での前記テストパターンの画像を目視で比較し、他時点での前記テストパターンの画像の変化の有無を判断する工程と、
を含むことを特徴とするディスプレイの不変性評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2005−20176(P2005−20176A)
【公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−179661(P2003−179661)
【出願日】平成15年6月24日(2003.6.24)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】