説明

ディスプレイ表面シートおよびその製造方法

【課題】ディスプレイ、特に大型のディスプレイに密着させても、ディスプレイとの間に気泡が入りにくいディスプレイ表面用シートおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のディスプレイ表面用シートは、本発明のディスプレイ表面用シートは、ゴム成分を含有する貼着層20を有し、貼着層20の表面に、少なくとも、中央部から縁に到達する溝23が形成され、貼着層20の溝23が形成されていない部分20aの表面が鏡面状である。本発明のディスプレイ表面用シートの製造方法は、表面が鏡面状でゴム成分を含有する貼着層20を形成する工程と、貼着層20の表面に、ドライエッチングにより、少なくとも、中央部から縁に到達する溝23を形成する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ表面に再剥離可能に貼着されるディスプレイ表面シートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータや携帯情報端末などに備え付けられたディスプレイの表面には、覗き見防止、表面保護などの機能を有するディスプレイ表面用シートが取り付けられることがある。
通常、ディスプレイ表面用シートは、再剥離可能な貼着層を備えている。再剥離可能な貼着層としては、自己粘着力が高いゴム成分を含有し、かつ、表面が鏡面状になっているものが知られている。例えば、特許文献1には、覗き見防止体に備えられる貼着層であって、シリコーンゴムを含み、表面が鏡面状になっているものが開示されている。また、特許文献2には、基材フィルムに積層されたゴムフィルムからなる貼着層であって、表面が鏡面状になっているものが開示されている。
【特許文献1】特開2003−131202号公報
【特許文献2】特開2000−056694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来のディスプレイ表面用シートをディスプレイ、特に大型のディスプレイに貼り合せると、ディスプレイとディスプレイ表面用シートの間に気泡が入ってしまい、画像の視認性が低下することがあった。ディスプレイ表面用シートをディスプレイに密着させないでディスプレイの前面に配置すれば、気泡は生じなくなるが、ディスプレイ表面用シートをディスプレイに密着させない場合には、画像表示時にモアレ縞が生じることがあった。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、ディスプレイ、特に大型のディスプレイに密着させても、ディスプレイとの間に気泡が入りにくいディスプレイ表面用シートおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下の態様を包含する。
[1] ゴム成分を含有する貼着層を有し、該貼着層の表面に、少なくとも、中央部から縁に到達する溝が形成され、貼着層の溝が形成されていない部分の表面が鏡面状であることを特徴とするディスプレイ表面用シート。
[2] 覗き見防止用であることを特徴とする[1]に記載のディスプレイ表面用シート。
[3] 表面が鏡面状でゴム成分を含有する貼着層を形成する工程と、
該貼着層の表面に、ドライエッチングにより、少なくとも、中央部から縁に到達する溝を形成する工程とを有することを特徴とするディスプレイ表面用シートの製造方法。
[4] ドライエッチングが反応性イオンエッチングであることを特徴とする[3]に記載のディスプレイ表面用シートの製造方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明のディスプレイ表面用シートは、ディスプレイ、特に大型のディスプレイに密着させても、ディスプレイとの間に気泡が入りにくい。
本発明のディスプレイ表面用シートの製造方法によれば、ディスプレイ、特に大型のディスプレイに密着させても、ディスプレイとの間に気泡が入りにくいディスプレイ表面用シートを製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
<ディスプレイ表面用シート>
本発明のディスプレイ表面用シートの一実施形態例について説明する。
図1に、本実施形態例のディスプレイ表面用シートを示す。このディスプレイ表面用シートは、矩形状の覗き見防止用シート1であり、ルーバー層10と、ルーバー層10の一方の面に積層された貼着層20と、ルーバー層10の他方の面に積層された透明樹脂層30とを備えるものである。
【0007】
[ルーバー層]
ルーバー層10は、図2に示すように、光透過帯11と遮光帯12とがX方向において交互に配されている。
ルーバー層10を構成している光透過帯11および遮光帯12はいずれもY方向に延びる帯状であり、そのX方向における幅はそれぞれ均一かつ一定である。
ルーバー層10において、該ルーバー層10の表面と遮光帯12とのなす角度α1は略90°(85°より大きく95°より小さい)であり、90°であることが好ましい。
【0008】
光透過帯11を構成する材料としては、透明性が高い樹脂が用いられる。具体的には、光透過帯11のみに対して、図中Z方向に光を透過させたときの光線透過率が75%以上、好ましくは85%以上であるような、高い透明性を有する樹脂材料が好ましい。例えば、透明性が高い熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が用いられ、具体例としては、セルロース系樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート等が挙げられる。中でもシリコーン樹脂が好ましく、特に耐熱性の点でシリコーンゴムが特に好ましい。
なお、本明細書における「光線透過率」の値は、光源としてJIS Z 8720に規定されるD65を用い、光源から出射された検査光の強度を受光センサーで測定する装置において、前記検査光の光路上に被測定物が無い状態での受光センサーの出力値をA、検査光の光路上に被測定物をセットし、被測定物を透過した透過光が受光センサーで受光される状態での出力値をBとするとき、光線透過率=(B/A)×100(単位;%)で求められる値とする。
【0009】
光透過帯11のX方向における幅W11は、50μm〜0.3mmの範囲内が好ましく、75μm〜0.2mmの範囲内がより好ましい。
【0010】
遮光帯12を構成する材料としては、光透過帯11の材料として上記に挙げた樹脂に顔料や染料等の着色剤が添加された着色樹脂が好適に用いられる。遮光帯12の色調は、遮光帯12における好ましい遮光性が得られればよく、例えば黒、赤、黄、緑、青、水色等とすることができる。遮光帯12の色調は、着色剤の種類および添加量によって調整できる。具体的には、遮光帯12のみに対して、その幅方向(この図ではX方向)に光を透過させたときの光線透過率が40%以下、好ましくは10%以下となるような遮光性を有することが好ましい。また、遮光帯12の色調は、ルーバー層10を見たときに認識される色調を構成するので装飾性も考慮して設計することが好ましい。
着色剤の具体例としては、カーボンブラック、ベンカラ、酸化鉄、酸化チタン、黄色酸化鉄、ジスアゾイエロー、フタロシアニンブルー等の一般的な有機顔料あるいは無機顔料が挙げられる。着色剤は1種でもよく、2種以上を用いてもよい。また黒色顔料を用いない場合は、良好な遮光性を得るために白色顔料を併用することが好ましい。
【0011】
遮光帯12のX方向における幅W12は、5〜50μmの範囲内が好ましく、15μm〜30μmの範囲内がより好ましい。
【0012】
ルーバー層10において、光透過帯11を構成している樹脂材料と、遮光帯12を構成している樹脂材料とは同じであってもよく、異なっていてもよいが、光透過帯11と遮光帯12との接着性の点からは両者が同じであることが好ましい。
【0013】
ルーバー層10のZ方向における厚さT1は、0.1〜2.5mm程度が好ましく、0.14〜0.6mm程度がより好ましい。
【0014】
[貼着層]
貼着層20は、ディスプレイに覗き見防止用シート1を貼り合せるための層であり、ゴム成分を含む層である。ゴム成分としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムなどが挙げられる。これらの中でも、透明性、耐熱性および耐候性に優れることから、シリコーンゴムが好ましい。
【0015】
本実施形態例における貼着層20の表面には、光透過帯11および遮光帯12と平行に、すなわちY方向の一方向に、一方の縁22aから他方の縁22bに達する溝23が多数形成されている(図3参照)。すなわち、溝23は、中央部21から、平行する二方の縁22a,22bに到達するものである。
溝23の幅は0.5〜5mmであることが好ましく、1〜3mmであることがより好ましい。溝23の幅が0.5mm以上であれば、溝23を介してより容易に空気を抜きやすく、5mm以下であれば、ディスプレイに貼り合わせた際に溝23が視認されにくく、ディスプレイ表面用としてより適したものとなる。
溝23の深さは、非粘着部を形成するという観点から、100〜1000nmが好ましい。また、段差が小さくなり、ディスプレイの視認性の低下が防止されることから、溝23の深さは、底部がルーバー層10に達しない深さであることが好ましい。
【0016】
貼着層20の溝23が形成されていない部分20aの表面は鏡面状である。本発明における鏡面とは、鏡面光沢度(JIS Z 8741における入射角度60°の光沢度)が120%以上のことである。このような光沢度を持つ表面は平滑性が高く、被着体に対する接触面積が大きい。
【0017】
[透明樹脂層]
透明樹脂層30の材料としては、透明樹脂層30の単体に対して、図中、Z方向に光を透過させたときの光線透過率が75%以上であるものが好ましく、85%以上であるものがより好ましい。
このような光線透過率を満たす透明樹脂層30を構成する樹脂材料としては、透明性および耐熱性の点から、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、アクリル樹脂、ポリオレフィン(特に、シクロオレフィンポリマー)、セルロース系樹脂が好ましく、中でもポリカーボネート、ポリエステルがより好ましい。
透明樹脂層30のZ方向における厚さは、薄すぎると十分な保護機能が得られず、厚いほど光線透過率が低下するので、0.01〜0.5mm程度が好ましく、0.1〜0.2mm程度がより好ましい。
【0018】
以上説明した覗き見防止用シート1では、貼着層20に自己粘着力の大きいゴム成分が含まれる上に、貼着層20の溝23が形成されていない部分20aの表面が鏡面状で、ディスプレイに貼り合わせた際の接触面積が大きい。そのため、覗き見防止用シート1は、貼着層20によって、ディスプレイに貼着可能になっている。しかも、貼着層20は凝集力が大きく、貼着層20を構成する成分のディスプレイへの移行がないため、再剥離可能である。
また、貼着層20の表面には溝23が形成されているから、溝23を介して空気を抜きながら、覗き見防止用シート1をディスプレイに貼り合わせて密着させることができる。あるいは、貼り合わせ後に気泡が入っても、溝23を介して空気を容易に抜くことができる。
よって、上述した覗き見防止用シート1では、ディスプレイ、特に大型のディスプレイに密着させても、ディスプレイとの間に気泡が入りにくい。
【0019】
<ディスプレイ表面用シートの製造方法>
本発明のディスプレイ表面用シートの製造方法について、上記覗き見防止用シート1の製造方法を例にとって説明する。
本実施形態例の製造方法は、ルーバー層10を作製する第1の工程と、溝が形成されていない貼着層20を形成する第2の工程と、ルーバー層10に貼着層20および透明樹脂層30を積層する第3の工程と、貼着層20の表面に溝23を形成する第4の工程とを有する方法である。
【0020】
[第1の工程]
ルーバー層10は、以下のようにして製造することができる。まず、光透過帯11の構成材料からなり厚さが上記W11である第1のシートの複数枚と、遮光帯12の構成材料からなり厚さが上記W12である第2のシートの複数枚とを交互に積層し、加熱および加圧してこれら複数のシートが一体化してなるブロック体を形成する。
次いで、該ブロック体をシート表面に垂直な切断面でスライスすることによりルーバー層10を得ることができる。スライスする際の厚さ(スライス幅)は上記T1である。
【0021】
[第2の工程]
貼着層20の形成方法としては、貼着層20の一方の面が鏡面状になる方法が採られ、例えば、表面が鏡面状の工程シートに液状ゴムを塗布し、硬化する方法、表面が鏡面状の工程シートに固形状ゴムの溶液を塗布し、乾燥する方法、表面が鏡面状の工程シートに固形状ゴムをシーティングし、カレンダロールに通す方法などが適用される。
工程シートの材質としては、鏡面状のシートを容易に入手できる点で、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0022】
[第3の工程]
ルーバー層10と透明樹脂層30とを積層させる方法は特に限定されず、公知の手法を適宜採ることができる。例えば、ルーバー層10の表面に接着剤を塗布し、透明樹脂層30を貼り合わせた後、接着剤を硬化させる方法などが挙げられる。このときに用いる接着剤は硬化後における光線透過率が高いものが好ましい。具体的には、硬化後に形成される接着層の単体における光線透過率が65%以上であるものが好ましく、80%以上がより好ましい。
このような透明性を有する接着剤としては、熱硬化型接着剤、多液反応型接着剤、紫外線硬化型接着剤等が挙げられ、具体的には、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、メラミン系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤等を好適に用いることができる。
【0023】
ルーバー層10に貼着層20を積層する方法としては、例えば、透明樹脂層30の積層と同様に接着剤を用いる方法、加熱加硫接着する方法などが挙げられる。
【0024】
[第4の工程]
第4の工程にて、貼着層20の表面に、Y方向に沿った溝23を多数形成する。
貼着層20の表面に溝23を形成する際には、エッチング液を用いないでエッチングするドライエッチングを適用する。
ドライエッチングとしては、例えば、プラズマエッチング、光エッチング、イオンビームエッチングなどが挙げられ、中でも、簡便に微細な溝を形成できることから、プラズマエッチング、光エッチングが好ましい。
【0025】
プラズマエッチングは、プラズマによって発生したラジカルをエッチング対象物に衝突させる方法、プラズマによって発生したイオンをエッチング対象物に衝突させる方法(反応性イオンエッチング法)のいずれであってもよいが、短時間で精密にエッチングできることから、反応性イオンエッチング法が好ましい。
反応性イオンエッチング法では、例えば、金のエッチングレートが約15nm/分、ポリマーのエッチングレートが50〜300nm/分である。
【0026】
反応性イオンエッチング法を適用する場合の各種エッチング条件は、貼着層20の大きさ、厚さ、エッチング装置の種類などに応じて適宜設定されるものである。
イオンの発生源となるガス(エッチングガス)としては、例えば、アルゴンガス、塩素系ガス(BCl、Cl、CCl等)、フッ素系ガス(CF、CHF、C、SF等)などが挙げられるが、汎用的である点で、アルゴンガスが好ましい。アルゴンガスを用いた場合には、プラズマによって生じさせたArを貼着層20に衝突させる。
【0027】
プラズマエッチング装置として、日立ハイテクノロジーズ社製SPC−100を用い、エッチングガスとしてアルゴンガスを用いた場合、アルゴンガス供給量を3〜7cm/分とすることが好ましい。また、真空度を10〜30Paとすることが好ましい。
【0028】
光エッチングとしては、例えば、紫外線の照射によりエッチングして、溝23を形成する方法が挙げられる。紫外線としては、エキシマレーザやYAGレーザ等の高調波を使用した光を用いることができる。
【0029】
ドライエッチングの際には、貼着層20の表面の、溝23を形成しない部分に、マスキングを配置する。
マスキングとしては、例えば、レジスト剤、ドライフィルム、再剥離可能な微粘着テープにカッティングプロッタ、レーザ等によりスリットを形成させたマスキングテープなどが用いられる。これらの厚さは貼着層20より厚いことが好ましい。
また、マスキングとして、ステンレス等の金属の板に、エッチング、レーザ穿孔、パンチ、マシニング等の加工を施して、スリットを形成したマスキングプレートを用いることもできる。このようなマスキングプレートは繰り返し使用することができるため、同一の溝を連続して形成する場合に適している。
光エッチングを行う場合には、マスキングは光を遮蔽する材料で構成されていなければならない。
【0030】
以上説明した製造方法では、鏡面状の貼着層20の表面にドライエッチングにより溝23を形成するため、ディスプレイに貼着可能で、ディスプレイに密着させても、ディスプレイとの間に気泡が入りにくい覗き見防止用シート1を製造できる。
【0031】
ところで、一般に、エッチング方法として、ウェットエッチング、ブラストエッチングが知られており、これらのエッチング方法を適用しても溝23を形成することは可能である。しかし、アルカリ水溶液を用いるウェットエッチングによると、作業性が低下し、しかもアルカリ水溶液を廃棄するための処理を行わなければならず、煩雑である。また、ブラストエッチングによると、ブラストに使用した研磨剤や削り取られたものが貼着層20の表面に付着しやすいため、鏡面性を低下させて貼着性を低下させるという欠点を有している。
これらの方法に対し、ドライエッチングでは、アルカリ水溶液を取り扱うことがないから、作業性が高い。また、削り取られたものは質量が小さく、真空排気等によって容易にエッチング室から排出させることができるため、貼着層20の表面に付着しにくい。したがって、貼着層20の鏡面性低下を防止でき、貼着性低下を防止できる。
【0032】
また、ゴム成分を含む溶液を、溝23が形成されるように塗布または印刷しても、溝23を形成することは可能である。しかし、既存の印刷方法では、ゴム成分(特にシリコーンゴム)を含む溶液を、視認されにくくディスプレイ表面用として適した微細な溝23が形成されるように塗布また印刷することは容易ではない。これに対し、貼着層20を形成してからドライエッチングする本発明の製造方法によれば、視認されにくい微細な溝23を容易に形成することができる。
【0033】
また、溝を形成するのであれば、ナイフ等を用いて傷を付ける方法も考えられるが、本発明における貼着層はゴム成分を含み、弾性の高いものであるため、ナイフが入り込んでいかず、傷を付けることは困難である。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態例に限定されない。上記実施形態例における貼着層20の溝23のパターンは、Y方向の一方向に形成されたものであったが、本発明では、少なくとも、中央部21から縁に到達する溝が形成されていれば、どのようなパターンであってもよい。例えば、溝23はY方向の両方の縁22a,22bに到達するものであったが、片側の縁22aのみに到達するものであってもよい。
また、溝のパターンとしては、例えば、X方向の一方向に溝24が多数形成されたパターン(図4参照)、Y方向に形成された溝23およびX方向に形成された溝24が格子状に交わるパターン(図5参照)、X方向およびY方向に対して±45度に形成された溝25,26同士が格子状に交わるパターン(図6参照)、中心27から四方の縁22a,22b,22c,22dに向かって直線状の溝28が多数形成されたパターン(図7参照)などが挙げられる。
【0035】
また、上記実施形態例のディスプレイ表面用シートは、ルーバー層10を備えた覗き見防止用シートであったが、ルーバー層以外の層を備えるシートであってもよい。例えば、耐擦傷性に優れた保護層に貼着層が積層された表面保護用シート、反射防止機能を有する反射防止層に貼着層が積層された反射防止用シートなどであってもよい。
【実施例】
【0036】
まず、高透明性のシリコーンコンパウンドSE−1188U(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製 商品名)を使用して厚さ120μmの透明シリコーンゴムシートを成形した。また、シリコーンコンパウンドKE−981U(信越化学工業株式会社製 商品名)にカーボンブラックを添加して均一に混練し、厚さ15μmの着色シリコーンゴムシートを成形した。
次いで、着色シリコーンゴムシートを透明シリコーンゴムシートにシーティングし、これらを交互に積層してブロック体を作製した。
次いで、ブロック体を加熱加硫硬化させ、これを透明シリコーンゴムシートと着色シリコーンゴムシートの積層方向と垂直な面でスライスして透明シリコーンゴムシートと着色シリコーンゴムシートが相互に平行で、かつ交互に積層された厚さ2.4mmのルーバー層を作製した。このルーバー層は、可視平行光線透過率が80%以上、可視角が90°のシリコーンゴムフィルムである。
【0037】
次いで、ルーバー層の一方の面に、液状シリコーンゴムKE−1934A/B(信越化学工業株式会社製 商品名)とプライマーAP−1(信越化学工業株式会社製 商品名)とからなるシリコーン接着剤をスクリーン印刷機により約30μmの厚さに塗布して、接着層を形成した。この接着層に厚さ0.2mmのポリカーボネートからなる透明樹脂層を一体接着した。ルーバー層と透明樹脂層との接着強度(JIS K 6256)は15N/25mmであった。
【0038】
次いで、鏡面加工されたポリエチレンテレフタレート(以下、PETという。)に、液状シリコーンゴムKE−1934A/B(信越化学工業株式会社製 商品名)をスクリーン印刷機により約30μmの厚さに塗布して、貼着層を形成した。この貼着層をルーバー層の他方の面に加熱加硫接着した。
【0039】
また、厚さ0.1mmのステンレス板に、YAGレーザを使用して、図8に示すような、幅2mm、ピッチ20mm、長さ290mmのスリット41を形成して、マスキングプレート40を作製した。
次いで、貼着層に積層されたPETフィルムを剥離し、プラズマエッチング装置(日立ハイクテクノロジーズ社製SPC−100)のエッチング室内に挿入した。その際、貼着層上に上記マスキングプレートを配置した。そして、エッチング室内の真空度20Pa、アルゴンガス供給量5cm/分、出力600Wの条件で、2分間、貼着層をプラズマエッチングした。
その後、得られた貼着層からマスキングプレートを取り除き、外形サイズ340mm×270mmに裁断して、貼着層の表面に、Y方向に沿った溝23(図3参照)が形成された17インチ液晶ディプレイ対応の覗き見防止用シートを得た。
この覗き見防止用シートを、クリーニングした液晶ディプレイに、貼着層が密着するように貼り合わせたところ、液晶ディスプレイとの間に気泡が入り込みにくく、また、気泡が入り込んでも溝を通して排出させることで、容易に取り除くことができた。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のディスプレイ表面用シートの一実施形態例である覗き見防止用シートを示す断面図である。
【図2】図1に示す覗き見防止用シートを構成するルーバー層を示す斜視図である。
【図3】図1に示す覗き見防止用シートを構成する貼着層における溝のパターンを示す平面図である。
【図4】溝のパターンの他の例を示す平面図である。
【図5】溝のパターンの他の例を示す平面図である。
【図6】溝のパターンの他の例を示す平面図である。
【図7】溝のパターンの他の例を示す平面図である。
【図8】実施例において用いたマスキングプレートを示す平面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 覗き見防止用シート(ディスプレイ表面用シート)
10 ルーバー層
11 光透過帯
12 遮光帯
20 貼着層
20a 溝が形成されていない部分
21 中央部
22a,22b,22c,22d 縁
23,24,25,26,28 溝
30 透明樹脂層
40 マスキングプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分を含有する貼着層を有し、該貼着層の表面に、少なくとも、中央部から縁に到達する溝が形成され、貼着層の溝が形成されていない部分の表面が鏡面状であることを特徴とするディスプレイ表面用シート。
【請求項2】
覗き見防止用であることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ表面用シート。
【請求項3】
表面が鏡面状でゴム成分を含有する貼着層を形成する工程と、
該貼着層の表面に、ドライエッチングにより、少なくとも、中央部から縁に到達する溝を形成する工程とを有することを特徴とするディスプレイ表面用シートの製造方法。
【請求項4】
ドライエッチングが反応性イオンエッチングであることを特徴とする請求項3に記載のディスプレイ表面用シートの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−25621(P2009−25621A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189466(P2007−189466)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】