説明

ディスプレイ装置

【課題】微細な隙間に煙を効率よく供給することができるとともに展示物に微細な隙間があることを効果的に見せることができるディスプレイ装置を提供することを課題とする。
【解決手段】ディスプレイ装置1は、微細な隙間Sを備えた展示物2と、展示物2に並設された貯留室3と、貯留室3に煙を供給する煙発生装置4と、を有し、貯留室3は、煙を貯留する空間を備えるとともに隙間Sに連通していることを特徴とする。貯留室3で煙を一旦貯留することで、煙を大気中に拡散させずに保持することができ、この貯留室3と連通している隙間Sに少しずつ煙を供給することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、煙を用いて室内の空気の流れを見学者に紹介するディスプレイ装置が記載されている。このディスプレイ装置は、ストーブやタンス等の家具を備えた室内空間と、室内空間の下に設けられた煙発生装置と、この煙発生装置と各家具を連結するチューブと、を備えている。このディスプレイ装置は、見学者が室内空間の外側に設けられたボタンを押すことで、そのボタンに対応する家具から白色の煙が噴出するようになっている。見学者は、噴出された煙の流れを確認することで、室内空間の換気状況等を視覚的に把握することができる。
【0003】
ここで、例えば、複数の面材を積層して形成された住宅の壁の通気性を見学者に紹介したい場合、通気路を構成する隙間の一端側から煙を供給し、他端側から煙を放出させることが考えられる。このようなディスプレイ装置によれば、見学者は、通気路の他端側から煙が放出されていることを確認することで、壁に通気性が備わっていることを把握することができる。煙の発生源としては、例えば、グリコール系溶剤を加熱・気化させて大量の煙を発生できるスモークマシン等が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4202275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば、壁の通気路が1mm程度の微細な隙間で構成されている場合、この隙間に煙を供給するのが困難であった。スモークマシンは、グリコール系溶剤と水とを高圧雰囲気で混合させて短時間で加熱・気化させるため勢いよく煙が噴出する。勢いよく噴出された煙を直接隙間に流そうとしても、ほとんどの煙は隙間に入っていかず、供給効率が非常に悪いという問題があった。また、スモークマシンの噴出口と微細な隙間とを近づけると、例えば壁に樹脂製の部材が積層されている場合に、その部材が溶けてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、前記した問題に鑑みて創案されたものであり、微細な隙間に煙を効率よく供給することができるとともに展示物に微細な隙間があることを効果的に見せることができるディスプレイ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、微細な隙間を備えた展示物と、煙を発生させる煙発生装置と、前記煙発生装置から供給された煙を貯留するための空間を備えるとともに前記隙間に連通する貯留室と、を有することを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、貯留室で煙を一旦貯留することで、煙を大気中に拡散させずに保持することができ、この貯留室と連通している隙間に少しずつ煙を供給することができる。これにより、煙発生装置から発生した煙を効率よく隙間に供給することができ、展示物に微細な隙間があることを効果的に見せることができる。
【0009】
また、前記貯留室で貯留された煙を前記隙間に送る送風機を備えていることが好ましい。かかる構成によれば、煙をより効率よく隙間に供給することができる。
【0010】
また、前記貯留室の内部が視認できるように前記貯留室の一部が透明になっていることが好ましい。かかる構成によれば、貯留室における煙の貯留状況を確認することができ、煙を安定して供給することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るディスプレイ装置によれば、微細な隙間に煙を効率よく供給することができるとともに展示物に微細な隙間があることを効果的に見せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係るディスプレイ装置を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係るディスプレイ装置を示す側断面図であり、(a)は全体図、(b)は要部拡大図である。
【図3】図2の(a)のI-I断面図である。
【図4】貯留室を示した斜視図である。
【図5】本実施形態に係るディスプレイ装置の作用を示した側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態に係るディスプレイ装置1は、通気性を備えた住宅の外壁の一部を見学者に紹介する場合を例示する。ディスプレイ装置1は、外壁の一部である展示物2と、展示物2に並設された貯留室3と、貯留室3に煙を供給する煙発生装置4と、送風機5とを有する。なお、説明における上下左右前後は、図1の矢印にしたがう。
【0014】
展示物2は、図1及び図2に示すように、本実施形態では住宅の外壁の一部を模擬的に現したものである。展示物2は、後側から前側に向けて順番に枠組11と、合板12と、防水シート13と、ラス網14と、モルタル層15と、外装材16とで構成されている。詳細は後記するが、合板12と防水シート13との間に上下方向に連通する微細な隙間Sが形成されており、この隙間Sが通気路として機能する。本実施形態では、展示物2の層構成を見せるために、合板12の高さが最も高く、前側に向けて徐々に各部材の高さが低くなるようになっている。展示物2の下端には、展示物2を設置するための台座17が設けられている。
【0015】
枠組11は、図1及び図3に示すように、複数の木材で形成された枠状部材であって、下枠11aと、下枠11aの左右方向の両端に立設する一対の縦枠11bと、縦枠11bの上端に設置された上枠11cと、縦枠11b,11bに接合された下側横枠11d及び上側横枠11eとで構成されている。図1に示すように、枠組11の前方両側には、一対の外枠11fが設けられている。外枠11fは、隙間Sを通る煙が隙間Sの左右方向両側から放出しないように合板12の両側端に立設されている。なお、右側の外枠11fは、説明の便宜上透過して描画している。
【0016】
合板12は、枠組11の前側に留め付けられた板状部材である。図3に示すように、合板12の下部中央には、前後方向に貫通する開口部12aが形成されている。開口部12aは、本実施形態では下側横枠11dの上に露出している。
【0017】
防水シート13は、図2に示すように、合板12の前側に積層された薄い層状の部材である。防水シート13は、例えばアスファルト又は改質アスファルト等のコールドフロー性と粘弾性を有するアスファルトコンパウンドからなり、雨水等が合板12に浸透しないように防水層として機能する。
【0018】
防水シート13は、図2の(b)に示すように、板状の本体部13aと、本体部13aの後面に突設された複数の突起13bとを備えている。突起13bは、例えば半球状を呈し、後面側から見て千鳥状に配置されている。突起13bの高さは、例えば約1mmになっている。これにより、合板12と本体部13aとの間に1mm程度の微細な隙間Sが形成される。この隙間Sが壁(展示物2)の通気路となっており、壁内に発生した水蒸気等を隙間Sから外部に放出することができる。
【0019】
なお、隙間Sの大きさは本実施形態では1mmとしたが、これに限定されるものではなく、例えば0.5〜20.0mmより好ましくは1.0〜10.0mmの間で適宜設定すればよい。
【0020】
ラス網14は、防水シート13の前側に積層された網状部材である。モルタル層15は、ラス網14を下地として塗装されている。外装材16は、モルタル層15の前側に設置されている。
【0021】
台座17は、展示物2を支持する部材であって、展示物2に対して垂直に形成されている。台座17の下部の四隅には、ローラ17aが設置されている。
【0022】
貯留室3は、煙発生装置4から供給された煙を貯留するための空間である。貯留室3は、図1及び図2に示すように、展示物2の後側に並設されている。図4に示すように、貯留室3は、略直方体を呈し前側が開放されている。貯留室3は、底板部21と、底板部21の両側に設置された一対の側板部22と、側板部22に連結された天板部23と、後側に設置された背板部24とで構成されている。底板部21、側板部22、天板部23は木材で形成されており、背板部24は透明なアクリル樹脂で形成されている。背板部24の下部中央には、貫通孔24aが形成されている。
【0023】
図2に示すように、貯留室3の前側は枠組11に当接している。具体的には、貯留室3の底板部21、側板部22、天板部23は、枠組11の下枠11a、縦枠11b、上側横枠11eにそれぞれ当接している。これにより、貯留室3と枠組11と合板12とで閉じられた空間が形成されている。また、貯留室3は、前側が開放されているため、開口部12aに連通している。
【0024】
煙発生装置4は、図2に示すように、貯留室3に煙を供給するための装置であって、貯留室3の後側において、台座17に設置されている。煙発生装置4は、本実施形態では、グリコール系溶剤を加熱・気化させて大量の有色(例えば白色)の煙を発生することができるスモークマシンを用いている。煙発生装置4の噴出口4aは、背板部24の貫通孔24aに挿通されている。スモークマシンによれば、短時間で大量の煙を貯留室3に供給することができる。なお、煙発生装置4は、スモークマシンに限定するものではなく、貯留室3内に煙を供給できる構成であれば他の形態であってもよい。
【0025】
送風機5は、図2に示すように、隙間Sに煙を送るための装置である。送風機5は、本実施形態では、下側横枠11dの上において、合板12の開口部12aの後側に設置されている。これにより、貯留室3内の煙を、開口部12aを介して隙間Sに供給することができる。送風機5は、本実施形態では、図示しない制御装置に接続されている。送風機5は、制御装置によって連続的又は断続的に作動するように構成されていてもよいし、送風の強弱を調節できるように構成されていてもよいし、あるいは、人の操作によって作動したり停止したりするように構成されていてもよい。
【0026】
次に、ディスプレイ装置1の作用について説明する。
図5に示すように、煙発生装置4を作動させると、貯留室3内に煙が貯留される。貯留された煙は、送風機5によって、開口部12aを介して隙間Sに少しずつ導かれる。隙間Sに導入された煙は、突起13bの間を通って上方に移動し、隙間Sの上端から外部に放出される。見学者は、隙間Sの上端から煙が放出されることで、合板12と防水シート13との間に通気路があることを視覚的に確認することができる。
【0027】
本実施形態に係るディスプレイ装置1によれば、貯留室3で煙を一旦貯留することで、煙を大気中に拡散させずに保持することができ、煙の勢いを低減させてこの貯留室3と連通している隙間Sに少しずつ煙を供給することができる。また、貯留室3を設けることで、ムラの無い状態で煙を保持することができる。これにより、煙発生装置4から発生した煙を効率よく微細な隙間Sに供給することができ、展示物2に微細な隙間Sがあることを効果的に見せることができる。
【0028】
また、本実施形態では送風機5を設けたため、隙間Sにより効率よく煙を送ることができる。例えば、送風機5によって、隙間Sに一定量の煙を連続的又は断続的に送ったり、あるいは見学者の操作に応じて煙を送ったりすることができる。
【0029】
また、本実施形態では、貯留室3の背板部24をアクリル樹脂の板材で構成したため、貯留室3の内部を視認することができる。これにより、貯留室3内の煙の貯留状況を外部から把握することができるため、安定して煙を供給することができる。
【0030】
ここで、煙発生装置4として、例えばドライアイスを用いることも可能であるが、ドライアイスであると連続的に煙を発生し続けることが困難となる。また、ドライアイスであると、煙自体が重く、隙間Sを昇っていかないという問題がある。また、ドライアイスであると展示物2が濡れてしまうという問題がある。
【0031】
しかし、本実施形態によれば、煙発生装置4としてスモークマシンを用いているため、大量の煙を発生させることができる。これにより、隙間Sに煙を長時間にわたって安定して供給し続けることができる。また、スモークマシンから噴出した直後の煙の流速は速いが、貯留室3に一旦貯留することで、外部に煙が拡散することなく、かつ、隙間Sに導く際の流速を低減することができる。これにより、緩やかな流速の煙を隙間Sに送ることができる。また、スモークマシンから噴出された直後の煙は温度が高くなっているが、貯留室3内で一旦貯留することで温度を下げることができる。これにより、展示物2の防水シート13等が溶けるのを防ぐことができる。
【0032】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜変更が可能である。例えば、開口部12aは、本実施形態では正面視円形状であるが、隙間Sに連通していればどのような形状であってもよい。また、送風機5は設けなくてもよい。送風機5を設けなくても、貯留室3の煙が充満されれば、隙間Sに少しずつ煙を供給することができる。一方、送風機5を二機以上設けてもよい。
【0033】
また、本実施形態の貯留室3の前側は大きく開放しているが、貯留室3の前側を板状部材で塞いで直方体形状を呈する箱状体としてもよい。この場合は、その前側の板状部材に開口部12aに連通する連通孔を設けることで開口部12aに煙を導くことができる。
【0034】
また、本実施形態では貯留室3の一部をアクリル樹脂としたが、貯留室3の全部をアクリル樹脂等の透明な部材で形成してもよい。また、貯留室3は木材ではなく例えば樹脂や金属で形成してもよい。
【0035】
また、本実施形態では展示物2として壁を採用し、積層された板状部材同士の隙間Sを例示したが、これに限定されるものではない。また、展示物2は、住宅に関わる部材に限定するものでもない。展示物2は、微細な隙間を備えている構造物や装置であれば他の形態であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 ディスプレイ装置
2 展示物(壁)
3 貯留室
4 煙発生装置
5 送風機
11 枠組
12 合板
12a 開口部
13 防水シート
14 ラス網
15 モルタル層
16 外装材
17 台座
21 底板部
22 側板部
23 天板部
24 背板部
24a 貫通孔
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細な隙間を備えた展示物と、
煙を発生させる煙発生装置と、
前記煙発生装置から供給された煙を貯留するための空間を備えるとともに前記隙間に連通する貯留室と、を有することを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項2】
前記貯留室で貯留された煙を前記隙間に送る送風機を備えていることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項3】
前記貯留室の内部が視認できるように前記貯留室の一部が透明になっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−159764(P2012−159764A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20469(P2011−20469)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000174884)三井ホーム株式会社 (87)
【Fターム(参考)】