説明

ディファレンシャルに発現する同義遺伝子のコンカテマー

【課題】コンカテマー化した(concatenated)発現カセットのコンカテマー及び当該コンカテマーの合成を可能にするベクターの提供。
【解決手段】5’→3’方向に、一般式
[rs2-SP-PR-X-TR-SP-rs1]n
(ここで、
rs1とrs2は共に機能的制限部位を表し、
SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチド塩基のスペーサーを表し、
PRは、細胞内で機能しうるプロモーターを表し、
Xは発現可能なヌクレオチド配列を表し、
TRはターミネーターを表し、そして
SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチド塩基のスペーサーを表し、そして
n≧2であり、そして
少なくとも第一カセットは第二カセットと異なる)
のヌクレオチド配列のカセットを含んで成るヌクレオチドコンカテマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2001年6月27日に出願された米国仮特許出願番号第60/301,022号の非仮出願であり、これは引用によってその全体が本明細書に組み入れられる。本出願は、2001年1月25日に出願されたデンマーク特許出願番号PA 2001 00127の優先権を主張するものであり、これは、引用によってその全体が本明細書に組み入れられる。当該出願、又は本出願で引用している全ての特許及び非特許文献も、引用によってそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明において、コンカテマー化した(concatenated)発現カセットのコンカテマー及び当該コンカテマーの合成を可能にするベクターが開示される。これらのコンカテマーの主な目的は、単一の宿主細胞における多数の異種遺伝子の制御可能で且つ協調的な発現にある。更に、本発明は、ヌクレオチド配列のカセットのコンカテマー及び当該コンカテマーの調製方法に関する。更なる観点において、本発明は、少なくとも1つの本発明に従うコンカテマーを含んで成るトランスジェニック宿主細胞、及び当該トランスジェニック宿主細胞の調製方法に関する。最後に、本発明は、ヌクレオチドのカセットを含んで成るベクター、前記ベクターの調製方法、それぞれヌクレオチドのカセットを含んで成る少なくとも2つのベクターを含んで成るヌクレオチドライブラリー、当該ライブラリーの調製方法、に関する。
【背景技術】
【0003】
発現コンストラクト及び発現ライブラリーの設計は当業界で周知である。
【0004】
WO 96/34112は、それぞれが多数のドナー生物に由来するcDNA又はゲノムDNAフラグメントを含む発現コンストラクトのプールを有するコンビナトリアル遺伝子ライブラリーを開示している。当該DNAフラグメントは、宿主細胞内で発現を押し進める制御領域と作用可能に関連している。当該公報はまた、各細胞が、宿主生物内のコンカテマー化したcDNAによってコードされた遺伝子の発現を押し進めるための制御領域と作用可能に関連しているcDNAフラグメントのコンカテマーを含んで成る、コンビナトリアル遺伝子発現ライブラリーも開示している。当該宿主生物は酵母細胞であってもよい。当該ライブラリーを構築するために使用されるベクターは、プラスミドベクター、ファージ、ウイルスベクター、コスミドベクター又は人工染色体(BAC又はYAC)であってもよい。適当なプロモーターには、天然の及び合成のプロモーター並びに構成的及び誘導的プロモーターが含まれる。
【0005】
コンカテマーに使用される遺伝子は、多数の別々の反応段階から成る、高度に順序づけられた多段階の手順で調製される。最初に、cDNAインサートが、PCR及び、後の消化からNotI及びBamHI制限部位を保護するためのメチル化dCTPを用いて、調製される。プロモーター及びターミネーターフラグメントが、それぞれ修飾されたBamHIアダプターを用いて5’及び3’末端にライゲーションされる。当該遺伝子カセットは、各末端に異なる制限部位を有する、プロモーター−コード配列−ターミネーターの基本的構造を有する。3’末端の制限部位は保護されている。類似の遺伝子カセットも、制限酵素を用いてランダムにフラグメント化されるゲノムDNAから調製されうる。
【0006】
WO 96/34112に開示されているコンカテマーは高度に順序づけられた多段階の手順において調製され、この中で、第一の遺伝子カセットは、当該遺伝子カセットの平滑な5’末端に相当する平滑末端を有するビーズに連結したアダプターヌクレオチド配列にライゲーションされる。ライゲーション後、制限部位は、2つの、コンパチブルであるが同一でない制限部位を用いて構築されたためにもはや機能的ではない。第一の遺伝子カセットを前記ビーズに連結させた後、3’末端の保護された制限部位が「開かれ」、そして第二の遺伝子カセットが第一のものに連結される。第5回〜第10回の遺伝子カセットのライゲーションの後、ベクターがコンカテマーの3’末端にライゲーションされ、コンカテマー−ベクターコンストラクトが前記ビーズから遊離され、そして5’末端がベクターの他方の末端にライゲーションされる。強調すべきなのは、当該コンカテマーの3’末端と5’末端が、ベクター内へのクローニングの間の自己会合を避けるために、コンパチブルでないべきであることである。
【0007】
当該調製手順における多数の異なる段階に起因して、当該方法は、有意により大きなサイズのコンカテマーを調製するのに適していない。一旦遺伝子カセットがベクター内にクローニングされると、制限酵素を用いて、当該ベクターから当該カセット又は完全なコンカテマーを切り出すことはできない。
【0008】
US 6,057,103(Diversa)は、微生物由来のDNAの単離及び特定の活性を有する酵素をコードする少なくとも一部の配列を含んで成るプローブDNAを用いるハイブリダイゼーションを介する特定の酵素活性を有するクローンの同定方法を開示する。同定された配列は、プロモーター配列(例えば、真核生物のプロモーター:CMV最初期、HSVチミジンキナーゼ、初期及び後期SV40、レトロウイルス由来のLTR、及びマウスメタロチオネインI)に連結され、そしてベクター内に挿入され、ここで、ベクターはYAC又はP1を基にした人工染色体であってもよい。同定されたヌクレオチド配列による形質転換に使用される宿主細胞には、細菌細胞、酵母、昆虫細胞、哺乳類細胞が含まれる。開示されたベクターは、多数の発現可能なヌクレオチド配列のクローニングに適応しておらず、そして、当該引用文献は、宿主細胞内への同義遺伝子のクローニングのためのコンカテマーを開示していない。更に具体的には、当該引用文献は、遺伝子を新規方法で組み合わせることを可能にする条件下で、遺伝子の組み合わせ(gene combination)及び遺伝子の組み合わせのスクリーニングを可能にしない。
【0009】
US 5,958,672(Diversa)は、未培養の微生物(又は低級の真核生物種)から得られた遺伝子発現ライブラリーを培養することによって、注目のタンパク質活性を同定する方法を開示する。当該遺伝子発現ライブラリーは、ゲノムDNA又はcDNAから得ることもできる。DNAクローンは、宿主細胞内で配列の発現を押し進める制御配列と制御可能に関連している。当該ライブラリーはUS 6,054,267に記載のように、DNAプローブに対してスクリーニングされてもよい。上文で引用したその他のもののように、未培養の微生物から単離された遺伝子の組み合わせは静的な組み合わせである。一旦、単離された遺伝子が宿主細胞内に挿入されると、それ以上の遺伝子の組み合わせ及び遺伝子の組み合わせのそれ以上の最適化は意図されない。
【0010】
本発明の1つの目的は、多数の発現可能なヌクレオチド配列のクローニングのための方法及びベクターを提供することであり、ここで、発現可能なヌクレオチドは、その後のコンカテマー内へのランダムライゲーションに特に適合するものであり、続いてコンカテマーの遺伝子又はコンカテマーの遺伝子のサブセット(subset)又は遺伝子の異なるサブセットの発現のための発現宿主内に挿入されうる。それによって、任意のスクリーニング可能な形質のために、発現可能なヌクレオチドの組み合わせを最適化することができる。
【0011】
本発明の更なる目的として、フレキシブルなコンカテマーの産生を可能にする方法及びベクターを提供することがある。本文におけるフレキシブルとは、コンカテマーの遺伝子カセットが標準的な分子技術、例えば制限酵素の使用による切り出し、を用いて容易に解離し、そして再構築されうることを意味する。
【発明の概要】
【0012】
最初の観点の通り、本発明は、5’→3’方向に、一般式
[rs2-SP-PR-X-TR-SP-rs1]n
(ここで、
rs1とrs2は共に制限部位を表し、
SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチド塩基のスペーサーを表し、
PRは、細胞内で機能しうるプロモーターを表し、
Xは発現可能なヌクレオチド配列を表し、
TRはターミネーターを表し、
SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチド塩基のスペーサーを表し、そして
n≧2であり、そして
少なくとも第一カセットは第二カセットと異なる)
のヌクレオチド配列のカセットを含んで成るヌクレオチドのコンカテマーに関する。
【0013】
本発明に従うコンカテマーは、一つの発現状態にのみ由来する発現可能なヌクレオチド配列の選択を含んで成ることもあり、従って、この発現状態を表す1つのライブラリーから構築されてもよく、あるいは、それは任意の適当な比率で混合された、多数の異なる発現状態由来のカセットを含んで成ることもある。本発明に従うコンカテマーは、協調した発現のために宿主細胞内に挿入されうる人工染色体内にライゲーションするのに特に適している。このために、複数のカセット間又はカセットとカセットの間のばらつきが、例えば、宿主細胞が細胞分裂を受ける際に、例えばいずれか1つのコンカテマーにおいて生じる反復配列のレベルを最小化することにより、乗換えの機会を最小化するために存在していてもよいのは、コンカテマーと宿主ゲノム内のセグメント又は宿主細胞のエピトープとの組換え又は任意なコンカテマー内の組換えを達成することが本発明のこの態様の目的ではないからである。
【0014】
コンカテマーは、宿主細胞内での協調した発現のために、遺伝子の新規で且つ非天然の組み合わせを作成するために使用されうる。それによって、新規代謝経路が生まれることがあり、これは新規代謝物の産生、及び/又は宿主生物以外では代謝可能ではない化合物の代謝をもたらすことがある。当該新規遺伝子の組み合わせはまた、代謝物を、新規な量で、又は細胞の新規な区画で若しくは細胞の外側で産生する代謝経路をもたらすことがある。当該目的に依存して、遺伝子の選択は、異なる界を超えての発現可能なヌクレオチド配列の調達に基づき完全にランダムに行われうる。しかしながら、標的の新規遺伝子の組み合わせを作成するために、ある代謝経路を有することが知られている起源から遺伝子を調達することが有利なことがある。また、関連の特性、例えば医薬活性を有することが知られている器官/組織から遺伝子を調達することが有利なこともある。
【0015】
本発明のコンカテマーの複数の利点のうちの1つは、発現カセットが、発現カセットの新規組み合わせを作成するためのいずれの時点でも、コンカテマーから切り出すことができることである。再構築の間に、類似の発現カセットに含まれるそれ以外の遺伝子も、発現パターンを修飾するために必要ならば加えられてもよい。この方法において、本発明に従うコンカテマーは、新規遺伝子の組み合わせを産生する強力なツールを提供する。
【0016】
当該コンカテマーの構造の1つの利点は、カセットが、ヌクレオチドの単離及び、rs1-rs2制限部位に特異的な制限酵素によるその後の消化、を介して宿主細胞から回収されうることである。コンカテマーの構成単位は、従って、いずれかの時点で分離され、そして再構築されうる。
【0017】
コンカテマーのカセットは、頭部と尾部又は頭部と頭部又は尾部と尾部で連結されることがあり、これが発現可能なヌクレオチド配列の発現に影響を与えないのは、各発現可能なヌクレオチド配列がそれ自身のプロモーターの支配化にあるためである。これは、多くの制限酵素が、これは同じ頻度でいずれかの配向に組み合すことができる2つの同一のオーバーハングを残すという事実に起因している。
【0018】
しかしながら、制限部位はまた、頭部と尾部の配置が好ましいものとなるように、例えば、パリンドロームではないオーバーハングを生成する制限酵素を用いることによって選択することもできる。そのような酵素の例は実施例6cに列記しており、そして実施例6dの多くの酵素がそうである。非パリンドロームのオーバーハングは、頭部と頭部、そして尾部と尾部とのライゲーションを防ぐ。2又はそれ以上の異なるエントリーベクターの使用によって、切断領域の配列は、これらの酵素のうちの1つによる消化の後に、異なるオーバーハングを生み出すように設計されうる。そのような酵素の例は、実施例6c及び6dの酵素のほとんどであり、そしてオーバーハング内に変化可能なヌクレオチド(N又はW)
を有する。この方法では、同一でないオーバーハングを有するカセットが、1つの酵素で切り出されうる。このことは、分子内再ライゲーションを防ぎ、そして同一のカセットが互いにライゲーションするのを防ぎ、分子内組換えの危険性を低下させる。
【0019】
本発明は、更なる観点において、コンカテマー化の方法であって、各カセットが第一の粘着末端、スペーサー配列、プロモーター、発現可能なヌクレオチド配列、ターミネーター、及び第二の粘着末端を含んで成る、ヌクレオチド配列の少なくとも2つのカセットをコンカテマー化する段階を含んで成る方法を提供する。
【0020】
好ましくは、当該方法は、以下のヌクレオチド配列
[RS1-RS2-SP-PR-X-TR-SP-RS2'-RS1']
(ここで、Xは発現可能なヌクレオチド配列を表し、
RS1及びRS1'は制限部位を表し、
RS2及びRS2'はRS1及びRS1'と異なる制限部位を表し、
SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチド塩基のスペーサーを表し、
PRはプロモーターを表し、
TRはターミネーターを表す)を有するカセットを含んで成る一次ベクターから出発して、i) RS2及びRS2'に特異的な少なくとも1つの制限酵素の力を借りて一次ベクターを切断し、一般式[rs2-SP-PR-X-TR-SP-rs1](ここで、rs1及びrs2はともに機能的制限部位RS2又はRS2'を表す)を有するカセットを獲得し、
ii) rs1とrs2との間の相互作用を介して、切り出されたカセットを構築すること、
を含んで成る。
【0021】
この態様によると、切り出し及びコンカテマー化は、「一段階」反応で、すなわち途中の精製段階無しに、発現カセットを含む一次ベクターから出発して実施される。発現カセットは、RS1及びRS2に特異的な2つの制限酵素を用いで切り出すことができる。好ましくは、この一段階反応のために、RS1は平滑末端を残しており、そしてRS2は粘着末端を残している。リガーゼの添加によって、コンカテマーが、精製をなんら必要とすることなしに混合物中で構築されうるのは、ベクターの主鎖及び小さいRS1-RS2フラグメントがコンカテマー化反応を妨害しないためである。
【0022】
コンカテマーが、発現宿主細胞を後で形質転換するために、人工染色体内に挿入されるべきである場合、ACベクターアームは、コンカテマーを含む完全な人工染色体ベクターが一段階で構築することができるように、直接的にコンカテマー化反応混合物に添加されうる。ベクターアームとカセットの比率を調整することによって、コンカテマーのサイズが調整されうる。当然のことながら、一方の末端にRS2又はRS2'を、そして他方の末端に非相補的なオーバーハング又は平滑末端をそれぞれが有するストッパーフラグメントを添加することによって、コンカテマーのサイズを調整することもできる。ベクターアームは、後に別々の段階で添加することもできる。
【0023】
有利なことには、当該方法は、一方の末端にRS2又はRS2'を、そして他方の末端に非相補的なオーバーハング又は平滑末端をそれぞれが有するベクターアームの添加を含んで成る。これらはコンカテマー化混合物に加えられてもよく、そしてこの複雑な混合物中であっても、各末端に1つのベクターアームを有するコンカテマーが適当な条件下で生成される。適切なベクターアームを含む、所望の構成により形質転換した宿主細胞は、アーム上に存在するマーカー遺伝子を利用することによって選択することができる。
【0024】
1つの観点において、本発明は、各コンカテマーが5’→3’方向に以下の式:[rs2-SP-PR-X-TR-SP-rs1]n(ここで、rs1とrs2は共に機能的制限部位を表し、SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチドのスペーサーを表し、PRは、細胞内で機能しうるプロモーターを表し、Xは発現可能なヌクレオチド配列を表し、TRはターミネーターを表し、そしてSPは個々に少なくとも2つのヌクレオチドのスペーサーを表し、そして
n≧2であり、そして少なくとも2つの発現可能なヌクレオチド配列が異なる発現状態に由来する)のオリゴヌクレオチドを含んで成る、個々のオリゴヌクレオチドカセットの少なくとも1つのコンカテマーを含んで成る、宿主細胞に関する。
【0025】
別の観点において、本発明は、各コンカテマーが5’→3’方向に以下の式:
[rs2-SP-PR-X-TR-SP-rs1]n
(ここで、
rs1とrs2は共に機能的制限部位を表し、
SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチドのスペーサーを表し、
PRは、細胞内で機能しうるプロモーターを表し、
Xは発現可能なヌクレオチド配列を表し、
TRはターミネーターを表し、そして
SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチドのスペーサーを表し、そして
n≧2であり、そして
少なくとも2つのカセットのrs1-rs2が同一の制限酵素によって認識される)のオリゴヌクレオチドを含んで成る、個々のオリゴヌクレオチドカセットの少なくともコンカテマーを含んで成る細胞に関する。
【0026】
それによって、発現可能な遺伝子の非天然の組み合わせが、遺伝子のサブセットの協調した発現を可能にし、又は全ての挿入された遺伝子が同時に発現することができるように1つの細胞内で組み合されうる。発現可能なヌクレオチド配列を調整するプロモーターの外部からの制御を介して、発現する遺伝子の新規で且つ非天然の組み合わせが得られることがある。これらの新規で且つ非天然の遺伝子産物の組み合わせが全く同一の細胞で見られるので、異種遺伝子産物が、宿主細胞の代謝に新規経路で影響を及ぼすことがあり、その結果、新規でそして/あるいは天然でない一次又は二次代謝物及び/又は新規な量の既知の代謝物を、そして/あるいは細胞の新規な区画に又は細胞の外側に既知の代謝物を産生させる。新規な代謝経路及び/又は新規な又は修飾された代謝物は、導入遺伝子を宿主ゲノムの任意なセグメントと、又は宿主細胞の任意なエピソームと実質的に組換えることなしに得ることができる。
【0027】
好ましくは、人工染色体の形態でコンカテマーを含む細胞は、細胞群を選択的な条件にかけることによって方向付けた進化に使用されうる。コンカテマーの構造の1つの利点は、異なる細胞又は異なる細胞群由来の発現カセットが、いくつかの段階で容易に組み合わすことができ、それによって進化の可能性が増大することである。コンカテマーが人工染色体の形態で挿入される場合、進化はまた伝統的な育種及び選択を用いても実施されうる。
【0028】
宿主細胞内での多数の非天然遺伝子の組み合わせを介して、宿主細胞にとって致死性又は亜致死性の、複数の遺伝子又は単一の遺伝子の組み合わせが挿入されるようである。宿主細胞内での当該遺伝子の協調した発現を介して、遺伝子の任意なサブセットの発現を誘導するだけでなく、例えば、致死性又は亜致死性遺伝子のそのような発現を抑制することもできる。
【0029】
任意の発現状態、同一又は選択された種、関連していない又はかすかに関連している種、あるいは異なる界由来の種、に由来していてもよい、多数の異なる発現状態に由来する発現可能なヌクレオチド配列を有するカセットを含んで成るコンカテマーの組み合わせを有する細胞を産生することによって、遺伝子産物の新規で且つランダムな組み合わせが1つの細胞内で生成する。更に、多数の独立して誘導可能又は抑制可能なプロモーターの支配下で発現可能なヌクレオチド配列を有することによって、多数の異なる発現状態が、挿入された発現可能なヌクレオチド配列の群を選択的に切り換えることによって1つの細胞内で作り出される。1つの細胞内で独立して誘導可能及び/又は抑制可能なプロモーターの数は、1〜100、1〜50、1〜10に変化する可能性があり、又は例えば最大15、20、25又は50個以上のプロモーターである。
【0030】
新規遺伝子を宿主細胞内に挿入することによって、そして特に広範な種に由来する多数の新規遺伝子を宿主細胞内に挿入することによって、この新規遺伝子のアレイに由来する遺伝子産物は、宿主細胞の代謝物のプールと相互作用し、そして新規化合物を作り出すための新規経路における既知の代謝物及び/又は中間体を修飾することは大いにありうる。当該相互作用は酵素レベルで実施されるので、更に、当該結果物が、化学合成を介して合成することが特に困難な、キラル中心を有する新規化合物であることも考えられる。
【0031】
宿主細胞内に基質が無いために機能しえない新規代謝経路も生成されることがある。そのような代謝経路は、当該新規代謝経路によって代謝可能な、非宿主細胞特異的な基質の添加によって活性化されうる。
【0032】
本発明に従う細胞の1つの特別な利点は、種間の不適合性の障壁が1つの単細胞内での遺伝子の組み合わせを制限しないことである。
【0033】
更なる観点によると、本発明は、トランスジェニック細胞を産生するための方法であって、2つの遺伝子及び/又は2つのプロモーターが異なる、それぞれがプロモーターによって制御される少なくとも2つの遺伝子を含んで成る異種ヌクレオチド配列を含んで成るコンカテマーを宿主細胞内に挿入することを含んで成る方法、に関する。
【0034】
更なる観点によると、本発明は、5’→3’方向に、一般式
[RS1-RS2-SP-PR-CS-TR-SP-RS2'-RS1']
(ここで、
RS1及びRS1'は制限部位を表し、
RS2及びRS2'はRS1及びRS1'と異なる制限部位を表し、
SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチドのスペーサーを表し、
PRは、細胞内で機能しうるプロモーターを表し、
CSはクローニング部位を表し、
TRはターミネーターを表す)のヌクレオチド配列のカセットを含んで成る一次ベクターに関する。
【0035】
一次ベクター内のカセットは、当該カセットに含まれるプロモーターの支配下にある、ランダムな発現可能なヌクレオチド配列を宿主内でクローニングし、そして保存するのに有用である。当該カセットは、4つの制限部位のいずれかに特異的な制限酵素を用いることによって挿入され、そして除去されることがあり、これらのうちRS1とRS1'は好ましくは同一であり、そしてRS2とRS2'も好ましくは同一である。当該カセットの1つの特別な利点は、カセットのコレクションが、例えば、RS2及びRS2'に特異的な制限酵素の使用を介しての、一次ベクターからのカセットの切り出し、及び溶液中のランダムなカセット群のコンカテマー化、によって本発明に従うコンカテマーへと構築されうることである。最初のコンカテマー化は、RS1及びRS1'が平滑末端を残し、そしてRS2及びRS2'が粘着末端を残す場合に得られる。この方法において、空のベクターがコンカテマー化に参加することは回避できる。更に、RS1-RS2及びRS1'-RS2'を含む小フラグメントが除去される必要がないことが観察されているのは、それらがコンカテマー化を妨害しないためである。所望により、当該小フラグメントは、例えば沈殿又はろ過を用いて用意に除去されうる。
【0036】
本発明に従う一次ベクターがcDNAの発現に特に適しているのは、それがプロモーターを備えているためである。ゲノムDNAの組込みも可能であるが、これは挿入されたゲノムDNAの天然のプロモーター配列間の相互作用及びベクターのプロモーターを介して得られる外部からの制御をもたらすことがある。
【0037】
好ましくは、PRは、一次ベクターの宿主内で機能的ではないが、コンカテマーが発現のために挿入される予定の発現宿主内でのみ機能的である。これは、一次ベクターが保存され、そして/あるいは増幅されるライブラリー宿主にとって致死性である遺伝子に対する選択を回避するためである。
【0038】
スペーサー配列は、コンカテマー化の後のコンカテマーの安定性を増大させるためにカセットに挿入される。カセットは、それらが、コンカテマー化の後に頭部と尾部、頭部と頭部又は尾部と尾部とで連結されうるように構築される。2つのカセットのコンカテマーは、以下の構造:
3' rs2-SP-PR-X-TR-SP-rs1-rs2-SP-PR-X-TR-SP-rs15'
3' rs2-SP-TR-X-PR-SP-rs1-rs2-SP-PR-X-TR-SP-rs15'
3' rs2-SP-PR-X-TR-SP-rs1-rs2-SP-TR-X-PR-SP-rs1 5'
(rs1-rs2は共に制限部位を表す)
を有することがある。
【0039】
スペーサー配列の存在は、同一であることがある、2つの隣接しているターミネーター又はプロモーター配列間のヘアピン形成の危険性を低下させる。その結果、スペーサーの存在は、それらが挿入される発現宿主内でのコンカテマーの安定性を増大させることも意図される。
【0040】
非パリンドロームのオーバーハングを残す酵素を用いて、本質的に頭部と尾部の配向を有するコンカテマーを生成することができる。
【0041】
別の観点において、本発明は、5’→3’方向に、一般式
[RS1-RS2-SP-PR-CS-TR-SP-RS2'-RS1']
(ここで、
RS1及びRS1'は制限部位を表し、
RS2及びRS2'はRS1及びRS1'と異なる制限部位を表し、
SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチドのスペーサーを表し、
PRは、細胞内で機能しうるプロモーターを表し、
CSはクローニング部位を表し、そして
TRはターミネーターを表す)のヌクレオチド配列を含んで成る一次ベクター内のクローニング部位内に発現可能なヌクレオチド配列を挿入すること、を含んで成る一次ベクターの調製方法に関する。
【0042】
更なる観点において、本発明は、5’→3’方向に、一般式:
[RS1-RS2-SP-PR-X-TR-SP-RS2'-RS1']
(ここで、
RS1及びRS1'は制限部位を表し、
RS2及びRS2'はRS1及びRS1'と異なる制限部位を表し、
SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチドのスペーサーを表し、
PRはプロモーターを表し、
Xは発現可能なヌクレオチド配列を表し、
TRはターミネーターを表し、
−ここでの発現可能なヌクレオチド配列は、1つの発現状態から単離され、そして
−少なくとも2つのカセットが異なる)のヌクレオチド配列のカセットをそれぞれが含んで成る少なくとも2つの一次ベクターを含んで成るヌクレオチドライブラリーに関する。
【0043】
ヌクレオチドライブラリーは、エントリー(entry)(=最初の(initial))ライブラリーとも称することがあり、これは本発明に従うヌクレオチドカセットを含んで成る多数のベクターを保存し、そして増幅するための適当な手段としてヌクレオチドライブラリーを使用することを意図するものである。それはまた、コンカテマー化のために切り出されたカセットを使用するために、増幅後にカセットを切り出すことを意図するものでもある。都合よいことに、1つのヌクレオチドライブラリーが、同一の供給源のプール、例えば同一の発現状態に由来する発現可能なヌクレオチド配列を網羅することがある。従って、当該ライブラリーは、1つの発現状態から単離されたmRNAから合成されたcDNAを導入するために都合よく使用される。
【0044】
好ましくは、PR配列は、宿主細胞内で機能することができない。これは、発現可能なヌクレオチド配列のいずれもがライブラリー宿主にとって致死性でなく、そしてその結果失われえないことを保証するためである。
【0045】
ヌクレオチドライブラリーは更に、当該ライブラリー内で保存されたカセットのコンカテマーを後で構築するのに適した手段を提供する。本発明の特に好ましい態様によると、当該ライブラリー内の実質的に全てのカセットが異なる。この差異は、遺伝子の異なるサブセットを協調的に発現させ、そして部分的に、コンカテマー内で発生している反復配列のレベルを最小化することができるように部分的に導入される。
【0046】
他の更なる観点において、本発明は、ヌクレオチドライブラリーを調製するための方法であって、発現可能なヌクレオチド配列を獲得し、当該発現可能なヌクレオチド配列を、5’→3’方向に、一般式
[RS1-RS2-SP-PR-CS-TR-SP-RS2'-RS1']
(ここで、
RS1及びRS1'は制限部位を表し、
RS2及びRS2'はRS1及びRS1'と異なる制限部位を表し、
SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチドのスペーサーを表し、
PRは、細胞内で機能しうるプロモーターを表し、
CSはクローニング部位を表し、そして
TRはターミネーターを表す)のヌクレオチド配列を含んで成るカセットを含んで成る一次ベクター混合物のクローニング部位内にクローニングし、そして一次ベクターを宿主細胞内に伝達してライブラリーを獲得すること、
を含んで成る方法、に関する。
【0047】
都合よくは、当該方法は、1つの発現状態から単離したmRNAからcDNAライブラリーを構築し、又はcDNAライブラリーから出発し、そして本発明に従う一次ベクターの混合物内に当該cDNA配列をクローニングすること、を含んで成ることがある。適切な方法でライブラリー及びサブライブラリーを構成するために、各ライブラリーは所定の発現状態を代表する発現可能なヌクレオチ配列を含んで成る。
【0048】
本明細書で論じた全てのコンカテマー及びライブラリーに関して、スペーサー(SP, プロモーター(PR)、及びターミネーター(TR)が全てのカセットにおいて同一であってもよいが、好ましい態様において、スペーサー(SP, プロモーター(PR)、及びターミネーター(TR)は、コンカテマー及びライブラリー内のカセットの少なくとも一部について異なる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、発現状態から、エントリーベクター(本発明に従うヌクレオチドライブラリー)内の発現可能なヌクレオチド配列の組込みへと導く段階のフローチャートを示す。
【図2a】図2は、発現可能なヌクレオチド配列を含んで成るエントリーライブラリーから、適切な宿主細胞に形質転換させる進化可能な人工染色体(EVAC)へと導く段階のフローチャートを示す。図2aは、コンカテマー化、サイズ選択及び人工染色体ベクターへの挿入を含む、EVACを産生するための1つの経路を示す。
【図2b】図2bは、EVACを得るための、コンカテマー化及びベクターのライゲーションのための一段階の手順を示す。
【図3】図3は、モデルエントリーベクターを示す。MCSは、発現可能なヌクレオチド配列を挿入するためのマルチクローニング部位である。Amp Rは、アンピシリン耐性遺伝子である。Col Eは、E.コリの複製起点である。R1及びR2は、制限酵素認識部位である。
【図4】図4は、本発明に従うエントリーベクターの例、EVE4を示す。MET25はプロモーターであり、ADH1はターミネーターであり、f1は糸状ファージ、例えばM13の複製起点である。スペーサー1及びスペーサー2は、マルチクローニング部位MCS由来のいくつかのヌクレオチドによって構成され、Srfl及びAsclは制限酵素認識部位である。他の略語については図3を参照のこと。当該ベクターの配列を配列番号1に記す。
【図5】図5は、本発明に従うエントリーベクターの例、EVE5を示す。CUP1はプロモーターであり、ADH1はターミネーターであり、f1は糸状ファージ、例えばM13の複製起点である。スペーサー1及びスペーサー2は、マルチクローニング部位MCS由来のいくつかのヌクレオチドによって構成され、Srfl及びAsclは制限酵素認識部位である。他の略語については図3を参照のこと。当該ベクターの配列を配列番号2に記す。
【図6】図6は、本発明に従うエントリーベクターの例、EVE8を示す。CUP1はプロモーターであり、ADH1はターミネーターであり、f1は糸状ファージ、例えばM13の複製起点である。スペーサー3は、ラムダファージのDNAフラグメントの550bpフラグメントである。スペーサー4は、酵母由来のARS1配列である。Srfl及びAsclは制限酵素認識部位である。他の略語については図3を参照のこと。当該ベクターの配列を配列番号3に記す。
【図7】図7は、本発明に従うコンカテマーがクローニングされ得る進化可能な人工染色体(EVAC)のためのアームを提供するためのベクター(pYAC4-Ascl)を示す。TRP1, URA3, 及びHIS3は酵母の独立栄養性マーカー遺伝子であり、そしてAmp RはE.コリの独立栄養性マーカー遺伝子である。CEN4はセントロメアであり、そしてTELはテロメアである。ARS1及びPMB1は、それぞれ酵母及びE.コリ内での複製を可能にさせる。BamH I及びAsc Iは制限酵素認識部位である。当該ベクターのヌクレオチド配列を配列番号4に記す。
【図8】図8は、一般的なコンカテマー化のストラテジーを示す。左側には、制限部位、スペーサー、プロモーター、発現可能なヌクレオチド配列及びターミネーターを有する環状エントリーベクターを示す。これらは切り出されてランダムにライゲーションされる。
【表1】

レジェンド:レーンM:分子量マーカー、Pst1で消化したλファージDNA。レーン1〜9、コンカテマー化反応液。フラグメントとyac-アームの比率(F/Y)は表の通りである。
【図9a】図9aは、コンカテマー化と進化可能な人工染色体の合成の統合、及びコンカテマーのサイズが、実施例7に記載のようにベクターアームと発現カセットの比率を調整することによってどのように調整されうるかを例示する。
【図9b】図9bは、コンカテマー化と進化可能な人工染色体の合成の統合、及びコンカテマーのサイズが、実施例7に記載のようにベクターアームと発現カセットの比率を調整することによってどのように調整されうるかを例示する。
【図10】4つの異なる条件下で示したEVACで形質転換した集団のライブラリー。色の付いた表現型は、MET25及び/又はCapIプロモーターの誘導によって容易に検出されうる。
【図11】EVACゲルレジェンド:EVAC含有クローンのPFGE:レーン、a:酵母DNAのPFGEマーカー(菌株YNN295)、b:ラムダラダー、c:非形質転換宿主酵母、1〜9:EVAC含有クローン。EVACのサイズは1400〜1600kbに及ぶ。レーン2は、それぞれ1500kb未満及び550kb未満のサイズの2つのEVACを含むクローンを示す。550kbのEVACは、564kbの酵母染色体と一緒に移動し、そしてレーン中のほかのバンドと比較して、564kbのバンドの強度の増大をもたらす。矢印はEVACのバンドを示す。
【0050】
定義
オリゴヌクレオチド
約2〜10000個の核酸を有する核酸の任意なフラグメント
【0051】
制限部位
本発明の目的のために、略語RSn(n=1,2,3等)は、制限部位を含んで成るヌクレオチド配列を表すために使用される。制限部位は、認識配列及び開裂部位によって定義される。開裂部位は、認識配列の内側又は外側に位置していてもよい。略語「rs1」-「rs2」は、開裂後の制限部位の2つの末端を表すために使用される。配列「rs1-rs2」は、一緒に完全な制限部位を表す。
【0052】
制限部位の開裂部位は、平滑末端又は粘着末端のいずれかで二本鎖ポリヌクレオチド配列に残りうる。その結果、「rs1」又は「rs2」は、平滑末端又は粘着末端のいずれかを表すことがある。
【0053】
本発明を通じて使用される表記法において、
RS1-RS2-SP-PR-X-TR-SP-RS2-RS1のような式は、個々の配列が指定された順序で続くことを意味すると解されるべきである。このことは、例えばRS2の認識配列の一部がスペーサー配列と重複することを排除しないが、RS1及びRS1'を除く全ての要素が機能的であり、且つ開裂及び再構築の後に機能的なままであることを厳密に必要とする。更に、当該式は、追加の配列が列記した要素間に挿入される可能性を排除しない。例えば、イントロンが、本発明の後文に記載のように挿入されることがあり、そして、更なるスペーサー配列がRS1とRS2の間、及びTRとRS2の間に挿入されることがある。重要なのは、当該配列が機能的なままであることである。
【0054】
更に、制限部位のサイズ及び/又はその中の特定の塩基に対して言及する場合、認識配列中の塩基のみを言及する。
【0055】
発現状態
発現状態は、任意なある時間の、任意な個々の生物の任意な特定の組織における状態である。遺伝子発現の変化をもたらす条件の任意な変化は、別の発現状態をもたらす。異なる発現状態が、異なる種の異なる個体において見られるが、それらは同一の種又は個体の異なる器官においても、そして同一の種又は個体の異なる組織型においても見ることができる。異なる発現状態は、任意なある種又は個体の同一の器官又は組織において、当限定しないが年齢の変化、疾患、感染、乾燥、湿気、塩分、生体異物に対する曝露、生理学的エフェクター、温度、気圧、pH、光、気体の環境、化学物質、例えば毒素を含んで成る、異なる環境条件に該組織又は器官を曝露することによって得ることもできる。
【0056】
人工染色体
本明細書で使用する場合、人工染色体(AC)は、内因性の染色体と一緒に安定的に複製し、そして分離することができる1個のDNAである。真核生物の場合、人工染色体はまた、機能的なセントロメア、機能的なテロメア、及び少なくとも1つの自己複製配列を含んで成る、十分な長さのヌクレオチドとしても記載されることがある。それは、その中に挿入される異種遺伝子を収納し、そして発現する能力を有する。それは、活動的な哺乳類のセントロメアを含む場合、哺乳類人工染色体(MAC)と言及される。植物人工染色体及び昆虫人工染色体(BUGAC)は、それぞれ植物及び昆虫のセントロメアを含む染色体を言及する。ヒト人工染色体(HAC)は、ヒトセントロメアを含む染色体を言及し、AVACは、鳥類人工染色体を言及する。酵母人工染色体(YAC)は、酵母において機能的な染色体、例えば酵母セントロメアを含む染色体を言及する。
【0057】
本明細書で使用する場合、染色体の安定的な維持は、少なくとも約85%、好ましくは90%、更に好ましくは95%の細胞が染色体を保持する場合に起こっている。安定性は、選択的な薬剤の存在下で測定される。好ましくは、これらの染色体は、選択的な薬剤無しでも維持される。安定な染色体はまた、染色体内の再構築も染色体間の再構築も受けずに、細胞培養の間それらの構造を保持する。
【0058】
本発明の詳細な説明
後文において、本発明は、進化可能な人工染色体を含む、形質転換した宿主細胞を得る段階が、エントリーベクターから開始して実施されうる順序で説明される。
【0059】
発現可能なヌクレオチド配列の起源
本発明に従う、ベクター、コンカテマー、及び細胞に挿入されうる発現可能なヌクレオチド配列は、任意な型のヌクレオチド、例えばRNA、DNAを包含する。そのようなヌクレオチド配列は、例えば、天然で発現可能なcDNAから得ることもできる。しかし、特定の遺伝子をコードするゲノムDNAの配列を使用することもできる。好ましくは、発現可能なヌクレオチド配列は、完全長の遺伝子、例えば実質的に完全長のcDNAと対応しているが、もとの完全長のmRNAよりも短いペプチドをコードするヌクレオチド配列も使用されうる。より短いペプチドは、天然タンパク質のものと類似の触媒活性をなおも保持することがある。
【0060】
発現可能なヌクレオチド配列を得るための別の方法は、既知のペプチド又はタンパク質配列をコードするヌクレオチド配列の化学合成を介するものである。このように、発現可能なDNA配列は、天然の配列である必要はないが、実際的には、天然のヌクレオチド配列を主に使用することが好ましいことがある。DNAが一本鎖であるか二本鎖であるかは、使用するベクター系に依存する。
【0061】
多くの場合、発現可能なヌクレオチド配列のプロモーターに関する配向は、コード鎖が適切なmRNAに転写されるような配向である。しかしながら、特定の遺伝子の発現を阻止するために、配列が逆転してアンチセンスの転写物を生成することも考えられる。
【0062】
カセット
本発明の重要な観点は、高度に順序づけられた配列のヌクレオチドのカセットであって、5’→3’方向に、一般式
[RS1-RS2-SP-PR-CS-TR-SP-RS2'-RS1']
(ここで、RS1及びRS1'は制限部位を表し、RS2及びRS2'はRS1及びRS1'と異なる制限部位を表し、SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチドのスペーサーを表し、PRは、細胞内で機能しうるプロモーターを表し、CSはクローニング部位を表し、そしてTRはターミネーターを表す)を有するカセットに関する。
【0063】
発現コンストラクトの両側に隣接する2つの異なる制限部位を有することは有利である。
両方の制限部位を開裂する制限酵素で一次ベクターを処理することによって、当該発現コンストラクト及び当該一次ベクターは、2つのコンパチブルでない末端を有するものとなる。これは、空のベクターが発現コンストラクトのコンカテマー化に関与しないので、コンカテマー化を容易にする。
【0064】
制限部位
基本的に、制限酵素が知られている任意の制限部位が使用されうる。これらは、分子生物学の分野で一般的に知られ、そして使用される制限酵素、例えばSambrook, Fritsch, Maniatis,"A laboratory Manual", 2nd edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989.に記載されているものを含む。
【0065】
制限部位認識配列は、好ましくは、クローニングされたオリゴヌクレオチド内の同一の制限部位の発生の可能性が最小化されるような十分な長さのものである。このように、第一の制限酵素は、少なくとも1つの6個の塩基を含んで成ることもあるが、更に好ましくは、当該認識配列は、少なくとも7個又は8個の塩基を含んで成る。当該認識配列中に7個又はそれ以上のN以外の塩基を有する制限部位は、一般的に「レア(rare)制限部位」として知られている(実施例6を参照のこと)。しかしながら、当該認識配列はまた、少なくとも10個の塩基、例えば少なくとも15個の塩基、例えば、少なくとも16個の塩基、例えば少なくとも17個の塩基、例えば少なくとも18個の塩基、例えば少なくとも18個の塩基、例えば少なくとも19個の塩基、例えば少なくとも20個の塩基、例えば少なくとも21個の塩基、例えば少なくとも22個の塩基、例えば少なくとも23個の塩基、例えば少なくとも25個の塩基、例えば少なくとも1つの30個の塩基、例えば少なくとも1つの35個の塩基、例えば少なくとも40個の塩基、例えば少なくとも1つの45個の塩基、例えば少なくとも50個の塩基であってもよい。
【0066】
好ましくは、第一制限部位RS1及びRS1'は、二本鎖のヌクレオチド配列の平滑末端を生成する制限酵素によって認識される。この部位に平滑末端が生成することによって、ベクターがその後のコンカテマー化に関与する危険性が大きく低下する。第一制限部位はまた、粘着末端を生じさせることもあるが、これらは、好ましくは第二制限部位RS2及びRS2'から生じる粘着末端及びAC中の粘着末端とコンパチブルではない。
【0067】
本発明の好ましい態様に従い、第二制限部位RS2及びRS2'は、レア制限部位を含んで成る。このように、レア制限部位の認識配列が長いほど、それを認識する制限酵素が他の−不所望な−位置でヌクレオチド配列を開裂することが更に少なくなり、そしてその可能性が低下する。
【0068】
レア制限部位は更に、PCRプライマー部位(PCR priming site)としての役割を果たすことがある。それによって、PCR技術を介して当該カセットをコピーし、それにより間接的にベクターから当該カセットを「切り出す」ことが可能となる。
【0069】
スペーサー配列
RS2配列とPR配列との間に位置するスペーサー配列は、好ましくは、転写されないスペーサー配列である。スペーサー配列の目的は、同一細胞内に存在する、異なるコンカテマー間の、又は同一のコンカテマー内に存在するカセット間の組み換えを最小限にすることであるが、それはまた、当該カセット内のヌクレオチド配列を更に「宿主」様にするための役割を果たすこともある。スペーサー配列の更なる目的は、カセットが頭と頭、又は尾と尾で会合する場合に起こりうる、隣接するパリンドローム配列間でのヘアピン形成の発生を低下させることである。スペーサー配列は、例えばPCRプライマー部位としての、又は、カセットのアフィニティー精製を可能にする核酸若しくはPNA若しくはLNAプローブに対するハイブリダイゼーションのための標的としての役割を果たしうる、短い保存ヌクレオチド配列を導入するために便利なこともある。
【0070】
当該カセットはまた、TRとRS2との間に少なくとも2つのヌクレオチドの別のスペーサー配列を任意に含んで成ることもある。カセットがベクターから切り出され、そしてカセットのコンカテマーへとコンカテマー化される場合、当該スペーサー配列はまた、2つの連続的な同一のプロモーター間及び/又はターミネーター配列間に一定の距離があることも保証する。この距離は、少なくとも50塩基、例えば少なくとも60塩基、例えば少なくとも75塩基、例えば少なくとも100塩基、例えば少なくとも150塩基、例えば少なくとも200塩基、例えば少なくとも250塩基、例えば少なくとも300塩基、例えば少なくとも400塩基、例えば少なくとも500塩基、例えば少なくとも750塩基、例えば少なくとも1000塩基、例えば少なくとも1100塩基、例えば少なくとも1200塩基、例えば少なくとも1300塩基、例えば少なくとも1400塩基、例えば少なくとも1500塩基、例えば少なくとも1600塩基、例えば少なくとも1700塩基、例えば少なくとも1800塩基、例えば少なくとも1900塩基、例えば少なくとも2000塩基、例えば少なくとも2100塩基、例えば少なくとも2200塩基、例えば少なくとも2300塩基、例えば少なくとも2400塩基、例えば少なくとも2500塩基、例えば少なくとも2600塩基、例えば少なくとも2700塩基、例えば少なくとも2800塩基、例えば少なくとも2900塩基、例えば少なくとも3000塩基、例えば少なくとも3200塩基、例えば少なくとも3500塩基、例えば少なくとも3800塩基、例えば少なくとも4000塩基、例えば少なくとも4500塩基、例えば少なくとも5000塩基、例えば少なくとも6000塩基、を含んで成ることもある。
【0071】
PR配列の5’側に位置するスペーサーとTR配列の3'側に位置するものとの間のヌクレオチドの数はいずれのものでもよい。しかしながら、スペーサー配列のうちの少なくとも1つが、100〜2500塩基、好ましくは200〜2300塩基、更に好ましくは300〜2100塩基、例えば400〜1900塩基、更に好ましくは500〜1700塩基、例えば600〜1500塩基、更に好ましくは700〜1400塩基を含んで成ることを保証するのは有利なことがある。
【0072】
対象の宿主細胞が酵母である場合、コンカテマー内に存在するスペーサーは、好ましくは幾つかのARSと様々なラムダファージDNAフラグメントとの組み合わせを含んで成るべきである。
【0073】
好ましいスペーサー配列の例は、限定しないが、ラムダファージDNA、原核生物のゲノムDNA、例えばE. コリのゲノムDNA, ARSを含む。
【0074】
プロモーター
プロモーターは、RNAポリメラーゼが結合し、そして転写を開始するDNA配列である。プロモーターは、鎖が転写されるのを指示することによって転写物の方向性を決定する。
【0075】
・細菌のプロモーターは通常、特定のシグマ因子及びRNAポリメラーゼが結合する、−35〜−10(転写開始部位に対して相対的なもの)の共通配列から成る。
【0076】
・真核生物のプロモーターはそれ以上に複雑である。発現ベクターで利用される多くのプロモーターは、RNAポリメラーゼIIによって転写される。基本転写因子(GTF)が最初に添加開始部位付近の特定の配列に結合し、そして次にRNAポリメラーゼの結合を漸加する。これらの最低限のプロモーター因子に加えて、小さな配列因子が、所定のプロモーターの活性を制御するモジュラーDNA結合/トランス活性化タンパク質(例えば、AP-1, SP-1)によって具体的に認識される。
【0077】
・ウイルスのプロモーターは、細菌及び真核生物と同じ機能を果たしうる。それらの宿主のウイルス感染時に、ウイルスのプロモーターは、宿主の転写機構を用いて、又は宿主の機構の一部を置き換えるためにウイルス性にコードされた酵素を供給することによって、転写を方向付ける。
【0078】
プロモーターは更に、プロモーターと一緒に働き、そしてリプレッサー(例えば、E. コリのlacO/LAC lqリプレッサー系)又はインデューサー(例えば、酵母のgal1/GAL4インデューサー系)のいずれかに結合するDNA配列因子である制御因子を含んで成ることもある。いずれの場合においても、プロモーターが抑制解除又は誘導され、転写が「開始される(turned on)」まで、転写は実質的に「止められる(shut off)」。カセットのプロモーターの選択は、カセットが挿入されるのが意図される宿主生物に主に依存する。この目的にとって重要な必要条件は、プロモーターが、好ましくは、発現可能なヌクレオチド配列が発現すべき宿主細胞において機能することができるべきであることである。
【0079】
好ましくは、プロモーターは、外部から制御可能なプロモーター、例えば誘導可能なプロモーター及び/又は抑制可能なプロモーターである。プロモーターは、化学物質、例えば化学的誘導因子、例えば代謝物、基質、金属、ホルモン、糖の不在/存在によって制御可能(抑制可能/誘導可能)でありうる。プロモーターは、ある生理学的パラメーター、例えば温度、pH、酸化還元状態、増殖段階、発育段階、によっても同様に制御可能である場合があり、あるいは、プロモーターは、合成のインデューサー/リプレッサー、例えばgalインデューサーによって誘導可能/抑制可能である場合がある。
【0080】
宿主細胞の遺伝子制御系による意図していない干渉を回避するために、且つ協調的な遺伝子発現の制御可能性を向上させるために、プロモーターは好ましくは合成プロモーターである。適当なプロモーターは、US 5,798,227, US 5,667,986に記載されている。適当な合成の真核生物プロモーターを設計するための原理は、US 5,559,027, US 5,877,018又はUS 6,072,050に開示されている。
【0081】
遺伝子の転写の制御のための、合成の誘導可能な真核生物のプロモーターは、タンパク質の発現レベルの向上及びより低い基底レベルの遺伝子発現を達成しうる。そのようなプロモーターは、好ましくは、一般的に他の誘導因子の挿入による誘導因子を1つ含む天然のプロモーターの修飾によって、制御因子の少なくとも2つのクラスを含む。例えば、追加の金属応答因子(IR:Es)及び/又は糖質コルチコイド応答因子(GRE)が、天然のプロモーターに提供されうる。更に、1又は複数の構成因子が、より低い基底レベルの遺伝子発現を提供するために、機能的に無能化されることがある。
【0082】
プロモーターの好ましい例は、限定しないが、炭水化物、例えばガラクトース;より低い無機性ホスファーゼレベル;温度、例えば低温又は高温シフト;金属又は金属イオン、例えば銅イオン;ホルモン、例えば、ジヒドロテストロン;デオキシコルチコステロン;熱ショック(例えば39℃);メタノール;酸化還元状態;増殖段階、例えば発育段階;合成のインデューサー、例えばgalインデューサーを含んで成る群から選択される任意の因子によって誘導され、そして/あるいは抑制されるプロモーターを含む。そのようなプロモーターの例として、ADH 1, PGK 1, GAP 491, TPI, PYK, ENO, PMA 1, PH05, GAL 1, GAL 2, GAL 10, MET25, ADH2, MEL 1, CUP 1, HSE, AOX, MOX, SV40, CaMV, Opaque-2, GRE, ARE, PGK/AREハイブリッド, CYC/GREハイブリッド,TPI/a2オペレーター, AOX 1, MOX A.がある。
【0083】
しかしながら、更に好ましくは、プロモーターは、ハイブリッドプロモーター、例えばPGK/AREハイブリッド、CYC/GREハイブリッドから、又は合成プロモーターから選択される。そのようなプロモーターは、発現宿主の天然遺伝子の制御に干渉しすぎることなしに制御されうる。
【0084】
酵母プロモーター
続いて、本発明で一緒に使用されうる既知の酵母プロモーターの例を示す。当該例は限定するものではなく、そして、本発明に従い有用なプロモーターをどのように選択し又は設計するかを当業者に示す役割を果たすためのものである。
【0085】
酵母で機能的な多くの転写プロモーターが文献に記載されているが、それらのうちのわずかにいくつかが、組み換え手段によるポリペプチドの産生にとって有効であることが証明されている。特に、強力な構成的プロモーターと考えられている、PGK遺伝子(3−ホスホグリセリン酸キナーゼ)、GAPDH(グリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ)をコードするTDH遺伝子、TEF1遺伝子(伸長因子1)、MFα1(α性フェロモン前駆体)のプロモーター、あるいはチアミンによって制御されうる、グルコース又はPHO5の存在下で抑制される制御可能なプロモーターCYClを挙げることができる。しかしながら、しばしば説明できない理由により、それらは、自身が制御する遺伝子の有効な発現を常には可能にしない。本文においては、新規の有効な宿主/ベクター系を産生するために、新規のプロモーターを有することが可能であることが常に有利である。更に、所定の細胞において有効なプロモーターの選択が、同種の配列間の組み換えの問題を回避しつつ、この同一の細胞における多数のタンパク質(例えば、同一の代謝系の複数の酵素)の産生を予見させる。
【0086】
通常、プロモーター領域は、遺伝子の5’領域に配置され、そしてそれらの制御下にあるDNAフラグメントの転写を可能にする全ての因子、特に
(1)転写の開始部位の位置及び基底レベルを決定する、TATAボックス及び転写開始部位を含んで成る、いわゆる最小プロモーター領域。サッカロマイセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)においては、最小プロモーター領域の長さは比較的変化可能なものである。事実、TATAボックスの正確な配置は、開始部位の−40〜−120ヌクレオチド上流にあってもよい(Chen and Struhl, 1985, EMBO J., 4,3273-3280)。
(2)構成的に(培養条件に関係なく、細胞周期に沿った比較的一定の転写レベル)又は制御可能に(アクチベーターの存在下での転写及び/又はリプレッサーの存在下での抑制の活性化)有効な転写レベルを保証するのを可能にする、TATAボックスの上流(最大数百ヌクレオチドすぐ上流)の配列。これらの配列は、アクチベーター、インヒビター、エンハンサー、インデューサー、リプレッサーなどの複数の型のものでもよく、そして細胞性の因子又は培養条件の変化に応答することがある。
【0087】
そのようなプロモーターの例には、US 5,641,661に開示されているZZA1及びZZA2プロモーター、WO 97/44470に開示されているEF1-αタンパク質プロモーター及びリボソームタンパク質のS7遺伝子プロモーター、US 5,952,195に開示されているCOX 4プロモーター及び2つの未知のプロモーター(本明細書の配列番号1及び2)がある。他の有用なプロモーターには、WO 98/54339に開示されているHSP 150プロモーター並びにUS 4,870,013に開示されているSV 40及びRSVプロモーター、並びにEP 0 329 203 A1に開示されているPyk及びGAPDHプロモーターが含まれる。
【0088】
合成の酵母プロモーター
更に好ましくは、本発明は、合成プロモーターの使用を採用する。合成プロモーターは、ある遺伝子の最小プロモーター領域と別の遺伝子の上流制御配列とを組み合わせることによって構築される。プロモーターの制御の増大は、上流制御配列の特定配列を修飾することによって、例えば、置換又は欠失を介して、あるいは特定の制御配列の多数のコピーの挿入を介して得ることができる。合成プロモーターを用いる1つの利点は、それらが、宿主細胞の天然のプロモーターに干渉しすぎることなく制御されうることである。
【0089】
そのような合成の酵母プロモーターは、2つの異なる酵母由来遺伝子、酵母のキラー毒素リーダーペプチド、及びIL-1βのプロモーター又はプロモーター因子を含んで成る(WO 98/54339)。
【0090】
酵母の合成プロモーターの別の例は、酵母のPHO5遺伝子の上流活性化部位を含んで成る5’側の上流プロモーター因子及び、GAP遺伝子のヌクレオチド−300〜−180から開始してヌクレオチド−1で終わる、酵母GAPDH遺伝子の3’側の下流プロモーター因子、を含む酵母のハイブリッドプロモーターに関する、US 5,436,136 (Hinnen et al)に開示されている。
【0091】
酵母の合成プロモーターの別の例は、US 5,089,398 (Rosenberg et al)に開示されている。この開示には、一般式
(P. R. (2)-P. R. (1))-
(P. R. (1)は、コード配列に隣接し、且つ転写開始部位、RNAポリメラーゼ結合部位を有し、且つTATAボックス、CAAT配列、及び転写制御シグナル、例えばキャッピング配列を必要に応じて含む、プロモーター領域であり;
P. R. (2)は、RNAポリメラーゼ結合領域の転写の有効性の増強と関連した、P. R. (1)の5’末端に連結したプロモーター領域である)を有するプロモーターを記載している。
【0092】
US 4,945,046 (Horii et al)においては、合成の酵母プロモーターをどのように設計するかについての更なる例が開示されている。この特定のプロモーターは、酵母及び哺乳類の両方に由来するプロモーター因子を含んで成る。当該ハイブリッドプロモーターは本質的に、上流活性化部位(UAS)が欠失され、そしてSV40ウイルス由来の初期エンハンサー領域によって置換されている、サッカロマイセス・セレビシアエのPHO5又はGAP-DHプロモーターから成る。
【0093】
クローニング部位
一次ベクターのカセット内のクローニング部位は、任意のヌクレオチド配列がその中にクローニングされうるように設計されるべきである。
【0094】
カセットのクローニング部位は、好ましくは、ディレクショナルクローニング(directional cloning)を可能にする。これにより、宿主における転写が意図する方向のコード鎖から実施され、且つ翻訳されたペプチドが、もとのヌクレオチド配列がコードするペプチドと同一であることが保証される。
【0095】
しかしながら、いくつかの態様によると、反対方向の配列を挿入することが有利なこともある。これらの態様によると、特定の経路に関与する特定の遺伝子の機能的発現を防ぐ、いわゆるアンチセンスのコンストラクトも挿入されうる。それにより、一般的な経路から、別のあまり有力でない経路へと代謝中間生成物を方向転換させることも可能となる。
【0096】
カセット内のクローニング部位は、一般的にMCS又はポリリンカー部位として知られる多数のクローニング部位を含んで成ることがあり、これらは制限エンドヌクレアーゼ認識部位をコードする合成DNA配列である。これらの部位は、特定の位置でのベクター内へのDNAの簡便なクローニングのために、且つインサートのディレクショナルクローニングのために操作される。
【0097】
cDNAのクローニングは、制限酵素の使用を伴う必要はない。他の代わりとなる系には、限定しないが、
−組み換え及びloxP部位を使用する、Clontech社のCreator(商標)Cre-loxP系
−ラムダ付着部位(att-λ)、例えばLife Technologies社のGateway(商標)系の使用、
が含まれる。これらの系はともにディレクショナルである。
【0098】
ターミネーター
ターミネーター配列の役割は、コード配列の長さに転写を制限することである。最適なターミネーター配列は、それ故に、宿主細胞でこの作用を実施することができるものである。
【0099】
原核生物において、転写のターミネーターとして知られる配列は、DNAの鋳型を放出させ、そして新生RNAの転写を停止させるようにシグナルをRNAポリメラーゼに送る。
【0100】
真核生物において、RNA分子は、成熟mRNA分子の末端をはるかに超えて転写される。新規転写物は酵素によって開裂され、そしてポリA尾部として知られるアデニル酸残基の長い配列によって修飾される。ポリアデニル化共通配列は、実際の開裂部位から約10〜30塩基上流に位置する。
【0101】
酵母由来のターミネーター配列の好ましい例は、限定しないが、ADN1, CYC1, GPD, ADH1アルコールデヒドロゲナーゼを含む。
【0102】
イントロン
任意に、ベクター内のカセットは、発現可能なヌクレオチド配列に対して5’又は3’側に位置することがある、イントロンを含んで成ることがある。イントロンのデザイン及びレイアウト当業界で周知である。イントロンのデザインの選択は、発現可能なヌクレオチド配列が最終的に発現するべく対象の宿主細胞に大きく依存する。発現カセット内にイントロンを持つ効果は、イントロン配列と一般的に関連しているものである。
【0103】
酵母のイントロンの例は、文献及び特定のデータベース、例えば2000年4月15日に更新されたAres Lab酵母イントロンデータベース(バージョン2.1)において見られる。当該データベースの初期のバージョン及び当該データベースの抽出物は、Spingola M, Grate L, Haussier D, Ares M Jr.による「Genome-wide bioinformatic and molecular analysis of introns in Saccharomyces cerevisiae」(RNA 1999 Feb; 5 (2): 221-34) 及びDavis CA, Grate L, Spingola M, Ares M Jr.による「Test of intron predictions reveals novel splice sites, alternatively spliced mRNAs and new introns in meiotically regulated genes of yeast.」(Nucleic Acids Res 2000 Apr 15; 28 (8): 1700-6)において公開されている。
【0104】
一次ベクター(エントリーベクター)
用語「エントリーベクター」とは、本発明に従うカセットを用いて、cDNA又は他の発現可能なヌクレオチド配列を貯蔵し、又は増幅するためのベクターを意味する。一次ベクターは、好ましくは、E.コリ又は任意な他の適当な標準的宿主において増殖することができる。それは、好ましくは増幅可能で且つ、標準的な均一化手順及びエンリッチメント(enrichment)手順に適合可能であるべきである。
【0105】
一次ベクターは、a)少なくとも1つの適当な宿主生物において自身を複製させることができ、そしてb)その後当該ベクターと一緒に複製される外来DNAの挿入を可能にし、そしてc)好ましくは前記外来DNAの挿入を含むベクター分子の選択を可能にするという、基本的な要求を持つDNAの任意な型のものであってもよい。好ましい態様において、当該ベクターは、酵母、及び細菌のように標準的な宿主で複製可能であり、そして、好ましくは宿主細胞あたり高コピー数を有するべきである。当該ベクターが、宿主特異的な複製起点に加えて、単一の標準的ウイルスのための複製起点、例えば繊維状ファージのためのf1起点を含む。このことは、クローン化された配列の均一化手順及びエンリッチメント手順にとって有用なことがある単一の標準的核酸の産生を可能にする。一般的に使用される多数のクローニングベクターが説明されており、そしてSambrook, J; Fritsch, E. F; 及びManiatis T. (1989) Molecular Cloning : A laboratory manual. Cold Spring Harbour Laboratory Press, USA, Netherlands Culture Collection of Bacteria (www. cbs. knaw. nl/NCCB/collection. htm) 又はDepartment of Microbial Genetics, National Institute of Genetics, Yata 1111 Mishima Shizuoka 411-8540, Japan (www. shigen. nia. ac. ip/cvector/cvector. html)ににも言及することがある。多くの一般的な誘導体の親である幾つかの型の例は、M13mp10, pUC18, λgt 10, 及びpYAC4である。一次ベクターの例には、限定しないが、M13K07, pBR322, pUC18, pUC19, pUC118, pUC119, pSP64, pSP65, pGEM-3, pGEM-3Z, pGEM-3Zf (-), pGEM-4, pGEM-4Z, 7cAN13, pBluescript 11, CHARON 4A, B+, CHARON 21A, CHARON 32, CHARON 33, CHARON 34, CHARON 35, CHARON 40, EMBL3A, λ2001, λDASH, λFIX, λgt10, λgt11, λgt18, λgt20, λgt22, λORF8, XZAP/R, pJB8, c2RB, pcoslEMBLが含まれる。
【0106】
ベクター内へのcDNA又はゲノムDNAのクローニング方法は当業界で周知である。J. Sambrook, E. F. Fritsch, T. Maniatis: Molecular Cloning, A Laboratory Manual (2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989).にも言及がされることがある。
【0107】
環状モデルのエントリーベクターの一例を図3に記載する。ベクターEVEは、発現カセット、R1-R2-スペーサー-プロモーター-マルチクローニング部位-ターミネーター-スペーサー-R2-R1を含む。当該ベクターは更に、アンピシリン耐性遺伝子AmpR、及びE.コリの複製起点ColE1を含む。
【0108】
エントリーベクターEVE4, EVE5, 及びEVE8を図3に示す。これらは全て、R1としてSrtlを、そしてR2としてAsclを含む。これらの部位はともにパリンドロームであり、且つ認識配列中に8塩基を有するレア制限部位とみなされる。当該ベクターは更に、AmpRアンピシリン耐性遺伝子、及びE.コリのColE1複製起点並びに繊維状ファージ、例えばM13の複製起点であるf1、を含む。EVE4(図4)は、MET25プロモーター及びADH1ターミネーターを含む。スペーサー1及びスペーサー2は、マルチクローニング部位MCS由来の短い配列である。EVE5(図5)は、CUP1プロモーター及びADH1ターミネーターを含む。EVE8(図6)は、CUP1プロモーター及びADH1ターミネーターを含む。EVE8のスペーサーは、550bpのλファージDNA(スペーサー3)及び酵母由来のARS配列である(スペーサー4)。
【0109】
ヌクレオチドライブラリー(エントリーライブラリー)
細胞においてヌクレオチド配列のライブラリーを構築し、そして維持するための方法並びにそれに適したベクター及び宿主細胞は当業界で周知である。当該ライブラリーに主に必要なことは、その中で本発明に従う多数の一次ベクター(コンストラクト)を保存し、そして増幅することが可能であるべきということであり、当該ベクター(コンストラクト)は、少なくとも1つの発現状態に由来する発現可能なヌクレオチド配列を含んで成り、そして少なくとも2つのベクター(コンストラクト)が異なる。
【0110】
そのようなライブラリーの1つの具体例は、周知で且つ広く適用されるcDNAライブラリーである。cDNAライブラリーの利点は、主に、それが転写されたメッセンジャーRNAに相当するDNA配列のみを細胞内に含むことである。実質的に完全長のcDNAのみが当該ライブラリー内にクローニングされるように、単離されたmRNA又は合成されたcDNAを精製するのに適した方法も存在する。
【0111】
実質的に完全長のcDNAを生成する過程の最適化のための方法は、サイズの選択、例えば電気泳動、クロマトグラフィー、沈澱を含んで成ることもあり、あるいは、完全長のcDNAを得る可能性を増大させる方法、例えばSMART(商標)法(Clontech)又はCapTrap(商標)法(Stratagene)を含んで成ることもある。
【0112】
好ましくは、当該ヌクレオチドライブラリーを生成するための方法は、cDNA種の均一化された提示(representation)を含んで成る、実質的に完全長のcDNA群を得ることを含んで成る。更に好ましくは、実質的に完全長のcDNA群は、所定の発現状態に特有のcDNA種の均一化された提示を含んで成る。
【0113】
均一化は、豊富なmRNA種を表現するクローンの重複性を低下させ、そして低頻度のmRNA種由来のクローンの相対的な表現を増大させる。
【0114】
cDNAライブラリーの均一化のための方法は当業界で周知である。均一化に適したプロトコール、例えばUS 5,763,239 (DIVERSA)及びWO 95/08647及びWO 95/11986.及びBonaldo, Lennon, Soares, Genome Research 1996,6: 791-806; Ali, Holloway, Taylor, Plant Mol Biol Reporter, 2000,18: 123-132に開示されているようなものを参照のこと。
【0115】
エンリッチメント(enrichment)法が、特定の発現状態に特有なmRNAを表現するクローンを単離するために使用される。サブトラクティブハイブリダイゼーションと広く称される方法の多くの変法は当業界で周知である。Sive, John, Nucleic Acid Res, 1988,16: 10937; Diatchenko, Lau, Campbell et al, PNAS, 1996,93: 6025-6030; Carninci, Shibata, Hayatsu, Genome Res, 2000, 10: 1617-30, Bonaldo, Lennon, Soares, Genome Research 1996,6: 791-806; Ali, Holloway, Taylor, Plant Mol Biol Reporter, 2000,18: 123-132を参照のこと。例えば、エンリッチメントは、豊富なクローンのライブラリー由来のcDNAを用いて、又は単純に、誘導状態由来のテスターライブラリーに対するドライバーとして未誘導状態を表現するライブラリー由来のcDNAを用いて、均一化の手順に類似のハイブリダイゼーションを繰り返すことによって達成されうる。あるいは、選択した発現状態に由来する、mRNA又はPCR増幅されたcDNAが、テスターライブラリーから共通配列をサブトラクトするために使用されうる。ドライバー及びテスター群の選択は、それぞれの特定実験における標的の発現可能なヌクレオチド配列の性質に依存する。
【0116】
当該ライブラリーにおいて、あるペプチドをコードする発現可能なヌクレオチド配列は、好ましくは、異なるプロモーターの支配下にある、異なるが類似のベクター内で見られる。好ましくは、当該ライブラリーは、3個の異なるプロモーターの支配下にある、同一のペプチドをコードする発現可能なヌクレオチド配列を有する少なくとも3個の一次ベクターを含んで成る。更に好ましくは、当該ライブラリーは、5個の異なるプロモーターの支配下にある、同一のペプチドをコードする発現可能なヌクレオチド配列を有する少なくとも5個の一次ベクターを含んで成り、例えば、6個の異なるプロモーターの支配下にある、同一のペプチドをコードする発現可能なヌクレオチド配列を有する少なくとも6個の一次ベクターを含んで成り、例えば、7個の異なるプロモーターの支配下にある、同一のペプチドをコードする発現可能なヌクレオチド配列を有する少なくとも7個の一次ベクターを含んで成り、例えば、8個の異なるプロモーターの支配下にある、同一のペプチドをコードする発現可能なヌクレオチド配列を有する少なくとも8個の一次ベクターを含んで成り、例えば、9個の異なるプロモーターの支配下にある、同一のペプチドをコードする発現可能なヌクレオチド配列を有する少なくとも9個の一次ベクターを含んで成り、例えば、10個の異なるプロモーターの支配下にある、同一のペプチドをコードする発現可能なヌクレオチド配列を有する少なくとも10個の一次ベクターを含んで成る。
【0117】
同一のペプチドをコードする発現可能なヌクレオチド配列は、好ましくは、本質的に同一のヌクレオチド配列、更に好ましくは同一のヌクレオチド配列を含んで成る。
【0118】
異なるベクター内に、多数のプロモーターの支配下にある、とある1つの遺伝子を有するライブラリーを有することによって、ヌクレオチドライブラリーから、遺伝子とプロモーターの組み合わせのアレイを構築することが可能となる。好ましくは、あるライブラリーは、完全な又は実質的に完全な組み合わせ、例えば遺伝子とプロモーターの2次元アレイを構築することが可能となり、ここで、実質的に全ての遺伝子が、選択した数のうち実質的に全てのプロモーターの支配下に見られる。
【0119】
本発明の別の態様に従い、ヌクレオチドライブラリーは、異なるベクター内で異なるスペーサー配列及び/又は異なるイントロン配列と組み合わされた発現可能なヌクレオチド配列の組み合わせを含んで成る。従って、任意なある発現可能なヌクレオチド配列は、2,3,4又は5次元アレイでで異なるプロモーター及び/又は異なるスペーサー及び/又は異なるイントロン及び/又は異なるターミネーターと組み合わされることがある。2,3,4又は5次元アレイは、全ての組み合わせが存在しなければならないわけではないので、完全でも不完全でもよい。
【0120】
当該ライブラリーは、原核細胞又は真核細胞を含んで成る宿主細胞において適当に維持されうる。好ましい原核生物の宿主生物は、限定しないが、エスケリッチャ・コリ(Escherichia coli)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)、ストレプトマイセス・コエリコロー(Streptomyces coelicolor)、シュードモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)、ミクソコックス・キサンサス(Myxococcus xanthus)を含みうる。
【0121】
酵母種、例えばサッカロマイセス・セレビシアエ(出芽酵母)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)(分裂酵母)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)及びハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)(メタノール資化性酵母)も使用されうる。フィラメンタス・アスコマイセテス(Filamentous ascomycetes)、例えばニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)及びアスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)も使用されうる。植物細胞、例えばタバコ及びシロイヌナズナ由来のものが好ましい。好ましい哺乳類宿主細胞は、限定しないが、ヒト、サル及び齧歯類、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NIH/3T3, COS, 293, VERO, HeLa 等を含む。(Kriegler M. in"Gene Transfer and Expression: A Laboratory Manual", New York, Freeman & Co. 1990を参照のこと)。
【0122】
コンカテマー
コンカテマーは、一連の連結した単位である。本文において、コンカテマーは、多数の直列に連結したヌクレオチドカセットを表すために使用され、ここでは、少なくとも2つの直列に連結したヌクレオチド単位が、基本構造
[rs2-SP-PR-X-TR-SP-rs1]
(ここで、
rs1とrs2は共に制限部位を表し、
SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチド塩基のスペーサーを表し、
PRは、細胞内で機能しうるプロモーターを表し、
Xは発現可能なヌクレオチド配列を表し、
TRはターミネーターを表し、
SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチド塩基のスペーサーを表す)
を有するカセットを含んで成る。
【0123】
任意に、当該カセットは、プロモーターと発現可能なヌクレオチド配列との間、及び/又はターミネーターと発現可能なヌクレオチド配列との間にイントロン配列を含んで成る。
【0124】
コンカテマーのカセット内の発現可能なヌクレオチド配列は、cDNA及びゲノムDNAを含んで成る群から選択されるDNA配列を含んで成ることがある。
【0125】
本発明の1つの観点に従い、コンカテマーは、発現可能なヌクレオチド配列の自然発生的でない組み合わせ又は非天然の組み合わせが得られるように、異なる発現状態由来の発現可能なヌクレオチドを有するカセットを含んで成る。これらの異なる発現状態は、少なくとも2つの異なる組織、例えば少なくとも2つの組織、例えば少なくとも2つの種、例えば少なくとも2つの属を表すことがある。異なる種は、少なくとも2つの門(phylum)、例えば少なくとも2つの異なる綱、例えば少なくとも2つの異なる門(division)、更に好ましくは少なくとも2つの異なる亜界、例えば少なくとも2つの異なる界に由来していてもよい。
【0126】
例えば、発現可能なヌクレオチド配列は、真核生物、例えば哺乳類、例えばヒト、マウス又はクジラから、爬虫類、例えばチョウチョ及びガから、腔腸動物、例えばクラゲ、イソギンチャク、又はサンゴから、魚類、例えば硬骨魚類及び軟骨魚類から、植物、例えば双子葉植物、例えばコーヒー、オーク又は単子葉植物、例えば大麻、百合、及びランから;低級植物、例えば藻類及び銀杏から、高等菌類、例えば陸生のキノコ(terrestrial fruiting fungi)から、海洋性の放線菌(marine actinomycete)から派生することもある。発現可能なヌクレオチド配列はまた、原虫、例えばマラリア又はトリパノソーマから、あるいは原核生物から、例えばE.コリ又は古細菌から派生することもある。更に、発現可能なヌクレオチド配列は、以下の表に列記した種及び属に由来する1又は複数の発現状態、好ましくはそれ以上の発現状態から派生することもある。
【0127】
細菌
ストレプトマイセス、ミクロモノスポラ(Micromonospora)、ノルカディア(Norcadia,)、アクチノマデュラ(Actinomadura)、アクチノプラネス(Actinoplanes)、ストレプトスポランギウム(Streptosporangium)、ミクロビスポラ(Microbispora)、キタサトスポリアム(Kitasatosporiam)、アゾバクテリウム(Azobacterium)、リゾビウム(Rhizobium)、アクロモバクテリウム(Achromobacterium)、エンテロバクテリウム(Enterobacterium)、ブルセラ(Brucella)、ミクロコッカス(Micrococcus)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、バチルス(Bacillus)(B. t.毒素)、クロストリジウム(Clostridium)(毒素)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、シュードモナス(Pseudomonas)、アエロバクター(Aerobacter)、ビブリオ(Vibrio)、ハロバクテリウム(Halobacterium)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、サイトファーガ(Cytophaga)、ミクソコッカス(Myxococcus)
【0128】
真菌
アマニタ・ムスカリア(Amanita muscaria)(ベニテングダケ(fly agaric)、イボテン酸、ムシモール(muscimol))、シロシベ(Psilocybe)(シロシビン(psilocybin))、フィサリウム(Physarium)、フリゴ(Fuligo)、ムコール(Mucor)、フィトフトラ(Phytophtora)、リゾプス(Rhizopus)、アスペルギルス(Aspergillus)、ペニシリウム(Penicillium)(ペニシリン)、コプリヌス(Coprinus)、ファネロカエテ(Phanerochaete)、アクレモニウム(Acremonium)(セファロスポリン)、トロコデルマ(Trochoderma)、ヘルミンソスポリウム(Helminthosporium)、フサリウム(Fusarium)、アルテルナリア(Alternaria)、ミロセシウム(Myrothecium)、サッカロマイセス(Saccharomyces)
【0129】
藻類
マクリ(Digenea simplex)(カイニン酸(kainic acid)、駆虫薬)、ミツイシコンブ(Laminaria anqustata)(ラミニン、降圧剤),
【0130】
地衣類
ウスネア・ファスシアタ(Usnea fasciata)(バルピン酸(vulpinicacid)、抗菌剤、ウスニン酸、抗ガン剤)
【0131】
高等植物
ヨモギ(Artemisia)(アルテミニシン(artemisinin))、コリウス(Coleus)(フォルスコリン),、ハギ(Desmodium)(カリウムチャネルアゴニスト)、カタランサス(Catharanthus)(ビンカアルカロイド)、ジギタリス(Digitalis)(強心配糖体)、ポドフィルム(Podophyllum)(ポドフィロトキシン(podophyllotoxin))、イチイ(Taxus)(タキソール)、イヌガヤ(Cephalotaxus)(ホモハリントニン(homoharringtonine))、カンプトテカ(Camptotheca)(カンプトテシン(Camptothecin))、チャ(Camellia sinensis)(ティー(tea))、カンナビス・インディカ(Cannabis indica)、カンナビス・サチバ(Cannabis sativa)(大麻)、コカノキ(Erythroxylum coca)(コカ)、烏羽玉(Lophophora williamsii )
(ペヨーテ(Peyote))、ニクズク(Myristica fragrans)(ナツメグ)、ニコチアナ(Nicotiana)、ケシ(Papaver somniferum)(オピウム・ポピー(Opium Poppy))、クサヨシ(Phalaris arundinacea)(リードカナリーグラス(Reed canary grass))
【0132】
原虫
タイコジスカス・ブレビス(Ptychodiscus brevis); 渦鞭毛藻(Dinoflagellates)(ブレビトキシン、心血管性)
【0133】
海綿動物
ミクロシオニア・プロライフェラ(Microciona prolifera)(エクチオニン(ectyonin)、抗菌剤) クリプトテチラ・クリタ(Cryptotethya cryta)(D-アラビノフラノシド)
【0134】
腔腸動物
カツオノエボシ並びに他のクラゲ及びメデュソイド毒(medusoid toxin)
【0135】
サンゴ
シュードテルゴニア種(Pseudoterogonia specie)(シュードテラシン(Pseudoteracin)、抗炎症剤)、 エリスロポディウム(Erythropodium)(エリスロリド(erythrolide)、抗炎症剤)
【0136】
袋形動物
線虫分泌化合物(Nematode secretory compound)
【0137】
軟体動物
イモガイ毒、ウミウシ毒、頭足類神経伝達物質(cephalapod neurotransmitter)、イカスミ(squid ink)
【0138】
環形動物
ランブリコネレシス・ヘテロパ(Lumbriconereis heteropa)(ネライストキシン(nereistoxin、殺虫剤)
【0139】
クモ形類
ハシリグモ属(「フィッシング・スパイダー」毒)
【0140】
甲殻類
キセノバラヌス(Xenobalanus) (皮膚用接着剤)
【0141】
昆虫
エピラチュナ(Epilachna)(メキシカンビーンビートル(mexican bean beetle)のアルカロイド)
【0142】
Spinunculida
ボネリア・ビリジス(Bonellia viridis)(ボネリン(bonellin)、神経刺激性)
【0143】
苔虫類
フサコケムシ(Bugula neritina)(ブリオスタチン、抗ガン剤)
【0144】
棘皮動物
ウミユリ化学(Crinoid chemistry)
【0145】
被嚢類
トリジデナム・ソリダム(Trididemnum solidum)(ジデニン(didemnin) 、抗腫瘍剤及び抗ウイルス剤; エクテイナシジア(Ecteinascidia turbinata) エクテイナシジン(ecteinascidins)、抗腫瘍剤)
【0146】
脊椎動物
メクラウナギ(Eptatretus stoutii)(エプタトレチン(eptatretin)、心作用性)、トゲミシマ(Trachinus draco)(タンパク性毒素、血圧降下、呼吸及び心拍数低下). ヤドクガエル(Dendrobatid frog) (バトラコトキシン、プミリオトキシン(pumiliotoxin)、ヒストリオニコトキシン(histrionicotoxin)及び他のポリアミン)、ヘビ毒;カモノハシ(Orinthorhynohus anatinus)(カモノハシ毒), 修飾型カロテノイド;レチノイド及びステロイド;鳥類:ヒストリオニコトキシン(histrionicotoxin)、修飾型カロテノイド;レチノイド及びステロイド
【0147】
本発明の好ましい態様に従うコンカテマーは、少なくとも第一カセット及び第二カセットを含んで成り、前記第一カセットは前記第二カセットと異なる。更に好ましくは、コンカテマーは、実質的に全てのカセットが異なっているカセットを含んで成る。カセット間の差異は、プロモーター間、及び/又は発現可能なヌクレオチド配列間、及び/又はスペーサー間、及び/又はターミネーター間、及び/又はイントロン間の差異に起因してもよい。
【0148】
単一のコンカテマー内のカセットの数は、コンカテマーが最終的に挿入されるべき宿主種及び当該挿入の実施に介されるベクターによって主として決定される。従って、コンカテマーは、少なくとも10個のカセット、例えば少なくとも15個、例えば少なくとも20個、例えば少なくとも25個、例えば少なくとも30個、例えば少なくとも30〜60個又は60個以上、例えば少なくとも75個、例えば少なくとも100個、例えば少なくとも200個、例えば少なくとも500個、例えば少なくとも750個、例えば少なくとも1000個、例えば少なくとも1500個、例えば少なくとも2000個のカセットを含んで成ることもある。
【0149】
各カセットは、上述のようにレイアウトされ得る。
【0150】
一度コンカテマーが構築又はコンカテマー化すると、それは適当なベクター内にライゲーションされうる。そのようなベクターは、有利には、人工染色体を含んで成ることがある。機能的な人工染色体にとって基本的に必要なものは、US 4,464,472に記載されており、この内容は引用によって本明細書に組み入れられる。人工染色体又は、場合により機能的ミニ染色体とも称されるものは、宿主の有糸分裂の間のセントロメア様活性をコードするDNAセグメントを含んで成る宿主細胞内での複製及び安定な有糸分裂の維持が可能なDNA配列及び前記宿主によって認識される複製部位をコードするDNA配列を含んで成る必要がある。
【0151】
適当な人工染色体には、酵母人工染色体(YAC) (例えばMurray et al, Nature 305: 189-193; 又はUS 4,464,472を参照のこと), メガ酵母染色体(mega YAC), 細菌人工染色体(BAC), マウス人工染色体, 哺乳類人工染色体 (MAC) (例えばUS 6,133,503又はUS 6,077,697を参照のこと), 昆虫人工染色体(BUGAC), 鳥類人工染色体(AVAC), バクテリオファージ人工染色体, バキュロウイルス人工染色体, 植物人工染色体 (US 5,270,201), BIBACベクター(US 5,977,439)又はヒト人工染色体(HAC)が含まれる。
【0152】
人工染色体は、好ましくは、宿主細胞がそれを「真の」染色体と知覚し、そしてそれを維持し、そしてそれを染色体として伝達するほど大きなものである。酵母及び他の適当な宿主種の場合、これはしばしば、その種における最小の天然染色体のサイズにおおよそ相当する。サッカロマイセスの場合、最小の染色体は225kbのサイズを有する。
【0153】
MACは、他の種、例えば昆虫及び魚の種由来の人工染色体を構築するために使用されうる。人工染色体は、好ましくは、完全に機能的で案的な染色体である。2つの型の人工染色体が使用されうる。一方の型は、SATAC[サテライト人工染色体]と称される、安定な異種染色質染色体であり、そして他方の型は、真性染色質の増幅を基にしたミニ染色体である。
【0154】
哺乳類人工染色体は、注目のタンパク質をコードする遺伝子の導入のための、余分なゲノム特異的な組込み部位を提供し、そしてメガ塩基サイズのDNAの組込み、例えば本発明に従うコンカテマーの組込みを可能にする。
【0155】
本発明の別の態様に従い、コンカテマーは、宿主染色体内に組み込まれるか、他の型のベクター、例えばプラスミドベクター、ファージベクター、ウイルスベクター又はコスミドベクター内に組み込まれうる。
【0156】
好ましい人工染色体ベクターは、宿主細胞内、例えば酵母内で条件付きで増幅されることができるものである。増幅は、好ましくは、少なくとも10倍の増幅である。更に、人工染色体ベクターのクローニング部位は、上述のカセットに隣接しているものと同一の制限部位、すなわちRS2及び/又はRS2'を含んで成るように修飾されうる。
【0157】
コンカテマー化(concatenation)
コンカテマー化されるカセットは通常、制限酵素による消化、又はPCRのいずれかによってベクターから切り出される。切り出しの後、カセットは、サイズ分画、例えばゲルろ過を介して、又はカセット内の既知の配列のタギングを介して分離されうる。単離されたカセットは、続いて、粘着末端間の相互作用を介して、又は平滑末端のライゲーションを介して一緒に連結されうる。
【0158】
一本鎖のコンパチブルな末端は、制限酵素による消化によって作られることがある。コンカテマー化の場合、カセットの切り出しにとって好ましい酵素は、レアカッター、すなわち、7個又はそれ以上ヌクレオチドの配列を認識する酵素であろう。まれに切断する酵素の例はメガヌクレアーゼであり、この多くがイントロンをコードするものであり、例えばI-Ceu 1, I-Sce 1, I-Ppo I, and PI-Psp Iである(これ以上については実施例6dを参照のこと)。他の好ましい酵素は、8個のヌクレオチド配列を認識し、例えばAsc I, AsiS I, CciN I, CspB I, Fse I, MchA I, Not 1, Pac I, Sbf I, Sda I, Sgf I, SgrA I, Sse232 I, 及びSse8387 Iであり、これらは全て、一本鎖でパリンドロームのコンパチブルな末端を作り出す。
【0159】
コンカテマー内の個々のカセットの配向を制御するために使用されることもある、他の好ましいレアカッターは、非パリンドローム配列を認識する酵素、例えばAar I, Sap I, Sfi 1, Sdi I, 及びVpaである(これ以上については実施例6cを参照のこと)。
【0160】
あるいは、カセットは、末端に対する制限部位の追加、例えばPCR又はリンカー(短い合成dsDNA分子)に対するライゲーションによって調製されることもある。制限酵素は継続して単離され、そして特徴付けられており、そしてそのような新規酵素の多くが、本発明に従う一本鎖のコンパチブルな末端を生成するために使用されうることが予想される。
【0161】
一本鎖のコンパチブルな末端が、合成のカッターによりベクターを開裂することによって作られうることも予想される。従って、通常DNAを非特異的に開裂することができる反応性化学基は、特定の配列を認識してそれに結合する別の分子に結合する場合、特定の位置で切断することができる。特定のdsDNA配列を認識する分子の例はDNA, PNA, LNA, ホスホチオエート, ペプチド, 及びアミドである。例えば、Armitage, B. (1998) Chem. Rev. 98: 1171-1200(例えば、アントラキノン及びUV光を用いる光開裂を記載している); Dervan P. B. & Burli R. W. (1999) Curr. Opin. Chem. Biol. 3: 688-93 (DNAに対するポリアミドの特異的な結合を記載している)Nielsen, P. E. (2001) Curr. Opin. Biotechnol. 12: 16-20 (DNAに対するPNAの特異的な結合を記載している), 及び Chemical Reviews special thematic issue : RNA/DNA Cleavage (1998) vol. 98 (3) Bashkin J. K. (ed.) ACS publications(複数の化学的なDNA開裂物質の例を記載している)を参照のこと。
【0162】
一本鎖のコンパチブルな末端はまた、例えばdUTPを含むPCRプライマーを用いて、そして次に、当該プライマーの一部を分解するために、PCR産物をウラシル-DNAグリコシラーゼで処理することによって(US 5,035,996を参照のこと)作られることもある。あるいは、コンパチブルな末端は、ターミナルトランスフェラーゼを用いて、ベクター及びインサートの両方に尾部を設けることによって、作られることもある(Chang, LMS, Boll, um TJ (1971) J Biol Chem 246: 909)。
【0163】
また、例えば、組換えにより直接的にDNAを連結するためにCre-loxP機構(Sauer B 1993 Methods Enzymol 225:890-900)を用いるCreator系(Clontech)のような、又はディレクショナルな組換え(Landy A 1989, Ann Rev Biochem 58: 913)のためのラムダatt付着部位を用いるGateway(商標)系(Life Technologies, US 5,888,732)のような技術の改良したものを介して、コンカテマーを作り出すために、組換えが使用されうることも予想される。また、ラムダcos部位依存系が、コンカテマー化を可能にするべく発展されうることも予見される。
【0164】
更に好ましくは、カセットは、一方がカセット上に粘着末端を残し、そして他方のものがベクター内に平滑末端を残す、2つの制限酵素によるベクターからの切り出しを介して、精製段階を介することなくコンカテマー化されうる。これは、[RS1-RS2-SP-PR-X-TR-SP-RS2'-RS1']の基本構造を有するベクター由来のカセットのコンカテマー化にとって好ましい方法である。
【0165】
ベクター配列を含まないコンカテマーを生成する別の方法は、一本鎖の一次ベクター由来のカセットをPCR増幅することである。当該PCR産物は、制限部位RS2及びRS2'を含まなければならず、これは後でその同属酵素によって開裂される。続いて、コンカテマー化は、消化されたPCR産物を用いて、本質的に末端から切り出された一本鎖の一次ベクターの鋳型又は小さい二本鎖フラグメントの干渉無しに、実施されうる。
【0166】
コンカテマーは、それぞれのカセットが一次粘着末端、スペーサー配列、プロモーター、発現可能なヌクレオチド配列、ターミネーター、スペーサー配列、及び二次粘着末端を含んで成る、少なくともヌクレオチド配列のカセットのコンカテマー化によって構築され、又はコンカテマー化されうる。当該手順のフローチャートを図2aに示す。
【0167】
好ましくは、コンカテマー化は更に、一次ベクター[RS1-RS2-SP-PR-X-TR-SP-RS2'-RS1']
(ここで、Xは発現可能なヌクレオチド配列を表し、
RS1及びRS1'は制限部位を表し、
RS2及びRS2'はRS1及びRS1'と異なる制限部位を表し、
SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチドのスペーサーを表し、
PRはプロモーターを表し、
TRはターミネーターを表す)から出発して、
i) RS2及びRS2'に特異的な少なくとも1つの制限酵素の力を借りて一次ベクターを切断し、一般式[rs2-SP-PR-X-TR-SP-rs1](ここで、rs1及びrs2はともに機能的制限部位RS2又はRS2'を表す)を有するカセットを獲得し、
ii) rs1とrs2との間の相互作用を介して切り出されたカセットを構築すること、
を含んで成る。
【0168】
この方法では、少なくとも10個のカセット、例えば少なくとも15個、例えば少なくとも20個、例えば少なくとも25個、例えば少なくとも30個、例えば少なくとも30〜60個又はそれ以上、例えば少なくとも75個、例えば少なくとも100個、例えば少なくとも200個、例えば少なくとも500個、例えば少なくとも750個、例えば少なくとも1000個、例えば少なくとも1500個、例えば少なくとも2000個がコンカテマー化されうる。
【0169】
特に好ましい態様によると、それぞれ、一方の末端にRS2又はRS2'を、そして他方の末端に非相補的なオーバーハング又は平滑末端を有するベクターアームは、更に当該手順を単純化するために、上述のカセットと一緒にコンカテマー化混合物に加えられる(図2bを参照のこと)。ベクターアームを提供するのに適したベクターの一例を図7に開示する。TRP1, URA3, 及びHIS3は栄養要求性のマーカー遺伝子であり、そしてAmpRはE.コリの抗生物質マーカー遺伝子である。CEN4はセントロメアであり、そしてTELはテロメアである。ARS1及びPMB1は、それぞれ酵母及びE.コリにおける複製を可能にする。BamH I及びAsc Iは制限酵素認識部位である。当該ベクターのヌクレオチド配列を配列番号4に記載する。当該ベクターは、コンカテマーに対するライゲーションに使用されるベクターアームを遊離させるために、BamHI及びAscIで消化される。
【0170】
ベクターアームとカセットの比率は、図8に例示するようなコンカテマー内のカセットの最大数を決定する。ベクターアームは、好ましくは、人工染色体ベクターアーム、例えば図7に記載のものである。
【0171】
当然ながら、コンカテマー化溶液に対しストッパーフラグメントを添加することも可能であり、当該ストッパーフラグメントは、それぞれ、一方の末端にRS2又はRS2'を、そして他方の末端に非相補的なオーバーハング又は平滑末端を有する。ストッパーフラグメントとカセットの比率は、同様にコンカテマーの最大サイズを制御することができる。
【0172】
mRNAの単離から開始して、エントリーベクター内に挿入するまでに、されるべき段階の完全な順序は、以下の
i)発現状態からmRNAを単離し、
ii)当該mRNA配列に相当する実質的に完全長のcDNAを獲得し、
iii)一次ベクター内の、5’→3’方向の一般式[RS1-RS2-SP-PR-CS-TR-SP-RS2'-RS1'](ここで、CSはクローニング部位を表す)のカセットのクローニング部位内に実質的に完全長のcDNAを挿入する段階、
を含んでもよい。
【0173】
コンカテマーの調製において、遺伝子は、遺伝子の所望の選択を提供するための異なるエントリーライブラリーから単離されることもある。従って、コンカテマー化は更に、少なくとも2つの異なる発現状態、例えば2つの異なる種由来の発現可能なヌクレオチド配列を有するベクターの選択を含んで成る。2つの異なる種は、2つの異なる綱由来、例えば2つの異なる門、更に好ましくは2つの異なる亜界、例えば2つの異なる界由来のものでもよい。
【0174】
コンカテマー化反応においてベクターアームを含める代わりに、酵母人工染色体、メガ酵母染色体、細菌人工染色体、マウス人工染色体、ヒト人工染色体から成る群から選択される人工染色体内にコンカテマーをライゲーションさせることが可能である。
【0175】
好ましくは、少なくとも1つ挿入されたコンカテマーが、更に選択マーカーを含んで成る。当該マーカーは、都合よくは、コンカテマー自身には含まれず、むしろコンカテマーが挿入される人工染色体ベクターに含まれる。選択マーカーは通常、増殖のために、ベクターを含む細胞のみを選択する手段を提供する。そのようなマーカーは、薬物耐性及び栄養要求性の2つの型のものがある。薬物耐性マーカーは、他の毒性化合物の存在下で細胞が増殖するのを可能にする。栄養要求性マーカーは、必須成分(通常アミノ酸)を細胞に合成させることによって、必須成分を各培地中での細胞の増殖を可能にする。
【0176】
選択マーカーがそれらの作用形態の簡単な説明により利用可能である、一般的な化合物の例示的且つ非限定的な例は以下のとおりである。
【0177】
原核生物
・アンピシリン:細菌の細胞壁合成の末端反応を阻害する。耐性遺伝子(bla)は、当該抗生物質のベータラクタム環を開裂してそれを解毒するベータラクタマーゼをコードする。
【0178】
・テトラサイクリン:30Sのリボソームサブユニットに結合することによって細菌のタンパク質合成を防ぐ。耐性遺伝子(tet)は、細菌の膜を修飾し、そして細胞内での抗生物質の蓄積を防ぐタンパク質をコードする。
【0179】
・カナマイシン:70Sリボソームに結合し、そしてメッセンジャーRNAの誤読をもたらす。耐性遺伝子(npth)は、当該抗生物質を修飾し、そしてリボソームとの相互作用を防ぐ。
【0180】
・ストレプトマイシン:30Sのリボソームサブユニットに結合し、メッセンジャーRNAの誤読をもたらす。耐性遺伝子(Sm)は、当該抗生物質を修飾し、そしてリボソームとの相互作用を防ぐ。
【0181】
・ゼオシン:この新規ブレオマイシンファミリーの抗生物質は、DNA内に介入し、そしてそれを開裂する。ゼオシン耐性遺伝子は、13,655ダルトンのタンパク質をコードする。このタンパク質は、当該抗生物質に結合し、そしてそれをDNAの結合から防ぐことによってゼオシンに対する耐性を付与する。ゼオシンは、多くの好気性細胞に対して有効であり、そして哺乳類の細胞系、酵母及び細菌における選択に使用されうる。
【0182】
真核生物
・ヒグロマイシン:リボソームの転移を混乱させ、そして翻訳ミスを促進することによってタンパク質合成を阻害するアミノサイクリトール。耐性遺伝子(hph)はヒグロマイシンBのリン酸化を解毒する。
【0183】
・ヒスチジノール:ヒスチジンを含まない培地中でのヒスチジルtRNA合成を阻害することによって哺乳類細胞に対して細胞障害性がある。耐性遺伝子(hisD)産物は、ヒスチジノールを必須アミノ酸であるヒスチジンに変換することによってヒスチジノールの毒性を阻害する。
【0184】
・ネオマイシン(G418):リボソーム機能を妨害することによってタンパク質合成を防ぐ。耐性遺伝子ADHはG418を解毒するアミノグリコシドホストトランスフェラーゼをコードする。
【0185】
・ウラシル:ウラシルの生合成に必須の酵素であるオロチジン-5'-リン酸デカルボキシラーゼをコードする変異遺伝子を有する研究室の酵母菌株は、外因性のウラシル無しに増殖することができない。ベクター上に担持されている野生型遺伝子(ura+, S.ポンベ又はURA3 S.セレビシアエ)は、形質転換した細胞において、この欠陥を補完する。
【0186】
・アデノシン:アデノシン合成の欠陥を有する研究室菌株は、野生型遺伝子ADE2を有するベクターによって補完されうる。
【0187】
・アミノ酸:LEU2, TRP1, HIS3又はLYS2の野生型遺伝子を有するベクターは、これらの遺伝子を欠損している酵母菌株を補完するために使用されうる。
【0188】
・ゼオシン:この新規ブレオマイシンファミリーの抗生物質は、DNA内に介入し、そしてそれを開裂する。ゼオシン耐性遺伝子は、13,655ダルトンのタンパク質をコードする。このタンパク質は、当該抗生物質に結合し、そしてそれをDNAの結合から防ぐことによってゼオシンに対する耐性を付与する。ゼオシンは、多くの好気性細胞に対して有効であり、そして哺乳類の細胞系、酵母及び細菌における選択に使用されうる。
【0189】
トランスジェニック細胞
本発明の1つの観点において、多数のカセットを含んで成るコンカテマーは、コンカテマーを維持することができ、且つ発現可能なヌクレオチド配列を協調して発現することができる宿主細胞内に導入される。コンカテマー内に含まれるカセットは宿主細胞から単離され、そして、好ましくはカセット間にコンカテマー制限部位を有するそれらの均一構造に起因して、再構築される。
【0190】
この目的で選択された宿主細胞は、好ましくは、標準的な研究室の条件下で、標準的な培養条件、例えば標準的な培地及びプロトコールを用いて培養可能である。好ましくは、宿主細胞は、コンカテマーを細胞分裂の世代の間維持することができる、実質的に安定な細胞系を含んで成る。宿主細胞の形質転換のための標準的な技術及び、特に宿主細胞内への人工染色体の挿入方法は知られている。
【0191】
これはまた、宿主細胞が、有性組換え(sexual recombination)を実施するために有糸分裂を受けることができる場合にも有利である。また、有糸分裂が細胞培養の外部からの操作を介して制御可能であることも有利である。1つの特に有利な宿主細胞の型は、細胞が、異なる接合型へと外部からの操作を介して操作されうるものである。
【0192】
多数の種のゲノムは、すでに多かれ少なかれ完全に配列決定されており、そして当該配列はデータベース内で見つけることができる。全ゲノムが配列決定された種のリストは一貫して増大している。好ましくは、宿主細胞は、全ゲノム又は本質的に全ゲノムが配列決定された種から成る群から選択される。宿主細胞は、好ましくは、遺伝子、代謝、生理機能に関して文献に色々と記載されている種、例えばゲノム研究に使用されているモデル生物から選択される。
【0193】
宿主生物は、好ましくは、条件付で相同組換えを受ける能力の欠損があるべきである。宿主生物は、好ましくは、ドナー生物のものと類似のコドン使用頻度を有するべきである。更に、ゲノムDNAの場合、真核生物のドナー生物が使用される場合、宿主生物は、ドナーのメッセンジャーRNAを適切に処理する、例えばイントロンをスプライシングする能力を有する。
【0194】
宿主細胞は、細菌、古細菌、又は原核生物であってもよく、そして同種の細胞系又は混合培養を構成することがある。適当な細胞には、遺伝子操作及びタンパク質発現に一般的に使用される細菌及び真核生物の細胞系が含まれる。
【0195】
好ましい原核生物の宿主生物には、限定しないが、エスケリッチャ・コリ(Escherichia coli)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)、ストレプトマイセス・コエリコロー(Streptomyces coelicolor)、シュードモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)、ミクソコックス・キサンサス(Myxococcus xanthus)、ロドコッカス属(Rhodococcus), ストレプトマイセス属(Streptomycetes), アクチノマイセス属(Actinomycetes), コリネバクテリア属(Corynebacteria), バチルス(Bacillus),シュードモナス属(Pseudomonas), サルモネラ(Salmonella), 及びエルウィニア(Erwinia)が含まれる。E.コリ(E. coli)及びバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)の完全な遺伝子配列は、Blattner et al., Science 277,1454-1462 (1997); Kunst et al., Nature 390,249-256 (1997)に記載されている。
【0196】
好ましい真核生物の宿主生物は、哺乳類、魚類、昆虫、植物、藻類及び真菌である。
【0197】
哺乳類細胞の例は、例えば、サル、マウス、ラット、ハムスター、霊長類、及びヒト由来のものであって、細胞系及び初代培養のものを含む。好ましい哺乳類の宿主細胞には、限定しないが、ヒト、サル及びげっ歯類、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NIH/3T3, COS, 293, VERO, HeLa 等(Kriegler M. in"Gene Transfer and Expression: A Laboratory Manual", New York, Freeman & Co. 1990を参照のこと)、及び幹細胞、例えば胚性幹細胞及び造血性幹細胞、接合体、線維芽細胞、リンパ球、腎臓、肝臓、筋肉、及び皮膚細胞由来のものが含まれる。
【0198】
昆虫細胞の例には、バキュロ・レピドプテラ(baculo lepidoptera)が含まれる。
【0199】
植物細胞の例には、トウモロコシ、コメ、コムギ、コットン、ダイズ、及びサトウキビが含まれる。植物細胞、例えばタバコ及びシロイヌナズナ由来のものが好ましい。
【0200】
真菌の例には、ペニシリウム属(penicillium), アスペルギルス属(aspergillus)、例えばアスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)、ポドスポラ属(podospora)、ニューロスポラ属(neurospora)、例えばニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、サッカロマイセス属(saccharomyces)、例えばサッカロマイセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)(出芽酵母)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)(分裂酵母)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)及びハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)(メタノール資化性酵母)が含まれる。
【0201】
好ましい態様において、宿主細胞は酵母細胞であり、そして適当な酵母宿主細胞の例示的であって限定的でないリストには、パン酵母, クルイベロマイセス・マリキシャヌス(Kluyveromyces marxianus), K.ラクチス(K. lactis), , カンジダ・ウチリス(Candida utilis), ファフィア・ロドザイマ(Phaffia rhodozyma), サッカロマイセス・ボウラジイ(Saccharomyces boulardii), ピキア・パストリス(Pichia pastoris), ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha), ヤロウィア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica), カンジダ・パラフィニカ(Candida paraffinica), シュワニオマイセス・カステリイ(Schwanniomyces castellii), ピキア・スチピチス(Pichia stipitis), カンジダ・シェハタエ(Candida shehatae), ロドトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis), リポマイセス・リポフェル(Lipomyces lipofer), クリプトコッカス・クルバツス(Cryptococcos curvatus), カンジダ種(Candida spp)(例えば、C.パルミオレオフィリア(C. palmioleophila)), ヤロウィア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica), カンジダ・ギリエルモンジイ(Candida guilliermondii), カンジダ属(Candida), ロドトルラ種(Rhodotorula spp), サッカロマイセス種(Saccharomycopsis spp)., アウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans), カンジダ・ブルンプチイ(Candida brumptii), カンジダ・ハイドロカーボフマリカ(Candida hydrocarbofumarica), トルロプシス属(Torulopsis), カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis), サッカロマイセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae), ロドトルラ・ルブラ(Rhodotorula rubra), カンジダ・フラベリ(Candida flaveri), エレモテシウム・アシュビイ(Eremothecium ashbyii), ピキア種(Pichia spp.), ピキア・パストリス(Pichia pastoris), クルイベロマイセス属(Kluyveromyces), ハンセヌラ属(Hansenula), クロエケラ属(Kloeckera), ピキア属(Pichia), パチソレン種(Pachysolen spp.), 又はトルロプシス・ボンビコラ(Torulopsis bombicola)が含まれる。
【0202】
宿主の選択は、操作される宿主の使用目的に依存する多数の因子、例えば病原性、基質の範囲、環境的な耐久性、重要な中間物質の存在、遺伝子操作のしやすさ、及び他の生物に対する遺伝子情報の無秩序な伝達の可能性、に依存する。特に有利な宿主は、E.コリ、ラクトバシル(lactobacilli),ストレプトマイセス属(Streptomycetes), アクチノマイセス属(Actinomycetes)及び糸状菌である。
【0203】
いずれの宿主細胞においても、全ての可能性がある種に由来する発現可能なヌクレオチド配列の種々の組み合わせを作り出すことが可能である。更に、まったく同一の発現可能なヌクレオチド配列と組み合わせたプロモーター及び/又はスペーサー及び/又はイントロン及び/又はターミネーターの組み合わせを作り出すことも可能である。
【0204】
従って、いずれの細胞においても、2つの異なる発現状態に由来する発現可能なヌクレオチド配列が存在することもある。更に、これらの2つの異なる発現状態は、1つの種、又は有利には2つの異なる種に由来していてもよい。いずれの宿主細胞も、少なくとも3個の種、例えば少なくとも4、5、6、7、8、9又は10個の種、又は15個以上の種、例えば20個以上の種、例えば30、40又は50個以上の種、例えば100個の異なる種、例えば300個以上の異なる種、例えば500個以上の異なる種、例えば1000個以上の異なる種、に由来する発現可能なヌクレオチド配列を含んで成ることがあり、それによって多数の種から多数の発現可能なヌクレオチド配列が得られる。この方法においては、潜在的に限定しない数の発現可能なヌクレオチドの組み合わせが、異なる発現状態を超えて組み合わされうる。これらの異なる発現状態は、少なくとも2つの異なる組織、例えば少なくとも2つの器官、例えば少なくとも2つの種、例えば少なくとも2つの属を表すことがある。異なる種は、少なくとも2つの異なる門、例えば少なくとも2つの異なる綱、例えば少なくとも2つの異なる門、更に好ましくは少なくとも2つの異なる亜界、例えば少なくとも2つの異なる界に由来することがある。
【0205】
これらの種のうちの任意な2つが、2つの異なる綱、例えば2つの異なる門、更に好ましくは2つの異なる亜界、例えば2つの異なる界、に由来することがある。従って、発現可能なヌクレオチド配列は、真核生物と原核生物から全く同一の細胞へと統合されることもある。
【0206】
本発明の別の態様に従い、発現可能なヌクレオチド配列は全く同一の発現状態に由来することもある。これらの配列の産物は、宿主細胞の遺伝子産物と相互作用することがあり、そして新規な生化学的経路へと導く新規な酵素の組み合わせを形成することがある。更に、発現可能なヌクレオチド配列を多数のプロモーターの支配下に置くことによって、協調して遺伝子群を切り換えることができるようになる。1つの発現状態のみに由来する発現可能なヌクレオチド配列を用いてこれを行うことによって、新規な遺伝子の組み合わせも発現する。
【0207】
1つの単一細胞におけるコンカテマーの数は、細胞あたり少なくとも1個のコンカテマー、好ましくは細胞あたり少なくとも2個のコンカテマー、更に好ましくは細胞あたり少なくとも3個のコンカテマー、例えば細胞あたり4個、更に好ましくは細胞あたり少なくとも5個、例えば細胞あたり少なくとも5個、例えば細胞あたり少なくとも6個、例えば細胞あたり7個、8個、9個又は10個、例えば細胞あたり10個以上であってもよい。上述のように、各コンカテマーは、好ましくは最大1000個のカセットを含んで成ることもあり、そして1つのコンカテマーが最大2000個のカセットを含んで成ることも予見される。1つの細胞内に最大10個のコンカテマーを挿入することによって、この細胞は、適当な条件のもと制御可能なプロモーターの制御によって切り換えられうる最大20,000個の異種の発現可能な遺伝子にエンリッチメントされることもある。
【0208】
しばしば、2〜4個の人工染色体がそれぞれ、遺伝子の1つのコンカテマーを含むように挿入される、10〜1000個の異種遺伝子、例えば20〜900個の異種遺伝子、例えば30〜800個の異種遺伝子、例えば40〜700個の異種遺伝子、例えば50〜600個の異種遺伝子、例えば60〜300個の異種遺伝子又は100〜400個の異種遺伝子、を随所に有する細胞を提供することがより好ましい。当該遺伝子は、有利には、細胞内の1〜10個、例えば2〜5個の異なるコンカテマー上に位置していることがある。各コンカテマーは、有利には、10〜1000個の遺伝子、例えば10〜750個の遺伝子、例えば10〜500個の遺伝子、例えば10〜200個の遺伝子、例えば20〜100個の遺伝子、例えば30〜60個の遺伝子、又は50〜100個の遺伝子を含んで成ることもある。
【0209】
コンカテマーは、任意な既知の形質転換技術に従い、好ましくは安定的で且つ一過性でない宿主細胞の形質転換を保証するような形質転換技術に従い、宿主細胞内に挿入されうる。従って、コンカテマーは人工染色体として挿入されることがあり、これらは、それらが分裂し、又は宿主細胞の染色体内に挿入されうる際に、当該細胞によって複製される。コンカテマーはまた、プラスミド、例えばプラスミドベクター、ファージベクター、ウイルスベクター、コスミドベクターの形態で挿入されることがあり、これらは、それらが分裂する際に当該細胞によって複製される。3つの挿入法の任意な組み合わせも可能である。1又は複数のコンカテマーが、プラスミド又は人工染色体として挿入されることがある。1又は複数のコンカテマーが人工染色体として挿入されることがあり、そして1又は複数のものがプラスミドを介して同一細胞内に挿入されることがある。
【実施例】
【0210】
実施例1
実施例1〜3において、Asc1部位は、粘着末端がpEVEベクターのカセットのAsc1部位(=本特許の一般式のRS2)に適合するように、C4 (Sigma, Burke DT et al. 1987, Science vol 236, p 806)のEcoR1部位内に導入された。
【0211】
サイズ分画を含むEVAC(進化可能な人工染色体(EVolvable Artificial Chromosomes))の調製
pYAC4-Ascアームの調製
1.150 mlのLB (sigma)にpYAC4-Ascを含むE. コリ DH5aαの単一コロニーを播種する。
2. OD600〜1まで増殖させ、細胞を採集し、そしてプラスミドを調製する。
3. 100μgのpYAC4-AscをBamH1及びAsc1で消化する。
4. フラグメントを脱リン酸化し、そしてホスファターゼを熱不活性化する(20分、80℃)。
5. フラグメントを精製する(例えばQiaquick Gel Extractionキット)。
6. フラグメントの量を推定するために1%アガロースゲルに流す。
【0212】
発現カセットの調製
1. 100μgのプラスミド調製物を以下の各ライブラリー
a) pMA-CAR
b) pCA-CAR
c) ファフィア(phaffia) cDNAライブラリー
d) キャロット(carrot) DNAライブラリーから採取する。
2. Srf1で消化する(10ユニット/調製物, 37℃で一晩)。
3. 脱リン酸化する(10ユニット/調製物, 37℃, 2時間)。
4. 80℃で20分間熱不活性化する。
5. 濃縮し、そして緩衝液を交換する(沈殿又は限外ろ過)。
6. Asc1で消化する(10 ユニット/調製物, 37℃, 一晩)。
7. 調製物の体積を100μlに調整する。
【0213】
EVACのゲルろ過
異なる型のEVACが、ライゲーション反応に投入する異なるライブラリーの比率を変化させることによって生成された。
【0214】
【表2】

【0215】
1. 100μgのカセット混合物あたり100 ng未満のpYAC4-Ascアームを添加する。
2. 33.5μL未満に濃縮する。
3. 2.5 ユニットのT4 DNA-リガーゼ+ 4μL 10x リガーゼ緩衝液を添加する。40μLに調整する。
4. 16℃で3時間ライゲーションする。
5. 2μLの500 mM EDTAを添加することによって反応を停止させる。
6. 反応液の体積を125μLにし、25μLのローディングミックスを添加し、60℃で5分間過熱する。
7. 1 % LMPアガロースゲルの10個の穴に均一に分配する。
8. パルスフィールドゲルに流す(CHEF III, 1 % LMPアガロース, 1/2xTBE (BioRad), 角度 120度, 温度12℃, 電圧5.6V/cm, 5〜25秒に及ぶスイッチタイム, ランタイム30時間)。
9. 分子量マーカー+品質チェック用の1つのサンプルレーンを含むゲルの一部を染色する。
10. 97〜194 kb (画分1);194〜291 kb (画分 2); 291〜365 kb (画分 3)に相当する残りの9個のサンプルレーンをゲルから切り出す。
11. 高濃度のNaClアガラーゼ緩衝液(1 u のアガラーゼ/100μgゲル)中で40℃で3時間、ゲルをアガラーゼ処理する。
12. 20μL未満に濃縮する。
13. アルカリ/カチオン形質転換を用いて、調製物で適当な酵母を形質転換する。
14. 選択的最小培地上でプレーティングする。
15. 30℃で4〜5日間とインキュベートする。
16. コロニーをピッキングする。
17. コロニーを解析する。
【0216】
実施例2
直接的な形質転換を含むEVAC(進化可能な人工染色体)の調製
pYAC4-Ascアームの調製
1. 150 mlのLB (sigma)にpYAC4-Ascを含むE. コリ DH5aαの単一コロニーを播種する。
2. OD600〜1まで増殖させ、細胞を採集し、そしてプラスミドを調製する。
3. 100μgのpYAC4-AscをBamH1及びAsc1で消化する。
4. フラグメントを脱リン酸化し、そしてホスファターゼを熱不活性化する(20分、80℃)。
5. フラグメントを精製する(例えばQiaquick Gel Extractionキット)。
6. フラグメントの量を推定するために1%アガロースゲルに流す。
【0217】
発現カセットの調製
1. 100μgのプラスミド調製物を以下の各ライブラリー
a) pMA-CAR
b) pCA-CAR
c) ファフィア(phaffia) cDNAライブラリー
d) キャロット(carrot) DNAライブラリーから採取する。
2. Srf1で消化する(10ユニット/調製物, 37℃で一晩)。
3. 脱リン酸化する(10ユニット/調製物, 37℃, 2時間)。
4. 80℃で20分間熱不活性化する。
5. 濃縮し、そして緩衝液を交換する(沈殿又は限外ろ過)。
6. Asc1で消化する(10 ユニット/調製物, 37℃, 一晩)。
7. 調製物の体積を100μlに調整する。
【0218】
EVACの調製
異なる型のEVACが、ライゲーション反応に投入する異なるライブラリーの比率を変化させることによって生成された。
【0219】
【表3】

【0220】
1. 32μL未満に濃縮する。
2. 1 ユニットのT4 DNA-リガーゼ+ 4μL 10x リガーゼ緩衝液を添加する。40μLに調整する。
3. 16℃で2時間ライゲーションする。
4. 2μLの500 mM EDTAを添加することによって反応を停止させ、60℃で20分熱不活性化する。
5. 反応液の体積を蒸留水で500μLにし、30μLに濃縮する。
6. 10 UのAsc1, 4 uLの10X Asc1緩衝液を添加し、40μLにする。
7. 37℃で1時間インキュベートする(あるいは15分、30分)。
8. 60℃で20分熱不活性化する。
9. 2μgのAC4-Ascアーム, 1 UのT4 DNA リガーゼ, 10 uLの10Xリガーゼ緩衝液を添加し、100μLにする。
10. 16℃でインキュベートする。
11. 水を添加して500μLにする。
12. 20μLに濃縮する。
13. アルカリ/カチオン形質転換を用いて、調製物で適当な酵母を形質転換する。
14. 選択的最小培地上でプレーティングする。
15. 30℃で4〜5日間とインキュベートする。
16. コロニーをピッキングする。
17. コロニーを解析する。
【0221】
実施例3
EVAC(進化可能な人工染色体)の調製(小規模な調製)
発現カセットの調製
1. 5 mlのLB-培地(Sigma) に10倍表示のライブラリーに相当するライブラリーの播種材料を播種する。一晩増殖させる。
2. 1.5mlの培養液からプラスミドをミニプレップする(例えばQiaprep スピンミニプレップキット)。
3. Srf 1でプラスミドを消化する。
4. フラグメントを脱リン酸化し、そしてホスファターゼを熱不活性化する(20分、80℃)。
5. Asc1で消化する。
6. フラグメントの量を推定するために、1%アガロース中に1/10の反応液を流す。
【0222】
pYAC4-Ascアームの調製
1. 150 mlのLB (sigma)にpYAC4-Ascを含むE. コリ DH5aαの単一コロニーを播種する。
2. OD600〜1まで増殖させ、細胞を採集し、そしてプラスミドを調製する。
3. 100μgのpYAC4-AscをBamH1及びAsc1で消化する。
4. フラグメントを脱リン酸化し、そしてホスファターゼを熱不活性化する(20分、80℃)。
5. フラグメントを精製する(例えばQiaquick Gel Extractionキット)。
6. フラグメントの量を推定するために1%アガロースゲルに流す。
【0223】
EVACの調製
1. カセット/アーム比が1000/1未満となるように、発現カセットフラグメントをYAC-アームと混合する。
2. 必要に応じて、フラグメント濃度が75 ng/μL反応液となるように、混合物を濃縮する(例えば、Microcon YM30を用いる)。
3. 1ユニットのT4 DNA-リガーゼを添加し、16℃で1〜3時間ライゲーションする。1μLの500 mM EDTAを添加することによって反応を停止させる。
4. パルスフィールドゲルに流す(CHEF III, 1 % LMPアガロース, 1/2xTBE, 角度 120度, 温度12℃, 電圧5.6V/cm, 5〜25秒に及ぶスイッチタイム, ランタイム30時間)。2個のレーンに試料を添加する。
5. 分子量マーカーを含むゲルの一部を染色する。
6. 分子量100〜200kbに相当するサンプルレーンをゲルから切り出す。
7. 高濃度のNaClアガラーゼ緩衝液(1 u のアガラーゼ/100mgゲル)中でゲルをアガラーゼ処理する。
8. 20μL未満に濃縮する。
9. アルカリ/カチオン形質転換を用いて、調製物で適当な酵母を形質転換する。
10. 選択的最小培地上でプレーティングする。
11. 30℃で4〜5日間とインキュベートする。
12. コロニーをピッキングする。
【0224】
実施例4:EVACの生成において使用されるcDNAライブラリー
1. Daucus carota, キャロットルートライブラリー
・完全長
・オリゴdT プライミングした、ディレクショナルcDNA ライブラリー
・3個のEvolva EVE 4,5及び8ベクター(図4,5,6)のプールを用いて作成したcDNAライブラリー
・独立したクローンの数:41.6 x 106
・平均サイズ: 0.9-2.9 kb
・存在している異なる遺伝子数5000-10000個
【0225】
2. ザントフィロマイセス・デンドロロウス(Xanthophyllomyces dendrorhous), (酵母), hole生物ライブラリー
・完全長
・Oligo dTプライミングした、ディレクショナルcDNAライブラリー
・3個のEvolva EVE 4,5及び8ベクター(図4,5,6)のプールを用いて作成したcDNAライブラリー
・独立したクローンの数:48.0 x 106
・平均サイズ: 1.0-3.8 kb
・存在している異なる遺伝子数5000-10000個
【0226】
3. 標的カロテノイド遺伝子cDNAライブラリー
・完全長且つ均一
・ディレクショナル cDNAクローニング
・3個のEvolva EVE 4,5及び8ベクター(図4,5,6)のプールを用いて作成したcDNAライブラリー
・異なる遺伝子の数:48個
・使用した種及び遺伝子
・リンドウ種(Gentiana sp), ggps, psy, pds, zds, Icy-b, Icy-e, bhy, zep
・ロドバクター・カプスラツス(Rhodobacter capsulatus), idi, crtC, crtF
・エルウィニア・ウレドボラ(Erwinia uredovora), crtE, crtB, crti, crtY, crtZ
・ノストク・アナバエアナ(Nostoc anabaena), zds
・シネコッカス(Synechococcus)PCC7942, pds
・エルウィニア・ヘルビコラ(Erwinia herbicola), crtE, crtB, crtI, crtY, crtZ
・スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus), crtM, crtN
・ザントフィロマイセス・デンドロロウス(Xanthophyllomyces dendrorhous), crtl, crtYb
・カプシカム・アンヌウム(Capsicum annuum), ccs, crtL
・ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum), crtL, bchy
・プロクロコッカス種(Prochlorococcus sp.), Icy-b, Icy-e
・サッカロマイセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae), idi
・コリネバクテリウム種(Corynebacterium sp.), crtl, crtYe, crtYf, crtEb
・リコペリシコン・エスキュレンタム(Lycopersicon esculentum), psy-1
・ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa), al1
【0227】
実施例5:EVACの形質転換
実施例5a:形質転換
1. 単一のコロニーを100 mlのYPDブロス内に播種し、そして通気しながら30℃で2 x 106〜2 x 107個の細胞/mlに増殖させる。
2. 細胞をペレットにするために、400 x gで5分間遠心し;上清を捨てる。
3. 合計9 ml TE(pH 7.5)中で再懸濁する。細胞をペレットにするために遠心し、そして上清を捨てる。
4. 5 mlの0.1 M 酢酸リチウム/セシウム溶液(pH 7.5)中で穏やかに細胞を再懸濁する。
5. 穏やかに振とうしながら30℃で1時間インキュベートする。
6. 細胞をペレットにするために、400 x gで5分間遠心し、そして上清を捨てる。
7. 1LのTE(pH 7.5)中で穏やかに再懸濁する。.細胞はこれで形質転換の準備完了である。
8. 1.5 mlのチューブにおいて
・100μlの酵母細胞
・5μlのキャリアーDNA (10 mg/ml)
・5μlのヒスタミン溶液
・10μlの体積(最大)中1/5 量のEVAC調製物(1つのEVAC調製物は、100μgのコンカテマー化反応混合物から作られる)
9. 穏やかに混合し、そして室温で30分間インキュベートする。
10. 別々のチューブ内で、各形質転換反応液につき、0.8 ml 50% (w/v) PEG 4000及び0.1 mlのTE 及び0.1 mlの1 M LiAcを一緒にする。1 mlのこのPEG/TE/LiAc混合物を各形質転換反応液に添加する。穏やかにピペッティングしながら細胞を溶液中に混合させる。
11. 1時間30℃でインキュベートする。
12. 42℃で15分間熱ショックを与え;30℃に冷却する。
13. 微量遠心機内で、高速で5秒間細胞をペレットにし、そして上清を除去する。
14. 200μlの高濃度の培養液を再懸濁し、そして適当な選択的培地中にプレーティングする。
15. 形質転換コロニーが出現するまで、30℃で48〜72時間インキュベートする。
【0228】
実施例5b:エレクトロポレーションを用いてのEVACの形質転換
100 mlのYPDに1つの酵母のコロニーを接種し、そしてOD600 = 1.3〜1.5にまで増殖させる。培養物を4000 x g 、4℃で遠心することによって採集する。細胞を16mlの滅菌水中で再懸濁する。2 mlの10 x TE 緩衝液(pH 7.5)を添加し、そして回転させて混合する。30℃で45分穏やかに振とうする。回転させながら1.0 mlの0.5 M DTEを添加する。30℃で穏やかに15分間振とうする。酵母の懸濁液を滅菌水で100mlに希釈する。細胞を洗浄し、そして4000 x gで遠心し、50mlの氷冷した滅菌水中で再懸濁し、4000 x gで遠心し、5mlの氷冷した滅菌水中で再懸濁し、4000 x gで遠心し、そしてペレットを0.1mlの氷冷した滅菌1Mソルビトール中で再懸濁することによって濃縮する。エレクトロポレーションは、Bio-Rad Gene Pulserを用いて行った。滅菌した1.5mlの微量遠心管中で、40μlの濃縮された酵母細胞を5μlの1:10に希釈したEVAC調製物と混合した。酵母ーDNA混合物を氷冷した0.2-cm-ギャップの使い捨てのエレクトロポレーションキュベットに移し、そして1.5 kV, 25 F, 200Ωでパルスにかけた。1mlの氷冷した1Mソルビトールをキュベットに添加し、そして酵母を回収する。アリコートを1Mソルビトールを含む選択的プレート上に広げる。コロニーが出現するまで30℃でインキュベートする。
【0229】
実施例6:レア制限酵素と認識配列及び開裂点
本実施例において、レア制限酵素をそれらの認識配列及び開裂点と一緒に列記する。(^)は開裂点の5'-3'配列を示し、そして(_)は相補配列の開裂点を示す。
W=A又はT ; N=A, C, G, 又はT
6a) 独特なパリンドロームのオーバーハング
【0230】
【表4】

【0231】
6b) オーバーハング無し
【0232】
【表5】

【0233】
6c) パリンドローム無し及び/又は変化する可能性があるオーバーハング
【0234】
【表6】

【0235】
6d) メガヌクレアーゼ
【0236】
【表7】

【0237】
これ以外のメガヌクレアーゼも同定されているが、それらの正確な認識配列は決定されていない。例えば、www. meganuclease. comを参照のこと。
【0238】
実施例 7:コンカテマーのサイズ限定実験(ストッパーの使用)
使用した材料:
pYAC4 (Sigma. Burke et al. 1987, science, vol 236, p 806) をEcoR1及びBamH1で消化し、そして脱リン酸化したpSE420 (invitrogen)を、EcoR1を用いて直鎖化し、そしてコンカテマー化のためのモデルフラグメントとして使用した。
T4 DNA リガーゼ(Amersham-pharmacia biotech)を、取扱説明書に従い、ライゲーションに使用した。
【0239】
方法:フラグメントとアームを図9a及び9bに示した比率(濃度は任意の単位である)で混合した。ライゲーションを16℃で1時間進行させた。反応を1μLの500 mM EDTAの添加によって停止させた。生成物を標準的なアガロースGE(1 % アガロース, 1/2 x TBE)によって、又は PFGE(CHEF iii, 1% LMP アガロース, 1/2 xTBE, 角度 120度, 温度12℃, 電圧5.6V/cm, 5〜25秒に及ぶスイッチタイム, ランタイム30時間)によって解析した。
【0240】
当該結果を図9に示すが、この中で、コンカテマーのサイズはYACアームあたりのカセットの比率に比例している。
【0241】
実施例8:人工染色体内への発現カセットの組込み
YAC12内への発現カセットの組込みは、本質的にSears D. D., Hieter P., Simchen G., Genetics, 1994,138,1055-1065にて行われたように行った。
【0242】
Asc部位を組込みベクターpGS534 及び pGS525のBgl II 部位に導入した。
【0243】
βーガラクトシダーゼ遺伝子、並びにエルウィニア・ウレドロバ(Erwinia Uredovora)由来のcrtE, crtB, crtl及びcrtYをpEVE4内にクローニングした。これらの発現カセットを、修飾した組込みベクターpGS534及びpGS525のAscIにライゲーションした。
【0244】
発現カセットを含む、直鎖化したpGS534及びpGS525で、Ade"遺伝子を担持する適当な標的YACを含む単相体の酵母菌株を形質転換した。赤いAde-形質転換体を選択した(親の宿主菌株は、ade2-101の突然変異により赤い)。
【0245】
βーガラクトシダーゼの発現カセットの正確な組込みの追加の確認は、βーガラクトシダーゼアッセイを用いて行った。
【0246】
実施例9:細胞あたり少なくとも2つの人工染色体を得るための、すでに人工染色体を含む細胞の再形質転換
YAC12を含む酵母菌株(Sears D. D., Hieter P., Simchen G., Genetics, 1994, 138, 1055-1065) は、実施例4aに記載のプロトコールに従い、EVACで形質転換した。形質転換細胞は、YAC12及びEVACの両方を含む細胞を選択するプレート上にプレーティングされた。
【0247】
実施例10:異なる発現条件下で同一の酵母クローンを用いて得られた異なる発現パターンの「表現型」の例
クローンを滅菌した楊枝でピッキングし、そして4つの抑制され、そして/あるいは誘導された条件(-Ura/-Trp,-Ura/Trp/-Met,-Ura/-Trp/+200μM Cu2SO4,-Ura/-Trp/-MeV+200μM Cu2S04)に相当するプレート上に逐次ストリーキングした。20 mgのアデニンを、オーカーの表現型を抑制するために培地に加えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5’→3’方向に、一般式
[rs2-SP-PR-X-TR-SP-rs1]n
(ここで、
rs1とrs2は共に機能的制限部位を表し、
SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチド塩基のスペーサーを表し、
PRは、細胞内で機能しうるプロモーターを表し、
Xは発現可能なヌクレオチド配列を表し、
TRはターミネーターを表し、そして
SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチド塩基のスペーサーを表し、そして
n≧2であり、そして
少なくとも第一カセットは第二カセットと異なる)
のヌクレオチド配列のカセットを含んで成るヌクレオチドコンカテマー。
【請求項2】
ヌクレオチド配列がcDNA、ゲノムDNAから成る群から選択されるDNA配列を含んで成る、請求項1に記載のコンカテマー。
【請求項3】
ヌクレオチド配列が一本鎖、又は部分的に一本鎖である、請求項1に記載のコンカテマー。
【請求項4】
ヌクレオチド配列が二本鎖である、請求項1に記載のコンカテマー。
【請求項5】
少なくとも1つの発現状態に由来するヌクレオチド配列を含んで成る、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンカテマー。
【請求項6】
少なくとも2つの発現状態に由来するヌクレオチド配列を含んで成る、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンカテマー。
【請求項7】
少なくとも2つのカセットのrs1-rs2制限部位が、同一の制限酵素によって認識され、更に好ましくは同一である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のコンカテマー。
【請求項8】
本質的に全てのカセットのrs1-rs2制限部位が、同一の制限酵素によって認識され、更に好ましくは同一である、請求項7に記載のコンカテマー。
【請求項9】
実質的に全てのカセットが異なる、請求項1〜8のいずれか1項に記載のコンカテマー。
【請求項10】
少なくとも1つのカセットがプロモーターと発現可能なヌクレオチド配列との間にイントロンを含んで成り、更に好ましくは実質的に全てのカセットがプロモーターと発現可能なヌクレオチド配列との間にイントロンを含んで成る、請求項1〜9のいずれか1項に記載のコンカテマー。
【請求項11】
差異が異なるプロモーター、及び/又は異なる発現可能なヌクレオチド配列、及び/又は異なるスペーサー及び/又は異なるターミネーター及び/又は異なるイントロンを含んで成る、請求項1〜10のいずれか1項に記載のコンカテマー。
【請求項12】
nが少なくとも10、例えば少なくとも15、例えば少なくとも20、例えば少なくとも25、例えば少なくとも30、例えば少なくとも30〜60又は60以上、例えば少なくとも75、例えば少なくとも100、例えば少なくとも200、例えば少なくとも500、例えば少なくとも750、例えば少なくとも1000、例えば少なくとも1500、例えば少なくとも2000である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のコンカテマー。
【請求項13】
少なくとも1つのカセットが、請求項63〜98に記載の一次ベクター由来のカセットを含んで成り、更に好ましくは実質的に全てのカセットが請求項63〜98に記載の一次ベクター由来のカセットを含んで成る、請求項1〜12のいずれか1項に記載のコンカテマー。
【請求項14】
人工染色体内に含まれる、請求項1〜13のいずれか1項に記載のコンカテマー。
【請求項15】
人工染色体が、酵母人工染色体、メガ酵母染色体、細菌人工染色体、マウス人工染色体、哺乳類人工染色体、昆虫人工染色体、鳥類人工染色体、バクテリオファージ人工染色体、バキュロウイルス人工染色体、又はヒト人工染色体から成る群から選択される、請求項14に記載のコンカテマー。
【請求項16】
プラスミド又はベクター、例えば酵母組込み(integrative)プラスミド(Ylp)、酵母複製プラスミド(YRp)、酵母エピソームプラスミド(YEp)、酵母セントロメアプラスミド(YCp)、酵母直鎖プラスミド(YLp)、酵母発現プラスミド(YXp)、酵母レトロトランスポゾン(Ty因子)、酵母キラープラスミド、酵母分解(disintegration)プラスミド(YDp)に含まれる、請求項1〜13のいずれか1項に記載のコンカテマー。
【請求項17】
ベクターが更に少なくとも1つの選択可能な遺伝子マーカー、例えば抑制マーカー又は優性マーカーを含んで成る、請求項13〜16のいずれか1項に記載のコンカテマー。
【請求項18】
2つの選択可能な遺伝子マーカーを含んで成る、請求項17に記載のコンカテマー。
【請求項19】
マーカーが、LEU 2, TRP 1, HIS 3, LYS 2, URA 3, ADE 2, アミログルコシダーゼ, ss-ラクタマーゼ, CUP 1, G418R, TUNR, KILk1, C230, SMR1, SFA, ハイグロマイシンR, メトトレキサートR, クロラムフェニコールR, ジウロンR, ゼオシンR, カナバニンRを含んで成る群から選択されるマーカーを含んで成る、請求項17又は18に記載のコンカテマー。
【請求項20】
異なる発現可能なヌクレオチド配列が同一の、又は異なる発現状態に由来する、請求項1〜19のいずれか1項に記載のコンカテマー。
【請求項21】
異なる発現状態が、少なくとも2つの異なる組織、例えば少なくとも2つの器官、例えば少なくとも2つの種、例えば少なくとも2つの属を表す、請求項20に記載のコンカテマー。
【請求項22】
異なる種が、少なくとも2つの門(phylum)、例えば少なくとも2つの異なる綱、例えば少なくとも2つの異なる門(division)、更に好ましくは少なくとも2つの異なる亜界、例えば少なくとも2つの異なる界に由来する、請求項21に記載のコンカテマー。
【請求項23】
一方の種が真核生物であり、そして他方の種が原核生物である、請求項21に記載のコンカテマー。
【請求項24】
コンカテマー内で発生する反復配列のレベルを最小化するために設計される、請求項1〜23のいずれか1項に記載のコンカテマー。
【請求項25】
コンカテマー化の方法であって、各カセットが第一の粘着末端、スペーサー配列、プロモーター、発現可能なヌクレオチド配列、ターミネーター、及び第二の粘着末端をそれぞれが含んで成る、ヌクレオチド配列の少なくとも2つのカセットをコンカテマー化する段階を含んで成る方法。
【請求項26】
一次ベクター[RS1-RS2-SP-PR-X-TR-SP-RS2'-RS1']
(ここで、Xは発現可能なヌクレオチド配列を表し、
RS1及びRS1'は制限部位を表し、
RS2及びRS2'はRS1及びRS1'と異なる制限部位を表し、
SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチドのスペーサーを表し、
PRはプロモーターを表し、
TRはターミネーターを表す)を有するカセットを含んで成る一次ベクターから出発して、iii) RS2及びRS2'に特異的な少なくとも1つの制限酵素の力を借りて一次ベクターを切断し、一般式[rs2-SP-PR-X-TR-SP-rs1](ここで、rs1及びrs2は一緒に機能的制限部位RS2又はRS2'を表す)を有するカセットを獲得し、
iv) rs1とrs2との間の相互作用を介して、切り出されたカセットを構築すること、
を更に含んで成る、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも10個のカセット、例えば少なくとも15個、例えば少なくとも20個、例えば少なくとも25個、例えば少なくとも30個、例えば少なくとも30〜60個又は60個以上、例えば少なくとも75個、例えば少なくとも100個、例えば少なくとも200個、例えば少なくとも500個、例えば少なくとも750個、例えば少なくとも1000個、例えば少なくとも1500個、例えば少なくとも2000個のカセットをコンカテマー化することを含んで成る、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
一方の末端にRS2又はRS2'を、そして他方の末端に非相補的なオーバーハング又は平滑末端をそれぞれが有するベクターアームの添加を更に含んで成る、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
ベクターアームとカセットの比率がコンカテマー内のカセットの数を決定する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
ベクターアームが人工染色体ベクターアームである、請求項27又は29に記載の方法。
【請求項31】
一方の末端にRS2又はRS2'を、そして他方の末端に非相補的なオーバーハング又は平滑末端をそれぞれが有するストッパーフラグメントの添加を更に含んで成る、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
ベクターアームをストッパーフラグメントにライゲーションすることを更に含んで成る、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
更に、
iv)発現状態からmRNAを単離し、
v)当該mRNA配列に相当する実質的に完全長のcDNAを獲得し、
vi)一次ベクター内の、5’→3’方向の一般式[RS1-RS2-SP-PR-CS-TR-SP-RS2'-RS1'](ここで、CSはクローニング部位を表す)カセットのクローニング部位内に実質的に完全長のcDNAを挿入すること、
を含んで成る、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
RS1及びRS1'が平滑末端を残す制限部位であり、そしてRS2及びRS2'がコンパチブルな粘着末端を残す制限部位である、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
RS1とRS1'が同一であり、そしてRS2とRS2'が同一である、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
RS2及びRS2'がパリンドロームのオーバーハングを有する、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
RS2及びRS2'が非パリンドロームのオーバーハングを有する、請求項26に記載の方法。
【請求項38】
少なくとも2つの異なる発現状態、例えば2つの異なる種由来の発現可能なヌクレオチド配列を有するベクターの選択を更に含んで成る、請求項25〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
2つの異なる種が、少なくとも2つの異なる綱、例えば少なくとも2つの異なる門(division)、更に好ましくは少なくとも2つの異なる亜界、例えば少なくとも2つの異なる界に由来する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
コンカテマーが、酵母人工染色体、メガ酵母染色体、細菌人工染色体、マウス人工染色体、ヒト人工染色体から成る群から選択される人工染色体内にライゲーションされる、請求項26〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
少なくとも2つのカセットのRS2及びRS2'が1つの制限酵素によって開裂し、好ましくは実質的に全てのカセットのRS2及びRS2'が1つの制限酵素によって開裂する、請求項26〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
各コンカテマーが5’→3’方向に以下の式:
[rs2-SP-PR-X-TR-SP-rs1]n
(ここで、rs1とrs2は共に機能的制限部位を表し、
SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチド塩基のスペーサーを表し、
PRは、細胞内で機能しうるプロモーターを表し、
Xは発現可能なヌクレオチド配列を表し、
TRはターミネーターを表し、そして
SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチド塩基のスペーサーを表し、
n≧2であり、そして
少なくとも2つの発現可能なヌクレオチド配列が異なる発現状態に由来する)のオリゴヌクレオチドを含んで成る、個々のオリゴヌクレオチドカセットの少なくとも1つのコンカテマーを含んで成る細胞。
【請求項43】
各コンカテマーが5’→3’方向に以下の式:
[rs2-SP-PR-X-TR-SP-rs1]n
(ここで、rs1とrs2は共に機能的制限部位を表し、
SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチド塩基のスペーサーを表し、
PRは、細胞内で機能しうるプロモーターを表し、
Xは発現可能なヌクレオチド配列を表し、
TRはターミネーターを表し、そして
SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチド塩基のスペーサーを表し、
n≧2であり、そして
少なくとも2つのカセットのrs1-rs2が同一の制限酵素によって認識される)のオリゴヌクレオチドを含んで成る、個々のオリゴヌクレオチドカセットの少なくとも1つのコンカテマーを含んで成る細胞。
【請求項44】
実質的に全てのrs1-rs2配列が同一の制限酵素によって認識され、更に好ましくは実質的に全てのrs1-rs2配列が実質的に同一である、請求項42又は43に記載の細胞。
【請求項45】
nが少なくとも10、例えば少なくとも15、例えば少なくとも20、例えば少なくとも25、例えば少なくとも30、例えば少なくとも30〜60又は60以上、例えば少なくとも75、例えば少なくとも100、例えば少なくとも200、例えば少なくとも500、例えば少なくとも750、例えば少なくとも1000、例えば少なくとも1500、例えば少なくとも2000である、請求項42〜44のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項46】
細胞あたり2つ、例えば細胞あたり3つ、例えば細胞あたり少なくとも4つのコンカテマーを含んで成る、請求項42〜45のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項47】
少なくとも1つのカセットがプロモーターと発現可能なヌクレオチド配列との間にイントロンを含んで成り、更に好ましくは実質的に全てのカセットがプロモーターと発現可能なヌクレオチド配列との間にイントロンを含んで成る、請求項43〜47のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項48】
酵母;フィラメンタス・アスコマイセテス(Filamentous ascomycetes)、例えばニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)及びアスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans);植物細胞、例えばタバコ及びシロイヌナズナ由来のもの;哺乳類宿主細胞;ヒト、サル及び齧歯類由来のもの、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NIH/3T3, COS, 293, VERO, HeLa、を含んで成る群から選択される真核細胞を含んで成る、請求項43〜47のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項49】
パン酵母, クルイベロマイセス・マリキシャヌス(Kluyveromyces marxianus), K.ラクチス(K. lactis), カンジダ・ウチリス(Candida utilis), ファフィア・ロドザイマ(Phaffia rhodozyma), サッカロマイセス・ボウラジイ(Saccharomyces boulardii), ピキア・パストリス(Pichia pastoris), ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha), ヤロウィア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica), カンジダ・パラフィニカ(Candida paraffinica), シュワニオマイセス・カステリイ(Schwanniomyces castellii), ピキア・スチピチス(Pichia stipitis), カンジダ・シェハタエ(Candida shehatae), ロドトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis), リポマイセス・リポフェル(Lipomyces lipofer), クリプトコッカス・クルバツス(Cryptococcos curvatus), カンジダ種(Candida spp)(例えば、C.パルミオレオフィリア(C. palmioleophila)), ヤロウィア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica), カンジダ・ギリエルモンジイ(Candida guilliermondii), カンジダ属(Candida), ロドトルラ種(Rhodotorula spp), サッカロマイセス種(Saccharomycopsis spp)., アウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans), カンジダ・ブルンプチイ(Candida brumptii), カンジダ・ハイドロカーボフマリカ(Candida hydrocarbofumarica), トルロプシス属(Torulopsis), カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis), サッカロマイセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae), ロドトルラ・ルブラ(Rhodotorula rubra), カンジダ・フラベリ(Candida flaveri), エレモテシウム・アシュビイ(Eremothecium ashbyii), ピキア種(Pichia spp.), ピキア・パストリス(Pichia pastoris), クルイベロマイセス属(Kluyveromyces), ハンセヌラ属(Hansenula), クロエケラ属(Kloeckera), ピキア属(Pichia), パチソレン種(Pachysolen spp.), 又はトルロプシス・ボンビコラ(Torulopsis bombicola)を含んで成る群から選択される酵母細胞である、請求項48に記載の細胞。
【請求項50】
中枢の生合成経路において突然変異を有する、請求項43〜49のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項51】
突然変異を補完する、挿入された選択的遺伝子マーカーを含んで成る、請求項50に記載の細胞。
【請求項52】
選択的遺伝子マーカーを含んで成る、請求項43〜51のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項53】
少なくとも1つのコンカテマーのヌクレオチド配列、好ましくは、実質的に全てのコンカテマー由来のヌクレオチド配列が、任意な1つのコンカテマーの反復配列のレベルを最小化するために設計されている、請求項43〜52のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項54】
発現可能なヌクレオチド配列が最小化されている、請求項53に記載の細胞。
【請求項55】
少なくともコンカテマー、好ましくは実質的に全てのコンカテマーが請求項1〜24に記載のコンカテマーである、請求項43〜54のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項56】
トランスジェニック細胞を産生するための方法であって、プルモーターによってそれぞれが制御されている少なくとも2つの遺伝子を含んで成る異種ヌクレオチド配列を含んで成るコンカテマーを宿主細胞内に挿入すること、を含んで成り、2つのプロモーターが異なる、方法。
【請求項57】
挿入された遺伝子が少なくとも2つの異なる発現状態に由来する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
発現状態が異なる種に含まれる、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
異なる種が異なる界に含まれるm請求項58に記載の方法。
【請求項60】
請求項1〜24に記載のコンカテマーの挿入を含んで成る、請求項56〜59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
少なくとも1つの安定的に維持されるコンカテマーを含んで成る細胞を選択すること、を更に含んで成る、請求項56〜60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
選択が、人工染色体上に少なくとも選択可能な遺伝子マーカー、更に好ましくは人工染色体上に2つの選択可能な遺伝子マーカーを担持する細胞の選択を含んで成る、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
5’→3’方向に、一般式
[RS1-RS2-SP-PR-CS-TR-SP-RS2'-RS1']
(ここで、
RS1及びRS1'は制限部位を表し、
RS2及びRS2'はRS1及びRS1'と異なる制限部位を表し、
SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチドのスペーサーを表し、
PRは、細胞内で機能しうるプロモーターを表し、
CSはクローニング部位を表し、そして
TRはターミネーターを表す)のヌクレオチド配列カセットを含んで成る一次ベクター。
【請求項64】
ヌクレオチド配列がDNA配列である、請求項63に記載のベクター。
【請求項65】
ヌクレオチド配列が二本鎖である、請求項63に記載のベクター。
【請求項66】
プロモーターとクローニング部位との間及び/又はクローニング部位とターミネーターとの間にイントロン配列を更に含んで成る、請求項63〜66のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項67】
クローニング部位が発現可能なヌクレオチド配列を含んで成る、請求項63〜66のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項68】
発現可能なヌクレオチド配列内に、実質的に完全長のcDNAを含んで成る、請求項67に記載のベクター。
【請求項69】
発現可能なヌクレオチド配列がゲノムDNAを含んで成る、請求項67に記載のベクター。
【請求項70】
RS1, RS1', RS2, RS2'のいずれかが実施例6から選択されるレア制限部位を含んで成る、請求項63〜69のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項71】
RS1, RS1', RS2及び/又はRS2'の認識配列が少なくとも6個の塩基、例えば少なくとも8個の塩基、例えば少なくとも10個の塩基、を含んで成る、請求項70に記載のベクター。
【請求項72】
認識配列が二連の配列を含んで成る、請求項71に記載のベクター。
【請求項73】
認識配列のGC含量が40%超、好ましくは50%超、更に好ましくは60%以上である、請求項71に記載のベクター。
【請求項74】
RS2及びRS2'を認識する制限酵素が、二本鎖ヌクレオチドの開裂によって粘着末端を生成し、好ましくは当該粘着末端が既に決定されたヌクレオチド配列を有する、請求項63〜73のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項75】
RS2及びRS2'が同一である、請求項63〜74のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項76】
RS2及び/又はRS2'のオーバーハングがパリンドローム配列である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
RS2及び/又はRS2'のオーバーハングが非パリンドローム配列である、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
RS1及びRS1'を認識する制限酵素が、二本鎖ヌクレオチド配列の開裂によって平滑末端を生成する、請求項63〜75のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項79】
RS1及びRS1'を認識する制限酵素が、RS2とRS2'の開裂によって生成する粘着末端のヌクレオチド配列とコンパチブルでないヌクレオチド配列を有する粘着末端を生成する、請求項63〜75のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項80】
RS1とRS1'が同一である、請求項63〜79のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項81】
TRとRS2'との間にスペーサー配列を更に含んで成る、請求項63〜80のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項82】
スペーサーと任意のスペーサー配列が一緒に、少なくとも100塩基、例えば少なくとも250塩基、例えば少なくとも300塩基、例えば少なくとも400塩基、例えば少なくとも500塩基、例えば少なくとも750塩基、例えば少なくとも1000塩基、例えば少なくとも1100塩基、例えば少なくとも1200塩基、例えば少なくとも1300塩基、例えば少なくとも1400塩基、例えば少なくとも1500塩基、例えば少なくとも1600塩基、例えば少なくとも1700塩基、例えば少なくとも1800塩基、例えば少なくとも1900塩基、例えば少なくとも2000塩基、例えば少なくとも2100塩基、例えば少なくとも2200塩基、例えば少なくとも2300塩基、例えば少なくとも2400塩基、例えば少なくとも2500塩基、例えば少なくとも2600塩基、例えば少なくとも2700塩基、例えば少なくとも2800塩基、例えば少なくとも2900塩基、例えば少なくとも3000塩基、例えば少なくとも3200塩基、例えば少なくとも3500塩基、例えば少なくとも3800塩基、例えば少なくとも4000塩基、例えば少なくとも4500塩基、例えば少なくとも5000塩基、例えば少なくとも6000塩基、を含んで成る、請求項63〜81のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項83】
スペーサー配列のうちの少なくとも1つが、100〜2500塩基、好ましくは200〜2300塩基、更に好ましくは300〜2100塩基、例えば400〜1900塩基、更に好ましくは500〜1700塩基、例えば600〜1500塩基、更に好ましくは700〜1400塩基を含んで成る、請求項81又は82に記載のベクター。
【請求項84】
プロモーターが外部から制御可能なプロモーターである、請求項63〜83のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項85】
プロモーターが誘導可能なプロモーターを含んで成り、あるいはプロモーターが抑制可能なプロモーターを含んで成る、請求項63〜84のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項86】
プロモーターが抑制可能な因子及び誘導可能な因子の両方を含んで成る、請求項63〜86のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項87】
プロモーターが化学的に誘導可能及び/又は誘導可能であり、そして/あるいは温度によって誘導可能/抑制可能である、請求項63〜86のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項88】
プロモーターが、炭水化物、例えばガラクトース;より低い無機性ホスファーゼレベル;温度、例えば低温又は高温シフト;金属又は金属イオン、例えば銅イオン;ホルモン、例えば、ジヒドロテストロン;デオキシコルチコステロン;熱ショック(例えば39℃);メタノール;酸化還元状態;増殖段階、例えば発育段階;合成のインデューサー、例えばgalインデューサーを含んで成る群から選択される任意の因子によって誘導され、そして/あるいは抑制される、請求項63〜87のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項89】
プロモーターが、ADH 1, PGK 1, GAP 491, TPI, PYK, ENO, PMA 1, PH05, GAL 1, GAL 2, GAL 10, MET25, ADH2, MEL 1, CUP 1, HSE, AOX, MOX, SV40, CaMV, Opaque-2, GRE, ARE, PGK/AREハイブリッド, CYC/GREハイブリッド,TPI/a2オペレーター, AOX 1, MOX Aを含んで成る群から選択されるプロモーターを含んで成る、請求項63〜88のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項90】
プロモーターが、PGK/AREハイブリッド, CYC/GREハイブリッドを含むハイブリッドプロモーターから選択される、請求項89に記載のベクター。
【請求項91】
プロモーターが合成プロモーターである、請求項63〜90のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項92】
クローニング部位がディレクショナルクローニングを可能にする、請求項63〜91のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項93】
クローニング部位がマルチクローニング部位、例えばポリリンカー部位、を含んで成り、クローニング部位が好ましくは一連の制限エンドヌクレアーゼ認識部位をコードする、請求項63〜92のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項94】
プロモーター及びターミネーターが発現宿主細胞、好ましくは酵母細胞内で機能することができる、請求項63〜93のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項95】
カセットを含んで成る一次ベクターが、高コピー数を有し、E.コリにおいて増殖することができ、そしてE.コリにおける維持のための選択マーカーを有するプラスミドベクターである、請求項63〜94のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項96】
一次ベクターが一本鎖にされうる、請求項95に記載のベクター。
【請求項97】
ベクター主鎖内に複製起点を、好ましくは糸状ファージの複製起点を、更に好ましくはf1の複製起点を更に含んで成る、請求項96に記載のベクター。
【請求項98】
一次ベクターがpBR322, pUC18, pUC19, pUC118, pUC119, pEMBL, pRSA101, pBluescriptを含んで成る群から選択される、請求項95に記載のベクター。
【請求項99】
配列番号1〜3のいずれかによって限定される、請求項63に記載のベクター。
【請求項100】
一次ベクターを調製する方法であって、5’→3’方向に、一般式
[RS1-RS2-SP-PR-CS-TR-SP-RS2'-RS1']
(ここで、
RS1及びRS1'は制限部位を表し、
RS2及びRS2'はRS1及びRS1'と異なる制限部位を表し、
SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチドのスペーサーを表し、
PRは、細胞内で機能しうるプロモーターを表し、
CSはクローニング部位を表し、
TRはターミネーターを表す)のヌクレオチド配列を含んで成るカセットを含んで成る一次ベクターのクローニング部位内に発現可能なヌクレオチド配列を挿入すること、
を含んで成る方法。
【請求項101】
発現可能なヌクレオチド配列がゲノムDNAを含んで成る、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
発現状態からmRNAを単離し、そしてベクター内への挿入のために完全長のcDNAを獲得すること、を更に含んで成る、請求項100に記載の方法。
【請求項103】
実質的に完全長のcDNAを得るために、cDNAの選択を更に含んで成る、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
一次ベクター内への挿入がディレクショナルクローニングを含んで成る、請求項100〜104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項105】
実質的に完全長のcDNA群が均一化されたcDNA種の提示を含んで成る、請求項100〜104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項106】
実質的に完全長のcDNA群が所定の発現状態に特有の、均一化されたcDNA種の提示を含んで成る、請求項100〜105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
5’→3’方向に、一般式:
[RS1-RS2-SP-PR-X-TR-SP-RS2'-RS1']
(ここで、
RS1及びRS1'は制限部位を表し、
RS2及びRS2'はRS1及びRS1'と異なる制限部位を表し、
SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチドのスペーサーを表し、
PRはプロモーターを表し、
Xは発現可能なヌクレオチド配列を表し、
TRはターミネーターを表し、
−ここでの発現可能なヌクレオチド配列は、1つの発現状態から単離され、そして
−少なくとも2つのカセットが異なる)のヌクレオチド配列のカセットをそれぞれが含んで成る少なくとも2つの一次ベクターを含んで成るヌクレオチドライブラリー。
【請求項108】
少なくとも3つの一次ベクターが、3つの異なるプロモーターの支配下にある同一のペプチドをコードする発現可能なヌクレオチド配列を含んで成る、請求項107に記載のライブラリー。
【請求項109】
少なくとも4つの一次ベクターが、4つの異なるプロモーターの支配下にある同一のペプチドをコードする発現可能なヌクレオチド配列を含んで成る、請求項107に記載のライブラリー。
【請求項110】
少なくとも5個の一次ベクターが、5個の異なるプロモーターの支配下にある、同一のペプチドをコードする発現可能なヌクレオチド配列を含んで成り、例えば少なくとも6個の一次ベクターが、6個の異なるプロモーターの支配下にある、同一のペプチドをコードする発現可能なヌクレオチド配列を含んで成り、例えば、少なくとも7個の一次ベクターが、7個の異なるプロモーターの支配下にある、同一のペプチドをコードする発現可能なヌクレオチド配列を含んで成り、例えば、少なくとも8個の一次ベクターが、8個の異なるプロモーターの支配下にある、同一のペプチドをコードする発現可能なヌクレオチド配列を含んで成り、例えば、少なくとも9個の一次ベクターが、9個の異なるプロモーターの支配下にある、同一のペプチドをコードする発現可能なヌクレオチド配列を含んで成り、例えば、少なくとも10個の一次ベクターが、10個の異なるプロモーターの支配下にある、同一のペプチドをコードする発現可能なヌクレオチド配列を含んで成る、請求項107に記載のライブラリー。
【請求項111】
同一のペプチドをコードする発現可能なヌクレオチド配列が、本質的に同一のヌクレオチド配列、更に好ましくは同一のヌクレオチド配列を含んで成る、請求項107〜110のいずれか1項に記載のライブラリー。
【請求項112】
カセットを含んで成るベクターを実質的に変化させないで維持することができる宿主細胞内で維持される、請求項107〜111のいずれか1項に記載のライブラリー。
【請求項113】
宿主細胞が、細菌、例えばE.コリ又はバチルス・サブチリス、又は真菌、例えば酵母を含んで成る群から選択される、請求項112に記載のライブラリー。
【請求項114】
プロモーターがライブラリー宿主において機能的でない、請求項107〜113のいずれか1項に記載のライブラリー。
【請求項115】
RS2及びRS2'が同一である、請求項107〜114のいずれか1項に記載のライブラリー。
【請求項116】
少なくとも2つのベクターが同一のRS2及びRS2'配列を含んで成る、請求項115に記載のベクター。
【請求項117】
実質的に全てのベクターが同一のRS2及びRS2'配列を含んで成る、請求項116に記載のベクター。
【請求項118】
請求項63〜98に記載の少なくとも1つの一次ベクターを含んで成る、請求項107〜117のいずれか1項に記載のライブラリー。
【請求項119】
ヌクレオチドライブラリーを調製する方法であって、発現可能なヌクレオチド配列を獲得し、当該発現可能なヌクレオチド配列を、
5’→3’方向に、一般式
[RS1-RS2-SP-PR-CS-TR-SP-RS2'-RS1']
(ここで、
RS1及びRS1'は制限部位を表し、
RS2及びRS2'はRS1及びRS1'と異なる制限部位を表し、
SPは個々に少なくとも2つのヌクレオチドのスペーサーを表し、
PRは、細胞内で機能しうるプロモーターを表し、
CSはクローニング部位を表し、そして
TRはターミネーターを表す)のヌクレオチド配列を含んで成るカセットを含んで成る一次ベクター混合物のクローニング部位内にクローニングし、そして一次ベクターを宿主細胞内に伝達すること、
を含んで成る方法。
【請求項120】
発現可能なヌクレオチド配列がcDNA、及び/又はゲノムDNAを含んで成る、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
発現可能なヌクレオチド配列がcDNAライブラリーから得られる、請求項119に記載の方法。
【請求項122】
発現可能なヌクレオチド配列が発現状態を提示するものである、請求項119〜121のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−57519(P2010−57519A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287858(P2009−287858)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【分割の表示】特願2002−559583(P2002−559583)の分割
【原出願日】平成14年1月25日(2002.1.25)
【出願人】(504316263)エボルバ アクチェンゲゼルシャフト (3)
【Fターム(参考)】