説明

ディマー制御装置および表示制御装置

【課題】表示装置によって低温時に表示される表示映像の視認性を向上させることができるディマー制御装置および表示制御装置を提供すること。
【解決手段】表示装置周辺の照度に応じてバックライトの発光輝度をディマー制御する場合に、バックライトの周辺温度が所定温度以上の場合、表示装置周辺の照度に応じてバックライトの発光輝度を制御し、バックライトの周辺温度が所定温度未満の場合、バックライトの周辺温度に応じてバックライトの発光輝度を制御するようにディマー制御装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディマー制御装置および表示制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示装置周辺の明るさの低下に応じて表示映像が暗くなるように表示装置のバックライトの発光輝度を低下させることで消費電力の低減を図るディマー制御が知られている。かかるディマー制御によって制御されるバックライトとして、たとえば、冷陰極蛍光ランプを用いた表示装置がある(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
冷陰極蛍光ランプは、電圧を印加することで電極から放出される電子を蛍光管内のガス化した水銀原子へ衝突させ、電子と水銀原子との衝突により発生する紫外線を蛍光管内に塗布されている蛍光物質へ照射して可視光を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−179207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、表示装置によって低温時に映像表示を開始させた場合、ディマー制御によってバックライトの発光輝度を低下させると、表示映像の視認性が低下するという問題があった。
【0006】
たとえば、表示装置のバックライトとして蛍光ランプを用いた場合、周囲の気温が低下すると蛍光管内のガス化した水銀の蒸気圧が低下する。したがって、蛍光ランプは、低温時に点灯を開始すると、電子と水銀原子との衝突によって発生する紫外線の発生量が本来の発生量まで至らず所望の発光輝度に達しない。
【0007】
かかる場合に、ディマー制御によってバックライトの発光輝度を低下させると、本来の明るさよりも暗い表示映像がさらに暗く表示されるため、表示映像の視認性が低下する。
【0008】
このことから、バックライトとして蛍光ランプのように発光量に温度特性を有し、低温時に発光量が低下する照明装置を用いた表示装置によって低温時に表示される表示映像の視認性を向上させることができるディマー制御装置および表示制御装置をいかにして実現するかが大きな課題となっている。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、表示装置によって低温時に表示される表示映像の視認性を向上させることができるディマー制御装置および表示制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、表示装置周辺の照度に応じてバックライトの発光輝度を制御するディマー制御装置であって、前記バックライトの周辺温度が所定温度以上の場合、前記照度に応じて前記発光輝度を制御する第1の制御を行い、前記周辺温度が前記所定温度未満の場合、前記周辺温度に応じて前記発光輝度を制御する第2の制御を行うディマー制御部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、表示装置によって低温時に表示される表示映像の視認性を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明に係るディマー制御手法の概要を示す図である。
【図2】図2は、本実施例に係る表示制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、本実施例に係るディマー制御情報、ユーザ設定情報および係数情報の具体的一例を示す図である。
【図4】図4は、本実施例に係るディマー制御部の動作の一例を示す図である。
【図5】図5は、本実施例に係るディマー制御部が実行する処理を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本実施例に係る制御切替制限IおよびIIを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るディマー制御手法を適用したディマー制御装置および表示制御装置の実施例を詳細に説明する。なお、以下では、本発明に係るディマー制御手法の概要について図1を用いて説明した後に、本発明に係るディマー制御手法を適用した表示制御装置の一実施例を図2〜図6を用いて説明することとする。
【0014】
図1は、本発明に係るディマー制御手法の概要を示す図である。本発明に係るディマー制御手法(以下、「本手法」と記載する)は、バックライトとして蛍光ランプを用いた表示装置に対し、バックライトの周辺温度が所定温度以上か否かによってバックライトの発光輝度に関する制御を切り替える。なお、バックライトは、蛍光ランプに限定するものではなく、低温時に発光量が低下する任意の照明装置であってもよい。
【0015】
すなわち、本手法では、バックライトの周辺温度が所定温度以上の状態(以下、「常温状態」と記載する)では、表示装置が設けられた環境(以下、単に「周辺」と記載する)の明るさを示す照度に応じてバックライトの発光輝度を制御する常温制御を行う。
【0016】
また、本手法では、バックライトの周辺温度が所定温度未満の状態(以下、「低温状態」と記載する)では、バックライトの周辺温度に応じてバックライトの発光輝度を制御する低温制御を行う。
【0017】
具体的には、本手法では、図1に示すように、バックライトの周辺温度が所定温度(たとえば、0℃)以上の常温状態では、照度が低下するにつれてバックライトへ出力する発光輝度の指示値を低くする常温制御(ディマー制御)を行う。
【0018】
一方、本手法では、バックライトの周辺温度が前述した所定温度未満の低温状態では、たとえば、ユーザによって発光輝度の指示値が設定されている場合、周辺温度が低いほど、バックライトへ出力する発光輝度の指示値をユーザが設定したユーザ設定値よりも高くする低温制御を行う。なお、発光輝度をユーザが設定できないようになっている場合は、メーカ側で設定した設定値がユーザ設定値となる。
【0019】
このように、本手法では、低温状態のために蛍光ランプ内の水銀の蒸気圧が下がり、ユーザ設定値をバックライトへ出力しても所望の発光輝度を得られない場合に、周辺温度が低いほどユーザ設定値よりも高い発光輝度の指示値をバックライトへ出力する。
【0020】
これにより、本手法では、バックライトとして蛍光ランプのように低温時に発光量が低下する照明装置を用いた表示装置によって低温時に映像の表示を開始した場合に、バックライトの発光輝度をユーザが所望する発光輝度へ近付けることができるので表示映像の視認性を向上させることができる。
【0021】
また、本手法では、バックライトへ出力するユーザ設定値が設定されていない場合、低温状態においても照度に応じてバックライトの発光輝度を制御するが、かかる場合には、周辺温度が低いほど、照度に応じた発光輝度の指示値よりも高い指示値をバックライトへ出力する低温制御を行う。
【0022】
これにより、本手法によれば、バックライトの発光輝度をディマー制御しつつ、周囲温度の低下によるバックライトの発光輝度の低下を防止することができるので、低温状態で映像表示を開始した場合に、表示映像の視認性を向上させることができる。
【0023】
以下では、図1を用いて説明した本手法を適用した表示制御装置についての実施例を詳細に説明する。なお、以下に示す実施例では、車載表示装置を制御する表示制御装置を例に挙げて説明するが、本発明に係るディマー制御手法は、車載表示装置に限らず任意の表示装置を制御する表示制御装置に対して適用することができる。
【実施例】
【0024】
図2は、本実施例に係る表示制御装置1の構成を示すブロック図である。表示制御装置1は、表示装置の表示パネルへ光を照射する冷陰極蛍光ランプを備えたバックライトの発光輝度を制御するとともに、表示装置周辺の照度に応じて表示映像の視認性を改善する映像補正を行う装置である。
【0025】
具体的には、表示制御装置1は、図2に示すように、映像情報取得部2、直射補正部3、照度センサ4、バックライト制御部5、ディマー制御装置6、乗算部7および温度センサ10を備えている。
【0026】
なお、表示制御装置1における照度センサ4および温度センサ10以外の部分は、映像の補正およびバックライトの動作制御を行うために特化して設計したASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。
【0027】
映像情報取得部2は、映像ソースとなる各装置より入力される映像信号から映像情報を取得して直射補正部3およびバックライト制御部5へ出力する処理部である。例えば、映像情報取得部2へは、車両周辺を撮像するカメラ、カーナビゲーション装置、デジタルテレビ放送受信装置およびDVD(Digital Versatile Disc)再生装置等の映像ソースから映像信号が入力される。
【0028】
照度センサ4は、表示装置周辺の明るさを示す照度を検出し、検出した照度を直射補正部3およびディマー制御装置6へ出力するセンサである。温度センサ10は、バックライトの周辺温度を検出するサーミスタである。かかる温度センサ10は、たとえば、冷陰極蛍光ランプの蛍光管近傍の回路基板上に設けられ、検出した蛍光管近傍の温度をディマー制御部9へ出力する。
【0029】
直射補正部3は、直射日光等の影響による表示映像の視認性の低下を抑制するために、照度センサ4から入力される照度に応じて映像情報を補正して映像補填部34へ出力する処理部である。具体的には、直射補正部3は、視認性補正部31、彩度補正部32およびブレンド部33を備えている。
【0030】
視認性補正部31は、映像情報取得部2から入力される映像情報に対して表示映像に含まれる輪郭部分を際立たせるようにエッジ補正を行い、補正後の映像情報を彩度補正部32へ出力する処理部である。
【0031】
彩度補正部32は、視認性補正部31から入力される映像情報に対して表示映像に含まれる中間色を原色へ近づけるように階調補正を行い、補正後の映像情報をブレンド部33へ出力する処理部である。これら視認性補正部31および彩度補正部32は、直射日光等の影響が最も強い状況の下で最も視認性が向上するように補正した映像情報を生成する。
【0032】
ブレンド部33は、映像情報取得部2から入力される補正前の映像情報と彩度補正部32から入力される補正後の映像情報とを照度センサ4から入力される照度に応じたブレンド比でブレンドし、ブレンド後の映像情報を映像補填部34へ出力する処理部である。
【0033】
かかるブレンド部33は、照度センサ4から入力される照度が高いほど、ブレンド後の映像情報に占める補正後の映像情報のブレンド率が高く、補正前の映像情報のブレンド率が低くなるようにブレンド比を調整する。
【0034】
バックライト制御部5は、映像情報取得部2から映像情報が入力された場合に、入力映像の輝度ヒストグラムを作成し、入力映像の輝度に応じてバックライトのデューティーを上限値(例えば80%)以下の範囲で演算し、バックライトを発光させる制御信号を乗算部7を介してバックライトへ出力すると共に、映像補填部34に演算したデューティー値を出力する処理部である。
【0035】
映像補填部34は、入力映像を100%のデューティで発光した場合と同じになるよう、バックライト制御部5で減光される分映像を補填し、補填した映像情報を表示パネルへ出力する処理部である。
【0036】
バックライトは、表示制御装置1から入力される制御信号のデューティー比に応じた発光輝度で発光する。すなわち、制御信号におけるデューティー比は、バックライトに対する発光輝度の指示値となる値である。
【0037】
たとえば、バックライトは、デューティー比が100%の場合に最高の発光輝度で発光(点灯)し、デューティー比が0%の場合に消灯する。そして、バックライト制御部5は、映像情報取得部2から映像情報が入力されている期間、デューティー比が入力映像の輝度に応じた制御信号を乗算部7へ出力する。
【0038】
乗算部7は、バックライト制御部5から入力されるデューティー比の制御信号と、ディマー制御装置6から入力されるデューティー比とを乗算することによってデューティー比を調整した制御信号をバックライトへ出力する処理部である。
【0039】
すなわち、乗算部7は、たとえば、バックライト制御部5から80%のデューティー比が入力され、ディマー制御装置6から50%のデューティー比が入力された場合、デューティー比が40%の制御信号をバックライトへ出力することで、最高発光輝度の2/5の発光輝度でバックライトを発光させる。
【0040】
ディマー制御装置6は、バックライトの発光輝度の指示値となるデューティー比を算出し、乗算部7を介してバックライトへ出力する装置である。このディマー制御装置6は、バックライトの周辺温度が所定温度以上の常温状態では、表示装置周辺の照度に応じたデューティー比を算出し、所定温度未満の低温状態では、周辺温度に応じたデューティー比を算出して乗算部7へ出力する。
【0041】
具体的には、ディマー制御装置6は、記憶部8と、ディマー制御部9とを備えている。記憶部8は、ディマー制御情報81、ユーザ設定情報82および係数情報83を記憶する。ここで、図3を用いて、ディマー制御情報81、ユーザ設定情報82および係数情報83の具体的一例について説明する。
【0042】
図3は、本実施例に係るディマー制御情報81、ユーザ設定情報82および係数情報83の具体的一例を示す図である。以下では、前述の所定温度を0℃とし、バックライトの周辺温度が0℃以上の状態を常温状態、バックライトの周辺温度が0℃未満の状態を低温状態として説明する。なお、本実施例における所定温度は、0℃に限定するものではない。
【0043】
図3に示すように、ディマー制御情報81は、表示パネル周辺の外光による明るさを示す照度と、バックライトへ出力する制御信号のデューティー比との関係を示す関数(以下、「特性関数」と記載する)である。なお、図3では、説明を容易にするため、特性関数をグラフによって示しているが、記憶部8は、図3に示すグラフに対応する関数式をディマー制御情報81として記憶する。
【0044】
また、ディマー制御情報81は、照度に対応するデューティー比が異なる11種類の特性関数を備えており、11種類の特性関数からユーザが所望の特性関数を選択することでバックライトの発光輝度を変更できるようにしている。
【0045】
ユーザは、次に説明するユーザ設定情報82からユーザ設定番号を選択する操作を行うことで所望の特性関数を選択する。なお、ディマー制御部9は、ユーザがユーザ設定番号の選択操作を行わない場合、最大デューティー比が下から6番目の特性関数をデフォルトとして選択する。
【0046】
また、ユーザがバックライトの明るさの段階を調節できる機能をディマー制御装置6が持たない場合は、例えば最大デューティー比が最も高い特性関数のみがユーザ設定情報として設定される。
【0047】
ユーザ設定情報82は、「1」〜「11」までの11種類の各ユーザ設定番号に、設定フラグと、それぞれ異なるデューティー比とが対応付けられた情報である。ユーザ設定情報82におけるユーザ設定番号は、ユーザがバックライトの明るさ設定を行う場合に選択する情報であり、バックライトの明るさの段階を示す情報である。
【0048】
設定フラグは、ユーザによって選択されているユーザ設定番号を識別するための情報である。たとえば、ユーザによってユーザ設定番号「2」が選択された場合、図3に示すように、ユーザ設定番号「2」に対応する設定フラグとして「1」が設定される。
【0049】
なお、ユーザによって選択されていないユーザ設定番号「1」および「3」〜「11」に対応する設定フラグには「0」が設定される。かかる設定フラグは、所定の操作部から入力される操作信号(図2参照)に基づいて設定される。
【0050】
ユーザ設定情報82におけるデューティー比は、ディマー制御情報81における特性関数の上限値を示す情報である。すなわち、ディマー制御部9は、ユーザによってユーザ設定番号が選択されている場合、常温状態ではユーザ設定番号に対応したデューティー比が最大デューティー比となっている特性関数に基づき、照度に応じたデューティー比を算出してバックライトへ出力する。
【0051】
ただし、低温状態の場合、照度に応じたデューティー比の制御信号をバックライトへ出力したとしても常温状態の場合と同程度の発光輝度でバックライトを発光させることができないことがある。
【0052】
しかも、バックライトの発光輝度は、バックライトの周辺温度が低いほど低下する。そこで、ディマー制御部9は、低温状態の場合、次に説明する係数情報を用いてバックライトの発光輝度をバックライトの周辺温度に応じて制御する。
【0053】
係数情報83は、バックライトの周辺温度Tを複数の温度範囲へ分割した各温度範囲と、バックライトへ出力する制御信号のデューティー比に対して乗算する係数とを対応付けた情報である。
【0054】
図3に示す例では、T<−20℃の温度範囲に対して係数「1.50」、−20℃≦T<−10℃の温度範囲に対して係数「1.25」、−10℃≦T<0℃の温度範囲に対して係数「1.05」、0℃≦Tの温度範囲に対して係数「1.00」を対応付けている。すなわち、係数情報83では、周辺温度Tが低いほど係数が大きくなるように規定している。
【0055】
かかる各係数は、事前にシミュレーションを行うことで算出しておく。たとえば、シミュレーションでは、所定のデューティー比の制御信号によって常温状態でバックライトを発光させて発光輝度を検出する。
【0056】
続いて、常温状態で用いた所定のデューティー比へ乗算する係数を変更しながら乗算後のデューティー比の制御信号によって低温状態の各周辺温度の範囲でバックライトを発光させて発光輝度を検出する。
【0057】
そして、常温状態での発光輝度と低温状態での発光輝度との差分が最少であった場合に用いた係数を各温度範囲における係数情報83として決定する。なお、ここでは、係数情報83が温度範囲と係数とを対応付けたテーブルである場合について説明したが、係数情報83は、バックライトの周辺温度の変化に対して係数がリニアに変化する関数情報であってもよい。
【0058】
図2の説明に戻り、ディマー制御部9は、常温状態では、表示パネル周辺の照度に応じてバックライトの発光輝度を制御し、低温状態では、バックライトの周辺温度に応じてバックライトの発光輝度を制御する処理部である。かかるディマー制御部9は、温度取得部91、選択部92、照度取得部93、およびデューティー比算出部94を備えている。
【0059】
温度取得部91は、所定のサンプリング周期で温度センサ10からバックライトの周辺温度を取得する処理部である。かかる温度取得部91は、取得した周辺温度を選択部92およびデューティー比算出部94へ出力する。さらに、温度取得部91は、取得した周辺温度に対応する係数を係数情報83から選択してデューティー比算出部94へ出力する。
【0060】
選択部92は、温度取得部91から入力される周辺温度に基づいてディマー制御情報81またはユーザ設定情報82のいずれか一方を選択してデューティー比算出部94へ出力する処理部である。
【0061】
具体的には、選択部92は、温度取得部91から入力された周辺温度が所定温度(ここでは、0℃)以上であった場合、ディマー制御情報81の特性関数をデューティー比算出部94へ出力する。
【0062】
このとき、選択部92は、ユーザ設定情報82を参照し、設定フラグが「1」となっているユーザ設定情報82のデューティー比を上限値とする特性関数をディマー制御情報81から選択してデューティー比算出部94へ出力する。
【0063】
また、選択部92は、温度取得部91から入力された周辺温度が所定温度(ここでは、0℃)未満であった場合、設定フラグが「1」となっているユーザ設定情報82をデューティー比算出部94へ出力する。すなわち、選択部92は、デフォルトまたはユーザによって選択されているユーザ設定情報82をデューティー比算出部94へ出力する。
【0064】
照度取得部93は、所定のサンプリング周期で照度センサ4から表示パネル周辺の照度を取得し、取得した照度をデューティー比算出部94へ出力する処理部である。
【0065】
デューティー比算出部94は、バックライトを発光させる制御信号のデューティー比を算出する処理部である。かかるデューティー比算出部94は、温度取得部91から入力された周辺温度が0℃以上の常温状態の場合、選択部92から入力されるディマー制御情報81の特性関数へ照度取得部93から入力される照度を代入し、照度に応じたデューティー比を算出する。
【0066】
また、デューティー比算出部94は、温度取得部91から入力された周辺温度が0℃未満の低温状態の場合、選択部92から入力されるユーザ設定情報82のデューティー比と、温度取得部91から入力される係数とを乗算してデューティー比を算出する。
【0067】
すなわち、デューティー比算出部94は、低温状態の場合、ユーザによって設定された発光輝度に対応するデューティー比に対し、バックライトの周辺温度が低いほど大きな係数を乗算する。これにより、デューティー比算出部94は、低温状態でもユーザが所望する発光輝度に近い発光輝度でバックライトを発光させることができるデューティー比を算出することができる。
【0068】
そして、デューティー比算出部94は、算出したデューティー比を乗算部7へ出力する。乗算部7は、バックライト制御部5から入力されるデューティー比の制御信号と、デューティー比算出部94から入力されるデューティー比とを乗算することによってデューティー比を調整した制御信号をバックライトへ出力する。
【0069】
これにより、ディマー制御装置6は、低温状態で映像の表示を開始した場合であっても、ユーザが所望する発光輝度に近い発光輝度でバックライトを発光させることができるため、低温状態のときに表示映像の視認性が低下することを防止することができる。
【0070】
次に、図4を用いてディマー制御部9の動作の一例について説明する。図4は、本実施例に係るディマー制御部9の動作の一例を示す図である。なお、図4(a)は、ここでのディマー制御部9の動作環境を示す図であり、図4(b)は、図4(a)に示す動作環境でのディマー制御部9の動作を説明する図である。
【0071】
図4(a)に示すように、ここでは、バックライトの周辺温度が−30℃のときに映像の表示が開始され、その後、周辺温度が10℃以上まで上昇するものとして説明する。また、ここでは、図4(a)に示すように、−30℃から−15℃までの期間、−15℃から3℃までの期間、3℃以上の期間で、ユーザにより選択された各ユーザ設定情報82のデューティー比が50%、80%、25%であったものとして説明する。
【0072】
なお、図4(a)に示す照度に応じたデューティー比は、表示パネル周辺の照度変化に応じてディマー制御情報81に基づき算出した場合のデューティー比を示している。
【0073】
かかる場合、ディマー制御部9は、図4(b)に示すように、バックライトの周辺温度が0℃未満の期間では、ユーザ設定情報82のデューティー比と、バックライトの周辺温度に応じた係数とを乗算してバックライトへ出力する制御信号のデューティー比(以下、「出力デューティー比」と記載する)を算出する。
【0074】
具体的には、ディマー制御部9は、周辺温度が−30℃以上−20℃未満の場合、ユーザ設定情報82のデューティー比である50%と、周辺温度に応じた係数「1.50」とを乗算することで75%という出力デューティー比を算出する。
【0075】
同様にして、ディマー制御部9は、周辺温度が−20℃以上−10℃未満の場合、ユーザ設定情報82のデューティー比が50%の期間では62.5%、ユーザ設定情報82のデューティー比が80%の期間では100%という出力デューティー比を算出する。
【0076】
一方、周辺温度が0℃以上の場合、ディマー制御部9は、表示パネル周辺の照度変化に応じてディマー制御情報81に基づき算出したデューティー比と、係数「1.00」とを乗算して出力デューティー比を算出する。すなわち、常温状態では、表示パネル周辺の照度変化に応じてディマー制御情報81に基づき算出されたデューティー比が、そのまま出力デューティー比となる。
【0077】
このように、ディマー制御部9は、バックライトの周辺温度が0℃未満の低温状態では、ユーザによって選択されているデューティー比に対し、温度低下に伴う発光輝度の低下を考慮して温度範囲毎に予め算出した係数を乗算して出力デューティー比を算出する。これにより、表示制御装置1では、低温状態で映像表示を開始する場合に、表示映像の視認性が低下することを防止することができる。
【0078】
次に、ディマー制御部9が実行する処理について説明する。図5は、本実施例に係るディマー制御部9が実行する処理を示すフローチャートである。なお、図2では、図示を省略しているが、ディマー制御部9は、所定の操作部から映像の表示開始を示す操作信号が入力されてから表示終了を示す操作信号が入力されるまでの間、所定周期(たとえば、数msec間隔)で図5に示す処理を繰り返し実行する。
【0079】
具体的には、ディマー制御部9は、表示開始を示す操作信号が入力されると、図5に示すように、温度センサ10からバックライト周辺の温度を取得し(ステップS101)、取得した温度が常温(たとえば、0℃以上)か否かを判定する(ステップS102)。
【0080】
そして、ディマー制御部9は、ステップS101で取得した温度を常温と判定した場合(ステップS102,Yes)、照度センサ4から表示パネル周辺の照度を取得する(ステップS103)。
【0081】
続いて、ディマー制御部9は、ステップS103で取得した照度に応じたデューティー比、すなわちディマー制御情報81の特性関数へ照度を代入して得たデューティー比に対して係数「1.00」を乗算し(ステップS104)、処理をステップS105へ移す。
【0082】
一方、ディマー制御部9は、ステップS101で取得した温度が常温でないと判定した場合(ステップS102,No)、ユーザ設定のデューティー比に対して温度に応じた係数を乗算し(ステップS106)、処理をステップS105へ移す。
【0083】
すなわち、ディマー制御部9は、設定フラグが「1」となっているユーザ設定情報82のデューティー比に対し、ステップS101で取得した温度に対応する係数を係数情報83から読み出して乗算する。
【0084】
そして、ディマー制御部9は、ステップS104またはステップS106で係数を乗算することにより算出したデューティー比を乗算部7へ出力し(ステップS105)、処理を終了する。
【0085】
なお、上述した実施例では、低温状態(ステップS102,No)の場合に、ユーザによって選択されているデューティー比に対してバックライトの周辺温度に応じた係数を乗算する場合について説明したが、これは一例に過ぎない。
【0086】
すなわち、ディマー制御部9は、低温状態の場合に、表示パネル周辺の照度に応じたデューティー比に対し、バックライトの周辺温度に応じた係数を乗算してバックライトへ出力する制御信号のデューティー比を算出するように構成してもよい。
【0087】
かかる場合、ディマー制御部9は、バックライトの周辺温度が低いほど、大きな係数を表示パネル周辺の照度に応じたデューティー比に対して乗算するように構成する。かかる構成によっても、低温状態のときに表示映像の視認性が低下することを防止することができる。
【0088】
また、上述した実施例では、バックライトの周辺温度が所定温度以上か否かによってバックライトの発光輝度に関する制御を切替える場合について説明したが、表示制御装置1による制御切替の手法は、これに限定するものではない。
【0089】
たとえば、表示制御装置1は、表示パネル周辺の照度に応じた常温制御からバックライトの周辺温度に応じた低温制御への切替えに制限を設けることで制御切替による表示映像のちらつきを抑制することができる。
【0090】
以下では、図6を用いて常温制御から低温制御への切替えに制御切替制限Iまたは制御切替制限IIを設けた場合について説明する。図6は、本実施例に係る制御切替制限IおよびIIを示す図である。
【0091】
まず、制御切替制限Iについて説明する。制御切替制限Iを設けた場合、表示制御装置1は、バックライトの周辺温度の状態が常温状態から低温状態へ移行した場合に、常温制御から低温制御への切替えタイミングを遅延する。
【0092】
たとえば、表示制御装置1は、図6に示すように、低温状態であったバックライトの周辺温度が0℃まで上昇した場合に、低温制御から常温制御への制御切替を行う(ステップS01)。このとき、周辺温度が0℃に達した直後に再び0℃未満となる場合がある。
【0093】
たとえば、車載表示装置の場合、映像表示を開始してバックライトの周辺温度が0℃に達したところで車両のドアや窓が開放されると、一時的にバックライトの周辺温度が0℃未満に戻ることがある。
【0094】
かかる場合、周辺温度が0℃以上か否かによって低温制御と常温制御との切替えを行うと、制御切替が繰り返されて表示映像にちらつきが生じる恐れがある。ただし、車載表示装置の場合、ドアや窓の開放によって一時的にバックライトの周辺温度が低下しても、車両が走行を開始するとバックライトの周辺温度は常温状態へ戻ることが予想できる。
【0095】
そこで、表示制御装置1は、周辺温度が0℃に達した後に再び0℃未満となった場合には、常温制御から低温制御への制御切替のタイミングを遅延する。たとえば、表示制御装置1は、バックライトの周辺温度が0℃まで上昇した後に0℃未満となった場合、バックライトの周辺温度が−5℃となるまで常温制御を継続してから低温制御への制御切替を行う(ステップS02)。
【0096】
即ち、制御の切り換えに温度についてのヒステリシスをもたせる。これにより、表示制御装置1は、制御切替の頻繁な繰り返しによって発生する表示映像のちらつきを防止することができる。
【0097】
なお、表示制御装置1は、周辺温度が所定温度に達した後に再び所定温度未満となった場合、所定温度未満になってから一定時間(たとえば、5分)経過するまで常温制御を継続してから低温制御への制御切替を行うように構成してもよい。かかる構成によっても同様に、制御切替の頻繁な繰り返しによって発生する表示映像のちらつきを防止することができる。
【0098】
このように、制御の切替えタイミングを遅延する構成とする場合、表示制御装置1は、ディマー制御装置6の記憶部8に、バックライトの発光輝度に関する制御切替の履歴情報を記憶させておき、ディマー制御部9が履歴情報に基づいて低温制御への切替えタイミングを遅延する。
【0099】
次に、制御切替制限IIについて説明する。制御切替制限IIを設けた場合、表示制御装置1は、バックライトの周辺温度の状態が常温状態から低温状態へ移行した場合、常温制御から低温制御への切替えを禁止する。
【0100】
たとえば、表示制御装置1は、図6に示すように、バックライトの周辺温度が低温状態から上昇し、時刻t1で0℃に達した場合、低温制御から常温制御への制御切替を行う(ステップS11)。その後、常温状態となった周辺温度が時刻t2で0℃未満まで低下した場合、表示制御装置1は、常温制御から低温制御への制御切替を禁止する(ステップS12)。
【0101】
これにより、表示制御装置1は、制御切替制限Iを設けた場合と同様に、制御切替の頻繁な繰り返しによって発生する表示映像のちらつきを防止することができる。なお、低温制御への切替えを禁止する構成とする場合、表示制御装置1は、ディマー制御装置6の記憶部8に、バックライトの発光輝度に関する制御切替の履歴情報を記憶させておき、ディマー制御部9が履歴情報に基づいて低温制御への切替えを禁止する。
【0102】
上述してきたように、表示制御装置1のディマー制御部9は、低温状態の場合に、バックライトの周辺温度に応じてバックライトの発光輝度を制御し、常温状態の場合に、表示パネル周辺の照度に応じてバックライトの発光輝度を制御する。これにより、表示制御装置1は、低温状態で映像の表示を開始した場合であっても、表示映像の視認性が低下することを防止することができる。
【符号の説明】
【0103】
1 表示制御装置
2 映像情報取得部
3 直射補正部
31 視認性補正部
32 彩度補正部
33 ブレンド部
4 照度センサ
5 バックライト制御部
6 ディマー制御装置
7 乗算部
8 記憶部
81 ディマー制御情報
82 ユーザ設定情報
83 係数情報
9 ディマー制御部
91 温度取得部
92 選択部
93 照度取得部
94 デューティー比算出部
10 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置周辺の照度に応じてバックライトの発光輝度を制御するディマー制御装置であって、
前記バックライトの周辺温度が所定温度以上の場合、前記照度に応じて前記発光輝度を制御する第1の制御を行い、前記周辺温度が前記所定温度未満の場合、前記周辺温度に応じて前記発光輝度を制御する第2の制御を行うディマー制御部
を備えたことを特徴とするディマー制御装置。
【請求項2】
前記ディマー制御部は、
前記第2の制御を行う場合、前記周辺温度が低いほど、ユーザによって設定された前記発光輝度の指示値よりも高い前記指示値を前記バックライトへ出力する
ことを特徴とする請求項1に記載のディマー制御装置。
【請求項3】
前記ディマー制御部は、
前記第2の制御を行う場合、前記周辺温度が低いほど、前記照度に応じた前記発光輝度の指示値よりも高い前記指示値を前記バックライトへ出力する
ことを特徴とする請求項1に記載のディマー制御装置。
【請求項4】
前記ディマー制御部は、
前記周辺温度が所定温度以上の状態から所定温度未満の状態へ移行した場合、前記第2の制御への切替えタイミングを遅延する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のディマー制御装置。
【請求項5】
前記ディマー制御部は、
前記周辺温度が所定温度以上の状態から所定温度未満の状態へ移行した場合、前記第2制御への切替えを禁止する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のディマー制御装置。
【請求項6】
表示装置周辺の照度に応じてバックライトの発光輝度を制御する表示制御装置であって、
前記照度を検出する照度検出部と、
前記バックライトの周辺温度を検出する温度検出部と、
前記周辺温度が所定温度以上の場合、前記照度に応じて前記発光輝度を制御する第1の制御を行い、前記周辺温度が前記所定温度未満の場合、前記周辺温度に応じて前記発光輝度を制御する第2の制御を行うディマー制御部と
を備えたことを特徴とする表示制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−194208(P2012−194208A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55997(P2011−55997)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】