説明

デジタルオフセット印刷に関する、アニロックスローラとインキ着けローラとに架かるチャンバー・ブレード・システムを有する、キーレスインク塗布を行う方法、装置、及びシステム

【課題】可変データリソグラフィック印刷システムの新しい要求に対応する、新しいインカーシステムを提供する。
【解決手段】インクは、転写ローラ105によりアニロックスローラ102からインク着けローラ108に転写され、次いで、インク着けローラ108から可変データのリソグラフィック印刷のシステム内の画像生成部110の画像再形成可能面の層112に転写される。インク履歴の無いインクの層は、インク着けローラ108の表面上に均一に塗布され、続いて、インク塗布の不均一性に関連した画像のゴーストの発生を抑えながら、又はほとんど取り除きながら、画像再形成可能面の層112に転写される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可変データリソグラフィック印刷に関する。特に、可変データリソグラフィック印刷システムで用いるキーレスインク塗布の方法、及びインク塗布システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のオフセット印刷では可変データ印刷を行うことはできない。インク塗布サブシステムを使用することにより、帯電プレートの画像上にインクを塗布する。一般に、画像形成プレートにインクが転写されると、インク着けローラからインクが消耗される。このインク着けローラが、画像形成プレートに直接接触する最終ローラである。画像形成プレート上には種々の領域があり、それらの領域が親油性の前景領域か、油をはじく背景画像の領域かによって、より多くの、又はより少ないインクを必要とし得る。従来のオフセットインク供給システムでは、手動で調整するキーを用いて、プレートの種々の領域へのインク流を調整し、これにより、ベタ画像領域には十分なインクが流れるよう保証し、細い線やハーフトーンの領域にはインクが流れ過ぎないようインクの供給率を調整する。
【0003】
近年、キーレス・インカー・システムが導入され、このシステムによりインカーキーを必要としないでインクを適切に調量する。典型的なキーレス・インカー・システムには、ドイツのKoenig&Bauer ABグループ(KBA)のより販売されているシステムが含まれる。このようなキーレスシステムでは、調量用アニロックスローラを用いて、新しいインクがインクトレイから均一に取り出され、そのインクをゴム製のインク着けローラに直接供給し、次いで、このローラにより、画像形成プレートにそのインクを転写する。このようなシステムにより、印刷される画像がベタ画像か又は淡い画像かに関係なく、安定したインク流が供給される。しかし、インクの一部をオフセットプレート上の帯電画像の転写した後にインク着けローラ上に残るインクの厚みは均一ではない。これは、画像領域ではインクは分離して画像形成プレートに移るが、非画像領域では湿し水によりはじかれてしまうためである。したがって、インク着けローラ上に不均一な厚みでインクが残るため、厚みの模様が形成され、これが帯電プレート上で印刷される画像の図柄に反映さてしまう。画像形成プレート上にインクが転写された後、インク着けローラの上の全ての領域は同じ厚みのインクで覆われているわけではなく、新しいインクがインク着けローラ上に転写されるときに、前の厚みの模様のいくらかが部分的に残ってしまう。 これらの影響を最小限にするために、キーレスインク塗布システムは、柔らかい、即ち順応可能な表面を含むインク着けローラ、アニロックス調量用ローラ、及び画像形成プレートを含み、これらのローラはほぼ同じ直径である。さらに、画像プレートはその面積が大きいため(例えば、B2サイズのシート版等)、そして、これらのローラの直径は全て同じなので、一般に従来のキーレスインク塗布システムは、大きい直径のアニロックス調量用ローラ、及び大きい直径のインク着けローラを有する。
【0004】
ローラが同じ直径である理由は、プレート上の画像で履歴効果により「同じ相」加えられるからである。次いで、インク着けローラは、帯電したオフセットプレートの画像を用いて再現可能なインクの層の厚みの「同じ相」を増大させる。
【0005】
しかし、帯電画像形成プレートから次の画像成形プレートに印刷ジョブを移すとき、ゴーストが発生することがあり、印刷の準備の際インク着けローラ上のインクの膜の厚みの分布履歴を消去する必要がある。この準備のために、新しく平衡のとれたインクの膜の厚みにより、新しいプレートの画像を用いて「同じ相」を増大させるのに時間がかかってしまう。したがって、従来のキーレスシステムでは、未だにゴーストの問題を抱え、印刷ジョブ間で準備が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
可変データリソグラフィック印刷のインカーシステムでは、新しい画像が印刷プロセスのパス毎に取り込まれるため、画像履歴に関係なくインクの膜の厚みは、必ずいつも一定である。これは、画像再形成可能印刷面を含んだ画像生成シリンダのパス毎に、レーザの気化により湿し水の新しい図柄が形成されるためである。さらに硬い金属のオフセットプレートの表面上に帯電した液体の図柄を保持する従来のオフセットとは対照的に、可変データリソグラフィック印刷では、弾力性のある順応可能なブランケット上の湿し水内に潜像を保持し、レーザで図柄を生成した後、インクを直接転写するため、可変データリソグラフィック印刷は、静電オフセットリソグラフィック印刷とは異なる。したがって、可変データリソグラフィック印刷システムの新しい要求に対応する、新しいインカーシステムを設計しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ゴーストの発生しない可変リソグラフィック印刷に適用できるインカーサブシステム又はインク塗布システムを開示する。コンパクトな部品構成が可能で、画像再形成可能面にインクの均一な層を調量し、インク着け部材からインクを清掃し、インク着け部材から取り除かれたインクをインク塗布システムに再度供給して再利用することができる、インクを塗布する方法、装置、及びシステムを提供する。インク着けローラが、可変リソグラフィック印刷で用いられる画像再形成可能面にインクを直接塗布することは常に理解されよう。用語インクは、一般に種々のマーキング材料の全てに適用されることも理解されよう。
【0008】
一実施形態では、方法は、第1の転写ニップでインクをアニロックスローラから転写ローラに転写するステップであって、第1の転写ニップはアニロックスローラと転写ローラにより画定される、ステップと、第2の転写ニップでインクを転写ローラからインク着けローラに転写するステップであって、第2の転写ニップは転写ローラとインク着けローラにより画定されるステップと、を含んでもよい。別の実施形態では、方法は、第1の転写ニップで転写ローラをアニロックスローラに対して押し付けてインクに圧力をかけるステップと、第2の転写ニップで転写ローラをインク着けローラに押し付けてインクに圧力をかけるステップと、を含むことができる。方法により、圧力を変化させることができ、インクの転写効率、及び画像再形成可能面に塗布する平均の膜の厚みを変化させることができる。これにより、インク光学濃度及び彩度を微妙に変更することが可能となる。
【0009】
別の実施形態では、方法は硬いインク着けローラの表面を清掃するステップを含むことができる。硬いインク着けローラの表面を清掃するステップには、ドクターブレードを用いてインク着けローラの表面からインクを取り除くことが含まれ、これによりインクがインク着けローラから取り除かれる。方法は、ドクターブレードによりインク着けローラの硬い表面から取り除かれたインクをリザーバの中に集めるステップを含むことができる。このリザーバは、インク溜めと連通することができ、このインク溜めがアニロックスローラに繋がる。集められたインクを、インク溜めで受け、アニロックスローラに供給して再利用することができる。
インクがインク着けローラから中央ドラムの画像再形成可能面へ転写された後に残存する量の湿し水のいくらかは、必ずインク塗布サブシステムの中に入り込む。別の実施形態では、方法は、湿し水をインク着けローラの表面から取り除くステップを含む。方法は、インク着けローラの表面にワイパーモードでチャンバーブレード接触させるステップを含み、水ベースの湿し水が使用されている場合は、このチャンバーブレードは、親水性の気泡ゴム等の親水性表面を含む。あるいは、水以外の湿し水用の化学溶剤が使用されている場合には、別のブレード材料を使用することができる。例えば、湿し水としてハイドロフルオロエーテルが使用されている場合、テフロン(登録商標)のブレードを選択することができる。ブレード材料を選択して、湿し水で選択的にそのインクの上を湿らせる。
【0010】
あるいは、エアーナイフを用いて、残余湿し水を選択的に気化させることもできる。したがって、湿し水で汚染されていないインク着けローラからインクを集めることができ、そのインクを効果的にアニロックスローラに供給し再利用することができる。別の実施形態では、方法は、インク溜めからの供給されたインクをアニロックスローラの表面に塗布するステップを含む。供給されたインクには、インク着け部材から取り除かれ再利用されてアニロックスローラへ供給され、中間転写ローラにより、硬いインク着け部材に再転写されるインクも含まれ得る。
【0011】
可変リソグラフィック印刷のインク塗布装置の一実施形態では、インク塗布サブシステムは、アニロックスローラ、又は中に空隙を有するアニロックスドラム等のアニロックス部材を含むことができる。アニロックス部材は、インクをインク溜めからインク転写部材に運ぶように設定され得るセルを有する。一実施形態では、アニロックス部材を加熱し、温度制御をすることができる。即ち、転写部材のインク転写性能を向上させて均一なインク層の様々な厚みを転写部材の表面上で実現することができるアニロックス部材の温度に制御することができる。
【0012】
インク転写部材は、ローラ又はドラムでよい。転写部材の表面は、硬いアニロックスローラ及び硬いインク着けローラから生じる変化に適応するための順応可能なエラストーマが理想的である。転写部材の表面は、ゴム製の材料、又はその他の80ショアより小さいデュロメータ硬度(例えば、調量するインクの図柄を柔らかくし、インクを平らにするための好適な硬度)の柔らかい材料を含むことができる。転写部材は、アニロックス部材と第1の転写ニップを画定するように設定され得る。転写部材は、第1の転写ニップにかけられる圧力を調整するために可動式でよい。例えば、転写部材は、アニロックス部材から転写部材にインクの均一な層を調量するために、アニロックス部材に押し付けられ、その間にインクを押しつぶすよう設定され得る。
【0013】
一実施形態では、装置はインク着けローラ部を含むことができ、このインク着け部は、硬く非弾力性の表面を有し、転写部材と第2の転写ニップを画定するよう設定され得る。インク着け部の表面には金属が含まれ得る。インク着け部はローラ又はドラムでよい。転写部材とインク着け部は、第2のインク転写ニップを画定することができる。転写部材は、インクの均一な層をインク着け部の上に調量するために、インク着け部に押し付けられて、ニップの間でインクを強く押しつぶすように設定され得る。アニロックスローラ内のインクを保持するセルから生じる全ての転写不具合を取り除くために、転写部材は、アニロックス部材、及びインク着け部の高速回転運動と直交する方向でゆっくりと往復運動することができる。
【0014】
画像形成プレートに転写されるインクの層の厚み、及び/又は光学濃度を微妙に変化させるために、インク着け部材、及びアニロックス部材に対する転写部材の相対的な角速度は、アニロックス部材とインク着けローラ部との間で転写されるインクの厚みを変化させることができるよう調整可能であってよい。さらに、ゴーストが発生しない可変リソグラフィック印刷のために、アニロックス部材の温度、及び/又は第1のインク転写ニップ、及び第2のインク転写ニップにかかる圧力量を調整して、インクの均一な層の調量を実現することができる。
【0015】
一実施形態では、アニロックスローラ部材は、インク着けローラ部材、及び転写部材と共にチャンバー・ブレード・システムを含むことができ、このチャンバー・ブレード・システムは、3つの全てのローラ、即ち、アニロックスローラ部材、転写ローラ部材、及びインク着けローラ部材の間にまたがって延在する。チャンバー・ブレード・システムは、密封されたチャンバから成り少なくとも2つのブレードを有し、1つは、高い圧力の衝突角を有するドクターモードでアニロックス部材の表面に適用し、1つは、低い圧力の引きずり角で部材の表面に適用する。この引きずり角で、チャンバ内に戻るインクを受けることができる。さらに、部材ローラの面の端に壁面停止を用いてローラ部材を完全に密封する。従来、ドクター・チャンバー・ブレード及びワイパー・チャンバー・ブレードは、個々のローラ部材に対して密封したチャンバを形成している。しかし、複数のローラ部材に対して1つのチャンバを形成することもできる。一実施形態では、ワイパーブレードを有するチャンバー・ブレード・システムをインク着け部材に接触させて配置し、インクをアニロックス部材のセル内に調量するために、ドクターブレードをアニロックス部材に接触させて配置する。したがって、チャンバー・ブレード・システムは、アニロックスローラ部材、転写ローラ部材、及びインク着けローラ部材に対して1つのチャンバを形成する。チャンバ内で、別のドクターブレードをインク着け部材の表面に接触するよう設定して、インク溜めに戻して再利用するよう、インクをインク着け部材の表面から取り除くことができる。インク着け部材のドクターブレードは、金属、プラスティック、又はその他の好適な材料を含むことができる。
【0016】
一実施形態では、この装置は、ワイパーブレードを有するチャンバー・ブレード・システムを含むことができ、このワイパーブレードは、インク着け部材の表面に接するよう設定され、親水性の表面を有し、インク着け部材のドクターブレードによりインク着け部材の表面からインクが取り除かれる前に、インク着け部材の表面から水ベースの湿し水を取り除くよう設定される。
【0017】
一実施形態では、この装置は、取り除かれたインクリザーバをさらに含むチャンバー・ブレード・システムを含むことができ、この取り除かれたインクリザーバは、インク溜めと連通し、このインク溜めは、取り除かれたインクリザーバからの取り除かれたインクを受けられるよう設定される。このインク溜めは、アニロックス部材にインクを供給することができる。例えば、アニロックス部材をインク溜め内のインクに浸してインクを取り込むよう設定することができる。チャンバー・ブレード・システムは、アニロックス部材のドクターブレードをさらに含むことができ、このアニロックス部材のドクターブレードは、アニロックス部材の表面から余分なインクをかき落とすよう設定され、それによりアニロックス部材のセル内のインクが調量される。
【0018】
可変リソグラフィック印刷のキーレスインク塗布システムの実施形態では、インクの均一な層を画像再形成可能面に転写するインク塗布システムは、アニロックス部材、中間転写部材、及びインク着け部材を含むことができ、中間部材は柔らかい表面を有し、インク着け部材は硬い表面を有する。アニロックス部材、及び中間転写部材を、第1のインク転写ニップを画定するよう設定することができ、中間転写部材、及びインク着け部材を、第2のインク転写ニップを画定するよう設定することができる。インク着け部材から画像再形成可能面にインクを転写するようインク着け部材を設定することができる。画像再形成可能面は順応可能な表面を含むことができる。例えば、画像生成部材は、シリコーン、フルオロシリコーン、バイトン、又はその他の低い表面エネルギを有する材料から成る表面層を有する柔らかいブランケットでよい。
【0019】
別の実施形態では、インク溜めを含むことができるチャンバー・ブレード・システムを含むことができる。インク溜めは、インク着け部材から清掃されたインクを受けるためのインクリザーバと連通することができる。その後、受け取られたインクは、アニロックス部材に再供給される。
【0020】
別の実施形態では、チャンバー・ブレード・システムは、インク着け部材の表面から湿し水を取り除くワイパーブレードを含むことができる。ドクターブレードがインクを取り除く前に、湿し水を取り除くようにチャンバーワイパーブレードを設定することができる。したがって、リザーバに受けられたインクには、湿し水がほとんど含まれてなく、アニロックス部材に再供給することができる、及び/又はアニロックス部材に供給するためインク溜め内のインクに注ぎ足すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、例示的な実施形態による、チャンバー・ブレード・システムを有する可変リソグラフィック印刷のキーレスインク塗布システムの説明図である。
【図2】図2は、例示的な実施形態による、可変リソグラフィック印刷のキーレスインク塗布の調量プロセスを示すフローチャートである。
【図3】図3は、例示的な実施形態による、可変リソグラフィック印刷のキーレスインク塗布の調量プロセスを示すフローチャートである。
【図4】図4は、例示的な実施形態による、可変リソグラフィック印刷のキーレスインク塗布のインク供給、調量、転写、清掃、及び再利用プロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ゴーストが発生する問題を低減させる、コンパクトな可変リソグラフィック印刷のキーレスインク塗布システムを提供する。方法、装置、及びシステムは、ドクターブレードで硬いインク転写用インク着け部材を清掃して、画像再形成可能面へインクを転写した後に残ったインクを取り除くことにより、ゴーストの発生を低減することができる、又はほとんど無くすことができる。取り除かれたインクを再利用して、インク塗布システムのアニロックスローラに再供給し、続いて、インク着けローラに転写することができる。インク塗布システムの各インク転写部材は大きくなる必要はなく、又は同じ大きさである必要もない。
【0023】
実施形態によるインク塗布システム、又はインカーサブシステムを可変リソグラフィック印刷のアーキテクチャの中に組み込んで、その外周面が順応可能な画像再形成可能面の層である画像生成部材を保持する中央ドラムの周りにインク塗布システムを配置することができる。用紙経路のアーキテクチャを、画像生成部材の周りに配置して媒体転写ニップを形成することができる。
【0024】
湿し水サブシステムを用いて、画像生成部材を保持する中央画像生成シリンダの画像再形成可能面の層に均一な湿し水の層を塗布することができる。デジタル気化ステップでは、デジタル気化システムにより、中央画像生成部材の表面に塗布された湿し水の層の特定な部分を気化させることができる。例えば、レーザによる図柄生成により、湿し水の層の一部を気化させることができる。
【0025】
インク塗布ステップでは、インク塗布システムから画像生成部材の画像再形成可能面の層にインクを転写することができる。転写されたインクは、この表面の湿し水が気化した部分に付着する。部分硬化ステップでは、照射により、転写されたインクを部分的に硬化させる。例えば、(複数の)UV硬化源を画像生成部材の周りに配置することができる。画像転写ステップでは、媒体転写ニップで、転写されたインクを、紙等の媒体に転写することができる。
【0026】
クリーニングシステムによって、中央画像生成シリンダの表面を清掃することができる。例えば、粘着性を有するクリーニングローラを用いて、中央画像生成部材の表面を清掃することができる。可変リソグラフィック印刷のプロセスでは、ゴーストの発生を防ぐために、その前の画像生成に用いたインクを、画像生成部材から取り除かなくてはならない。インク塗布システムから画像形成プレートに塗布される新しいインクには、前回のインク転写によるインク着けローラに付着したインクの厚みによる消耗履歴があってはならない。
【0027】
インク塗布システムは、アニロックスローラ等のインク塗布部材を含むことができる。アニロックスローラは、画像生成部材にインクを載せるための窪み、即ちセルをその表面に含むことができる。この窪みは、機械的に、又はレーザにより刻み込むことができ、大量のインクを含むように設定することができる。アニロックスローラを、インク塗布システム内で、インクチャンバ又はインク溜めの中にローラの表面を浸すよう設定することができる。アニロックスのドクターブレードをアニロックスローラの表面に接するよう配置して、アニロックスローラが処理方向に回転すると、インク溜めからローラに供給されたインクを平らにするようにすることができる。
【0028】
インク塗布システムは、柔らかい中間転写ローラを含むことができる。転写ローラは、柔らかく順応可能な表面を有することができ、この表面は、例えば、インクの化学溶剤と相性がいいEPDM、又はニトリゴム等のゴムから作られている。転写ローラを、アニロックスローラと第1のインク転写ニップを画定するように設定することができる。第1のインク転写ニップで、転写ローラにインクを調量することができる。第1のインク転写ニップで転写ローラにインクを調量するとき、転写ローラをアニロックスローラに押し付けてインクを押しつぶし、インクを広げ平らにすることができる。
【0029】
硬い表面を有するローラ等のインク着け部材を、柔らかい中間転写ローラと第2の転写ニップを画定するよう配置することができる。インク着けローラは、円筒のドラム又はその他の好適な部材でよい。インク着けローラは、硬い表面を有することができる。例えば、インクインク着け部材は、金属が含まれる表面を有するローラでよい。インク部材は、アルミニウムのドラムでよい。ドラムは、約2インチから約3インチまでの範囲の直径を有することができる。あるいは、インク着けローラは、クロムメッキ又はアルミナセラミック被覆を施した、高い耐久性を有する硬い外周面を有することができる。
【0030】
インク着け部材の硬い表面により、インク着け部材からインクを清掃するために、ドクターブレードを使用することができる。例えば、ドクターブレードをインク着けローラの表面に適用して、インクを画像生成部材に転写した後に残ったインクをインク着け部材から拭き取る、又は削ることができる。オフセットインクを用いてゴーストの発生しない可変データ印刷を行うには、インカーサブシステムのインク着けローラから、前のプロセスで画像形成プレートに転写されたインクによるインク履歴が、ほとんど取り除かれなくてはならない。インク着け部材の表面が硬いため、インク着け部材の表面を劣化させることなく、ドクターブレードを適用することができる。
【0031】
インクをインク着け部材に調量するとき、中間転写部材は、第2の転写ニップで圧力をかけてインクを押しつぶすことができる。第1の転写ニップと第2の転写ニップの両方で、転写部材の柔らかい表面により、調量されたインクの図柄が柔らかくなり、インクが広がり、平らになり易くなる。柔らかい中間転写部材を第1のニップと第2のニップに対して前後に反復して往復運動するよう設定することができる。ローラ等の部材を追加してインクを平にし易くすることができる。
【0032】
転写ローラ等の中間転写部材の直径は、インク着けローラ等のインク着け部材の直径と異なる大きさでよい。さらに、アニロックス部材、転写部材、及びインク着け部材は、一般には5インチ以上の従来のアニロックスローラの直径より著しく小さい直径を有することができる。したがって、実施形態によるインク塗布部材を有するインク塗布システムを、全体として小型で軽量にすることができ、従来のシステムと比較して、システム全体のコストも抑えることができる。
【0033】
中間部材は、第1の角速度で回転するように設定された転写ローラでよい。インク着け部材は、第2の角速度で回転するように設定されたインク着けローラでよい。第1の角速度と第2の角速度のうちの少なくとも1方を少しだけ調整して、インクの均一な層をインク着けローラの硬い表面に調量するための第2のインク転写ニップで、インクを平らにし、広がりやすくすることができる。さらに、アニロックス部材は、温度調整可能なアニロックスローラでよい。例えば、第1の転写ニップで、アニロックスローラの温度を調整して、インクが広がりやすく、平らにしやすい温度までインクを温めることができる。さらに、例えば、中間転写部材のかける圧力を調整することで、インク転写ニップにかかる圧力を調整して、特定な厚みのインクに対応できるようにすることができる。これらのパラメータを調整して、可変データリソグラフィック印刷で使用される画像生成部材の画像再形成可能面の層の上のインクの層の厚み、及び光学濃度を変更することができる。
【0034】
インクの厚みを変えることなく、又はその画像再形成可能面の層の上にインクの模様の履歴をつけることなく、画像再形成可能面の層の外周に接触させ、インクを転写させるように、インク着け部材を設定することができる。例えば、画像再形成可能面は、柔らかいシリコーンブランケット材料から作られ得る。
【0035】
実施形態によるチャンバー・ブレード・システムは、取り除かれたインクリザーバを含むことができる。インク着け部材から清掃されたインクを、取り除かれたインクリザーバに取り込むことができるように、チャンバー・ブレード・システムをインク着け部材に隣接して配置することができる。チャンバー・ブレード・システムは、インク溜めを含むことができる。このインク溜めがインクリザーバからインクを受けることができるように、インク溜めを取り除かれたインクリザーバと連通するように設定することができる。例えば、チャンバー・ブレード・システムを、上部と下部を有する空隙を画定するよう構築することができる。空隙の上部は、インク着けローラの真下に配置され得、インクリザーバを含むことができる。インク着けローラから取り除かれたインクは、落下して空隙の上部リザーバ内に入ることができる。インク空隙の下部は、インク溜めを含むことができる。空隙内のインクリザーバ及びインク溜めは、共通の底部を共有し、この底部にチャンバー・ブレード・システム内のインクが含まれる。リザーバに受け入れられたインクは、共通の底部に沿ってインクリザーバからインク溜めに流れることができる。
【0036】
アニロックス部材の一部を、インク溜め内のインクに浸すことができる。例えば、アニロックス部材は、インク溜め内のインクの中を回転するアニロックスローラでよい。これにより、インク溜めは、アニロックスローラの表面にインクを供給することができる。インクをアニロックスローラのセルに含ませることができ、ローラの表面上の余分なインクは、アニロックスのドクターブレードを用いて清掃することができる。インク塗布部材のセルに付着した余分なインクをインク塗布部材の表面から掻き落とすように、アニロックスのドクターブレードを設定することができる。チャンバーブレードをインクチャンバと結合させることができる。チャンバーブレード及びドクターブレードを、チャンバ内のインクを含むように設定することができる。例えば、チャンバーブレードと、ドクターブレードと、チャンバー・ブレード・システムの底部と、を組み合わせて、インクチャンバ内のインクを含むように設定することができる。
【0037】
チャンバー・ブレード・システムは、インク着け部材のドクターブレードを含むことでき、このドクターブレードはインク着け部材の表面と接触するよう設定される。インク着け部材のドクターブレードは、金属を含む材料から形成され得る。インク着け部材のドクターブレードは、硬いインク着け部材の表面からインクを削るために好適な硬い材料から形成され得る。インク着け部材のドクターブレードは、油をはじくことができ、例えば、TEFLON(登録商標)等のフッ化炭素の材料を含むことができる。実施形態によるチャンバー・ブレード・システムを有するインク塗布システムでは、インク着け部材のドクターブレードを、インク着け部材の一部と接触させて配置させることができ、インク着け部材は、チャンバー・ブレード・システムの取り除かれたインクリザーバの真上に、インクリザーバに面して配置される。例えば、インク着けローラが処理方向に回転すると、インク着け部材のドクターブレードはインク着け部材の表面に接触して、インク着け部材の表面からインクを取り除くことができ、これにより、インクがインクリザーバの中に落下する。
【0038】
インク着け部材に付着するインクが、インク着け部材から画像生成部材に転写される間、インク塗布部材の表面から湿し水をインク塗布部材に移すことができる。一実施形態では、インク着け部材のチャンバーブレードは、微孔性ニトリルブタジエンゴム(NBR)等の親水性の可塑性材料から作られ得、この材料で、インクから離れチャンバーブレードへの化学拡散による、水ベースの湿し水のインク着け部材を覆うインクの表面からの取り除きが容易になる。あるいは、ハイドロフルオロエーテルベースの湿し水をデジタル可変リソグラフィック印刷で使用する場合、インク着け部材のチャンバーブレードは、バイトン等の可塑性のあるフッ化炭素材料でよく、この材料により、インクの表面から湿し水を引き抜くことにより、ハイドロフルオロエーテルの湿し水をインクから選択的に取り除き易くなる。このように、インク着け部材のチャンバーブレード材料を可塑性のある油をはじく材料から作ることができ、この材料により、湿し水の化学溶剤に基づいて、選択的に湿し水が吸収され、取り除かれ易くなる。
【0039】
インク着け部材のチャンバーブレードを、インク着け部材の一部に接触するように設定することができ、このインク着け部材の一部には、画像生成部材とインク着け部材により画定された第3のインク転写ニップで、インク着け部材によりインクが転写された後に残ったインク及び湿し水が含まれている。例えば、処理方向に対して、インク着け部材のチャンバーブレードをインク着け部材の表面に接触させ、その表面から湿し水を取り除き、その後、インク着け部材のドクターブレードをインク着け部材の表面に接触させて、その表面から残余インクを取り除くように設定することができる。したがって、インク着け部材の表面から取り除かれたインクには、湿し水がほとんど含まれていない。湿し水をほとんど含まないインクには、インクの転写、又はインク印刷の品質を落とすことなく、インクをアニロックス部材へ再供給できるだけの、ごく少量の湿し水しか含まれ得ない。したがって、取り除かれたインクをインク溜めに継ぎ足して、アニロックス部材に再供給することができる実施形態において、湿し水がほとんど含まれないインクを供給することができる。その結果、ドクターブレードでインク着け部材を清掃することによりインク着け部材から取り除かれたインクを、再利用してインク塗布システムに再供給することができる。
【0040】
図1には、実施形態による可変リソグラフィック印刷のキーレスインク塗布に関する装置及びシステムが示されている。詳細には、アニロックスローラ102、中間転写ローラ105、及びインク着けローラ108を含むインク塗布装置が図1に示されている。図1には、デジタル画像生成ローラ110と共に配置されたインク塗布装置が示されている。図1には、ローラとして形成された構成部品が示されているが、その他の好適な形態、及び形状で実装することも可能である。
【0041】
アニロックスローラ102は円筒形の回転ローラであり、その表面には画定されたセル、即ち窪みを有する。このセルは、機械的に、又はレーザにより刻み込むことができる。アニロックスローラ102を供給インクに浸しインクの中を回転させて、セルの中にインクを取り込むことができる。アニロックスローラを加熱し温度制御を行うことができる。使用されるインクの特性(インクの粘度等)に基づいて、アニロックス部材の温度を調整・改善して、インク塗布システム内の1つ以上のインク転写ニップで、インクを平らにし広げることができる。
【0042】
中間転写ローラ105は、アニロックスローラ102と第1のインク転写ニップを画定することができる。アニロックスローラ102上のインクは、第1のインク転写ニップへ運ばれ、転写ローラ105上で均一な層に調量される。中間ローラ105は、アニロックスローラ102の直径より大きい直径、又は小さい直径を有することができる。転写ローラ105は、表面速度を一致させるためにアニロックスローラとの表面摩擦を介して、受動的に駆動させることができる。これにより、転写ローラの表面は、アニロックスローラの表面と同じ速度で回転するが、転写ローラの回転の角度方向はアニロックスローラ102の回転の角度方向とは反対である。
【0043】
中間転写ローラ105は、柔らかい表面を含むことができる。例えば、この表面は、ゴム、又はEPDM等のエラストーマを含むことができる。中間転写ローラ105は回転ドラムでよい、又は中間転写ローラは、アニロックスローラ102及びインク着けローラ108等の硬いインク着けローラと、インク転写ニップを画定するために好適なその他の部材でよい。柔らかい中間転写ローラ105は、硬いインク着けローラ108と、第2の転写ニップを画定することができる。中間転写ローラ105は、アニロックスローラ102から硬いインク着けローラ108に均一な層でインクを転写することができる。
【0044】
一実施形態では、ニップ内のインクに転写ニップで圧力を加えるために、アニロックスローラ102に対して中間ローラ105を押し付けるように設定することができる。これにより、中間ローラ105は、中間転写部材上で均一な層でインクを調量するために、インクを押しつぶして、平らに広げることができる。一実施形態では、第2のインク転写ニップでニップ内のインクに圧力を加えるために、転写ローラ即ち部材105を、インク着けローラ即ち部材108に対して押し付けるよう設定することができる。これにより、転写ローラ、即ち部材105は、インク着けローラ108の硬い表面の上でインクを均一な層に調量するために、インクを押しつぶして、平らに広げることができる。一実施形態では、中間ローラ105を、アニロックスローラ即ち部材102、及びインク着けローラ即ち部材108の高速回転と直交する方向で前後にゆっくりと往復運動するように設定することができる。
【0045】
一実施形態では、転写ローラ105等の転写部材は回転可能でよく、速度V1で回転するよう設定されており、この速度V1は、サーボモータにより直接設定される、又はアニロックスローラ102との摩擦により間接的に設定される。インク着けローラ108等のインク着け部材は回転可能でよく、速度V2で回転するよう設定され、この速度V2は、別のサーボモータにより設定される。一実施形態では、V2はV1と同じでよい。あるいは、V1とV2を少し変えて、制御された小さなズレを起こしてもよい。V1とV2のうちの1方、又は両方を調節して、第2の転写ニップで柔らかい中間転写ローラ105から硬いインク着けローラ108に転写されるインク層の均一性を向上させることができる。インク着けローラ108の直径は、柔らかい中間転写ローラ105の直径より、大きくても、又は小さくもてよい。
【0046】
図1に示す通り、インク着けローラ108は、画像生成部材110と第3のインク転写ニップを画定することができる。詳細には、インク着けローラ108は、画像生成部材110の順応可能な画像再形成可能表面の層112と第3のインク転写ニップを画定することができる。図1に示す通り、画像生成部材110はローラでよく、画像再形成可能面の層112が画像生成部材110の外周層を形成することができる。あるいは、この部材はシリンダ又はベルトを包むメッキを含むことができる。画像再形成可能面の層112は、柔らかく順応可能で画像再形成可能である。例えば、表面層112はシリコーンを含むことができる。画像生成部材110は、シリコーンの画像生成ブランケット等を含む表面層112を、載せることができる。画像生成ローラ110の表面層112は、耐摩耗性、可塑性を有することができる。デジタル画像生成部材即ちローラ110を、インク着けローラ108の回転方向と反対の方向に回転するように設定することができる。第3の転写ニップでは、硬いインク着けローラ108からデジタル画像生成ローラ110にインクを均一な層で調量することができる。
【0047】
硬いインク着けローラ108が、第3の転写ニップで画像再形成可能面の層112と接触してその間のインクを押しつぶし、そのインクを画像生成部材110の柔らかい表面層112に転写させると、いくらかのインクは、硬いインク着けローラ108上に残ったままであり得る。さらに、硬いインク着けローラ108が、第3のインク転写ニップでデジタル画像生成ローラ110と接触してその間のインクを押しつぶすとき、インクの転写前に画像再形成可能面の層112の上に付着した湿し水が、デジタル画像生成ローラ110から硬いインク着けローラ108に移る可能性がある。その結果、第3の転写ニップでインクをデジタル画像生成ローラ110に転写した後に、インク着けローラ108の表面上に残ったインクと湿し水が混ざる可能性がある。
【0048】
図1に示す通り、チャンバー・ブレード・システム120を、インク塗布装置のほとんど真下に配置することができる。チャンバー・ブレード・システム120は、チャンバーブレード123、アニロックスのドクターブレード125、及びインク着け部材のドクターブレード127を含むことができる。チャンバー・ブレード・システム120は、底部129を含むことができる。図1に示す通り、底部129、アニロックスのドクターブレード125、及びチャンバーブレード123は共に空隙を画定することができる。図示する通り、図1のチャンバー・ブレード・システム120の底129を、インク着けローラ108に隣接する底129の第1の端の位置から、アニロックスローラ102に隣接する第2の端の位置へ下向きに傾斜させることができる。空隙の上部は、取り除かれたインクリザーバに対応することができ、空隙の底部は、インクをアニロックスローラ102に供給するためのインク溜めに対応することができる。
【0049】
インク着けローラ108は硬い表面を有するため、インク着けローラのドクターブレード127を、インク着けローラ108の表面に接触させて、インク着けローラ108の表面から残余インクを取り除くように設定することができる。インク着けローラのドクターブレード127は、金属材料又はインク着けローラ108の硬い表面からインクを取り除くのに好適なその他の材料を含むことができる。チャンバー・ブレード・システム120は、チャンバーブレード123を含むことができる。チャンバーブレード123を、インク着けローラ108の表面に接するように設定することができる。水ベースの湿し水が使用されている場合、チャンバーブレード123は、可塑性のある親水性材料を含むことができ、したがって、親水性のチャンバーブレード123が、インク着けローラ108の表面から水ベースの湿し水130を逃がすことができる。あるいは、湿し水の化学溶剤が使用されている場合、チャンバーブレードは、使用される種類の湿し水を効果的に逃がすよう設計されたその他の材料から作ることができる。例えば、可変データリソグラフィック印刷システム内でハイドロフルオロエーテルをベースとする湿し水がインク拒絶層として使用される場合、はバイトン又はTEFLON(登録商標)等のフッ化物を含むフッ化炭素材料から作られたチャンバーブレード123を選択することができる。
【0050】
したがって、インク着けローラのドクターブレード127、及びチャンバーブレード123を有する実施形態では、ドクターブレード127により取り除かれたインク132をインクリザーバで受けることができる。供給インク135に注ぎ足すため、インクリザーバ内のインクをインク溜めに流す、又は移すことができる。供給インク135は、再利用される取り除かれたインク132を含むことができ、この供給インク135をアニロックスローラ102へ供給することができる。残余インクをインク着けローラ108の表面から取り除く前に、インク着けローラ108から湿し水がほとんど取り除かれるため、再利用される取り除かれたインク132には、インク溜めの中の供給インク135に注ぎ足された後、好都合にも湿し水がほとんど含まれない。開示している通り、チャンバーブレードを実装して湿し水を逃がしたとしても、集められたインク内にはごく少量の湿し水が存在し得る。
【0051】
図1に示す通り、アニロックスローラ102がインク溜めを通して回転すると、アニロックスのドクターブレード125がアニロックス部材102の表面に接触して、アニロックス部材102のセル内のインクを平にするように設定することができる。アニロックスのドクターブレード125、チャンバー・ブレード・システムの底部129、及び親水性のチャンバー・ブレード・システムを構築し配置して、取り除かれたインクリザーバ、及び/又はインク溜め内のインクを、共に含ませることができる。チャンバー・ブレード・システム120は、アニロックスローラ102、及びインク着けローラ108の両方に架かることができ、この構成により、インク塗布システム全体のサイズを小さくし、したがってコストを抑えることができる。別の実施形態では、エアーナイフ(図示せず)を実装して、残余湿し水を選択的に気化させて取り除くことができる。インク着けローラから、及び/又はインク着けローラ上のインクの表面から、湿し水を取り除くために、インク着けローラの表面の周辺近くに空気流を直接吹き付けるようにエアーナイフを設定することができる。
【0052】
図2には、実施形態による可変リソグラフィック印刷のキーレスインク塗布の調量方法が示されている。詳細には、この調量方法は、ローラ等のアニロックス部材からインク転写部材にインクを転写するステップ(S201)を含むことができ、このインク転写部材は、柔らかい回転ローラでよい。アニロックスローラと転写ローラは、第1のインク転写ニップを画定することができる。ニップのインクに圧力をかけて、転写ローラの表面上でインクの均一な層の転写を可能にすることができる(S201)。
【0053】
方法は、で転写ローラからインク着けローラ等のインクインク着け部材にインクを転写するステップ(S205)を含むことができる。転写ローラは、例えば、ゴムを含む柔らかい表面を有し、インク着けローラは、例えば、金属を含む硬い表面を有する。インク着け部材及び転写部材は、第2のインク転写ニップを画定することができ、この第2のインク転写ニップで、インク着けローラ及び転写ローラにより、インクが押しつぶされる(S205)。
【0054】
ニップでかけられる圧力は、調整可能でよい。例えば、中間転写部材即ちローラは、アニロックスローラ及び硬いインク着けローラのうちの少なくとも1方に対して押し付けるために、可動式でよい。図3には、実施形態による可変リソグラフィック印刷のキーレスインク塗布の調量方法が示されている。詳細には、方法は、アニロックスローラから順応可能な表面を有するインク転写ローラに、インクを転写するステップを含むことができ、これにより、アニロックスローラと転写ローラにより画定された第1の転写ニップでインクが押しつぶされる(S301)。調量中、転写ニップで転写ローラをアニロックスローラに対して押し付けて、インクに対して圧力をかける、又は、例えば、圧力をせる強くすることができる(S303)。
【0055】
方法は、転写ローラから硬い表面を有するインク着けローラにインクを転写するステップ(S305)を含むことができる。したがって、転写ローラ及び硬いインク着けローラにより画定された第2のインク転写ニップで、インクを押しつぶすことができる。第2の転写ニップで、転写ローラを硬いインク着けローラとインクに対して押し付けて、インクに対して圧力をかける、又は、圧力をさせ強くさせることができる(S307)。S301〜S307は、転写ローラを用いて実行することができ、この転写ローラは、図1に示すローラの運動と直交する方向に前後にゆっくりと往復運動するよう設定されている。この直交する方向の往復運動により、アニロックスローラから受けるインクをのばして、セルの構造による点欠陥が取り除くことができる。
【0056】
図4には、可変リソグラフィック印刷のキーレスインク塗布の方法が示されており、方法には、実施形態によるインクの供給、調量、転写、清掃、及び再利用の方法が含まれる。詳細には、方法は、アニロックスローラから、順応可能な表面を有するインク転写ローラに、インクを転写するステップ(S401)を含むことができる。アニロックスローラ及び転写ローラは、第1のインク転写ニップを画定することができ、アニロックス部材から転写部材へインクを調量する間に、この第1のインク転写ニップで、インクを押しつぶし広げることができる(S401)。
【0057】
転写ローラの表面に、均一な層に調量されたインクを、転写ローラから硬いインク着けローラに転写することができる(S405)。インク着けローラは、硬い表面を有し得る。例えば、金属を含むことができる。順応可能な転写ローラ及び硬いインク着けローラにより画定された第2の転写ニップで、インクを押しつぶして、インク着けローラの上にインクの均一な層を調量することができる。
【0058】
硬いインク着けローラから、デジタル画像形成プレート又はローラ等の画像生成部材に、インクを転写することができる(S420)。硬い転写ローラ及び画像生成ローラは、第3のインク転写ニップを画定できる。画像生成部材は、柔らかく順応可能な画像再形成可能面の層を含み、この層の上にインク着けローラからのインクが転写される。例えば、画像生成部材の表面層は、シリコーン又はフルオロシリコーンを含むことができる。S426で示す通り、方法は、インク着けローラから画像生成ローラにインクが転写された(S420)後に残ったインクを、インク着けローラの表面から清掃するステップを含むことができる。インク着けローラの表面からインクを削る、又は拭き取る、インク着けローラのドクターブレードを用いて、硬いインク着けローラの表面からインクを清掃することができる。別の実施形態では、方法は、硬いインク着けローラの表面からインクを取り除く(S420)前に、残余インクから湿し水を取り除くステップを含むことができる。例えば、水ベースの湿し水が使用される場合、親水性のチャンバーブレードをインク着けローラの近くに配置させて、画像生成ローラに画像を転写させた後に、インク着けローラ上の残余インクに接触させることができる。チャンバーブレードは、残余インクから水ベースの湿し水を逃がすことができる。
【0059】
S428に示す通り、方法は、インク着けローラのドクターブレードを用いて、硬いインク着けローラの表面から清掃された残余インクを、チャンバー・ブレード・システムのリザーバの中に集めるステップを含むことができる。インク着けローラからインクを取り除く(S420)前に、チャンバーブレードを用いて、残余インクから湿し水を取り除く実施形態では、集められたインクには、ほとんど湿し水が含まれていない。
【0060】
S430に示す通り、方法は、チャンバー・ブレード・システムのインク溜めからアニロックスローラにインクを追加、又は供給するステップを含むことができる。インク溜めは、取り除かれたインクリザーバと連通することができる。したがって、インクリザーバは硬いインク着けローラから取り除かれたインクを集めることができ、集められたインクをインク溜めに移して、アニロックスローラに再供給することができる。インク溜めは、新しい未使用のインクと、再利用されるインクとを混合して含み、それをアニロックスローラに供給することができる(S430)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変リソグラフィック印刷のキーレスインク塗布を行う方法であって、
順応可能な表面を有する転写ローラから、硬いインク着けローラ上にインクの均一な層を調量するステップと、
前記硬いインク着けローラから、可変データのリソグラフィック印刷用の画像再形成可能面の層に前記均一な層のインクを直接転写するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記硬いインク着けローラの表面を清掃するステップであって、前記清掃するステップには、前記インク着けローラの表面からインクを取り除くことが含まれる、清掃するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記清掃するステップには、
前記インク着けローラの表面から湿し水を取り除くことであって、前記湿し水は、前記画像再形成可能面の層から前記インク着けローラに転写される、取り除くことをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記インクを取り除くことが、前記インク着けローラの硬い表面にドクターブレードを接触させ、これにより前記インク着けローラからインクが取り除かれることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記湿し水を取り除くことには、
前記インク着けローラの表面にチャンバーブレードを接触させることであって、前記チャンバーブレードは、前記インク着けローラの表面からインクを取り除く前に、前記インク着けローラの前記表面から、選択的に湿し水を逃がすよう設定された材料を含む、接触させることをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
可変リソグラフィック印刷のキーレスインク塗布装置であって、
インクを運ぶよう設定されたアニロックス部材と、
順応可能な表面を有し、前記アニロックス部材と第1の転写ニップを画定するよう設定された転写部材と、
硬い表面を有し、前記転写部材と第2の転写ニップを画定するよう設定されたインク着け部材と、
順応可能な画像再形成可能面の層を有し、前記画像再形成可能面の層が前記インク着け部材と第3の転写ニップを画定するよう設定された、画像生成部材と、を含む装置。
【請求項7】
前記インク着け部材の表面と接触して、前記インク着け部材の表面からインクを取り除くよう設定されたインク着け部材のドクターブレードを有するチャンバー・ブレード・システムを含む請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記チャンバー・ブレード・システムが、
前記インク着け部材を覆うインクの表面に接触し、前記インク着け部材のドクターブレードにより、前記インク着け部材の表面からインクが取り除かれる前に、前記インク着け部材の前記インクに覆われた表面から湿し水を取り除くよう設定されたチャンバーブレードをさらに含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記インク着け部材の前記表面から前記インクを取り除く前に、空気流を前記インク着け部材の前記表面の周辺近くに直接吹き付けて前記インク着け部材から湿し水を取り除くよう設定されたエアーナイフを含む請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記チャンバー・ブレード・システムが、
前記取り除かれたインクリザーバからの取り除かれたインクを受けるよう設定されたインク溜めと連通する取り除かれたインクリザーバであって、前記アニロックス部材が前記インク溜め内のインクに浸されて前記インクを取り込む、取り除かれたインクリザーバをさらに含む、請求項8に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−78944(P2013−78944A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−207170(P2012−207170)
【出願日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】