説明

デジタルビデオ符号化処理における可変精度ピクチャ間タイミング指定方法及び装置

【課題】デジタルビデオ符号化処理における可変精度ピクチャ間のタイミング指定方法及び装置が開示されている。本発明は、近くのビデオピクチャ同士の相対的なタイミングをとても効率の良い手法で符号化できるシステムを開示している。
【解決手段】1つの実施例では、現在のビデオピクチャ105と近傍のビデオピクチャの間の表示時間差が決定される。そして表示時間差はビデオピクチャのデジタル表示に符号化される180。好適な実施例では、上記近傍のビデオピクチャは、直前に伝送された記録ピクチャである。符号化の効率アップのために、表示時間差は可変長符号化システムまたは算術コーディングを使用して符号化される。他の実施例では、表示時間差は、伝送ビット数を減ずるために2の累乗として符号化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマルチメディア圧縮システムの分野に関連している。特に、本発明は可変精度のピクチャ間タイミングを指定する方法及び装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
デジタル式の電子媒体フォーマットはついに、アナログ式の電子媒体フォーマットに取って代わるところまで来ている。デジタルコンパクトディスク(CD)はずっと以前にアナログ式のビニール製記録媒体に取って代わっている。アナログ式の磁気カセットテープは益々に減少してきている。第2及び第3世代のデジタルオーディオシステム(例えばミニディスクやMP3(MPEGオーディオのレイヤ3)は今日では、第1世代のデジタルオーディオフォーマットのコンパクトディスクに代わって市場を支配しつつある。
ビデオ媒体は、オーディオに比べゆっくりとデジタル式記録及び伝送フォーマットに移行している。その大きな理由はデジタルフォーマットで正確にビデオ(画像)を表現するためには膨大な量のデジタル情報が必要だからである。ビデオを正確に表現・表示するために膨大な量のデジタル情報が必要であるということは、非常に大容量のデジタル記録システムと高帯域伝送システムが必要であることを意味する。
【0003】
しかし、ビデオは現在、急速にデジタル記録及び伝送フォーマットに移行している。より早いコンピュータプロセッサ、高密度記録システム、並びに、新しい高効率圧縮及び符号化アルゴリズムにより、デジタルビデオの価格は一般消費者が購入できるレベルになった。デジタルビデオシステムであるDVDは近年最もハイスピードで消費者に売れた電子製品の1つである。DVDは、高い画像品質、とても優れた音声品質、利便性及び付加的な機能を有しているので、予め記録されているビデオを再生するシステムとして選択されるようになり、急速にビデオカセットレコーダ(VCR)に取って代わってきた。旧式のアナログNTSC(米国のNational Television Standards Committee)ビデオ伝送システムは現在、デジタルATSC(Advanced Television Standards Committee)ビデオ伝送システムにその地位を奪われつつある。
【0004】
コンピュータシステムは長年、色々な種類のデジタルビデオ符号化フォーマットを使用してきた。コンピュータシステムにより使用されてきた最良のデジタルビデオ圧縮及び符号化システムの中で、MPEG(Motion Pictures Expert Group)として一般に知られているものによりサポートされているデジタルビデオシステムがある。MPEGの3つの最も良く知られ且つ広く使用されているデジタルビデオフォーマットはMPEG−1、MPEG−2及びMPEG−4と称されている。ビデオCD(VCD)や初期の一般向けデジタルビデオ編集システムは初期のMPEG−1形式のデジタルビデオ符号化フォーマットを使用していた。DVDやディッシュネットワーク(Dish Network)の直接放送衛星(DBS)テレビ放送システムは、より高い品質のMPEG−2形式のデジタルビデオ圧縮及び符号化システムを使用している。MPEG−4の符号化システムは最新のコンピュータを用いたデジタルビデオエンコーダやこれに付随するデジタルビデオプレーヤに用いられることが多くなった。
【0005】
MPEG−2形式やMPEG−4形式では、一連のビデオフレームまたはビデオフィールドを圧縮し、圧縮したフレームやフィールドをデジタルビットストリームに符号化している。ビデオフレームやフィールドをMPEG−2やMPEG−4形式で符号化する場合、ビデオフレームやフィールドを複数のマクロブロックからなる長方形グリッドに分割される。各マクロブロックは独立して圧縮及び符号化される。
【0006】
ビデオフレームやフィールドを圧縮するときは、MPEG−4形式では、フレームやフィールドを1つタイプ(3つのタイプのうちの1つ)の圧縮フレームまたはフィールドに圧縮する。3つのタイプとは、Iフレーム、順方向型のPフレーム及び双方向型のBフレームである。Iフレームは独立したビデオフレームを、他のビデオフレームを参照することなく、完全に独立に符号化する。Pフレームは前に表示されたビデオフレームを参照しながらビデオフレームを決める。Bフレームは現在のフレームの前に表示された(過去の)ビデオフレームと現在のフレームの後に表示される(未来の)ビデオフレームとを参照しながらビデオフレームを決める。PフレームとBフレームは、ビデオ情報の冗長性を効率良く使用しているので、通常、最も良い圧縮を行うことができる。
【発明の概要】
【0007】
本明細書には、デジタルビデオ符号化処理における可変精度ピクチャ間タイミングを指定する方法と装置が開示されている。特に本発明は近傍のビデオピクチャ同士の相対的タイミングを非常に効率良い手法で符号化することができるシステムを開示している。1つの実施例では、現在のビデオピクチャと近傍のビデオピクチャとの表示時間差が決められる。この表示時間差はその後、ビデオピクチャのデジタル表示に符号化される。好ましい実施例では、上記近傍のビデオピクチャは、直前に伝送された記録ピクチャである。
符号化の効率アップのために、表示時間差は可変長符号化システムまたは算術符号化処理を使用して符号化されてもよい。別の実施例では、表示時間差は伝送ビット数を減ずるために2のべき乗として符号化される。
本発明のその他の目的、特徴及び利点・効果は添付図面と以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の目的、特徴及び利点は、当事者であれば下記の詳細な説明から理解できるであろう。以下の詳細な説明において、
【図1】デジタルビデオエンコーダシステムの1例を示すハイレベルブロック図である。
【図2】ピクチャ表示順に並べた一連のビデオピクチャを示しており、ピクチャとピクチャをつなぐ矢印は動き補償を使用した場合のピクチャ同士の従属性を表現している。
【図3】図2のビデオピクチャを好ましいピクチャ伝送順に並べた状態を示しており、ピクチャとピクチャをつなぐ矢印は動き補償を使用した場合のピクチャ同士の従属性を表現している。
【図4】互いに参照し合うビデオピクチャ同士の距離が2のべき乗で設定された場合のビデオピクチャを示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここでは、マルチメディア圧縮及び符号化システムにおける可変精度ピクチャ間タイミングの指定方法及び装置が開示される。以下の詳細な説明において、本発明の理解のために特定の用語等が使用されている。しかし、当事者であれば、下記の特定の形式、数値等は本発明の実施に必ずしも必須のものでないことは理解できるであろう。例えば、本発明はMPEG−4形式のマルチメディア圧縮及び符号化システムに関連して説明されているが、同様な技術は容易に他の形式の圧縮及び符号化システムに適用することができる。
【0010】
マルチメディア圧縮及び符号化処理の概要
図1は典型的なデジタルビデオエンコーダ100のハイレベルブロック図であり、当該技術分野では周知のものである。デジタルビデオエンコーダ100は、入力ビデオフレームストリーム105をブロック図の左において受信する。各ビデオフレームは離散コサイン変換(DCT)ユニット110により処理される。フレームは独立して処理されてもよいし(イントラフレーム符号化処理)、動き補償ユニットから受信される他のフレームからの情報を参照して処理されてもよい(インターフレーム符号化処理)。次に、量子化(Q)ユニット120がDCTユニット110からの情報を量子化する。最後に、量子化されたビデオフレームが、エントロピーエンコーダ(H)ユニット180により符号化され、符号化されたビットストリームを生成する。エントロピーエンコーダユニット180は可変長符号化(VLC)システムを使用してもよい。
【0011】
インターフレーム符号化処理されたビデオフレームは他の近傍ビデオフレームを参照して決められるので、デジタルビデオエンコーダ100は、インターフレームを符号化できるように、デコードされた各フレームがデジタルビデオデコーダの中でどのように現れるかのコピーを作る必要がある。従って、デジタルビデオエンコーダ100の下部は実際にはデジタルビデオデコーダシステムである。つまり、逆量子化(Q−1)ユニット130がビデオフレーム情報の量子化結果の逆数を作り、逆DCT(DCT−1)ユニット140がビデオフレーム情報の離散コサイン変換値の逆数を作る。全ての離散コサイン変換係数がiDCTから復元された後、動き圧縮ユニットがこの情報を動きベクトルと共に使用して、符号化フレームを復元する。復元された符号化フレームは、次のフレームの動き予測の参照フレームとして使用される。
【0012】
次に、デコードされたビデオフレームはインターフレーム(PフレームまたはBフレーム)を符号化するのに用いられる。インターフレームはデコードされたビデオフレームの情報に対応して決められる。つまり、動き補償(MC)ユニット150と動き予測(ME)ユニット160は、動きベクトルを決定し、差分値を生成するのに使用される。動きベクトルと差分値は、インターフレームを符号化する際に用いられる。
【0013】
レートコントローラ190はデジタルビデオエンコーダ100の多くの部品から情報を受け取り、当該情報を用いて各ビデオフレームにビット量を割り当てる。レートコントローラ190は、所定の規制に合った最高品質のデジタルビデオビットストリームが生成されるようにビット量を割り当てなければならない。つまり、レートコントローラ190は、バッファにオバーフロー(格納できる量を超えた情報を伝送することによりデコーダのメモリの許容量を超えること)を起こさせることなく、あるいは、バッファにアンダーフロー(デコーダに表示ビデオフレームが不足してしまうような遅い速度でビデオフレームを伝送すること)を起こさせることなく、最高品質の圧縮ビデオストリームを生成しようとする。
【0014】
マルチメディア圧縮及び符号化処理の概要
幾つかのビデオ信号では、連続するビデオピクチャ(フレームまたはフィールド)の間の時間は一定ではない(尚、本明細書では、ビデオピクチャという用語をビデオフレームまたはビデオフィールドの意味で使用している)。例えば、幾つかのビデオピクチャは伝送帯域制限により欠落させられる場合がある。また、ビデオタイミングも、カメラの不均一性のため、あるいは、スローモーションやファーストモーション等の特殊な処理のために、一定ではない。幾つかのビデオストリームでは、もとのビデオソースが不均一なピクチャ間時間を単に設計上の理由で有している場合もある。例えば、コンピュータグラフィックアニメーション等の合成ビデオは、不均一なタイミングを有している。なぜなら、均一なビデオ記録システム(例えば、ビデオカメラシステム)では任意のビデオタイミングを作ることができないからである。フレキシブルなデジタルビデオ符号化システムは不均一なタイミングで処理を行うことができなければならない。
多くのデジタルビデオ符号化システムはビデオピクチャを複数のマクロブロックからなる長方形グリッドに分割する。ビデオピクチャの各マクロブロックは独立して圧縮され符号化される。幾つかの実施例では、マクロブロックのサブブロック(画素ブロックとして知られている)が用いられる。このような画素ブロックはそれ自身の動きベクトル(内挿されたもの)を有することもある。本発明の教示はマクロブロックと画素ブロックに等しく適用できるが、この明細書ではマクロブロックについて説明をする。
【0015】
幾つかのビデオ符号化標準(例えば、ISOのMPEG標準やITUのH.264標準)は異なるタイプの予測マクロブロックを使用してビデオピクチャを符号化している。一例を挙げると、マクロブロックは以下の3つのタイプのうちの1つになる。
1.Iマクロブロック。 イントラ(I)マクロブロックが符号化処理の際に他のビデオピクチャからの情報を全く使用しない。これは、完全な自己定義型である。
2.Pマクロブロック。 順方向型の予測(P)マクロブロックが1つの前のビデオピクチャからのピクチャ情報を参照する。
3.Bマクロブロック。 双方向型の予測(B)マクロブロックが1つの前の(過去の)ピクチャと1つの後の(未来の)ビデオピクチャからの情報を使用する。
【0016】
もしビデオピクチャの全てのマクロブロックがイントラマクロブロック(Iマクロブロック)であれば、ビデオピクチャはイントラフレーム(Iフレーム)である。もしビデオピクチャが順方向の予測マクロブロック(つまり、イントラマクロブロック)しか含まないなら、このビデオピクチャはPフレームとして知られているものである。もしビデオピクチャが双方向の予測マクロブロックを含むなら、このビデオピクチャはBフレームとして知られているものである。説明を簡単にするために、この明細書ではピクチャ内の全てのマクロブロックが同じタイプである場合を考える。
符号化されるビデオピクチャのシーケンスの一例は以下のようになる。
1011121314...
ここで、I、P及びBという文字は、ビデオピクチャがIフレーム、Pフレーム及びBフレームであることを意味し、数字はビデオピクチャシーケンスのビデオピクチャのカメラ順序を示す。カメラ順序とは、カメラがビデオピクチャを記録する順であり、従って、ビデオピクチャが表示されるべき順序(表示順)でもある。
【0017】
上記した一連のビデオピクチャの例が図2に図式的に示されている。図2では、記録ピクチャ(この例ではIフレームまたはPフレーム)からのマクロブロックを他のピクチャの動き補償予測に使用することを矢印で示している。
図2の場合、他のピクチャからの情報はイントラフレームビデオピクチャI1を符号化する際に全く使用されていない。ビデオピクチャP5が、前のビデオピクチャI1からのビデオ情報を符号化の際に使用しているPフレームであり、矢印がビデオピクチャI1からビデオピクチャP5に延びている。ビデオピクチャB2、ビデオピクチャB3及びビデオピクチャB4は全て、符号化の際、ビデオピクチャI1とビデオピクチャP5からの情報を使用しており、矢印はビデオピクチャI1とビデオピクチャP5からビデオピクチャB2、ビデオピクチャB3及びビデオピクチャB4にそれぞれ延びている。上述したように、ピクチャ間時間は一般に同一ではない。
Bピクチャは未来のピクチャ(後で表示されるピクチャ)からの情報を使用しているので、伝送順序は通常、表示順序と異なる。つまり、他のビデオピクチャを構成するのに必要なビデオピクチャがまず伝送されなければならない。上記したシーケンスについて言えば、伝送順は以下のようになるだろう。
1012111413...

【0018】
図3は図2からのビデオピクチャの上記伝送順を模式的に示した図である。ここでも、図中の矢印は記録ビデオピクチャ(この例ではIフレームまたはPフレーム)からのマクロブロックが他のビデオピクチャの動き補償予測に使用されていることを表している。
図3に示されるように、このシステムはまず、他のフレームに依存していないIフレームI1を伝送する。次に、このシステムは、ビデオピクチャI1に依存するPフレームビデオピクチャP5を伝送する。ビデオピクチャB2はビデオピクチャP5の前に表示されるものであるが、このシステムは、ビデオピクチャP5の後にBフレームビデオピクチャB2を伝送する。その理由は、B2をデコードする時がきたとき、デコーダは、ビデオピクチャB2をデコードするのに必要なビデオピクチャI1とP5の中の情報をすでに受信して格納していることになるからである。同様に、ビデオピクチャI1とP5を使用して次のビデオピクチャB3とビデオピクチャB4をデコードする準備ができていることになる。レシーバ兼デコーダは、適正な表示ができるようにビデオピクチャシーケンスを記録する。この動作において、Iピクチャ及びPピクチャはしばしば記録ピクチャ(stored picture)と称される。
【0019】
Pフレームピクチャの符号化は通常、動き補償を使用し、動きベクトルがピクチャの各マクロブロックについて計算される。計算された動きベクトルを用いて、上記前のピクチャ中の画素を移動させることにより予測マクロブロック(Pマクロブロック)を作ることができる。Pフレームピクチャの実際のマクロブロックと予測マクロブロックとの差が、符号化されて伝送される。
各動きベクトルも、予測符号化処理により伝送してもよい。例えば、動きベクトル予測は、近傍の動きベクトルを使用して行ってもよい。この場合、実際の動きベクトルと予測動きベクトルの差が、符号化されて伝送される。
【0020】
各Bマクロブロックは2つの動きベクトルを使用する。1つは上記前のビデオピクチャを参照する第1動きベクトルであり、もう1つは後の(未来の)ビデオピクチャを参照する第2動きベクトルである。これら2つの動きベクトルから、2つの予測マクロブロックが計算される。そして2つの予測マクロブロックは所定の関数を利用して組み合わせられ、最終的な予測マクロブロックが作られる。上記したように、Bフレームピクチャの実際のマクロブロックと最終的な予測マクロブロックの差が符号化されて伝送される。
【0021】
Pマクロブロックの場合と同じように、Bマクロブロックの各動きベクトル(MV)を、予測符号化処理により伝送してもよい。つまり、この場合、予測動きベクトルは、近傍の動きベクトルを使用して形成される。そして、実際の動きベクトルと予測動きベクトルの差が符号化されて伝送される。
しかし、Bマクロブロックの場合、最も近い記録ピクチャマクロブロックの動きベクトルから動きベクトルを内挿する機会がある。このような内挿は、デジタルビデオエンコーダとデジタルビデオデコーダの双方で実行される。
この動きベクトル内挿は、カメラが静止背景にゆっくり近づいたり遠のいたりするときのビデオシーケンスのビデオピクチャに非常に有効である。事実、このような動きベクトル内挿はそれ単独で利用してもよいくらいである。つまり、これは、内挿を使用して符号化される上記Bマクロブロック動きベクトルに関して、差分情報を計算したり伝送したりする必要が無いことを意味する。
【0022】
次の説明に進むために、上記の場合、ピクチャiとピクチャjの間のピクチャ間表示時間をDi,jと表現する。つまり、ピクチャの表示時間(時刻)がTiとTjであるとすると
、以下のようになる。
i,j = Ti − Tj
これから以下の式が導き出せる。
i,k = Di,j + Dj,k
i,k = −Dk,i
但し、Di,jは負の値であるときもある。
よって、もしMV5,1がI1を参照するP5マクロブロックの動きベクトルであるならば、B2、B3及びB4の対応マクロブロックについては、I1とP5を参照する動きベクトルはそれぞれ以下のように内挿される。
MV2,1 = MV5,1*D2,1/D5,1
MV5,2 = MV5,1*D5,2/D5,1
MV3,1 = MV5,1*D3,1/D5,1
MV5,3 = MV5,1*D5,3/D5,1
MV4,1 = MV5,1*D4,1/D5,1
MV5,4 = MV5,1*D5,4/D5,1

尚、表示時間の比率が動きベクトル予測に使用されているので、表示時間の絶対値は不要である。よって、相対的な表示時間をDi,j表示時間値に使用することができる。
【0023】
このようなモデル(筋書き)を、例えばH.264標準で一般化することができる。一般化する場合、PピクチャまたはBピクチャは前に伝送されてきたピクチャをその動きベクトル予測に使用してもよい。従って、上記の場合、ピクチャB3はピクチャI1とピクチャB2をその予測に使用してもよい。さらに、動きベクトルは外挿されてもよい(内挿に限定されない)。この場合、以下のようになる。
MV3,1 = MV2,1*D3,1/D2,1

このような動きベクトル外挿(または内挿)を、動きベクトルの予測符号化のための予測プロセスに使用してもよい。
【0024】
いずれせよ、ピクチャ間時間が不均一な場合の問題は、Di,jの相対的な表示時間値をレシーバに伝送することであり、これが本発明の中心課題である。本発明の1つの実施例では、第1ピクチャ後の各ピクチャについて(毎に)、現在のピクチャと直前に伝送された記録ピクチャとの表示時間差が伝送される。エラー耐性のために、伝送はピクチャ内で数回繰り返し行われることもある(例えば、H.264標準またはMPEGのいわゆるス
ライスヘッダで)。もし全てのスライスヘッダがなくなったならば、多分、情報を復号するためになくなったピクチャに依存する他のピクチャも、復号することができなくなるだろう。
従って、上記の場合、以下のものを伝送する。
5,1D2,5D3,5D4,5D10,5D6,10D7,10D8,10D9,10D12,10D11,12D14,12D13,14...

【0025】
動きベクトル予想のためのDi,jの精度条件はピクチャにより異なる。例えば、2つのPフレームピクチャP5とP7の中間に1つのBフレームピクチャB6しかない場合、以下のものをだけを伝送すれば十分である。
7,5 = 2 と D6,7 = −1

ここで、Di,j表示時間値は相対的な時間値である。もしそうではなく、ビデオピクチャB6がビデオピクチャP5とビデオピクチャP7の距離の1/4しか離れていなければ、伝送すべき適切なDi,j表示時間値は以下のようになる。
7,5 = 4 と D6,7 = −1

尚、上記した2つの事例では、ビデオピクチャB6とビデオピクチャP7の間の表示時間が表示時間の1単位(1表示時間単位)とし使用され、ビデオピクチャP5とビデオピクチャP7の間の表示時間差は4表示時間単位になる。
【0026】
一般に、除数が2のべき乗であるなら、動きベクトル予想はあまり複雑にはならない。このことは、図4に示されるように2つの記録ピクチャの間のDi,j(ピクチャ間時間)が2のべき乗とされるなら、本明細書の実施例で容易に達成できる。あるいは、予測の手法として、全ての除数を2のべき乗に切り捨てたり、切り上げたりしてもよい。
ピクチャ間時間が2のべき乗である場合、もしピクチャ間時間の全ての値の代わりに2の整数乗の値(べき数)だけが伝送されるとしたら、データビットの数を減らすことができる。図4はピクチャ同士の間の距離が2のべき乗とされた場合を図式的に示している。この場合、ビデオピクチャP1とビデオピクチャP3の間のD3,1表示時間値の2は1として伝送され(なぜなら21=2)、ビデオピクチャP7とビデオピクチャP3の間のD7,3表示時間値の4は2として伝送される(なぜなら22=4)。
【0027】
条件によっては、動きベクトル内挿は使用されない。しかし、ビデオピクチャの表示順をレシーバ・プレーヤシステムに伝送して、レシーバ・プレーヤシステムがビデオピクチャを適正な順序で表示できるようにする必要はある。この場合、実際の表示時間に拘わらず、Di,jとしては単純な有符号整数値で十分である。幾つかの応用例では、符号だけでも十分である。
ピクチャ間時間Di,jは単に、単純な符号付整数値として伝送されることもある。しかし、多くの方法を利用してDi,j値を符号化して更なる圧縮をしてもよい。例えば、可変符号長を伴う符号ビットは比較的簡単に実行でき、符号化効率も良い。
【0028】
そのような可変長符号化システムの一例がUVLC(universal variable length code)として知られている。UVLC可変長符号化システムは下記のコード語により示される。
1 = 1
2 = 010
3 = 011
4 = 00100
5 = 00101
6 = 00110
7 = 00111
8 =0001000

ピクチャ間時間を符号化する別の方法としては、算術符号化処理を利用するものがある。典型的には、算術符号化処理は条件付確率を用いてデータビットを非常に高い圧縮度で圧縮する。
【0029】
従って、本発明は、ピクチャ間表示時間を符号化して伝送するシンプルだがパワフルな方法を提案・提供している。ピクチャ間表示時間の符号化は、可変長符号化または算術符号化を使用することにより非常に効率的に行うことができる。さらに、所望の精度を選択することができ、ビデオデコーダの要求に応えられるようにすることができる。
上述の記載においては、マルチメディア圧縮及び符号化システムにおける可変精度ピクチャ間時間指定システムを説明した。尚、当事者であれば、本発明の範囲から離れることなく、本発明の構成要素の材料や構成等に変更を為すことができるであろう。
【符号の説明】
【0030】
100 デジタルビデオエンコーダ
105 入力ビデオフレームストリーム
110 離散コサイン変換(DCT)ユニット
120 量子化(Q)ユニット
130 逆量子化(Q−1)ユニット
140 逆DCT(DCT−1)ユニット
150 動き補償(MC)ユニット
160 動き予測(ME)ユニット
180 エントロピーエンコーダユニット
190 レートコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルビデオ情報を指定する方法であって、
第1ビデオピクチャと近傍ビデオピクチャの間の第1表示時間差を決定し、
前記第1ビデオピクチャと前記第1表示時間差を第1デジタルビデオピクチャに符号化する、ことを特徴とするデジタルビデオ情報を指定する方法。
【請求項2】
前記第1ビデオピクチャと前記第1表示時間差を伝送することをさらに含む請求項1記載のデジタルビデオ情報を指定する方法。
【請求項3】
前記近傍ビデオピクチャは、直前に伝送された記録ピクチャからなる請求項1記載のデジタルビデオ情報を指定する方法。
【請求項4】
前記第1表示時間差はスライスヘッダに符号化される請求項1記載のデジタルビデオ情報を指定する方法。
【請求項5】
前記第1表示時間差は前記第1デジタルビデオピクチャにおいて2回以上符号化される請求項1記載のデジタルビデオ情報を指定する方法。
【請求項6】
前記第1表示時間差は相対的な時間値からなる請求項1記載のデジタルビデオ情報を指定する方法。
【請求項7】
前記第1表示時間差は2のべき乗として符号化される請求項1記載のデジタルビデオ情報を指定する方法。
【請求項8】
前記第1表示時間差は可変長符号化処理により符号化される請求項1記載のデジタルビデオ情報を指定する方法。
【請求項9】
前記第1表示時間差は算術符号化処理により符号化される請求項1記載のデジタルビデオ情報を指定する方法。
【請求項10】
前記第1表示時間差は符号付整数からなる請求項1記載のデジタルビデオ情報を指定する方法。
【請求項11】
デジタルビデオ情報を符号化する符号化システムであって、
第1ビデオピクチャの符号化処理を含む第1デジタルビデオピクチャと、
前記第1ビデオピクチャの表示時間と近傍ビデオピクチャの表示時間との差を指定する第1表示時間差と、からなる符号化システム。
【請求項12】
前記第1表示時間差が前記第1デジタルビデオピクチャ内で符号化される請求項11記載のデジタルビデオ情報を符号化する符号化システム。
【請求項13】
前記近傍ビデオピクチャは、直前に伝送された記録ピクチャからなる請求項11記載のデジタルビデオ情報を符号化する符号化システム。
【請求項14】
前記第1表示時間差は前記第1デジタルビデオピクチャのスライスヘッダに符号化される請求項11記載のデジタルビデオ情報を符号化する符号化システム。
【請求項15】
前記第1表示時間差は前記第1デジタルビデオピクチャにおいて2回以上符号化される請求項11記載のデジタルビデオ情報を符号化する符号化システム。
【請求項16】
前記第1表示時間差は相対的な時間値からなる請求項11記載のデジタルビデオ情報を符号化する符号化システム。
【請求項17】
前記第1表示時間差は2のべき乗として符号化される請求項11記載のデジタルビデオ情報を符号化する符号化システム。
【請求項18】
前記第1表示時間差は可変長符号化処理により符号化される請求項11記載のデジタルビデオ情報を符号化する符号化システム。
【請求項19】
前記第1表示時間差は算術符号化処理により符号化される請求項11記載のデジタルビデオ情報を符号化する符号化システム。
【請求項20】
前記第1表示時間差は符号付整数からなる請求項1記載のデジタルビデオ情報を符号化する符号化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−135016(P2012−135016A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−31962(P2012−31962)
【出願日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【分割の表示】特願2010−197131(P2010−197131)の分割
【原出願日】平成15年7月11日(2003.7.11)
【出願人】(503260918)アップル インコーポレイテッド (568)
【Fターム(参考)】