説明

デジタルフレキソ印刷用装置

【課題】ナノサイズで使用可能な画像化部材と、現像サブシステムとを備えるフレキソ印刷システムの提供。
【解決手段】デジタルフレキソグラフィーシステムは、アドレス指定可能なピクセルの配列から作られる電荷発生層と、その上にある電荷移動層とを備える画像化部材を備えている。インクは、アニックスロールではなく、単純に粗いドナーロールを用いた画像化部材に運ばれる。アニックスロールを用いて運ばれるインクの量を制御する代わりに、インクの量を、画像化部材の上のピクセルによって制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、データのばらつきのあるフレキソ印刷システムに使用することができる画像化部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフレキソグラフィーは、硬い凸板の代わりに可とう性の凸板を使用する印刷プロセスである。フレキソグラフィーは、印刷品質が優れ、基材の自由度が大きく、効率がよく、色域が大きく、印刷コストが安いため、一般的に包装産業やラベル印刷で使用される。フレキソグラフィーは、エンジン単位製造コスト(UMC)が高く、ランニングコストが比較的低い。しかし、短期間運転のため(印刷回数約2000回未満)、ランニングコストは高くなるか、または運転ごとに新しい画像板を作成する必要があるため、データがばらつく。
【0003】
デジタルフレキソ印刷システム、およびエンジンのUMCとランニングコストを下げる方法を開発することが望ましいだろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書は、種々の実施形態では、デジタルマーキングシステムを開示する。このシステムは、ナノサイズで使用可能な画像化部材と、現像サブシステムとを備えている。
【0005】
いくつかの実施形態では、ナノサイズで使用可能な画像化部材と、現像サブシステムとを備えるフレキソ印刷システムが開示されている。ナノサイズで使用可能な画像化部材は、正孔注入ピクセルの配列と、正孔注入ピクセルの配列の上に配置された電荷移動層とを備える。それぞれのピクセルは、電気的に隔離されており、個々にアドレス指定可能である。現像サブシステムは、粗いインクドナーロールとインク供給部とを備えている。
【0006】
ナノサイズで使用可能な画像化部材は、そのほかに、基材と正孔注入ピクセルの配列との間に薄膜トランジスタの配列を備えていてもよい。それぞれの薄膜トランジスタは、正孔注入ピクセルの配列の1個のピクセルに接続している。
【0007】
それぞれのピクセルは、ナノカーボン材料を含んでいてもよい。ナノカーボン材料は、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、グラフェン、およびこれらの混合物であってもよい。
【0008】
特定的な実施形態では、ナノカーボン材料は、カーボンナノチューブまたはグラフェンである。
【0009】
または、それぞれのピクセルは、共役ポリマー、例えば、PEDOT:PSSを含んでいてもよい。他の共役ポリマーとしては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、アルキル置換エチレンジオキシチオフェン、フェニル置換エチレンジオキシチオフェン、ジメチル置換ポリプロピレンジオキシチオフェン、シアノビフェニル置換3,4−エチレンジオキシチオフェン、テトラデシル置換PEDOT、ジベンジル置換PEDOT、イオン基で置換されたPEDOT、デンドロン置換PEDOT、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0010】
電荷移動層は、バインダーポリマーに分散した電荷移動分子を含んでいてもよい。電荷移動分子は、ピラゾリン、ジアミン、アリールアミン、ヒドラゾン、オキサジアゾール、またはスチルベンであってもよい。バインダーポリマーは、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスチレン、アクリレートポリマー、ビニルポリマー、セルロースポリマー、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリシクロオレフィン、ポリスルホン、またはエポキシであってもよい。特定的な実施形態では、電荷移動層は、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4.4’−ジアミンを含む。
【0011】
表面が粗いインクドナーロールは、表面粗さが約0.1μm〜約50μmであってもよい。ナノサイズで使用可能な画像化部材と、表面が粗いインクドナーロールとの間のギャップは、幅が約1μm〜約50μmであってもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、ナノサイズで使用可能な画像化部材と、現像サブシステムとを備えるフレキソ印刷システムが開示される。ナノサイズで使用可能な画像化部材は、基材と、正孔注入ピクセルの配列と、正孔注入ピクセルの配列の上に配置された電荷移動層とを備える。それぞれのピクセルは、電気的に隔離されており、個々にアドレス指定可能である。また、それぞれのピクセルは、ナノカーボン材料または共役ポリマーから作られている。現像サブシステムは、表面が粗いインクドナーロールと、インク供給部とを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、フレキソ印刷の従来法を示す図である。
【図2】図2は、光伝導体を用いたデジタルフレキソ印刷システムを示す模式図である。
【図3】図3は、本開示のデジタルフレキソ印刷システムを示す模式図である。
【図4】図4は、本開示の例示的なナノサイズで使用可能な画像化部材の断面図である。
【図5】図5は、ゼログラフィー用トナーを用いてパターン形成したPEDOT二層画像化部材の印刷試験結果を示す図である。
【図6】図6は、ナノサイズで使用可能な画像化部材を帯電させた状態と帯電させていない状態で測定したダイレクト印刷で、単位面積あたりの現像量(DMA)を比較する図である。
【図7】図7は、実施例で使用した印刷システムの配置を示す模式図である。
【図8】図8は、帯電させた状態で図7の印刷システムのダイレクト印刷結果を示す写真である。
【図9】図9は、図7の印刷システムの帯電部を部分的に覆ったときのダイレクト印刷結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、従来のフレキソグラフィーシステム100である。従来のフレキソグラフィーは、活版印刷器のような硬い凸板の代わりに、可とう性凸板を使用する印刷プロセスである。この可とう性凸板は、盛り上がった画像領域とへこんだ非画像領域とを含む。凸板の盛り上がった領域のみが、印刷のときに基材と接触する。フレキソグラフィー板は、プラスチック、ゴムまたはUV感受性ポリマーのような可とう性材料から作られており、これによって、板は、インクを塗布するローラーまたは円柱体に接続することができる。典型的なフレキソ印刷のシーケンスでは、基材が、ロールからプレス内を供給される(図示せず)。フレキソ印刷システムは、可とう性凸版を乗せる版胴と、インクを凸板に塗るアニックスロールとして知られる調量シリンダと、インクを提供するインクパンとを備えている。あるフレキソシステムは、ファウンテンローラーとして知られる第3のローラーを使用し、ある場合には、インクの分配を改良するためにドクターブレードを使用する。ここで、インクパン130は、ファウンテンロール133にインクを供給する。ファウンテンロールは、インクをアニックスロール132に供給し、アニックスロール132は、版胴110の上に配置されたプレート114に供給されるインクの量を調量する。圧胴120を使用し、基材116を版胴110の方へ移動させ、版胴110で、インクを基材に転写する。図1は、単色でのフレキソ印刷を示す。カラー印刷の場合、基材は、類似のステーションまたは印刷ユニットの一組から引き出される。それぞれの印刷ユニットは、基材に一色を印刷する。
【0015】
図2は、別の従来のアプローチである。このシステム200は、光伝導体(例えば、アモルファスシリコン)の上にレーザー/ROSおよび帯電部を用いて作られた潜電潜像を介し、フレキソインクの静電印刷を用いる印刷プロセスをデジタル化したものである。静電潜像は、感光性画像化部材の上に作られ、次いで、この潜像にインクを塗布することによって現像し、現像された画像を、受け入れ媒体(例えば、紙)に転写する。ここに示すように、反時計回りに、光伝導性画像化部材210は、電力源211から電圧が供給されている帯電ステーション212(例えば、スコロトロン)を介し、表面214に実質的に均一な静電荷を帯びる。次いで、光伝導体は、画像化ステーション213で、光学システムまたは画像入力装置(例えば、レーザー、発光ダイオード、または他のラスター出力スキャナ(ROS))から出た光によって画像の形状で露光する。この露光によって、上の実質的に均一な静電荷を選択的に変えることによって、表面に静電潜像が生成する。次いで、現像ステーション230で静電潜像をフレキソインクと接触させることによって静電潜像を現像する。次いで、転写ステーション215で、例えば、圧力、熱および/またはUVによって、受け入れ媒体216(例えば、紙)の上にレオロジー的または静電的にインク画像を転写する。光伝導性画像化部材210は、転写の後に、クリーニングステーション217に進み、残ったインクが、例えば、クリーニングブレード222、ブラシ、または他の洗浄装置を用いることによって洗浄される。固定ステーション220は、転写された画像を、受け入れ媒体に固定する。
【0016】
現像ステーション230に注目すると、アニックスロール232を用い、インク供給部234から出たインクを光伝導体の表面214に転写する。アニックスロールは、表面に数百万の非常に微細なセルを含む硬い円柱体である。アニックスロールは、通常は、工業用セラミックでコーティングされた鋼製またはアルミニウム製のコアで作られている。アニックスロールは、万線スクリーンで特定されることが多く、万線スクリーンとは、1インチの直線あたりのセルの数である。万線スクリーンは、多くは、約250〜約1500の範囲である。アニックスロールは、インク供給ファウンテンに部分的に沈めるか、または、調量ローラーと接触する。結果として、典型的には粘性のインクの厚い層をロールに堆積させる。ドクターブレード236を使用し、アニックスロールから過剰なインクを削り取り、セルに一定量のインクのみを残す。次いで、ロールを回転させて感光体210と接触させ、転写のために、セルから受け入れ媒体216へとインクを乗せる。
【0017】
帯電ステーション212の帯電システム、画像化ステーション213のレーザー/ROS、アニックスロールを使用することで、全体的な印刷システムのコストが高くなる場合がある。レーザー/ROSと帯電部とで、かなりのコストをUMCに上乗せることになる。それに加え、アニックスロールは、表面の粗いロールと比較して、かなり高価である。「粗い」という用語は、本明細書では、ロールの表面が、表面にセルを形成するように刻み目を付けられたり、処理されたりしていないことを示すために用いられる。アニックスロールを用いるときと同様に特定量のインクを乗せるのではなく、粗いロール表面に、ドクターブレードによって計量されたインク層を単純に置く。
【0018】
したがって、本開示は、コストが安い印刷ユニットを用いたフレキソ印刷用インクを静電印刷するデジタルマーキングシステムに関する。この観点で、フレキソ印刷用インクは、ある観点ではトナーインクと異なる。第1に、フレキソインクは、トナーインクと比較して顔料濃度が高く、したがって、トナーインクよりも厚い層になるように印刷することができる。例えば、フレキソインクの顔料濃度は、通常は、インクの15〜35重量%の範囲であるが、一方、トナーインクの顔料濃度は、通常は、インクの5〜10重量%の範囲である。第2に、フレキソインクで使用するバインダーは、トナーインクで使用するバインダーよりも何桁も安い。最後に、フレキソインクは、例えば、金属インクおよび真珠光沢インクを含め、色域が大きい。フレキソインクを、例えば、トナーインクを用いるのとは異なる装飾印刷に使用してもよい。
【0019】
本開示のデジタルマーキングシステムでは、画像化ドラムは、ナノサイズで使用可能な画像化部材を備えており、この部材は、個々にアドレス指定可能なピクセルの層を有している。ピクセルを使用し、画像化部材の上に維持される静電潜像を制御することができる。画像化部材は、感光体を均一に帯電し、次いで、画像の形になるように放電する従来の場合と反対に、ピクセルを選択的に活性化することによって、系中でデジタル潜像を作り出すため、プロセスの要素と工程の数が減る。それに加え、画像化ドラムに適用されるインクを計量するためにアニックスロールを用いることを必要としない。代わりに、単純な表面が粗いインクドナーロールを使用することができる。インクドナーロールは、アルミニウム、鋼、セラミック、または適切なプラスチック材料から作られてもよい。
【0020】
図3は、本開示の例示的なデジタルフレキソ印刷システム300を示す。デジタルフレキソ印刷システム300は、ナノサイズで使用可能な画像化部材310(ここではドラムとして示されている)を備えており、参照番号301は、回転方向を示す。画像化部材310は、表面314に静電潜像を有しており、この静電潜像は、ピクセルを選択的に活性化することによって作られる。本明細書にさらに記載されるように、画像化部材は、基材352と、薄膜トランジスタ(TFT)の配列を含むバックプレーン354と、電荷注入層356と、電荷移動層358とを備えていてもよい。また、デジタルフレキソ印刷システム300は、画像化部材310にインクを提供し、静電潜像を現像するための現像サブシステム330も備えており、この現像された画像は、参照番号340で示されている。光学硬化源342は、現像された画像340を部分的に硬化させるか、または粘着性にするために存在していてもよく、この硬化源は、例えば、UV硬化性インクのためのLED光源であってもよい。次いで、転写ステーション315で、現像された画像を受け入れ媒体316、例えば紙に転送する。転写された画像は、ここでは参照番号345で示されている。次いで、画像化部材310の上に残ったインクを、クリーニングステーション317で除去する。次いで、固定ステーション320は、現像された画像を受け入れ基材または媒体に固定する。使用するインクによっては、現像された画像を、例えば、熱、圧力および/またはUV照射によって受け入れ媒体316に固定してもよい。図2のシステムとは対照的に、デジタルフレキソ印刷システム300は、画像化ステーションまたは帯電ステーションを備えておらず、そのため、これらのステーションのコストはかからない。
【0021】
現像サブシステム330は、インクドナーロール332を備えており、参照番号331は、回転方向を示す。インクドナーロール332は、画像化部材310とは反対方向に回転する。すなわち、ナノサイズで使用可能な画像化部材310が反時計回りに回転する場合、インクドナーロール332は時計回りに回転する。後で記載するように、ドナーロール332は、単純な粗いドナーロールであってもよく、アニックスロールである必要はない。インクドナーロール332は、インク供給部として作用するインク容器334からインクを引き出し、ドナーロールの上にインク層335が作られる。ドクターブレード336は、インクドナーロール332の上のインク層335の厚みを制御するために使用される。インクドナーロール332は、いくつかの実施形態では、負にバイアスがかかっていてもよい。インクドナーロール332が、インク供給部334から画像化部材310に直接インクを塗布し、図1のような中間ファウンテンロールを必要としないことにも留意されたい。
【0022】
図4は、ナノサイズで使用可能な画像化部材の要素を示す断面図である。画像化部材400は、基材410を備えている。正孔注入層414は、基材の上に配置されている。正孔注入層は、基材410の上に配置された正孔注入ピクセル425の配列420を備えている。配列のそれぞれのピクセル425は、電気的に隔離されており、個々にアドレス指定可能である。この図からわかるように、例えば、絶縁性材料422は、周囲にあるピクセルから隔離されるように、それぞれのピクセルの周囲に存在している。TFT配列を備えるアクティブマトリックスバックプレーン412は、基材410と正孔注入層414との間に位置している。アクティブマトリックスバックプレーンは、薄膜トランジスタ455の配列450を備えている。それぞれの薄膜トランジスタ455は、正孔注入層414の配列420中の1種類の(すなわち、1個の)ピクセル425に接続させることができる。電荷移動層416は、正孔注入層412の上に配置されている。電荷移動層は、ピクセル425によって提供される正孔を、画像化部材400の表面417に移動する。図4の表面417は、図3の表面314に対応している。所望な場合、任意要素の接着層418は、基材410と正孔注入層414との間に位置していてもよい。任意要素のインク耐インク保護層419が、電荷移動層416の上に配置されていてもよい。この実施形態では、画像化部材の表面417は、電荷移動層ではなく、保護層によって与えられる。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「正孔注入ピクセル」および「正孔注入ピクセルの配列」は、用語「ピクセル」および「ピクセルの配列」と相互に置き換え可能に用いられる。句「個々にアドレス指定可能」は、本明細書で使用する場合、正孔注入ピクセルの配列のそれぞれのピクセルを特定することができ、その付近または周辺にあるピクセルと独立して操作することができることを意味する。例えば、図4を参照すると、各ピクセル325A、425Bまたは425Cは、その付近または周囲にあるピクセルとは独立して個々にオンまたはオフにすることができる。しかし、いくつかの実施形態では、ピクセル425A〜Cを個々にアドレス指定しているのにもかかわらず、ピクセル群(例えば、2個以上のピクセル425A〜B)が一緒に選択され、アドレス指定されてもよく、ピクセル群425A〜Bを、ピクセル425Cまたは他のピクセル群(示されていない)とは独立してオンまたはオフにすることができる。
【0024】
配列420のそれぞれのピクセル425は、パターン形成可能な材料から作られる。いくつかの実施形態では、各ピクセルは、ナノカーボン材料または有機共役ポリマーを含む。これらの材料は、電場の影響したで電荷移動層に正孔を注入し、これらの正孔を用いて静電潜像を作成することができる。ナノカーボン材料および有機共役ポリマーを正孔注入材料として利用する別の利点は、これらを、例えば、フォトリソグラフィー、インクジェット印刷、スクリーン印刷、転写印刷などのような種々の加工技術でパターン化することができることである。特定の実施形態では、ナノカーボン材料および/または有機共役ポリマーを含むピクセルの表面抵抗は、約10Ω/□〜約10,000Ω/□、または約10Ω/□〜約5,000Ω/□、または約100Ω/□〜約2,500Ω/□であってもよい。
【0025】
本明細書で使用する場合、句「ナノカーボン材料」は、ナノサイズ(例えば、約1000nm未満)の少なくとも1つの寸法を有する炭素含有材料を指す。いくつかの実施形態では、ナノカーボン材料はカーボンナノチューブである。このカーボン材料としては、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、二層カーボンナノチューブ(DWNT)、多層カーボンナノチューブ(MWNT)、官能化されたカーボンナノチューブを含むナノチューブが挙げられる。多層カーボンナノチューブは、異なる直径を有する少なくとも3種類の円筒形カーボンナノチューブから構成されており、これらのナノチューブは、互いに同軸上に作られている。カーボンナノチューブは、適切な長さと直径を有していてもよい。ナノカーボン材料は、グラフェンまたは官能化されたグラフェンであってもよい。グラフェンは、ハニカム結晶格子に密に充填された、sp混成軌道で結合した炭素原子の単一平面状シートであり、厚みは、実際には、それぞれの原子が表面原子であるような1原子分の厚みである。グラフェンとカーボンナノチューブの混合物も想定されている。
【0026】
カーボンナノチューブ、例えば、精製後に合成した場合は、層の数、直径、長さ、キラリティ、および/または欠陥率に関して、カーボンナノチューブの構造的な混合物であってもよい。例えば、カーボンナノチューブは、金属性であれ半導体性であれ、キラリティが述べられていてもよい。カーボンナノチューブは、通常は、半導体性ナノチューブと金属性ナノチューブの混合物であり、金属性ナノチューブは、化合物のうち、たった33重量%である。カーボンナノチューブは、直径が、約0.1nm〜約100nm、または約0.5nm〜約50nm、または約1.0nm〜約10nmの範囲であってもよい。カーボンナノチューブは、長さが、約10nm〜約5mm、または約200nm〜約10μm、または約500nm〜約1000nmの範囲であってもよい。特定の実施形態では、ピクセル中のカーボンナノチューブの濃度は、ピクセルの約0.5重量%〜約99重量%、または約50重量%〜約99重量%、または約90重量%〜約99重量%の範囲であってもよい。カーボンナノチューブをバインダー材料と混合し、1つ以上のナノサイズの炭素材料の層を作成してもよい。適切なバインダー材料は、当業者に既知である。
【0027】
種々の実施形態では、ピクセルは、カーボンナノチューブの水分散物またはアルコール分散物からコーティングされてもよく、この場合、カーボンナノチューブは、界面活性剤、DNAまたはポリマー材料によって安定化されていてもよい。他の実施形態では、ピクセルは、カーボンナノチューブコンポジット、例えば、カーボンナノチューブポリマーコンポジットおよび/またはカーボンナノチューブに充填された樹脂を含んでいてもよい。
【0028】
ピクセルが有機共役ポリマーから作られる場合、任意の適切な電荷注入ポリマーを使用してもよい。種々の実施形態では、共役ポリマーは、エチレンジオキシチオフェン(EDOT)またはその誘導体に基づく。このような共役ポリマーとしては、限定されないが、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、アルキル置換されたEDOT、フェニル置換されたEDOT、ジメチル置換されたポリプロピレンジオキシチオフェン、シアノビフェニル置換された3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)、テラデシル置換されたPEDOT、ジベンジル置換されたPEDOT、イオン基で置換されたPEDOT、例えば、スルホネート置換されたPEDOT、デンドロン置換されたPEDOT、例えば、デンドロン化ポリ(パラ−フェニレン)など、およびこれらの混合物が挙げられる。特定的な実施形態では、有機共役ポリマーは、PEDOT(例えば、ポリスチレンスルホン酸(PSS))を含む複合体である。PEDOT:PSS複合体の分子構造は、以下の構造(A)として示すことができる。
【化1】

【0029】
PEDOT:PSS複合体は、テンプレートポリマーPSSが存在する状態で、EDOTの重合によって得ることができる。PEDOT:PSS複合体を含む層の導電性は、2個以上の極性基を有する化合物(例えば、エチレングリコール)をPEDOT:PSS水溶液に加えることによって、制御する(例えば、高める)ことができる。Alexader M.Nardesの表題「On theConductivity of PEDOT:PSS Thin Films」2007、第2章、Eindhoven Univercity of Technology(その全体が本明細書に参考として組み込まれている)に証拠として議論されているように、このような添加剤は、PEDOT:PSS複合体のPEDOT鎖の配座変化を誘発することができる。また、PEDOTの導電性を、酸化工程中に調節することもできる。PEDOT:PSSの水系分散物は、H.C.Starck,Inc.(Boston、MA)からBAYTRON P(登録商標)として市販されている。MylarにコーティングされたPEDOT:PSS膜は、Orgacon(商標)膜(Agfa−Gevaert Group、Mortsel、Belgium)で市販されている。また、PEDOTは、例えば、水系媒体または非水系媒体から、電子が豊富なEDOT系モノマーの電気化学的酸化を用いて、化学重合によって得てもよい。PEDOTの電気化学的合成は、Li Niu et al.による表題「Electrochemically Controlled Surface Morphology and Crystallinity in Poly(3,4−ethylenedioxythiphene)Films」、Synthetic Metals、2001、第122巻、425〜429、およびMark Lefebvre et al.、表題「Characterization,and Electrochemical Studies of Poly(3,4−ethylenedioxythiophene)/Poly(styrene−4−sulfonate)Composites,」、Chemistry of Materials、1999、第11巻、262〜268に開示されているようなものであってもよい。上の参考文献にも開示されているように、PEDOTの電気化学的合成は、少量のモノマーを用いてもよく、重合時間を短くしてもよく、電極に支えられている膜および/または自立型の膜を得ることができる。
【0030】
ピクセル425の配列は、まず、パターン形成可能な材料を基板410の上に層として作成することによって作成されてもよい。任意の適切な方法(例えば、浸漬コーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、ウェブコーティング、ドローダウンコーティング、フローコーティング、および/または押出ダイコーティング)を用い、この層を作成してもよい。次いで、パターン形成可能な材料を、ピクセル425の上にパターン化するか、またはそれ以外の方法で処理し、ピクセル425の配列を作成してもよい。ピクセル425の配列を作成することが可能な適切なナノ加工技術としては、フォトリソグラフィーによるエッチング、ナノインプリンティング、インクジェット印刷および/またはスクリーン印刷が挙げられる。結果として、配列420のそれぞれのピクセル425は、少なくとも1つの寸法(長さまたは幅)が、約100nm〜約500μm、または約1μm〜約250μm、または約5μm〜約150μmの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、ピクセルは、寸法が数十ミクロンの範囲であり、すなわち、約10μm〜約100μmである。
【0031】
電荷移動層416は、1つ以上のピクセル425を、ピクセル425の配列とは反対側の表面417に提供することによって、正孔を移動するような構成である。電荷移動層414は、正孔または電子を移動することが可能な材料を含み、表面電荷を選択的に散逸するものであってもよい。特定の実施形態では、電荷移動層416は、電気的に不活性なバインダーポリマーに溶解または分子状態で分散した電荷を移動する低分子を含む。いくつかの実施形態では、電荷を移動する低分子を電気的に不活性なポリマーに溶解し、ポリマーを含む均一相を作成することができる。
【0032】
電荷移動層416に任意の適切な電荷移動分子を使用してもよい。例示的な電荷を移動する低分子としては、ピラゾリン、例えば、1−フェニル−3−(4’−ジエチルアミノスチリル)−5−(4”−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、ジアミン、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、他のアリールアミン、例えば、トリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TM−TPD)、ヒドラゾン、例えば、N−フェニル−N−メチル−3−(9−エチル)カルバジルヒドラゾン、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,2−ジフェニルヒドラゾン、オキサジアゾール、例えば、2,5−ビス(4−N,N’−ジエチルアミノフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール、スチルベンなどが挙げられる。例示的なアリールアミンは、以下の構造(B)または(C)を有していてもよい。
【化2】

【化3】

式中、Xは、それぞれ独立して、アルキル、アルコキシ、アリール、およびその誘導体のような適切な炭化水素、ハロゲン、またはこれらの混合物であり、特に、ClおよびCHからなる群から選択される置換基である。他の適切な電荷移動分子は、構造(D)または(E)を有する。
【化4】

【化5】

式中、X、Y、Zは、独立して、アルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲン、またはこれらの混合物である。
【0033】
電荷移動層316に使用可能な特定のアリールアミンの例としては、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(アルキルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(アルキルは、1〜18個の炭素原子を含む)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(クロロフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−p−トリル−[p−ターフェニル]−4,4”−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−m−トリル−[p−ターフェニル]−4,4”−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−o−トリル−[p−ターフェニル]−4,4”−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(4−イソプロピルフェニル)−[p−ターフェニル]−4,4”−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(2−エチル−6−メチルフェニル)−[p−ターフェニル]−4,4”−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(2,5−ジメチルフェニル)−[p−ターフェニル]−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−クロロフェニル)−[p−ターフェニル]−4,4”−ジアミンなどが挙げられる。
【0034】
任意の適切な電気的に不活性なポリマーを、電荷移動層416で用いてもよい。電荷移動分子と組み合わせて使用する典型的な電気的に不活性なポリマーとしては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスチレン、アクリレートポリマー、ビニルポリマー、セルロースポリマー、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリシクロオレフィン、ポリスルホン、エポキシ、これらのランダムコポリマーまたは交互コポリマーが挙げられる。
【0035】
いくつかの実施形態では、電荷移動層は、約25重量%〜約60重量%の電荷移動分子と、約40重量%〜約75重量%の電気的に不活性なポリマーとを含んでいてもよく、両方とも、電荷移動層の合計重量を基準とする。特定的な実施形態では、電荷移動層は、約40重量%〜約50重量%の電荷移動分子と、約50重量%〜約60重量%の電気的に不活性なポリマーとを含む。
【0036】
または、電荷移動層は、電荷移動ポリマーから作られてもよい。ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリ(ビニルピレン)、ポリ(−ビニルテトラフェン)、ポリ(ビニルテトラセン)および/またはポリ(ビニルペリレン)のような任意の適切なポリマー系電荷移動材料を用いてもよい。
【0037】
電荷移動層は、電荷移動層の上にある静電電荷が、この層の上に静電潜像を作り、保持することを防ぐように行われないという程度まで絶縁体であると考えてもよい。一方、電荷移動層は、正孔注入層から正孔を注入し、電荷移動層自体を通って移動させ、画像化部材表面417上にある負の表面電荷選択的に放電させることができるという点で、電気的に「活性で」あると考えることができる。
【0038】
任意の適切な技術および従来の技術を利用し、電荷移動層を作成してもよい。1回のコーティング工程または複数回のコーティング工程を使用してもよい。これらの応用技術としては、噴霧、浸漬コーティング、ロールコーティング、ワイヤ捲きロッドコーティング、インクジェットコーティング、リングコーティング、グラビア処理、ドラムコーティングなどが挙げられる。堆積したコーティングの乾燥は、例えば、オーブンによる乾燥、赤外線照射による乾燥、風乾などの任意の適切な従来の技術によって行うことができる。乾燥後の電荷移動層は、厚みが、約1μm〜約50μm、約5μm〜約45μm、または約15μm〜約40μmの範囲であってもよいが、100μm程度の厚みであってもよい。
【0039】
基材は、画像化部材の全ての層を支える。基材の厚みは、機械強度、可とう性、経済的な考慮事項を含め、多くの因子によって変わり、例えば、最終的な画像化部材に悪影響を与えない限り、厚みは、約50μm〜約150μmであってもよい。基材は、望ましくは、画像化部材の他の層を作成するために使用する任意の溶媒に可溶性ではなく、場合により透明であり、望ましくは、約150℃までの高温で熱に安定である。基材410に使用可能な適切な材料としては、限定されないが、マイラー、ポリイミド(PI)、可とう性ステンレス鋼、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)、可とう性ガラスが挙げられる。
【0040】
任意要素の接着層418は、例えば、ポリアリレートポリビニルブチラール、例えば、ユニチカ株式会社(大阪、日本)から入手可能なU−100、VITEL PE−100、VITEL PE−200、VITEL PE−200D、VITEL PE−222(すべてBostik(Wauwatosa、WI)から入手可能)、Rohm Hass(Philadelphia、PA)から入手可能なMOR−ESTER(商標)49000−Pポリエステル、ポリビニルブチラールのようなポリエステル樹脂から製造してもよい。
【0041】
保護オーバーコート層419を用い、電荷移動層の表面を保護するとともに、インクの画像化部材を洗浄しやすくしてもよい。このようなオーバーコート層は、当該技術分野で既知である。
【0042】
例えば、溶媒系フレキソインク、UVフレキソインク、または水系フレキソインクのような任意の適切なフレキソインクを用いてもよい。例示的なフレスコインクとしては、限定されないが、UVivid 820 Series UV Flexoインク、UVivid 850 Series UV Flexoインク、UVivid 800 Series UV Flexoインク(すべて、FUJIFILM North America Corporation(Kansas City、KS)によって製造)、BCM inks USA製の水系フレキソインク、Dun Chemicals製フレキソ包装インク、NWUV−16−846およびNWUV−16−848/849 UVフレキソインク、NWS2−10−931水系フレキソインク(Atlantic Printing Ink,Ltd.(Tampa、FL)によって製造)が挙げられる。
【0043】
図3を参照すると、フレキソ印刷システム300は、ナノサイズで使用可能な画像化部材310に対し、現像サブシステム330およびナノサイズで使用可能な画像化部材310が、現像ニップ305を形成するように配置された現像サブシステム330を備えている。画像化部材の表面314の上の静電潜像を、この場所で現像することができる。
【0044】
デジタルフレキソ印刷システム300において、正孔注入によって帯電するナノサイズで使用可能な画像化部材310のピクセルは、電気泳動または電気流体力学のようなプロセスでインクを引きつけ、それによって、現像された潜像を作成し、これを基材に転写することができる。現像サブシステム330の機能は、ナノサイズで使用可能な画像化部材310の表面314の上の静電潜像にインクを運ぶことである。現像する材料は、帯電した領域に選択的に接着し、ナノサイズで使用可能な画像化部材310の上に現像された画像340を作成する。静電潜像を、任意の適切な現像材料を用い、現像ニップ305で現像し、現像された画像340を作成する。例示的な現像材料としては、限定されないが、液体トナー、炭化水素系液体インク、および/またはフレキソグラフ/オフセットインクが挙げられる。用語「インク」は、本明細書で使用される場合、あらゆる現像材料を指してもよい。静電潜像の電荷によって、ナノサイズで使用可能な画像化部材310の上の静電潜像表面の帯電した領域によって、インクの上で現像が起こる。
【0045】
ここで図2を参照し、アニックスロール232は、画像化部材210に測定した量のインクを提供する。ここでも、アニックスロールは、測定した量のインクを運ぶ大量のセルを備える外側表面を有している。画像化部材を選択的に帯電させることにより、アニックスロールから画像化部材への電荷移動を制御する。しかし、アニックスロールは、システムの費用を増大させてしまう。
【0046】
盛り上がった凸版を使用した従来のフレキソグラフィーでは、アニックスロールの使用は、凸板の盛り上がった部分にのみインクが乗り、凸版のへこんだ部分にはインクがのらないようにするのに必要であった。アニックスロールから画像化部材へのインクの転写は、圧力、インクの粘度、毛細管力、ニップの接触速度の組み合わせに起因する。アニックスロールのセルを使用し、インクのレベルを最適化し、単位面積あたり、均一量のインクを運んだ。しかし、ナノサイズで使用可能な画像化部材を使用すれば、その機能は不必要である。画像化部材に転写されるインクの量および位置を、画像化部材の上にピクセルの領域と、使用する電場によって制御することができる。言い換えると、ピクセルは、転写されるインクの量を計量し、この機能は、アニックスロール中のセルと似た機能であり、そのため、アニックスロールは不必要である。したがって、ここで図3を参照すると、単純に粗いドナーロール332を、画像化部材に単純にインクを供給するために代わりに使用することができ、インクをのせる予定ではない領域にインクが乗ることを気にしなくてよい。
【0047】
ドナーロールを参照すると、「粗い」という用語は、ドナーロールの表面にパターン形成されていないという事実を指す。表面が粗いインクドナーロール332は、金属(例えば、アルミニウム)を含んでいてもよく、またはセラミックから作られていてもよい。インクドナーロール332は、アニックスロールではない。現像ニップ305は、ドナーロール332と画像化部材表面314との間にギャップ307を備えていることに留意されたい。このギャップは、典型的には、約1μm〜約50μm幅の距離である。ドナーロール332の表面粗さは、このギャップより小さい。いくつかの実施形態では、インクドナーロール332は、表面粗さが約0.1μm〜約50μmであってもよい。さらに特定的な実施形態では、インクドナーロール332は、表面粗さが0.25μm〜2μmであってもよい。
【0048】
インクは、ナノサイズで使用可能な画像化部材310のうち、放電した領域ではなく、帯電した領域に電気泳動によって引きつけられ、潜像を現像する。
【0049】
本開示のデジタルフレキソ印刷システムでは、電場のサインおよび方向は、一般的に無関係であるが、直流(DC)または交流(AC)のどちらであってもよく、1kHzより高い周波数であってもよい。設置したドナーロール332に対し、画像化部材によって作られる電場は、強度が10V/μm〜100V/μmの範囲であってもよい。
【0050】
図3を参照すると、デジタルフレキソ印刷システム300は、受け入れ媒体316、例えば、紙の上に現像された画像を転写するための転写サブシステム315を備えていてもよい。転写している間、受け入れ媒体316は、ナノサイズで使用可能な画像化部材310の表面314の上にある現像された画像340と実質的に密に接触した状態にすることができる。
【0051】
単色プリンタの場合、ナノサイズで使用可能な画像化部材310は、受け入れ媒体316に対し、現像された画像340を直接転写することができる。カラープリンタの場合、一般的に、現像された画像が互いに作られ(例えば、CMYK)、紙または中間転写体(図示せず)に直接的に画像が積み上げられる。全ての色を現像したら、全ての色が積み上げられた最終的な現像された画像が、受け入れ媒体に転写される。いくつかの実施形態では、デジタルフレキソ印刷システム300は、1色に1個ずつ、4個のナノサイズで使用可能な画像化部材を備えていてもよいことが想定されている。例えば、カラープリンタは、それぞれの色がついた現像された画像が受け入れ媒体に順に転写される異なる一連の事象を使用してもよい。
【0052】
デジタルフレキソ印刷システム300は、受け入れ媒体の上に現像された画像を固定するための固定サブシステム320を備えていてもよい。固定プロセスでは、インクは、熱、圧力、UV硬化またはこれらのいくつかの組み合わせによってインクを基材に永久的に固定することができる。いくつかの実施形態では、デジタルフレキソ印刷システム300は、別個の転写サブシステムと固定サブシステムの代わりに、一工程で受け入れ媒体316の上に現像された画像を転写し、固定する転写固定システムを使用してもよい。
【0053】
デジタルフレキソ印刷システム300は、一般的に、クリーニングサブシステム317をさらに備えている。ナノサイズで使用可能な画像化部材から受け入れ媒体へのインクの転写は、ある場合には、効率100%でなくてもよい。これは、小さなインク滴は、ナノサイズで使用可能な画像化部材に強く接着し、転写しにくくなるためである。残りのインクは、次の印刷サイクルの前にナノサイズで使用可能な画像化部材から除去されなければならず、そうしなければ、次の画像の印刷品質に影響を及ぼすことがある。クリーニングサブシステムは、ナノサイズで使用可能な画像化部材を擦り、残ったインクを削り取る柔軟性のあるクリーニングブレードを備えていてもよい。クリーニングサブシステムは、回転ブラシクリーナーを備えていてもよく、この回転ブラシクリーナーは、インクを除去するのにもっと有効な場合があり、ナノサイズで使用可能な画像化部材の表面に対し、耐摩耗性である。
【実施例】
【0054】
(実施例1‐パターン形成された二層画像化部材を用いた印刷試験)
DimatixインクジェットプリンタモデルDMP2800(FUJIFILM Dimatix,Inc.、Santa Clara、CA)を用いたインクジェット印刷によって、Mylar基板の上にPEDOT層をパターン形成した。PEDOT層は、正孔注入層としての役割をもっていた。N,N’−ジフェニル−N,N−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)およびPCZ200(ポリカーボネート)をPCZ200 3部対TPD2部の重量比で含む厚みが約18μmの電荷移動層(CTL)を、パターン形成されたPEDOT層の上にコーティングし、パターン形成されたPEDOT二層画像化部材を作成した。次いで、画像化部材を感光体ドラムの上に流し、接地した。
【0055】
次いで、この二層画像化部材を用いて印刷試験を実施した。結果を図5に示している。印刷試験結果から、PEDOTが基材の上に簡単にパターン形成され、正孔注入層のためにPEDOTを用い、良好な印刷物が得られることが示された。これらのパターン形成されたPEDOTピクセルは、TFTマトリックスに接続すると、デジタル印刷デバイスとして働くだろう。
【0056】
第2のデバイスでは、カーボンナノチューブ層をPEDOT層の代わりに使用した。印刷試験結果から、カーボンナノチューブが基材の上に簡単にパターン形成され、正孔注入層にPEDOTを用い、良好な印刷物が得られることが示された。
【0057】
(実施例2−ダイレクトデジタル印刷)
PEDOT/TPD二層画像化部材(実施例1に記載したもの)15cm×15cm片を、有機光伝導体(OPC)ドラムの上に流した。PEDOT層の表面抵抗は約350Ω/□であった。この二層部材を、カプトンテープによってOPCドラムの上に取り付けた。OPCドラムを使用し、二層部材を支え、電気的に設置する二層部材の一区画を準備した。OPCドラム上の二層部材を、銀ペーストによってOPCドラムのアルミニウム接地板に選択的に接地した。OPCドラムをベンチDC8000現像器具に取り付けることによって印刷実験を実施した。OPCドラムを、負にバイアスをかけ、約352mm/sの速度で回転させ、半導体磁気ブラシ(SCMB)で整えた。印刷実験に超低融点EAシアントナーを使用した。
【0058】
実験結果(示さず)から、現像ニップを通過した後、二層部材の上でトナーが現像されたことが示されている。トナー画像を、現像ニップを通過させるだけで、ナノサイズで使用可能なPEDOT画像化部材の上に作成した。
【0059】
図6は、2種類の異なる印刷条件下、所与の現像バイアス(Vdev)で得られる、単位面積あたりの現像量を示すグラフである。上述の条件で曲線620を得た。現像ニップの前にナノ画像化部材を放電するためにスコロトロン充電部を使用する、上とはわずかに異なる条件で、曲線610を得た。
【0060】
図6の両方の構造の成長類似性から、磁気ブラシがダイレクト印刷モードで二重の役割をはたすことを示す。磁気ブラシが二重の役割をはたしていないとき、正孔によって誘発される注入反応はなく、現像もされない。二層が、最初に磁気ブラシと接触すると、磁気ブラシのバイアスによって、正孔注入反応が誘発され、二層のCTL表面に静電潜像が作られた。その後、二層部材が現像ニップを出る前に、トナーを現像した。この2工程プロセスは、現像ニップの中で達成され、トナーが直接印刷された。
【0061】
観察された直接印刷プロセスは、ゼログラフィーと比較して、静電画像の作成を単純化することができ、画像化材料に依存して、液体インクおよびフレキソインクにまで拡張することができる。さらに、上述の直接印刷プロセスは、例えば、TFTバックプレーンを用いた印刷プロセスと組み合わせることによってデジタル化することができる。
【0062】
(実施例3‐フレキソインクを用いて印刷する概念)
概念の証拠として、ナノサイズで使用可能な画像化部材700を図7に示すシステムで使用した。画像化ドラム710を、PEDOT:PSS層およびCTLを含むパターン形成された二層デバイス714で覆った。この二層デバイスを接地した。現像サブシステム730は、アニックスロール732を使用し、アニックスロール732は、ドクターブレード736によって計量された。シアンフレキソ印刷用インク734を使用した。ワイヤスコロトロン702を使用し、
二層デバイスの上に電場を与えた。
【0063】
図8に印刷結果を示す。具体的には、フレキソ印刷用インクを選択的に印刷した。
【0064】
次に、電場が必要であることを示すために、スコロトロンを部分的に絶縁性ポリイミドテープで覆った。図9に印刷結果を示す。二層デバイスがスコロトロン帯電部にさらされている領域にのみフレキソインクが印刷され、さらに、ナノサイズで使用可能な画像化部材を用いてフレキソインクを選択的に印刷するのに電場が必要であるという概念を証明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキソ印刷システムであって、
ピクセルが電気的に隔離され、個々にアドレス指定可能な正孔注入ピクセルの配列と、
正孔注入ピクセルの配列の上に配置された電荷移動層と、
を含む、ナノサイズで使用可能な画像化部材と、
表面が粗いインクドナーロールと、
インク供給部と、
を含む、現像サブシステムと、を含むフレキソ印刷システム。
【請求項2】
前記ナノサイズで使用可能な画像化部材が、基材と正孔注入ピクセルの配列との間に薄膜トランジスタの配列をさらに備え、それぞれの薄膜トランジスタが、正孔注入ピクセルの配列の1個のピクセルに接続している、請求項1に記載のフレキソ印刷システム。
【請求項3】
それぞれのピクセルが、ナノカーボン材料を含む、請求項1に記載のフレキソ印刷システム。
【請求項4】
前記ナノカーボン材料が、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、グラフェン、またはカーボンナノチューブとグラフェンとの混合物を含む、請求項3に記載のフレキソ印刷システム。
【請求項5】
フレキソ印刷システムであって、
基材と、
それぞれのピクセルが電気的に隔離され、個々にアドレス指定可能であり、それぞれのピクセルが、ナノカーボン材料または共役ポリマーから作られる正孔注入ピクセルの配列と、
前記正孔注入ピクセルの配列の上に配置された電荷移動層と、
を備える、ナノサイズで使用可能な画像化部材と、
表面が粗いインクドナーロールと、
インク供給部と、
を備える、現像サブシステムと、を含むフレキソ印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−88812(P2013−88812A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−225705(P2012−225705)
【出願日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】