説明

デジタル秤

【課題】本発明は、筐体内部に配置された乾燥剤を容易に交換することができ、乾燥剤の水分吸着能力を管理できるデジタル秤を提案する。
【解決手段】
本発明のデジタル秤は、物品の重量を計量し、計量により得られた計量値を数値化して電気的に表示するデジタル秤である。デジタル秤は、ロードセル40、制御基板41、電池ボックス38、電池39を収容し、かつ所定の防水レベルに密閉されたデジタル秤本体部と、デジタル秤本体部内における水分を吸着して乾燥させるように外部から取り外し可能に取り付けられた乾燥ユニット36とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の重量を数値化して電気的に表示するデジタル秤に関するものであって、特に、該デジタル秤の筐体内を乾燥させるための乾燥剤を有するデジタル秤に関する。
【背景技術】
【0002】
物品の重量を計量した計量値を表示させる形態として、針式(アナログ)による表示形態とデジタル(数値)による表示形態とがある。近年では、計量値の見間違い等を低減させるため、針式による表示形態からデジタルによる表示形態を採用した秤が普及している。このように計量値をデジタルにより表示させる秤は、一般的にはデジタル秤と称されている。
【0003】
このようなデジタル秤は、その筐体内に電子部品を搭載した基板や、計量値を算出するためのロードセル等の水気を嫌う部品を備えている。このため、食品加工、染色業等の水を使用する環境下でも利用できるように、はめ込み部分など筐体において浸水が生じる箇所に、ゴムパッキングを取り付け、防水対策を施したデジタル秤が開発されている。
【0004】
一方、秤のハウジング(筐体)内に乾燥剤(シリカゲル)の供給器を設けてハウジング内部の湿度を制御する秤量システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、ロードセルにおけるストレンゲージやスパン抵抗等の抵抗体の周囲に乾燥剤を配設し、防湿剤で密閉した構成も提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
なお、筐体内部に配設する乾燥剤としては、例えば、特許文献3に開示されている吸湿によって変色し、加熱により変色した色が元の色に戻って再生するシリカゲルを利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平4−501169号公報
【特許文献2】特開昭61−284612号公報
【特許文献3】特開2010−48615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述の防水対策を施したデジタル秤であっても、浸水を確実に防ぐことができない。また、デジタル秤をとりまく外界の急激な温度変化により筐体内に結露が生じる場合がある。そこで、小型秤以外の機器において、市販されているペルチェ素子を用いた小型除湿器を筐体内に設置して除湿を行う構成が考えられるが、電池駆動のデジタル秤ではこの小型除湿器へ供給する電力の余裕はない。そこで、特許文献1、2に開示されているように、電力を消費しない乾燥剤を用いる構成が考えられる。
【0008】
しかしながら、上述のような従来技術は、乾燥剤を容易に交換することができないという問題が生じる。
【0009】
より具体的には、乾燥剤は、水分を所定量しか吸着できず、また水分を吸着するに従い乾燥剤の水分の吸着量は低下することとなる。このため、乾燥剤を交換する必要がある。ところが、特許文献1、2では、乾燥剤を筐体内部に配置し、そのまま密閉した構成であるため、乾燥剤の交換を容易に行うことができない。このため、乾燥剤の水分の吸着力が低下しても乾燥剤を取り替えることができず、筐体内における乾燥を実現できなくなる。
【0010】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、筐体内部に配置された乾燥剤を容易に交換することができ、乾燥剤の水分吸着能力を管理できるデジタル秤を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るデジタル秤は、上記した課題を解決するために、物品の重量を計量し、該計量により得られた計量値を数値化して電気的に表示するデジタル秤であって、前記計量を行う計量機構の一部と前記計量値を数値化して電気的に表示するための電装品とを収容し、かつ所定の防水レベルに密閉された筐体と、乾燥剤を収容し、該乾燥剤により前記筐体内における水分を吸着して該筐体内を乾燥させるように外部から取り外し可能に該筐体に取り付けられた乾燥ユニットと、を備える。
【0012】
ところで、前記乾燥ユニットが収容する前記乾燥剤としては、例えば、水分を吸着し、加熱により水分を放出するシリカゲル等が利用できる。
【0013】
また、所定の防水レベルに密閉されているとは、前記筐体に収容される計量機構の一部や、前記電装品が水気により不具合が生じないように、前記筐体外部からの浸水を防止できる程度に密封されているということである。
【0014】
前記筐体は前記計量機構の一部を収容しているため、該筐体内外の気圧の均衡を保つ必要がある。そこで、前記筐体は、外部から浸水することを防止できるが、外気については侵入できる状態に維持される必要がある。すなわち、デジタル秤の筐体は完全な密閉状態にあるということではない。
【0015】
なお、計量機構とは、物品(非計量物)を載置し、載置したこの物品から加えられた荷重から物品の重量を計量するように、機械的に構成された仕組みである。この計量機構の一部とは、例えば、物品の重量を計量する部分であり、歪ゲージ等の電子部品を含む。
【0016】
上記した構成によると、本発明に係るデジタル秤は、前記乾燥ユニットを前記筐体から取り外し可能に取り付けられている。このため、乾燥ユニットを前記筐体から容易に取り外すことができる。さらに取り外して、乾燥剤を交換することで、乾燥剤の水分吸着能力を管理できる。
【0017】
したがって、本発明に係るデジタル秤は、筐体内部に配置された乾燥剤を容易に交換することができ、乾燥剤の水分吸着能力を管理できるという効果を奏する。
【0018】
前記乾燥ユニットは、前記乾燥剤を収容するための収容部を備え、かつ前記収容部が前記筐体内において前記計量機構の一部及び前記電装品のうち水分に起因して不具合が生じる部材と近接するように前記筐体に取り付けられていてもよい。
【0019】
ここで、水分により不具合が生じる部材としては、例えば、制御基板の電子回路などの電装品、またはロードセルの歪ゲージ等の計量機構の一部などが挙げられる。また、この水分により不具合が生じる部材と近接する位置とは、乾燥ユニットが収容する乾燥剤にて十分この部材を乾燥できる範囲内となる位置である。すなわち、この近接する位置は、乾燥剤の水分の吸着力、および水分を吸着可能とする範囲に応じて決定することができる。
【0020】
このように、本発明に係るデジタル秤では、前記収容部を水分に起因して不具合が生じる部材と近接する位置となるように乾燥ユニットを取り付けることができるため、水分により部材に不具合が生じないようにすることができる。また、筐体内において、水分に起因して不具合が生じる部材の配置が異なる場合であっても、それぞれの配置に応じて収容部を配置するように乾燥ユニットを取り付けることで対応することができる。
【0021】
前記筐体には、雌ねじが形成された開口が設けられており、前記乾燥ユニットは、柱状に形成され、基端部に前記筐体の開口と螺合する雄ねじが形成され、前記基端部より先の部分に前記収容部が形成されており、前記乾燥ユニットは、前記収容部が前記筐体内に位置するように前記筐体の開口に挿入されるとともに前記基端部が前記筐体の開口に螺合するようにして、前記筐体に取り付けられていてもよい。
【0022】
上記した構成によると、乾燥ユニットの基端部と筐体の開口との螺合を解除して、乾燥ユニットを筐体の開口から抜くことで、乾燥ユニットをデジタル秤の筐体から容易に取り外すことができる。
【0023】
前記乾燥剤は含水量に応じて色が変化するものであり、前記乾燥ユニットは、前記収容部に収容された前記乾燥剤の色が該乾燥ユニットの基端から視認可能なように構成されていてもよい。
【0024】
上記した構成によると、乾燥ユニットは、前記収容部に収容された前記乾燥剤の色が該乾燥ユニットの基端部から視認可能なように構成されているため、乾燥剤の含水量を、乾燥ユニットを取り外すことなく把握することができる。
【0025】
前記計量機構の一部は、前記物品の重量を検出するロードセルを含んでおり、前記乾燥ユニットは、前記収容部が前記ロードセルと近接するように前記筐体に取り付けられていてもよい。
【0026】
上記した構成によると、前記収容部が前記ロードセルと近接するように筐体に取り付けられているため、水分によりロードセルに不具合が生じて測定精度が劣化することを防ぐことができる。
【0027】
前記電装品は、前記計量値を数値化して電気的に表示するための電子部品が搭載された基板を含んでおり、前記乾燥ユニットは、前記収容部が前記基板と近接するように前記筐体に取り付けられている構成であってもよい。
【0028】
上記した構成によると、前記収容部が前記基板と近接するように筐体に取り付けられているため、水分により基板に不具合が生じることを防ぐことができる。
【0029】
前記電装品は、デジタル秤を作動させる電源としての電池が装着される電池装着部を含んでおり、前記乾燥ユニットは、前記収容部が前記電池装着部と近接するように前記筐体に取り付けられているように構成されていてもよい。
【0030】
上記した構成によると、前記収容部が前記電池装着部と近接するように筐体に取り付けられているため、水分により電池装着部に不具合が生じることを防ぐことができる。また、電池装着部に装着された電池近傍は、外界の急激な温度変化によって結露が生じやすい箇所であり、このため、この結露による水分を乾燥させることができる点でも有利である。
【発明の効果】
【0031】
本発明は以上に説明したように構成され、筐体内部に配置された乾燥剤を容易に交換することができ、乾燥剤の水分吸着能力を管理できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係るデジタル秤の斜め後方から見た外観構成を示す斜視図である。
【図2】図1のデジタル秤の斜め前方から見た外観構成を示す斜視図である。
【図3】図1のデジタル秤の断面図である。
【図4】図1のデジタル秤の底面図である。
【図5】図1のデジタル秤の乾燥ユニットの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は対応する構成部材には同一の参照符号を付して、その説明については省略する。
【0034】
図1は、本発明の実施形態に係るデジタル秤の斜め後方から見た外観構成を示す斜視図である。図2は、図1のデジタル秤の斜め前方から見た外観構成を示す斜視図である。図3は、図1のデジタル秤の断面図である。なお、デジタル秤1において、表示部34が備えられている側を前方、表示部34が備えられている側と対向する側を後方とすると、図3は前方から後方に沿ってデジタル秤1を垂直に切り出した場合の断面構造を示す。
【0035】
本実施の形態に係るデジタル秤1は、物品の重量を計量し、当該計量により得られた計量値を数値化して電気的に表示するものであれば、これに該当する。以下には、計量皿に載置した物品の重量(重さ)を計量し、その計量値を表示部においてデジタル表示する、いわゆるデジタル式上皿自動秤を例示する。なお、デジタル秤1は、例えば、歪ゲージ式ロードセルを利用して物品(被計量物)の重量を求める構成となっている。
【0036】
ところで、農水産品、生鮮食品等を物品(被計量物)とする場合、物品(被計量物)となる魚介類、野菜等は多くの水分を含んでおり、デジタル秤1を取り巻く環境は高湿度なものとなる。また、魚介類や野菜等を扱う環境では、高度な食品衛生管理が要求される。このため、デジタル秤を頻繁に洗浄したり消毒したりする必要があり、デジタル秤1に対して洗浄に対応可能な防水性(あるいは耐水性)が要求される。
【0037】
そこで、本実施の形態に係るデジタル秤1は、食品加工場等、水により濡れる環境での使用も可能とするように、デジタル秤本体部3における接合部10にシール部材(例えば、ゴムパッキング等)9を配設し取り付け、浸水を防ぐ構成となっている。
【0038】
(デジタル秤の構成)
上述したデジタル秤1のより具体的な構成について、図1から図3を参照して説明する。
【0039】
デジタル秤1は、図1及び図2に示すように、その外観形状において計量皿2、デジタル秤本体部3、及び乾燥ユニット36a、36bを備えている。
【0040】
図1から図3に示すように、計量皿2は、物品(被計量物)を載置するための皿である。計量皿2は、その上面側に物品(被計量物)が載置される。また、下方側では皿受31と当接しており、該皿受31により支持されている。そして、載置された物品(被計量物)の荷重が下方側で支持する皿受31に加わるように構成されている。
【0041】
デジタル秤本体部3は、筐体4と、この筐体4に収容又は取り付けられた部材とを含む。筐体4は、例えばステンレスで構成されており、また、この筐体4を構成する部材もステンレスで構成されている。筐体4の形状は任意である。以下では、筐体4が扁平な直方体形状に形成されている構成を例示する。筐体4は、底板5とカバー部材6とを備える。底板5は、例えば、全体として平板状に形成されている。カバー部材6は、例えば、全体として、下面が開放され、前面が上方に傾斜し、かつ上面の中央に開口8を有する中空の扁平な半開放の直方体形状に形成されている。カバー部材6の下縁部は全周に渡って内方に折り曲げられていて、当接部6aを構成している。この当接部6aに底板5の外縁部5aが当接し、ねじ22によって、この当接部6aと底板5の外縁部5aとが接合されている。この接合箇所が、底板5とカバー部材6との接合部10を構成している。このようにして、底板5とカバー部材6とを用いて扁平は直方体状の筐体4が形成されている。カバー部材6の当接部6aと底板5の外縁部5aとの間にはシール部材(例えばゴムパッキング等)9Aが配置されていて、これにより、カバー部材6の当接部6aと底板5の外縁部5aとの間が所定の防水レベル(防水仕様)にシールされている。
【0042】
筐体4には、皿受31の下部、ロードセル40、制御基板41、電池ボックス38、及び電気配線(不図示)等が収容されている。底板5の一部には開口5bが形成されていて、この開口5bを囲むように電池ボックス収容部5cが形成されている。電池ボックス収容部5cには、電池39が装着された電池ボックス38が収容されている。底板5の開口5bは板状の底蓋7によって塞がれている。底蓋7は、ねじ(不図示)等によって、底板5に取り外し可能に取り付けられている。底蓋7と底板5のとの間にはシール部材(例えばゴムパッキング等)9Bが配置されていて、これにより、底蓋7と底板5との間が上述の所定の防水レベルにシールされている。
【0043】
ロードセル40は、起歪体29と、この起歪体29の所定の部位に貼付された歪ゲージ30とを備えている。また、皿受31は、水平に延在する受け部31aと、この受け部31aの中央部に下方に突設された取り付け部31bとを備えている。そして、起歪体29がその一端を支持されるようにして片持ち状に底板5の上面に取り付けられている。そして、起歪体29の他端部が皿受31の取り付け部31bを支持している。
【0044】
皿受31の取り付け部31bの上端部は、カバー部材6の開口8から上方に突出しており、その上端に受け部31aが位置し、この受け部31aに計量皿2が取り付けられている。これにより、計量皿2に物品が載置されると、当該物品の荷重が皿受31を介してロードセル40の起歪体29に加わり、それによる起歪体21の歪が歪ゲージ30によって検出される。このようにして、計量皿2に載置された物品の重量が検出される。
【0045】
さらに、カバー部材6の開口8の周縁部6bと皿受31の受け部31aの外縁部との間にダイヤフラム11が配設されている。これにより、カバー部材6と皿受31との間が上述の所定の防水レベルにシールされている。ダイヤフラム11は、その両端部を、ねじ23、24等によって気密(水密)にカバー部材6の開口8の周縁部6b及び皿受31の受け部31aの外縁部に取り付けられている。また、ダイヤフラム11は、柔軟性に富んだ材料で構成され、皿受31が上下方向に移動する際に実質的に当該皿受31に反力を及ぼさないように構成されている。これにより、筐体4の内部を外部からシールした状態で、計量皿2に載置された物品の重量を正確に計量することができる。
【0046】
また、カバー部材6の前面には表示部34が設けられ、この表示部34の背後に位置するように、カバー部材6の内面に制御基板41が取り付けられている。制御基板41は、例えば、底板5の電池ボックス収容部5cに近接して配置されている。
【0047】
上述のようにして、皿受31の下部、ロードセル40、制御基板41、及び電池ボックス38が筐体4に収容されている。ここで、計量皿2、起歪体29、歪ゲージ30、皿受31、およびロードセル40が計量機構を構成している。また、電池ボックス38、電池39、制御基板41、及び所要の電気配線等(図示せず)が電装品を構成している。
【0048】
筐体4(底板5及びカバー部材6)の外面にはさらに、電源ON−OFFシートキースイッチ32、操作シートキースイッチ33、及び高さ調整脚35a、35b、35c、35dが配設されている。
【0049】
電源ON−OFFシートキースイッチ32は、デジタル秤1の電源のオンおよびオフを切り替えるものであり、操作シートキースイッチ33は、各種設定等を行うための入力手段である。各種設定としては、零点補正、風袋引き等の設定等が挙げられる。
【0050】
また、表示部34は、計量値等の情報を表示させるものであり、LCD(Liquid crystal display)などにより実現できる。
【0051】
高さ調整脚35a、35b、35c、35dは、デジタル秤本体部3を支持するための脚であり、筐体4における底面の4隅に設けられ、デジタル秤本体部3を水平位置で支持できるように、それぞれの脚の高さが調節可能となっている。なお、特に、高さ調整脚35a、高さ調整脚35b、高さ調整脚35c、高さ調整脚35dそれぞれを区別する必要がない場合は、高さ調整脚35と称するものとする。
【0052】
乾燥ユニット36a、36bは、デジタル秤本体部3の内部の湿気(水分)を吸収するための乾燥剤14を収容したものであり、その詳細については後述する。なお、特に乾燥ユニット36aと乾燥ユニット36bとを区別して説明する必要が無い場合は、単に乾燥ユニット36と称する。
【0053】
底蓋7は、上述のように、デジタル秤本体部3の内部に収容されている電池ボックス38の開口部を閉止するためのものである。すなわち、底蓋7はデジタル秤本体部3に対して着脱可能となっている。そして、底蓋7をデジタル秤本体部3から取り外すと、電池ボックス38の開口部5bが外部に曝されるようになっている。この開口部5bから電池39を電池ボックス38内に収容させることができる。なお、底蓋7のはめ込み部分には上述のようにシール部材9Bが取り付けられており、外部からの浸水を防ぐことができるようになっている。
【0054】
筐体4の内部に備えられている電池ボックス38は、上述したように電池39を収容するものである。電池ボックス38は、不図示の電極を備え、該電極は不図示の配線を介して制御基板41の電力供給端子(不図示)に接続される。
【0055】
ロードセル40は、計量皿2に載置された物品(被計量物)から加えられた荷重から、物品(被計量物)の重量を求めるものである。ロードセル40は、力に比例して変形する起歪体29とその変形量(歪)を測定する歪ゲージ30とを備えており、物品(被計量物)から起歪体29に加えられた荷重による起歪体29の変形量(歪)から、該物品(被計量物)の重量を検出する。
【0056】
より具体的には、ロードセル40には、例えば、歪に比例して電気抵抗が変化する4箇所の歪ゲージ30でホイートストンブリッジが構成されている。そして、このホイートストンブリッジからは、印加電圧に比例し、かつ、歪に比例した非常に小さい電圧信号を制御基板41に対して出力する。制御基板41ではこの小さな電圧信号を増幅させ、物品の重量を数値として表示部34で表示できるように制御する。
【0057】
制御基板41は、デジタル秤1の各種制御を行うものである。制御基板41は、デジタル秤本体部3において、デジタル秤1の前方部、すなわち、表示部34が備えられている側に設けられている。図3の例では、制御基板41は、表示部34の背面側に設けられる。
【0058】
また、図4に示すようにデジタル秤1(正確には筐体4)の底部20にはデジタル秤1の持ち運びを容易とするために該底部20からデジタル秤1の上方側に向かって窪んだ凹部28a、28bが設けられている。そして、その凹部28a、28bの側面の少なくとも一部は、防水透湿性素材27a、27bから構成されている。図4は、図1のデジタル秤1の底部側を示す図である。
【0059】
デジタル秤1は、防水性を高めるために、接合部10等をシール部材9A、9Bにより塞ぎ、かつ筐体4と皿受31との間をダイヤフラム11でシールしているため、外部から密閉された構造となる。しかしながら、デジタル秤1の計量精度を高めるためには、デジタル秤本体部3(より具体的には筐体4)の内外の気圧の均衡を保つ必要がある。そこで、本実施の形態に係るデジタル秤1では、水がかかる可能性が小さい底部20の凹部28a、28bの側面に防水透湿性素材27a、27bを用いて気圧調整を行うことができるようになっている。
【0060】
なお、この防水透湿性素材27a、27bとしては、ポリテトラフルオロエチレンを延伸加工したフィルムとポリウレタンポリマーを複合化して作った素材、いわゆるゴアテックス(登録商標)を用いることができる。
【0061】
このように、本実施の形態に係るデジタル秤1は、デジタル秤本体部3内外の気圧を均衡に保つ必要があるため、底部20における一部に防水透湿性素材27a、27bを用いている。このため、デジタル秤本体部3の内部に防水透湿性素材27a、27bを通じて湿気を含む空気が侵入し、デジタル秤1を取り巻く外界の急激な温度変化によって結露が生じやすくなる。なお、デジタル秤1を取り巻く外界の急激な温度変化としては、冷凍された加工品の重量を計量した後、高温のお湯によって洗浄がなされた場合などが想定される。
【0062】
そこで、デジタル秤1では、生じた結露により電池39、制御基板41の電子回路、およびロードセル40の歪ゲージ30など水気を嫌う部材に悪影響を与えないようにするため、乾燥ユニット36a、36bをデジタル秤本体部3(筐体4)の内部に備えている。以下において、乾燥ユニット36について詳細に説明する。
【0063】
(乾燥ユニットの構成)
乾燥ユニット36は、図5に示すように、乾燥剤14を収容するための乾燥ユニット本体部15と、キャップ13とを備えてなる構成である。これら、乾燥ユニット本体部15とキャップ13とは、透明な合成樹脂から形成される。なお、図5は、図1のデジタル秤1の乾燥ユニット36の分解図である。
【0064】
なお、乾燥ユニット36に収容する乾燥剤14としては、例えば、水分を吸着し、加熱により水分を放出するシリカゲルが利用できる。また、シリカゲルの水分の吸着力の状態を示すために、塩化コバルトなどの水分の指示薬を添加している。このため、乾燥剤の水分の吸着力の有無を色変化により認識することができる。
【0065】
乾燥ユニット本体部15は、図5に示すように、円筒形の軸部51と多角形状の頭部52とを備えた柱状の形状(いわゆるボルト形状)をしている。頭部52は、乾燥ユニット本体部15の基端部に形成され、軸部51は、乾燥ユニット本体部15の頭部52を除いた全部分に形成されている。
【0066】
軸部51は、ねじ溝(雄ねじ)54、ゴムパッキング55、および収容部56を備えている。
【0067】
収容部56は、軸部51にほぼ全長に渡って形成された中空部分であり、この中空部分に乾燥剤14を収容することができる。
【0068】
より具体的には、軸部51の頭部52と反対側の端部(ねじ先)に開口部53が設けられている。そしてこの開口部53から乾燥剤14を収容部56に収容できるようになっている。また、収容部56の壁面には複数の穴が形成されており、この穴により水分を含む空気が入り込むことができるようになっている。
【0069】
ねじ溝54は、乾燥ユニット36をデジタル秤本体部3に設けられているねじ穴(開口、雌ねじ)に挿入して螺合するためのものである。このねじ溝54は、軸部51における頭部52側の一定範囲に形成されている。
【0070】
ゴムパッキング55は、乾燥ユニット36のデジタル秤本体部3への装着後、その装着位置から浸水することを防ぐためのものである。このゴムパッキング55は、軸部51における頭部52の座面近傍に設けられる。
【0071】
キャップ13は、収容部46に収容した乾燥剤14が乾燥ユニット本体部15から抜け落ちないようにするために、開口部53を塞ぐものである。乾燥ユニット本体部15に乾燥剤14が収容された後に、乾燥ユニット本体部15の開口部53にはめ込まれる。
【0072】
なお、本実施の形態に係る乾燥ユニット36は、透明の合成樹脂から形成されていたが、該乾燥ユニット36が必ずしも透明である必要はない。しかしながら、乾燥ユニット36が、透明であり、該乾燥ユニット36内に収容された乾燥剤14の色の変化を識別できる構成になっている方が、乾燥剤14の取替えの必要性を容易に判断することができるため好適である。
【0073】
また、本実施の形態に係る乾燥ユニット36は、合成樹脂から形成されていたが、これに限定されるものではなく、乾燥ユニット36全体、またはその一部が、例えば、ステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、クロムモリブデン鋼などの金属により形成されていてもよい。乾燥ユニット36の材質は、加工の容易性、製造コスト、求められる強度、重量等に応じて適宜選択される。
【0074】
(乾燥ユニットの取り付け位置)
次に、上述した構成を有する乾燥ユニット36の取り付け位置について説明する。乾燥ユニット36の取り付け位置は、以下の条件を考慮して決定される。すなわち、デジタル秤本体部3の内部において水気を嫌う部材の近傍に乾燥剤14が配置されるように乾燥ユニット36が取り付けられる。
【0075】
さらにまた、外部から浸水しにくい取り付け位置、あるいは乾燥剤14の水分の吸着力の状態を確認し易い位置であることが好ましい。
【0076】
より具体的には、水気を嫌う部材近傍に乾燥剤が配置されるように取り付けられる位置とは、例えば、図3に示すように、制御基板41と電池39との間、ロードセル40の近傍などに乾燥剤14が位置するような取り付け位置が挙げられる。
【0077】
また、外部からの浸水が生じにくい位置としては、乾燥ユニット36の頭部52の配置位置(すなわち、乾燥ユニット36とデジタル秤本体部3との螺合位置)がデジタル秤本体部3の底部20となる位置が挙げられる。つまり、図3における乾燥ユニット36aの取り付け位置である。
【0078】
また、乾燥剤14の水分の吸着力の状態を確認しやすい位置としては、乾燥ユニット36の頭部52の配置位置(乾燥ユニット36とデジタル秤本体部3との螺合位置)がデジタル秤本体部3の側面21となる位置が挙げられる。つまり、図3における乾燥ユニット36bの取り付け位置である。
【0079】
乾燥ユニット36aの位置の場合は、デジタル秤本体部3の底部20に乾燥ユニット36aの頭部52が位置するため、浸水する可能性が小さく防水性を高める点で有利である。その一方で、乾燥剤14の水分の吸着状態を調べるためには、デジタル秤1を持ちあげる必要があり、ユーザに負担を強いることとなる。
【0080】
一方、乾燥ユニット36bの位置の場合、デジタル秤本体部3の側面21に乾燥ユニット36bの頭部52が位置するため、測定対象物が水気を多く含むものであるとき、もしくは洗浄時等において水がかかり、デジタル秤本体部3内部に浸水する可能性が高くなる。それゆえ、前者に比べて防水性の点で劣ることとなる。しかしながら、乾燥剤14の水分の吸着状態は、デジタル秤1を持ちあげることなく容易に確認できるため、前者の位置よりも有利である。
【0081】
本実施の形態に係る乾燥ユニット36は、少なくとも、水気を嫌う部材近傍に乾燥剤14が配置されればよく、乾燥ユニット36とデジタル秤本体部3との螺合位置をデジタル秤本体部3の底部20とするのか、側面21とするのかは、デジタル秤1の使用態様に応じて適宜決定されることが好適である。
【0082】
また、デジタル秤1が備える乾燥ユニット36の数は、図3に示すような2つに限定されるものではない。高い水分の吸着力を有し、大きなサイズの乾燥剤14を収容できる乾燥ユニット36を1つ使用する構成であってもよい。また、小さいサイズの乾燥ユニットを3つ以上使用する構成としてもよい。
【0083】
次に、以上のように構成されたデジタル秤1の作用効果を説明する。デジタル秤1は、例えば、冷凍された加工品の重量を計量するのに使用される。そうすると、計量時にデジタル秤本体部3の内部に防水透湿性素材27a、27bを通じて湿気を含む空気が侵入する。そして、計量が終了すると、例えば、高温のお湯によって洗浄がなされる。この場合、何ら結露対策が講じられていない場合には、デジタル秤本体部3の筐体4の内部の湿気(水分)が結露しやすくなる。しかしながら、本実施の形態のデジタル秤1には、乾燥ユニット36が取り付けられているので、乾燥ユニット36の収容部56に収容された乾燥剤14によって筐体4の内部の湿気が吸着される。このため、筐体4の内部における結露を防止することができる。
【0084】
また、デジタル秤の計量及び洗浄は繰り返し行なわれるので、いずれ乾燥ユニット36の水分吸着能力が失われるが、乾燥ユニット36は、筐体4の外部から取り外し可能に取り付けられている。このため、乾燥ユニット36を筐体4から容易に取り外すことができる。そして、乾燥ユニット36を取り外して、乾燥剤14を交換することで、乾燥剤14の水分吸着能力を管理できる。また、乾燥ユニット36は、乾燥剤14の色を筐体4の外部から視認することで、乾燥剤14の水分吸着能力の有無を判別することができので、乾燥剤14の交換時期を的確に把握することができる。
【0085】
なお、本実施の形態に係るデジタル秤1は、歪ゲージ式ロードセルを利用して物品(被計量物)の重量を求める秤であるが、これに限定されるものではない。例えば、荷重センサとして電磁力平衡方式(電磁力補償方式、電磁式)を採用した電子天秤などのような秤であってもよいし、静電容量方式を採用した秤であってもよい。
【0086】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明のデジタル秤は、防水性を備えかつ内部における結露を防止可能なデジタル秤等として有用である。
【符号の説明】
【0088】
1 デジタル秤
3 デジタル秤本体部
4 筐体
5 底板
5a 外縁部
5b 開口
6 カバー部材
6a 当接部
7 底蓋
8 開口
9A シール部材
9B シール部材
10 接合部
11 ダイヤフラム
13 キャップ
14 乾燥剤
20 底部
21 側面
22〜24 ねじ
30 歪ゲージ
36 乾燥ユニット
39 電池
40 ロードセル
41 制御基板
51 軸部
52 頭部
54 ねじ溝
56 収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の重量を計量し、該計量により得られた計量値を数値化して電気的に表示するデジタル秤であって、
前記計量を行う計量機構の一部と前記計量値を数値化して電気的に表示するための電装品とを収容し、かつ所定の防水レベルに密閉された筐体と、
乾燥剤を収容し、該乾燥剤により前記筐体内における水分を吸着して該筐体内を乾燥させるように外部から取り外し可能に該筐体に取り付けられた乾燥ユニットと、を備える、デジタル秤。
【請求項2】
前記乾燥ユニットは、前記乾燥剤を収容するための収容部を備え、かつ前記収容部が前記筐体内において前記計量機構の一部及び前記電装品のうち水分に起因して不具合が生じる部材と近接するように前記筐体に取り付けられている、請求項1に記載のデジタル秤。
【請求項3】
前記筐体には、雌ねじが形成された開口が設けられており、
前記乾燥ユニットは、柱状に形成され、基端部に前記筐体の開口と螺合する雄ねじが形成され、前記基端部より先の部分に前記収容部が形成されており、
前記乾燥ユニットは、前記収容部が前記筐体内に位置するように前記筐体の開口に挿入されるとともに前記基端部が前記筐体の開口に螺合するようにして、前記筐体に取り付けられている、請求項2に記載のデジタル秤。
【請求項4】
前記乾燥剤は含水量に応じて色が変化するものであり、
前記乾燥ユニットは、前記収容部に収容された前記乾燥剤の色が該乾燥ユニットの基端部から視認可能なように構成されている、請求項3に記載のデジタル秤。
【請求項5】
前記計量機構の一部は、前記物品の重量を検出するロードセルを含んでおり、
前記乾燥ユニットは、前記収容部が前記ロードセルと近接するように前記筐体に取り付けられている、請求項2に記載のデジタル秤。
【請求項6】
前記電装品は、前記計量値を数値化して電気的に表示するための電子部品が搭載された基板を含んでおり、
前記乾燥ユニットは、前記収容部が前記基板と近接するように前記筐体に取り付けられている、請求項2に記載のデジタル秤。
【請求項7】
前記電装品は、前記デジタル秤を作動させる電源としての電池が装着される電池装着部を含んでおり、
前記乾燥ユニットは、前記収容部が前記電池装着部と近接するように前記筐体に取り付けられている、請求項2に記載のデジタル秤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−88104(P2012−88104A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233564(P2010−233564)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000208444)大和製衡株式会社 (535)