説明

デスケーリングシステム

【課題】圧延材投入スケジュール等に応じて圧力が変動するような場合においても、当該変動に追随して品質や生産性に影響を与えずに、最大限の時間で省エネを実施することができるデスケーリングシステムを提供する。
【解決手段】圧延材の表面に高圧水を噴射してスケールを除去するデスケーリングシステムであって、主配管7に水を供給する複数のポンプ5−1〜5−4と、主配管7に設けられ、複数のポンプ5−1〜5−4により供給された水を噴射する複数のバルブ6−1〜6−8と、複数のバルブ6−1〜6−8の開閉スケジュール情報を収集する情報収集部(レベル2制御装置1、レベル1制御装置2)と、情報収集部により収集された開閉スケジュール情報に基づいて、複数のポンプ5−1〜5−4のうち制御対象となる1以上のポンプ(ポンプ5−1)のモータ回転数を算出する省エネ制御装置3と、省エネ制御装置3により算出されたモータ回転数に基づいて、制御対象となる1以上のポンプ(ポンプ5−1)のモータ回転数を制御するインバータ4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デスケーリング設備のポンプ及び駆動用電動機と当該ポンプが接続されている配管において、デスケーリング用ノズルの開閉に伴う圧力変動、流量変動を順次予測、推定しつつ負荷に対応した圧力、流量を確保し、同時に電動機の消費電力を最小とするデスケーリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のデスケーリング設備は、圧延ロール前後に配置されたデスケーリングノズルから高圧噴水を噴射して圧延材表面のスケールを除去するものであり、圧延材の位置に応じてタイミングを見て必要なノズルを開いて噴射する。噴水の提供としては、貯水槽で複数台のポンプを並列接続し揚水したのち、共通配管に配置されたノズルに提供する。
【0003】
ポンプは商用運転であるから、常にポンプが供給できる最大限の圧力を本管に供給している。またインバータ制御している場合、圧延材が噴流を必要としない場合は、従来のデスケーリング設備は、周波数を下げて本管圧を下げる運転を実施している。
【0004】
また、デスケーリング設備の主仕様としては、圧延材の酸化スケール除去と温度低下の減少防止が重要な課題であり、この制御のために検討されている。
【0005】
特許文献1には、省エネルギーを図りつつ、噴射流体の圧力低下を抑制できることを課題とする高圧ポンプにおける圧力制御方法が記載されている。この圧力制御方法は、制御装置において検出した蓄圧器の内圧Paに基づいて常時内圧Paの変化率を求め、この変化率が設定変化率以上に達した場合にはヘッダーからの同時噴射であると認識し、その場合には内圧Paが固定の下限設定値PL以上であっても、上限設定値PH と下限設定値PL の間で予め設定した値PM 以下の場合にはポンプにオンロード指令を出し、ポンプをオンロードするタイミングを時間的に速くするので、ヘッダー噴射圧力の低下が抑制でき、ヘッダーからの同時噴射状態での噴射水量の増大にも対応できる。
【0006】
また、同時噴射状態でなく噴射水量が少ない場合には、蓄圧器の内圧が下限設定値以下となった場合にポンプにオンロード指令を出すので、必要以上にポンプをオンロードさせることがなく、ポンプに設置されているロード切替え弁の切替え回数の増加を抑制できる。
【0007】
したがって、この高圧ポンプにおける圧力制御方法によれば、蓄圧器やポンプの容量を大きくすることなく、噴射水量が増加した場合でもヘッダーの噴射圧力の低下を抑制できる。また、蓄圧器の内圧が下限設定値以下になった場合にもポンプにオンロード指令を出す場合には、オンロード回数を必要以上に増加させることがなく、機械の寿命が短くなることもない。
【0008】
特許文献2には、蓄圧器を用いずに、且つ省エネルギー化を課題とする熱間鋼材のデスケーリング方法及び装置が記載されている。このデスケーリング方法は、噴射ヘッダからの高圧水噴射の開始に際し、先ず噴射弁を開とし、次いで高圧ポンプの吐出圧を所定圧まで高めて高圧水噴射によるデスケーリングを行い、噴射ヘッダからの高圧水噴射の停止に際しては、先ず高圧ポンプの吐出圧を所定圧まで低下させ、次いで噴射弁を閉としてデスケーリングを終了する。
【0009】
このデスケーリング方法によれば、高圧ポンプに急変速ポンプを用いて、噴射時にはポンプを高速回転させて高圧水を供給するようにし、非噴射時にはポンプを低速回転させるようにしたので、省エネルギーを達成することが可能であり、また、噴射弁を低圧状態で開閉することができるから、弁を損傷することがない。さらに、高圧水噴射開始時にポンプ吐出圧が急激に低下することがないから蓄圧器を設置する必要がなく、したがって高圧ガス取締法に基づく蓄圧器の定期点検も必要がなく、かつ設備費の節減を実現し得る。
【0010】
特許文献3には、適切なスケール除去能力で熱間圧延材のスケールを除去し、且つスケール除去後の熱間圧延材温度を適正な温度にすることを課題とするデスケーリング装置が記載されている。このデスケーリング装置は、圧延材データ及びデスケーリングデータからデスケーリングによる圧延材温度低下量及びスケール除去量の目標値を予測する手段を備え、その予測された目標値になるように高圧水の圧力を制御する手段及びその予測された目標値になるようにノズルの流量係数を制御する手段のうち少なくとも一つを設けているので、適切なスケール除去能力で熱間圧延材のスケールを除去し、且つスケール除去後の熱間圧延材温度を適正な温度にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−167102号公報
【特許文献2】特開平11−104729号公報
【特許文献3】特開平11−156426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来のデスケーリング装置は、上述したように構成されているので、商用運転又はインバータ運転されている場合、実際に圧延されているときの本管圧を監視して本圧力を確保するように制御しており、商用運転の時は必要以上の圧力が発生している場合があった。
【0013】
また、インバータ制御している場合でも、次にどのバルブが開くのか、あるいは閉じるのかに関する情報を使用せずに制御しているので、次の状態(例えば次のバルブの開閉、次の圧延材の圧延)での本管における圧力発生値、流量を推定しておらず、本管圧に正確に追随できないため、必要以上の圧力が出ている場合に省エネ制御しても十分な効果が得られない等の問題点があった。
【0014】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するもので、圧延材投入スケジュール等に応じて圧力が変動するような場合においても、当該変動に追随して品質や生産性に影響を与えずに、最大限の時間で省エネを実施することができるデスケーリングシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るデスケーリングシステムは、上記課題を解決するために、圧延材の表面に高圧水を噴射してスケールを除去するデスケーリングシステムであって、配管に水を供給する複数のポンプと、前記配管に設けられ、前記複数のポンプにより供給された水を噴射する複数の噴射口と、前記複数の噴射口の開閉スケジュール情報を収集する情報収集部と、前記情報収集部により収集された開閉スケジュール情報に基づいて、前記複数のポンプのうち制御対象となる1以上のポンプのモータ回転数を算出するモータ回転数算出部と、前記モータ回転数算出部により算出されたモータ回転数に基づいて、前記複数のポンプのうち制御対象となる1以上のポンプのモータ回転数を制御する回転数制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、圧延材投入スケジュール等に応じて圧力が変動するような場合においても、当該変動に追随して品質や生産性に影響を与えずに、最大限の時間で省エネを実施することができるデスケーリングシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1の形態のデスケーリングシステムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1の形態のデスケーリングシステムの動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例1の形態のデスケーリングシステムのインバータ制御によるポンプ特性を示す図である。
【図4】本発明の実施例1の形態のデスケーリングシステムにおけるバルブ開閉タイミング及び発生する本管圧力変動を示す図である。
【図5】本発明の実施例1の形態のデスケーリングシステムにおいて商用運転によるポンプが複数接続されている場合の総合ポンプ特性を示す図である。
【図6】本発明の実施例1の形態のデスケーリングシステムにおいて商用運転によるポンプが複数接続され、インバータ運転によるポンプが1台接続されている場合の総合ポンプ特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のデスケーリングシステムの実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。まず、本実施の形態の構成を説明する。図1は、本発明の実施例1のデスケーリングシステムの構成例を示すブロック図である。本実施例のデスケーリングシステムは、熱延設備、厚板設備等において圧延材の表面に高圧水を噴射してスケールを除去するものであり、図1に示すように、レベル2制御装置1、レベル1制御装置2、省エネ制御装置3、インバータ4、電動機/ポンプ5、バルブ6、主配管7、及び貯水槽8により構成される。
【0020】
このデスケーリングシステムは、デスケーリングを行うに際し、最初に上流側に配置されたHSB(Horizontal Scale Breaker)が高圧水の噴射によって圧延材のスケールを除去し、粗圧延(Roughing mill)を行った後に、FSB(Finisher Scale Breaker)が再びスケールの除去を行い、最後に仕上げ圧延(Finishing mill)により圧延材料の圧延を行う。図1中に示すデスケーリングシステムは、1例として粗圧延機を2台(R1,R2)備え、仕上げ圧延機をn台(F1,…,Fn)備えている。
【0021】
図1中におけるR1entは1台目の粗圧延機の入り側(enter)を示し、R1delは1台目の粗圧延機の出側(delivery)を示す。また、図1中における太線矢印は、1例として圧延材料の位置を示しており、仕上げ圧延を実施例している圧延材と、次のコイルが粗圧延を実施している様子を表している。この場合において、粗圧延と仕上げ圧延とは、非同期にそれぞれのバルブを開閉する。
【0022】
レベル2制御装置1とレベル1制御装置2とは、本発明の情報収集部に対応し、複数の噴射口(バルブ6−1〜6−8)の開閉スケジュール情報を収集する。具体的には、レベル2制御装置1は、上位制御系であり、次に圧延するコイル材料情報等を含む圧延材料投入スケジュールに関する情報を外部から受信し、コイルごとに必要なデスケーリング流量を設定して、どのバルブをどのタイミングで開放するかといったバルブ開閉スケジュールを特定する。
【0023】
さらに、レベル2制御装置1は、各コイルの圧延順番を管理している。すなわち、レベル2制御装置1は、コイルが加熱炉で高温になった後に抽出され、圧延を開始すると、次の抽出タイミングを管理する。
【0024】
レベル1制御装置2は、上位制御系であるレベル2制御装置1の下で実機器を制御する装置であり、レベル2制御装置1が管理する抽出タイミングに基づいて、圧延材をトラッキングし、当該圧延材が適切なバルブ位置に達したときに、バルブを開閉する。また、レベル1制御装置2は、主配管7上のデスケーリング圧力監視も行う。
【0025】
省エネ制御装置3は、本発明のモータ回転数算出部に対応し、情報収集部(レベル2制御装置1、レベル1制御装置2)により収集された開閉スケジュール情報に基づいて、複数のポンプ5−1〜5−4のうち制御対象となる1以上のポンプ(ここではポンプ5−1)のモータ回転数を算出する。
【0026】
インバータ4は、本発明の回転数制御部に対応し、省エネ制御装置3により算出されたモータ回転数に基づいて、複数のポンプ5−1〜5−4のうち制御対象となる1以上のポンプ(ここではポンプ5−1)のモータ回転数を制御する。
【0027】
電動機/ポンプ5は、インバータ4によりモータ回転数を制御されるポンプであり、図1中におけるポンプ5−1を指すものとする。ポンプ5−1〜5−4は、図1に示すように、水を蓄えておく水槽から水を高圧で吸入し、配管(主配管7)に水を供給する。ただし、ポンプ5−1はインバータ運転を行うのに対し、その他のポンプ5−2〜5−4は商用運転を行うので、常にポンプが供給できる最大限の圧力を本管に供給する。
【0028】
なお、圧延していない場合には、ポンプ5−1〜5−4により水槽から吸入された水は、戻り配管により循環水系に戻される。
【0029】
複数のバルブ6−1〜6−8は、本発明の噴射口に対応し、配管(主配管7)に設けられ、複数のポンプ5−1〜5−4により供給された水を噴射する。
【0030】
貯水槽8は、本管圧(主配管7上の圧力)が設備仕様よりも下がった場合に、圧縮空気を利用して内部に貯めた水を放出し、本管圧を上昇させる。
【0031】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。図2は、本実施例のデスケーリングシステムの動作を示すフローチャートである。まず、既設設備であるレベル2制御装置1は、次に圧延するコイル材料情報等を含む圧延材料投入スケジュールに関する情報を外部から受信し、材料ごとに必要なデスケーリング流量を設定する(ステップS1)。必要なデスケーリング流量は、例えば材料の厚さ等により異なるので、レベル2制御装置1は、材料の厚さ等の情報を得ることでデスケーリング流量を算出してもよいし、直接流量情報を外部から得てもよい。
【0032】
次に、レベル2制御装置1は、設定したデスケーリング流量より、開くバルブの個数やタイミング(バルブ開閉スケジュール)を決定する(ステップS2)。すなわち、バルブにおける流量が既知であるため、レベル2制御装置1は、設定したデスケーリング流量をバルブにおける流量で割ることにより、開くバルブの個数を求めることができる。さらに、レベル2制御装置1は、上述したように、各コイルの圧延順番を管理しており、コイルが加熱炉で高温になった後に抽出され、圧延を開始すると、次の抽出タイミングを管理するので、バルブを開くタイミングも決定することができる。
【0033】
一方、レベル1制御装置2は、レベル2制御装置1が管理する抽出タイミングに基づいて、圧延材をトラッキングし、当該圧延材が適切なバルブ位置に達したときに、バルブを開閉する。さらに、レベル1制御装置2は、主配管7上のデスケーリング圧力監視も行う。
【0034】
次に、省エネ制御装置3は、情報収集部(レベル2制御装置1、レベル1制御装置2)により収集された開閉スケジュール情報に基づいて、主配管7上の圧力の推移を推定する(ステップS3)。具体的には、省エネ制御装置3は、予めポンプ特性を記憶しており、開閉スケジュール情報に含まれる「必要流量(バルブ開数からも求められる)」と「タイミング」とに基づいて、発生圧力を推定する。
【0035】
図3は、本実施例のデスケーリングシステムのインバータ制御によるポンプ特性を示す図であり、バルブの開閉により圧力変動が発生する原理を示している。図3に示すように、ポンプ特性は、流量が増加するにつれて圧力が低下する特性となっている。ポンプをインバータ運転して周波数を下げた場合における圧力と流量とは、ポンプの「相似則」にしたがって減少する。
【0036】
また、ポンプに対して管路の抵抗があり、ポンプ特性と管路抵抗曲線との交点が運転点となる。この管路抵抗曲線は、図3に示すように、圧力(P)が流量(Q)の2乗に比例する特性(P=aQ)となっており、開いているバルブの数が減ると立ち上がる(aが増加)一方、開いているバルブの数が増えるとより傾いた特性(aが減少)となる。言い換えれば、バルブが閉すると管路抵抗は増加し、開すると管路抵抗は減少する。
【0037】
すなわち、省エネ制御装置3は、開閉スケジュール情報に含まれるバルブ開数に基づいて管路抵抗曲線を特定し、予め記憶しているポンプ特性と管路抵抗曲線との交点から発生圧力を推定する。開閉スケジュール情報に基づいてどのタイミングでいくつバルブが開くのかがわかるため、省エネ制御装置3は、主配管7上の発生圧力の推移を推定することができる。
【0038】
なお、省エネ制御装置3は、レベル2制御装置1から次に圧延するコイル材料情報のうちデスケーリングに必要として設定された流量、バルブ開閉スケジュール、及び圧延材投入スケジュール等の情報を受信するとともに、さらにレベル1制御装置2からどのバルブを開閉するかの情報を入手して結合させ、ポンプ特性から発生するであろう圧力、流量を推定してもよい。いずれにしても、省エネ制御装置3は、主配管7上の発生圧力の推移を推定することができる。
【0039】
次に、省エネ制御装置3は、複数のポンプ5−1〜5−4のうち制御対象となる1以上のポンプ(ここではポンプ5−1)のモータ回転数を算出する。具体的には、省エネ制御装置3は、推定発生圧力が設備に必要なデスケーリング圧力以上の場合に、モータ回転数(ポンプ周波数)を低下させる(ステップS4)。
【0040】
図4は、本実施例のデスケーリングシステムにおけるバルブ開閉タイミング及び発生する本管(主配管7)圧力変動を示す図である。図4中の「HSB」、「R1ent/del」、「R2ent/del」、「FSB」、「F1」は、各位置におけるバルブの開閉状態を示しており、ONの場合にはバルブが開き、Offの場合にはバルブが閉じていることを示す。
【0041】
また、図4の最下段のグラフは、主配管7上に発生する圧力の推移を示す。省エネ制御装置3は、開閉スケジュール情報に基づいてどのタイミングでいくつバルブが開くのかがわかるため、図4の最下段に示すような発生圧力の推移を予め推定することができる。
【0042】
図4に示すように、開いているバルブの数が少ない場合には、主配管7上に発生する圧力が必要な圧力範囲を超える場合があり、省エネ制御装置3は、そのような場合に、モータ回転数(ポンプ周波数)を低下させる。
【0043】
すなわち、省エネ制御装置3は、情報収集部により収集された開閉スケジュール情報に基づいて、主配管7の管路抵抗を推定し、推定した管路抵抗と複数のポンプ5−1〜5−4の総合特性とに基づいて発生圧力の推移を推定するとともに、推定した発生圧力が所定値以上となるタイミングに合わせて、複数のポンプ5−1〜5−4のうち制御対象となる1以上のポンプ(本実施例においてはポンプ5−1)のモータ回転数を低下させる。
【0044】
このように、省エネ制御装置3は、次に開閉するバルブが判明していることから、次の時点を含む将来で本管圧が上昇するのか、減少するのか予測可能であるので、最大限の時間で省エネを実施することができる。
【0045】
なお、ポンプ容量が大きい場合には、省エネ制御装置3がモータ回転数(ポンプ周波数)を低下させてから再び上昇させるのに一定時間を要することも考えられる。したがって、省エネ制御装置3は、推定発生圧力が設備に必要なデスケーリング圧力以上の場合にモータ回転数(ポンプ周波数)を一律に低下させるのではなく、推定発生圧力が設備に必要なデスケーリング圧力以上になるとしても、短時間で必要なデスケーリング圧力範囲に再度収まると推定できるときには、モータ回転数の下げ幅を小さくし、あるいはモータ回転数を下げないといった動作も考えられる。
【0046】
すなわち、省エネ制御装置3は、複数のポンプ5−1〜5−4のうち制御対象となる1以上のポンプ(ここではポンプ5−1)のモータ回転数を低下させる際に、推定した発生圧力が所定値以上となってから所定値未満に戻るまでの時間に応じてモータ回転数の下げ幅を調節することもできる。
【0047】
図5は、本実施例のデスケーリングシステムにおいて商用運転によるポンプが複数接続されている場合の総合ポンプ特性を示す図であり、横軸が流量を示し、縦軸が圧力を示している。図5の(1)〜(6)の破線は、管路抵抗曲線を示すものであり、開いているバルブの数が少ない順に(1)から(6)までの曲線が描かれている。すなわち、(1)の管路抵抗曲線は、開いているバルブの数が最も少ない場合を示し、例えばHSBのバルブ(図1のバルブ6−1)のみが開いている場合である。逆に、(6)の管路抵抗曲線は、開いているバルブの数が最も多い場合を示し、例えば全てのバルブ(図1のバルブ6−1〜6−8)が開いている場合である。
【0048】
したがって、図5に示すように、管路抵抗曲線は各バルブの開閉数で決まり、圧延中はこの抵抗曲線がバルブ開閉に応じてダイナミックに動くことになる。
【0049】
また、図5の実線は、1台、2台、3台、4台のポンプを商用運転した場合における、それぞれの総合ポンプ特性を示す。この管路抵抗曲線とポンプ特性との交点により動作し、主配管7上の流量と圧力は決定される。図5に示すように、管路抵抗曲線は流量の2乗で増加するので、ポンプ台数を増加させても流量は比例して増加しないことがポイントとなる。例えば、図5において開いているバルブの数が1つであるために管路抵抗曲線が(1)となる場合には、流量は1台商用運転の場合も4台商用運転の場合もほとんど変化しない。
【0050】
図6は、本実施例のデスケーリングシステムにおいて商用運転によるポンプが複数接続され、インバータ運転によるポンプが1台接続されている場合の総合ポンプ特性を示す図である。
【0051】
図6の右側に示す太い実線は、ポンプ3台を商用運転してポンプ1台をインバータ運転した場合(ポンプは合計4台)の総合ポンプ特性を示している。ただし、この総合ポンプ特性は、インバータ制御されているポンプが商用運転されているポンプよりも低い周波数で動作している場合を示しており、例えば3台の商用運転されているポンプが60Hzの周波数で動作し、且つ1台のインバータ運転されているポンプが40Hzの周波数で動作している場合にこのような特性となる。
【0052】
なお、図6は、ポンプ1台を商用運転した場合と、ポンプ2台を商用運転した場合と、ポンプ3台を商用運転した場合の総合ポンプ特性も併せて記載している。
【0053】
図3において説明したように、ポンプをインバータ運転して周波数を下げた場合における圧力と流量とは、ポンプの「相似則」にしたがって減少する。したがって、3台商用運転のポンプと1台インバータ運転のポンプとの合成ポンプ特性は図6右側の太い実線のようになる。
【0054】
図6において、設備仕様に対して発生圧力が高い領域(圧力が16Mpa以上)では商用ポンプにて必要圧力が供給されているので、省エネ制御装置3は、インバータ4によるポンプ5−1の周波数を下げても設備的に問題ない。
【0055】
すなわち、バルブが閉じて抵抗曲線が増加し、設備仕様よりも発生圧力が高くなることが予見できる場合に、省エネ制御装置3は、インバータ4によりポンプ5−1の周波数を下げることで、ポンプ動力を省エネすることができる。
【0056】
また、省エネ制御装置3は、推定発生圧力が設備に必要なデスケーリング圧力以上の場合に、モータ回転数(ポンプ周波数)を上昇させることで必要な圧力を確保してもよい(ステップS5)。
【0057】
すなわち、開いているバルブの数が多い場合には、主配管7上に発生する圧力が必要な圧力範囲未満となる場合があり、省エネ制御装置3は、そのような場合に、モータ回転数(ポンプ周波数)を上昇させることで対処する。上述したように、省エネ制御装置3は、次に開閉するバルブが判明していることから、次の時点を含む将来で本管圧が減少することを予測できるので、本管圧が必要な圧力範囲を下回る瞬間に合わせてモータ回転数を上昇させることで、実際には必要な圧力範囲を下回ることなく維持することができる。
【0058】
上述のとおり、本発明の実施例1の形態に係るデスケーリングシステムによれば、圧延材投入スケジュール等に応じて圧力が変動するような場合においても、当該変動に追随して品質や生産性に影響を与えずに、最大限の時間で省エネを実施することができる。
【0059】
すなわち、本実施例のデスケーリングシステムは、情報収集部により収集された開閉スケジュール情報に基づいて得られる管路抵抗とポンプ特性とから発生圧力を推定し、推定した圧力に基づいて省エネが実現できるようにモータ回転数を算出する省エネ制御装置3を備えているので、効率よくポンプ5−1のモータ回転数を調節して省エネを実現することができる。
【0060】
特に、圧延材料の投入計画から得られるデスケーリング使用流量や投入時間間隔を開閉スケジュール情報として得ることにより、省エネ制御装置3は、将来の複数のバルブ6−1〜6−8開閉を認識することで、対応して発生する圧力を予測し、設備にとって過剰となる圧力の発生時間を精度よく把握することができる。
【0061】
さらに、将来の発生圧力の推移を予測することにより、省エネ制御装置3は、推定した発生圧力が所定値以上となってから所定値未満に戻るまでの時間に応じてモータ回転数の下げ幅を調節することで、ポンプ5−1のモータ回転数調整にかかる時間を考慮した最適な省エネ制御が可能となる。
【0062】
すなわち、推定発生圧力が設備に必要なデスケーリング圧力以上になってから必要なデスケーリング圧力範囲に収まるまでの時間が短時間であると推定できるときには、省エネ制御装置3は、モータ回転数の下げ幅を小さくし、あるいはモータ回転数を下げないことで、効率よくポンプ5−1を動作させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係るデスケーリングシステムは、商用運転とインバータ運転されるポンプにより配管を介して供給される水を使用して圧延材料のスケールを除去するデスケーリング設備に利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 レベル2制御装置
2 レベル1制御装置
3 省エネ制御装置
4 インバータ
5 電動機/ポンプ
6 バルブ
7 主配管
8 貯水槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延材の表面に高圧水を噴射してスケールを除去するデスケーリングシステムであって、
配管に水を供給する複数のポンプと、
前記配管に設けられ、前記複数のポンプにより供給された水を噴射する複数の噴射口と、
前記複数の噴射口の開閉スケジュール情報を収集する情報収集部と、
前記情報収集部により収集された開閉スケジュール情報に基づいて、前記複数のポンプのうち制御対象となる1以上のポンプのモータ回転数を算出するモータ回転数算出部と、
前記モータ回転数算出部により算出されたモータ回転数に基づいて、前記複数のポンプのうち制御対象となる1以上のポンプのモータ回転数を制御する回転数制御部と、
を備えることを特徴とするデスケーリングシステム。
【請求項2】
前記モータ回転数算出部は、前記情報収集部により収集された開閉スケジュール情報に基づいて前記配管の管路抵抗を推定し、推定した管路抵抗と前記複数のポンプの総合特性とに基づいて発生圧力の推移を推定するとともに、推定した発生圧力が所定値以上となるタイミングに合わせて、前記複数のポンプのうち制御対象となる1以上のポンプのモータ回転数を低下させることを特徴とする請求項1記載のデスケーリングシステム。
【請求項3】
前記モータ回転数算出部は、前記複数のポンプのうち制御対象となる1以上のポンプのモータ回転数を低下させる際に、推定した発生圧力が所定値以上となってから所定値未満に戻るまでの時間に応じてモータ回転数の下げ幅を調節することを特徴とする請求項2記載のデスケーリングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−192432(P2012−192432A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57631(P2011−57631)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)