説明

デッキまたは床用の軽量および低重金属含有量の2成分系滑り止めエポキシ被覆剤

【課題】軽く、重金属含有量が少なく、また改善された耐滑り性を与える被覆剤を提供する。
【解決手段】2成分系エポキシおよび熱硬化性樹脂の粒子を含む充填剤を含む滑り止め被覆剤が、デッキおよび床用、特に航空母艦飛行甲板用の、耐久性で、低質量の、低研磨性被覆剤を与える。この被覆剤は更に、現行のアルミニウムを主体とする滑り止めの被覆剤よりも、少ない重金属含有量を有するという利点を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年1月5日に「デッキまたは床用の2成分系滑り止めエポキシ被覆剤」の名称で出願された継続中の米国仮出願第60/883535号の利益を主張し、これはここに参照により組み込まれる。
【0002】
本発明は、包括的に滑り止めの被覆剤に関し、またより具体的には床およびデッキ用に適切な、軽量で低研磨性の、また低重金属含有量の滑り止め被覆剤に関する。
【背景技術】
【0003】
船舶のデッキ用の滑り止め被覆剤は、耐久性があり、環境に優しくそして軽量でなければならず、また一方でなお十分な耐滑り性を有していなければならない。海軍用の船舶、特に航空母艦には、多数の滑り止め被覆剤を使うことができる。例えば、航空母艦には、飛行甲板の着陸区域には「L組成」の滑り止め被覆剤を、その他の全ての区域には一般の滑り止め「G組成」を用いることができる。着陸区域のデッキの被覆剤は、アレスティング・ケーブルの磨耗を回避するために、非研磨性の凝集体を有していなければならない。通常は、飛行甲板の被覆剤は2成分系の反応性樹脂(エポキシ樹脂を含むが、それには限定されない)、充填剤、添加剤、チキソトロープ剤などを、アルミニウム顆粒/凝集体充填剤とともに含んでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現行の被覆剤は望まれるよりも未だ重く、多量の特定の重金属を含み、また改善された耐滑り性を与えない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様では、本発明は滑り止めの被覆剤用の組成物であり、この組成物は2成分系の反応性樹脂(エポキシ樹脂を含むが、それに限定されない)、充填剤、添加剤、チキソトロープ剤など、および熱硬化性および/もしくは熱可塑性樹脂の粒子を含む凝集体/顆粒充填剤を含んでいる。他の態様では、熱硬化性樹脂は特殊な種類のポリカーボネート樹脂である。
【発明の効果】
【0006】
通常は、本発明の組成物は、アルミニウムを主成分とする粒子を含む充填剤を同様に充填した組成物よりも、より少ない重金属含有量を有すること、およびアルミニウムまたは酸化アルミニウムを主成分とする粒子を含む充填剤を同様に充填した組成物よりも、約15%〜約30%小さい密度を有していることを特徴としている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施に用いられるエポキシ樹脂(他の熱硬化性2成分反応性樹脂もまた全体として、またはエポキシを改質するのに用いることができる)は、変えることができ、また慣用の、商業的に入手可能なエポキシ樹脂を含むことができる。2種またはそれ以上のエポキシ樹脂を組み合わせて用いることができる。一般に、現在、海軍の船舶のデッキ用途に用いられている公知のエポキシ樹脂を用いることができる。米国特許第7037958号明細書に記載されているように、このようなエポキシ樹脂としては、グリシド化樹脂、脂環式樹脂、エポキシ化油などが挙げられ、該特許をここに参照により組み込む。グリシド化樹脂としてはしばしば、グリシジルエーテル、例えばエピクロロヒドリンおよびビスフェノール化合物、例えばビスフェノールAの反応生成物;C4〜C28アルキルグリシジルエーテル;C2〜C28アルキルおよびアルケニルグリシジルエーテル;C1〜C28アルキル、モノおよびポリフェノールグリシジルエーテル;ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン(もしくはビスフェノールFもしくはノバラック(Novalac)、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン(もしくはビスフェノールA)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、およびトリス(4−ヒドロキシフェニル)メタンのポリグリシジルエーテル;上記のビスフェノール類の塩素化および臭素化生成物のポリグリシジルエーテル;ノボラック類のポリグリシジルエーテル;ジフェノール類のエーテルのエステル化によって得られる、芳香族ヒドロカルボン酸とジハロアルカンもしくはジハロゲンジアルキルエーテルとの塩のエステル化によって得られるジフェノールのポリグリシジルエーテル;フェノール類と少なくとも2つのハロゲン原子を含む長鎖ハロゲンパラフィン類の縮合によって得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル;N,N’−ジグリシジルアニリン;N,N’−ジメチル−N,N’−ジグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン;N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン;N,N’−ジグリシジル−4−アミノフェニルグリシジルエーテル;N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−プロピレンビス−4−アミノベンゾエート;フェノールノボラックエポキシ樹脂;クレゾールノボラックエポキシ樹脂;およびそれらの組み合わせ、が挙げられる。本発明に有用なエポキシ樹脂の代表的な例としては、ビス−4,4’−(1−メチルエチリデン)フェノールジグリシジルエーテルおよび(クロロメチル)オキシランビスフェノールAジグリシジルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。本発明を実施するのに用いることができる商業的に入手可能なエポキシ樹脂としては、アラルダイト(Araldite)GY6010、DER331、エパロイ(Epally)1500、エパロイ(Epalloy)1501、GZ7071PM75およびエポン(Epon)828が挙げられるが、これらに限定されない。通常は、100〜750エポキシ当量の如何なる慣用のエポキシ樹脂または水素化エポキシ樹脂も挙げられる。
【0008】
滑り止め被覆剤は、エポキシ被覆剤に凝集体物質を混合することによって作られる。本発明に用いることができる凝集体としては、熱硬化性および/または熱可塑性ポリマー樹脂を含んでいることができ、単独で、混合して、もしくは他の低研磨性凝集体と組み合わせて用いられる。このような樹脂としては、ポリカーボネート、例えばアリルジグリコールカーボネート、ABS、メチルメタクリレート、更に、硬化したエポキシ、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリエステルなど、が挙げられるが、それらには限定されない。凝集体物質は、特定の最終的な用途に望まれる粒子径に、磨砕し(ground)、粉砕し(milled)、または破砕される(crushed)。熱硬化性ポリカーボネートの好ましい便利な供給源は破砕された使用済みのメガネである。通常の粒子径は、150μm〜1600μmの範囲であり、また利用と摩擦係数の特性を最適化するために、これらの粒子の如何なる比率ででも、または混合物にも混合できる。
【0009】
更に、この凝集体は植物由来の凝集体を含んでいてもよい。このような植物由来の凝集体としては、例えば、磨砕した堅果(nuts)の殻であってよく、例としては、クルミ、チョウセンゴヨウの堅果(nuts)、ココナツなどが挙げられるが、それらには限定されない。植物由来の凝集体は、100%以下の植物由来の材料を含んでいてもよく、またはシリカを含まない土質材料から作られた凝集体/顆粒と混合されていてもよい。好ましくは、土質無機物は、約3〜約7のモース硬度値を有している。土質無機物の好ましい例としては、霞石閃長岩および非晶質ケイ酸塩ガラスが挙げられるが、それらには限定されない。
【0010】
ポリマー凝集体を100%の凝集体で、または部分的にもしくは全体的に植物由来の凝集体と置き換えて用いることができる。このようにして、凝集体は0%〜100%のポリマー凝集体および0%〜100%の植物由来の凝集体を含んでおり、ポリマー凝集体および植物由来の凝集体のパーセントは合計して100%となる。
【0011】
エポキシの成分を一緒に混合してエポキシの硬化を開始する前に、凝集体を、エポキシの2つの成分の樹脂または硬化剤のいずれか、またはその両方に混合することができる。
【実施例】
【0012】
既存の滑り止め被覆剤の代わりに本発明の滑り止め被覆剤を用いることによって多くの利益を得ることができる。第一に、本被覆剤は、アルミニウムまたは酸化アルミニウムを用いた現行のGもしくはL組成物よりも、同一体積基準で15%〜30%少ない重さである。第二に、本発明の被覆剤は、著しく低減された水準の重金属汚染物を含んでいる。この利益は、滑り止めがデッキから取り除かれ、そして埋立地に廃棄される場合に、これまで以上に制限的なEPA指針の故に、特に重要である。これらの金属は、以下に例示したように、従来技術に対して低減された総金属含有量を含んでいるが、それらには限定されない。
【0013】
【表1】

【0014】
第三に、一般のアルミニウム凝集体の平滑なまたは球形の粒子に比べて、該凝集体粒子は角がある傾向にあるために、本発明の被覆剤の耐滑り性はより優れている。耐滑り摩擦係数特性における典型的な改善を、MIL−PRF−246678の指針を用いて、アレスティング・ケーブルの50サイクルおよび500サイクルで測定し、次の通りである。
【0015】
【表2】

【0016】
本発明の被覆剤を、航空母艦の戦闘デッキ上で目隠し試験した。これらの試験は、本発明の被覆剤が十分な耐久性および耐滑り性を有しており、一方でまたアレスティング・ケーブルに対して十分に非研磨性であり、このような用途の要求に適合することを示した。
【0017】
法律に従って、本発明を構造的および方法的特徴について多かれ少なかれ具体的な言葉で記載してきた。しかしながら、本発明は開示しまた記載した具体的な特徴には限定されないことが理解されなければならない、何故ならばここに開示した方法は、本発明を実施するための好ましい形態を含むものであるからである。従って、本発明は、均等論に従って適切に解釈された添付の特許請求の範囲の適切な範囲の中の如何なる形態または変更をも主張する。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の被覆剤は、滑り止めのデッキおよび床が要求され、また低被覆剤質量が望まれるいずれの状況においても用いることができる。例としては、湿潤環境の床、例えば水上の船舶、例えばボート(boats)、荷船(barges)および船(ships)上のデッキおよび階段、航空母艦の戦闘デッキなどが挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2成分系エポキシおよび熱硬化性樹脂の粒子を含む充填剤を含む、滑り止め被覆剤用の組成物。
【請求項2】
熱硬化性樹脂がポリカーボネート樹脂である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
アルミニウムを主体とする粒子を含む充填剤を同等の充填量で有する組成物よりも少ない重金属含有量を有することを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項4】
アルミニウムを主体とする粒子を含む充填剤を同等の充填量で有する組成物よりも約15%〜約30%小さい密度を有することを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1種の植物由来の凝集体を更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
植物由来の凝集体が磨砕した堅実の殻を含む、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
植物由来の凝集体が更にシリカを含まない土質無機物を含む、請求項5記載の組成物。
【請求項8】
シリカを含まない土質無機物が約3〜約7のモース硬度を有する、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
シリカを含まない土質無機物が霞石閃長岩を含む、請求項7記載の組成物。
【請求項10】
実質的に水平な床表面、および該床表面を少なくとも部分的に覆う滑り止め被覆剤組成物を含む滑り止め床であって、該被覆剤組成物は2成分系のエポキシおよび熱硬化性樹脂の粒子を含む充填剤を含んでいる、床。
【請求項11】
熱硬化性樹脂がポリカーボネート樹脂である請求項10記載の床。
【請求項12】
被覆剤組成物が、アルミニウムを主体とする粒子を含む充填剤を同等の充填量で有する組成物よりも少ない重金属含有量を有することを特徴とする、請求項10記載の床。
【請求項13】
アルミニウムを主体とする粒子を含む充填剤を同等の充填量で有する組成物よりも約15%〜約30%小さい密度を有することを特徴とする請求項10記載の床。
【請求項14】
充填剤が少なくとも1種の植物由来の凝集体を更に含む、請求項10記載の床。
【請求項15】
植物由来の凝集体が更にシリカを含まない土質無機物を含む、請求項14記載の床。
【請求項16】
少なくとも1つの実質的に水平な階段またはデッキ表面、および少なくとも部分的に該表面を覆う滑り止め被覆剤組成物を含む水上用船舶であって、該被覆剤組成物が2成分系のエポキシおよび熱硬化性樹脂の粒子を含む充填剤を含む、船舶。
【請求項17】
熱硬化性樹脂がポリカーボネート樹脂である請求項16記載の船舶。
【請求項18】
被覆剤組成物が、アルミニウムを主体とする粒子を含む充填剤を同等の充填量で有する組成物に比べて約15%〜約30%小さい密度を有することを特徴とする請求項16記載の船舶。
【請求項19】
充填剤が少なくとも1種の植物由来の凝集体を更に含む、請求項16記載の船舶。
【請求項20】
植物由来の凝集体が更にシリカを含まない土質無機物を含む、請求項19記載の床。
【請求項21】
船舶が航空母艦である請求項16記載の船舶。
【請求項22】
デッキ表面が飛行甲板である請求項21記載の船舶。

【公表番号】特表2010−515787(P2010−515787A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544987(P2009−544987)
【出願日】平成20年1月4日(2008.1.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/050230
【国際公開番号】WO2008/086177
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(591203428)イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド (309)
【Fターム(参考)】