説明

デッキクレーン

【課題】重心を低くすることができ、またハウジングを不要にすることができるデッキクレーンを提供する。
【解決手段】貨物船1の上甲板2上に立設される筒状のクレーンポスト5と、該クレーンポスト5の上端部に旋回可能に設けられるベース部6と、該ベース部6に俯仰自在に設けられるジブ7と、少なくとも前記ジブ7の先端から垂下される吊り具の吊りロープ9を巻き上げ下げする吊り用ウインチ10又は前記ジブ7の俯仰用ロープ11を巻き上げ下げする俯仰用ウインチ12及び前記吊り用ウインチ10を有するコモンウインチ14とを備えたデッキクレーン4において、前記ベース部6の下にある前記クレーンポスト5内に前記吊り用ウインチ10又はコモンウインチ14を設置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッキクレーンに係り、特にウインチの設置場所を変更したデッキクレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4に示すように貨物船1の上甲板2には、積荷を船倉(荷室)3に搬入したり、船倉3から搬出するための荷役装置であるデッキクレーン4が設置されている(例えば、特許文献1参照。)。このデッキクレーン4は、図5ないし図6に示すように貨物船1の上甲板2上に立設された筒状のクレーンポスト5と、このクレーンポスト5の上端部に旋回可能に設けられたベース部6と、このベース部6に俯仰自在に設けられるジブ7と、少なくとも前記ジブ7の先端から垂下される吊り具8の吊りロープ9を巻き上げ下げする吊り用ウインチ10又は前記ジブ7の俯仰用ロープ11を巻き上げ下げする俯仰用ウインチ12及び前記吊り用ウインチ10を有するコモンウインチ14とを備えている。また、ベース部6にはクレーンポスト5に対してベース部6を旋回するための油圧モータ13が設けられている。
【0003】
前述のように吊り用ウインチ10及び俯仰用ウインチ12を共通の一つの支持フレーム15に纏めて配置したものをコモンウインチ(共通ウインチ)14という。図示例のコモンウインチ14は、俯仰用ウインチ12と吊り用ウインチ10とを共通の支持フレーム15に上下に配設してなり、この支持フレーム15の上部には各ウインチ10,12の駆動用の油圧モータ10a,12aやベース部6の旋回用の油圧モータ13に油圧を供給するためのポンプユニット16が設けられている。
【0004】
また、前記ベース部6上には、コモンウインチ14や旋回用の油圧モータ13を収容するためのハウジング17が設けられている。このハウジング17の前部にはデッキクレーン4の運転室18が設置されていると共に、ハウジング17の上部には吊りロープ9や俯仰用ロープ11を巻き掛けるための滑車19,20が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−247588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来のデッキクレーン4においては、前記ベース部6の上部に重量のある吊り用ウインチ10又はコモンウインチ14を設置しているため、重心が高くなっていた。また、ベース部6の上部に設置された吊り用ウインチ10又はコモンウインチ14を雨や波しぶきから保護するために、ハウジング17が必要であった。
【0007】
本発明は、前記事情を考慮してなされたものであり、重心を低くすることができ、ハウジングを不要にすることもできるデッキクレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、貨物船の上甲板上に立設される筒状のクレーンポストと、該クレーンポストの上端部に旋回可能に設けられるベース部と、該ベース部に俯仰自在に設けられるジブと、少なくとも前記ジブの先端から垂下される吊り具の吊りロープを巻き上げ下げする吊り用ウインチ又は前記ジブの俯仰用ロープを巻き上げ下げする俯仰用ウインチ及び前記吊り用ウインチを有するコモンウインチとを備えたデッキクレーンにおいて、前記ベース部の下にある前記クレーンポスト内に前記吊り用ウインチ又はコモンウインチを設置したことを特徴とする。
【0009】
前記ベース部の下部には、前記吊り用ウインチ又は前記コモンウインチを設置するための設置台が吊設されていることが好ましい。
【0010】
前記ベース部の上部には、フレームを介して運転室と、少なくとも前記吊りロープを巻きかける滑車又は吊りロープ及び俯仰用ロープをそれぞれ巻き掛ける滑車とが設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、重心を低くすることができ、ハウジングを不要にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るデッキクレーンの実施形態を概略的に示す斜視図である。
【図2】同デッキクレーンの要部を示す部分的縦断面図である。
【図3】デッキクレーンの他の実施形態を概略的に示す側面図である。
【図4】デッキクレーンを備えた貨物船を概略的に示す側面図である。
【図5】デッキクレーンを概略的に示す斜視図である。
【図6】従来のデッキクレーンの要部を概略的に示す図で、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態を添付図面に基いて詳述する。
【0014】
図1ないし図2に示すようにデッキクレーン4は、貨物船1の上甲板2上に立設された筒状(図示例では円筒状)のクレーンポスト5と、該クレーンポスト5の上端部に旋回可能に設けられる円板状のベース部(ベース板ともいう)6と、該ベース部6に俯仰自在に設けられるジブ7と、少なくとも前記ジブ7の先端から垂下される吊り具の吊りロープ9を巻き上げ下げする吊り用ウインチ10とを備えている。本実施形態では、前記ジブ7を俯仰用ロープ11を介して俯仰操作するための俯仰用ウインチ12も備えている。これら吊り用ウインチ10及び俯仰用ウインチ12は後述するようにコモンウインチ14として一つに纏められている。
【0015】
前記ベース部6は、クレーンポスト5の上端部に旋回環21を介して旋回可能に設けられている。この旋回環21は、外輪21aと、この外輪21aの内側にベアリング21bを介して回転可能に支持された内輪21cとを有し、この内輪21cには内歯歯車22が設けられている。前記外輪21aがベース部6の下面に設けられ、前記内輪21cがクレーンポスト5の上端部に設けられている。そして、ベース部6上には前記内歯歯車22に噛合するピニオン23を有する旋回駆動用の油圧モータ13が設置されている。この場合、油圧モータ13は、その回転軸13aがベース部6の孔部24を緩貫通する状態でベース部6に対して垂直に設置されている。
【0016】
また、ベース部6上には左右一対のジブピン25が突設され、これらのジブピン25にジブ7の二股状の基端部が回動可能に軸支されている。
【0017】
前記コモンウインチ14は、俯仰用ウインチ12と吊り用ウインチ10とを共通の支持フレーム15に上下に配設してなり、この支持フレーム15の上部には各ウインチ10,12の駆動用の油圧モータ10a,12aやベース部6の旋回用の油圧モータ13に油圧を供給するためのポンプユニット16が設けられている。
【0018】
そして、前記デッキクレーン4においては、前記ベース部6の下にある前記クレーンポスト5内に前記コモンウインチ14が設置されている。この場合、前記ベース部6の下部には、前記コモンウインチ14を設置するための設置台26が吊設されている。この設置台26は、水平の支持板26aと、前記ベース部6の下面から垂下されて前記支持板26aの周縁部を支持する吊り枠26bとを有しており、その支持板26a上に前記コモンウインチ14が設置されている。
【0019】
本実施形態では、ベース部6上に従来と同様のハウジング17が設けられ、このハウジング17の前面部には運転室18が設けられている。また、ハウジング17の上端部には、吊り用ウインチ10及び俯仰用ウインチ12から引き出されたロープ9,11を巻き掛けるための滑車19,20が設けられている。また、前記ベース部6には前記ロープ9,11を下方から上方に通すための開口部28,29が設けられている。
【0020】
以上の構成からなる本実施形態の作用を説明する。本実施形態のデッキクレーン4によれば、貨物船1の上甲板2上に立設される筒状のクレーンポスト5と、該クレーンポスト5の上端部に旋回可能に設けられるベース部6と、該ベース部6に俯仰自在に設けられるジブ7と、前記ジブ7の先端から垂下される吊り具の吊りロープ9を巻き上げ下げする吊り用ウインチ10及び前記ジブ7の俯仰用ロープ11を巻き上げ下げする俯仰用ウインチ12を有するコモンウインチ14とを備え、前記ベース部6の下にある前記クレーンポスト5内に前記コモンウインチ14を設置しているため、重心が低くなり、安定性の向上が図れる。また、ハウジング17は、前記コモンウインチ14を雨や波しぶきから保護する機能を有していなくても良いため、簡素化することができ、或いは不要となる。
【0021】
この場合、前記ベース部6の下部には、前記コモンウインチ14を設置するための設置台26が吊設されているため、前記ベース部6の下にある前記クレーンポスト5内に前記コモンウインチ14を容易に設置することができる。
【0022】
図3はデッキクレーンの他の実施形態を概略的に示す側面図である。本実施形態において、図2の実施形態と同一部分は同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明を加える。本実施形態のデッキクレーン4は、ベース部6上にハウジングに代えてフレーム30が設けられており、このフレーム30に運転室18及び滑車19,20が設けられている。また、旋回用の油圧モータ13は、ベース部6の下のクレーンポスト5内に設置された設置台26に設けられている。本実施形態によれば、ベース部6上からハウジング17及び旋回用の油圧モータ13が無くなることから、ベース部6上を更に簡素化することができる。
【0023】
以上、本発明の実施の形態を図面により詳述してきたが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の設計変更が可能である。例えば、ジブは、俯仰用ウインチを備えておらず、油圧シリンダで俯仰操作するように構成されていてもよい。また、クレーンポストは、円筒形に限られず、角筒状であってもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 貨物船
2 上甲板
4 デッキクレーン
5 クレーンポスト
6 ベース部
7 ジブ
9 吊りロープ
10 吊り用ウインチ
11 俯仰用ロープ
12 俯仰用ウインチ
14 コモンウインチ
17 ハウジング
18 運転室
26 設置台
30 フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物船の上甲板上に立設される筒状のクレーンポストと、該クレーンポストの上端部に旋回可能に設けられるベース部と、該ベース部に俯仰自在に設けられるジブと、少なくとも前記ジブの先端から垂下される吊り具の吊りロープを巻き上げ下げする吊り用ウインチ又は前記ジブの俯仰用ロープを巻き上げ下げする俯仰用ウインチ及び前記吊り用ウインチを有するコモンウインチとを備えたデッキクレーンにおいて、前記ベース部の下にある前記クレーンポスト内に前記吊り用ウインチ又はコモンウインチを設置したことを特徴とするデッキクレーン。
【請求項2】
前記ベース部の下部には、前記吊り用ウインチ又は前記コモンウインチを設置するための設置台が吊設されていることを特徴とする請求項1記載のデッキクレーン。
【請求項3】
前記ベース部の上部には、フレームを介して運転室と、少なくとも前記吊りロープを巻きかける滑車又は吊りロープ及び俯仰用ロープをそれぞれ巻き掛ける滑車とが設けられていることを特徴とする請求項1記載のデッキクレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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