説明

デバイスシミュレーション装置、方法及びプログラム

【課題】半導体中の離散不純物対する有効不純物ポテンシャルを、任意性のあるパラメータを含むことなく、数値的に安定に算出する有効不純物ポテンシャル算出方法を提供すること。
【解決手段】有効不純物ポテンシャル算出方法において、半導体中に1つの不純物が存在する場合の局所状態密度を算出する工程(ステップS1)と、局所状態密度に基づいて所定の温度及びフェルミ準位における局所電子密度を算出する工程(ステップS2)と、自由電子の状態密度に基づいて所定温度及びフェルミ準位における電子密度を自由電子密度として算出する工程(ステップS3)と、局所電子密度と自由電子密度とが一致するように自由電子状態密度のバンド端エネルギーを決定し(ステップS3〜S5)、決定されたバンド端エネルギーを不純物による有効不純物ポテンシャルとする工程(ステップS6)と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子特性をシミュレーションするデバイスシミュレーション装置、方法及びプログラムに関し、特に、離散不純物の影響を考慮して半導体素子の特性を評価するデバイスシミュレーション装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の微細化に伴い、半導体素子中の個々の不純物の離散性が、素子の電気的特性に大きな影響を及ぼすようになってきている。従来は半導体素子のサイズが大きかったため、素子中に含まれる不純物原子数が十分多く、不純物原子をその濃度分布によって表現することができた。しかし、微細な半導体素子中では、不純物原子数が数えられる程度になるため、濃度として表現することができなくなる。
【0003】
したがって、微細な半導体素子の電気的特性をシミュレーションによって予測するためには、個々の離散不純物原子の持つクーロンポテンシャルがキャリアの輸送特性に及ぼす影響を取り入れる必要がある。
【0004】
離散不純物原子のクーロンポテンシャルが半導体素子中のキャリア輸送特性に及ぼす影響を正確に取り入れるためには、離散不純物原子のクーロンポテンシャルを不純物原子位置に応じて直接静電ポテンシャルに取り入れ、量子力学に基づいた量子輸送シミュレーションを行う必要がある。しかし、量子輸送シミュレーションは計算量が非常に多いため、半導体素子の3次元シミュレーションを現在の計算機資源において実行することは非常に困難である。
【0005】
したがって、現実的な計算時間で半導体素子を3次元的に解析することができる古典的又は半古典的な輸送シミュレーションに対して、離散不純物の影響を取り入れることが求められる。その際、単純に離散不純物のクーロンポテンシャルを直接静電ポテンシャルに加えると、クーロンポテンシャルが離散不純物の中心で発散するため、物理的に正しい解が得られない。
【0006】
古典的な輸送シミュレーションでは、キャリアは古典的な粒子として扱われるため、本来、量子であるキャリアが感じる離散不純物ポテンシャルを、古典的な粒子の感じる実効的なポテンシャルとして、補正して表現する必要がある。
【0007】
従来、そのような補正ポテンシャルとして、非特許文献1のような、離散不純物中心付近のクーロンポテンシャルが発散しないような解析式を用いる方法があった。
【0008】
例えば、非特許文献1には、離散不純物中心から距離rにおけるクーロン電界E(r)=e/4πεr(e:素電荷、ε:物質の誘電率)に対し、離散不純物中心に十分近い距離をrとし、離散不純物の補正電界をE(r)=er/4πε(r+r/2)3/2とする方法(図1のモデル1)、r>rにおいてはE(r)=E(r)、r≦rにおいてはE(r)=E(r)とする方法(図1のモデル2)、E(r)=E(r)×r/rとする方法(図1のモデル3)、E(r)=0とする方法(図1のモデル4)などが記載されている。これらの離散不純物の補正電界から得られる補正ポテンシャルは図2のようになり、確かに不純物中心においてポテンシャルが有限の値に収まる。
【0009】
また、非特許文献2に記載されている方法では、本来、デルタ関数δ(r)で表される離散不純物(点電荷)の密度分布を、δ(r)=Σexp(ik・r)/V(k:周波数、V:体積)とフーリエ展開し、k>kである短波長成分を無視した密度分布δ’(r)=Σk<kcexp(ik・r)/Vを用いて、離散不純物の中心付近において発散する成分を除外している。
【0010】
また、離散不純物の影響を古典的な輸送シミュレーションに取り入れる方法として、例えば特許文献1に記載されている密度勾配(Density Gradient)法に基づいて輸送方程式の量子補正項として取り入れる方法もある。密度勾配法では、量子補正項に∇√n/√n(n:キャリア密度)というキャリア密度の2階微分の項が含まれるため、量子補正項はキャリア密度nの変化に非常に敏感であり、数値計算が不安定になる。特許文献1では、このキャリア密度の2階微分の項を半導体素子基板の表面からの深さについての簡易な式で表すことによって数値計算を安定化している。
【0011】
【特許文献1】特開2001−267388号公報
【非特許文献1】C. L. Alexander, G. Roy and A. Asenov, "Random Impurity Scattering Induced Variability in Conventional Nano-Scaled MOSFETs: Ab initio Impurity Scattering Monte Carlo Simulation Study", IEDM Technical Digest (2006).
【非特許文献2】N. Sano, K. Matsuzawa, M. Mukai and N. Nakayama, "Role of Long-Range and Short-Range Coulomb Potentials in Threshold Characteristics under Discrete Dopants in Sub-0.1 pm Si-MOSFETs", IEDM Technical Digest (2000).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以下の分析は、本発明者によってなされたものである。従来の手法は下記のような問題を有している。
【0013】
第1の問題点として、従来の手法においては、任意性のあるパラメータを実験値とのフィッティングなどにより、別途設定する必要がある。
【0014】
非特許文献1に記載の離散不純物ポテンシャル作成方法では、離散不純物に十分近い距離rの選択に任意性があり、実験値を用いたフィッティング等により別途決定する必要がある。フィッティングには、例えば、十分大きい半導体素子における移動度を用いることが考えられるが、実際にシミュレーションの対象となるのは、離散不純物の影響が顕著となる微細な半導体素子である。したがって、フィッティングにより得られた離散不純物ポテンシャルが、微細な半導体素子中の離散不純物の影響を正しく再現するという保証はない。
【0015】
また、非特許文献2に記載の方法においても、任意性のあるパラメータkが含まれており、非特許文献1に記載の方法と同様の問題がある。
【0016】
第2の問題点として、従来の手法においては、半導体素子中の3次元的な離散不純物ポテンシャルを正しく補正することができない。
【0017】
特許文献1に記載の方法では、量子補正項が半導体素子基板の表面からの深さについての簡易な式で表されている。したがって、半導体素子中の3次元的な離散不純物ポテンシャルを正しく補正することができない。
【0018】
第3の問題点として、従来の手法においては、離散不純物ポテンシャルをキャリア密度nの変化に対して数値的に安定に補正することができない。
【0019】
密度勾配法では、量子補正項がキャリア密度nの変化に対して敏感であるため、数値的に安定に離散不純物ポテンシャルを補正することが難しい。特に、非平衡状態にある半導体素子ではキャリア密度nの変化が大きいため、量子補正項が数値的に不安定になり易い。
【0020】
そこで、半導体中の離散不純物対する有効不純物ポテンシャルを、任意性のあるパラメータを含むことなく、数値的に安定に算出する有効不純物ポテンシャル算出装置を提供することが課題となる。また、算出された有効不純物ポテンシャルに基づいて半導体素子中の離散不純物の影響を取り入れつつ半導体素子の電気的特性を解析することができるデバイスシミュレーション装置を提供することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第1の視点に係る有効不純物ポテンシャル算出装置は、
半導体中に1の不純物が存在する場合の局所状態密度を算出するように構成された局所状態密度算出部と、
前記局所状態密度に基づいて所定の温度及びフェルミ準位における局所電子密度を算出するように構成された局所電子密度算出部と、
自由電子の状態密度に基づいて前記所定温度及びフェルミ準位における電子密度を自由電子密度として算出するように構成された自由電子密度算出部と、
前記局所電子密度と前記自由電子密度とが一致するように前記自由電子状態密度のバンド端エネルギーを決定するように構成されたバンド端エネルギー決定部と、
決定されたバンド端エネルギーを前記不純物による有効不純物ポテンシャルとして出力するように構成された有効不純物ポテンシャル出力部と、を備えることを特徴とする。
【0022】
本発明の第2の視点に係る有効不純物ポテンシャル算出方法は、
半導体中に1つの不純物が存在する場合の局所状態密度を算出する局所状態密度算出工程と、
前記局所状態密度に基づいて所定の温度及びフェルミ準位における局所電子密度を算出する局所電子密度算出工程と、
自由電子の状態密度に基づいて前記所定温度及びフェルミ準位における電子密度を自由電子密度として算出する自由電子密度算出工程と、
前記局所電子密度と前記自由電子密度とが一致するように前記自由電子状態密度のバンド端エネルギーを決定し、決定されたバンド端エネルギーを前記不純物による有効不純物ポテンシャルとするバンド端エネルギー決定工程と、を含むことを特徴とする。
【0023】
本発明の第3の視点に係る有効不純物ポテンシャル算出プログラムは、
半導体中に1つの不純物が存在する場合の局所状態密度を算出する局所状態密度算出処理と、
前記局所状態密度に基づいて所定の温度及びフェルミ準位における局所電子密度を算出する局所電子密度算出処理と、
自由電子の状態密度に基づいて前記所定温度及びフェルミ準位における電子密度を自由電子密度として算出する自由電子密度算出処理と、
前記局所電子密度と前記自由電子密度とが一致するように前記自由電子状態密度のバンド端エネルギーを決定するバンド端エネルギー決定処理と、
決定されたバンド端エネルギーを前記不純物による有効不純物ポテンシャルとして出力する有効不純物ポテンシャル出力処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0024】
第1の展開形態のデバイスシミュレーション装置は、
上記の有効不純物ポテンシャル算出装置と、
その有効不純物ポテンシャル算出装置によって出力された有効不純物ポテンシャルを入力し、半導体中の1又は2以上の不純物に起因する離散不純物ポテンシャルを前記有効不純物ポテンシャル又はその重ね合わせとして算出するように構成された離散不純物ポテンシャル算出部と、
算出された離散不純物ポテンシャルの下でキャリアの古典的又は半古典的な輸送方程式を数値解析するように構成されたキャリア輸送解析部と、を備えることが好ましい。
【0025】
第2の展開形態のデバイスシミュレーション装置は、
上記の有効不純物ポテンシャル算出装置によって出力された有効不純物ポテンシャルを、温度とフェルミ準位をパラメータとして記録した有効不純物ポテンシャル記憶装置をさらに備え、
前記離散不純物ポテンシャル算出部は、前記有効不純物ポテンシャル記憶装置に記録された有効不純物ポテンシャルを入力するように構成されることが好ましい。
【0026】
第3の展開形態のデバイスシミュレーション方法は、
前記バンド端エネルギー決定工程において求めた有効不純物ポテンシャルに基づいて、半導体中の1又は2以上の不純物に起因する離散不純物ポテンシャルを前記有効不純物ポテンシャル又はその重ね合わせとして算出する離散不純物ポテンシャル算出工程と、
算出された離散不純物ポテンシャルの下でキャリアの古典的又は半古典的な輸送方程式を数値解析するキャリア輸送解析工程と、を含むことが好ましい。
【0027】
第4の展開形態のデバイスシミュレーションプログラムは、
上記の有効不純物ポテンシャル算出プログラムによって出力された有効不純物ポテンシャルに基づいて、半導体中の1又は2以上の不純物に起因する離散不純物ポテンシャルを有効不純物ポテンシャル又はその重ね合わせとして算出する離散不純物ポテンシャル算出処理と、
算出された離散不純物ポテンシャルの下でキャリアの古典的又は半古典的な輸送方程式を数値解析するキャリア輸送解析処理と、をコンピュータに実行させることが好ましい。
【0028】
第5の展開形態の記録媒体は、上記のデバイシミュレーションプログラムのいずれか一を記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であってもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る有効不純物ポテンシャル算出装置によって導出される有効不純物ポテンシャルは、実験値とのフィッティングなどにより別途設定しなければならないような任意性のあるパラメータを含まない。その理由は、電子が感じる離散不純物の実効的なポテンシャルを、局所状態密度を介して求めるためである。
【0030】
また、本発明によれば、半導体素子中の離散不純物に対する精度の良い3次元有効不純物ポテンシャルが算出される。その理由は、離散不純物ポテンシャルを不純物の中心からの距離の関数として算出するためである。
【0031】
また、本発明によれば、離散不純物に対する有効不純物ポテンシャルをキャリア密度の変化に対して数値的に安定に計算することができる。その理由は、計算過程において、密度勾配法のようなキャリア密度の微分項が含まれないからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の実施形態に係る有効不純物ポテンシャル算出装置について、図面を参照して説明する。
【0033】
(実施形態1)
本発明の第1の実施形態に係るデバイスシミュレーション装置は、図3を参照すると、半導体素子中の離散不純物の有効不純物ポテンシャルを算出する有効不純物ポテンシャル算出装置1を備えたデバイスシミュレーション装置である。有効不純物ポテンシャル算出装置1は、図4を参照すると、離散不純物が少なくとも1つ以上存在する系における局所状態密度を算出する局所状態密度算出部11と、局所状態密度を用いて所定の温度及びフェルミ準位における局所電子密度を算出する局所電子密度算出部12と、あるバンド端エネルギーを持つ自由電子状態密度を用いて所定温度及びフェルミ準位での自由電子密度を算出する自由電子密度算出部13と、局所電子密度と自由電子密度とを比較する電子密度比較部14と、自由電子状態密度のバンド端エネルギーを変更するバンド端エネルギー変更部15と、離散不純物の中心からある距離における局所電子密度と自由電子密度とが一致する自由電子状態密度のバンド端エネルギーをその距離における離散不純物の有効不純物ポテンシャルとして出力する有効不純物ポテンシャルデータ出力部16とを備える。
【0034】
(実施形態2)
本発明の第2の実施形態に係るデバイスシミュレーション方法は、半導体素子中の離散不純物の有効不純物ポテンシャルを算出する有効不純物ポテンシャル算出ステップを含むデバイスシミュレーション方法である。有効不純物ポテンシャル算出ステップは、図5を参照すると、離散不純物が少なくとも1つ以上存在する系における局所状態密度を算出するステップ(ステップS1)と、局所状態密度を用いて所定の温度及びフェルミ準位における局所電子密度を算出するステップ(ステップS2)と、あるバンド端エネルギーを持つ自由電子状態密度を用いて所定温度及び所定フェルミ準位での自由電子密度を算出するステップ(ステップS3)と、局所電子密度と自由電子密度とを比較するステップ(ステップS4)と、自由電子状態密度のバンド端エネルギーを変更するステップ(ステップS5)と、を含む。さらに、離散不純物の中心からある距離における局所電子密度と自由電子密度とが一致する自由電子状態密度のバンド端エネルギーを、その距離における離散不純物の有効不純物ポテンシャルとして、出力するステップ(ステップS6)を含む。
【0035】
(実施形態3)
本発明の第3の実施形態に係るコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、半導体素子中の離散不純物の有効不純物ポテンシャルを算出する処理をコンピュータに実行させるデバイスシミュレーションプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。有効不純物ポテンシャルを算出する処理は、離散不純物が少なくとも1つ以上存在する系における局所状態密度を算出する処理と、局所状態密度を用いて所定の温度及びフェルミ準位における局所電子密度を算出する処理と、あるバンド端エネルギーを持つ自由電子状態密度を用いて所定温度及びフェルミ準位での自由電子密度を算出する処理と、局所電子密度と自由電子密度とを比較する処理と、自由電子状態密度のバンド端エネルギーを変更する処理と、を含む。さらに、離散不純物の中心からある距離における局所電子密度と自由電子密度とが一致する自由電子状態密度のバンド端エネルギーを、その距離における離散不純物の有効不純物ポテンシャルとして出力する処理をコンピュータに実行させる。
【0036】
上記の実施形態において、有効不純物ポテンシャルは半導体素子内部に分布した離散不純物原子1つ1つに対して割り当てることが好ましい。そして、それらをすべて重ね合わせた離散不純物ポテンシャルに基づいて古典的輸送シミュレーションを行って半導体素子特性を求める。その際、異なる温度及び/又はフェルミ準位における複数の有効不純物ポテンシャルをデータベース(DB)2として記録装置に保持しておき、古典的輸送シミュレーションの計算領域でのフェルミ準位に応じた有効不純物ポテンシャルを用いる。離散不純物原子の分布は適当に仮定した分布でもよいし、プロセスシミュレーションや実測から得られた分布であってもよい。
【0037】
古典的輸送シミュレーションでは、キャリアは自由電子状態密度に従う状態分布を持つと仮定しており、自由電子状態密度のバンド端エネルギーは静電ポテンシャルに対応する。しかしながら、本来、キャリアは局所状態密度に従う状態分布を持ち、古典的輸送シミュレーションにおける仮定とは相違する。本発明では、かかる相違をキャリア密度一定という条件によって自由電子状態密度のバンド端エネルギーを調節することにより解消しており、そのように調節されたバンド端エネルギーは、古典輸送シミュレーションにおける離散不純物の有効不純物ポテンシャルとして適している。
【0038】
また、本実施形態において、古典的なキャリアのエネルギー分布関数としてフェルミ分布関数を用いているが、ボルツマン分布関数などの他のエネルギー分布関数を用いることもできる。
【0039】
さらに、本実施形態において、離散不純物原子を極座標系の原点に置いて考えれば、局所状態密度を極座標系の動径方向についてのみ考えれば良く、計算時間を大幅に短縮することができる。
【実施例】
【0040】
本発明の実施例に係るデバイスシミュレーション装置について、図面を参照して詳細に説明する。デバイスシミュレーション装置は、半導体の素子特性を数値計算によってシミュレート(模擬)する装置である。図3は、本実施例に係るデバイスシミュレーション装置の構成を示すブロック図である。
【0041】
本実施の形態である半導体素子特性シミュレーション装置は、離散不純物の有効不純物ポテンシャルを算出する有効不純物ポテンシャル算出装置1と、有効不純物ポテンシャル算出装置1により算出した1つ以上の有効不純物ポテンシャルデータをメモリ装置やディスク装置等の記憶装置に備えた有効不純物ポテンシャルDB2と、有効不純物ポテンシャルDB2の少なくとも1つ以上の有効不純物ポテンシャルデータを用いて、半導体素子構造入力部5により入力された半導体素子の離散不純物分布に対する、最終的な全体の不純物ポテンシャル分布を算出する不純物ポテンシャル算出部3と、不純物ポテンシャル算出部3により算出した全体の不純物ポテンシャル分布を用いてキャリアの輸送方程式を解き、半導体素子の電気的特性を算出するキャリア輸送計算部4と、により構成されている。
【0042】
本実施例に係る半導体素子特性シミュレーション装置のハードウェア構成は、各種処理を行うためのCPUと、キーボード、マウス等の入力装置と、メモリ装置やディスク装置等の外部記憶装置と、ディスプレイ、プリンタ等の出力装置等とを備えた通常のコンピュータシステムを用いてもよい。前記CPUは、後述する各ステップにおける処理等を行う演算部と、前記処理の命令を記憶する主記憶部と、を備え、処理過程で使用するデータ等を前記外部記憶装置等に保存しつつ後述の各ステップの処理を進めていく。
【0043】
本発明に係る半導体素子特性シミュレーションを実現するためのプログラムは、記録媒体に保存することができ、前記記録媒体から前記プログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、半導体素子特性シミュレーションを実現することができる。前記記録媒体には、メモリ装置、磁気ディスク装置、光ディスク装置等、プログラムを記録することができるような装置を含む。
【0044】
以下、本発明に係る半導体素子特性シミュレーションの手順について述べる。
【0045】
まず、図3の有効不純物ポテンシャル算出装置1について詳しく説明する。
【0046】
図4は、有効不純物ポテンシャル算出装置1の更に詳細な構成を示す図である。
【0047】
有効不純物ポテンシャル算出装置1は、離散不純物のクーロンポテンシャルがある系での局所状態密度を計算する局所状態密度算出部11と、局所状態密度算出部11の局所状態密度を用いて局所電子密度を算出する局所電子密度算出部12と、あるバンド端エネルギーを持つ自由電子状態密度を用いて自由電子密度を算出する自由電子密度算出部13と、局所電子密度算出部12より算出した局所電子密度と、自由電子密度算出部13より算出した自由電子密度とを比較する電子密度比較部14と、自由電子密度算出部13におけるバンド端エネルギーを変更するバンド端エネルギー変更部15と、電子密度比較部14で前記局所電子密度と前記自由電子密度とが一致する前記自由電子状態密度のバンド端エネルギーを有効不純物ポテンシャルとして出力する有効不純物ポテンシャルデータ出力部16と、により構成されている。
【0048】
図5は、有効不純物ポテンシャル算出装置1において、離散不純物の有効不純物ポテンシャルを算出する手順を示す図である。
【0049】
図5を参照すると、本実施の形態の有効不純物ポテンシャル算出手順は、まず、ステップS1において局所状態密度算出部11により局所状態密度を算出する。
【0050】
次にステップS2において、局所電子密度算出部12により、系のある地点における、系のフェルミ準位、温度での局所電子密度Nを、前記局所状態密度を用いて計算する。
【0051】
そして、ステップS3において、自由電子密度算出部13により、あるバンド端エネルギーEを持つ自由電子状態密度を用いて、系のフェルミ準位、温度での自由電子密度Nを計算する。
【0052】
その後、ステップS4において、電子密度比較部14により、NとNとを比較する。ステップS4においてN=Nであれば、ステップS6に進み、その時のバンド端エネルギーEを、その地点における有効不純物ポテンシャルのポテンシャル値として、有効不純物ポテンシャルデータ出力部16により出力する。有効不純物ポテンシャルデータ出力部16では、メモリ装置やディスク装置などの記憶媒体に有効不純物ポテンシャルデータとして出力する。
【0053】
ステップS4においてN≠Nであれば、ステップS5に進み、バンド端エネルギー変更部15により、Eを変更して再びS3でNを計算して、前述の手順を繰り返す。
【0054】
図6は、本実施の形態の有効不純物ポテンシャル算出手順により算出された、有効不純物ポテンシャルVeffの空間分布を示している。極座標系において、原点に負の電荷を1つ仮定した場合の、動径方向rのポテンシャル分布である。実線がVeff(r)、破線がクーロンポテンシャルを示している。温度300K、フェルミ準位E=0eVで計算を行った。
【0055】
図6から分かるように、破線のクーロンポテンシャルは電荷中心(r=0)付近でポテンシャルが発散しているのに対し、実線のVeff(r)では原点(r=0)付近においても有限の値に収まっている。原点における値は得られていないが、必要な計算精度に応じて十分原点に近いところまで計算すれば良い。また、原点における値を外挿によって求めても良い。
【0056】
図7は、図6のr=0.5nmにおける状態密度のエネルギー分布である。ステップS1で計算した局所状態密度を実線で示している。本実施例では、極座標系の動径方向への1次元のグリーン関数法により、局所状態密度を計算した。
【0057】
極座標系の角度方向について一様とした場合、グリーン関数法では、動径方向のハミルトニアン行列をH、エネルギーをE、自己エネルギー行列をΣとして、[EI−H−Σ]の逆行列で定義される、遅延グリーン関数G=[EI−H−Σ−1を計算する。ただし、Iは単位行列である。
【0058】
ここで、動径方向の波動関数をψ、エネルギー固有値をEとすると、波動方程式はHψ=Eψとなるが、ψ’=r×ψとすると、その時の波動方程式H’ψ’=Eψ’のハミルトニアン行列H’は3重対角行列で表すことができる。H’を用いると、遅延グリーン関数G’=[EI−H’−Σ’]−1は3重対角行列の逆行列となり、簡単に計算することができる。
【0059】
自己エネルギー行列Σ’は境界、散乱の自己エネルギーの総和である。境界の自己エネルギーは、ψ’が原点から十分離れた地点で動径方向の平面波eikrとなるような解放境界条件から計算する。また、原点ではψが有限、つまりψ’=0という境界条件を課す。散乱の自己エネルギー行列は散乱ポテンシャルから通常の方法で計算する。
【0060】
局所状態密度は遅延グリーン関数の虚数部を用いて−2Im[G’]から計算することができる。G’は角度方向の量子数lYに依存するが、角度方向について一様とした場合、lについての和を取れば良い。ここで、量子数lの状態は、(2×l+1)重に縮退している点に注意する必要がある。
【0061】
実際には、−2Im[G’]は微小体積要素4πrdrで割り、更にエネルギーに関するフーリエ変換の際に出てくる2πで割った値を局所状態密度として用いる。
【0062】
本実施例ではSiの伝導帯を等方的なバンドで近似した、有効質量近似で計算を行った。有効質量は、原点から十分遠い地点での局所状態密度のエネルギー分布の値が、楕円体バンドでの長軸方向の状態密度有効質量(m×m×m1/3を用いた古典的なバルク状態密度の値と一致するような値を用いた。ここで、mは楕円体の長軸方向の有効質量、mは短軸方向の有効質量であり、状態密度有効質量は前述のように、mと、mの2乗との積の3乗根である。
【0063】
本実施例ではバンド構造を表すのに有効質量近似を用いたが、他のどのような方法でも良く、デバイスシミュレーションの輸送方程式に用いるバンド構造と同じ方法を用いれば良い。
【0064】
また、本実施例ではグリーン関数法により局所状態密度を計算したが、他の方法であっても良い。
【0065】
ステップS2では、この局所状態密度にフェルミ分布関数を掛けて、エネルギーに対して積分することにより、局所電子密度Nを算出する。
【0066】
図7の破線は、E=0eVの初期状態における自由電子状態密度である。自由電子状態密度は、エネルギーEに対して(E−E1/2に比例する、つまり、エネルギーの平方根に比例する関数で表すことができる。ステップS3では、この自由電子状態密度とフェルミ分布関数とを用いて、自由電子密度Nを計算する。
【0067】
図7の場合、E=0eVでは明らかにN>Nとなるため、Eを増加させる必要がある。つまり、ステップS4でN≠Nより、ステップS5に進みEを変更する。ステップS5におけるEの変更値は、二分法により決定することにより、速やかに決定することができる。
【0068】
r=0.5nmでは、最終的にE=80meVにおいてN=Nとなり、ステップS5に進み、有効不純物ポテンシャルVeff=80meVとなる。
【0069】
以上の手順を必要な全ての動径座標rに対して実行することにより、温度300K、フェルミ準位E=0eVでの有効不純物ポテンシャルVeff(r)の分布が得られる。
【0070】
同じ手順で、別のEfに対してもVeff(r)がそれぞれ得られる。その際、どのようなEに対しても、NがEに関して単調に変化することから、Veff(r)は安定的に算出することができる。ここで、Eは半導体素子中のフェルミ準位から決まるため、任意のパラメータではない。
【0071】
図8はr=30nmでの局所状態密度、自由電子状態密度を示している。この場合、Veff=4meVとなる。このように、原点の電荷中心から十分離れた点では、局所状態密度(実線)と自由電子状態密度(点線)の分布形状がほぼ一致しており、両状態密度の差(すなわち、電子を量子力学的に取り扱ったことに起因する差)はわずかである。
【0072】
実際、図6から分かるように、電荷の存在する原点から十分離れた領域では、Veff(r)がクーロンポテンシャルとほぼ一致しており、このような領域ではクーロンポテンシャルを補正する必要はない。
【0073】
図9は、原点に正の電荷を置いた場合のVeff(r)である。
【0074】
正の電荷の場合、r=0.5nmでの局所状態密度は図10のようになり、エネルギーE=0eV以上で高い値を持つ。この場合、E=0eVではN<Nであり、E=−70meVでN=Nとなる。つまり、Veff=−70meVとなる。
【0075】
図10の計算では、局所状態密度を計算する際に、散乱の影響を含んでいないため、E<0eVの状態密度が0となっている。ステップS1の局所状態密度計算にフォノン散乱等のエネルギー緩和過程を含めることにより、計算精度を更に高めることができる。
【0076】
以上のように、有効不純物ポテンシャル算出装置1では、離散不純物の補正ポテンシャルを、任意パラメータを用いず、完全に量子力学に基づいて、安定的に得ることができる。
【0077】
有効不純物ポテンシャル算出装置1を用いて、複数のEに対する有効不純物ポテンシャルを算出し、有効不純物ポテンシャルデータを記憶装置にそれぞれ記録することにより、図3の有効不純物ポテンシャルDB2を構築することができる。有効不純物ポテンシャルDB2に有効不純物ポテンシャルデータを記録保持しておくことにより、有効不純物ポテンシャルを毎回計算する必要がなくなる。必要な有効不純物ポテンシャルデータを記憶装置から読み込むだけで良いため、計算時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0078】
図11は、有効不純物ポテンシャル算出装置1により得られた、有効不純物ポテンシャルを用いて半導体素子の電気的特性をシミュレーションする手順を示している。
【0079】
まず、ステップS11において、初期状態におけるキャリア密度分布および温度分布から半導体素子の各計算領域における擬フェルミ準位を算出する。ここで、擬フェルミ準位は各計算領域における静電ポテンシャルを基準としたエネルギー差として算出する。
【0080】
次に、ステップS12において、図3の有効不純物ポテンシャルDB2から、各計算領域における温度および擬フェルミ準位に対応する有効不純物ポテンシャルデータを読み込む。ステップS12では、更に、半導体素子構造入力部5より得られる半導体素子中の離散不純物原子位置情報に基づき、各離散不純物原子から各計算点における距離に応じて、各計算点における有効不純物ポテンシャルの値を決定する。この際、不純物ポテンシャル算出部3において、半導体素子中の離散不純物として扱う全ての不純物原子の有効不純物ポテンシャル値を足し合わせて、最終的な全体の不純物ポテンシャル分布を算出する。
【0081】
ここで、有効不純物ポテンシャルDB2を用いる代わりに、有効不純物ポテンシャルDB2の有効不純物ポテンシャルデータを再現するような解析式を用意しておき、その解析式により有効不純物ポテンシャル値を算出しても良い。
【0082】
そして、ステップS13において、静電ポテンシャル分布に前記全体の不純物ポテンシャル分布を加え、キャリア輸送計算部4によってキャリア密度分布を更新する。ステップS14においては、更新したキャリア密度分布を用いてポアソン方程式を解き、静電ポテンシャルを更新する。この際、離散不純物として扱う不純物については、ポアソン方程式の不純物密度分布には含めない。続いて、ステップS15において、静電ポテンシャル等が収束したかどうか判定し、収束していなければステップS11に戻り、更新したキャリア密度分布から擬フェルミ分布を算出し、ステップS12以降の手順を、ステップS15において収束判定が出るまで繰り返す。
【0083】
そして、ステップS15において収束判定が出た時点での電気的特性を、半導体素子の電気的特性として出力する。
【0084】
ここで、キャリア輸送計算部4においては、古典的なボルツマン輸送方程式をモンテカルロ法やドリフト拡散モデル等によって解き、半導体素子の電気的特性を算出する。離散不純物の有効不純物ポテンシャルを用いるため、高速な古典的輸送方程式により、離散不純物の影響を正確に取り入れた上で、高速に半導体素子特性のシミュレーションを行うことができる。
【0085】
半導体素子構造入力部5では、外部から半導体素子の素子形状情報や不純物密度分布情報、離散不純物位置情報などが入力される。これらの情報は、適当に設定した情報でも良いし、実測やプロセスシミュレーションの結果から得られた情報であっても良い。
【0086】
また、有効不純物ポテンシャルデータは、不純物位置からの距離rによっても、フェルミ準位Efによっても補間を行うことができる。適切な補間を行うことにより、計算精度を保ったまま、有効不純物ポテンシャルDB2に格納する有効不純物ポテンシャルデータを減らすことができ、有効不純物ポテンシャルDB2を構築する時間を短縮することができる。
【0087】
以上のように、本実施例によれば、フィッティング等により設定する必要のある任意パラメータを用いることなく、離散不純物の影響を正確に取り入れた上で、高速に半導体素子特性のシミュレーションを行うことができる。
【0088】
以上、本発明を上記実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例の構成にのみ制限されるものでなく、本発明の範囲内で当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】従来技術における離散不純物電界モデルを示す図である。
【図2】従来技術における離散不純物ポテンシャルを示す図である。
【図3】本発明の半導体素子特性シミュレーション装置の構成図である。
【図4】本発明の有効不純物ポテンシャル算出装置の構成図である。
【図5】本発明の有効不純物ポテンシャル算出装置の動作手順を示す図である。
【図6】本発明で用いられる負電荷の有効不純物ポテンシャルの例を示す図である。
【図7】負の電荷を持つ不純物中心付近における局所状態密度と自由電子状態密度を示す図である。
【図8】負の電荷を持つ不純物中心から離れた地点における局所状態密度と自由電子状態密度を示す図である。
【図9】本発明で用いられる正電荷の有効不純物ポテンシャルの例を示す図である。
【図10】正の電荷を持つ不純物中心付近における局所状態密度と自由電子状態密度を示す図である。
【図11】本発明の半導体素子特性シミュレーション装置の動作手順を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
1 有効不純物ポテンシャル算出装置
2 有効不純物ポテンシャルDB
3 不純物ポテンシャル算出部
4 キャリア輸送計算部
5 半導体素子構造入力部
11 局所状態密度算出部
12 局所電子密度算出部
13 自由電子密度算出部
14 電子密度比較部
15 バンド端エネルギー変更部
16 有効不純物ポテンシャルデータ出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体中に1の不純物が存在する場合の局所状態密度を算出するように構成された局所状態密度算出部と、
前記局所状態密度に基づいて所定の温度及びフェルミ準位における局所電子密度を算出するように構成された局所電子密度算出部と、
自由電子の状態密度に基づいて前記所定温度及びフェルミ準位における電子密度を自由電子密度として算出するように構成された自由電子密度算出部と、
前記局所電子密度と前記自由電子密度とが一致するように前記自由電子状態密度のバンド端エネルギーを決定するように構成されたバンド端エネルギー決定部と、
決定されたバンド端エネルギーを前記不純物による有効不純物ポテンシャルとして出力するように構成された有効不純物ポテンシャル出力部と、を備えることを特徴とする有効不純物ポテンシャル算出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の有効不純物ポテンシャル算出装置と、
その有効不純物ポテンシャル算出装置によって出力された有効不純物ポテンシャルを入力し、半導体中の1又は2以上の不純物に起因する離散不純物ポテンシャルを前記有効不純物ポテンシャル又はその重ね合わせとして算出するように構成された離散不純物ポテンシャル算出部と、
算出された離散不純物ポテンシャルの下でキャリアの古典的又は半古典的な輸送方程式を数値解析するように構成されたキャリア輸送解析部と、を備えることを特徴とするデバイスシミュレーション装置。
【請求項3】
請求項1に記載の有効不純物ポテンシャル算出装置によって出力された有効不純物ポテンシャルを、温度とフェルミ準位をパラメータとして記録した有効不純物ポテンシャル記憶装置をさらに備え、
前記離散不純物ポテンシャル算出部は、前記有効不純物ポテンシャル記憶装置に記録された有効不純物ポテンシャルを入力するように構成されたことを特徴とする、請求項2に記載のデバイスシミュレーション装置。
【請求項4】
半導体中に1つの不純物が存在する場合の局所状態密度を算出する局所状態密度算出工程と、
前記局所状態密度に基づいて所定の温度及びフェルミ準位における局所電子密度を算出する局所電子密度算出工程と、
自由電子の状態密度に基づいて前記所定温度及びフェルミ準位における電子密度を自由電子密度として算出する自由電子密度算出工程と、
前記局所電子密度と前記自由電子密度とが一致するように前記自由電子状態密度のバンド端エネルギーを決定し、決定されたバンド端エネルギーを前記不純物による有効不純物ポテンシャルとするバンド端エネルギー決定工程と、を含むことを特徴とする有効不純物ポテンシャル算出方法。
【請求項5】
前記バンド端エネルギー決定工程において求めた有効不純物ポテンシャルに基づいて、半導体中の1又は2以上の不純物に起因する離散不純物ポテンシャルを前記有効不純物ポテンシャル又はその重ね合わせとして算出する離散不純物ポテンシャル算出工程と、
算出された離散不純物ポテンシャルの下でキャリアの古典的又は半古典的な輸送方程式を数値解析するキャリア輸送解析工程と、を含むことを特徴とするデバイスシミュレーション方法。
【請求項6】
半導体中に1つの不純物が存在する場合の局所状態密度を算出する局所状態密度算出処理と、
前記局所状態密度に基づいて所定の温度及びフェルミ準位における局所電子密度を算出する局所電子密度算出処理と、
自由電子の状態密度に基づいて前記所定温度及びフェルミ準位における電子密度を自由電子密度として算出する自由電子密度算出処理と、
前記局所電子密度と前記自由電子密度とが一致するように前記自由電子状態密度のバンド端エネルギーを決定するバンド端エネルギー決定処理と、
決定されたバンド端エネルギーを前記不純物による有効不純物ポテンシャルとして出力する有効不純物ポテンシャル出力処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする有効不純物ポテンシャル算出プログラム。
【請求項7】
請求項6に記載の有効不純物ポテンシャル算出プログラムによって出力された有効不純物ポテンシャルに基づいて、半導体中の1又は2以上の不純物に起因する離散不純物ポテンシャルを有効不純物ポテンシャル又はその重ね合わせとして算出する離散不純物ポテンシャル算出処理と、
算出された離散不純物ポテンシャルの下でキャリアの古典的又は半古典的な輸送方程式を数値解析するキャリア輸送解析処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とするデバイスシミュレーションプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−141138(P2009−141138A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316100(P2007−316100)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)