デバイス搬送用トレイ
【課題】デバイスを搬送用トレイの収容部に収容し、或いはこの収容部から取出すに際し、デバイスのエッジにて収容部の側壁が削られ難くし、発塵を抑制する。
【解決手段】搬送用トレイ1のトレイ本体11を樹脂成型品とし、このトレイ本体11の表面にメッキ層12が形成されている。トレイ本体11の表面をメッキしたので、表面硬度が高くなり、液晶パネル4を収容部7に収容し、或いは取出す際に、液晶パネル4のエッジにて収容部7の側壁が削られ難くなり、発塵を抑制することができる。
【解決手段】搬送用トレイ1のトレイ本体11を樹脂成型品とし、このトレイ本体11の表面にメッキ層12が形成されている。トレイ本体11の表面をメッキしたので、表面硬度が高くなり、液晶パネル4を収容部7に収容し、或いは取出す際に、液晶パネル4のエッジにて収容部7の側壁が削られ難くなり、発塵を抑制することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にメッキ層を形成して表面硬度を高めるようにしたデバイス搬送用トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体基板や液晶パネルを代表とする板状に形成された電子デバイスや基板の完成品、或いは半製品(以下、これらを「デバイス」と総称する)を製造する工程、或いはこのようなデバイスを搬送する過程では、当該デバイスを専用の搬送用トレイにセットした状態で移送する場合が多い。
【0003】
このような搬送用トレイにセットされているデバイスは、搬送時においては振動等の外乱を受けて搬送用トレイの収容部内で上下に振動し易く、振動した場合、デバイスのエッジにより収容部の側面が削られ易くなる。
【0004】
この対策として、例えば特許文献1(特開2002−353302号公報)には、搬送用トレイの収容部の底面周縁に逃げ用凹部を形成し、デバイスのエッジが収容部に接触しない構造とし、デバイスが収容部内で振動しても、そのエッジにて収容部内が削られることを防止した技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−353302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近の搬送用トレイは軽量で、且つ安価な樹脂成型品が多く採用されている。搬送用トレイを樹脂成型品とした場合、デバイスの代表である半導体基板や液晶パネルはガラス製等、比較的高い硬度を有し、しかもエッジが鋭角に切り出されているため、この半導体基板や液晶パネルを搬送用トレイに装着し、或いは取出す際に、このデバイスの下端エッジで搬送用トレイの収容部周辺が削られ易い。
【0006】
最近の半導体基板や液晶パネルは実装密度が高くなっており、搬送用トレイの削れにより発塵した粉塵がデバイスの上面に付着した場合、回路間が短絡したり、接触不良を起因して、製品不良が発生し易くなる。
【0007】
これに対処するに、搬送用トレイをデバイスにより削られ難い硬い材質を用いて形成することも考えられるが、デバイスを却って傷付けることとなり、実用性に乏しいばかりでなく、ダイキャストや機械加工で成形する必要があるため、製品コストが高くなってしまう問題がある。
【0008】
又、デバイスの大きさは用途毎に様々であり、搬送用トレイに形成されている収容部は、デバイスの大きさに合わせて形成されている。しかし、この種の搬送用トレイは複数段に積み重ねて使用する場合が多く、従って、収容部の大きさが相違する搬送用トレイであっても外径は同じ形状、大きさに形成されている。
【0009】
その結果、例えば形状が近似しているデバイスに対応する搬送用トレイは、一瞥しただけでは瞬時に識別することができないため、作業者はデバイスを搬送用トレイの収容部に直接装着するなどして適合しているか否かを確認することになるが、収容部に対して、それよりも形状のやや大きなデバイスを装着した場合、装着の際及び取出しの際に側壁が削れられて発塵する問題がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、安価に形成することができると共に、デバイスを収容部に収容し、或いは取出すに際し、デバイスのエッジにて収容部の側壁が削られ難く、発塵を抑制することができてデバイスへの粉塵の付着を防止し、製品不良率を低減することができるばかりでなく、デバイスに対応する搬送用トレイを瞬時に識別することができ、取扱性の良いデバイス搬送用トレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明による第1のデバイス搬送用トレイは、デバイスを位置決めした状態でセットする収容部を有するデバイス搬送用トレイにおいて、樹脂を材料に形成されたトレイ本体の表面にメッキ層が形成されていることを特徴とする。
【0012】
このような構成では、トレイ本体を樹脂を材料に形成し、この表面にメッキ層を形成したので、表面硬度が高くなり、デバイスを収容部に収容し、或いは取出すに際し、デバイスのエッジにて収容部の側壁が削られ難くなり、発塵を抑制することができる。その結果、デバイスへの粉塵の付着が防止され、製品不良率を低減することができる。又、メッキ層により表面硬度を高くするようにしたので、搬送用トレイを安価に形成することができる。
【0013】
第2のデバイス搬送用トレイは、第1のデバイス搬送用トレイにおいて、前記トレイ本体が前記デバイスの形状に対応して複数設けられており、前記メッキ層が前記トレイ本体の種別毎に異なる識別色を有していることを特徴とする。
【0014】
このような構成では、メッキ層がデバイスの種別毎に異なる識別色に設定されているので、当該デバイスに対応する搬送用トレイを瞬時に識別することができ、デバイスの誤収容が防止でき、取扱性が良い。
【0015】
第3のデバイス搬送用トレイは、第2のデバイス搬送用トレイにおいて、前記識別色は染料にて発色されることを特徴とする。
【0016】
このような構成では、識別色を染料にて発色させるようにしたので、識別色が豊富になり、特定のデバイスに対応する搬送用トレイの認識がより一層容易化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。図1は搬送用トレイの斜視図、図2は搬送用トレイの平面図、図3は図2のIII部拡大図、図4は図3のIV-IV断面図、図5は図3のV-V断面図である。
【0018】
図1の1A,1B,1Cはデバイス搬送用トレイ(以下、単に「搬送用トレイ」と称する)である。この各搬送用トレイ1A〜1Cは、これらに収容されるデバイスとしての液晶パネル4A,4B,4C毎に用意されている。ちなみに、搬送用トレイ1Aは小型の液晶パネル4Aを収容し、搬送用トレイ1Bは中型の液晶パネル4Bを収容し、搬送用トレイ1Cは大型の液晶パネル4Cを収容して搬送するものである。又、各搬送用トレイ1A〜1Cの外形は同一形状に形成されており、従って、互いに積み重ねた状態で搬送させることができる。尚、図においては、3種類の搬送用トレイ1A,1B,1Cが例示されているが、搬送用トレイの種類はこれに限定されているものではない。
【0019】
又、上述したように、各搬送用トレイ1A〜1Cの形状は同一であるため、図2以下の図面においては、中型の液晶パネル4Bを収容する搬送用トレイ1Bを代表とし、この搬送用トレイ1Bの符号を1、液晶パネル4Bの符号を4として説明する。
【0020】
搬送用トレイ1は、ABS樹脂等の樹脂を材料として形成された樹脂成型品であるトレイ本体11と、このトレイ本体11の表面に被膜処理されたメッキ層12とを有している。トレイ本体11は、射出成型法など、型を用いて形成されている。又、メッキ層12は、トレイ本体11の表面に、導電性を有する無電解銅やニッケルメッキ等の下地メッキが施されており、この下地メッキの表面に電気メッキが施された複層構造を有している。
【0021】
電気メッキとしては、クロームメッキ、ニッケルメッキ、錫・コバルト合金メッキ、パラジュウムニッケル合金メッキ等がある。本実施形態では、各搬送用トレイ1A〜1C毎に異なる種類の電気メッキ処理が施されており、搬送用トレイ1A〜1C毎に、表面の光沢色、色調が異なっている。尚、このメッキ層12の色調は、金属メッキ自体の色に限らず、メッキ処理を行うメッキ液に染料液を所定に調合することで所望の色に発色させるようにしても良い。染料液を用いることであらゆる色を発色させることができるため、認識色の種類を増やすことができ、搬送用トレイ1の種別の認識をより一層容易化することができる。
【0022】
このように、本実施形態による搬送用トレイ1は表面にメッキ層12が施されているため、搬送用トレイ1自体の強度をメッキ層12により高めることができる。又、メッキ層12の光沢色、或いは色調を、搬送用トレイ1A〜1C毎に異ならしめたので、このメッキ層12の光沢色、或いは色調を識別色として利用することができる。その結果、収容する液晶パネル4A〜4Cに対応する搬送用トレイ1A〜1Cを、瞬時に識別することができる。
【0023】
次に、搬送用トレイ1A〜1Cの形状について説明する。図2、図3に示すように、搬送用トレイ1内に収容枠1aが形成され、この収容枠1a内に、液晶パネル4をセットする収容部7が、縦横に一定間隔を開けて配設されている。尚、本実施形態では1つの搬送用トレイ1に24個の収容部7が形成されているが、収容部7の個数は、搬送用トレイ1及び収容する液晶パネル4の大きさによって決定されるものであり、図2示す収容部7の個数には限定されない。
【0024】
図3〜図5に示すように、液晶パネル4は、石英ガラス基板等からなる2枚の基板5,6を貼り合わせて形成されている。一方の基板(以下「液晶駆動基板」と称する)5上に貼り合わされる他方の基板(以下「対向基板」と称する)6は、液晶駆動基板5に形成されている端子部5aを露呈させるやや小さな形状に形成されている。端子部5aは外部入力或いは外部出力端子として用いられ、FPC(Flexible Printed Circuit)などに設けられた外部電極や、液晶パネル4上に載置されるICなどの外部電極が接続される。尚、デバイスは完成された液晶パネル4に限らず、液晶駆動基板5或いは対向基板6のみの半製品であっても良い。
【0025】
又、各収容部7の上面は、搬送用トレイ1の上面1bから底面方向へ窪んだ位置に形成されている。更に、各収容部7の、液晶パネル4を載置する載置面7aに所定深さの逃げ用凹溝8が形成されている。この逃げ用凹溝8により載置面7aに対する液晶駆動基板5の接触面積が少なくなる。すなわち、本実施形態では、液晶駆動基板5のほぼ四隅が載置面7aに載置され、逃げ用凹溝8は、それ以外の部位を逃げる形状に形成されている。尚、図2の縦方向に配列されている収容部7間が、断面U字状に形成された貫通溝10を介して連通されている。
【0026】
図3〜図5に示すように、載置面7aの周囲に立設する側壁2a,3aに支持部9が突起状に形成されている。尚、この側壁2a,3aは所定の抜き勾配(例えば5〜10°)で傾斜されて、形成されている。
【0027】
各支持部9は、液晶駆動基板5の4辺5b〜5eを各々二点ずつ支持すべく、その各辺5b〜5eに対向する側壁2a,3aに二箇所ずつ所定間隔を開けて形成されている。液晶駆動基板5に形成されている端子部5aは、液晶駆動基板5の1つの一辺5bのほほ中央に配設されており、この辺5bを支持する支持部9は、端子部5aを外れた位置に配設されている。尚、液晶駆動基板5の端子部5aが形成されている辺5bと平行な辺5cを支持する支持部9は、辺5bを支持する支持部9に対向する位置に形成されている。
【0028】
一方、液晶駆動基板5の他の辺5d,5eを支持する支持部9は、貫通溝10の両側に配設されている。貫通溝10の延長上に位置する壁面に形成されている支持部9も、貫通溝10の両側に配設されている支持部9に対向する位置に形成されている。各支持部9は、その先端部9aがR曲面状に形成されており、その先端部9aにて液晶駆動基板5の各辺5b〜5eが二点で支持される。
【0029】
このような構成では、搬送用トレイ1(1=1A〜1C)の表面に施されているメッキ層12の光沢色、或いは色調が、当該搬送用トレイ1(1=1A〜1C)の種別毎に設定されているため、当該光沢色、或いは色調を識別色として、所定に組立てられた液晶パネル4(4=4A〜4C)に対応する搬送用トレイ1A〜1Cを瞬時に選択することができるため、液晶パネル4の後収容が防止され、取扱性が良い。
【0030】
そして、選択した搬送用トレイ1の収容部7に対して、液晶パネル4を装着すると、液晶パネル4を構成する液晶駆動基板5の4辺5b〜5eが、収容部7の周囲を囲う側壁2a,3aから突出されている支持部9の先端部9aに掛止されて位置決めされる。
【0031】
その際、当該液晶パネル4に対応する搬送用トレイ1は、この搬送用トレイ1の光沢色、或いは色調に基づいて予め識別されているため、異なる搬送用トレイ1が選択されることが無い。従って、例えば当該液晶パネル4が大型の液晶パネル4Cとした場合、小型の液晶パネル4Aを収容する搬送用トレイ1A、或いは中型の液晶パネル4Bを収容する搬送用トレイ1Bを誤って選択してしまうことが無く、当該搬送用トレイ1の収容部7に対して、サイズの大きな液晶パネル4が誤って装着されることによる支持部9の削れによる発塵を防止することができる。
【0032】
又、搬送用トレイ1は、その表面がメッキ層12で表面処理されているため、表面硬度が高く、しかも堅牢となり、液晶パネル4を収容部7に対して収容し、或いは取り出す際に、又は、搬送用トレイ1の各収容部7にセットされている液晶パネル4が、搬送の際の振動等の影響を受けて上下しても、液晶パネル4のエッジで支持部9が削られ難く、発塵を防止することができる。
【0033】
その結果、液晶駆動基板5の端子部5a等に粉塵が付着することが無く、製品不良を未然に回避することができる。更に、搬送用トレイ1の表面にメッキ層12を形成することで、表面硬度を高くするようにしたので、従来の樹脂成形品の搬送用トレイに対してメッキ処理を施すだけで良く、軽量でしかも安価に形成することができる。
【0034】
更に、各支持部9の先端部9aがR曲面状に形成されているので、液晶駆動基板5の4辺5b〜5eを各々二点で支持することができ、液晶駆動基板5の各辺5b〜5eの下端エッジとの接触面積を最小限とすることができ、発塵をより一層低減することができる。
【0035】
その上、端子部5a側の辺5bを支持する支持部9が、端子部5aから外れた位置に配設されているので、誤ってメッキ層12が削られたとしても、それによって発生した粉塵が端子部5aに付着され難く、端子部を粉塵から有効に保護することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明による搬送用トレイにセットするデバイスは、液晶パネルに限らず、エレクトロルミネッセンス装置、有機エレクトロルミネッセンス装置、プラズマディスプレイ装置、電気泳動ディスプレイ装置、電子放出素子を用いた装置(Field Emission Display、及びSurface-Conductin Electron-Emitter Display)、更には、DLP(Digital Light Processing)やDMD(Digital Micromirror Device)等の各種の電気光学装置、或いは半導体基板であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】搬送用トレイの斜視図
【図2】搬送用トレイの平面図
【図3】図2のIII部拡大図
【図4】図3のIV-IV断面図
【図5】図3のV-V断面図
【符号の説明】
【0038】
1,1A〜1C…搬送用トレイ、1a…収容枠、4,4A〜4C…液晶パネル、7…収容部、9…支持部、11…トレイ本体、12…メッキ層
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にメッキ層を形成して表面硬度を高めるようにしたデバイス搬送用トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体基板や液晶パネルを代表とする板状に形成された電子デバイスや基板の完成品、或いは半製品(以下、これらを「デバイス」と総称する)を製造する工程、或いはこのようなデバイスを搬送する過程では、当該デバイスを専用の搬送用トレイにセットした状態で移送する場合が多い。
【0003】
このような搬送用トレイにセットされているデバイスは、搬送時においては振動等の外乱を受けて搬送用トレイの収容部内で上下に振動し易く、振動した場合、デバイスのエッジにより収容部の側面が削られ易くなる。
【0004】
この対策として、例えば特許文献1(特開2002−353302号公報)には、搬送用トレイの収容部の底面周縁に逃げ用凹部を形成し、デバイスのエッジが収容部に接触しない構造とし、デバイスが収容部内で振動しても、そのエッジにて収容部内が削られることを防止した技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−353302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近の搬送用トレイは軽量で、且つ安価な樹脂成型品が多く採用されている。搬送用トレイを樹脂成型品とした場合、デバイスの代表である半導体基板や液晶パネルはガラス製等、比較的高い硬度を有し、しかもエッジが鋭角に切り出されているため、この半導体基板や液晶パネルを搬送用トレイに装着し、或いは取出す際に、このデバイスの下端エッジで搬送用トレイの収容部周辺が削られ易い。
【0006】
最近の半導体基板や液晶パネルは実装密度が高くなっており、搬送用トレイの削れにより発塵した粉塵がデバイスの上面に付着した場合、回路間が短絡したり、接触不良を起因して、製品不良が発生し易くなる。
【0007】
これに対処するに、搬送用トレイをデバイスにより削られ難い硬い材質を用いて形成することも考えられるが、デバイスを却って傷付けることとなり、実用性に乏しいばかりでなく、ダイキャストや機械加工で成形する必要があるため、製品コストが高くなってしまう問題がある。
【0008】
又、デバイスの大きさは用途毎に様々であり、搬送用トレイに形成されている収容部は、デバイスの大きさに合わせて形成されている。しかし、この種の搬送用トレイは複数段に積み重ねて使用する場合が多く、従って、収容部の大きさが相違する搬送用トレイであっても外径は同じ形状、大きさに形成されている。
【0009】
その結果、例えば形状が近似しているデバイスに対応する搬送用トレイは、一瞥しただけでは瞬時に識別することができないため、作業者はデバイスを搬送用トレイの収容部に直接装着するなどして適合しているか否かを確認することになるが、収容部に対して、それよりも形状のやや大きなデバイスを装着した場合、装着の際及び取出しの際に側壁が削れられて発塵する問題がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、安価に形成することができると共に、デバイスを収容部に収容し、或いは取出すに際し、デバイスのエッジにて収容部の側壁が削られ難く、発塵を抑制することができてデバイスへの粉塵の付着を防止し、製品不良率を低減することができるばかりでなく、デバイスに対応する搬送用トレイを瞬時に識別することができ、取扱性の良いデバイス搬送用トレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明による第1のデバイス搬送用トレイは、デバイスを位置決めした状態でセットする収容部を有するデバイス搬送用トレイにおいて、樹脂を材料に形成されたトレイ本体の表面にメッキ層が形成されていることを特徴とする。
【0012】
このような構成では、トレイ本体を樹脂を材料に形成し、この表面にメッキ層を形成したので、表面硬度が高くなり、デバイスを収容部に収容し、或いは取出すに際し、デバイスのエッジにて収容部の側壁が削られ難くなり、発塵を抑制することができる。その結果、デバイスへの粉塵の付着が防止され、製品不良率を低減することができる。又、メッキ層により表面硬度を高くするようにしたので、搬送用トレイを安価に形成することができる。
【0013】
第2のデバイス搬送用トレイは、第1のデバイス搬送用トレイにおいて、前記トレイ本体が前記デバイスの形状に対応して複数設けられており、前記メッキ層が前記トレイ本体の種別毎に異なる識別色を有していることを特徴とする。
【0014】
このような構成では、メッキ層がデバイスの種別毎に異なる識別色に設定されているので、当該デバイスに対応する搬送用トレイを瞬時に識別することができ、デバイスの誤収容が防止でき、取扱性が良い。
【0015】
第3のデバイス搬送用トレイは、第2のデバイス搬送用トレイにおいて、前記識別色は染料にて発色されることを特徴とする。
【0016】
このような構成では、識別色を染料にて発色させるようにしたので、識別色が豊富になり、特定のデバイスに対応する搬送用トレイの認識がより一層容易化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。図1は搬送用トレイの斜視図、図2は搬送用トレイの平面図、図3は図2のIII部拡大図、図4は図3のIV-IV断面図、図5は図3のV-V断面図である。
【0018】
図1の1A,1B,1Cはデバイス搬送用トレイ(以下、単に「搬送用トレイ」と称する)である。この各搬送用トレイ1A〜1Cは、これらに収容されるデバイスとしての液晶パネル4A,4B,4C毎に用意されている。ちなみに、搬送用トレイ1Aは小型の液晶パネル4Aを収容し、搬送用トレイ1Bは中型の液晶パネル4Bを収容し、搬送用トレイ1Cは大型の液晶パネル4Cを収容して搬送するものである。又、各搬送用トレイ1A〜1Cの外形は同一形状に形成されており、従って、互いに積み重ねた状態で搬送させることができる。尚、図においては、3種類の搬送用トレイ1A,1B,1Cが例示されているが、搬送用トレイの種類はこれに限定されているものではない。
【0019】
又、上述したように、各搬送用トレイ1A〜1Cの形状は同一であるため、図2以下の図面においては、中型の液晶パネル4Bを収容する搬送用トレイ1Bを代表とし、この搬送用トレイ1Bの符号を1、液晶パネル4Bの符号を4として説明する。
【0020】
搬送用トレイ1は、ABS樹脂等の樹脂を材料として形成された樹脂成型品であるトレイ本体11と、このトレイ本体11の表面に被膜処理されたメッキ層12とを有している。トレイ本体11は、射出成型法など、型を用いて形成されている。又、メッキ層12は、トレイ本体11の表面に、導電性を有する無電解銅やニッケルメッキ等の下地メッキが施されており、この下地メッキの表面に電気メッキが施された複層構造を有している。
【0021】
電気メッキとしては、クロームメッキ、ニッケルメッキ、錫・コバルト合金メッキ、パラジュウムニッケル合金メッキ等がある。本実施形態では、各搬送用トレイ1A〜1C毎に異なる種類の電気メッキ処理が施されており、搬送用トレイ1A〜1C毎に、表面の光沢色、色調が異なっている。尚、このメッキ層12の色調は、金属メッキ自体の色に限らず、メッキ処理を行うメッキ液に染料液を所定に調合することで所望の色に発色させるようにしても良い。染料液を用いることであらゆる色を発色させることができるため、認識色の種類を増やすことができ、搬送用トレイ1の種別の認識をより一層容易化することができる。
【0022】
このように、本実施形態による搬送用トレイ1は表面にメッキ層12が施されているため、搬送用トレイ1自体の強度をメッキ層12により高めることができる。又、メッキ層12の光沢色、或いは色調を、搬送用トレイ1A〜1C毎に異ならしめたので、このメッキ層12の光沢色、或いは色調を識別色として利用することができる。その結果、収容する液晶パネル4A〜4Cに対応する搬送用トレイ1A〜1Cを、瞬時に識別することができる。
【0023】
次に、搬送用トレイ1A〜1Cの形状について説明する。図2、図3に示すように、搬送用トレイ1内に収容枠1aが形成され、この収容枠1a内に、液晶パネル4をセットする収容部7が、縦横に一定間隔を開けて配設されている。尚、本実施形態では1つの搬送用トレイ1に24個の収容部7が形成されているが、収容部7の個数は、搬送用トレイ1及び収容する液晶パネル4の大きさによって決定されるものであり、図2示す収容部7の個数には限定されない。
【0024】
図3〜図5に示すように、液晶パネル4は、石英ガラス基板等からなる2枚の基板5,6を貼り合わせて形成されている。一方の基板(以下「液晶駆動基板」と称する)5上に貼り合わされる他方の基板(以下「対向基板」と称する)6は、液晶駆動基板5に形成されている端子部5aを露呈させるやや小さな形状に形成されている。端子部5aは外部入力或いは外部出力端子として用いられ、FPC(Flexible Printed Circuit)などに設けられた外部電極や、液晶パネル4上に載置されるICなどの外部電極が接続される。尚、デバイスは完成された液晶パネル4に限らず、液晶駆動基板5或いは対向基板6のみの半製品であっても良い。
【0025】
又、各収容部7の上面は、搬送用トレイ1の上面1bから底面方向へ窪んだ位置に形成されている。更に、各収容部7の、液晶パネル4を載置する載置面7aに所定深さの逃げ用凹溝8が形成されている。この逃げ用凹溝8により載置面7aに対する液晶駆動基板5の接触面積が少なくなる。すなわち、本実施形態では、液晶駆動基板5のほぼ四隅が載置面7aに載置され、逃げ用凹溝8は、それ以外の部位を逃げる形状に形成されている。尚、図2の縦方向に配列されている収容部7間が、断面U字状に形成された貫通溝10を介して連通されている。
【0026】
図3〜図5に示すように、載置面7aの周囲に立設する側壁2a,3aに支持部9が突起状に形成されている。尚、この側壁2a,3aは所定の抜き勾配(例えば5〜10°)で傾斜されて、形成されている。
【0027】
各支持部9は、液晶駆動基板5の4辺5b〜5eを各々二点ずつ支持すべく、その各辺5b〜5eに対向する側壁2a,3aに二箇所ずつ所定間隔を開けて形成されている。液晶駆動基板5に形成されている端子部5aは、液晶駆動基板5の1つの一辺5bのほほ中央に配設されており、この辺5bを支持する支持部9は、端子部5aを外れた位置に配設されている。尚、液晶駆動基板5の端子部5aが形成されている辺5bと平行な辺5cを支持する支持部9は、辺5bを支持する支持部9に対向する位置に形成されている。
【0028】
一方、液晶駆動基板5の他の辺5d,5eを支持する支持部9は、貫通溝10の両側に配設されている。貫通溝10の延長上に位置する壁面に形成されている支持部9も、貫通溝10の両側に配設されている支持部9に対向する位置に形成されている。各支持部9は、その先端部9aがR曲面状に形成されており、その先端部9aにて液晶駆動基板5の各辺5b〜5eが二点で支持される。
【0029】
このような構成では、搬送用トレイ1(1=1A〜1C)の表面に施されているメッキ層12の光沢色、或いは色調が、当該搬送用トレイ1(1=1A〜1C)の種別毎に設定されているため、当該光沢色、或いは色調を識別色として、所定に組立てられた液晶パネル4(4=4A〜4C)に対応する搬送用トレイ1A〜1Cを瞬時に選択することができるため、液晶パネル4の後収容が防止され、取扱性が良い。
【0030】
そして、選択した搬送用トレイ1の収容部7に対して、液晶パネル4を装着すると、液晶パネル4を構成する液晶駆動基板5の4辺5b〜5eが、収容部7の周囲を囲う側壁2a,3aから突出されている支持部9の先端部9aに掛止されて位置決めされる。
【0031】
その際、当該液晶パネル4に対応する搬送用トレイ1は、この搬送用トレイ1の光沢色、或いは色調に基づいて予め識別されているため、異なる搬送用トレイ1が選択されることが無い。従って、例えば当該液晶パネル4が大型の液晶パネル4Cとした場合、小型の液晶パネル4Aを収容する搬送用トレイ1A、或いは中型の液晶パネル4Bを収容する搬送用トレイ1Bを誤って選択してしまうことが無く、当該搬送用トレイ1の収容部7に対して、サイズの大きな液晶パネル4が誤って装着されることによる支持部9の削れによる発塵を防止することができる。
【0032】
又、搬送用トレイ1は、その表面がメッキ層12で表面処理されているため、表面硬度が高く、しかも堅牢となり、液晶パネル4を収容部7に対して収容し、或いは取り出す際に、又は、搬送用トレイ1の各収容部7にセットされている液晶パネル4が、搬送の際の振動等の影響を受けて上下しても、液晶パネル4のエッジで支持部9が削られ難く、発塵を防止することができる。
【0033】
その結果、液晶駆動基板5の端子部5a等に粉塵が付着することが無く、製品不良を未然に回避することができる。更に、搬送用トレイ1の表面にメッキ層12を形成することで、表面硬度を高くするようにしたので、従来の樹脂成形品の搬送用トレイに対してメッキ処理を施すだけで良く、軽量でしかも安価に形成することができる。
【0034】
更に、各支持部9の先端部9aがR曲面状に形成されているので、液晶駆動基板5の4辺5b〜5eを各々二点で支持することができ、液晶駆動基板5の各辺5b〜5eの下端エッジとの接触面積を最小限とすることができ、発塵をより一層低減することができる。
【0035】
その上、端子部5a側の辺5bを支持する支持部9が、端子部5aから外れた位置に配設されているので、誤ってメッキ層12が削られたとしても、それによって発生した粉塵が端子部5aに付着され難く、端子部を粉塵から有効に保護することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明による搬送用トレイにセットするデバイスは、液晶パネルに限らず、エレクトロルミネッセンス装置、有機エレクトロルミネッセンス装置、プラズマディスプレイ装置、電気泳動ディスプレイ装置、電子放出素子を用いた装置(Field Emission Display、及びSurface-Conductin Electron-Emitter Display)、更には、DLP(Digital Light Processing)やDMD(Digital Micromirror Device)等の各種の電気光学装置、或いは半導体基板であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】搬送用トレイの斜視図
【図2】搬送用トレイの平面図
【図3】図2のIII部拡大図
【図4】図3のIV-IV断面図
【図5】図3のV-V断面図
【符号の説明】
【0038】
1,1A〜1C…搬送用トレイ、1a…収容枠、4,4A〜4C…液晶パネル、7…収容部、9…支持部、11…トレイ本体、12…メッキ層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスを位置決めした状態でセットする収容部を有するデバイス搬送用トレイにおいて、
樹脂を材料に形成されたトレイ本体の表面にメッキ層が形成されている
ことを特徴とするデバイス搬送用トレイ。
【請求項2】
前記トレイ本体が前記デバイスの形状に対応して複数設けられており、
前記メッキ層が前記トレイ本体の種別毎に異なる識別色を有している
ことを特徴とする請求項1記載のデバイス搬送用トレイ。
【請求項3】
前記識別色は染料にて発色される
ことを特徴とする請求項2記載のデバイス搬送用トレイ。
【請求項1】
デバイスを位置決めした状態でセットする収容部を有するデバイス搬送用トレイにおいて、
樹脂を材料に形成されたトレイ本体の表面にメッキ層が形成されている
ことを特徴とするデバイス搬送用トレイ。
【請求項2】
前記トレイ本体が前記デバイスの形状に対応して複数設けられており、
前記メッキ層が前記トレイ本体の種別毎に異なる識別色を有している
ことを特徴とする請求項1記載のデバイス搬送用トレイ。
【請求項3】
前記識別色は染料にて発色される
ことを特徴とする請求項2記載のデバイス搬送用トレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2009−184699(P2009−184699A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26017(P2008−26017)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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