説明

デント剛性予測方法

【課題】成形天井が取り付けられたルーフパネルのデント剛性の予測技術を提供する。
【解決手段】成形天井が取り付けられていない状態におけるルーフパネルのデント剛性を決定付ける因子と成形天井とルーフパネルとの取り付け状態を表す因子とに基づき、所定の関係式により成形天井が取り付けられたルーフパネルのデント剛性を予測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の外板パネルのデント剛性を予測する方法、特に、成形天井が取り付けられたルーフパネルの耐荷重量としてのデント剛性を予測する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の外板パネルのデント剛性の測定は、実際に試作車を用いて行われていた。したがって、設計段階ではデント剛性が不明であり、デント剛性が不足していると判明した場合には、設計にフィードバックされ、再度試作車を製作する必要があった。そのため、開発期間やコストの増大を招く問題が生じていた。
【0003】
一方、設計段階において外板パネルのデント剛性が予測できれば、上述のような問題が生じ得ないため、設計段階における外板パネルのデント剛性予測技術が望まれていた。特に、積雪時にはルーフ全体に一様な荷重が加わり、そのような荷重に対して塑性変形があってはならない。そのため、ルーフ全体への一様な荷重に対するデント剛性を的確に予測する技術が望まれていた。
【0004】
そのような技術として、例えば、特許文献1の技術がある。この特許文献1の技術では、金属製の板部材の測定点に負荷をかけた際に測定点の周囲に定義される応力影響領域の面積をタワミ面積として算定し、板部材の測定点の曲率と板部材の測定点の板厚と板部材の材質とタワミ面積とにより、所定の関係式に基づいて測定点の負荷方向での変位をデント剛性として算定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−33067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、板部材のタワミ面積と曲率と板厚と材質(以下、これらを因子と総称する)を所定の関係式に代入することにより、板部材のデント剛性を予測している。なお、板部材のタワミ面積は、板部材の取り付け状態等に基づいて算定されるため、いずれの因子も設計段階で既知となる値である。したがって、特許文献1の技術を用いれば、設計段階において板部材のデント剛性を予測することができる。
【0007】
しかしながら、近年の車両では、成形天井(ルーフライニング)が取り付けられたルーフを採用しているものが増えてきている。このような成形天井が取り付けられたルーフの外板(以下、ルーフパネルと称する)では、ルーフライニングがルーフパネルに対する荷重の一部を負担している。そのため、ルーフライニングが取り付けられたルーフパネルのデント剛性は、ルーフパネル単体のデント剛性とは異なっている。したがって、特許文献1の技術を用いても、成形天井が取り付けられたルーフパネルのデント剛性を正確に求めることはできない。
【0008】
上記課題に鑑み、本発明の目的は、成形天井が取り付けられたルーフパネルのデント剛性の予測技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明のデント剛性予測方法は、成形天井が取り付けられた車両のルーフパネルに対して略一様な荷重を加えた際の当該ルーフパネルの耐荷重量としてのデント剛性を予測するデント剛性予測方法であって、前記成形天井が取り付けられていない状態における前記ルーフパネルのデント剛性を決定付ける因子と前記成形天井と前記ルーフパネルとの取り付け状態を表す因子とに基づき、所定の関係式により前記成形天井が取り付けられた前記ルーフパネルのデント剛性を予測することを特徴としている。
【0010】
成形天井が取り付けられたルーフパネルに加えられる負荷は、ルーフパネルだけでなく成形天井によっても支えられる。そのため、成形天井が取り付けられているルーフパネルのデント剛性は、ルーフパネルのみのデント剛性を予測しても正確に予測することはできない。そのため、本発明では、成形天井が取り付けられていない状態のルーフパネルのデント剛性、すなわち、ルーフパネル自体のデント剛性を決定付ける因子と、成形天井とルーフパネルとの取り付け状態を表す因子とを用いて、所定の予測式(関係式)から成形天井が取り付けられたルーフパネルのデント剛性を予測している。これにより、成形天井が支える負荷をも加味した状態でルーフパネルのデント剛性を的確に予測することができる。
【0011】
また、本発明のデント剛性予測方法の好適な実施形態の一つでは、前記成形天井と前記ルーフパネルとは接着により取り付けられており、前記成形天井が取り付けられていない前記ルーフパネルのデント剛性を決定付ける因子は、前記ルーフパネルの板厚と、前記ルーフパネルの面積と、前記ルーフパネルの曲率と、であり、前記成形天井と前記ルーフパネルとの取り付け状態を表す因子は、当該成形天井と当該ルーフパネルとの接着面積と、当該成形天井と当該ルーフパネルとの間の隙間寸法である。
【0012】
この構成では、成形天井とルーフパネルとが接着により取り付けられている場合において、上述のような因子を用いることにより、ルーフパネルのデント剛性を的確に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のデント剛性予測方法を適用する車両のルーフ付近の分解斜視図である。
【図2】車両のルーフの曲率の求め方を表す図である。
【図3】車両のルーフの曲率の求め方を表す図である。
【図4】車両のルーフの面積の求め方を表す図である。
【図5】車両と成形天井とを接着する際の接着剤の塗布状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を用いて、本発明のデント剛性予測方法の実施形態を説明する。なお、本実施形態におけるデント剛性とは、ルーフパネルに一様な荷重が加えられた際に、ルーフパネルの荷重方向への変位量が所定の許容変位量となる荷重の大きさを意味するが、所定の荷重を加えた際の荷重方向の変位量としても構わない。また、本実施形態では、積雪により車両のルーフへ略一様な荷重が加えられた際のデント剛性を予測する場合を説明し、デント剛性として荷重に代えて、ルーフパネルに一様に積もった積雪量(積雪高さ)を用いる。当然ながら、車両のルーフへの略一様な荷重は積雪に限定されるものではない。
【0015】
図1は、車両Vのルーフ1である。図に示すように、ルーフ1は曲面形状を持つルーフパネル2により構成されている。また、ルーフパネル2の車体側には合成樹脂製の成形天井4が取り付けられている。そのため、ルーフパネル2への荷重はルーフパネル2のみならず成形天井4も負担することとなる。
【0016】
そのため、成形天井4が取り付けられたルーフパネル2のデント剛性を、ルーフパネル2自体の特性のみから予測しても正確な結果を得ることができない。上述したように、ルーフパネル2に加えられる荷重は成形天井4も負担している。本発明の発明者らは実験を通して、このときの成形天井4の荷重の負担量は、ルーフパネル2と成形天井4との取り付け状態が影響していることを見出した。そこで、本発明の発明者らは、ルーフパネル2自体の特性に加えて、ループパネル2と成形天井4との取り付け状態を表す因子を用いてデント剛性を予測することに想到した。
【0017】
一般的に、ルーフパネル2等の板材のデント剛性は、板材の板厚、板材の曲率および板材の面積に依存することが知られている。そこで、まず、これらのルーフパネル2自体のデント剛性を決定付ける因子について説明する。なお、図2に示すように本実施形態の車両Vのルーフパネル2の車両Vの前後方向の曲率は、ルーフパネル2の前部2Fと後部2Rとで大きく異なっている。そのため、ルーフパネル2のデント剛性も前部2Fと後部2Rとで大きく異なっている。そこで、本実施形態ではルーフパネルを前部2Fと後部2Rとに分割し、それぞれのデント剛性を予測する構成としている。
【0018】
〔曲率〕
一般的に、車両Vのルーフパネル2の曲率は、車両Vの前後方向(以下、縦方向と称する)と車両Vの左右方向(以下、横方向と称する)とで異なっている。そのため、ルーフパネル2の曲率として、縦方向の曲率(以下、縦方向曲率と称する)と横方向の曲率(横方向曲率)とを用いる。
【0019】
図2および図3は、本実施形態におけるルーフパネル2の曲率の求め方を示す図である。図2に示すように、本実施形態の車両Vを側面方向から見ると、ルーフパネル2の曲率が大きく変化する位置が存在する。本実施形態では、その位置を境としてルーフパネル2を前部2Fと後部2Rとに分割している。また、ルーフパネル2の前部2F内または後部2R内においても、曲率は一定ではない。そのため、本実施形態では、ルーフパネル2の前部2Fおよび後部2R内に縦方向および横方向の計測線を設定し、その計測線を所定数に等分する点を曲率の計測点として設定し、各々の計測点における曲率の平均値を前部2Fおよび後部2Rの曲率としている。
【0020】
このときの計測線および計測点を設定する例を図2および図3に示している。図2および図3に示すように、ルーフパネル2に沿って、縦方向の計測線L1が設定されており、前部2F内に横方向の計測線L2および後部2R内に横方向の計測線L3が設定されている。なお、本実施形態では、計測線L1はルーフパネル2の横方向中央位置に設定しており、計測線L2および計測線L3はそれぞれ前部2Fおよび後部2Rの縦方向の中央位置に設定しているがこれに限定されるものではない。例えば、計測線L2や計測線L3は縦方向曲率が最大または最小となる位置に設定する等しても構わない。
【0021】
さらに、計測線L1のうち前部2Fに含まれる線分を所定数(本実施例では4)に等分する等分点が計測点PVF1からPVF5として設定されている。同様に、計測線L1のうち後部2Rに含まれる線分を4等分する等分点が計測点PVR1からPVR5として設定されている。一方、計測線L2および計測線L3をそれぞれ4等分する点をそれぞれ計測点PHF1からPHF5およびPHR1からPHR5として設定している。なお、本実施形態では、各計測線の等分数を4としたが、等分数は適宜変更可能である。また、計測線L1の等分数と計測線L2または計測線L3の等分数とを異ならせても構わない。
【0022】
このようにして設定された計測点PVF1〜PVF5,PVR1〜PVR5,PHF1〜PHF5およびPHR1〜PHR5において、曲率を求める。具体的には、計測線L1上の計測点においては縦方向曲率、計測線L2および計測線L3上の計測点においては横方向曲率が求められる。すなわち、計測点PVF1からPVF5における縦方向曲率ρVF1からρVF5、計測点PVR1からPVR5における縦方向曲率ρVR1からρVR5が求められる。また、計測点PHF1からPHF5における横方向曲率ρHR1からρHR5、計測点PHR1からPHR5における横方向曲率ρHR1からρHR5が求められる。なお、各測定点における縦方向曲率および横方向曲率は、CAD図面等の設計図面から容易に求めることができる。
【0023】
その後、縦方向曲率ρVF1からρVF5の平均値を前部2Fの縦方向曲率ρVF、縦方向曲率ρVR1からρVR5の平均値を後部2Rの縦方向曲率ρVR、横方向曲率ρHF1からρHF5の平均値を前部2Fの横方向曲率ρFH、横方向曲率ρHR1からρHR5の平均値を後部2Rの横方向曲率ρHRとして求める。
【0024】
〔面積〕
上述したように、本実施形態ではルーフパネル2を前部2Fと後部2Rとに分割している。そのため、ルーフパネル2の面積も前部2Fの面積と後部2Rの面積とを用いる。図4は、面積の求め方を模式的に表した図である。図に示すように、本実施形態では、ルーフパネル2の前部2Fおよび後部2Rの実際の面積を求めるのではなく、ルーフパネル2の前部2Fおよび後部2Rの上方に仮想面SFおよびSRを設定し、前部2Fを仮想面SFに投影した際の仮想面SF上の面積を前部2Fの面積AF、後部2Rを仮想面SRに投影した際の仮想面SR上の面積を後部2Rの面積ARとしている。このように、前部2Fおよび後部2Rの面積を求めることにより、CAD図面等の図面から前部2Fおよび後部2Rの面積を容易に求めることができる。当然ながら、面積AFおよびARとして、前部2Fおよび後部2Rの実際の面積を用いても構わない。
【0025】
〔板厚〕
ルーフパネル2の板厚は設計図面や仕様書等から容易に得ることができるため、説明は省略する。
【0026】
次に、ループパネル2と成形天井4との取り付け状態を表す因子を説明する。本実施形態では、ルーフパネル2と成形天井4とは接着剤により接着されているため、このような因子として、ルーフパネル2と成形天井4との接着面積および接着時のルーフパネル2と成形天井4との隙間寸法とを用いている。
【0027】
〔接着面積〕
ルーフパネル2と成形天井4とは、成形天井4が脱落等しないよう確実に取り付ける必要がある。一般的には、ルーフパネル2と成形天井4との接着面積を大きくすれば、接着力が高まる。しかしながら、接着面積を大きくすると、車両Vの重量やコストの増大を招くため、要求される接着力と車両Vの重量やコストの増加とのバランスにより接着面積が決定される。すなわち、接着面積は仕様により決定されているものである。したがって、設計段階の仕様書等から接着面積を求めることができる。
【0028】
本実施形態では、図5に示すように、接着剤を成形天井4に線状に塗布している。そのため、接着面積は、塗布する接着剤の塗布本数N,接着剤の塗布長さLおよび接着剤の太さφの積により近似することができる。なお、本実施形態では、ルーフパネル2と同様に成形天井4も前部4Fと後部4Rとに分割し、前部4Fの接着面積をGF、後部4Fの接着面積をGRとしている。
【0029】
〔隙間寸法〕
上述したように、ルーフパネル2と成形天井4とを接着する接着剤は成形天井4の全面に塗布されていないため、部分的にルーフパネル2と成形天井4との間に隙間が生じている。ルーフパネル2と成形天井4との間に隙間が生じている箇所では、ルーフパネル2に加えられた荷重は成形天井4により支えられないため、ルーフパネル2と成形天井4とが接着されている箇所に比べてデント剛性が低くなっている。なお、本発明の発明者らの実験により、ルーフパネル2と成形天井4との隙間が大きいほど、デント剛性の低下度合が大きくなっていることが判明している。
【0030】
そのため、本実施形態では、デント剛性を予測するための因子としてルーフパネル2と成形天井4との隙間の寸法(以下、隙間寸法と称する)を用いている。なお、ルーフパネル2と成形天井4との隙間寸法は一様でないため、本実施形態では隙間寸法の最大値をデント剛性を予測するための因子として用いている。また、本実施形態では、上述したようにルーフパネル2を前部2Fと後部2Rとに分割しているため、隙間寸法もルーフパネル2の前部2Fと成形天井4の前部4Fとの隙間寸法DFとルーフパネル2の後部2Rと成形天井4の後部4Rとの隙間寸法DRとを用いている。
【0031】
このように、隙間寸法の最大値を用いた場合には、最もデント剛性が低い箇所のデント剛性を予測することができる。その予測値が仕様を満たすように設計を行えば、ルーフパネル2のデント剛性は仕様を満たすこととできるため、好ましい。なお、隙間寸法の最大値だけでなく、隙間寸法の平均値や他の統計値を用いても構わない。
【0032】
なお、この隙間寸法は、図面、接着の仕様、経験則から容易に求めることができる。
【0033】
〔デント剛性予測〕
上述したように、本実施形態では、ルーフパネル2のデント剛性を予測するための因子として、ルーフパネル2自体のデント剛性を決定する因子としてのルーフパネル2の板厚,曲率(縦曲率,横曲率),面積、および、成形天井4の影響を受ける因子としての接着面積,隙間寸法を用いている。本発明は、これらの値を所定の関係式に代入してデント剛性を予測するものであるが、本実施形態では、所定の関係式として、多変量解析により求められた関係式を用いる。
【0034】
したがって、複数台の実車から上記の因子を測定し、多変量解析により説明変数の係数を求めることにより、所定の関係式を求めることができる。具体的には、M台の実車を用意し、i(i=1,2・・・M)番目の車両Viのルーフパネル2の板厚Li,ルーフパネル2の前部2Fおよび後部2Rの縦曲率ρVFi,ρVRi,横曲率ρHFi,ρHRi、面積AFi,ARi,ルーフパネル2の前部2Fにおけるルーフパネル2と成形天井4との接着面積GFi,ルーフパネル2の後部2Rにおけるルーフパネル2と成形天井4との接着面積GRi,ルーフパネル2の前部2Fにおけるルーフパネル2と成形天井4との隙間寸法DFi,ルーフパネル2の後部2Rにおけるルーフパネル2と成形天井4との隙間寸法DRiおよび、ルーフパネル2の前部2Fのデント剛性としての許容積雪量HFi,ルーフパネル2の後部2Rのデント剛性としての許容積雪量HRiを求める。これにより、ルーフパネル2の前部2Fの許容積雪量と後部2Fの許容積雪量を表す以下の関係式がそれぞれM組求められる。
a1×Li+a2×ρVFi+a3×HFi+a4×AFi+a5×GFi+a6×DFi=HFi・・・(1)
b1×Li+b2×ρVRi+b3×HRi+b4×ARi+b5×GRi+b6×DRi=HRi・・・(2)
【0035】
このようにして求められたM組の関係式から多変量解析により係数a1からa6およびb1からb6を求める。
【0036】
次に、設計段階の車両Vのデント剛性としての許容積雪量を予測する際には、車両VのCAD図面や仕様書等から、ルーフパネル2の板厚L,ルーフパネル2の前部2Fおよび後部2Rの縦曲率ρVF,ρVR,横曲率ρHF,ρHR、面積AF,AR,ルーフパネル2の前部2Fにおけるルーフパネル2と成形天井4との接着面積GF,ルーフパネル2の後部2Rにおけるルーフパネル2と成形天井4との接着面積GR,ルーフパネル2の前部2Fにおけるルーフパネル2と成形天井4との隙間寸法DF,ルーフパネル2の後部2Rにおけるルーフパネル2と成形天井4との隙間寸法DRを求める。これらの値を式(1)および(2)に代入すると、
a1×L+a2×ρVF+a3×HF+a4×AF+a5×GF+a6×DF=HF
b1×L+b2×ρVR+b3×HR+b4×AR+b5×GR+b6×DR=HR
となり、ここで得られたHFおよびHRが車両Vのルーフパネル2の前部2Fおよび後部2Rの許容積雪量となる。
【0037】
なお、本実施形態では、ルーフパネル2への積雪に対するデント剛性を予測したため、実験者等が荷重を直感的に把握し易くなるよう、デント剛性として積雪量を用いたが、他の荷重に対するデント剛性を予測する際には、荷重に応じた量をデント剛性としても用いてもよいし、荷重そのものをデント剛性としても構わない。
【0038】
このようにして算出されたデント剛性が仕様を満たさない場合には、設計にフィードバックされる。設計の変更が行われた場合には、上述と同様に再度デント剛性の予測が行われる。これにより、設計段階においてデント剛性を予測することができるため、設計された車両Vのデント剛性が不足していた場合でも、設計変更から再度のデント剛性の予測までの期間を短縮することができる。また、試作車を製造することなくデント剛性を予測することができるため、コストの増加を抑制することができる。
【0039】
〔別実施形態〕
上述の実施形態では、ルーフパネル2と成形天井4とは接着剤により接着されており、ルーフパネル2と成形天井4との取り付け状態を表す因子として接着面積とルーフパネル2と成形天井4との隙間寸法を用いたが、取り付け状態を表す因子として他の値を用いても構わない。特に、ルーフパネル2と成形天井4とが他の方法により結合されているような場合には、その結合状態を的確に表す値を取り付け状態を表す因子とすることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、成形天井が取り付けられた車両のルーフパネルのデント剛性の予測に用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
L1、L2、L3:計測線
PVF1〜PVF5:計測点
PVR1〜PVR5:計測点
PHF1〜PHF5:計測点
PHR1〜PHR5:計測点
ρVF1〜ρVF5:縦方向曲率
ρVR1〜ρVR5:縦方向曲率
ρHF1〜ρHF5:横方向曲率
ρHR1〜ρHR5:横方向曲率
ρVF、ρVR:縦方向曲率
ρHF、ρHR:横方向曲率
SF、SR:仮想面
AF、AR:面積
V:車両
1:ルーフ
2:ルーフパネル
2F:前部
2R:後部
4:成形天井

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形天井が取り付けられた車両のルーフパネルに対して略一様な荷重を加えた際の当該ルーフパネルの耐荷重量としてのデント剛性を予測するデント剛性予測方法であって、
前記成形天井が取り付けられていない状態における前記ルーフパネルのデント剛性を決定付ける因子と前記成形天井と前記ルーフパネルとの取り付け状態を表す因子とに基づき、所定の関係式により前記成形天井が取り付けられた前記ルーフパネルのデント剛性を予測するデント剛性予測方法。
【請求項2】
前記成形天井と前記ルーフパネルとは接着により取り付けられており、
前記成形天井が取り付けられていない前記ルーフパネルのデント剛性を決定付ける因子は、前記ルーフパネルの板厚と、前記ルーフパネルの面積と、前記ルーフパネルの曲率と、であり、
前記成形天井と前記ルーフパネルとの取り付け状態を表す因子は、当該成形天井と当該ルーフパネルとの接着面積と、当該成形天井と当該ルーフパネルとの間の隙間寸法である請求項1記載のデント剛性予測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−158271(P2011−158271A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17996(P2010−17996)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)