説明

デンドロン型アントラキノン化合物、液晶組成物、及び液晶素子

【課題】二色性色素として有効な新規なデンドロン型アントラキノン化合物、それを含有する液晶組成物、及びコントラスト比の高い鮮明な調光が可能な液晶素子を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とするデンドロン型アントラキノン化合物。


(式中、Xは硫黄原子等、Y及びZは等、Aは直接結合か、X側に芳香族基が結合した芳香族アルキレン基、芳香族オキシアルキレン基又は芳香族オキシアルキレンオキシ基等を表す。Rは炭素数が1〜18のアルキレン基、Rは炭素数が1〜18のアルキル基又はアルキルオキシ基、nとmは1か2の整数、ただしn+mは3以下である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲストホスト型液晶素子に有効な新規なデンドロン型アントラキノン化合物、それを含有した液晶組成物、及び液晶素子に関する。
【背景技術】
【0002】
反射型の液晶素子として、ゲストホスト型液晶素子が提案されている。ゲストホスト型液晶素子は、ホストの液晶中にゲストの二色性色素を溶解した液晶組成物をセル中に封入し、電圧を印加して液晶と共に二色性色素の配向を変化させることによって、セルの吸光状態を変化させる調光性素子である。
コントラスト比の高い鮮明な調光を実現するためには、液晶、特に近年多く使用されているフッ素系の液晶に対する、二色性色素の溶解性と溶解安定性が優れていること、及び高いオーダーパラメーターを有していることが必要となる。
二色性色素としては、主にアゾ色素又はアントラキノン色素が用いられている。しかしながら、アゾ色素は分子の直線性が高いため、直線性構造である液晶に対して溶解性の高いものが多い反面、アゾ色素は耐光性に劣るという欠点がある。一方、アントラキノン色素はアゾ色素より耐光性は優れているが、液晶に対する溶解性の点で劣る。
近年、二色性色素として、いくつかのアントラキノン色素が開示(特許文献1〜9)されているが、オーダーパラメーター及び液晶に対する溶解性の点では進展はみられるものの、未だ十分ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記従来の問題を解決するために、二色性色素として有効な新規なデンドロン型アントラキノン化合物、特に、高いオーダーパラメーターと液晶に対する高い溶解性を有した新規なデンドロン型アントラキノン化合物、それを含有する液晶組成物、及びコントラスト比の高い鮮明な調光が可能な液晶素子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題は、次の(1)〜(3)の本発明により解決される。
(1)本発明の第1は、下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とするデンドロン型アントラキノン化合物に関する。
【化1】

(式中、Xは同じか異なった、硫黄原子、酸素原子、又は−NH−、Y及びZは同じか異なった水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、又はアリールアミノ基、Aは直接結合か、X側に芳香族基が結合した芳香族アルキレン基、芳香族オキシアルキレン基又は芳香族オキシアルキレンオキシ基、Rは炭素数が1〜18のアルキレン基、Rは炭素数が1〜18のアルキル基又はアルキルオキシ基、nとmは1か2の整数、ただしn+mは3以下である。)
(2)本発明の第2は、少なくとも上記一般式(1)で表される少なくとも1種類のデンドロン型アントラキノン化合物と、少なくとも1種類の液晶化合物からなることを特徴とする液晶組成物に関する。
(3)本発明の第3は、上記の液晶組成物を用いることを特徴とする液晶素子。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、二色性色素として有効な新規なデンドロン型アントラキノン化合物、特に、高いオーダーパラメーターと液晶に対する高い溶解性を有した新規なデンドロン型アントラキノン化合物、それを含有する液晶組成物、及びコントラスト比の高い鮮明な調光が可能な液晶素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】実施例1の化合物のIRスペクトルチャート。
【図2】実施例1の化合物の吸収スペクトルチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のデンドロン型アントラキノン化合物は、一般式(1)で表される構造を有することを特徴とする。
【化2】

(式中、Xは同じか異なった、硫黄原子、酸素原子、又は−NH−、Y及びZは同じか異なった水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、又はアリールアミノ基、Aは直接結合か、X側に芳香族基が結合した芳香族アルキレン基、芳香族オキシアルキレン基又は芳香族オキシアルキレンオキシ基、Rは炭素数が1〜18のアルキレン基、Rは炭素数が1〜18のアルキル基又はアルキルオキシ基、nとmは1か2の整数、ただしn+mは3以下である。)
【0008】
一般式(1)で表されるデンドロン型アントラキノン化合物において、中央部の連結基X及び置換基YとZを含むアントラキノン部が主に色素として機能し、連結基Aを介して結合した二つのデンドロン部が、液晶中での配向性を高め、且つ液晶への溶解性を高める機能を有する。
主に色素として機能するアントラキノン部の連結基Xは、硫黄原子、酸素原子、又は−NH−である。
【0009】
また、アントラキノン部の置換基YとZは同じか異なった水素原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基;
メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、イソウンデシル基、ドデシル基、イソドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、イソテトラデシル基、ペンタデシル基、イソペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、オクタデシル基、又はイソオクタデシル基などのアルキル基、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基;
フッ素原子、塩素原子又は臭素原子などのハロゲン原子;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシオキシ基、ペンタデシル基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、フェニルオキシ基、フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基、又はフェニルプロポキシ基などのアルコキシ基、好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基;
メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、イソペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、イソヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、イソヘプチルチオ基、オクチルチオ基、イソオクチルチオ基、ノニルチオ基、イソノニルチオ基、デシルチオ基、イソデシルチオ基、ウンデシルチオ基、イソウンデシルチオ基、ドデシルチオ基、イソドデシルチオ基、トリデシルチオ基、イソトリデシルチオ基、テトラデシルチオ基、イソテトラデシルチオ基、ペンタデシルチオ基、イソペンタデシルチオ基、ヘキサデシルチオ基、イソヘキサデシルチオ基、ヘプタデシルチオ基、イソヘプタデシルチオ基、オクタデシルチオ基、イソオクタデシルチオ基などのアルキルチオ基、好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基;
フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基、2−ピリジルチオ基、p−フルオロフェニルチオ基、p−トリフルオロメチルフェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、2−ピリジルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、4−プロピルシクロヘキシル−4′−フェニルチオ基、4−プロピルシクロヘキシル−4′−ビフェニルチオ基、4−ブチルシクロヘキシル−4′−フェニルチオ基、又は4−ブチルシクロヘキシル−4′−ビフェニルチオ基などのアリールチオ基、好ましくは炭素数6〜30のアリールチオ基;
メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、ジヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ジオクチルアミノ基などのアルキルアミノ基、好ましくは炭素数1〜12のアルキルアミノ基;
又はアニリノ基、ベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、o−メチルフェニルアミノ基、m−メチルフェニルアミノ基、p−メチルフェニルアミノ基、p−メトキシフェニルアミノ基、p−クロロフェニルアミノ基、p−フルオロフェニルアミノ基、p−トリフルオロメチルフェニルアミノ基、2−ピリジルアミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、4−プロピルシクロヘキシル−4′−フェニルアミノ基、4−プロピルシクロヘキシル−4′−ビフェニルアミノ基、4−ブチルシクロヘキシル−4′−フェニルアミノ基、又は4−ブチルシクロヘキシル−4′−ビフェニルアミノ基などのアリールアミノ基、好ましくは炭素数6〜30アリールアミノ基である。
【0010】
また、アントラキノン部とデンドロン部を連結する連結基−A−は、直接結合か、X側に芳香族基が結合した芳香族アルキレン基、芳香族オキシアルキレン基又は芳香族オキシアルキレンオキシ基である。
【0011】
例えば、芳香族アルキレン基としては、−フェニレン−メチレン−、−フェニレン−エチレン−、−フェニレン−プロピレン−、−フェニレン−ブチレン−、−フェニレン−ペンチレン−、−フェニレン−ヘキシレン−、−フェニレン−ヘプチレン−、−フェニレン−オクチレン−、−フェニレン−ノニレン−、−フェニレン−デシレン−、−フェニレン−ウンデシレン−、−フェニレン−ドデシレン−、−ビフェニレン−メチレン−、−ビフェニレン−エチレン−、−ビフェニレン−プロピレン−、−ビフェニレン−ブチレン−、−ビフェニレン−ペンチレン−、−ビフェニレン−ヘキシレン−、−ビフェニレン−ヘプチレン−、−ビフェニレン−オクチレン−、−ビフェニレン−ノニレン−、−ビフェニレン−デシレン−、−ビフェニレン−ウンデシレン−、−ビフェニレン−ドデシレン−、−ナフタレン−メチレン−、−ナフタレン−エチレン−、−ナフタレン−プロピレン−、−ナフタレン−ブチレン−、−ナフタレン−ペンチレン−、−ナフタレン−ヘキシレン−、−ナフタレン−ヘプチレン−、−ナフタレン−オクチレン−、−ナフタレン−ノニレン−、−ナフタレン−デシレン−、−ナフタレン−ウンデシレン−、又は−ナフタレン−ドデシレン−などの芳香族アルキレン基、好ましくは炭素数7〜18の芳香族アルキレン基が挙げられる。
また芳香族オキシアルキレン基としては、−フェニレン−オキシメチレン−、−フェニレン−オキシエチレン−、−フェニレン−オキシプロピレン−、−フェニレン−オキシブチレン−、−フェニレン−オキシペンチレン−、−フェニレン−オキシヘキシレン−、−フェニレン−オキシヘプチレン−、−フェニレン−オキシオクチレン−、−フェニレン−オキシノニレン−、−フェニレン−オキシデシレン−、−フェニレン−オキシウンデシレン−、−フェニレン−オキシドデシレン−、−ビフェニレン−オキシメチレン−、−ビフェニレン−オキシエチレン−、−ビフェニレン−オキシプロピレン−、−ビフェニレン−オキシブチレン−、−ビフェニレン−オキシペンチレン−、−ビフェニレン−オキシヘキシレン−、−ビフェニレン−オキシヘプチレン−、−ビフェニレン−オキシオクチレン−、−ビフェニレン−オキシノニレン−、−ビフェニレン−オキシデシレン−、−ビフェニレン−オキシウンデシレン−、−ビフェニレン−オキシドデシレン−、−ナフタレン−オキシメチレン−、−ナフタレン−オキシエチレン−、−ナフタレン−オキシプロピレン−、−ナフタレン−オキシブチレン−、−ナフタレン−オキシペンチレン−、−ナフタレン−オキシヘキシレン−、−ナフタレン−オキシヘプチレン−、−ナフタレン−オキシオクチレン−、−ナフタレン−オキシノニレン−、−ナフタレン−オキシデシレン−、−ナフタレン−オキシウンデシレン−、又は−ナフタレン−オキシドデシレン−などの芳香族オキシアルキレン基、好ましくは炭素数7〜18の芳香族オキシアルキレン基、
芳香族オキシアルキレンオキシ基としては、−フェニレン−オキシメチレンオキシ−、−フェニレン−オキシエチレンオキシ−、−フェニレン−オキシプロピレンオキシ−、−フェニレン−オキシブチレンオキシ−、−フェニレン−オキシペンチレンオキシ−、−フェニレン−オキシヘキシレンオキシ−、−フェニレン−オキシヘプチレンオキシ−、−フェニレン−オキシオクチレンオキシ−、−フェニレン−オキシノニレンオキシ−、−フェニレン−オキシデシレンオキシ−、−フェニレン−オキシウンデシレンオキシ−、−フェニレン−オキシドデシレンオキシ−、−ビフェニレン−オキシメチレンオキシ−、−ビフェニレン−オキシエチレンオキシ−、−ビフェニレン−オキシプロピレンオキシ−、−ビフェニレン−オキシブチレンオキシ−、−ビフェニレン−オキシペンチレンオキシ−、−ビフェニレン−オキシヘキシレンオキシ−、−ビフェニレン−オキシヘプチレンオキシ−、−ビフェニレン−オキシオクチレンオキシ−、−ビフェニレン−オキシノニレンオキシ−、−ビフェニレン−オキシデシレンオキシ−、−ビフェニレン−オキシウンデシレンオキシ−、−ビフェニレン−オキシドデシレンオキシ−、−ナフタレン−オキシメチレンオキシ−、−ナフタレン−オキシエチレンオキシ−、−ナフタレン−オキシプロピレンオキシ−、−ナフタレン−オキシブチレンオキシ−、−ナフタレン−オキシペンチレンオキシ−、−ナフタレン−オキシヘキシレンオキシ−、−ナフタレン−オキシヘプチレンオキシ−、−ナフタレン−オキシオクチレンオキシ−、−ナフタレン−オキシノニレンオキシ−、−ナフタレン−オキシデシレンオキシ−、−ナフタレン−オキシウンデシレンオキシ−、又は−ナフタレン−オキシドデシレンオキシ−などの芳香族オキシアルキレンオキシ基、好ましくは炭素数7〜18の芳香族オキシアルキレンオキシ基などが挙げられる。
【0012】
また、デンドロン部の連結基Rは、炭素数が1〜18のアルキレン基であり、好ましくは炭素数2〜8のアルキレン基である。
また、デンドロン部の末端基Rは、炭素数が1〜18のアルキル基、又はアルキルオキシ基であり、好ましくは炭素数2〜8のアルキル基又はアルキルオキシ基である。
また、デンドロン部の主骨格を形成するフェニレン基とシクロヘキシレン基の数を示すnとmは、1か2の整数、ただしn+mは3以下である。
【0013】
一般式(1)で表されるデンドロン型アントラキノン化合物は、例えば下式に示すような方法により、置換基Y、Z、Rや連結基Rにより限定されることなく製造することができる。
【0014】
【化3】

【0015】
一般式(1)で表されるデンドロン型アントラキノン化合物としては、例えば以下に示す化合物を用いることができる。
【0016】
【化4】

No.1〜49;Y=H、Z=H、R=C、C、C、C10、C12、C14、又はC16、及びR=C、C、C、C11、C13、C15、又はC17
No.50〜56;Y=H、Z=フェニルチオ基、4−ブチルフェニルチオ基、4−t−ブチルフェニルチオ基、4−n−ヘキシルフェニルチオ基、4−オクチルフェニルチオ基、4−オクチルフェニルチオ基、又は4−トリフルオロメチルフェニルチオ基、R=C12、及びR=C11
No.57〜63;Y=Z=フェニルチオ基、4−ブチルフェニルチオ基、4−t−ブチルフェニルチオ基、4−n−ヘキシルフェニルチオ基、4−オクチルフェニルチオ基、4−オクチルフェニルチオ基、又は4−トリフルオロフェニルチオ基、R=C12、及びR=C11
【0017】
【化5】

No.64〜112;Y=H、Z=H、R=C、C、C、C10、C12、C14、又はC16、及びR=C、C、C、C11、C13、C15、又はC17
No.113〜119;Y=H、Z=フェニルチオ基、4−ブチルフェニルチオ基、4−t−ブチルフェニルチオ基、4−n−ヘキシルフェニルチオ基、4−オクチルフェニルチオ基、4−オクチルフェニルチオ基、又は4−トリフルオロメチルフェニルチオ基、R=C12、及びR=C11
No.120〜126;Y=Z=フェニルチオ基、4−ブチルフェニルチオ基、4−t−ブチルフェニルチオ基、4−n−ヘキシルフェニルチオ基、4−オクチルフェニルチオ基、4−オクチルフェニルチオ基、又は4−トリフルオロメチルフェニルチオ基、R=C12、及びR=C11
【0018】
【化6】

No.127〜175;Y=H、Z=H、R=C、C、C、C10、C12、C14、又はC16、及びR=C、C、C、C11、C13、C15、又はC17
No.176〜182;Y=H、Z=フェニルチオ基、4−ブチルフェニルチオ基、4−t−ブチルフェニルチオ基、4−n−ヘキシルフェニルチオ基、4−オクチルフェニルチオ基、4−オクチルフェニルチオ基、又は4−トリフルオロフェニルチオ基、R=C12、及びR=C11
No.183〜189;Y=Z=フェニルチオ基、4−ブチルフェニルチオ基、4−t−ブチルフェニルチオ基、4−n−ヘキシルフェニルチオ基、4−オクチルフェニルチオ基、4−オクチルフェニルチオ基、又は4−トリフルオロメチルフェニルチオ基、R=C12、及びR=C11
【0019】
【化7】

No.190〜238;Y=H、Z=H、R=C、C、C、C10、C12、C14、又はC16、及びR=C、C、C、C11、C13、C15、又はC17
No.239〜245;Y=H、Z=フェニルチオ基、4−ブチルフェニルチオ基、4−t−ブチルフェニルチオ基、4−n−ヘキシルフェニルチオ基、4−オクチルフェニルチオ基、4−オクチルフェニルチオ基、又は4−トリフルオロメチルフェニルチオ基、R=C12、及びR=C11
No.246〜252;Y=Z=フェニルチオ基、4−ブチルフェニルチオ基、4−t−ブチルフェニルチオ基、4−n−ヘキシルフェニルチオ基、4−オクチルフェニルチオ基、4−オクチルフェニルチオ基、又は4−トリフルオロメチルフェニルチオ基、R=C12、及びR=C11
【0020】
【化8】

No.253〜301;Y=H、Z=H、R=C、C、C、C10、C12、C14、又はC16、及びR=C、C、C、C11、C13、C15、又はC17
No.302〜308;Y=Z=フェニルチオ基、4−ブチルフェニルチオ基、4−t−ブチルフェニルチオ基、4−n−ヘキシルフェニルチオ基、4−オクチルフェニルチオ基、4−オクチルフェニルチオ基、又は4−トリフルオロメチルフェニルチオ基、R=C12、及びR=C11
【0021】
【化9】

No.309〜357;Y=H、Z=H、R
、C、C、C10、C12、C14、又はC16、及びR
、C、C、C11、C13、C15、又はC17
【0022】
また、本発明の液晶組成物に使用可能な液晶化合物は、上記のデンドロン型アントラキノン化合物により何ら制限されることはなく、ネマチック相又はスメクチック相を示す液晶化合物を使用することができる。例えば、アゾメチン化合物、シアノビフェニル化合物、シアノフェニルエステル、フッ素置換フェニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、フッ素置換シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、シアノフェニルシクロヘキサン、フッ素置換フェニルシクロヘキサン、シアノ置換フェニルピリミジン、フッ素置換フェニルピリミジン、アルコキシ置換フェニルピリミジン、フッ素置換アルコキシ置換フェニルピリミジン、フェニルジオキサン、トラン化合物、フッ素置換トラン化合物、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリルなどが挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよいし、2種類以上混合して使用してもよい。
【0023】
本発明の液晶組成物には、カイラル剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの化合物を添加してもよい。例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会142委員会、日刊工業新聞社)1989年に記載の添加剤などが挙げられる。
本発明の液晶組成物において、上記のデンドロン型アントラキノン化合物の含有量は制限されないが、液晶化合物に対して0.2〜20重量%であることが好ましい。特に、0.5〜10重量%であることが好ましい。
【0024】
本発明の液晶素子は、本発明の液晶組成物を用いた液晶素子であり、例えば、ガラス又はプラスチックからなる基板上に、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)又は酸化インジウム亜鉛(IZO)などの透明電極層を設けた一対の電極基板を、スペーサーなどを介して、1〜100μmの間隔で対向させ、形成された空間に本発明の液晶組成物を注入することにより作製することができる。また、液晶と接触する電極基板の電極層上に、ポリイミドを塗布しラビング処理した配向膜、SiOxを斜め方向から蒸着して形成した配向膜、又は光照射による光異性化を利用した配向膜を形成することが好ましい。
【0025】
本発明の液晶素子は、単純マトリックス駆動方式あるいは薄膜トランジスタ(TFT)などを用いたアクテイブマトリックス駆動方式を用いて駆動することができ、空間変調素子、ディスプレイ、又はデジタルサイネージ(電子看板)などに利用することができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明の実施例及び比較例について説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0027】
〔実施例1〕
〔実施例1の化合物〕
【化10】

〈中間体1の合成〉
【化11】

12.3gの4−(4−ペンチルシクロヘキシル)フェノール、36.6gの1,6−ジブロモへキサン、及び10.4gの炭酸カリウムを100mLのアセトンに加え、アルゴン下で20時間還流した後、ろ過し、ろ液を濃縮した。残留物を塩化メチレンに溶解し、水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ液を濃縮した。残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製して、14.2gの中間体1を得た。
〈中間体2の合成〉
【化12】

13.8gの中間体1、及び1.9gの3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸エチルエステルを50mLのメチルエチルケトン(MEK)に加えた。この混合物にアルゴン下で撹拌しながら、5.3gの炭酸カリウム、0.8gの18−クラウン6エーテル、及び10mLのMEKを加えた。アルゴン下で30時間還流した後、室温まで冷却した。100mLの塩化メチレンを加え、ろ過し、ろ液を濃縮した。残留物を塩化メチレンに溶解し、水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製して、8.7gの中間体2を得た。
〈中間体3の合成〉
【化13】

8.1gの中間体2を30mLの乾燥テトラヒドロフラン(THF)に加え、得られた溶液をアルゴン下で氷冷しながら、6.8mLのLiAlHのTHF溶液(2.4mol/L)を加えた。室温で3時間撹拌した後、10mLの水/THF溶液を撹拌しながら加え、濃縮した。残留物にpHが4〜5になるまで希塩酸を加え、1時間経過した後、塩化メチレンで抽出した。有機相を水で洗浄し後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製して、6.4gの中間体3を得た。
〈中間体4の合成〉
【化14】

20mLの塩化メチレンに、2.3gの中間体3、0.49gのトリブチルホスフィン及び0.42gの4−ブロモフェノールを加え、得られた溶液をアルゴン下で氷冷しながら、0.4gのN,N,N′,N′−テトラメチルアゾジカルボキシアミドを加えた。アルゴン下室温で24時間経過した後、ろ過し、ろ液を濃縮した。残留物を塩化メチレンに溶解し、水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製して、1.8gの中間体4を得た。
【0028】
〈実施例1の化合物の合成〉
22mgの1,1′−ビナフタレン−2,2′−ジイルビス(ジフェニルホスフィン)を2mLの脱水トルエンに加え、アルゴン下で80℃まで加熱し、約1分間撹拌した。室温まで冷却した後、アルゴン下で11mgのトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム〔Pd(dba)〕、0.5gの中間体4、46mgの1,4−ジアミノアントラキノン、及び56mgのt−ブトキシナトリウムを加えた。アルゴン下、80℃で60時間撹拌した後、室温まで冷却した。得られた反応混合物を30mLのトルエンを加えて希釈し、ろ過した。ろ液を濃縮し、残留物をシリカゲルのクロマトグラフィーにより精製して、0.28gの実施例1の化合物を得た。
【0029】
〔実施例2〕
〔実施例2の化合物〕
【化15】

〈中間体5の合成〉
【化16】

0.66gの中間体4及び0.15gのジイソプロピルエチルアミンを10mLの1,4−ジオキサンに加え、アルゴン下室温で撹拌しながら、0.023gのPd(dba)、0.030gのキサントホス、及び0.11gの3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステルを加えた。アルゴン下で17時間還流した後、冷却し、ろ過した。ろ液を濃縮し、残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製して、0.51gの中間体5を得た。
〈中間体6の合成〉
【化17】

0.40gの中間体5を10mLのトルエンに溶解し、撹拌しながら、38mgのナトリウムエトキシドと4mLのエタノールの混合物を加えた。室温で24時間撹拌した後、1gのクエン酸と50mLの水の混合物を加えた。30分間撹拌した後、水と酢酸エチルを加え、抽出した。有機相を洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製して、0.22gの中間体6を得た。
〈実施例2の化合物の合成〉
24mgの1,4−ジクロロアントラキノン及び46mgのジイソプロピルエチルアミンを8mLの1,4−ジオキサンに加え、アルゴン下室温で撹拌しながら、12mgのPd(dba)、15mgの4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、及び0.22gの中間体6を加えた。アルゴン下で20時間還流した後、冷却し、ろ過した。ろ液を濃縮し、残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製して、0.18gの実施例2の化合物を得た。
【0030】
〔実施例3〕
(1)液晶組成物の調製と色素の溶解度測定
1mgの実施例1の化合物、実施例2の化合物、公知の比較化合物1及び比較化合物2をそれぞれ、25mg、50mg、100mg、及び200mgの液晶組成物(商品名「MX001543」、メルクジャパン社製)と混合し、120℃に加熱し、5分間撹拌した後、25℃まで冷却して観察し、25mgの液晶に溶解したものを溶解度「>4%」、25mgの液晶に不溶分が残るが50mgの液晶に溶解したものを溶解度「2%」、50mgで不溶分が残るが100mgには溶解したものを溶解度「1%」、50mgおよび100mgには溶解しないが200mgには溶解したものを溶解度「0.5%」とした。液晶200mgでも不溶分が残ったものを溶解度「<0.5%」とした。溶解度の結果を表1に示した。
(2)液晶素子の作製
上記と同様に、2重量%の濃度で実施例1の化合物、実施例2の化合物、及び公知の比較化合物1を、0.5重量%の濃度で比較化合物2を、1重量%の濃度で比較化合物3を液晶組成物に溶解して得られた液晶組成物を、液晶セル(ガラスITO基板上にラビング処理したポリイミド配向膜のパラレル配向セル、セルギャップ8μm、エポキシ樹脂シール付き、E.H.C.社製)に注入し、液晶素子を作製した。
(3)オーダーパラメーターの測定
上記で作製した液晶素子に、ラビング方向と平行な偏光および垂直な偏光を照射し、それぞれの吸収スペクトル(A平行およびA垂直)を紫外可視近赤外分光光度計(V650、日本分光社製)で測定した。極大吸収波長におけるA平行およびA垂直から、オーダーパラメーターSを下式より求めた。
S=(A平行−A垂直)/(A平行+2×A垂直)
得られたオーダーパラメーターSとλmax(nm)を表1に示した。
表1より、本発明の化合物は、比較例に示した公知の化合物と比較して、溶解度が高いため、色調の濃い表示が可能となり、またオーダーパラメーターSも高いため、コントラストの高い表示が可能となる。なお、実施例1の化合物IRのチャート及び吸収スペクトルを図1及び図2に示した。
【0031】
【表1】

【0032】
〔比較例1の化合物〕
【化18】

【0033】
〔比較例2の化合物〕
【化19】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】特開平09−040964号公報
【特許文献2】登録第3813729号明細書
【特許文献3】特開2005−002348号公報
【特許文献4】登録第3727728号明細書
【特許文献5】特開2000−336366号公報
【特許文献6】登録第4038039号明細書
【特許文献7】特開2002−327176号公報
【特許文献8】特開平07−059704号公報
【特許文献9】登録第4038053号明細書

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とするデンドロン型アントラキノン化合物。
【化20】

(式中、Xは同じか異なった、硫黄原子、酸素原子、又は−NH−、Y及びZは同じか異なった水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、又はアリールアミノ基、Aは直接結合か、X側に芳香族基が結合した芳香族アルキレン基、芳香族オキシアルキレン基又は芳香族オキシアルキレンオキシ基、Rは炭素数が1〜18のアルキレン基、Rは炭素数が1〜18のアルキル基又はアルキルオキシ基、nとmは1か2の整数、ただしn+mは3以下である。)
【請求項2】
請求項1に記載のデンドロン型アントラキノン化合物と、少なくとも1種類の液晶化合物からなることを特徴とする液晶組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の液晶組成物を用いることを特徴とする液晶素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−46813(P2011−46813A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195944(P2009−195944)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】