データフォーマット、記録媒体、記録装置、記録方法、再生装置、再生方法、及び記録再生装置
【課題】各トラックの記録信号の位相が合っていなくても、プリアンブルを良好に再生することができ、データ再生を良好に行うことのできるデータフォーマットを提供する。
【解決手段】データ再生のための信号処理の一単位であるユニットが複数のトラックで構成されたデータフォーマットにおいて、データ再生制御のためにデータに付加されるゲイン制御パターン及び同期パターンなどのプリアンブルを、同一ユニット内の他のトラックのプリアンブルに対してトラックの進行する方向での位置が重ならないように配置する。隣接する複数のトラックのプリアンブルが再生ヘッドによって同時に再生されることがないため、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、隣接するトラックのプリアンブルの再生信号がお互いを打ち消し合うことがないためデータ再生を良好に行うことができる。
【解決手段】データ再生のための信号処理の一単位であるユニットが複数のトラックで構成されたデータフォーマットにおいて、データ再生制御のためにデータに付加されるゲイン制御パターン及び同期パターンなどのプリアンブルを、同一ユニット内の他のトラックのプリアンブルに対してトラックの進行する方向での位置が重ならないように配置する。隣接する複数のトラックのプリアンブルが再生ヘッドによって同時に再生されることがないため、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、隣接するトラックのプリアンブルの再生信号がお互いを打ち消し合うことがないためデータ再生を良好に行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを有する再生装置によってデータ再生が可能なデータフォーマット、記録媒体、記録装置、記録方法、再生装置、再生方法、及び記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ヘッドにおいては、磁気記録メディアの大容量化を図るために、更なる高密度記録が求められ、トラックのトラック幅を狭くすること(以下、「狭幅化」という。)に適した磁気ヘッドが採用されるようになってきている。一般的には、トラックの狭幅化にはトラック・サーボの精度向上が鍵となる。
【0003】
磁気テープ記録再生装置においては、狭幅化に伴い、サーボが困難になる対策案として、所謂ノントラッキング・システムが提唱され、実用化に至っている(たとえば特許文献1−5など)。このノントラッキング方式は、ヘリカル・スキャンにてダブルアジマス記録を行ったトラックに対し、識別のために、ブロックに分けてデータを記録することによって、目的のトラックを1回のトレースで再生できなくても、データを再構成できるものである。このノントラッキング方式によって、従来のトラック・サーボで必要とされる1トラック以内のトラック制御に対して、4倍以上のマージンが許容されるようになる。
【0004】
また、ノントラッキング技術は、ヘリカル・スキャンに留まらずリニア記録で使用されるための可能性が検討されている(たとえば特許文献6,7など)。
【0005】
ところで、磁気記録メディアの基板に、たとえばポリエステルフィルムのような伸縮性をもった非磁性支持体を使用した場合、ダブルアジマス記録を行ったとしても、許容できる変形量はトラック・サーボを併用して、例えばトラック幅の2倍程度までであり、これ以上の変形が発生する場合は、十分なSN比をもって信号を再生することができなかった。また、ダブルアジマスを持たない記録の場合では、トラックをまたがない所謂ガードバンドの幅を、トラック・サーボを併用した状態でも、エラーレート等の信頼性を劣化させないために、テープの変形量以下に押さえ込む必要があった
【0006】
このような問題は、これまで実現されていた信号再生方式においては、少なくとも1つの再生ヘッドが同時に複数のトラックから信号を読み込むことによって信号品質が著しく劣化することに起因する。それを回避するために、ガードバンドやダブルアジマス記録を行い、また再生ヘッドからは1つのトラックからの信号のみを拾うように工夫されてきた。
【0007】
しかし、さらに高トラック密度化を行う場合においては、先ずガードバンドの設置はその妨げとなる。また、再生時において隣接するトラックからの干渉を少なくすることができるダブルアジマス記録は、狭幅化した場合その効果は減少してしまう。
【0008】
このことは、ノントラッキング方式であっても同じであり、再生ヘッドは複数のトラックに跨って信号を再生するように見えるが、時間分割した場合、再生している信号は常に1つのトラックに対してだけであり、同一時間に複数のトラックを再生するということは行っていなかった。
【0009】
また、ノントラッキング方式で高トラック密度化に対応しようとした際に、対象トラックの隣接するトラックからの信号を拾うことによってノイズが混入するようになるため、トラックの狭幅化対応が限界になってきている。
【0010】
磁気ヘッド装置の背景技術としてこのほか、記録密度を向上させるために、1つのブロックに複数のヘッドを配置し、同一アジマスのブロックで形成する方式として、一度に複数のデータ・フレームを記録する技術がある(たとえば特許文献8及び特許文献9など)。
【0011】
これらの公知技術は、再生ヘッド幅をトラックの幅の半分程度にしなければならなくなるため、再生信号の出力を大きくとることができないという制約が生じ、たとえばSN比の確保の点で不利であり、更なる高密度記録化には必ずしも向いていなかった。
【0012】
MIMO(Multi-Input/Multi-Output)技術は、無線通信に用いられるものとして広く知られている(たとえば特許文献10など)。
【0013】
また、MIMOに関する技術を磁気記録に使用する技術も知られている(たとえば非特許文献1など)。しかし、たとえば記録したトラックよりも広幅の再生ヘッドを使用する場合など、実用化に際して発生する課題が解決されていなかった。
【0014】
本発明においては、MIMOを使用した磁気記録方法としては前項で紹介した論文をもって実現しえなかった、磁気記録再生方法へのMIMO技術の実用化を実現するにあたり、公知技術からは予見しえなかった技術内容を明らかにするものである。
【特許文献1】特許1842057号公報
【特許文献2】特許1842058号公報
【特許文献3】特許1842059号公報
【特許文献4】特開平04−370580号公報
【特許文献5】特開平05−020788号公報
【特許文献6】特開平10−283620号公報
【特許文献7】特開2003−132504号公報
【特許文献8】特開2003−338012号公報
【特許文献9】特開2004−071014号公報
【特許文献10】特許3664993号公報
【非特許文献1】論文IEEE Trans.Mag.Vol.30.No.6 Nov.1994 5100ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述したように従来の磁気記録再生方式では、記録密度を高めるに磁気記録メディアでのトラック幅を狭くする方法が採用されてきた。しかし、このまま高記録密度を追い求めてトラック幅を狭くしていくと、再生時にトラックを追いきれなくなるという問題が生じる。そこで、トラックに対する再生ヘッドの位置が多少とも外れていても、そのトラックから信号を読み取ることができるノントラッキング方式が提案されている。しかしながら、ノントラッキング方式で適切に再生信号を得るためには、再生ヘッドの設定に厳しい制約が伴う。この面からトラック幅の狭小化による高記録密度化には限界があった。
【0016】
そこで、本発明者らは、磁気記録メディアに記録ヘッドにより、データ検出のための信号処理の一単位である複数のトラックを記録し、磁気記録メディアの複数のトラックに跨って信号を再生することが可能な再生ヘッドにより、複数のトラックに対する信号を、複数のトラックに対して異なる位置関係で複数再生し、これら再生信号を一単位にまとめ、信号処理を行うことで、トラックごとの再生信号を生成するという方式を提案した。これによると、再生ヘッドの幅を決める制約が軽減し、トラック幅の狭小化、高記録密度化が可能である。
【0017】
図21は、上記の磁気記録再生方式を採用した記録装置800の構成を示す図である。
【0018】
同図に示すように、この記録装置800は、マルチトラック化部110、マルチトラック記録符号化部120、マルチトラックプリアンブル付加部130、マルチトラック記録部140、記録ヘッドアレイ150で構成される。
【0019】
マルチトラック化部110は、マルチトラック化のために記録データ1を記録ヘッドアレイ150に設けられた記録ヘッドW−1,W−2,W−3の数(M=3)分のデータに振り分けるデータ分配器111で構成される。
【0020】
マルチトラック記録符号化部120は、データ分配器111にてM個に振り分けられた記録データを符号化するM個の記録符号化部121−1,121−2,121−3で構成される。
【0021】
マルチトラックプリアンブル付加部130は、マルチトラック記録符号化部120によって符号化された各記録データに、トラックごとに特定のプリアンブルを付加するM個のプリアンブル付加部131−1,131−2,131−3で構成される。
【0022】
マルチトラック記録部140は、プリアンブルが付加された各トラックの記録符号列を記録媒体に記録する手段であり、より詳細には、プリアンブルが付加された記録符号列に所望のタイミングを与えるM個の出力タイミング設定部141−1,141−2,141−3と、記録補償処理を行うM個の記録補償部144−1,144−2,144−3と、記録補償処理後の記録符号列をもとに個々の記録ヘッドW−1,W−2,W−3を駆動するM個の記録アンプ147−1,147−2,147−3とで構成される。
【0023】
図22は、この記録装置800によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。この記録装置100では、まず、入力された記録データ1がマルチトラック化部110にて、記録ヘッドW−1,W−2,W−3の数(M=3)のデータ、すなわちユニットを構成するトラック数分のデータに分配される(ステップS801)。
【0024】
分配された各データは、それぞれマルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,121−3にて、磁気記録メディア2の記録再生特性を考慮した符号列に符号化される。このときデータの符号列に、復調用同期パターンなどの、データ復調時に必要な情報も付加される(ステップS802)。
【0025】
次に、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置に、マルチトラックプリアンブル付加部130のプリアンブル付加部131−1,131−2,131−3にて、ユニット単位のデータを再生する制御のために必要なパターンがプリアンブルとして付加され、記録符号列が得られる(ステップS803)。
【0026】
ここで、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置とは、連続して記録符号列が記録再生されることを考慮して決められた位置である。また、プリアンブルとしては、例えば、再生信号に対するゲイン制御のための学習に用いられるゲイン制御パターン、ビット同期処理などに用いられる同期パターン、及び、複数の再生ヘッドと1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するために必要な分離パターンなどがある。ここで、1ユニット分の複数のトラックとは、データを再生するための信号処理の一単位を構成する複数のトラックである。同期パターンはトラックごとの分離パターンやデータの開始位置を特定するための情報としても用いられる。これらのパターンは、マルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,121−3で生成される符号列の規則を考慮して作成されたものである。
【0027】
それぞれのトラックごとの記録符号列は、マルチトラック記録部140の出力タイミング設定部141−1,141−2,141−3にて所望のタイミングが与えられた後、記録補償部144−1,144−2,144−3にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施される。
【0028】
この後、トラックごとの記録符号列は、記録アンプ147−1,147−2,147−3において電圧から電流に変換されて記録ヘッドW−1,W−2,W−3に送られ、記録ヘッドW−1,W−2,W−3によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS804)。
【0029】
次に、上記の磁気記録再生方式を採用した再生装置について説明する。
【0030】
図23は上記の磁気記録再生方式を採用した再生装置900の構成を示す図である。
【0031】
同図に示すように、この再生装置900は、再生ヘッドアレイ210、チャネル再生部220、信号分離部230、マルチトラック復調部240、及び復元部260を備える。
【0032】
再生ヘッドアレイ210は、磁気記録メディア2に記録された各トラックから信号を読み出すN(N=3)個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3を有する。それぞれの再生ヘッドR−1,R−2,R−3は、磁気記録メディア2上で隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なように、そのヘッド幅及び配置が決められている。
【0033】
チャネル再生部220は、再生ヘッドアレイ210に搭載されたN個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって再生された信号を増幅するN個の再生アンプ221−1,221−2,221−3と、N個の再生アンプ221−1,221−2,221−3の出力の振幅レベルが所定の値になるようにゲインを制御するゲイン調整部224−1,224−2,224−3と、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の出力を所定のビット幅のディジタル値に量子化するA/Dコンバータ225−1,225−2,225−3とを備える。
【0034】
なお、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の直前には必要に応じて不要な高域成分を除去するローパス・フィルタが備えられていてもよい。
【0035】
また、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の前段ではなく後段に配置されてもよい。これは、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3のビット幅をより有効に用いたり、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の構成を、プリアンプルに含まれる各パターンの検出を考慮した簡単なものとしたい場合に有効である。
【0036】
信号分離部230は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の出力から同期パターンの検出を行う同期信号検出器231と、同期信号検出器231によって検出された同期信号をもとに分離パターンの開始位置を特定して、その分離パターンを用いてチャネル推定演算および信号分離演算を行うことによって、複数の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によってそれぞれ再生された1ユニット分の再生信号からトラックごとの再生信号を分離する信号分離処理部236とを備える。
【0037】
マルチトラック復調部240は、信号分離処理部236にて分離されたトラックごとの再生信号に対して等化処理を行うM個の等化器241−1,241−2,241−3と、等化器241−1,241−2,241−3の出力からビット同期を行うM個のPLL242−1,242−2,242−3と、PLL242−1,242−2,242−3で生成されたビット同期信号を用いて各トラックごとの再生信号を二値化して符号列を生成する、たとえばビタビ検出器などM個の検出器243−1,243−2,243−3と、検出器243−1,243−2,243−3の出力である2値化された再生信号から符号列上の同期パターンを検出するM個の同期信号検出器244−1,244−2,244−3と、同期信号検出器244−1,244−2,244−3により検出された同期パターンをもとにデータの開始位置を特定して符号列からデータ列を復号するM個の復号器245−1,245−2,245−3とを備える。
【0038】
復元部260は、マルチトラック復調部240内のM個の復号器245−1,245−2,245−3より出力された各トラックのデータを、記録時と逆の動作により連結して再生データ3を復元するデータ結合器261を備える。
【0039】
図24は、この再生装置900のユニット再生の動作の流れを示すフローチャートである。この再生装置900では、まず、それぞれ隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なN個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって、磁気記録メディア2の1ユニット分の複数のトラックから信号が再生される(ステップS901)。
【0040】
次に、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3にて、各再生アンプ221−1,221−2,221−3の出力の振幅レベルが調整された後、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の出力はA/Dコンバータ225−1,225−2,225−3にてディジタル値に変換されて同期信号検出器231に出力される(ステップS902)。
【0041】
同期信号検出器231は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の出力ごとに、プリアンブル内の分離パターンの開始位置などを知るための同期パターンの検出を行う(ステップS903)。
【0042】
次に、信号分離処理部236は、同期信号検出器231によって検出された同期信号をもとに分離パターンの開始位置を特定して、その分離パターンを用いてチャネル推定演算によって各再生ヘッドR−1,R−2,R−3と1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を求めた後(ステップS904)、このチャネル行列をもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって再生された1ユニット分の再生信号から、トラックR−1,R−2,R−3ごとの再生信号を分離する(ステップS905)。
【0043】
この後は、トラックごとの再生信号からマルチトラック復調部240にてデータ列の復号が行われ(ステップS906)、復元部260にて各トラックごとのデータが連結されて再生データ3が得られる(ステップS907)。
【0044】
ところで、上記の磁気記録再生方式を採用する場合における、より安定した再生信号を得るための技術的課題として、例えば、各トラックに記録された信号の位相が合っていない場合の再生信号の品質の低下があった。
【0045】
すなわち、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合、複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドによって各トラックのプリアンブルを再生しているとき、各トラックの再生信号がお互いを打ち消し合って再生信号のレベルが低下する場合が考えられる。プリアンブルには、データの再生制御のために必要な情報として、再生信号のゲインを制御するためのゲイン制御パターンや、同期検出のための同期パターンなどが含まれており、これらのパターンの再生信号の品質が低下することによって、ゲイン制御及び同期検出を良好に行うことが困難になる、という問題があった。
【0046】
本発明は、かかる事情を鑑み、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、プリアンブルを良好に再生することができ、データ再生を良好に行うことのできるデータフォーマット、記録媒体、記録装置、記録方法、再生装置、再生方法、及び記録再生装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0047】
上記の課題を解決するために、本発明のデータフォーマットは、複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを有する再生装置によってデータ再生が可能なデータフォーマットであって、前記データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記トラックごとに、データと、このデータを再生する制御のために必要なプリアンブルとが記録され、再生時に前記再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、前記各トラックの前記プリアンブルの前記トラックの進行する方向における位置が設定されていることを特徴とする。
【0048】
この発明によれば、複数のトラックのプリアンブルが再生ヘッドによって同時に再生されることがないため、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、複数のトラックのプリアンブルの再生信号がお互いを打ち消し合うことがなく、プリアンブルを安定して再生することができ、データ再生を良好に行うことができる。
【0049】
また、本発明において、前記各トラックの前記プリアンブルは、他のトラックのうち少なくとも隣のトラックの前記プリアンブルに対して、前記トラックの進行する方向においてずれた位置に配置されている。これにより、隣接する複数のトラックのプリアンブルが再生ヘッドによって同時に再生されることがないため、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、隣接するトラックのプリアンブルの再生信号がお互いを打ち消し合うことがなく、データ再生を良好に行うことができる。
【0050】
前記プリアンブルは、前記再生装置が前記再生ヘッドによって再生された信号のゲインを制御するために必要なゲイン制御パターンを含むこととする。これにより、複数のトラックに記録されたゲイン制御パターンが1つの再生ヘッドによって同時に再生されることがないため、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、ゲイン制御パターンを安定して再生することができ、ゲイン制御を良好に行うことができ、データ再生を良好に行うことができる。
【0051】
前記プリアンブルは、前記再生装置が同期検出を行うために必要な同期パターンを含むこととする。これにより、複数のトラックに記録された同期パターンが1つの再生ヘッドによって同時に再生されることがないため、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、同期パターンを安定して再生することができ、同期検出を良好に行うことができ、データ再生を良好に行うことができる。
【0052】
前記プリアンブルは、前記再生装置が前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンを含むこととする。これにより、複数のトラックに記録された分離パターンが1つの再生ヘッドによって同時に再生されることがないため、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、分離パターンを安定して再生することができ、ユニット単位の再生信号からトラックごとの再生信号を分離する処理を良好に行うことができ、データ再生を良好に行うことができる。
【0053】
本発明の別の観点に基づく記録媒体は、複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを有する再生装置によってテータ再生が可能な記録媒体であって、前記データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記トラックごとに、データと、このデータを再生する制御のために必要なプリアンブルとが記録され、再生時に前記再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、前記各トラックの前記プリアンブルは、他のトラックのうち少なくとも隣のトラックの前記プリアンブルに対して、前記トラックの進行する方向においてずれた位置に記録されていることを特徴とする。
【0054】
この発明によれば、再生ヘッドによって複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないため、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、複数のトラックのプリアンブルの再生信号がお互いを打ち消し合うことがなく、プリアンブルを安定して再生することができ、データ再生を良好に行うことができる。
【0055】
本発明の別の観点に基づく記録装置は、複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを有する再生装置によってデータ再生が可能となるように、記録媒体に、記録ヘッドにより、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを記録する装置であって、前記トラックごとに記録すべきデータを符号化する記録符号化部と、前記記録符号化部により符号化された前記トラックごとの前記データにそれぞれ、再生時に前記再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係で、前記データを再生する制御のために必要なプリアンブルを付加する独立プリアンブル付加部と、前記トラックごとの前記プリアンブルが付加されたデータを、前記記録ヘッドにより前記記録媒体に記録するための処理を行うマルチトラック記録部とを具備する。
【0056】
この発明によれば、再生時に再生ヘッドによって複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係でプリアンブルを付加することにしたので、記録媒体の再生時に、再生装置の再生ヘッドによって複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないため、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でもデータ再生を良好に行うことができる。
【0057】
本発明の別の観点に基づく記録方法は、複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを有する再生装置によってデータ再生が可能となるように、記録媒体に、記録ヘッドにより、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを記録する方法であって、前記トラックごとに記録すべきデータを符号化するステップと、前記符号化された前記トラックごとの前記データにそれぞれ、再生時に前記再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係で、前記データを再生する制御のために必要なプリアンブルを付加するステップと、前記トラックごとの前記プリアンブルが付加されたデータを、前記記録ヘッドにより前記記録媒体に記録するステップとを具備する。
【0058】
この発明によれば、再生時に再生ヘッドによって複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係でプリアンブルを付加することにしたので、記録媒体の再生時に、再生装置の再生ヘッドによって複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないため、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、複数のトラックのプリアンブルの再生信号がお互いを打ち消し合うことがなく、プリアンブルを安定して再生することができ、データ再生を良好に行うことができる。
【0059】
本発明の別の観点に基づく再生装置は、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記トラックごとに、データと、このデータを再生する制御のために必要なゲイン制御パターンを含むプリアンブルとが記録され、再生時に複数のトラックに跨って信号を再生することが可能な再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、前記各トラックの前記プリアンブルは、他のトラックのうち少なくとも隣のトラックの前記プリアンブルに対して、前記トラックの進行する方向においてずれた位置に記録された記録媒体から前記データを再生する装置であって、前記ゲイン制御パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドの再生信号に対するゲインを演算して、この再生ヘッドの再生信号のレベルを制御する再生信号ゲイン制御処理部を有する。
【0060】
本発明によれば、複数のトラックに記録されたゲイン制御パターンが1つの再生ヘッドによって同時に再生されることがないため、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、ゲイン制御パターンを安定して再生することができ、ゲイン制御を良好に行うことができ、データ再生を良好に行うことができる。
【0061】
また、本発明の再生装置は、前記ユニット内の各トラックに対してそれぞれ異なる位置関係で信号を再生可能なように前記再生ヘッドを複数備え、前記再生信号ゲイン制御処理部は、前記各再生ヘッドごとの前記プリアンブルの再生信号をもとに、前記各再生ヘッドごとの再生信号に対するゲインを演算して、前記各再生ヘッドごとの再生信号のレベルを制御することとしてもよい。
【0062】
また、本発明の再生装置において、前記ユニット内の各トラックに対してそれぞれ異なる位置関係で前記ユニットをスキャン再生可能なように前記再生ヘッドがトラック幅方向に移動可能に設けられ、各スキャンごとの前記再生ヘッドの前記プリアンブルの再生信号をもとに、前記各スキャンごとの再生信号に対するゲインを演算して前記各スキャンごとの再生信号のレベルを制御することとしてもよい。
【0063】
さらに、本発明の再生装置において、前記プリアンブルは、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンを有し、前記ユニットごとの前記分離パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するチャネル推定演算部と、前記チャネル推定演算部によって求められた前記チャネル行列をもとに、前記再生ヘッドによって再生され、前記再生信号ゲイン制御処理部にてレベルが制御された1ユニット分の再生信号から、前記トラックごとの再生信号を分離する信号分離演算部とをさらに具備することとしてもよい。
【0064】
この発明によれば、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、各トラックの分離パターンの情報を良好に検出できることから、チャネル推定演算部によるチャネル行列の演算を良好に行うことができるとともに、再生信号に対するゲイン制御も安定して行うことができるので、信号分離演算部による信号分離も良好に行うことができ、良好なデータ再生を実現することができる。
【0065】
本発明の別の観点に基づく再生方法は、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記トラックごとに、データと、このデータを再生する制御のために必要なプリアンブルとが記録され、再生時に複数のトラックに跨って信号を再生することが可能な再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、前記各トラックの前記プリアンブルは、他のトラックのうち少なくとも隣のトラックの前記プリアンブルに対して、前記トラックの進行する方向においてずれた位置に記録された記録媒体から前記データを再生する方法であって、前記ゲイン制御パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドの再生信号に対するゲインを演算して、この再生ヘッドの再生信号のレベルを制御することを特徴とする。
【0066】
本発明によれば、複数のトラックに記録されたゲイン制御パターンが1つの再生ヘッドによって同時に再生されることがないため、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、ゲイン制御パターンを安定して再生することができ、ゲイン制御を良好に行うことができ、データ再生を良好に行うことができる。
【発明の効果】
【0067】
本発明によれば、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、プリアンブルの情報を安定して再生することができ、データ再生を良好に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0069】
(第1の実施形態)
【0070】
本発明の第1の実施形態として、マルチヘッドを用いた磁気記録再生方式における記録装置と再生装置について説明する。記録ヘッドの数をM、再生ヘッドの数をNとし、この実施形態では、M=3、N=3とする。
【0071】
図1は、本発明の第1の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置100の構成を示す図である。
【0072】
同図に示すように、この記録装置100は、マルチトラック化部110、マルチトラック記録符号化部120、マルチトラックプリアンブル付加部130、マルチトラック記録部140、記録ヘッドアレイ150で構成される。
【0073】
マルチトラック化部110は、マルチトラック化のために記録データ1を記録ヘッドアレイ150に設けられた記録ヘッドW−1,W−2,W−3の数(M=3)分のデータに振り分けるデータ分配器111で構成される。
【0074】
マルチトラック記録符号化部120は、データ分配器111にてM個に振り分けられた記録データを符号化するM個の記録符号化部121−1,121−2,121−3で構成される。
【0075】
マルチトラックプリアンブル付加部130は、マルチトラック記録符号化部120によって符号化された各記録データに、再生時に再生ヘッドによって複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係でプリアンブルを付加するM個の独立プリアンブル付加部131−1,131−2,131−3で構成される。
【0076】
マルチトラック記録部140は、プリアンブルが付加された各トラックの記録符号列を記録媒体に記録する手段であり、より詳細には、プリアンブルが付加された記録符号列に所望のタイミングを与えるM個の出力タイミング設定部141−1,141−2,141−3と、記録補償処理を行うM個の記録補償部144−1,144−2,144−3と、記録補償処理後の記録符号列をもとに個々の記録ヘッドW−1,W−2,W−3を駆動するM個の記録アンプ147−1,147−2,147−3とで構成される。
【0077】
図2は、この記録装置100によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。この記録装置100では、まず、入力された記録データ1がマルチトラック化部110にて、記録ヘッドW−1,W−2,W−3の数(M=3)のデータ、すなわちユニットを構成するトラック数分のデータに分配される(ステップS101)。
【0078】
分配された各データは、それぞれマルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,121−3にて、磁気記録メディア2の記録再生特性を考慮した符号列に符号化される。このときデータの符号列に、復調用同期パターンなどの、データ復調時に必要な情報も付加される(ステップS102)。
【0079】
次に、マルチトラックプリアンブル付加部130の独立プリアンブル付加部131−1,131−2,131−3により、記録符号化部121−1,121−2,121−3によって符号化されたそれぞれの記録データに、再生時に再生ヘッドによって複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係で、データ再生の制御のために必要なプリアンブルが付加され、記録符号列が得られる(ステップS103)。
【0080】
ここで、データを再生する制御のために必要なパターンとしては、例えば、再生信号に対するゲイン制御のための学習に用いられるゲイン制御パターン、ビット同期処理などのための同期検出に用いられる同期パターン、及び、複数の再生ヘッドと1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するために必要な分離パターンなどがある。1ユニット分の複数のトラックとは、データ再生のための信号処理の一単位を構成する複数のトラックである。同期パターンはトラックごとの分離パターンやデータの開始位置を特定するための情報としても用いられる。これらのパターンは、マルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,121−3で生成される符号列の規則を考慮して作成されたものである。
【0081】
それぞれのトラックごとの記録符号列は、マルチトラック記録部140の出力タイミング設定部141−1,141−2,141−3にて所望のタイミングが与えられた後、記録補償部144−1,144−2,144−3にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施される。
【0082】
この後、トラックごとの記録符号列は、記録アンプ147−1,147−2,147−3において電圧から電流に変換されて記録ヘッドW−1,W−2,W−3に送られ、記録ヘッドW−1,W−2,W−3によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS104)。
【0083】
次に、本発明の一実施形態である磁気記録再生装置における再生装置について説明する。
【0084】
図3は本発明の一実施形態である磁気記録再生装置における再生装置200の構成を示す図である。
【0085】
同図に示すように、再生装置200は、再生ヘッドアレイ210、チャネル再生部220、信号分離処理部230、マルチトラック復調部240、復元部260を備える。
【0086】
再生ヘッドアレイ210は、磁気記録メディア2に記録された各トラックから信号を読み出すN(N=3)個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3を有する。それぞれの再生ヘッドR−1,R−2,R−3は、磁気記録メディア2上で隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なように、そのヘッド幅及び配置が決められている。
【0087】
チャネル再生部220は、再生ヘッドアレイ210に搭載されたN個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって再生された信号を増幅するN個の再生アンプ221−1,221−2,221−3と、N個の再生アンプ221−1,221−2,221−3の出力の振幅レベルが所定の値になるようにゲインを制御するゲイン調整部224−1,224−2,224−3と、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の出力を所定のビット幅のディジタル値に量子化するA/Dコンバータ225−1,225−2,225−3とを備える。
【0088】
なお、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の直前に、必要に応じて不要な高域成分を除去するローパス・フィルタが備えられていてもよい。
【0089】
また、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の前段ではなく後段に配置されてもよい。これは、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3のビット幅をより有効に用いたり、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の構成を、プリアンプルに含まれる各パターンの検出を考慮した簡単なものとしたい場合に有効である。
【0090】
信号分離処理部230は、独立同期信号検出器231、再生信号ゲイン制御処理部232、チャネル推定演算部233、及び信号分離演算部234を有している。
【0091】
独立同期信号検出器231は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の出力から同期パターンの検出を行う。
【0092】
再生信号ゲイン制御処理部232は、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3ごとのプリアンブル内のゲイン制御パターンの再生信号をもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3ごとの再生信号に対するゲインを演算して、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3ごとの再生信号のレベルを制御する。
【0093】
チャネル推定演算部233は、独立同期信号検出器231によって検出された同期パターンをもとに分離パターンの開始位置を特定して、再生信号ゲイン制御処理部232によってレベル制御がされた分離パターンの再生信号を用いてチャネル推定演算を行い、再生ヘッドR−1,R−2,R−3と複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算する。
【0094】
信号分離演算部234は、チャネル推定演算部233によって求められたチャネル行列の逆行列を演算し、この逆行列をもとに、再生信号ゲイン制御処理部232より入力された1ユニット分の再生信号からトラックごとの再生信号を分離する処理を行う。
【0095】
なお、信号分離処理部230は、処理を行うために必要な情報を記憶する図示しない記憶部を持っている。信号分離処理部230は、この記憶部に、例えば、プリアンブルとデータからなる所定のユニット分の情報を記憶して処理を行う。
【0096】
マルチトラック復調部240は、図4に示すように、信号分離演算部234にて分離された各トラックごとの再生信号に対して等化処理を行うM個の等化器241−1,241−2,241−3と、等化器241−1,241−2,241−3の出力からビット同期を行うM個のPLL242−1,242−2,242−3と、PLL242−1,242−2,242−3で生成されたビット同期信号を用いて各トラックごとの再生信号を二値化して符号列を生成する、たとえばビタビ検出器などM個の検出器243−1,243−2,243−3と、検出器243−1,243−2,243−3の出力である2値化された再生信号から符号列上の同期信号を検出するM個の同期信号検出器244−1,244−2,244−3と、同期信号検出器244−1,244−2,244−3により検出された同期パターンをもとにデータの開始位置を特定して符号列からデータ列を復号するM個の復号器245−1,245−2,245−3とを備える。なお、マルチトラック復調部240は、上記の処理を行うために必要なデータ等の情報を記憶する、図示しない記憶部を有している。
【0097】
図3に戻って、復元部260は、マルチトラック復調部240内のM個の復号器245−1,245−2,245−3より出力された各トラックのデータを、記録時と逆の動作により連結して再生データ3を復元するデータ結合器261を備える。
【0098】
図5は、この再生装置200のユニット再生の動作の流れを示すフローチャートである。この再生装置200では、まず、それぞれ隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なN個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって、磁気記録メディア2の1ユニット分の複数のトラックから信号が再生される(ステップS201)。
【0099】
次に、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3にて、各再生アンプ221−1,221−2,221−3の出力の振幅レベルが調整された後、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の出力はA/Dコンバータ225−1,225−2,225−3にてディジタル値に変換されて独立同期信号検出器231に出力される(ステップS202)。
【0100】
次に、独立同期信号検出器231により、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の出力ごとに、プリアンブル内の分離パターンの開始位置などを知るための同期パターンの検出が行われる(ステップS203)。
【0101】
次に、再生信号ゲイン制御処理部232にて、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3ごとのプリアンブル内のゲイン制御パターンの再生信号をもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3ごとの再生信号に対するゲインを演算して、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3ごとの再生信号のレベルを制御する(ステップS204)。
【0102】
次に、チャネル推定演算部233は、独立同期信号検出器231によって検出された同期パターンをもとに各再生信号に配置されている分離パターンの開始位置を特定し、再生信号ゲイン制御処理部232によってレベル制御がされた分離パターンの再生信号をもとに、所定のチャネル推定演算によって各再生ヘッドR−1,R−2,R−3と1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を求める(ステップS205)。
【0103】
次に、信号分離演算部234にて、チャネル推定演算部233によって得られたチャネル行列の逆行列を演算し、この逆行列をもとに、再生信号ゲイン制御処理部232より出力された1ユニット分の再生信号から、トラックごとの再生信号を分離する処理が行われる(ステップS206)。
【0104】
この後は、トラックごとに分離された再生信号からマルチトラック復調部240にてデータ列の復号が行われ(ステップS207)、復元部260にて各トラックごとのデータが連結されて再生データ3が得られる(ステップS208)。
【0105】
図6は、上記の本実施形態の記録装置100によって記録が行われた磁気記録メディア2上のデータフォーマットの概念図である。
【0106】
M個の記録ヘッドによって磁気記録メディア2に記録された、M個のトラックをまとめた一単位を「ユニット」と呼ぶことにする。図6において、トラック#1、トラック#2、トラック#3はそれぞれ、記録装置(たとえば記録装置100)のM(ここではM=3)個の記録ヘッドW−1,W−2,W−3によって磁気記録メディア2に記録されたトラックである。これらのトラック#1、トラック#2、トラック#3のまとまりがユニット51である。それぞれのユニット51間にはガードバンド52と呼ばれる、何も記録されていない領域が確保されている。このガードバンド52の目的は、隣のユニットのトラックが再生されないようにすることにある。
【0107】
トラック#1、トラック#2、トラック#3にはそれぞれ、プリアンブル21とデータ22が記録されている。プリアンブル21は、前述したように、データ22を再生する制御のために必要な情報として、再生信号に対するゲイン制御のための学習に用いられるゲイン制御パターン、ビット同期処理などのための同期検出に用いられる同期パターン、及び、複数の再生ヘッドと1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するために必要な分離パターンを含むものである。
【0108】
図7は、本発明が解決しようとする課題を説明するための、一般的なプリアンブル21の構成を示す図である。
【0109】
同図に示すように、この一般的なプリアンブル21は、ゲイン制御パターン23、同期パターン24、及び分離パターン25で構成されている。トラック#1,#2,#3上では、先頭より、ゲイン制御パターン23、同期パターン24、分離パターン25の順に配置される。分離パターン25の後にはデータ22が配置される。各トラック#1,#2,#3のゲイン制御パターン23と同期パターン24は、トラックの進行する方向において同じ位置に配置されている。
【0110】
各トラック#1,#2,#3の分離パターン25−1,25−2,25−3は、互いに位置が重ならないように配置されている。すなわち、トラック#1の分離パターン25−1はT1区間に、トラック#2の分離パターン25−2はT2区間に、トラック#3の分離パターン25−3はT3区間にそれぞれ記録されている。これにより分離パターンの種類は、トラック数に対応する3種類となる。隣り合うトラックの分離パターン25−1,25−2,25−3どうしの間にはマージンのための所定の時間分の隙間34が設けられている。
【0111】
なお、分離パターン25−1,25−2,25−3は、最小記録波長と同等か、あるいはそれ以上の所定の記録波長で記録されたものである。
【0112】
このようなプリアンブル21が、図3に示した再生装置200において処理されることを想定した場合、ゲイン制御パターン23は、再生時に、再生装置200の中のゲイン調整部224−1,224−2,224−3による再生アンプ221−1,221−2,221−3のゲイン制御のための学習信号として使用されるとともに、再生信号ゲイン制御処理部232において再生信号に対するゲインの制御に用いられる。同期パターン24は、独立同期信号検出器231によってビット同期処理のための同期検出のために使用されるとともに、分離パターン25の開始位置及びデータ22の開始位置を知るための情報として使用される。そして分離パターン25−1,25−2,25−3は、再生時に複数の再生ヘッドR−1,R−2,R−3と1ユニット分の複数のトラック#1,#2,#3とのトラック幅方向における位置関係に相当するチャネル行列をチャネル推定演算部233にて求めるために使用される。
【0113】
チャネル推定演算部233は、分離パターン25−1,25−2,25−3の再生信号を用いてチャネル推定演算を行い、その結果としてチャネル行列を生成する。このチャネル行列は、1ユニット内の各トラック#1,#2,#3に対する個々の再生ヘッドR−1,R−2,R−3のトラック幅方向での位置情報に相当するもので、言い換えると、個々の再生ヘッドR−1,R−2,R−3がそれぞれ、ユニット内のどのトラックとどんな割合で位置的に重なるかを示した情報である。
【0114】
なお、図7の例では、再生ヘッドR−1,R−2,R−3の幅はトラック幅の1.5倍とする。すなわち、再生ヘッドR−1,R−2,R−3の幅は、記録ヘッドW−1,W−2,W−3のヘッド幅の1.5倍とされ、個々の再生ヘッドR−1,R−2,R−3はそれぞれ複数のトラックから信号を再生できるものとする。
【0115】
次に、このような一般的なプリアンブル21を用いた場合の課題を説明する。
【0116】
図8は、図7のプリアンブル21の記録状態の一例を示す図であり、各トラック#1,#2,#3の記録信号の位相の関係が分かるように、トラック#1の記録信号の位相をチャネルクロック位置Pによって表している。
【0117】
同図においては、トラック#1とトラック#3とが位相が揃った状態で記録され、トラック#2は、トラック#1とトラック#3に対して1チャネルクロック相当ずれて記録された状態を示している。このように、各トラック#1,#2,#3の記録位置が揃っていなくても、チャネルクロック位置が合っていれば、つまり記録信号の位相が合っていれば、再生ヘッドによって複数のトラックに跨って信号が再生されるとき、それら複数のトラックの再生信号がお互いを打ち消し合うことはなく、この結果、プリアンブル21を用いたデータ再生のための制御は良好に行われることになる。
【0118】
これに対して、図9は、トラック#1とトラック#2とがチャネルクロックの周期の1/4相当だけ互いにずれて記録され、トラック#1とトラック#3とがチャネルクロックの周期の1/8相当だけ互いにずれて記録された状態を示している。このように各トラック#1,#2,#3のチャネルクロック位置が合っていない場合、つまり各トラック#1,#2,#3の記録信号の位相が合っていない場合、再生ヘッドが複数のトラックに跨って信号を再生するとき、それら複数のトラックの再生信号がお互いを打ち消し合って、再生ヘッドから出力される信号レベルが低下し、この結果、プリアンブル21を用いたデータ再生のための制御が良好に行えない場合が考えられる。
【0119】
次に、本発明の実施形態にかかるプリアンブル21Aの構成について説明する。
【0120】
図10は、本発明の実施形態にかかるプリアンブル21の構成を示す図である。
【0121】
本実施形態のプリアンブル21Aは、ゲイン制御パターン23−1,23−2,23−3(AGC1,AGC2,AGC3)、同期パターン24−1,24−2,24−3(SY1,SY2,SY3)、及び分離パターン25−1,25−2,25−3で構成されている。トラック#1上では先頭より、ゲイン制御パターン23−1,同期パターン24−1,分離パターン25−1の順に配置され、トラック#2上では先頭より、ゲイン制御パターン23−2,同期パターン24−2,分離パターン25−2の順に配置され、トラック#3上では先頭より、ゲイン制御パターン23−3,同期パターン24−3,分離パターン25−3の順に配置される。そして、分離パターン25−1,25−2,25−3の後にはデータ22が配置される。
【0122】
ゲイン制御パターン23−1,23−2,23−3及び同期パターン24−1,24−2,24−3はそれぞれ、同一ユニット内の他のトラックのゲイン制御パターン23−1,23−2,23−3及び同期パターン24−1,24−2,24−3に対してトラックの進行する方向において位置が重ならないように配置されている。すなわち、トラック#1のゲイン制御パターン23−1及び同期パターン24−1はTa区間に、トラック#2のゲイン制御パターン23−2及び同期パターン24−2はTb区間に、トラック#3のゲイン制御パターン23−3及び同期パターン24−3はTc区間にそれぞれ配置されている。これらのパターンの記録区間の間には、マージンのための隙間35が設けられている。
【0123】
各トラック#1,#2,#3の分離パターン25−1,25−2,25−3は、図7に示した一般的なプリアンブル21Aと同様に、トラックの進行する方向において互いに位置が重ならないように配置されている。すなわち、トラック#1の分離パターン25−1はT1区間に、トラック#2の分離パターン25−2はT2区間に、トラック#3の分離パターン25−3はT3区間にそれぞれ記録されている。これにより分離パターンの種類は、トラック数に対応する3種類となる。そして、隣り合うトラックの分離パターン25−1,25−2,25−3どうしの間には、マージンのための所定の時間分の隙間34が設けられている。なお、分離パターン25−1,25−2,25−3は、最小記録波長と同等か、あるいはそれ以上の所定の記録波長で記録されたものである。
【0124】
このように、ゲイン制御パターン23−1,23−2,23−3及び同期パターン24−1,24−2,24−3のそれぞれを、同一ユニット内の他のトラックのゲイン制御パターン23−1,23−2,23−3及び同期パターン24−1,24−2,24−3に対して、トラックの進行する方向において位置が重ならないように配置したことによって、各トラック#1,#2,#3のチャネルクロック位置が合っていない場合でも、個々の再生ヘッドR−1,R−2,R−3が複数のトラックを跨いで信号を再生するとき、各トラックの記録信号による打ち消し合いによる再生信号のレベル低下が発生することがなく、ゲイン制御パターン23−1,23−2,23−3によるゲイン制御及び同期パターン24−1,24−2,24−3による同期検出を、良好に行うことができる。
【0125】
次に、本発明の実施形態にかかるプリアンブルの変形例を説明する。
【0126】
図11は、第1の変形列であるプリアンブル21Bの構成を示す図である。このプリアンブル21Bを含むデータフォーマットにおいては、ユニットを構成するトラックの数を4とし、また再生ヘッドの数を4としてある。さらに、再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の幅をトラック幅の1.5倍としてある。ここで、トラック#4のゲイン制御パターン23−4及び同期パターン24−4は、トラック#1のゲイン制御パターン23−1及び同期パターン24−1と同じ位置に配置されている。再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4が、図11にあるような位置であるとき、トラック#1の記録信号は再生ヘッドR−1と再生ヘッドR−2によって再生され、トラック#4の記録信号は再生ヘッドR−3と再生ヘッドR−4によって再生される。したがってトラック#1とトラック#4は、一つの再生ヘッドによって同時に再生されることがない。
【0127】
すなわち、各トラックに対する再生ヘッドの配置が、このような関係であるとき、トラックの進行する方向において同じ位置にゲイン制御パターン及び同期パターンを記録しても、位相が一致しない各トラックの記録信号による打ち消し合いは起こらず、再生信号のレベル低下が発生することはないので、ゲイン制御パターン23−1,23−2,23−3,23−4によるゲイン制御及び同期パターン24−1,24−2,24−3,24−4による同期検出を、良好に行うことができる。
【0128】
ここで、図11のプリアンブル21Bの構成において、再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4がトラック幅方向へずれた場合について説明する。トラック幅に対する、再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の幅を、図示しない幅である2倍とする。この時、ずれ量がトラック幅の50%を超えたとき、2つ隣のトラックの影響を受けるようになる。例えば図11において、ヘッドアレイ210上の再生ヘッドR−1が、トラック幅の50%だけ下方にずれた時の再生ヘッドR−1による再生信号は、トラック#1とトラック#2を含んでおり、再生ヘッドR−1がさらに下方にずれた時には、トラック#3を含むようになる。なお、トラック#4までも含むためのずれ量は、計算上はトラック幅の150%を超えた時であるが、このとき再生ヘッドR−1は本来必要であるトラック#1を再生することができていない。
【0129】
以上から、再生ヘッド幅を2倍とした時、オフトラック許容量を例えばトラック幅の50%程度とした場合において、トラック#1とトラック#4は、一つの再生ヘッドによって同時に再生されることがないので、位相が一致しない各トラックの記録信号による打ち消し合いは起こらず、再生信号のレベル低下が発生することはない。したがって、ゲイン制御パターン23−1,23−2,23−3,23−4によるゲイン制御及び同期パターン24−1,24−2,24−3,24−4による同期検出を良好に行うことができる。
【0130】
このように図11の例において、再生時に再生ヘッドが、トラック幅方向へのずれを発生した場合でも、本発明の効果が期待できる。
【0131】
なお、ユニットを構成するトラック数が3の場合であっても、本発明は同様に適用できるが、トラック数が4の場合と比較すると、トラック幅方向へのずれの許容量が減少する。この場合において、再生ヘッドの幅を2倍より狭くし、例えば1.5倍幅とすることで、トラック幅方向へのずれの許容量を増やすことができる。すなわち、オフトラック許容量を考慮しながら再生ヘッド幅を決定することで、再生時に再生ヘッドが、トラック幅方向への所定のずれを発生した場合でも、本発明の効果が期待できる。
【0132】
図12は、第2の変形列であるプリアンブル21Cの構成を示す図である。このプリアンブル21Cを含むデータフォーマットにおいては、ユニットを構成するトラック#1,#2,#3の、ゲイン制御パターン23−1と同期パターン24−1と分離パターン25−1,ゲイン制御パターン23−2と同期パターン24−2と分離パターン25−2,そしてゲイン制御パターン23−3と同期パターン24−3と分離パターン25−3をそれぞれひとまとめにし、これらトラックのパターンのまとまりのそれぞれが、他のトラックのパターンのまとまりに対して、トラックの進行する方向における位置が互いに重ならないように配置したものである。
【0133】
このようなプリアンブル21Cによっても同様にして、各トラックの記録信号による打ち消し合いによる再生信号のレベル低下が発生することがなく、ゲイン制御パターン23−1,23−2,23−3によるゲイン制御及び同期パターン24−1,24−2,24−3による同期検出を良好に行うことができる。
【0134】
また、図12におけるプリアンブル21Cのようなまとまりの構成においても、図10に対する図11の応用例と同様にして、各トラックにおけるパターンのまとまりのそれぞれを、対応する一つの再生ヘッドR−1,R−2,R−3によってのみ再生されるように配置すればよく、必ずしも、各トラックにおけるパターンのまとまりが、他のトラックのパターンのまとまりに対して、トラックの進行する方向における位置が互いに重ならないように配置されることに限定されない。
【0135】
なお、この例においては明確にゲイン制御パターン、同期パターン、及び分離パターンを区別して示したが、例えば同期パターンの中にゲイン制御が可能なパターンを配置したり、さらに同期パターンの中にチャネル推定演算が可能なパターンを配置したりして、他と一体化された同期パターンを用いたフォーマットとしても、トラックの進行する方向における位置が互いに重ならないように配置されていれば、本発明は同様に適用することができる。
【0136】
さらに、上記のような形態のパターンにおいても、例えばそれぞれの一体化された同期パターンを、対応する一つの再生ヘッドR−1,R−2,R−3によってのみ再生されるように配置すれば、各トラックにおける一体化された同期パターンのそれぞれが、他のトラックの一体化された同期パターンに対して、トラックの進行する方向における位置が互いに重ならないように配置されることに、必ずしも限定されない。
【0137】
次に、この実施形態において、再生信号ゲイン制御処理部232による再生信号のゲイン制御の詳細を説明する。
【0138】
図10において、再生ヘッドR−1によってトラック#1及びトラック#2から記録信号が読み出され、再生ヘッドR−2によってトラック#1、トラック#2、及びトラック#3から記録信号が読み出され、再生ヘッドR−3によってトラック#2及びトラック#3から記録信号が読み出される。
【0139】
再生信号ゲイン制御処理部232は、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3ごとのゲイン制御パターン23−1,23−2,23−3の再生信号をもとに、例えば、以下のようにして、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3ごとの再生信号に対するゲインを演算し、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3ごとの再生信号のレベルを制御する。
【0140】
すなわち、再生信号ゲイン制御処理部232は、再生ヘッドR−1によってトラック#1とトラック#2よりそれぞれ再生されたゲイン制御パターンの信号を加算する。同様に、再生信号ゲイン制御処理部232は、再生ヘッドR−2によってトラック#1、トラック#2、及びトラック#3から再生されたゲイン制御パターンの信号を加算する。同様に、再生信号ゲイン制御処理部232は、再生ヘッドR−3によってトラック#2とトラック#3より再生されたゲイン制御パターンの信号を加算する。
【0141】
ゲイン制御パターンの再生信号の加算は、例えば、それぞれのトラックにおけるゲイン制御パターンの再生信号のピーク値を検出し、その平均値を求めることなどによって行われる。なお、この演算については、上記の方式に限らず、各再生信号の相関関係が成立つものであれば、別の方式でもかまわない。
【0142】
再生信号ゲイン制御処理部232は、以上のようにして得られた3つの演算結果の中から最大のものを選び出し、これを全ての再生ヘッドR−1,R−2,R−3に対する基準出力とする。そして再生信号ゲイン制御処理部232は、入力された再生ヘッドごとの再生信号の値に1/(基準出力)を掛け合わせた値を制御結果として出力する。
【0143】
なお、基準出力は、チャネル推定演算部233におけるチャネル推定演算でも用いることができるし、信号分離演算部234においても用いることができる。
【0144】
以上説明したように、本実施形態によれば、各トラックのプリアンブルを、再生時に個々の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によってそれぞれ複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係で配置したことによって、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、隣り合う複数のトラックのプリアンブルの再生信号が互いに打ち消し合うことによる信号レベルの低下を防止でき、ゲイン制御パターン及び同期パターンを良好に再生できるようになることで、安定したデータ再生が実現される。
【0145】
また、本実施形態によれば、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3がそれぞれ複数のトラックに跨って再生した各信号をユニットの単位にまとめ、所定の信号処理を行うことで、トラック毎の再生信号を分離することができる。このため、ユニット内のトラック間の距離を狭く設定することができ、あるいは再生ヘッドR−1,R−2,R−3の幅をトラック幅よりも広く設定することができるので、高トラック密度化を実現できる。
【0146】
なお、再生信号ゲイン制御処理部232による再生信号のゲイン制御は、図7に示した一般的なプリアンブル21を用いた場合にも同様に適用できる。この場合、各トラック#1,#2,#3のゲイン制御パターンの位置が同じであるから、再生ヘッドR−1によってトラック#1とトラック#2よりそれぞれ読み出されたゲイン制御パターンを加算する処理、再生ヘッドR−2によってトラック#1、トラック#2、及びトラック#3から読み出されたゲイン制御パターンを加算する処理、そして再生ヘッドR−3によってトラック#2とトラック#3より再生されたゲイン制御パターンを加算する処理が、一つの区間で行われる点が異なるだけである。
【0147】
また、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3と1ユニット分の複数のトラック#1,#2,#3との再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要なパターンとして、上記の実施形態では、例えば図10や図12に示したような分離パターン25−1,25−2,25−3を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、トラッキングサーボ情報などを用いることも可能である。この場合には、トラッキングサーボ情報の各記録パターンと各再生ヘッドとの位置関係をユニット単位にまとめたものがチャネル推定情報として生成される。
【0148】
また、分離パターンを用いて上記の位置関係を検出する手段と、トラッキングサーボ情報を用いて位置関係を検出する手段の両方を併用して、チャネル推定演算を行ってもよい。
【0149】
さらに、上記の実施形態では、3行3列の行列をチャネル推定情報として算出する場合を説明したが、例えば、4行4列の行列や、その他の正方行列であっても、その一般化逆行列を求めることによって信号分離処理を行うことが可能である。さらに、正方行列以外の行列でも、同様にしてその一般化逆行列を求めるようにすればよい。
【0150】
なお、行列の一般化逆行列を求められるようにするために、分離パターンの種類はトラック数に対応させておく必要がある。
【0151】
また、分離パターンは、互いに一次独立なトラック数のパターンとする。
【0152】
このほか、第1のプリアンブル23に配置されているゲイン制御パターンを、同期パターン24の後方に追加配置することによって、ゲイン制御のための情報量を増やしてもよい。
【0153】
第1のプリアンブル23に配置されているゲイン制御パターンと、第2のプリアンブル25に配置されている分離パターンとには、同一のパターンを採用してもかまわない。
【0154】
上記の実施形態では、時間軸上で直交する分離パターンを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、周波数軸上で直交するような分離パターン、あるいは、直交符号を用いた分離パターンなどを用いてもよい。
【0155】
信号分離演算部234による信号分離処理の演算方法としては、例えば、チャネル行列に対する一般化逆行列を求める方法などが挙げられる。このチャネル行列に対して一般化逆行列を求める方法は、一般に、ゼロ・フォーシング(Zero・Forcing)法と呼ばれる。但し、信号分離処理の方法はこれに限定されるものではなく、例えば、MMSE(Minimum Mean Squared Error)法を用いることもできる。
【0156】
(第2の実施形態)
【0157】
次に、本発明の第2の実施形態として、シングルヘッドを用いた磁気記録再生装置を説明する。
【0158】
この実施形態の磁気記録再生装置は、1個、又はユニット当たりのトラック数より少ない個数の記録ヘッド及び再生ヘッドを有し、トラックごとに記録位置を揃えることなく記録されている記録媒体を、トラックごとに再生位置を揃えることなく再生する装置である。
【0159】
図13は本発明の第2の実施形態である磁気記録再生装置における記録装置300の構成を示す図である。
【0160】
この記録装置300は、シングルヘッドでユニットの記録を行うものである。ここで、一つの記録ヘッドによってユニットの記録を行う所定の回数をMとし、また一つの再生ヘッドによってユニットの再生を行う所定の回数をNとし、この実施形態では、M=3、N=3とする。
【0161】
同図に示すように、この記録装置300は、マルチトラック化部110、マルチトラック記録符号化部120、マルチトラックプリアンブル付加部130、マルチトラック記録部140、記録ヘッドアレイ150で構成される。
【0162】
マルチトラック記録符号化部120は、データ分配器111にてM個に振り分けられた記録データを符号化するM個の記録符号化部121−1,121−2,121−3で構成される。
【0163】
マルチトラックプリアンブル付加部130は、マルチトラック記録符号化部120によって符号化された各記録データに、再生時に再生ヘッドによって複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係で、プリアンブルを付加するM個の独立プリアンブル付加部131−1,131−2,131−3で構成される。
【0164】
マルチトラック記録部140は、少なくとも1ユニット分の記録データを記憶する記憶部149と、プリアンブルが付加された記録符号列に所望のタイミングを与える1個の出力タイミング設定部141と、記録補償処理を行う1個の記録補償部144と、記録補償処理後の記録符号列をもとに記録ヘッドW−1を駆動する1個の記録アンプ147とで構成される。
【0165】
図14は、この記録装置300のユニット記録時の動作の流れを示すフローチャートである。この記録装置300では、まず、入力された記録データ1がマルチトラック化部110にて、M(M=3)個のデータ(トラックごとのデータ)に分配される(ステップS301)。
【0166】
分配された各データは、それぞれマルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,121−3にて、磁気記録メディア2の記録再生特性を考慮した符号列に符号化される。このとき符号列に、復調用同期パターンなどの、データ復調時に必要な情報も付加される(ステップS302)。
【0167】
次に、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置に、再生時に再生ヘッドによって複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係で、マルチトラックプリアンブル付加部130のプリアンブル付加部131−1,131−2,131−3にて、ユニット単位のデータの再生制御のために必要なパターンがプリアンブルとして付加され、記録符号列が得られる(ステップS303)。このようにしてプリアンブルが付加されたトラックごとの記録符号列は記憶部149に記憶される(ステップS304)。
【0168】
この後、記憶部149から、最初に記録するトラックの記録符号列が読み出され(ステップS305)、このトラックの記録符号列に対して出力タイミング設定部141によって所望のタイミングが与えられた後、記録補償部144にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施され、記録アンプ147にて電圧から電流に変換されて、記録ヘッドW−1によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS306)。
【0169】
この後、1ユニット分のトラックの記録が終了したかどうかを判定し(ステップS307)、終了していなければ(ステップS307のNO)、記録ヘッドW−1を次の位置に移動させる(ステップS308)。この後、記憶部149から次のトラックの記録符号列を読み出して同様に記録のための処理を繰り返す。以上の動作を、1ユニット分のトラックの記録が終了するまで繰り返す。すなわち、はじめにトラック#1の記録を行い、次に、トラック#2の位置に移動してトラック#2の記録を行い、この後、同様にトラック#3の位置に移動してトラック#3への記録を、さらにトラック#4の位置に移動してトラック#4への記録を行う。
【0170】
図15は、この第2の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置の変形例である記録装置301の構成を示す図である。
【0171】
同図に示すように、この記録装置301は、所定の単位の記録データ、例えば所定のトラック数分の記録データを記録符号化する記録符号化部121と、トラックごとの符号化された記録データに、再生時に再生ヘッドによって複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係でデータ再生の制御のために必要なプリアンブルを付加する独立プリアンブル付加部131と、記憶部149と、プリアンブルが付加された記録符号列に所望のタイミングを与える出力タイミング設定部141と、記録補償処理を行う記録補償部144と、記録補償処理後の記録符号列をもとに記録ヘッドW−1を駆動する記録アンプ147とで構成されている。すなわち、図13に示す記録装置300の構成から、マルチトラック化部110(データ分配器111)が省かれているとともに、マルチトラック記録符号化部120は一つの記録符号化部121で構成され、マルチトラックプリアンブル付加部130は一つの独立プリアンブル付加部131で構成されている。
【0172】
図16は、この記録装置301のユニット記録の動作の流れを示すフローチャートである。
【0173】
この記録装置301では、まず、記録符号化部121にて、所定の単位分の記録データ、例えば所定のトラック数分の記録データが、磁気記録メディア2の記録再生特性を考慮した符号列に符号化される。このときデータの符号列に、復調用同期パターンなどの、データ復調時に必要な情報も付加される(ステップS311)。
【0174】
次に、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置に、独立プリアンブル付加部131にて、再生時に再生ヘッドによって複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係でデータ再生制御のために必要なプリアンブルが付加されて、所定のトラック数分の記録符号列が得られる(ステップS312)。このようにしてプリアンブル符号が付加されたトラックごとの記録符号列は記憶部149に記憶される(ステップS313)。
【0175】
この後、記憶部149から最初に記録するトラックの記録符号列が読み出され(ステップS314)、このトラックの記録符号列に対して出力タイミング設定部141によって所望のタイミングが与えられた後、記録補償部144にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施され、記録アンプ147にて電圧から電流に変換されて、記録ヘッドW−1によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS315)。
【0176】
この後、1ユニット分のトラックの記録が終了したかどうかを判定し(ステップS316)、終了していなければ(ステップS316のNO)、記録ヘッドW−1を次の位置に移動させ(ステップS317)、記憶部149から次のトラックの記録符号列を読み出して同様に記録のための処理を繰り返す。以上の動作を、1ユニット分のトラックの記録が終了するまで繰り返す。
【0177】
次に、本発明の第2の実施形態である磁気記録再生方式における再生装置について説明する。
【0178】
図17は本発明の第2の実施形態である磁気記録再生方式における再生装置400の構成を示す図である。
【0179】
同図に示すように、この再生装置400は、再生ヘッドアレイ210、チャネル再生部220、信号分離処理部230、マルチトラック復調部240、及び復元部260を備える。
【0180】
再生ヘッドアレイ210は、磁気記録メディア2に記録された各トラックから信号を読み出す1個の再生ヘッドR−1を有する。
【0181】
チャネル再生部220は、再生ヘッドアレイ210に搭載された再生ヘッドR−1によって再生された信号を増幅する1個の再生アンプ221と、再生アンプ221の出力の振幅レベルが所定の値になるようにゲインを制御する1個のゲイン調整部224と、ゲイン調整部224の出力を所定のビット幅のディジタル値に量子化する1個のA/Dコンバータ225とを備える。
【0182】
信号分離処理部230は、独立同期信号検出器231、再生信号ゲイン制御処理部232、チャネル推定演算部233、信号分離演算部234、及び記憶部235を有している。
【0183】
独立同期信号検出器231は、A/Dコンバータ225の出力から同期パターンの検出を行う。
【0184】
再生信号ゲイン制御処理部232は、各スキャンごとの再生ヘッドR−1のプリアンブルの再生信号をもとに、各スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号に対するゲインを演算して各スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号のレベルを制御する。
【0185】
チャネル推定演算部233は、独立同期信号検出器231によって検出された同期パターンをもとに分離パターンの開始位置を特定して、再生信号ゲイン制御処理部232によってレベル制御がされた分離パターンの再生信号を用いてチャネル推定演算を行う。
【0186】
信号分離演算部234は、チャネル推定演算部233によって求められたチャネル行列の逆行列を演算し、この逆行列をもとに、再生信号ゲイン制御処理部232より入力された1ユニット分の再生信号からトラックごとの再生信号を分離する処理を行う。
【0187】
記憶部235は、独立同期信号検出器231と再生信号ゲイン制御処理部232との間に配置され、少なくとも1ユニット分の再生信号を記憶する。
【0188】
マルチトラック復調部240は、図4に示したように、信号分離演算部234にて分離された各トラックの再生信号に対して等化処理を行うM個の等化器241−1,241−2,241−3と、等化器241−1,241−2,241−3の出力からビット同期を行うM個のPLL242−1,242−2,242−3と、PLL242−1,242−2,242−3で生成されたビット同期信号を用いて各トラックごとの再生信号を二値化して符号列を生成する、たとえばビタビ検出器などM個の検出器243−1,243−2,243−3と、検出器243−1,243−2,243−3の出力である2値化された再生信号から符号列上の同期信号を検出するM個の同期信号検出器244−1,244−2,244−3と、同期信号検出器244−1,244−2,244−3により検出された同期パターンをもとにデータの開始位置を特定して符号列からデータ列を復号するM個の復号器245−1,245−2,245−3とを備える。なお、マルチトラック復調部240は、上記の処理を行うために必要なデータ等の情報を記憶する、図示しない記憶部を有している。
【0189】
図17に戻って、復元部260は、マルチトラック復調部240内のM個の復号器245−1,245−2,245−3より出力された各トラックのデータを、記録時と逆の動作により連結して再生データ3を復元するデータ結合器261を備える。
【0190】
なお、シングルヘッドによる再生時のトラックのトレースは、少なくとも1ユニットの記録トラック数の回数だけ繰り返される。すなわち、トラック数以上の回数トレースを繰り返してもよい。その際、1ユニット分の全てのトラックが少なくとも1回はトレースされるようにする。記憶部235には、再生ヘッドR−1が移動した各位置で再生したユニット分の信号、すなわち再生ヘッドR−1が各位置で複数のトラックからそれぞれ再生した信号が記憶される。
【0191】
図18は、この再生装置400のユニット再生動作を示すフローチャートを示す。
【0192】
この再生装置400では、まず、再生ヘッドR−1によって、最初の位置で複数のトラックから信号が再生される(ステップS401)。次に、ゲイン調整部224にて、再生アンプ221の出力の振幅レベルが調整された後、その出力はA/Dコンバータ225にてディジタル値に変換されて独立同期信号検出器231に出力される(ステップS402)。
【0193】
独立同期信号検出器231では、A/Dコンバータ225の出力から分離パターンの開始位置を知るための同期パターンの検出が行われた後(ステップS403)、トラックの再生信号は記憶部235に記憶される(ステップS404)。
【0194】
次に、1ユニット分の再生信号が記憶部235に記憶されたかどうかを判断し(ステップS405)、1ユニット分の再生信号が記憶部235にまだ記憶されていない場合には、再生ヘッドR−1をトラック幅方向の次の位置にずらし(ステップ406)、ステップS401からステップS404までの動作を繰り返す。
【0195】
1ユニット分の再生信号が記憶部235に記憶された場合、再生信号ゲイン制御処理部232は、記憶部235に記憶された1ユニット分の各スキャンごとの再生ヘッドR−1のプリアンブルの再生信号をもとに、各スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号に対するゲインを演算して各スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号のレベルを制御する(ステップS407)。
【0196】
次に、チャネル推定演算部233は、独立同期信号検出器231によって検出された同期パターンをもとに各再生信号に配置されている分離パターンの開始位置を特定し、再生信号ゲイン制御処理部232によってレベル制御がされた分離パターンの再生信号を用いて、所定のチャネル推定演算によってチャネル行列を求める(ステップS408)。
【0197】
次に、信号分離演算部234にて、チャネル推定演算部233によって得られたチャネル行列の逆行列を演算し、この逆行列をもとに、再生信号ゲイン制御処理部232より出力された1ユニット分の再生信号から、トラックごとの再生信号を分離する処理が行われる(ステップS409)。
【0198】
この後は、トラックごとに分離された再生信号からマルチトラック復調部240にてデータ列の復号が行われ(ステップS410)、復元部260にて各トラックごとのデータが連結されて再生データ3が得られる(ステップS411)。
【0199】
なお、A/Dコンバータ225の直前には必要に応じて不要な高域成分を除去するローパス・フィルタが備えられていてもよい。また、ゲイン調整部224については、A/Dコンバータ225の後段に接続して量子化後にゲインを制御するようにしてもよい。これは、A/Dコンバータ225のビット幅をより有効に用いたり、ゲイン調整部224の構成を、プリアンプルに含まれる各パターンの検出を考慮した簡単なものとしたい場合に有効である。あるいは、独立同期信号検出器231において利得目標値との誤差をとった情報を用いてゲイン調整部224においてゲイン調整を行うようにしてもよい。
【0200】
また、マルチトラック復調部240にて、トラックごとの出力タイミングを制御しながら復調処理を行うようにすれば、復元部260でのデータの連結処理は不要となる。したがって、この場合には復元部260は不要である。
【0201】
(第3の実施形態)
【0202】
本発明は、上記で説明したリニア記録方式、ノンアジマス記録方式の磁気記録再生に適用されることに限らず、ヘリカル記録方式、アジマス記録方式にも適用可能である。
【0203】
その具体例を以下に示す。
【0204】
図19は、複数の記録ヘッドW−1,W−2,W−3を用いて、ノンアジマス方式とヘリカル・スキャン方式で磁気記録メディア2に記録されるデータフォーマットの概念図である。ヘリカル・スキャン方式においても、トラック#1,トラック#2,トラック#3で構成されるユニット構成トラック列51の間にはガードバンド52が配置される。トラック#1,トラック#2,トラック#3に記録されるプリアンブル21は、例えば図10、図11、図12に示したものと同様でよい。このようなヘリカル・スキャン方式の磁気記録再生方式においても、本発明は適用可能であり、第1の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置100及び再生装置200の構成を採用することができる。
【0205】
図20は、複数の記録ヘッドW−1,W−2,W−3,W−4,W−5,W−6を用いて、ダブルアジマス方式とヘリカル・スキャン方式により記録媒体に記録されるデータフォーマットの概念図である。
【0206】
本例では、記録用と再生用のそれぞれに6つの記録ヘッドW−1,W−2,W−3,W−4,W−5,W−6が用いられている。これらの記録ヘッドのうち、連続する3つの記録ヘッドW−1,W−2,W−3と、残る連続する3つの記録ヘッドW−4,W−5,W−6とは、互いにトラックの磁化方向であるアジマス方向が異なるようにしてある。すなわち、トラック#1−#3とトラック#4−#6とはアジマス方向が異なる。これらのトラック#1−#6が、データを再生するための処理の一単位であるユニットを複数含むユニット構成トラック列51となる。なお、このダブルアジマスの場合においては、ガードバンドは不要である。
【0207】
なお、この例では、トラック#1−#6のまとまりを、データ再生のための信号処理の一単位(ユニット)としているが、アジマス方向が同一である3つの連続するトラック(例えばトラック#1−#3、トラック#4−#6)を、それぞれ一つのユニットとして信号処理を行うようにしてもよい。
【0208】
各トラック#1−#6に記録されるプリアンブルは、例えば図10、図11、図12に示したものと同様でよい。このようなダブルアジマス方式とヘリカル・スキャン方式の磁気記録再生方式においても、本発明は適用可能であり、第1の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置100及び再生装置200の構成を採用することができる。
【0209】
なお、本発明は、上記実施の形態に示す構成のものに限定されるものではなく、請求項に記載した技術的範囲を逸脱しない範囲において種々に変更し変形することは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1】本発明の第1の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置の構成を示す図である。
【図2】図1の記録装置によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施形態の磁気記録再生方式における再生装置の構成を示す図である。
【図4】図3の再生装置の中のマルチトラック復調部の構成を示す図である。
【図5】図3の再生装置によるユニット再生の動作を示すフローチャートである。
【図6】図1の記録装置によって記録が行われた磁気記録メディア上のデータフォーマットの概念図である。
【図7】図6に示すフォーマットに採用される一般的なプリアンブルの構成を示す図である。
【図8】図7のプリアンブルの記録状態の一例を示す図である。
【図9】図7のプリアンブルの位相ずれを含む記録状態の一例を示す図である。
【図10】本発明の実施形態にかかるプリアンブルの構成を示す図である。
【図11】本発明の実施形態にかかるプリアンブルの第1の変形列を示す図である。
【図12】本発明の実施形態にかかるプリアンブルの第2の変形列を示す図である。
【図13】本発明の第2の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置の構成を示す図である。
【図14】図13の記録装置によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。
【図15】第2の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置の変形例である記録装置の構成を示す図である。
【図16】図15の記録装置によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。
【図17】本発明の第2の実施形態である磁気記録再生方式における再生装置400の構成を示す図である。
【図18】図17の再生装置によるユニット再生の動作を示すフローチャートである。
【図19】複数の記録ヘッドを用いてノンアジマス方式とヘリカル・スキャン方式で磁気記録メディアに記録されるデータフォーマットの概念図である。
【図20】複数の記録ヘッドを用いてダブルアジマス方式とヘリカル・スキャン方式により記録媒体に記録されるデータフォーマットの概念図である
【図21】本発明者らが過去に提案した磁気記録再生方式を採用した記録装置の構成を示す図である。
【図22】図21の記録装置によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。
【図23】本発明者らが過去に提案した磁気記録再生方式を採用した再生装置の構成を示す図である。
【図24】図22の再生装置のユニット再生の動作の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0211】
1 記録データ
2 磁気記録メディア
3 再生データ
21 プリアンブル
22 データ
23−1,23−2,23−3 ゲイン制御パターン
24−1,24−2,24−3 同期パターン
25−1,25−2,25−3 分離パターン
51 ユニット
100 記録装置
110 マルチトラック化部
111 データ分配器
120 マルチトラック記録符号化部
121−1,121−2,121−3 記録符号化部
130 マルチトラックプリアンブル付加部
131−1,131−2,131−3 独立プリアンブル付加部
140 マルチトラック記録部
141−1,141−2,141−3 出力タイミング設定部
144−1,144−2,144−3 記録補償部
147−1,147−2,147−3 記録アンプ
149 記憶部
150 記録ヘッドアレイ
200 再生装置
210 再生ヘッドアレイ
220 チャネル再生部
221−1,221−2,221−3 再生アンプ
224−1,224−2,224−3 ゲイン調整部
225−1,225−2,225−3 A/Dコンバータ
230 信号分離処理部
231 独立同期信号検出器
232 再生信号ゲイン制御処理部
233 チャネル推定演算部
234 信号分離演算部
235 記憶部
240 マルチトラック復調部
241−1,241−2,241−3 等化器
243−1,243−2,243−3 検出器
244−1,244−2,244−3 同期信号検出器
245−1,245−2,245−3 復号器
260 復元部
261 データ結合器
R−1,R−2,R−3 再生ヘッド
W−1,W−2,W−3 記録ヘッド
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを有する再生装置によってデータ再生が可能なデータフォーマット、記録媒体、記録装置、記録方法、再生装置、再生方法、及び記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ヘッドにおいては、磁気記録メディアの大容量化を図るために、更なる高密度記録が求められ、トラックのトラック幅を狭くすること(以下、「狭幅化」という。)に適した磁気ヘッドが採用されるようになってきている。一般的には、トラックの狭幅化にはトラック・サーボの精度向上が鍵となる。
【0003】
磁気テープ記録再生装置においては、狭幅化に伴い、サーボが困難になる対策案として、所謂ノントラッキング・システムが提唱され、実用化に至っている(たとえば特許文献1−5など)。このノントラッキング方式は、ヘリカル・スキャンにてダブルアジマス記録を行ったトラックに対し、識別のために、ブロックに分けてデータを記録することによって、目的のトラックを1回のトレースで再生できなくても、データを再構成できるものである。このノントラッキング方式によって、従来のトラック・サーボで必要とされる1トラック以内のトラック制御に対して、4倍以上のマージンが許容されるようになる。
【0004】
また、ノントラッキング技術は、ヘリカル・スキャンに留まらずリニア記録で使用されるための可能性が検討されている(たとえば特許文献6,7など)。
【0005】
ところで、磁気記録メディアの基板に、たとえばポリエステルフィルムのような伸縮性をもった非磁性支持体を使用した場合、ダブルアジマス記録を行ったとしても、許容できる変形量はトラック・サーボを併用して、例えばトラック幅の2倍程度までであり、これ以上の変形が発生する場合は、十分なSN比をもって信号を再生することができなかった。また、ダブルアジマスを持たない記録の場合では、トラックをまたがない所謂ガードバンドの幅を、トラック・サーボを併用した状態でも、エラーレート等の信頼性を劣化させないために、テープの変形量以下に押さえ込む必要があった
【0006】
このような問題は、これまで実現されていた信号再生方式においては、少なくとも1つの再生ヘッドが同時に複数のトラックから信号を読み込むことによって信号品質が著しく劣化することに起因する。それを回避するために、ガードバンドやダブルアジマス記録を行い、また再生ヘッドからは1つのトラックからの信号のみを拾うように工夫されてきた。
【0007】
しかし、さらに高トラック密度化を行う場合においては、先ずガードバンドの設置はその妨げとなる。また、再生時において隣接するトラックからの干渉を少なくすることができるダブルアジマス記録は、狭幅化した場合その効果は減少してしまう。
【0008】
このことは、ノントラッキング方式であっても同じであり、再生ヘッドは複数のトラックに跨って信号を再生するように見えるが、時間分割した場合、再生している信号は常に1つのトラックに対してだけであり、同一時間に複数のトラックを再生するということは行っていなかった。
【0009】
また、ノントラッキング方式で高トラック密度化に対応しようとした際に、対象トラックの隣接するトラックからの信号を拾うことによってノイズが混入するようになるため、トラックの狭幅化対応が限界になってきている。
【0010】
磁気ヘッド装置の背景技術としてこのほか、記録密度を向上させるために、1つのブロックに複数のヘッドを配置し、同一アジマスのブロックで形成する方式として、一度に複数のデータ・フレームを記録する技術がある(たとえば特許文献8及び特許文献9など)。
【0011】
これらの公知技術は、再生ヘッド幅をトラックの幅の半分程度にしなければならなくなるため、再生信号の出力を大きくとることができないという制約が生じ、たとえばSN比の確保の点で不利であり、更なる高密度記録化には必ずしも向いていなかった。
【0012】
MIMO(Multi-Input/Multi-Output)技術は、無線通信に用いられるものとして広く知られている(たとえば特許文献10など)。
【0013】
また、MIMOに関する技術を磁気記録に使用する技術も知られている(たとえば非特許文献1など)。しかし、たとえば記録したトラックよりも広幅の再生ヘッドを使用する場合など、実用化に際して発生する課題が解決されていなかった。
【0014】
本発明においては、MIMOを使用した磁気記録方法としては前項で紹介した論文をもって実現しえなかった、磁気記録再生方法へのMIMO技術の実用化を実現するにあたり、公知技術からは予見しえなかった技術内容を明らかにするものである。
【特許文献1】特許1842057号公報
【特許文献2】特許1842058号公報
【特許文献3】特許1842059号公報
【特許文献4】特開平04−370580号公報
【特許文献5】特開平05−020788号公報
【特許文献6】特開平10−283620号公報
【特許文献7】特開2003−132504号公報
【特許文献8】特開2003−338012号公報
【特許文献9】特開2004−071014号公報
【特許文献10】特許3664993号公報
【非特許文献1】論文IEEE Trans.Mag.Vol.30.No.6 Nov.1994 5100ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述したように従来の磁気記録再生方式では、記録密度を高めるに磁気記録メディアでのトラック幅を狭くする方法が採用されてきた。しかし、このまま高記録密度を追い求めてトラック幅を狭くしていくと、再生時にトラックを追いきれなくなるという問題が生じる。そこで、トラックに対する再生ヘッドの位置が多少とも外れていても、そのトラックから信号を読み取ることができるノントラッキング方式が提案されている。しかしながら、ノントラッキング方式で適切に再生信号を得るためには、再生ヘッドの設定に厳しい制約が伴う。この面からトラック幅の狭小化による高記録密度化には限界があった。
【0016】
そこで、本発明者らは、磁気記録メディアに記録ヘッドにより、データ検出のための信号処理の一単位である複数のトラックを記録し、磁気記録メディアの複数のトラックに跨って信号を再生することが可能な再生ヘッドにより、複数のトラックに対する信号を、複数のトラックに対して異なる位置関係で複数再生し、これら再生信号を一単位にまとめ、信号処理を行うことで、トラックごとの再生信号を生成するという方式を提案した。これによると、再生ヘッドの幅を決める制約が軽減し、トラック幅の狭小化、高記録密度化が可能である。
【0017】
図21は、上記の磁気記録再生方式を採用した記録装置800の構成を示す図である。
【0018】
同図に示すように、この記録装置800は、マルチトラック化部110、マルチトラック記録符号化部120、マルチトラックプリアンブル付加部130、マルチトラック記録部140、記録ヘッドアレイ150で構成される。
【0019】
マルチトラック化部110は、マルチトラック化のために記録データ1を記録ヘッドアレイ150に設けられた記録ヘッドW−1,W−2,W−3の数(M=3)分のデータに振り分けるデータ分配器111で構成される。
【0020】
マルチトラック記録符号化部120は、データ分配器111にてM個に振り分けられた記録データを符号化するM個の記録符号化部121−1,121−2,121−3で構成される。
【0021】
マルチトラックプリアンブル付加部130は、マルチトラック記録符号化部120によって符号化された各記録データに、トラックごとに特定のプリアンブルを付加するM個のプリアンブル付加部131−1,131−2,131−3で構成される。
【0022】
マルチトラック記録部140は、プリアンブルが付加された各トラックの記録符号列を記録媒体に記録する手段であり、より詳細には、プリアンブルが付加された記録符号列に所望のタイミングを与えるM個の出力タイミング設定部141−1,141−2,141−3と、記録補償処理を行うM個の記録補償部144−1,144−2,144−3と、記録補償処理後の記録符号列をもとに個々の記録ヘッドW−1,W−2,W−3を駆動するM個の記録アンプ147−1,147−2,147−3とで構成される。
【0023】
図22は、この記録装置800によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。この記録装置100では、まず、入力された記録データ1がマルチトラック化部110にて、記録ヘッドW−1,W−2,W−3の数(M=3)のデータ、すなわちユニットを構成するトラック数分のデータに分配される(ステップS801)。
【0024】
分配された各データは、それぞれマルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,121−3にて、磁気記録メディア2の記録再生特性を考慮した符号列に符号化される。このときデータの符号列に、復調用同期パターンなどの、データ復調時に必要な情報も付加される(ステップS802)。
【0025】
次に、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置に、マルチトラックプリアンブル付加部130のプリアンブル付加部131−1,131−2,131−3にて、ユニット単位のデータを再生する制御のために必要なパターンがプリアンブルとして付加され、記録符号列が得られる(ステップS803)。
【0026】
ここで、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置とは、連続して記録符号列が記録再生されることを考慮して決められた位置である。また、プリアンブルとしては、例えば、再生信号に対するゲイン制御のための学習に用いられるゲイン制御パターン、ビット同期処理などに用いられる同期パターン、及び、複数の再生ヘッドと1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するために必要な分離パターンなどがある。ここで、1ユニット分の複数のトラックとは、データを再生するための信号処理の一単位を構成する複数のトラックである。同期パターンはトラックごとの分離パターンやデータの開始位置を特定するための情報としても用いられる。これらのパターンは、マルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,121−3で生成される符号列の規則を考慮して作成されたものである。
【0027】
それぞれのトラックごとの記録符号列は、マルチトラック記録部140の出力タイミング設定部141−1,141−2,141−3にて所望のタイミングが与えられた後、記録補償部144−1,144−2,144−3にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施される。
【0028】
この後、トラックごとの記録符号列は、記録アンプ147−1,147−2,147−3において電圧から電流に変換されて記録ヘッドW−1,W−2,W−3に送られ、記録ヘッドW−1,W−2,W−3によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS804)。
【0029】
次に、上記の磁気記録再生方式を採用した再生装置について説明する。
【0030】
図23は上記の磁気記録再生方式を採用した再生装置900の構成を示す図である。
【0031】
同図に示すように、この再生装置900は、再生ヘッドアレイ210、チャネル再生部220、信号分離部230、マルチトラック復調部240、及び復元部260を備える。
【0032】
再生ヘッドアレイ210は、磁気記録メディア2に記録された各トラックから信号を読み出すN(N=3)個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3を有する。それぞれの再生ヘッドR−1,R−2,R−3は、磁気記録メディア2上で隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なように、そのヘッド幅及び配置が決められている。
【0033】
チャネル再生部220は、再生ヘッドアレイ210に搭載されたN個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって再生された信号を増幅するN個の再生アンプ221−1,221−2,221−3と、N個の再生アンプ221−1,221−2,221−3の出力の振幅レベルが所定の値になるようにゲインを制御するゲイン調整部224−1,224−2,224−3と、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の出力を所定のビット幅のディジタル値に量子化するA/Dコンバータ225−1,225−2,225−3とを備える。
【0034】
なお、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の直前には必要に応じて不要な高域成分を除去するローパス・フィルタが備えられていてもよい。
【0035】
また、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の前段ではなく後段に配置されてもよい。これは、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3のビット幅をより有効に用いたり、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の構成を、プリアンプルに含まれる各パターンの検出を考慮した簡単なものとしたい場合に有効である。
【0036】
信号分離部230は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の出力から同期パターンの検出を行う同期信号検出器231と、同期信号検出器231によって検出された同期信号をもとに分離パターンの開始位置を特定して、その分離パターンを用いてチャネル推定演算および信号分離演算を行うことによって、複数の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によってそれぞれ再生された1ユニット分の再生信号からトラックごとの再生信号を分離する信号分離処理部236とを備える。
【0037】
マルチトラック復調部240は、信号分離処理部236にて分離されたトラックごとの再生信号に対して等化処理を行うM個の等化器241−1,241−2,241−3と、等化器241−1,241−2,241−3の出力からビット同期を行うM個のPLL242−1,242−2,242−3と、PLL242−1,242−2,242−3で生成されたビット同期信号を用いて各トラックごとの再生信号を二値化して符号列を生成する、たとえばビタビ検出器などM個の検出器243−1,243−2,243−3と、検出器243−1,243−2,243−3の出力である2値化された再生信号から符号列上の同期パターンを検出するM個の同期信号検出器244−1,244−2,244−3と、同期信号検出器244−1,244−2,244−3により検出された同期パターンをもとにデータの開始位置を特定して符号列からデータ列を復号するM個の復号器245−1,245−2,245−3とを備える。
【0038】
復元部260は、マルチトラック復調部240内のM個の復号器245−1,245−2,245−3より出力された各トラックのデータを、記録時と逆の動作により連結して再生データ3を復元するデータ結合器261を備える。
【0039】
図24は、この再生装置900のユニット再生の動作の流れを示すフローチャートである。この再生装置900では、まず、それぞれ隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なN個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって、磁気記録メディア2の1ユニット分の複数のトラックから信号が再生される(ステップS901)。
【0040】
次に、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3にて、各再生アンプ221−1,221−2,221−3の出力の振幅レベルが調整された後、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の出力はA/Dコンバータ225−1,225−2,225−3にてディジタル値に変換されて同期信号検出器231に出力される(ステップS902)。
【0041】
同期信号検出器231は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の出力ごとに、プリアンブル内の分離パターンの開始位置などを知るための同期パターンの検出を行う(ステップS903)。
【0042】
次に、信号分離処理部236は、同期信号検出器231によって検出された同期信号をもとに分離パターンの開始位置を特定して、その分離パターンを用いてチャネル推定演算によって各再生ヘッドR−1,R−2,R−3と1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を求めた後(ステップS904)、このチャネル行列をもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって再生された1ユニット分の再生信号から、トラックR−1,R−2,R−3ごとの再生信号を分離する(ステップS905)。
【0043】
この後は、トラックごとの再生信号からマルチトラック復調部240にてデータ列の復号が行われ(ステップS906)、復元部260にて各トラックごとのデータが連結されて再生データ3が得られる(ステップS907)。
【0044】
ところで、上記の磁気記録再生方式を採用する場合における、より安定した再生信号を得るための技術的課題として、例えば、各トラックに記録された信号の位相が合っていない場合の再生信号の品質の低下があった。
【0045】
すなわち、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合、複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドによって各トラックのプリアンブルを再生しているとき、各トラックの再生信号がお互いを打ち消し合って再生信号のレベルが低下する場合が考えられる。プリアンブルには、データの再生制御のために必要な情報として、再生信号のゲインを制御するためのゲイン制御パターンや、同期検出のための同期パターンなどが含まれており、これらのパターンの再生信号の品質が低下することによって、ゲイン制御及び同期検出を良好に行うことが困難になる、という問題があった。
【0046】
本発明は、かかる事情を鑑み、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、プリアンブルを良好に再生することができ、データ再生を良好に行うことのできるデータフォーマット、記録媒体、記録装置、記録方法、再生装置、再生方法、及び記録再生装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0047】
上記の課題を解決するために、本発明のデータフォーマットは、複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを有する再生装置によってデータ再生が可能なデータフォーマットであって、前記データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記トラックごとに、データと、このデータを再生する制御のために必要なプリアンブルとが記録され、再生時に前記再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、前記各トラックの前記プリアンブルの前記トラックの進行する方向における位置が設定されていることを特徴とする。
【0048】
この発明によれば、複数のトラックのプリアンブルが再生ヘッドによって同時に再生されることがないため、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、複数のトラックのプリアンブルの再生信号がお互いを打ち消し合うことがなく、プリアンブルを安定して再生することができ、データ再生を良好に行うことができる。
【0049】
また、本発明において、前記各トラックの前記プリアンブルは、他のトラックのうち少なくとも隣のトラックの前記プリアンブルに対して、前記トラックの進行する方向においてずれた位置に配置されている。これにより、隣接する複数のトラックのプリアンブルが再生ヘッドによって同時に再生されることがないため、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、隣接するトラックのプリアンブルの再生信号がお互いを打ち消し合うことがなく、データ再生を良好に行うことができる。
【0050】
前記プリアンブルは、前記再生装置が前記再生ヘッドによって再生された信号のゲインを制御するために必要なゲイン制御パターンを含むこととする。これにより、複数のトラックに記録されたゲイン制御パターンが1つの再生ヘッドによって同時に再生されることがないため、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、ゲイン制御パターンを安定して再生することができ、ゲイン制御を良好に行うことができ、データ再生を良好に行うことができる。
【0051】
前記プリアンブルは、前記再生装置が同期検出を行うために必要な同期パターンを含むこととする。これにより、複数のトラックに記録された同期パターンが1つの再生ヘッドによって同時に再生されることがないため、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、同期パターンを安定して再生することができ、同期検出を良好に行うことができ、データ再生を良好に行うことができる。
【0052】
前記プリアンブルは、前記再生装置が前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンを含むこととする。これにより、複数のトラックに記録された分離パターンが1つの再生ヘッドによって同時に再生されることがないため、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、分離パターンを安定して再生することができ、ユニット単位の再生信号からトラックごとの再生信号を分離する処理を良好に行うことができ、データ再生を良好に行うことができる。
【0053】
本発明の別の観点に基づく記録媒体は、複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを有する再生装置によってテータ再生が可能な記録媒体であって、前記データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記トラックごとに、データと、このデータを再生する制御のために必要なプリアンブルとが記録され、再生時に前記再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、前記各トラックの前記プリアンブルは、他のトラックのうち少なくとも隣のトラックの前記プリアンブルに対して、前記トラックの進行する方向においてずれた位置に記録されていることを特徴とする。
【0054】
この発明によれば、再生ヘッドによって複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないため、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、複数のトラックのプリアンブルの再生信号がお互いを打ち消し合うことがなく、プリアンブルを安定して再生することができ、データ再生を良好に行うことができる。
【0055】
本発明の別の観点に基づく記録装置は、複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを有する再生装置によってデータ再生が可能となるように、記録媒体に、記録ヘッドにより、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを記録する装置であって、前記トラックごとに記録すべきデータを符号化する記録符号化部と、前記記録符号化部により符号化された前記トラックごとの前記データにそれぞれ、再生時に前記再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係で、前記データを再生する制御のために必要なプリアンブルを付加する独立プリアンブル付加部と、前記トラックごとの前記プリアンブルが付加されたデータを、前記記録ヘッドにより前記記録媒体に記録するための処理を行うマルチトラック記録部とを具備する。
【0056】
この発明によれば、再生時に再生ヘッドによって複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係でプリアンブルを付加することにしたので、記録媒体の再生時に、再生装置の再生ヘッドによって複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないため、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でもデータ再生を良好に行うことができる。
【0057】
本発明の別の観点に基づく記録方法は、複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを有する再生装置によってデータ再生が可能となるように、記録媒体に、記録ヘッドにより、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを記録する方法であって、前記トラックごとに記録すべきデータを符号化するステップと、前記符号化された前記トラックごとの前記データにそれぞれ、再生時に前記再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係で、前記データを再生する制御のために必要なプリアンブルを付加するステップと、前記トラックごとの前記プリアンブルが付加されたデータを、前記記録ヘッドにより前記記録媒体に記録するステップとを具備する。
【0058】
この発明によれば、再生時に再生ヘッドによって複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係でプリアンブルを付加することにしたので、記録媒体の再生時に、再生装置の再生ヘッドによって複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないため、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、複数のトラックのプリアンブルの再生信号がお互いを打ち消し合うことがなく、プリアンブルを安定して再生することができ、データ再生を良好に行うことができる。
【0059】
本発明の別の観点に基づく再生装置は、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記トラックごとに、データと、このデータを再生する制御のために必要なゲイン制御パターンを含むプリアンブルとが記録され、再生時に複数のトラックに跨って信号を再生することが可能な再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、前記各トラックの前記プリアンブルは、他のトラックのうち少なくとも隣のトラックの前記プリアンブルに対して、前記トラックの進行する方向においてずれた位置に記録された記録媒体から前記データを再生する装置であって、前記ゲイン制御パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドの再生信号に対するゲインを演算して、この再生ヘッドの再生信号のレベルを制御する再生信号ゲイン制御処理部を有する。
【0060】
本発明によれば、複数のトラックに記録されたゲイン制御パターンが1つの再生ヘッドによって同時に再生されることがないため、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、ゲイン制御パターンを安定して再生することができ、ゲイン制御を良好に行うことができ、データ再生を良好に行うことができる。
【0061】
また、本発明の再生装置は、前記ユニット内の各トラックに対してそれぞれ異なる位置関係で信号を再生可能なように前記再生ヘッドを複数備え、前記再生信号ゲイン制御処理部は、前記各再生ヘッドごとの前記プリアンブルの再生信号をもとに、前記各再生ヘッドごとの再生信号に対するゲインを演算して、前記各再生ヘッドごとの再生信号のレベルを制御することとしてもよい。
【0062】
また、本発明の再生装置において、前記ユニット内の各トラックに対してそれぞれ異なる位置関係で前記ユニットをスキャン再生可能なように前記再生ヘッドがトラック幅方向に移動可能に設けられ、各スキャンごとの前記再生ヘッドの前記プリアンブルの再生信号をもとに、前記各スキャンごとの再生信号に対するゲインを演算して前記各スキャンごとの再生信号のレベルを制御することとしてもよい。
【0063】
さらに、本発明の再生装置において、前記プリアンブルは、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンを有し、前記ユニットごとの前記分離パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するチャネル推定演算部と、前記チャネル推定演算部によって求められた前記チャネル行列をもとに、前記再生ヘッドによって再生され、前記再生信号ゲイン制御処理部にてレベルが制御された1ユニット分の再生信号から、前記トラックごとの再生信号を分離する信号分離演算部とをさらに具備することとしてもよい。
【0064】
この発明によれば、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、各トラックの分離パターンの情報を良好に検出できることから、チャネル推定演算部によるチャネル行列の演算を良好に行うことができるとともに、再生信号に対するゲイン制御も安定して行うことができるので、信号分離演算部による信号分離も良好に行うことができ、良好なデータ再生を実現することができる。
【0065】
本発明の別の観点に基づく再生方法は、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記トラックごとに、データと、このデータを再生する制御のために必要なプリアンブルとが記録され、再生時に複数のトラックに跨って信号を再生することが可能な再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、前記各トラックの前記プリアンブルは、他のトラックのうち少なくとも隣のトラックの前記プリアンブルに対して、前記トラックの進行する方向においてずれた位置に記録された記録媒体から前記データを再生する方法であって、前記ゲイン制御パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドの再生信号に対するゲインを演算して、この再生ヘッドの再生信号のレベルを制御することを特徴とする。
【0066】
本発明によれば、複数のトラックに記録されたゲイン制御パターンが1つの再生ヘッドによって同時に再生されることがないため、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、ゲイン制御パターンを安定して再生することができ、ゲイン制御を良好に行うことができ、データ再生を良好に行うことができる。
【発明の効果】
【0067】
本発明によれば、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、プリアンブルの情報を安定して再生することができ、データ再生を良好に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0069】
(第1の実施形態)
【0070】
本発明の第1の実施形態として、マルチヘッドを用いた磁気記録再生方式における記録装置と再生装置について説明する。記録ヘッドの数をM、再生ヘッドの数をNとし、この実施形態では、M=3、N=3とする。
【0071】
図1は、本発明の第1の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置100の構成を示す図である。
【0072】
同図に示すように、この記録装置100は、マルチトラック化部110、マルチトラック記録符号化部120、マルチトラックプリアンブル付加部130、マルチトラック記録部140、記録ヘッドアレイ150で構成される。
【0073】
マルチトラック化部110は、マルチトラック化のために記録データ1を記録ヘッドアレイ150に設けられた記録ヘッドW−1,W−2,W−3の数(M=3)分のデータに振り分けるデータ分配器111で構成される。
【0074】
マルチトラック記録符号化部120は、データ分配器111にてM個に振り分けられた記録データを符号化するM個の記録符号化部121−1,121−2,121−3で構成される。
【0075】
マルチトラックプリアンブル付加部130は、マルチトラック記録符号化部120によって符号化された各記録データに、再生時に再生ヘッドによって複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係でプリアンブルを付加するM個の独立プリアンブル付加部131−1,131−2,131−3で構成される。
【0076】
マルチトラック記録部140は、プリアンブルが付加された各トラックの記録符号列を記録媒体に記録する手段であり、より詳細には、プリアンブルが付加された記録符号列に所望のタイミングを与えるM個の出力タイミング設定部141−1,141−2,141−3と、記録補償処理を行うM個の記録補償部144−1,144−2,144−3と、記録補償処理後の記録符号列をもとに個々の記録ヘッドW−1,W−2,W−3を駆動するM個の記録アンプ147−1,147−2,147−3とで構成される。
【0077】
図2は、この記録装置100によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。この記録装置100では、まず、入力された記録データ1がマルチトラック化部110にて、記録ヘッドW−1,W−2,W−3の数(M=3)のデータ、すなわちユニットを構成するトラック数分のデータに分配される(ステップS101)。
【0078】
分配された各データは、それぞれマルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,121−3にて、磁気記録メディア2の記録再生特性を考慮した符号列に符号化される。このときデータの符号列に、復調用同期パターンなどの、データ復調時に必要な情報も付加される(ステップS102)。
【0079】
次に、マルチトラックプリアンブル付加部130の独立プリアンブル付加部131−1,131−2,131−3により、記録符号化部121−1,121−2,121−3によって符号化されたそれぞれの記録データに、再生時に再生ヘッドによって複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係で、データ再生の制御のために必要なプリアンブルが付加され、記録符号列が得られる(ステップS103)。
【0080】
ここで、データを再生する制御のために必要なパターンとしては、例えば、再生信号に対するゲイン制御のための学習に用いられるゲイン制御パターン、ビット同期処理などのための同期検出に用いられる同期パターン、及び、複数の再生ヘッドと1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するために必要な分離パターンなどがある。1ユニット分の複数のトラックとは、データ再生のための信号処理の一単位を構成する複数のトラックである。同期パターンはトラックごとの分離パターンやデータの開始位置を特定するための情報としても用いられる。これらのパターンは、マルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,121−3で生成される符号列の規則を考慮して作成されたものである。
【0081】
それぞれのトラックごとの記録符号列は、マルチトラック記録部140の出力タイミング設定部141−1,141−2,141−3にて所望のタイミングが与えられた後、記録補償部144−1,144−2,144−3にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施される。
【0082】
この後、トラックごとの記録符号列は、記録アンプ147−1,147−2,147−3において電圧から電流に変換されて記録ヘッドW−1,W−2,W−3に送られ、記録ヘッドW−1,W−2,W−3によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS104)。
【0083】
次に、本発明の一実施形態である磁気記録再生装置における再生装置について説明する。
【0084】
図3は本発明の一実施形態である磁気記録再生装置における再生装置200の構成を示す図である。
【0085】
同図に示すように、再生装置200は、再生ヘッドアレイ210、チャネル再生部220、信号分離処理部230、マルチトラック復調部240、復元部260を備える。
【0086】
再生ヘッドアレイ210は、磁気記録メディア2に記録された各トラックから信号を読み出すN(N=3)個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3を有する。それぞれの再生ヘッドR−1,R−2,R−3は、磁気記録メディア2上で隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なように、そのヘッド幅及び配置が決められている。
【0087】
チャネル再生部220は、再生ヘッドアレイ210に搭載されたN個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって再生された信号を増幅するN個の再生アンプ221−1,221−2,221−3と、N個の再生アンプ221−1,221−2,221−3の出力の振幅レベルが所定の値になるようにゲインを制御するゲイン調整部224−1,224−2,224−3と、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の出力を所定のビット幅のディジタル値に量子化するA/Dコンバータ225−1,225−2,225−3とを備える。
【0088】
なお、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の直前に、必要に応じて不要な高域成分を除去するローパス・フィルタが備えられていてもよい。
【0089】
また、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の前段ではなく後段に配置されてもよい。これは、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3のビット幅をより有効に用いたり、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の構成を、プリアンプルに含まれる各パターンの検出を考慮した簡単なものとしたい場合に有効である。
【0090】
信号分離処理部230は、独立同期信号検出器231、再生信号ゲイン制御処理部232、チャネル推定演算部233、及び信号分離演算部234を有している。
【0091】
独立同期信号検出器231は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の出力から同期パターンの検出を行う。
【0092】
再生信号ゲイン制御処理部232は、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3ごとのプリアンブル内のゲイン制御パターンの再生信号をもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3ごとの再生信号に対するゲインを演算して、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3ごとの再生信号のレベルを制御する。
【0093】
チャネル推定演算部233は、独立同期信号検出器231によって検出された同期パターンをもとに分離パターンの開始位置を特定して、再生信号ゲイン制御処理部232によってレベル制御がされた分離パターンの再生信号を用いてチャネル推定演算を行い、再生ヘッドR−1,R−2,R−3と複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算する。
【0094】
信号分離演算部234は、チャネル推定演算部233によって求められたチャネル行列の逆行列を演算し、この逆行列をもとに、再生信号ゲイン制御処理部232より入力された1ユニット分の再生信号からトラックごとの再生信号を分離する処理を行う。
【0095】
なお、信号分離処理部230は、処理を行うために必要な情報を記憶する図示しない記憶部を持っている。信号分離処理部230は、この記憶部に、例えば、プリアンブルとデータからなる所定のユニット分の情報を記憶して処理を行う。
【0096】
マルチトラック復調部240は、図4に示すように、信号分離演算部234にて分離された各トラックごとの再生信号に対して等化処理を行うM個の等化器241−1,241−2,241−3と、等化器241−1,241−2,241−3の出力からビット同期を行うM個のPLL242−1,242−2,242−3と、PLL242−1,242−2,242−3で生成されたビット同期信号を用いて各トラックごとの再生信号を二値化して符号列を生成する、たとえばビタビ検出器などM個の検出器243−1,243−2,243−3と、検出器243−1,243−2,243−3の出力である2値化された再生信号から符号列上の同期信号を検出するM個の同期信号検出器244−1,244−2,244−3と、同期信号検出器244−1,244−2,244−3により検出された同期パターンをもとにデータの開始位置を特定して符号列からデータ列を復号するM個の復号器245−1,245−2,245−3とを備える。なお、マルチトラック復調部240は、上記の処理を行うために必要なデータ等の情報を記憶する、図示しない記憶部を有している。
【0097】
図3に戻って、復元部260は、マルチトラック復調部240内のM個の復号器245−1,245−2,245−3より出力された各トラックのデータを、記録時と逆の動作により連結して再生データ3を復元するデータ結合器261を備える。
【0098】
図5は、この再生装置200のユニット再生の動作の流れを示すフローチャートである。この再生装置200では、まず、それぞれ隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なN個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって、磁気記録メディア2の1ユニット分の複数のトラックから信号が再生される(ステップS201)。
【0099】
次に、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3にて、各再生アンプ221−1,221−2,221−3の出力の振幅レベルが調整された後、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の出力はA/Dコンバータ225−1,225−2,225−3にてディジタル値に変換されて独立同期信号検出器231に出力される(ステップS202)。
【0100】
次に、独立同期信号検出器231により、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の出力ごとに、プリアンブル内の分離パターンの開始位置などを知るための同期パターンの検出が行われる(ステップS203)。
【0101】
次に、再生信号ゲイン制御処理部232にて、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3ごとのプリアンブル内のゲイン制御パターンの再生信号をもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3ごとの再生信号に対するゲインを演算して、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3ごとの再生信号のレベルを制御する(ステップS204)。
【0102】
次に、チャネル推定演算部233は、独立同期信号検出器231によって検出された同期パターンをもとに各再生信号に配置されている分離パターンの開始位置を特定し、再生信号ゲイン制御処理部232によってレベル制御がされた分離パターンの再生信号をもとに、所定のチャネル推定演算によって各再生ヘッドR−1,R−2,R−3と1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を求める(ステップS205)。
【0103】
次に、信号分離演算部234にて、チャネル推定演算部233によって得られたチャネル行列の逆行列を演算し、この逆行列をもとに、再生信号ゲイン制御処理部232より出力された1ユニット分の再生信号から、トラックごとの再生信号を分離する処理が行われる(ステップS206)。
【0104】
この後は、トラックごとに分離された再生信号からマルチトラック復調部240にてデータ列の復号が行われ(ステップS207)、復元部260にて各トラックごとのデータが連結されて再生データ3が得られる(ステップS208)。
【0105】
図6は、上記の本実施形態の記録装置100によって記録が行われた磁気記録メディア2上のデータフォーマットの概念図である。
【0106】
M個の記録ヘッドによって磁気記録メディア2に記録された、M個のトラックをまとめた一単位を「ユニット」と呼ぶことにする。図6において、トラック#1、トラック#2、トラック#3はそれぞれ、記録装置(たとえば記録装置100)のM(ここではM=3)個の記録ヘッドW−1,W−2,W−3によって磁気記録メディア2に記録されたトラックである。これらのトラック#1、トラック#2、トラック#3のまとまりがユニット51である。それぞれのユニット51間にはガードバンド52と呼ばれる、何も記録されていない領域が確保されている。このガードバンド52の目的は、隣のユニットのトラックが再生されないようにすることにある。
【0107】
トラック#1、トラック#2、トラック#3にはそれぞれ、プリアンブル21とデータ22が記録されている。プリアンブル21は、前述したように、データ22を再生する制御のために必要な情報として、再生信号に対するゲイン制御のための学習に用いられるゲイン制御パターン、ビット同期処理などのための同期検出に用いられる同期パターン、及び、複数の再生ヘッドと1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するために必要な分離パターンを含むものである。
【0108】
図7は、本発明が解決しようとする課題を説明するための、一般的なプリアンブル21の構成を示す図である。
【0109】
同図に示すように、この一般的なプリアンブル21は、ゲイン制御パターン23、同期パターン24、及び分離パターン25で構成されている。トラック#1,#2,#3上では、先頭より、ゲイン制御パターン23、同期パターン24、分離パターン25の順に配置される。分離パターン25の後にはデータ22が配置される。各トラック#1,#2,#3のゲイン制御パターン23と同期パターン24は、トラックの進行する方向において同じ位置に配置されている。
【0110】
各トラック#1,#2,#3の分離パターン25−1,25−2,25−3は、互いに位置が重ならないように配置されている。すなわち、トラック#1の分離パターン25−1はT1区間に、トラック#2の分離パターン25−2はT2区間に、トラック#3の分離パターン25−3はT3区間にそれぞれ記録されている。これにより分離パターンの種類は、トラック数に対応する3種類となる。隣り合うトラックの分離パターン25−1,25−2,25−3どうしの間にはマージンのための所定の時間分の隙間34が設けられている。
【0111】
なお、分離パターン25−1,25−2,25−3は、最小記録波長と同等か、あるいはそれ以上の所定の記録波長で記録されたものである。
【0112】
このようなプリアンブル21が、図3に示した再生装置200において処理されることを想定した場合、ゲイン制御パターン23は、再生時に、再生装置200の中のゲイン調整部224−1,224−2,224−3による再生アンプ221−1,221−2,221−3のゲイン制御のための学習信号として使用されるとともに、再生信号ゲイン制御処理部232において再生信号に対するゲインの制御に用いられる。同期パターン24は、独立同期信号検出器231によってビット同期処理のための同期検出のために使用されるとともに、分離パターン25の開始位置及びデータ22の開始位置を知るための情報として使用される。そして分離パターン25−1,25−2,25−3は、再生時に複数の再生ヘッドR−1,R−2,R−3と1ユニット分の複数のトラック#1,#2,#3とのトラック幅方向における位置関係に相当するチャネル行列をチャネル推定演算部233にて求めるために使用される。
【0113】
チャネル推定演算部233は、分離パターン25−1,25−2,25−3の再生信号を用いてチャネル推定演算を行い、その結果としてチャネル行列を生成する。このチャネル行列は、1ユニット内の各トラック#1,#2,#3に対する個々の再生ヘッドR−1,R−2,R−3のトラック幅方向での位置情報に相当するもので、言い換えると、個々の再生ヘッドR−1,R−2,R−3がそれぞれ、ユニット内のどのトラックとどんな割合で位置的に重なるかを示した情報である。
【0114】
なお、図7の例では、再生ヘッドR−1,R−2,R−3の幅はトラック幅の1.5倍とする。すなわち、再生ヘッドR−1,R−2,R−3の幅は、記録ヘッドW−1,W−2,W−3のヘッド幅の1.5倍とされ、個々の再生ヘッドR−1,R−2,R−3はそれぞれ複数のトラックから信号を再生できるものとする。
【0115】
次に、このような一般的なプリアンブル21を用いた場合の課題を説明する。
【0116】
図8は、図7のプリアンブル21の記録状態の一例を示す図であり、各トラック#1,#2,#3の記録信号の位相の関係が分かるように、トラック#1の記録信号の位相をチャネルクロック位置Pによって表している。
【0117】
同図においては、トラック#1とトラック#3とが位相が揃った状態で記録され、トラック#2は、トラック#1とトラック#3に対して1チャネルクロック相当ずれて記録された状態を示している。このように、各トラック#1,#2,#3の記録位置が揃っていなくても、チャネルクロック位置が合っていれば、つまり記録信号の位相が合っていれば、再生ヘッドによって複数のトラックに跨って信号が再生されるとき、それら複数のトラックの再生信号がお互いを打ち消し合うことはなく、この結果、プリアンブル21を用いたデータ再生のための制御は良好に行われることになる。
【0118】
これに対して、図9は、トラック#1とトラック#2とがチャネルクロックの周期の1/4相当だけ互いにずれて記録され、トラック#1とトラック#3とがチャネルクロックの周期の1/8相当だけ互いにずれて記録された状態を示している。このように各トラック#1,#2,#3のチャネルクロック位置が合っていない場合、つまり各トラック#1,#2,#3の記録信号の位相が合っていない場合、再生ヘッドが複数のトラックに跨って信号を再生するとき、それら複数のトラックの再生信号がお互いを打ち消し合って、再生ヘッドから出力される信号レベルが低下し、この結果、プリアンブル21を用いたデータ再生のための制御が良好に行えない場合が考えられる。
【0119】
次に、本発明の実施形態にかかるプリアンブル21Aの構成について説明する。
【0120】
図10は、本発明の実施形態にかかるプリアンブル21の構成を示す図である。
【0121】
本実施形態のプリアンブル21Aは、ゲイン制御パターン23−1,23−2,23−3(AGC1,AGC2,AGC3)、同期パターン24−1,24−2,24−3(SY1,SY2,SY3)、及び分離パターン25−1,25−2,25−3で構成されている。トラック#1上では先頭より、ゲイン制御パターン23−1,同期パターン24−1,分離パターン25−1の順に配置され、トラック#2上では先頭より、ゲイン制御パターン23−2,同期パターン24−2,分離パターン25−2の順に配置され、トラック#3上では先頭より、ゲイン制御パターン23−3,同期パターン24−3,分離パターン25−3の順に配置される。そして、分離パターン25−1,25−2,25−3の後にはデータ22が配置される。
【0122】
ゲイン制御パターン23−1,23−2,23−3及び同期パターン24−1,24−2,24−3はそれぞれ、同一ユニット内の他のトラックのゲイン制御パターン23−1,23−2,23−3及び同期パターン24−1,24−2,24−3に対してトラックの進行する方向において位置が重ならないように配置されている。すなわち、トラック#1のゲイン制御パターン23−1及び同期パターン24−1はTa区間に、トラック#2のゲイン制御パターン23−2及び同期パターン24−2はTb区間に、トラック#3のゲイン制御パターン23−3及び同期パターン24−3はTc区間にそれぞれ配置されている。これらのパターンの記録区間の間には、マージンのための隙間35が設けられている。
【0123】
各トラック#1,#2,#3の分離パターン25−1,25−2,25−3は、図7に示した一般的なプリアンブル21Aと同様に、トラックの進行する方向において互いに位置が重ならないように配置されている。すなわち、トラック#1の分離パターン25−1はT1区間に、トラック#2の分離パターン25−2はT2区間に、トラック#3の分離パターン25−3はT3区間にそれぞれ記録されている。これにより分離パターンの種類は、トラック数に対応する3種類となる。そして、隣り合うトラックの分離パターン25−1,25−2,25−3どうしの間には、マージンのための所定の時間分の隙間34が設けられている。なお、分離パターン25−1,25−2,25−3は、最小記録波長と同等か、あるいはそれ以上の所定の記録波長で記録されたものである。
【0124】
このように、ゲイン制御パターン23−1,23−2,23−3及び同期パターン24−1,24−2,24−3のそれぞれを、同一ユニット内の他のトラックのゲイン制御パターン23−1,23−2,23−3及び同期パターン24−1,24−2,24−3に対して、トラックの進行する方向において位置が重ならないように配置したことによって、各トラック#1,#2,#3のチャネルクロック位置が合っていない場合でも、個々の再生ヘッドR−1,R−2,R−3が複数のトラックを跨いで信号を再生するとき、各トラックの記録信号による打ち消し合いによる再生信号のレベル低下が発生することがなく、ゲイン制御パターン23−1,23−2,23−3によるゲイン制御及び同期パターン24−1,24−2,24−3による同期検出を、良好に行うことができる。
【0125】
次に、本発明の実施形態にかかるプリアンブルの変形例を説明する。
【0126】
図11は、第1の変形列であるプリアンブル21Bの構成を示す図である。このプリアンブル21Bを含むデータフォーマットにおいては、ユニットを構成するトラックの数を4とし、また再生ヘッドの数を4としてある。さらに、再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の幅をトラック幅の1.5倍としてある。ここで、トラック#4のゲイン制御パターン23−4及び同期パターン24−4は、トラック#1のゲイン制御パターン23−1及び同期パターン24−1と同じ位置に配置されている。再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4が、図11にあるような位置であるとき、トラック#1の記録信号は再生ヘッドR−1と再生ヘッドR−2によって再生され、トラック#4の記録信号は再生ヘッドR−3と再生ヘッドR−4によって再生される。したがってトラック#1とトラック#4は、一つの再生ヘッドによって同時に再生されることがない。
【0127】
すなわち、各トラックに対する再生ヘッドの配置が、このような関係であるとき、トラックの進行する方向において同じ位置にゲイン制御パターン及び同期パターンを記録しても、位相が一致しない各トラックの記録信号による打ち消し合いは起こらず、再生信号のレベル低下が発生することはないので、ゲイン制御パターン23−1,23−2,23−3,23−4によるゲイン制御及び同期パターン24−1,24−2,24−3,24−4による同期検出を、良好に行うことができる。
【0128】
ここで、図11のプリアンブル21Bの構成において、再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4がトラック幅方向へずれた場合について説明する。トラック幅に対する、再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の幅を、図示しない幅である2倍とする。この時、ずれ量がトラック幅の50%を超えたとき、2つ隣のトラックの影響を受けるようになる。例えば図11において、ヘッドアレイ210上の再生ヘッドR−1が、トラック幅の50%だけ下方にずれた時の再生ヘッドR−1による再生信号は、トラック#1とトラック#2を含んでおり、再生ヘッドR−1がさらに下方にずれた時には、トラック#3を含むようになる。なお、トラック#4までも含むためのずれ量は、計算上はトラック幅の150%を超えた時であるが、このとき再生ヘッドR−1は本来必要であるトラック#1を再生することができていない。
【0129】
以上から、再生ヘッド幅を2倍とした時、オフトラック許容量を例えばトラック幅の50%程度とした場合において、トラック#1とトラック#4は、一つの再生ヘッドによって同時に再生されることがないので、位相が一致しない各トラックの記録信号による打ち消し合いは起こらず、再生信号のレベル低下が発生することはない。したがって、ゲイン制御パターン23−1,23−2,23−3,23−4によるゲイン制御及び同期パターン24−1,24−2,24−3,24−4による同期検出を良好に行うことができる。
【0130】
このように図11の例において、再生時に再生ヘッドが、トラック幅方向へのずれを発生した場合でも、本発明の効果が期待できる。
【0131】
なお、ユニットを構成するトラック数が3の場合であっても、本発明は同様に適用できるが、トラック数が4の場合と比較すると、トラック幅方向へのずれの許容量が減少する。この場合において、再生ヘッドの幅を2倍より狭くし、例えば1.5倍幅とすることで、トラック幅方向へのずれの許容量を増やすことができる。すなわち、オフトラック許容量を考慮しながら再生ヘッド幅を決定することで、再生時に再生ヘッドが、トラック幅方向への所定のずれを発生した場合でも、本発明の効果が期待できる。
【0132】
図12は、第2の変形列であるプリアンブル21Cの構成を示す図である。このプリアンブル21Cを含むデータフォーマットにおいては、ユニットを構成するトラック#1,#2,#3の、ゲイン制御パターン23−1と同期パターン24−1と分離パターン25−1,ゲイン制御パターン23−2と同期パターン24−2と分離パターン25−2,そしてゲイン制御パターン23−3と同期パターン24−3と分離パターン25−3をそれぞれひとまとめにし、これらトラックのパターンのまとまりのそれぞれが、他のトラックのパターンのまとまりに対して、トラックの進行する方向における位置が互いに重ならないように配置したものである。
【0133】
このようなプリアンブル21Cによっても同様にして、各トラックの記録信号による打ち消し合いによる再生信号のレベル低下が発生することがなく、ゲイン制御パターン23−1,23−2,23−3によるゲイン制御及び同期パターン24−1,24−2,24−3による同期検出を良好に行うことができる。
【0134】
また、図12におけるプリアンブル21Cのようなまとまりの構成においても、図10に対する図11の応用例と同様にして、各トラックにおけるパターンのまとまりのそれぞれを、対応する一つの再生ヘッドR−1,R−2,R−3によってのみ再生されるように配置すればよく、必ずしも、各トラックにおけるパターンのまとまりが、他のトラックのパターンのまとまりに対して、トラックの進行する方向における位置が互いに重ならないように配置されることに限定されない。
【0135】
なお、この例においては明確にゲイン制御パターン、同期パターン、及び分離パターンを区別して示したが、例えば同期パターンの中にゲイン制御が可能なパターンを配置したり、さらに同期パターンの中にチャネル推定演算が可能なパターンを配置したりして、他と一体化された同期パターンを用いたフォーマットとしても、トラックの進行する方向における位置が互いに重ならないように配置されていれば、本発明は同様に適用することができる。
【0136】
さらに、上記のような形態のパターンにおいても、例えばそれぞれの一体化された同期パターンを、対応する一つの再生ヘッドR−1,R−2,R−3によってのみ再生されるように配置すれば、各トラックにおける一体化された同期パターンのそれぞれが、他のトラックの一体化された同期パターンに対して、トラックの進行する方向における位置が互いに重ならないように配置されることに、必ずしも限定されない。
【0137】
次に、この実施形態において、再生信号ゲイン制御処理部232による再生信号のゲイン制御の詳細を説明する。
【0138】
図10において、再生ヘッドR−1によってトラック#1及びトラック#2から記録信号が読み出され、再生ヘッドR−2によってトラック#1、トラック#2、及びトラック#3から記録信号が読み出され、再生ヘッドR−3によってトラック#2及びトラック#3から記録信号が読み出される。
【0139】
再生信号ゲイン制御処理部232は、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3ごとのゲイン制御パターン23−1,23−2,23−3の再生信号をもとに、例えば、以下のようにして、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3ごとの再生信号に対するゲインを演算し、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3ごとの再生信号のレベルを制御する。
【0140】
すなわち、再生信号ゲイン制御処理部232は、再生ヘッドR−1によってトラック#1とトラック#2よりそれぞれ再生されたゲイン制御パターンの信号を加算する。同様に、再生信号ゲイン制御処理部232は、再生ヘッドR−2によってトラック#1、トラック#2、及びトラック#3から再生されたゲイン制御パターンの信号を加算する。同様に、再生信号ゲイン制御処理部232は、再生ヘッドR−3によってトラック#2とトラック#3より再生されたゲイン制御パターンの信号を加算する。
【0141】
ゲイン制御パターンの再生信号の加算は、例えば、それぞれのトラックにおけるゲイン制御パターンの再生信号のピーク値を検出し、その平均値を求めることなどによって行われる。なお、この演算については、上記の方式に限らず、各再生信号の相関関係が成立つものであれば、別の方式でもかまわない。
【0142】
再生信号ゲイン制御処理部232は、以上のようにして得られた3つの演算結果の中から最大のものを選び出し、これを全ての再生ヘッドR−1,R−2,R−3に対する基準出力とする。そして再生信号ゲイン制御処理部232は、入力された再生ヘッドごとの再生信号の値に1/(基準出力)を掛け合わせた値を制御結果として出力する。
【0143】
なお、基準出力は、チャネル推定演算部233におけるチャネル推定演算でも用いることができるし、信号分離演算部234においても用いることができる。
【0144】
以上説明したように、本実施形態によれば、各トラックのプリアンブルを、再生時に個々の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によってそれぞれ複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係で配置したことによって、各トラックの記録信号の位相が合っていない場合でも、隣り合う複数のトラックのプリアンブルの再生信号が互いに打ち消し合うことによる信号レベルの低下を防止でき、ゲイン制御パターン及び同期パターンを良好に再生できるようになることで、安定したデータ再生が実現される。
【0145】
また、本実施形態によれば、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3がそれぞれ複数のトラックに跨って再生した各信号をユニットの単位にまとめ、所定の信号処理を行うことで、トラック毎の再生信号を分離することができる。このため、ユニット内のトラック間の距離を狭く設定することができ、あるいは再生ヘッドR−1,R−2,R−3の幅をトラック幅よりも広く設定することができるので、高トラック密度化を実現できる。
【0146】
なお、再生信号ゲイン制御処理部232による再生信号のゲイン制御は、図7に示した一般的なプリアンブル21を用いた場合にも同様に適用できる。この場合、各トラック#1,#2,#3のゲイン制御パターンの位置が同じであるから、再生ヘッドR−1によってトラック#1とトラック#2よりそれぞれ読み出されたゲイン制御パターンを加算する処理、再生ヘッドR−2によってトラック#1、トラック#2、及びトラック#3から読み出されたゲイン制御パターンを加算する処理、そして再生ヘッドR−3によってトラック#2とトラック#3より再生されたゲイン制御パターンを加算する処理が、一つの区間で行われる点が異なるだけである。
【0147】
また、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3と1ユニット分の複数のトラック#1,#2,#3との再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要なパターンとして、上記の実施形態では、例えば図10や図12に示したような分離パターン25−1,25−2,25−3を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、トラッキングサーボ情報などを用いることも可能である。この場合には、トラッキングサーボ情報の各記録パターンと各再生ヘッドとの位置関係をユニット単位にまとめたものがチャネル推定情報として生成される。
【0148】
また、分離パターンを用いて上記の位置関係を検出する手段と、トラッキングサーボ情報を用いて位置関係を検出する手段の両方を併用して、チャネル推定演算を行ってもよい。
【0149】
さらに、上記の実施形態では、3行3列の行列をチャネル推定情報として算出する場合を説明したが、例えば、4行4列の行列や、その他の正方行列であっても、その一般化逆行列を求めることによって信号分離処理を行うことが可能である。さらに、正方行列以外の行列でも、同様にしてその一般化逆行列を求めるようにすればよい。
【0150】
なお、行列の一般化逆行列を求められるようにするために、分離パターンの種類はトラック数に対応させておく必要がある。
【0151】
また、分離パターンは、互いに一次独立なトラック数のパターンとする。
【0152】
このほか、第1のプリアンブル23に配置されているゲイン制御パターンを、同期パターン24の後方に追加配置することによって、ゲイン制御のための情報量を増やしてもよい。
【0153】
第1のプリアンブル23に配置されているゲイン制御パターンと、第2のプリアンブル25に配置されている分離パターンとには、同一のパターンを採用してもかまわない。
【0154】
上記の実施形態では、時間軸上で直交する分離パターンを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、周波数軸上で直交するような分離パターン、あるいは、直交符号を用いた分離パターンなどを用いてもよい。
【0155】
信号分離演算部234による信号分離処理の演算方法としては、例えば、チャネル行列に対する一般化逆行列を求める方法などが挙げられる。このチャネル行列に対して一般化逆行列を求める方法は、一般に、ゼロ・フォーシング(Zero・Forcing)法と呼ばれる。但し、信号分離処理の方法はこれに限定されるものではなく、例えば、MMSE(Minimum Mean Squared Error)法を用いることもできる。
【0156】
(第2の実施形態)
【0157】
次に、本発明の第2の実施形態として、シングルヘッドを用いた磁気記録再生装置を説明する。
【0158】
この実施形態の磁気記録再生装置は、1個、又はユニット当たりのトラック数より少ない個数の記録ヘッド及び再生ヘッドを有し、トラックごとに記録位置を揃えることなく記録されている記録媒体を、トラックごとに再生位置を揃えることなく再生する装置である。
【0159】
図13は本発明の第2の実施形態である磁気記録再生装置における記録装置300の構成を示す図である。
【0160】
この記録装置300は、シングルヘッドでユニットの記録を行うものである。ここで、一つの記録ヘッドによってユニットの記録を行う所定の回数をMとし、また一つの再生ヘッドによってユニットの再生を行う所定の回数をNとし、この実施形態では、M=3、N=3とする。
【0161】
同図に示すように、この記録装置300は、マルチトラック化部110、マルチトラック記録符号化部120、マルチトラックプリアンブル付加部130、マルチトラック記録部140、記録ヘッドアレイ150で構成される。
【0162】
マルチトラック記録符号化部120は、データ分配器111にてM個に振り分けられた記録データを符号化するM個の記録符号化部121−1,121−2,121−3で構成される。
【0163】
マルチトラックプリアンブル付加部130は、マルチトラック記録符号化部120によって符号化された各記録データに、再生時に再生ヘッドによって複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係で、プリアンブルを付加するM個の独立プリアンブル付加部131−1,131−2,131−3で構成される。
【0164】
マルチトラック記録部140は、少なくとも1ユニット分の記録データを記憶する記憶部149と、プリアンブルが付加された記録符号列に所望のタイミングを与える1個の出力タイミング設定部141と、記録補償処理を行う1個の記録補償部144と、記録補償処理後の記録符号列をもとに記録ヘッドW−1を駆動する1個の記録アンプ147とで構成される。
【0165】
図14は、この記録装置300のユニット記録時の動作の流れを示すフローチャートである。この記録装置300では、まず、入力された記録データ1がマルチトラック化部110にて、M(M=3)個のデータ(トラックごとのデータ)に分配される(ステップS301)。
【0166】
分配された各データは、それぞれマルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,121−3にて、磁気記録メディア2の記録再生特性を考慮した符号列に符号化される。このとき符号列に、復調用同期パターンなどの、データ復調時に必要な情報も付加される(ステップS302)。
【0167】
次に、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置に、再生時に再生ヘッドによって複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係で、マルチトラックプリアンブル付加部130のプリアンブル付加部131−1,131−2,131−3にて、ユニット単位のデータの再生制御のために必要なパターンがプリアンブルとして付加され、記録符号列が得られる(ステップS303)。このようにしてプリアンブルが付加されたトラックごとの記録符号列は記憶部149に記憶される(ステップS304)。
【0168】
この後、記憶部149から、最初に記録するトラックの記録符号列が読み出され(ステップS305)、このトラックの記録符号列に対して出力タイミング設定部141によって所望のタイミングが与えられた後、記録補償部144にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施され、記録アンプ147にて電圧から電流に変換されて、記録ヘッドW−1によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS306)。
【0169】
この後、1ユニット分のトラックの記録が終了したかどうかを判定し(ステップS307)、終了していなければ(ステップS307のNO)、記録ヘッドW−1を次の位置に移動させる(ステップS308)。この後、記憶部149から次のトラックの記録符号列を読み出して同様に記録のための処理を繰り返す。以上の動作を、1ユニット分のトラックの記録が終了するまで繰り返す。すなわち、はじめにトラック#1の記録を行い、次に、トラック#2の位置に移動してトラック#2の記録を行い、この後、同様にトラック#3の位置に移動してトラック#3への記録を、さらにトラック#4の位置に移動してトラック#4への記録を行う。
【0170】
図15は、この第2の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置の変形例である記録装置301の構成を示す図である。
【0171】
同図に示すように、この記録装置301は、所定の単位の記録データ、例えば所定のトラック数分の記録データを記録符号化する記録符号化部121と、トラックごとの符号化された記録データに、再生時に再生ヘッドによって複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係でデータ再生の制御のために必要なプリアンブルを付加する独立プリアンブル付加部131と、記憶部149と、プリアンブルが付加された記録符号列に所望のタイミングを与える出力タイミング設定部141と、記録補償処理を行う記録補償部144と、記録補償処理後の記録符号列をもとに記録ヘッドW−1を駆動する記録アンプ147とで構成されている。すなわち、図13に示す記録装置300の構成から、マルチトラック化部110(データ分配器111)が省かれているとともに、マルチトラック記録符号化部120は一つの記録符号化部121で構成され、マルチトラックプリアンブル付加部130は一つの独立プリアンブル付加部131で構成されている。
【0172】
図16は、この記録装置301のユニット記録の動作の流れを示すフローチャートである。
【0173】
この記録装置301では、まず、記録符号化部121にて、所定の単位分の記録データ、例えば所定のトラック数分の記録データが、磁気記録メディア2の記録再生特性を考慮した符号列に符号化される。このときデータの符号列に、復調用同期パターンなどの、データ復調時に必要な情報も付加される(ステップS311)。
【0174】
次に、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置に、独立プリアンブル付加部131にて、再生時に再生ヘッドによって複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係でデータ再生制御のために必要なプリアンブルが付加されて、所定のトラック数分の記録符号列が得られる(ステップS312)。このようにしてプリアンブル符号が付加されたトラックごとの記録符号列は記憶部149に記憶される(ステップS313)。
【0175】
この後、記憶部149から最初に記録するトラックの記録符号列が読み出され(ステップS314)、このトラックの記録符号列に対して出力タイミング設定部141によって所望のタイミングが与えられた後、記録補償部144にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施され、記録アンプ147にて電圧から電流に変換されて、記録ヘッドW−1によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS315)。
【0176】
この後、1ユニット分のトラックの記録が終了したかどうかを判定し(ステップS316)、終了していなければ(ステップS316のNO)、記録ヘッドW−1を次の位置に移動させ(ステップS317)、記憶部149から次のトラックの記録符号列を読み出して同様に記録のための処理を繰り返す。以上の動作を、1ユニット分のトラックの記録が終了するまで繰り返す。
【0177】
次に、本発明の第2の実施形態である磁気記録再生方式における再生装置について説明する。
【0178】
図17は本発明の第2の実施形態である磁気記録再生方式における再生装置400の構成を示す図である。
【0179】
同図に示すように、この再生装置400は、再生ヘッドアレイ210、チャネル再生部220、信号分離処理部230、マルチトラック復調部240、及び復元部260を備える。
【0180】
再生ヘッドアレイ210は、磁気記録メディア2に記録された各トラックから信号を読み出す1個の再生ヘッドR−1を有する。
【0181】
チャネル再生部220は、再生ヘッドアレイ210に搭載された再生ヘッドR−1によって再生された信号を増幅する1個の再生アンプ221と、再生アンプ221の出力の振幅レベルが所定の値になるようにゲインを制御する1個のゲイン調整部224と、ゲイン調整部224の出力を所定のビット幅のディジタル値に量子化する1個のA/Dコンバータ225とを備える。
【0182】
信号分離処理部230は、独立同期信号検出器231、再生信号ゲイン制御処理部232、チャネル推定演算部233、信号分離演算部234、及び記憶部235を有している。
【0183】
独立同期信号検出器231は、A/Dコンバータ225の出力から同期パターンの検出を行う。
【0184】
再生信号ゲイン制御処理部232は、各スキャンごとの再生ヘッドR−1のプリアンブルの再生信号をもとに、各スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号に対するゲインを演算して各スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号のレベルを制御する。
【0185】
チャネル推定演算部233は、独立同期信号検出器231によって検出された同期パターンをもとに分離パターンの開始位置を特定して、再生信号ゲイン制御処理部232によってレベル制御がされた分離パターンの再生信号を用いてチャネル推定演算を行う。
【0186】
信号分離演算部234は、チャネル推定演算部233によって求められたチャネル行列の逆行列を演算し、この逆行列をもとに、再生信号ゲイン制御処理部232より入力された1ユニット分の再生信号からトラックごとの再生信号を分離する処理を行う。
【0187】
記憶部235は、独立同期信号検出器231と再生信号ゲイン制御処理部232との間に配置され、少なくとも1ユニット分の再生信号を記憶する。
【0188】
マルチトラック復調部240は、図4に示したように、信号分離演算部234にて分離された各トラックの再生信号に対して等化処理を行うM個の等化器241−1,241−2,241−3と、等化器241−1,241−2,241−3の出力からビット同期を行うM個のPLL242−1,242−2,242−3と、PLL242−1,242−2,242−3で生成されたビット同期信号を用いて各トラックごとの再生信号を二値化して符号列を生成する、たとえばビタビ検出器などM個の検出器243−1,243−2,243−3と、検出器243−1,243−2,243−3の出力である2値化された再生信号から符号列上の同期信号を検出するM個の同期信号検出器244−1,244−2,244−3と、同期信号検出器244−1,244−2,244−3により検出された同期パターンをもとにデータの開始位置を特定して符号列からデータ列を復号するM個の復号器245−1,245−2,245−3とを備える。なお、マルチトラック復調部240は、上記の処理を行うために必要なデータ等の情報を記憶する、図示しない記憶部を有している。
【0189】
図17に戻って、復元部260は、マルチトラック復調部240内のM個の復号器245−1,245−2,245−3より出力された各トラックのデータを、記録時と逆の動作により連結して再生データ3を復元するデータ結合器261を備える。
【0190】
なお、シングルヘッドによる再生時のトラックのトレースは、少なくとも1ユニットの記録トラック数の回数だけ繰り返される。すなわち、トラック数以上の回数トレースを繰り返してもよい。その際、1ユニット分の全てのトラックが少なくとも1回はトレースされるようにする。記憶部235には、再生ヘッドR−1が移動した各位置で再生したユニット分の信号、すなわち再生ヘッドR−1が各位置で複数のトラックからそれぞれ再生した信号が記憶される。
【0191】
図18は、この再生装置400のユニット再生動作を示すフローチャートを示す。
【0192】
この再生装置400では、まず、再生ヘッドR−1によって、最初の位置で複数のトラックから信号が再生される(ステップS401)。次に、ゲイン調整部224にて、再生アンプ221の出力の振幅レベルが調整された後、その出力はA/Dコンバータ225にてディジタル値に変換されて独立同期信号検出器231に出力される(ステップS402)。
【0193】
独立同期信号検出器231では、A/Dコンバータ225の出力から分離パターンの開始位置を知るための同期パターンの検出が行われた後(ステップS403)、トラックの再生信号は記憶部235に記憶される(ステップS404)。
【0194】
次に、1ユニット分の再生信号が記憶部235に記憶されたかどうかを判断し(ステップS405)、1ユニット分の再生信号が記憶部235にまだ記憶されていない場合には、再生ヘッドR−1をトラック幅方向の次の位置にずらし(ステップ406)、ステップS401からステップS404までの動作を繰り返す。
【0195】
1ユニット分の再生信号が記憶部235に記憶された場合、再生信号ゲイン制御処理部232は、記憶部235に記憶された1ユニット分の各スキャンごとの再生ヘッドR−1のプリアンブルの再生信号をもとに、各スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号に対するゲインを演算して各スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号のレベルを制御する(ステップS407)。
【0196】
次に、チャネル推定演算部233は、独立同期信号検出器231によって検出された同期パターンをもとに各再生信号に配置されている分離パターンの開始位置を特定し、再生信号ゲイン制御処理部232によってレベル制御がされた分離パターンの再生信号を用いて、所定のチャネル推定演算によってチャネル行列を求める(ステップS408)。
【0197】
次に、信号分離演算部234にて、チャネル推定演算部233によって得られたチャネル行列の逆行列を演算し、この逆行列をもとに、再生信号ゲイン制御処理部232より出力された1ユニット分の再生信号から、トラックごとの再生信号を分離する処理が行われる(ステップS409)。
【0198】
この後は、トラックごとに分離された再生信号からマルチトラック復調部240にてデータ列の復号が行われ(ステップS410)、復元部260にて各トラックごとのデータが連結されて再生データ3が得られる(ステップS411)。
【0199】
なお、A/Dコンバータ225の直前には必要に応じて不要な高域成分を除去するローパス・フィルタが備えられていてもよい。また、ゲイン調整部224については、A/Dコンバータ225の後段に接続して量子化後にゲインを制御するようにしてもよい。これは、A/Dコンバータ225のビット幅をより有効に用いたり、ゲイン調整部224の構成を、プリアンプルに含まれる各パターンの検出を考慮した簡単なものとしたい場合に有効である。あるいは、独立同期信号検出器231において利得目標値との誤差をとった情報を用いてゲイン調整部224においてゲイン調整を行うようにしてもよい。
【0200】
また、マルチトラック復調部240にて、トラックごとの出力タイミングを制御しながら復調処理を行うようにすれば、復元部260でのデータの連結処理は不要となる。したがって、この場合には復元部260は不要である。
【0201】
(第3の実施形態)
【0202】
本発明は、上記で説明したリニア記録方式、ノンアジマス記録方式の磁気記録再生に適用されることに限らず、ヘリカル記録方式、アジマス記録方式にも適用可能である。
【0203】
その具体例を以下に示す。
【0204】
図19は、複数の記録ヘッドW−1,W−2,W−3を用いて、ノンアジマス方式とヘリカル・スキャン方式で磁気記録メディア2に記録されるデータフォーマットの概念図である。ヘリカル・スキャン方式においても、トラック#1,トラック#2,トラック#3で構成されるユニット構成トラック列51の間にはガードバンド52が配置される。トラック#1,トラック#2,トラック#3に記録されるプリアンブル21は、例えば図10、図11、図12に示したものと同様でよい。このようなヘリカル・スキャン方式の磁気記録再生方式においても、本発明は適用可能であり、第1の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置100及び再生装置200の構成を採用することができる。
【0205】
図20は、複数の記録ヘッドW−1,W−2,W−3,W−4,W−5,W−6を用いて、ダブルアジマス方式とヘリカル・スキャン方式により記録媒体に記録されるデータフォーマットの概念図である。
【0206】
本例では、記録用と再生用のそれぞれに6つの記録ヘッドW−1,W−2,W−3,W−4,W−5,W−6が用いられている。これらの記録ヘッドのうち、連続する3つの記録ヘッドW−1,W−2,W−3と、残る連続する3つの記録ヘッドW−4,W−5,W−6とは、互いにトラックの磁化方向であるアジマス方向が異なるようにしてある。すなわち、トラック#1−#3とトラック#4−#6とはアジマス方向が異なる。これらのトラック#1−#6が、データを再生するための処理の一単位であるユニットを複数含むユニット構成トラック列51となる。なお、このダブルアジマスの場合においては、ガードバンドは不要である。
【0207】
なお、この例では、トラック#1−#6のまとまりを、データ再生のための信号処理の一単位(ユニット)としているが、アジマス方向が同一である3つの連続するトラック(例えばトラック#1−#3、トラック#4−#6)を、それぞれ一つのユニットとして信号処理を行うようにしてもよい。
【0208】
各トラック#1−#6に記録されるプリアンブルは、例えば図10、図11、図12に示したものと同様でよい。このようなダブルアジマス方式とヘリカル・スキャン方式の磁気記録再生方式においても、本発明は適用可能であり、第1の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置100及び再生装置200の構成を採用することができる。
【0209】
なお、本発明は、上記実施の形態に示す構成のものに限定されるものではなく、請求項に記載した技術的範囲を逸脱しない範囲において種々に変更し変形することは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1】本発明の第1の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置の構成を示す図である。
【図2】図1の記録装置によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施形態の磁気記録再生方式における再生装置の構成を示す図である。
【図4】図3の再生装置の中のマルチトラック復調部の構成を示す図である。
【図5】図3の再生装置によるユニット再生の動作を示すフローチャートである。
【図6】図1の記録装置によって記録が行われた磁気記録メディア上のデータフォーマットの概念図である。
【図7】図6に示すフォーマットに採用される一般的なプリアンブルの構成を示す図である。
【図8】図7のプリアンブルの記録状態の一例を示す図である。
【図9】図7のプリアンブルの位相ずれを含む記録状態の一例を示す図である。
【図10】本発明の実施形態にかかるプリアンブルの構成を示す図である。
【図11】本発明の実施形態にかかるプリアンブルの第1の変形列を示す図である。
【図12】本発明の実施形態にかかるプリアンブルの第2の変形列を示す図である。
【図13】本発明の第2の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置の構成を示す図である。
【図14】図13の記録装置によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。
【図15】第2の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置の変形例である記録装置の構成を示す図である。
【図16】図15の記録装置によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。
【図17】本発明の第2の実施形態である磁気記録再生方式における再生装置400の構成を示す図である。
【図18】図17の再生装置によるユニット再生の動作を示すフローチャートである。
【図19】複数の記録ヘッドを用いてノンアジマス方式とヘリカル・スキャン方式で磁気記録メディアに記録されるデータフォーマットの概念図である。
【図20】複数の記録ヘッドを用いてダブルアジマス方式とヘリカル・スキャン方式により記録媒体に記録されるデータフォーマットの概念図である
【図21】本発明者らが過去に提案した磁気記録再生方式を採用した記録装置の構成を示す図である。
【図22】図21の記録装置によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。
【図23】本発明者らが過去に提案した磁気記録再生方式を採用した再生装置の構成を示す図である。
【図24】図22の再生装置のユニット再生の動作の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0211】
1 記録データ
2 磁気記録メディア
3 再生データ
21 プリアンブル
22 データ
23−1,23−2,23−3 ゲイン制御パターン
24−1,24−2,24−3 同期パターン
25−1,25−2,25−3 分離パターン
51 ユニット
100 記録装置
110 マルチトラック化部
111 データ分配器
120 マルチトラック記録符号化部
121−1,121−2,121−3 記録符号化部
130 マルチトラックプリアンブル付加部
131−1,131−2,131−3 独立プリアンブル付加部
140 マルチトラック記録部
141−1,141−2,141−3 出力タイミング設定部
144−1,144−2,144−3 記録補償部
147−1,147−2,147−3 記録アンプ
149 記憶部
150 記録ヘッドアレイ
200 再生装置
210 再生ヘッドアレイ
220 チャネル再生部
221−1,221−2,221−3 再生アンプ
224−1,224−2,224−3 ゲイン調整部
225−1,225−2,225−3 A/Dコンバータ
230 信号分離処理部
231 独立同期信号検出器
232 再生信号ゲイン制御処理部
233 チャネル推定演算部
234 信号分離演算部
235 記憶部
240 マルチトラック復調部
241−1,241−2,241−3 等化器
243−1,243−2,243−3 検出器
244−1,244−2,244−3 同期信号検出器
245−1,245−2,245−3 復号器
260 復元部
261 データ結合器
R−1,R−2,R−3 再生ヘッド
W−1,W−2,W−3 記録ヘッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを有する再生装置によってデータ再生が可能なデータフォーマットであって、
前記データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記トラックごとに、データと、このデータを再生する制御のために必要なプリアンブルとが記録され、再生時に前記再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、前記各トラックの前記プリアンブルの前記トラックの進行する方向における位置が設定されていることを特徴とするデータフォーマット。
【請求項2】
請求項1に記載のデータフォーマットであって、
前記各トラックの前記プリアンブルは、他のトラックのうち少なくとも隣のトラックの前記プリアンブルに対して、前記トラックの進行する方向においてずれた位置に配置されていることを特徴とするデータフォーマット。
【請求項3】
請求項1に記載のデータフォーマットであって、
前記プリアンブルは、前記再生装置が前記再生ヘッドによって再生された信号のゲインを制御するために必要なゲイン制御パターンを含むことを特徴とするデータフォーマット。
【請求項4】
請求項1に記載のデータフォーマットであって、
前記プリアンブルは、前記再生装置が同期検出を行うために必要な同期パターンを含むことを特徴とするデータフォーマット。
【請求項5】
請求項1に記載のデータフォーマットであって、
前記プリアンブルは、前記再生装置が前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンを含むことを特徴とするデータフォーマット。
【請求項6】
複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを有する再生装置によってテータ再生が可能な記録媒体であって、
前記データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記トラックごとに、データと、このデータを再生する制御のために必要なプリアンブルとが記録され、再生時に前記再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、前記各トラックの前記プリアンブルは、他のトラックのうち少なくとも隣のトラックの前記プリアンブルに対して、前記トラックの進行する方向においてずれた位置に記録されていることを特徴とする記録媒体。
【請求項7】
請求項6に記載の記録媒体であって、
前記プリアンブルは、前記再生装置が前記再生ヘッドによって再生された信号のゲインを制御するために必要なゲイン制御パターンを含むことを特徴とする記録媒体。
【請求項8】
請求項6に記載の記録媒体であって、
前記プリアンブルは、前記再生装置が同期検出を行うために必要な同期パターンを含むことを特徴とする記録媒体。
【請求項9】
請求項6に記載の記録媒体であって、
前記プリアンブルは、前記再生装置が前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンを含むことを特徴とする記録媒体。
【請求項10】
複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを有する再生装置によってデータ再生が可能となるように、記録媒体に、記録ヘッドにより、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを記録する装置であって、
前記トラックごとに記録すべきデータを符号化する記録符号化部と、
前記記録符号化部により符号化された前記トラックごとの前記データにそれぞれ、再生時に前記再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係で、前記データを再生する制御のために必要なプリアンブルを付加する独立プリアンブル付加部と、
前記トラックごとの前記プリアンブルが付加されたデータを、前記記録ヘッドにより前記記録媒体に記録するための処理を行うマルチトラック記録部と
を具備することを特徴とする記録装置。
【請求項11】
請求項10に記載の記録装置であって、
前記プリアンブルは、前記再生装置が前記再生ヘッドによって再生された信号のゲインを制御するために必要なゲイン制御パターンを含むことを特徴とする記録装置。
【請求項12】
請求項10に記載の記録装置であって、
前記プリアンブルは、前記再生装置が同期検出を行うために必要な同期パターンを含むことを特徴とする記録装置。
【請求項13】
請求項10に記載の記録装置であって、
前記プリアンブルは、前記再生装置が前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンを含むことを特徴とする記録装置。
【請求項14】
複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを有する再生装置によってデータ再生が可能となるように、記録媒体に、記録ヘッドにより、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを記録する方法であって、
前記トラックごとに記録すべきデータを符号化するステップと、
前記符号化された前記トラックごとの前記データにそれぞれ、再生時に前記再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係で、前記データを再生する制御のために必要なプリアンブルを付加するステップと、
前記トラックごとの前記プリアンブルが付加されたデータを、前記記録ヘッドにより前記記録媒体に記録するステップと
を具備することを特徴とする記録方法。
【請求項15】
データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記トラックごとに、データと、このデータを再生する制御のために必要な、ゲイン制御パターンを含むプリアンブルとが記録され、再生時に複数のトラックに跨って信号を再生することが可能な再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、前記各トラックの前記プリアンブルは、他のトラックのうち少なくとも隣のトラックの前記プリアンブルに対して、前記トラックの進行する方向においてずれた位置に記録された記録媒体から前記データを再生する装置であって、
前記ゲイン制御パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドの再生信号に対するゲインを演算して、この再生ヘッドの再生信号のレベルを制御する再生信号ゲイン制御処理部を有することを特徴とする再生装置。
【請求項16】
請求項15に記載の再生装置であって、
前記ユニット内の各トラックに対してそれぞれ異なる位置関係で信号を再生可能なように前記再生ヘッドを複数備え、
前記再生信号ゲイン制御処理部は、
前記各再生ヘッドごとの前記プリアンブルの再生信号をもとに、前記各再生ヘッドごとの再生信号に対するゲインを演算して、前記各再生ヘッドごとの再生信号のレベルを制御することを特徴とする再生装置。
【請求項17】
請求項15に記載の再生装置であって、
前記ユニット内の各トラックに対してそれぞれ異なる位置関係で前記ユニットをスキャン再生可能なように前記再生ヘッドがトラック幅方向に移動可能に設けられ、
各スキャンごとの前記再生ヘッドの前記プリアンブルの再生信号をもとに、前記各スキャンごとの再生信号に対するゲインを演算して前記各スキャンごとの再生信号のレベルを制御することを特徴とする再生装置。
【請求項18】
請求項15に記載の再生装置であって、
前記プリアンブルは、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンを有し、
前記ユニットごとの前記分離パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するチャネル推定演算部と、
前記チャネル推定演算部によって求められた前記チャネル行列をもとに、前記再生ヘッドによって再生され、前記再生信号ゲイン制御処理部にてレベルが制御された1ユニット分の再生信号から、前記トラックごとの再生信号を分離する信号分離演算部と
をさらに具備することを特徴とする再生装置。
【請求項19】
データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記トラックごとに、データと、このデータを再生する制御のために必要なプリアンブルとが記録され、再生時に複数のトラックに跨って信号を再生することが可能な再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、前記各トラックの前記プリアンブルは、他のトラックのうち少なくとも隣のトラックの前記プリアンブルに対して、前記トラックの進行する方向においてずれた位置に記録された記録媒体から前記データを再生する方法であって、
前記ゲイン制御パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドの再生信号に対するゲインを演算して、この再生ヘッドの再生信号のレベルを制御することを特徴とする再生方法。
【請求項20】
複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを有する再生装置と、この再生装置によってデータ再生が可能となるように、記録媒体に、記録ヘッドにより、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを記録する記録装置とを有する記録再生装置であって、
前記記録装置は、
前記トラックごとに記録すべきデータを符号化する記録符号化部と、
前記記録符号化部により符号化された前記トラックごとの前記データにそれぞれ、再生時に前記再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係で、前記データを再生する制御のために必要なプリアンブルを付加する独立プリアンブル付加部と、
前記トラックごとの前記プリアンブルが付加されたデータを、前記記録ヘッドにより前記記録媒体に記録するための処理を行うマルチトラック記録部とを具備し、
前記再生装置は、
前記ゲイン制御パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドの再生信号に対するゲインを演算して、この再生ヘッドの再生信号のレベルを制御する再生信号ゲイン制御処理部を具備する、ことを特徴とする記録再生装置。
【請求項1】
複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを有する再生装置によってデータ再生が可能なデータフォーマットであって、
前記データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記トラックごとに、データと、このデータを再生する制御のために必要なプリアンブルとが記録され、再生時に前記再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、前記各トラックの前記プリアンブルの前記トラックの進行する方向における位置が設定されていることを特徴とするデータフォーマット。
【請求項2】
請求項1に記載のデータフォーマットであって、
前記各トラックの前記プリアンブルは、他のトラックのうち少なくとも隣のトラックの前記プリアンブルに対して、前記トラックの進行する方向においてずれた位置に配置されていることを特徴とするデータフォーマット。
【請求項3】
請求項1に記載のデータフォーマットであって、
前記プリアンブルは、前記再生装置が前記再生ヘッドによって再生された信号のゲインを制御するために必要なゲイン制御パターンを含むことを特徴とするデータフォーマット。
【請求項4】
請求項1に記載のデータフォーマットであって、
前記プリアンブルは、前記再生装置が同期検出を行うために必要な同期パターンを含むことを特徴とするデータフォーマット。
【請求項5】
請求項1に記載のデータフォーマットであって、
前記プリアンブルは、前記再生装置が前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンを含むことを特徴とするデータフォーマット。
【請求項6】
複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを有する再生装置によってテータ再生が可能な記録媒体であって、
前記データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記トラックごとに、データと、このデータを再生する制御のために必要なプリアンブルとが記録され、再生時に前記再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、前記各トラックの前記プリアンブルは、他のトラックのうち少なくとも隣のトラックの前記プリアンブルに対して、前記トラックの進行する方向においてずれた位置に記録されていることを特徴とする記録媒体。
【請求項7】
請求項6に記載の記録媒体であって、
前記プリアンブルは、前記再生装置が前記再生ヘッドによって再生された信号のゲインを制御するために必要なゲイン制御パターンを含むことを特徴とする記録媒体。
【請求項8】
請求項6に記載の記録媒体であって、
前記プリアンブルは、前記再生装置が同期検出を行うために必要な同期パターンを含むことを特徴とする記録媒体。
【請求項9】
請求項6に記載の記録媒体であって、
前記プリアンブルは、前記再生装置が前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンを含むことを特徴とする記録媒体。
【請求項10】
複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを有する再生装置によってデータ再生が可能となるように、記録媒体に、記録ヘッドにより、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを記録する装置であって、
前記トラックごとに記録すべきデータを符号化する記録符号化部と、
前記記録符号化部により符号化された前記トラックごとの前記データにそれぞれ、再生時に前記再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係で、前記データを再生する制御のために必要なプリアンブルを付加する独立プリアンブル付加部と、
前記トラックごとの前記プリアンブルが付加されたデータを、前記記録ヘッドにより前記記録媒体に記録するための処理を行うマルチトラック記録部と
を具備することを特徴とする記録装置。
【請求項11】
請求項10に記載の記録装置であって、
前記プリアンブルは、前記再生装置が前記再生ヘッドによって再生された信号のゲインを制御するために必要なゲイン制御パターンを含むことを特徴とする記録装置。
【請求項12】
請求項10に記載の記録装置であって、
前記プリアンブルは、前記再生装置が同期検出を行うために必要な同期パターンを含むことを特徴とする記録装置。
【請求項13】
請求項10に記載の記録装置であって、
前記プリアンブルは、前記再生装置が前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンを含むことを特徴とする記録装置。
【請求項14】
複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを有する再生装置によってデータ再生が可能となるように、記録媒体に、記録ヘッドにより、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを記録する方法であって、
前記トラックごとに記録すべきデータを符号化するステップと、
前記符号化された前記トラックごとの前記データにそれぞれ、再生時に前記再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係で、前記データを再生する制御のために必要なプリアンブルを付加するステップと、
前記トラックごとの前記プリアンブルが付加されたデータを、前記記録ヘッドにより前記記録媒体に記録するステップと
を具備することを特徴とする記録方法。
【請求項15】
データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記トラックごとに、データと、このデータを再生する制御のために必要な、ゲイン制御パターンを含むプリアンブルとが記録され、再生時に複数のトラックに跨って信号を再生することが可能な再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、前記各トラックの前記プリアンブルは、他のトラックのうち少なくとも隣のトラックの前記プリアンブルに対して、前記トラックの進行する方向においてずれた位置に記録された記録媒体から前記データを再生する装置であって、
前記ゲイン制御パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドの再生信号に対するゲインを演算して、この再生ヘッドの再生信号のレベルを制御する再生信号ゲイン制御処理部を有することを特徴とする再生装置。
【請求項16】
請求項15に記載の再生装置であって、
前記ユニット内の各トラックに対してそれぞれ異なる位置関係で信号を再生可能なように前記再生ヘッドを複数備え、
前記再生信号ゲイン制御処理部は、
前記各再生ヘッドごとの前記プリアンブルの再生信号をもとに、前記各再生ヘッドごとの再生信号に対するゲインを演算して、前記各再生ヘッドごとの再生信号のレベルを制御することを特徴とする再生装置。
【請求項17】
請求項15に記載の再生装置であって、
前記ユニット内の各トラックに対してそれぞれ異なる位置関係で前記ユニットをスキャン再生可能なように前記再生ヘッドがトラック幅方向に移動可能に設けられ、
各スキャンごとの前記再生ヘッドの前記プリアンブルの再生信号をもとに、前記各スキャンごとの再生信号に対するゲインを演算して前記各スキャンごとの再生信号のレベルを制御することを特徴とする再生装置。
【請求項18】
請求項15に記載の再生装置であって、
前記プリアンブルは、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンを有し、
前記ユニットごとの前記分離パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するチャネル推定演算部と、
前記チャネル推定演算部によって求められた前記チャネル行列をもとに、前記再生ヘッドによって再生され、前記再生信号ゲイン制御処理部にてレベルが制御された1ユニット分の再生信号から、前記トラックごとの再生信号を分離する信号分離演算部と
をさらに具備することを特徴とする再生装置。
【請求項19】
データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記トラックごとに、データと、このデータを再生する制御のために必要なプリアンブルとが記録され、再生時に複数のトラックに跨って信号を再生することが可能な再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、前記各トラックの前記プリアンブルは、他のトラックのうち少なくとも隣のトラックの前記プリアンブルに対して、前記トラックの進行する方向においてずれた位置に記録された記録媒体から前記データを再生する方法であって、
前記ゲイン制御パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドの再生信号に対するゲインを演算して、この再生ヘッドの再生信号のレベルを制御することを特徴とする再生方法。
【請求項20】
複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを有する再生装置と、この再生装置によってデータ再生が可能となるように、記録媒体に、記録ヘッドにより、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを記録する記録装置とを有する記録再生装置であって、
前記記録装置は、
前記トラックごとに記録すべきデータを符号化する記録符号化部と、
前記記録符号化部により符号化された前記トラックごとの前記データにそれぞれ、再生時に前記再生ヘッドによって複数の前記トラックの前記プリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向においてずれた位置関係で、前記データを再生する制御のために必要なプリアンブルを付加する独立プリアンブル付加部と、
前記トラックごとの前記プリアンブルが付加されたデータを、前記記録ヘッドにより前記記録媒体に記録するための処理を行うマルチトラック記録部とを具備し、
前記再生装置は、
前記ゲイン制御パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドの再生信号に対するゲインを演算して、この再生ヘッドの再生信号のレベルを制御する再生信号ゲイン制御処理部を具備する、ことを特徴とする記録再生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2009−20985(P2009−20985A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185064(P2007−185064)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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