説明

データ不整合検出装置および検出方法

【課題】サービスを提供する複数のシステムがネットワークに分散配置された環境において、システム間でデータ方式が異なる場合でも、各システムにデータ処理モジュールを必要とせずに整合性確認を行う。また、データ整合性を確認するための評価項目をサービス提供条件に合わせて柔軟に設定可能とする。
【解決手段】整合性確認部201が運用者端末100から整合性確認要求を受けると、評価項目管理部202は評価項目定義ファイル2031〜203nの中から指定された評価項目定義ファイルを選択し、この評価項目に指定されたシステム3011〜301nのデータを取得するようデータ変換部205に指示する。データ変換部205は、各システム3011〜301nから取得された登録データを、変換定義ファイル206に設定された規則により共通のデータ形式に変換し、整合性確認部201は共通のデータ形式に変換されたデータにより整合性確認処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 サービス提供を行うための機能がネットワークに分散して配置されているコンテンツ流通環境において、複数のシステム間におけるデータの不整合を検出するため、もしくはあるシステムにおけるデータが他のシステムのサービス提供上の制約条件に対して矛盾がないかどうかを確認するためのデータ不整合検出装置および検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルコンテンツ流通環境において、コンテンツをただ単に提供する機能だけでなく、コンテンツ情報を公開し、コンテンツの配信要求を受付ける機能や、コンテンツを利用するための情報を提供する機能、暗号化されたコンテンツの解読情報を配送する機能などの複数の機能がネットワーク上に分散配置されるようになっている。そして、それらの機能が連携することで高度なコンテンツ流通サービスの提供を実現するようになってきている。
【0003】
このように機能分担した複数のシステムが連携して1つのサービスを提供するコンテンツ流通環境では、通常、システム毎に運用条件に合わせたそれぞれのデータ管理を行っている。このようなシステムに対して、複数のシステムに関連するデータが登録され、そのデータに基づき各システムが機能する際に、それらのデータの不整合が存在するとサービス提供が適切に行えないことがある。このようなデータの不整合は、例えばコンテンツの配信要求を受付ける機能と暗号化されたコンテンツの解読情報を提供する機能におけるサービスIDなどのサービスを特定するための識別情報が一致しない場合等が該当する。しかし、コンテンツを配信する期間とコンテンツ情報の公開期間の関係など、サービスの要件によって各システム間の連携方法が必ずしも同じであるとは限らず、そのためにシステム構築時から複数システム間のデータの整合性を保障するのは困難である。このような不具合を解消するために、登録時に関連するデータを確認する手段があるが、運用上必ずしも登録者や登録時期が一致するとは限らず、また、確認項目が多岐に渡る場合にその確認処理もしくは確認作業は運用上の負担につながることとなる。
【0004】
このため、特許文献1の「データ管理装置」において、各種アプリケーションと、それに対応するデータベースとの間のインタフェース機能を有し、モジュール間もしくは、同一網に存在するデータ整合プロセッサと通信可能なモジュールにより、データ要求の際に他システムのデータやローカルまたはリモートの事前に設定された規則に基づき整合性の確保を行う技術が提案されている。
【0005】
このような従来の分散環境におけるデータ整合処理装置の例を図4に示す。この図4に示された従来のデータ整合処理装置10(データ整合プロセッサ)は、機能分担したコンテンツ配信サービスを実現するn個のシステム201〜20nに登録されたデータを統合的に管理するための処理を行う。各システム201〜20nには、共通的なデータ処理モジュール21が備えられている。視聴者端末301〜30nは、インターネット等のネットワークを介してシステム201〜20nにアクセスしてコンテンツの配信等のサービスを利用する。
【0006】
また、このデータ整合処理装置10は、整合性確認のための規則を格納する整合性確認規則格納部12と、整合性確認規則格納部12に格納された規則に基づきデータの不整合を検出する整合性確認部11とから構成されている。
【0007】
この従来のデータ整合処理装置10では、各システム201〜20nに対するデータの不整合確認要求を受けて、あらかじめ整合性確認規則格納部12に設定された規則に基づき各システム201〜20n間のデータの不整合の検出が行われる。
【0008】
ここで、各システム201〜20n間で使用されるデータの形式は、それぞれ異なっている場合が多く、データ整合処理装置10では、データ形式が統一されていないと整合性確認を行うことができない。そのため、このような従来のサービス提供システムでは、整合性確認を行う対象のシステム201〜20nにおいて、アプリケーションとデータベース間のインタフェースとして、データを共通的に管理するためのデータ処理モジュール21をそれぞれ実装する必要がある。そのため、既存システムを整合性確認の管理対象として新たに追加する際などには、このデータ処理モジュール21の実装が制限となってしまう場合がある。
【0009】
また、このような従来のデータ整合処理装置では、単にデータの一致や不一致のみを検出することしかできず、サービス提供の形態に応じて様々なデータの不整合の条件に対応することができないという問題もある。例えば、ある条件の時だけ不整合とするというような条件分岐や、文字列のバイト数制限、データの部分一致など、実際のサービスの運用に合わせて評価項目を柔軟に設定することができない。
【特許文献1】特開平10−124370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した従来のデータ不整合検出装置では、下記のようなという問題点があった。
(1)各システム間のデータ形式が統一されていないと整合性確認を行うことができないため、データを共通的に管理するためのデータ処理モジュールが各システムに必要になる。
(2)単に各システム間のデータの一致や不一致のみを検出することしかできず、データの整合性を確認するための評価項目をサービス提供条件に合わせて柔軟に設定することができない。
【0011】
本発明の目的は、サービスの提供を行うための各種機能がネットワークに分散して配置されているコンテンツ流通環境において、整合性確認を行う対象のシステムにおいてデータの方式が異なる場合でも、各システムにデータ処理モジュールの実装を必要とすることなく整合性確認を行うことができ、また、データの整合性を確認するための評価項目をサービス提供条件に合わせて柔軟に設定可能なデータ不整合検出装置および検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明のデータ不整合検出装置は、サービス提供を行うための機能がネットワークに分散して配置されているコンテンツ流通環境において、複数のシステム間におけるデータの不整合を検出するためのデータ不整合検出装置であって、
システム間のデータの不整合の有無を検出するための評価項目が設定された評価項目定義ファイルと、
前記各システムから読み込んだデータを共通のデータに変換するための規則が設定された変換定義ファイルと、
指定された評価対象データを、当該評価対象データを保持するシステムから取得し、取得した評価対象データを前記変換定義ファイルに設定された規則に基づいて共通のデータ形式に変換するデータ変換部と、
整合性確認要求を受けて、前記評価項目定義ファイルに設定された評価項目を読み出し、該評価項目により指定された評価対象データを前記各システムから読み出すよう前記データ変換部に指示し、前記データ変換部により共通のデータ形式に変換された後のデータを、前記評価項目により指定された評価条件に基づいて比較検証を行うことによりシステム間のデータの不整合を検出する整合性確認部とを備えている。
【0013】
本発明によれば、データ変換部において各システムから取得した登録データを、変換定義ファイルに設定された規則に基づいて共通のデータ形式に変換してから、整合性確認部における整合性確認処理が行われる。そのため、サービス提供を行うための各種機能がネットワークに分散して配置されているコンテンツ流通環境において、様々なサービスの運用条件に対応しながら、各システムのデータ管理方式を意識することなく、サービス提供上、指定したデータの他のシステムとのデータの矛盾や、サービス提供上の制約条件との矛盾をなしているデータ不整合を広い範囲で検出することが可能となる。
【0014】
また、前記評価項目定義ファイルを、それぞれサービスの運用条件に応じて異なる評価項目が設定された複数の評価項目定義ファイルにより構成するようにして
前記複数の評価項目定義ファイルの中から指定された評価項目定義ファイルを選択する評価項目管理部をさらに備え、
前記整合性確認部は、整合性確認要求を受けて、該整合性確認要求により指定された評価項目定義ファイルを選択するよう前記評価項目管理部に指示を行い、選択された評価項目定義ファイルに設定された評価項目を読み出して整合性確認処理を行うようにしてもよい。
【0015】
本発明によれば、様々なサービスの運用条件に対応した複数の評価項目定義ファイルを備えるようにし、この複数の評価項目定義ファイルの中から整合性確認処理を行う評価項目が設定されたものを選択するようにしているので、様々なサービスの運用条件に対応することが可能となる。
【0016】
さらに、前記整合性確認部は、複数の値を比較するための比較演算子を使用した評価を標準の評価条件として予め実装されており、
該比較演算子を使用した標準の評価条件では評価できない評価条件による評価を行うための関数を備え、評価対象データを取得して評価した結果を真偽値で返却する評価条件拡張モジュールをさらに備えるようにしてもよい。
【0017】
本発明によれば、標準の評価条件では評価することができない評価項目がある場合には、評価条件拡張モジュールを作成して実装することにより、標準の評価条件では評価できないような評価項目についても整合性確認を行うことができ、評価条件の拡張を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、サービス提供を行うための各種機能がネットワークに分散して配置されているコンテンツ流通環境において、様々なサービスの運用条件に対応しながら、各システムのデータ管理方式を意識することなく、サービス提供上、指定したデータの他のシステムとのデータの矛盾や、サービス提供上の制約条件との矛盾をなしているデータ不整合を広い範囲で検出することが可能となり、コンテンツ流通環境全体において適切なデータ登録を効率的に確保することができるという効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施形態のデータ不整合検出装置のシステム構成を示した図である。図1において、機能分担したコンテンツ配信サービスを実現するシステム3011〜301nがネットワークに分散して配置されている。システム3011〜301nは、例えば、ネットワークで流通するコンテンツ流通に関する情報をメタデータとして管理・提供する装置、メタデータを利用してコンテンツ情報を公開し、視聴者からの視聴要求を受付ける装置、暗号化されたコンテンツの解読情報を管理し、視聴者からの要求に応じて該コンテンツの解読情報を提供する装置、コンテンツを指定された配信形態にもとづき配信する装置もしくはその配信を制御する装置、などがあり、これらの装置が連携して、コンテンツ流通サービスを提供する。
【0021】
視聴者端末4001〜400nは、それぞれネットワークを介してシステム3011〜301nに接続され、順次システム3011〜301nと通信を行い、コンテンツ流通サービスを利用する。ここでのネットワークは、電話網、LAN、インターネットなど、どのようなネットワークでも構わない。
【0022】
本実施形態のデータ不整合検出装置200は、システム3011〜301nのそれぞれと通信を行い、データの取得などが行えるようネットワークで接続される。また、データ不整合検出装置200は、運用者端末100と直接、もしくはLAN、インターネットなどの各種ネットワークで接続され、運用者端末100よりデータ不整合検出装置200を操作可能とする。
【0023】
そして、不整合検出装置200は、整合性確認部201と、評価項目管理部202と、評価項目定義ファイル2031〜203nと、評価条件拡張モジュール2041〜204nと、データ変換部205と、変換定義ファイル206とから構成されている。
【0024】
評価項目定義ファイル2031〜203nは、システム3011〜301n間のデータの不整合の有無を検出するための評価項目が設定されている。そして、サービスの運用条件として異なる条件がある場合には、この評価項目定義ファイル2031〜203nには、それぞれサービスの運用条件に応じて異なる評価項目が設定される。この評価項目定義ファイル2031〜203nは、サービスの運用者がその運用条件に合わせて自由に変更可能な構成となっている。
【0025】
評価項目管理部202は、不整合を検出するための評価項目を設定する評価項目定義ファイル2031〜203nによる評価項目を管理する。また、評価項目管理部202は、複数の評価項目定義ファイル2031〜203nの中から指定された評価項目定義ファイルを選択する。
【0026】
変換定義ファイル206は、各システム3011〜301nから読み込んだデータを共通のデータに変換するための規則が設定されている。
【0027】
データ変換部205は、評価項目により指定された評価対象データを、システムシステム3011〜301nのうちの当該評価対象データを保持するシステムから取得し、取得した評価対象データを変換定義ファイル206に設定された規則に基づいてデータ不整合検出装置200内での共通のデータ形式に変換する。
【0028】
整合性確認部201は、運用者端末100からの整合性確認要求を受けて整合性確認処理を実行する。具体的には、整合性確認部201は、整合性確認要求を受けて、評価項目定義ファイル2031〜203nに設定された評価項目を読み出し、この評価項目により指定された評価対象データを各システム3011〜301nから読み出すようデータ変換部205に指示し、データ変換部205により共通のデータ形式に変換された後のデータを、評価項目により指定された評価条件に基づいて比較検証を行うことによりシステム間のデータの不整合を検出する。なお、サービスの運用条件によって異なる複数の評価項目定義ファイル2031〜203nが設けられている場合には、整合性確認部201は、整合性確認要求を受けて、この整合性確認要求により指定された評価項目定義ファイルを選択するよう評価項目管理部202に指示を行い、選択された評価項目定義ファイルに設定された評価項目を読み出して整合性確認処理を行う。
【0029】
ここで、データ変換部205は、対象の各システムのインタフェースの方式に合わせて登録データを検索するようになっているが、対象のシステム3011〜301n毎にモジュール化されたデータ取得機能として実装可能することで、対象システム3011〜301nの追加に対応できるよう拡張性を考慮した構成としてもよい。また、評価条件拡張モジュールシステム2041〜204nは、整合性確認部201に基本的な評価条件として実装されている条件だけでは評価できない評価項目が存在する場合に、評価条件を拡張する場合に追加されるものである。
【0030】
次に、本実施形態のデータ不整合検出装置200の動作を図2のフローチャートを参照して説明する。
【0031】
不整合検出の動作として、まず始めに運用者端末100より不整合検出装置200に接続する。接続後、運用者がコンテンツIDなどの整合性確認対象を特定するキー情報を入力し、不整合接続装置200に対して整合性確認要求を行う。データ不整合検出装置200は、この運用者端末100からの整合性確認要求を受信することによりデータ不整合検出の動作を開始する。
【0032】
データ不整合検出装置200は、運用端末100からの整合性確認要求を受信すると(ステップ501)、受信した整合性確認要求を解析し(ステップ502)、評価項目管理部202を呼び出し(ステップ503)、評価項目管理部202で管理される評価項目定義ファイル203に記述された内容を取得する(ステップ504)。
【0033】
そして、整合性確認部201は、整合性評価項目に指定された対象システムのデータ群が取得済みであるか否かを判定する(ステップ505)、データ群が取得済みでない場合、データ変換部205の対象システムのデータ取得機能を呼び出す(ステップ506)。
【0034】
すると、データ変換部205は、整合性確認項目で指定されたシステム毎に運用者端末100からの整合性確認要求時に指定された確認対象を特定するキーで検索される一連のデータを各システム3011〜301nのインタフェースの方式に合わせてまとめて取得する(ステップ507)。ここで、データ変換部205は、変換定義ファイルが指定されているか否かを判定し(ステップ508)、変換定義ファイルが指定されている場合は、変換機能を呼び出し(ステップ509)、指定された変換定義ファイル206を読み込み、読み込んだ変換定義ファイル206に設定された規則に基づいてデータ変換を行う(ステップ510)。
【0035】
データ変換部205は、このようにして取得したデータを不整合検出装置200共通のデータ形式でメモリ領域に格納し保持しておく(ステップ511)。
【0036】
整合性確認部201では、このメモリ上に保持している対象システムからの取得データから、評価項目定義ファイル203で指定された対象のデータを取得する(ステップ512)。整合性確認部201は、複数のデータを評価する場合には、同様に対象のデータを取得する。そして、整合性確認部201は、今回の整合性確認が、実装されている基本的な標準の整合性関係のみを確認するものであるのか否かを判定する(ステップ513)。ステップ513において標準の整合性関係のみを確認するものであると判定した場合、整合性確認部201は、この取得したデータを評価項目定義ファイル203で指定された評価条件で評価を行い(ステップ514)、その評価結果を真偽値として、評価対象となったデータ値と評価条件といった評価項目情報と対にして保持する(ステップ515)。
【0037】
ステップ513の判定において、基本的な評価条件として実装される条件で評価できない条件を拡張する場合に追加される評価条件拡張モジュール2041〜204nによる評価条件が指定されている場合は、該当の評価条件拡張モジュールを呼び出し(ステップ516)、その評価条件拡張モジュールを利用して評価を行う(ステップ517)。評価項目定義ファイル2031〜203nに複数の評価項目が定義されている場合は、これまでの処理を繰り返し、全ての項目の評価が終了した地点で、保持している結果情報のフィルタリングを行うための出力規則に基づき評価結果画面を生成し、運用端末100に返却する(ステップ518)ことで、その評価結果より運用者が登録データの不整合を検出することが可能となる。運用者は、ここで確認された不整合において、該当のデータを修正することで、コンテンツ流通環境全体において適切なデータ登録が確保される。ここで、運用者が確認が必要な際に整合性確認要求を行う他に、不整合検出装置200が定期的に整合性確認要求を実施し、不整合を検出した際にアラート及び不整合検出箇所を運用者端末100に送信するようにしてもよい。
【0038】
コンテンツ配信サービスを実現するシステム3011〜301nは、必ずしも同じ方式でデータ管理をされるとは限らず、それぞれの運用に合わせた独自の方式でそのデータが登録され、管理されている。これらの各システムシステム3011〜301nに登録されたデータの不整合検出を実施する際に、事前に指定したデータの他のシステムとのデータとの不整合や、サービス提供上の制約条件との矛盾を確認する内容を整合性確認項目として評価項目定義ファイル2031〜203nに記述する。この評価項目定義ファイル2031〜203nは、データ不整合検出装置200において評価項目管理部202により管理される。
【0039】
評価項目定義ファイル2031〜203nでは確認対象のシステム及び対象のデータ、対象データのデータ型、評価条件が整合性確認項目として指定され、取得したデータの変換が必要なデータに関しては、変換定義ファイル206のファイルパスが指定される。
【0040】
次に、整合性確認部201における不整合検出処理の具体的な方法について説明する。例えば、整合性確認部201には、複数の値を比較するための比較演算子を使用した評価を標準の評価条件として予め実装しておく。そして、評価条件拡張モジュール2041〜204nは、この比較演算子を使用した標準の評価条件では評価できない評価条件による評価を行うための関数を備えるようにし、評価対象データを取得して評価した結果を真偽値で返却する。この関数は、サービス運用の条件に合わせて運用者が予め作成した関数であり、この関数による評価結果を共通的に真偽値で返却することにより、本実施形態のデータ不整合検出装置200は、標準の評価条件だけでなく、予め設定された関数による評価条件を用いた不整合検出が可能となる。
【0041】
この場合、整合性確認部201には、不整合検出のためのデータの評価条件として、等価(=)、非等価(≠)、より大きい(>)、以上(≧)、未満(<)、以下(≦)といった複数の値を比較するための一般的な比較演算子を標準の比較条件として指定できるようにする。また、データ型の指定は、比較対象のデータが、数値、文字列、日付といった様々なデータの型を扱うことを考慮し、装置に指定されたデータのデータ型を検出する機能を実装しない場合に、そのデータ型を指定し、同じ条件で評価可能となるようにする。ここでは、確認対象のシステムより取得するデータを装置内の共通で扱うデータ形式に変換するが、そのデータ形式をXML(eXtensible Markup Language)オブジェクトのような階層構造に変換することで、対象システムの様々なデータ構造に対応し、どのシステムのデータも共通の形式でそのデータパスを指定することが可能となる。これにより、運用者が各システムのデータ管理方式を意識することなく不整合検出の設定が行える。ここで、確認対象のデータは一つないし複数のシステムのデータとして複数指定してもよいし、あるシステムの一つのデータと運用者が運用上の条件として抽出した固定値を指定してもよい。
【0042】
図3は、評価項目定義ファイル203の記述例である。本記述例では評価項目定義ファイルをXML形式で記述しており、“ValidationItem”要素は整合性確認項目を示す。この要素の“relation”属性において、評価条件として“lessorequal”の表現により「以下」を指定し、“type”属性においてはデータ型として"date"の表現により「日付型」を指定している。“DataPath”要素において、評価対象のデータのパスを指定しているが、この要素の“SystemId”属性において、対象のシステムを指定するようになっている。これにより、対象データを日付型で扱い、“SystemId”が“01”で指定されるシステムのデータの値が“02”で指定されるデータの値以下であることを評価する設定となっている。
【0043】
また、この際のデータ変換は装置共通のデータ形式に統一するだけでなく、運用者が指定しやすいデータパス名を付与したり、例えば、比較する別のシステムの日付データの表現方法が異なるといった場合に、比較できるよう同じ表現方法に統一したり、データの一部のみの取得、複数のデータの結合など、不整合検出のための評価条件に応じて適宜データの変換を行うことで、評価対象範囲を拡張することを可能とする。
【0044】
例えば、対象のコンテンツに対して複数の購入パターンを有している場合、購入パターン毎に付与される購入IDに対する価格情報がシステムAとシステムBのデータにおいて一致しているかどうかを確認するために、コンテンツID等をキーに取得したデータでは価格情報が複数存在することになり、どの価格情報を評価するかを識別することができない。このため、価格情報に対する購入IDの対応付けをおこなった上で評価しなければならないが、各システムのそれぞれのデータにおいて、購入ID、価格の2つのデータを結合して“idprice”というデータ名として扱い、それぞれのシステムの“idprice”の値の一致を確認することで、IDに対応した価格の一致を確認することができる。
【0045】
このようなデータ変換においても、装置共通的に扱うデータ形式においてXML形式のデータとして扱う場合、XSLT(XML Stylesheet Language Transformation)のようなデータ構造変換の方式を利用してもよく、この際、変換定義ファイル206はXSLTスタイルシートのフォーマットで記述することができる。
【0046】
この評価項目定義ファイル2031〜203nは、評価項目管理部202で管理されるが、同一システムにおいて適用するサービスの要件によって整合性確認項目が変わる場合、複数の評価項目定義ファイル2031〜203nにファイルID及びファイル名を付与し、評価項目管理部202で管理する。不整合検出の契機、もしくは事前設定により運用者が適用するファイルを選択して指定し、評価項目管理部202において、指定されたファイルのIDより適用する評価項目定義ファイルを呼び出し、不整合検出を行うことで、運用条件に応じた不整合検出を行うことができる。また、データの整合性の重要度に応じて、評価項目定義ファイルを分割して、複数管理し、最も重要な不整合を検出するための評価項目定義ファイルにおいて不整合を検出された場合のみアラートにて運用者に通知するようにしてもよい。このようにすれば、データデータ不整合検出装置が自動で定期的に不整合検出を行うようにした場合に、出力規則により最も重要なデータの不整合を検出した場合にのみアラートにてデータの不整合発生を通知し、その他の軽微な不整合においては、運用者がログ等でデータの不整合の発生状況を確認した上で必要に応じてデータの修正を行うようにすることが可能である。
【0047】
本実施形態のデータ不整合検出装置200では、基本的には評価項目定義ファイル2031〜203nにおいて運用者が対象のシステムのデータと標準の比較条件を指定することとしているが、例えば、条件分岐に基づく評価や、禁則文字の有無、指定した文字列が含まれているかどうかの評価といった、取得したデータの変換を行ったとしても標準の比較条件では評価できない内容についての評価を行う場合がある。このような場合に対応するために、標準の比較条件で評価できない条件の評価を行うため評価条件拡張モジュール2041〜204nを適用可能とする。
【0048】
そのために、評価条件拡張モジュール2041〜204nを利用するための装置内で統一したアダプタインタフェースを定義し整合性確認部201においてアダプタインタフェースより評価条件拡張モジュール2041〜204nを呼び出し可能とする。このアダプタインタフェースは、評価条件名またはモジュールIDといったモジュールを特定可能な識別子による該当の評価条件拡張モジュール2041〜204nの呼び出しにより、モジュールに対して与えるデータの取得先、データ型などの比較対象のデータ情報を引数とし、真偽値などの評価条件拡張モジュール2041〜204nにおける評価結果を取得する際の戻り値とするものである。評価条件拡張モジュール204はこのアダプタインタフェースに合わせて、引数である対象データを取得、処理し、評価した結果を真偽値で返却するプログラムとして作成される。
【0049】
また、整合性確認部201では、利用可能な評価条件拡張モジュール2041〜204nを管理する。評価項目定義ファイル203において、評価条件拡張モジュール2041〜204nによる評価を行うよう指定する際には、評価条件として、その評価条件拡張モジュールに対応した評価条件名またはモジュールIDを指定する。
【0050】
これにより、運用者の必要に応じて評価条件拡張モジュール204を作成して、整合性確認部201で管理することで、評価項目定義ファイル2031〜203nで指定する評価条件を拡張することができる。
【0051】
本実施形態のデータ不整合検出装置200では、データ変換部205において各システム3011〜301nから取得した登録データを、変換定義ファイル206に設定された規則に基づいて共通のデータ形式に変換してから整合性確認処理が行われる。そのため、本実施形態のデータ不整合検出装置200によれば、サービス提供を行うための各種機能がネットワークに分散して配置されているコンテンツ流通環境において、様々なサービスの運用条件に対応しながら、各システムのデータ管理方式を意識することなく、サービス提供上、指定したデータの他のシステムとのデータの矛盾や、サービス提供上の制約条件との矛盾をなしているデータ不整合を広い範囲で検出することが可能となり、コンテンツ流通環境全体において適切なデータ登録を効率的に確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態のデータ不整合検出装置のシステム構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態の不整合検出装置の動作フローを示した図である。
【図3】評価項目定義ファイルの記述例である。
【図4】従来の分散環境におけるデータ管理装置の例である。
【符号の説明】
【0053】
10 データ整合処理装置(データ整合プロセッサ)
11 整合性確認部
12 整合性確認規則格納部
201〜20n システム
21 データ処理モジュール
301〜30n 視聴者端末
100 運用者端末
200 データ不整合検出装置
201 整合性確認部
202 評価項目管理部
2031〜203n 評価項目定義ファイル
2041〜204n 評価条件拡張スケジュール
205 データ変換部
206 変換定義ファイル
3011〜301n システム
4011〜401n 視聴者端末
501〜518 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サービス提供を行うための機能がネットワークに分散して配置されているコンテンツ流通環境において、複数のシステム間におけるデータの不整合を検出するため、もしくはあるシステムにおけるデータが他のシステムのサービス提供上の制約条件に対して矛盾がないかどうかを確認するためのデータ不整合検出装置であって、
システム間のデータの不整合の有無を検出するための評価項目が設定された評価項目定義ファイルと、
前記各システムから読み込んだデータを共通のデータに変換するための規則が設定された変換定義ファイルと、
指定された評価対象データを、当該評価対象データを保持するシステムから取得し、取得した評価対象データを前記変換定義ファイルに設定された規則に基づいて共通のデータ形式に変換するデータ変換部と、
整合性確認要求を受けて、前記評価項目定義ファイルに設定された評価項目を読み出し、該評価項目により指定された評価対象データを前記各システムから読み出すよう前記データ変換部に指示し、前記データ変換部により共通のデータ形式に変換された後のデータを、前記評価項目により指定された評価条件に基づいて比較検証を行うことによりシステム間のデータの不整合を検出する整合性確認部と、を備えたデータ不整合検出装置。
【請求項2】
前記評価項目定義ファイルは、それぞれサービスの運用条件に応じて異なる評価項目が設定された複数の評価項目定義ファイルにより構成され、
前記複数の評価項目定義ファイルの中から指定された評価項目定義ファイルを選択する評価項目管理部をさらに備え、
前記整合性確認部は、整合性確認要求を受けて、該整合性確認要求により指定された評価項目定義ファイルを選択するよう前記評価項目管理部に指示を行い、選択された評価項目定義ファイルに設定された評価項目を読み出して整合性確認処理を行う請求項1記載のデータ不整合検出装置。
【請求項3】
前記整合性確認部は、複数の値を比較するための比較演算子を使用した評価を標準の評価条件として予め実装されており、
該比較演算子を使用した標準の評価条件では評価できない評価条件による評価を行うための関数を備え、評価対象データを取得して評価した結果を真偽値で返却する評価条件拡張モジュールをさらに備えた請求項1または2記載のデータ不整合検出装置。
【請求項4】
サービス提供を行うための機能がネットワークに分散して配置されているコンテンツ流通環境において、複数のシステム間におけるデータの不整合を検出するため、もしくはあるシステムにおけるデータが他のシステムのサービス提供上の制約条件に対して矛盾がないかどうかを確認するためのデータ不整合検出方法であって、
整合性確認要求を受けて、システム間のデータの不整合の有無を検出するための評価項目が設定された評価項目定義ファイルに設定された評価項目を読み出すステップと、
該評価項目により指定された評価対象データを、当該評価対象データを保持するシステムから取得し、取得した該評価対象データを、前記各システムから読み込んだデータを共通のデータに変換するための規則に基づいて共通のデータ形式に変換するステップと、
共通のデータ形式に変換された後の前記評価対象データを、前記評価項目により指定された評価条件に基づいて比較検証を行うことによりシステム間のデータの不整合を検出するステップと、を備えたデータ不整合検出方法。
【請求項5】
前記評価項目定義ファイルは、それぞれ運用条件に応じて異なる評価項目が設定された複数の評価項目定義ファイルにより構成され、
評価項目定義ファイルに設定された評価項目を読み出すステップでは、整合性確認要求を受けて、該整合性確認要求により指定された評価項目定義ファイルを選択して、選択された評価項目定義ファイルに設定された評価項目を読み出す請求項4記載のデータ不整合検出方法。
【請求項6】
共通のデータ形式に変換された後の前記評価対象データを、前記評価項目により指定された評価条件に基づいて比較検証を行うステップでは、
複数の値を比較するための比較演算子を使用した標準の評価条件では評価できない評価条件が指定された場合、指定された該評価条件に合わせて予め設定された関数を使用して取得したデータを評価して、該評価結果を真偽値で返却する請求項4または5記載のデータ不整合検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−318371(P2006−318371A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142577(P2005−142577)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】