説明

データ処理装置、データ処理方法及びデータ処理プログラム

【課題】音又は動画ソース、並びに制御プログラム等の時系列データの再生・編集操作を直感的且つ容易に行う。
【解決手段】データ処理装置は、時系列データに含まれる時間情報に基づいて総再生時間を示す所定の長さの線分を作成し、この線分をそれぞれが時系列データの識別情報、時間情報、両端点の情報及び結合先の情報が付加された複数の微小線分に分割し、これらを線状に連結してなる線図形要素と、この線図形要素上で時系列データの現在の再生時点を示す進行図形要素とを含む図形要素を生成して表示画面上に表示し、表示された図形要素に対する操作入力に伴う入力情報を受け付けて、線図形要素の表示形態を制御すると共に、この表示形態が制御された線図形要素上を時系列データの再生時間に応じて進行図形要素を進行処理させて進行図形要素が到達した微小線分に付加された情報に基づいて時系列データを再生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、音又は動画ソース、並びに制御プログラム等の時系列データを再生・編集するデータ処理装置、データ処理方法及びデータ処理プログラムに関し、特に再生・編集操作を直感的且つ容易に行うことが可能なデータ処理装置、データ処理方法及びデータ処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、音や動画ソースの再生箇所や編集箇所を表示するものとして、シークバーが用いられている。このシークバーは、これらのソースの再生・編集位置調整インタフェースとしての機能を有し、例えば総再生時間のうちのどこまでを再生しているか等を視覚的に把握させることを主たる目的としている。
【0003】
このようなシークバーを有するGUIを備えた音や動画ソースの編集システムとしては、例えば時間軸を表すバーを2本とし、一方のバーでソースの全体(総再生時間)を表すと共に一定時間ごとに区切られた複数の期間を表し、他方のバーで各期間の全体を表すと共に現在再生・編集中の箇所を等速で移動するカーソルにより表して、再生・編集操作を容易にするものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−164033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された編集システムでは、音や動画ソースの広いレンジでの再生・編集位置の移動や指定はできるものの、より操作性を高めて容易にこれらのソースの再生・編集操作を行うためには十分なGUIを提供しているとは言い難かった。
【0006】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、音又は動画ソースの再生・編集操作を直感的且つ容易に行うことができるデータ処理装置、データ処理方法及びデータ処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るデータ処理装置は、時系列データの再生状態を示す図形要素を表示画面上に表示しながら前記時系列データの再生又は編集を行うデータ処理装置であって、前記時系列データを取得するデータ取得手段と、前記取得された時系列データに含まれる時間情報に基づいて総再生時間を示す所定の長さの線分を作成し、この線分をそれぞれが前記時系列データの識別情報、時間情報、両端点の情報及び結合先の情報を付加された複数の微小線分に分割する線分処理手段と、前記複数の微小線分を線状に連結してなる線図形要素と、この線図形要素上で前記時系列データの現在の再生時点を示す進行図形要素とを含む前記図形要素を生成して前記表示画面上に表示する図形要素処理手段と、前記表示画面上に表示された図形要素に対する操作入力に伴う入力情報を受け付ける入力手段と、前記入力情報に基づいて、前記図形要素処理手段を制御して前記線図形要素の前記表示画面上での表示形態を制御すると共に、この表示形態が制御された線図形要素上を前記時系列データの再生時間に応じて前記進行図形要素を進行処理させて前記進行図形要素が到達した前記微小線分に付加された情報に基づいて前記時系列データを再生するデータ処理手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
前記データ処理手段は、例えば前記時系列データの再生箇所を示しつつ前記線図形要素に沿って移動自在なスライダを、前記表示画面上に前記進行図形要素として表示させるものでも良い。
【0009】
前記入力手段は、例えば前記表示画面上に表示されたカーソルの位置情報及びこのカーソルを用いた操作入力に伴う前記図形要素に対して直接変形又は加工を施すための入力情報と、前記図形要素に対する変形又は加工の操作種別を示す操作入力モードを指示するための前記表示画面上に表示されたメニュー領域への入力情報とを受け付けるものでも良い。
【0010】
本発明の一態様に係るデータ処理方法は、データ取得手段、線分処理手段、図形要素処理手段、表示手段、入力手段、及びデータ処理手段を備えたデータ処理システムを用いて、時系列データの再生状態を示す図形要素を表示画面上に表示しながら前記時系列データの再生又は編集を行うためのデータ処理方法であって、前記データ取得手段が前記時系列データを取得する工程と、前記線分処理手段が前記取得された時系列データに含まれる時間情報に基づいて総再生時間を示す所定の長さの線分を作成する工程と、前記線分処理手段が前記作成された線分をそれぞれが前記時系列データの識別情報、時間情報、両端点の情報及び結合先の情報を付加された複数の微小線分に分割する工程と、前記図形要素処理手段が前記複数の微小線分を線状に連結してなる線図形要素と、この線図形要素上で前記時系列データの現在の再生時点を示す進行図形要素とを含む前記図形要素を生成する工程と、前記表示手段が前記生成された図形要素を前記表示画面上に表示する工程と、前記入力手段が前記表示画面上に表示された図形要素に対する操作入力に伴う入力情報を受け付ける工程と、前記データ処理手段が前記入力情報に基づいて、前記図形要素処理手段を制御して前記線図形要素の前記表示画面上での表示形態を制御する工程と、前記データ処理手段が、前記表示形態が制御された線図形要素上を前記時系列データの再生時間に応じて前記進行図形要素を進行処理させて前記進行図形要素が到達した前記微小線分に付加された情報に基づいて前記時系列データを再生する工程とを備えたことを特徴とする。
【0011】
前記表示形態を制御する工程では、例えば前記データ処理手段が、前記時系列データの再生箇所を示しつつ前記線図形要素に沿って移動自在なスライダを、前記表示画面上に前記進行図形要素として表示させるようにしても良い。
【0012】
前記入力情報を受け付ける工程では、例えば前記入力手段が、前記表示画面上に表示されたカーソルの位置情報及びこのカーソルを用いた操作入力に伴う前記図形要素に対して直接変形又は加工を施すための入力情報と、前記図形要素に対する変形又は加工の操作種別を示す操作入力モードを指示するための前記表示画面上に表示されたメニュー領域への入力情報とを受け付けるようにしても良い。
【0013】
本発明の一態様に係るデータ処理プログラムは、データ取得手段、線分処理手段、図形要素処理手段、表示手段、入力手段、及びデータ処理手段を備えたデータ処理システムを用いて、時系列データの再生状態を示す図形要素を表示画面上に表示しながら前記時系列データの再生又は編集を行わせるためのデータ処理プログラムであって、コンピュータに、前記データ取得手段により前記時系列データを取得させる処理と、前記線分処理手段により前記取得された時系列データに含まれる時間情報に基づいて総再生時間を示す所定の長さの線分を作成させる処理と、前記線分処理手段により前記作成された線分をそれぞれが前記時系列データの識別情報、時間情報、両端点の情報及び結合先の情報を付加された複数の微小線分に分割させる処理と、前記図形要素処理手段により前記複数の微小線分を線状に連結してなる線図形要素と、この線図形要素上で前記時系列データの現在の再生時点を示す進行図形要素とを含む前記図形要素を生成させる処理と、前記表示手段により前記生成された図形要素を前記表示画面上に表示させる処理と、前記入力手段により前記表示画面上に表示された図形要素に対する操作入力に伴う入力情報を受け付けさせる処理と、前記入力情報に基づいて、前記図形要素処理手段を制御させて前記線図形要素の前記表示画面上での表示形態を制御させる処理と、前記表示形態が制御された線図形要素上を前記時系列データの再生時間に応じて前記進行図形要素を進行処理させて前記進行図形要素が到達した前記微小線分に付加された情報に基づいて前記時系列データを再生させる処理とを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、音又は動画ソースの再生・編集操作を直感的且つ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るデータ処理装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】同装置の表示部における表示画面例を示す図である。
【図3】同装置における線図形要素(以下、「シークロープ」と呼ぶ。)の構造を示す図である。
【図4】同装置におけるシークロープ生成処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】同装置の表示部における表示画面例を示す図である。
【図6】同装置におけるシークロープ操作処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】シークロープの変形表示例を示す図である。
【図8】シークロープの加工表示例を示す図である。
【図9】シークロープの加工表示例を示す図である。
【図10】シークロープの加工表示例を示す図である。
【図11】シークロープの変形表示例を示す図である。
【図12】シークロープの加工表示例を示す図である。
【図13】シークロープの変形表示例を示す図である。
【図14】シークロープの変形表示例を示す図である。
【図15】シークロープの加工表示例を示す図である。
【図16】シークロープの加工表示例を示す図である。
【図17】シークロープの加工表示例を示す図である。
【図18】同装置における再生処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、添付の図面を参照して、この発明に係るデータ処理装置、データ処理方法及びデータ処理プログラムの実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るデータ処理装置10の構成を示す図である。
図1に示すように、データ処理装置10は、音又は動画ソースの再生・編集処理を行うものであり、データ処理装置10への各種情報の入力を受け付ける入力部10Aと、入力部10Aにより受け付けられた情報に基づき上記再生・編集処理に関する制御を行うと共にデータ処理装置10の全体を制御する制御部10Bと、制御部10Bからの情報を外部に出力する出力部10Cとを備えて構成されている。
【0018】
入力部10Aは、例えばデータ処理装置10の入力インタフェース部として機能し、例えば音楽ソースや動画ソースを構成する時系列データ(例えば、「ファイルデータ」)を取得するデータ取得部11と、データ処理装置10に接続されたキーボードやマウス、タッチパネル、ジョイスティック等の入力デバイスからのユーザの操作入力に伴う入力情報を受け付ける操作入力部12とを備えて構成されている。
【0019】
制御部10Bは、入力部10Aのデータ取得部11により取得されたファイルデータを解析してその時間情報に基づき、仮想領域などの演算領域上で作成される線分等に関する処理を行う線分処理部13と、この線分処理部13からの情報に基づいて後述する表示部16の表示画面上に表示される図形要素に関する処理を行う図形要素処理部14と、入力部10Aの操作入力部12により受け付けられた入力情報に基づいて、図形要素の表示画面上での表示形態を制御したり、ファイルデータの再生・編集処理を行ったりするデータ処理部15とを備えて構成されている。
【0020】
出力部10Cは、例えばディスプレイ装置等からなり制御部10Bの図形要素処理部14にて処理された図形要素を表示画面上に表示する表示部16と、スピーカ装置等からなり制御部10Bのデータ処理部15にて処理されたファイルデータの音声出力を行う音声出力部17とを備えて構成されている。
【0021】
なお、データ処理装置10は、例えば制御部10Bのデータ処理部15にて処理されたデータを一時的或いは恒久的に記憶するフラッシュメモリやハードディスクドライブ装置からなる記憶部18を備えていても良い。また、以降において本例では、音楽ソースを構成するファイルデータの再生・編集処理について説明するが、データ処理装置10は、動画ソースを構成するファイルデータ、音楽ソースや動画ソースを構成するメディアソース、ロボット等の動作プログラム、コンピュータプログラム等の時系列データについても同様に扱えるものである。
【0022】
図2に示すように、表示部16の表示画面20は、例えば画面下部側に設けられたシークロープ生成表示領域21と、その上部側に設けられた再生表示領域22と、その右側に設けられたファイルデータ一覧表示領域23と、その下部に設けられたシークロープの操作モードを選択切替等するためのコマンドメニューを表示するメニュー表示領域24とを備えて構成されている。なお、この表示画面20には、例えば画面を最小化する最小化ボタン20a、画面を最大化する最大化ボタン20b、及び画面を閉じるクローズボタン20cが設けられている。
【0023】
ここで、上記表示画面20のシークロープ生成表示領域21に表示されるシークロープとは、本例のデータ処理装置10において、従来のシークバーの概念に自由曲線的に変形及び加工可能な特性を与えたもので、紐状の線図形要素として表示画面20上に表示されるものである。このシークロープは、例えば図3に示すような構造からなり、図4に示すような処理により生成される。ロープの形状としては、一様である必要はなく、必要に応じて太さや色等を変更してもよい。
【0024】
まず、入力部10Aのデータ取得部11により、例えば外部の音楽サーバ等から通信によって、或いは光ディスクドライブ装置等から読み込みによって音楽ソースのファイルデータを取得し(ステップS100)、線分処理部13によって取得されたファイルデータを解析する。
【0025】
ここでは、図3(a)に示すように、データ取得部11によって取得されたファイルデータAを線分処理部13により解析すると、このファイルデータAは再生開始点T0(=0)〜再生終了点Tnまでの時間軸上における総再生時間Tnという時間情報を、例えば秒単位で有していることが分かる。
【0026】
次に、線分処理部13により、ファイルデータの総再生時間に対応する長さの線分を作成する(ステップS102)。すなわち、図3(b)に示すように、線分処理部13は、例えばファイルデータAの総再生時間Tnを示す始点K0〜終点Knという長さLの線分Sを演算領域上に作成する。
【0027】
作成された線分Sの長さLは、例えば表示画面20のシークロープ生成表示領域21に表示可能な最大の長さに設定しても良いし、単位時間当たりの長さを一定として総再生時間Tnに比例した長さとしても良い。
【0028】
そして、線分処理部13は、図3(c)に示すように、作成した線分Sをその線分の長さLの範囲内で複数の微小線分S1,S2,…,Snに分割する(ステップS104)。複数の微小線分S1〜Snのそれぞれは、図3(d)に示すように、両端点K,Ki+1(i=0〜n−1)の情報を有し、その他に、少なくともファイルデータAの識別情報、時間情報(両端点に対応する時間)、結合先の微小線分の情報を有する。微小線分S1〜Snの長さは、一定時間長としても、分割数を一定とする長さとしても良い。
【0029】
このように線分Sを各種情報を有する複数の微小線分S1〜Snに分割することにより、例えば再生・編集処理の際に微小線分S1はファイルデータAの時間T1を示している成分であるなどの各微小線分S1〜SnとファイルデータA及びその再生位置との関連付けを明確にすることができる。
【0030】
各微小線分S1〜Snは両端点の少なくとも一方を有し、結合先として指定された微小線分と結合される。すなわち、図3(d)に示すように、これら複数の微小線分S1〜Snは、それぞれの端点K0〜Knを結合点として連結される。
【0031】
次に、図形要素処理部14により、微小線分S1〜Snを連結した線分から、紐状の図形要素であるシークロープSRを生成する(ステップS106)。
【0032】
こうしてシークロープSRを生成したら、図形要素処理部14は、生成したシークロープSRを表示画面20のシークロープ生成表示領域21に表示して(ステップS108)、本フローチャートによる一連のシークロープ生成処理を終了する。
【0033】
このように生成されたシークロープSRは、図5に示すように、表示画面20上で紐状に「曲げる」、「移動させる」、「切断する」、「結合させる」などの操作が可能な線図形要素として表示される。なお、シークロープ生成表示領域21に表示されたシークロープSRには、シークロープSRに沿って移動自在な再生箇所を示す進行図形要素であるスライダSDが設けられている。シークロープSRaは、切断されたシークロープである。
【0034】
また、ファイルデータ一覧表示領域23には、データ処理装置10に読み込んだ(すなわち、データ取得部11が取得した)ファイルデータのファイルネームが「楽曲A」、「楽曲B」、「楽曲C」、「楽曲D」のように視認可能に一覧表示されている。更に、メニュー表示領域24には、操作モードとして、「シークロープ生成」、「シークロープ再生」、「シークロープ一時停止」、「シークロープ停止」、「再生速度変更」、「シークロープの整形」などのコマンドメニューが表示されている。
【0035】
次に、シークロープに対する変形や加工の操作の処理を図6のフローチャートに基づき説明する。図6に示すように、まず、操作入力部12によって受け付けられた入力情報に基づき、制御部10Bのデータ処理部15が、表示画面20上のカーソル位置情報及びシークロープに対して直接変形又は加工を施すための入力情報を取得する(ステップS200)。
【0036】
次に、取得した情報により、ユーザのドラッグ操作があるか否かを判断し(ステップS202)、ドラッグ操作がない場合(ステップS202のN)は処理を終了すると共に、ドラッグ操作がある場合(ステップS202のY)は、例えばメニュー表示領域24に表示されたコマンドメニューのサブメニューとして、どの操作モードであるかを判断する。この実施形態では、一例として、引っ張るモード、沿わせるモード、切断モードの3つのモードが選択可能となっている。まず、引っ張るモードが選択されたか否かを判断する(ステップS204)。
【0037】
[引っ張るモード]
引っ張るモードが選択された場合(ステップS204のY)、カーソル初期選択箇所(或いはその近傍)の結合点を移動始点に設定し(ステップS206)、ドラッグ操作範囲内において結合点及び微小線分を順次移動する移動始点に連結状態を維持しつつ追従するような軌跡を描くように移動させて表示する(ステップS208)。そして、ドラッグ操作が終了したか否かを判定し(ステップS210)、終了していない場合(ステップS210のN)は、上記ステップS208に戻り処理を繰り返す。
【0038】
具体的には、この引っ張るモードでは、図7に示すようにシークロープSRの表示形態が制御される。すなわち、図7(a)に示すように、カーソルCの初期選択箇所近傍の結合点K0が移動始点として設定され、カーソルCをポイントP1までドラッグ操作により移動させた場合、図7(b)に示すように、シークロープSRの結合点K0がポイントP1に移動され、それに続く結合点K1〜K5まで及び微小線分S1〜S6が追従するような軌跡で移動されて表示される。これにより、シークロープSRがあたかも引っ張られたように表示することが可能となる。
【0039】
このような操作は、具体的には次のような処理によって行うことができる。例えば、図7(c)に示すように、結合点K0,K1を持つ長さL1の微小線分S1について、結合点K0を結合点K0’にドラッグ操作した場合、移動元結合点K1と移動先結合点K0’とを結ぶ線分上に移動先結合点K1’が位置するように移動先結合点K1’を決定すれば良い。移動先結合点K0’と移動元結合点K1との間の長さをL2とすると、移動先結合点K1’は、下記数1により求めることができる。そして、結合点K1を結合点K1’の座標に移動させた後、結合点K1と線分を構成していた微小線分S2の結合点K2が新たな座標の結合点K2’へ移動するように計算を行い、続いて移動させる必要がなくなるまで順次結合点K3,K4,…,Knと計算を行えば良い。
【0040】
【数1】

【0041】
そして、ドラッグ操作が終了した場合(ステップS210のY)は、結合点移動先に結合点があるか否かを判断し(ステップS212)、結合点がある場合(ステップS212のY)は、移動元の結合点と移動先の結合点の結合点情報(座標や対応関係などの情報)を更新(互いにそれぞれの情報を書き込むなど)して接合する(ステップS214)。上記のようにして、複数のシークロープを結合することによってプレイリストを作成したり、1つのシークロープの始点と終点とを結合することによってリピート再生を行ったりすることができる。
【0042】
具体的に、リピート再生を行う場合、図8に示すように、例えばシークロープSRの結合点K0を移動始点として、カーソルCによってシークロープSRの終点の結合点Knに向けて円を描くようにドラッグ操作して結合点K0を結合点Knにドラッグした場合、結合点K0及び結合点Knの結合点情報がそれぞれ更新され、結合点K0の結合点情報に結合点Knの結合点情報が加えられると共に、結合点Knの結合点情報に結合点K0の結合点情報が加えられて、シークロープSRは円形に接合された表示形態となる。
【0043】
このような円形の表示形態で、図8中白抜き矢印で示す再生方向にスライダSDが移動しつつシークロープSRに対応付けられたファイルデータの再生が行われると、結合点K0と結合点Knとが結合された状態であるため、ファイルデータの再生終了点と再生開始点とが重なったこととなり、いわゆるリピート再生が行われる。すなわち、シークロープSRの表示形態により再生条件が決定され(この場合、リピート再生)、これに基づきファイルデータの再生が行われる。また、予め再生回数を無限に設定すれば、図9に示すような無限ループ再生を行うこともできる。上記円形は1つのシークロープで形成して、1つのファイルデータの無限ループ再生としても良いし、複数のシークロープを結合させたもので形成して、プレイリストの無限ループ再生としても良い。
【0044】
なお、結合点移動先に結合点がない場合(ステップS212のN)や上記ステップS214の処理の後は、シークロープSRの表示形態に応じて適宜ファイルデータの編集処理が行われる(ステップS250)。すなわち、次のような場合には、新たなファイルデータが編集処理により生成される。
【0045】
図10に示すように、例えば図8にて説明したシークロープSRの中間の結合点K1に、他のシークロープSRaの結合点K0をドラッグ移動させて結合した場合は、シークロープSRに対応付けられたファイルデータの結合点K1の結合点情報とシークロープSRaに対応付けられたファイルデータの結合点K0の結合点情報とがそれぞれ上記のように更新される。
【0046】
そして、これらのファイルデータをまとめた1つのファイルデータが、上記ステップS250の編集処理にて、シークロープSR,SRaの表示形態に合わせて生成される。なお、生成された新たなファイルデータは、記憶部18に記憶されて再生・編集の際に参照されるテンポラリなデータであっても良い。
【0047】
また、図10中白抜き矢印で示すように、再生方向はシークロープSR,SRaの結合点で分かれるため、予め再生方向が設定されている場合を除き、例えばランダムにその方向を変更したり、新たに接合されたシークロープSRaの方向に優先的に方向を変更したりするようにしてファイルデータの再生を行うこともできる。これにより、例えば曲の途中で曲の先頭に飛んで再生が開始されたり、曲の途中で異なる曲に移行するなどの再生が可能になる。
【0048】
データ処理部15は、このようなファイルデータの編集処理が終了した後、又は上記ステップS202にてドラッグ操作がない場合は、本フローチャートによる一連のシークロープ操作処理を終了する。一方、上記ステップS204にて引っ張るモードが選択されていない場合(ステップS204のN)は、例えば沿わせるモードが選択されたか否かを判断する(ステップS220)。
【0049】
[沿わせるモード]
沿わせるモードでは、シークロープがドラッグ軌跡に沿うように変形する。沿わせるモードが選択された場合(ステップS220のY)、カーソル初期選択箇所(或いはその近傍)の結合点を変形始点に設定し(ステップS222)、ドラッグ操作されたカーソル位置とその結合点との間の距離を算出する(ステップS224)。そして、算出された距離がその結合点を有する微小線分の長さと等しくなったか否かを判断し(ステップS226)、等しくなった場合(ステップS226のY)は、隣接する結合点をドラッグ軌跡上に移動させて表示し、ドラッグ操作が終了したか否かを判定する(ステップS230)。
【0050】
ドラッグ操作が終了していない場合(ステップS230のN)、及びステップS226にて等しくないと判断した場合(ステップS226のN)は、上記ステップS224に移行して処理を繰り返す。ドラッグ操作が終了した場合(ステップS230のY)は、ドラッグ終了点を引っ張るモードの移動点としてドラッグ軌跡上に移動されていない残りの微小線分を処理して、上述したファイルデータ編集処理(ステップS250)に移行する。
【0051】
なお、この沿わせるモードでは、図11に示すようにシークロープSRの表示形態が制御される。すなわち、図11(a)に示すように、カーソルCの初期選択箇所近傍の結合点K0が変形始点として設定され、カーソルCをポイントP2までドラッグ操作により移動させた場合、図11(b)に示すように、上記ステップS224〜S230の処理により結合点K1〜K12及び微小線分S1〜S12がドラッグ軌跡上に移動されて表示される。これと共に、結合点K12に続く結合点K13〜K19まで及び微小線分S13〜S19がポイントP2に引っ張られたように表示される。これにより、シークロープSRがあたかも沿わされたように表示することが可能となる。
【0052】
更に、上記ステップS220にて沿わせるモードが選択されていない場合(ステップS220のN)は、例えば切断モードが選択されたか否かを判断する(ステップS240)。切断モードが選択されていない場合(ステップS240のN)は処理を終了するが、切断モードが選択された場合(ステップS240のY)は、切断モードに移行する。
【0053】
[切断モード]
まず、カーソル初期選択箇所(或いはその近傍)の結合点を切断始点に設定する(ステップS242)。そして、ドラッグ操作が終了するまで待って(ステップS244のN)、終了した場合(ステップS244のY)は、ドラッグ操作範囲内において切断始点と操作終点の間の微小線分及び結合点を削除して表示し(ステップS246)、上述したファイルデータの編集処理(ステップS250)に移行する。
【0054】
具体的には、この切断モードでは、図12に示すようにシークロープSRの表示形態が制御される。すなわち、図12(a)に示すように、カーソルCの初期選択箇所近傍の結合点K0が切断始点として設定され、カーソルCをポイントP3までシークロープSRに沿ってドラッグ操作により移動させた場合、図12(b)に示すように、切断始点の結合点K0から操作終点の結合点K4の間の微小線分S1〜S4及び結合点K0〜K43までが削除(消去)されて表示される。これにより、シークロープSRがあたかも削除されたように表示することが可能となる。
【0055】
なお、この切断モードの後のファイルデータの編集処理では、切断されたシークロープSRの表示形態に合わせて、シークロープSRに対応付けられたファイルデータの再生開始点から結合点K4までのデータが削除され、結合点K4に対応する時間が再生開始点とされた新たなファイルデータが生成される。従って、このように生成されたファイルデータを再生した場合、シークロープSRの結合点K4に対応付けられた時間からファイルデータの再生が行われる。
【0056】
このように、第1の実施形態に係るデータ処理装置10によれば、表示画面20のシークロープ生成表示領域21や再生表示領域22に表示される紐状のシークロープSRを直感的に変形、加工操作するだけで、シークロープSRに対応付けられているファイルデータの再生・編集処理を行うことができる。これにより、音楽や動画ソースのファイルデータの再生・編集操作を直感的且つ容易に行うことが可能となる。
【0057】
そして、シークロープSRの表示形態が再生条件を決めるように構成することができるため、別途再生条件を指定しなくても、例えば次のようなファイルデータの再生等が可能となる。すなわち、図13に示すように、シークロープSR,SRaを操作して両者が交差するように表示させた場合は、シークロープSR,SRaにそれぞれ対応付けられたファイルデータをリミックスするような編集処理を行うことができる。
【0058】
この場合において、再生処理を行うと、例えば両者の交差箇所において、シークロープSRに対応付けられているファイルデータの再生途中にてシークロープSRaに対応付けられているファイルデータの途中箇所からの再生を行ったりしてメドレー再生のような再生処理を行うことができる。その他、交差箇所の前後において再生方向を変更した再生処理を行ったり、交差箇所の後で不要なシークロープを切断加工してファイルデータの編集処を行ったりすることもできる。
【0059】
また、図14に示すように、シークロープSRの一部を操作して円形になるように表示させた場合は、その円形部分に対応するファイルデータを局所的にループ再生するような再生処理を行ったり、他のシークロープから切断した部分をシークロープSRに接合して円形部分とすれば、その円形部分だけを局所的に他のファイルデータのループ再生とさせることも可能となる。
【0060】
更に、図15に示すように、シークロープSRとシークロープSRaとを縛るように操作した場合、両者の重なっている箇所をクロスフェード再生するような再生処理を行うこともできる。これにより、各シークロープSR,SRaに対応付けられている複数のファイルデータのつなぎ目を滑らかに移行させる再生処理が可能となる。
【0061】
そして、このような操作を組み合わせることにより、例えば図16に示すように、一辺が一曲のファイルデータに対応付けられたシークロープを矩形の格子状に配置して表示することで、スライダSDが通る複数の楽曲のファイルデータをランダムに再生するような再生処理を行ったり、図17に示すように、切断したシークロープを集めて複数の円形に接合して表示することで、スライダSDが通る複数の曲の一部のみをよりランダムに再生する、プレイリストのランダム再生のような再生処理を行ったりすることも可能となる。
【0062】
なお、シークロープの表示形態に合わせて再生処理を行う再生モードにおいては、スライダの位置を操作することにより任意の曲の任意の箇所から再生を行うことが可能である。図18は、データ処理装置10の再生処理の手順を示すフローチャートである。図18に示すように、データ処理部15は、メニュー表示領域24に表示されたコマンドメニュー等に基づき再生モードにて選択されたシークロープに対応付けられているファイルデータを記憶部18から読み込む(ステップS300)。
【0063】
そして、シークロープの再生開始箇所に対応する位置にスライダを表示し(ステップS302)、読み込んだファイルデータの構成及び時間情報等に応じてスライダの表示位置を移動させながら(ステップS304)、ファイルデータの再生を行う。
【0064】
再生中に、操作入力部12からの入力情報に基づき、スライダに対するドラッグ操作があったか否かを判断し(ステップS306)、ドラッグ操作がなければ(ステップS306のN)、上記ステップS304の処理を続行する。ドラッグ操作があったら(ステップS306のY)、ドラッグ操作終点位置にスライダの表示位置を移動させて表示する(ステップS308)。
【0065】
これと共に、スライダの表示位置に対応するファイルデータの構成及び時間情報等に応じてファイルデータの再生箇所を変更して(ステップS310)、ファイルデータの再生を行う。そして、再生モードの終了を判断し(ステップS312)、終了しない場合(ステップS312のN)は、上記ステップS304の処理を続行すると共に、終了する場合(ステップS312のY)は、再生処理を終了する。このようにスライダの表示位置を任意に変更して再生を行うことができるので、例えばシークロープの結合点に複数の結合点が接合されている場合に、任意の再生先をユーザが選択するなど、より直感的に再生操作を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0066】
10 データ処理装置
10A 入力部
10B 制御部
10C 出力部
11 データ取得部
12 操作入力部
13 線分処理部
14 図形要素処理部
15 データ処理部
16 表示部
17 音声出力部
20 表示画面
21 シークロープ生成表示領域
22 再生表示領域
23 ファイルデータ一覧表示領域
24 メニュー表示領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時系列データの再生状態を示す図形要素を表示画面上に表示しながら前記時系列データの再生又は編集を行うデータ処理装置であって、
前記時系列データを取得するデータ取得手段と、
前記取得された時系列データに含まれる時間情報に基づいて総再生時間を示す所定の長さの線分を作成し、この線分をそれぞれが前記時系列データの識別情報、時間情報、両端点の情報及び結合先の情報を付加された複数の微小線分に分割する線分処理手段と、
前記複数の微小線分を線状に連結してなる線図形要素と、この線図形要素上で前記時系列データの現在の再生時点を示す進行図形要素とを含む前記図形要素を生成して前記表示画面上に表示する図形要素処理手段と、
前記表示画面上に表示された図形要素に対する操作入力に伴う入力情報を受け付ける入力手段と、
前記入力情報に基づいて、前記図形要素処理手段を制御して前記線図形要素の前記表示画面上での表示形態を制御すると共に、この表示形態が制御された線図形要素上を前記時系列データの再生時間に応じて前記進行図形要素を進行処理させて前記進行図形要素が到達した前記微小線分に付加された情報に基づいて前記時系列データを再生するデータ処理手段とを備えた
ことを特徴とするデータ処理装置。
【請求項2】
前記データ処理手段は、前記時系列データの再生箇所を示しつつ前記線図形要素に沿って移動自在なスライダを、前記表示画面上に前記進行図形要素として表示させる請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記入力手段は、前記表示画面上に表示されたカーソルの位置情報及びこのカーソルを用いた操作入力に伴う前記図形要素に対して直接変形又は加工を施すための入力情報と、前記図形要素に対する変形又は加工の操作種別を示す操作入力モードを指示するための前記表示画面上に表示されたメニュー領域への入力情報とを受け付ける請求項1又は2記載のデータ処理装置。
【請求項4】
データ取得手段、線分処理手段、図形要素処理手段、表示手段、入力手段、及びデータ処理手段を備えたデータ処理システムを用いて、時系列データの再生状態を示す図形要素を表示画面上に表示しながら前記時系列データの再生又は編集を行うためのデータ処理方法であって、
前記データ取得手段が前記時系列データを取得する工程と、
前記線分処理手段が前記取得された時系列データに含まれる時間情報に基づいて総再生時間を示す所定の長さの線分を作成する工程と、
前記線分処理手段が前記作成された線分をそれぞれが前記時系列データの識別情報、時間情報、両端点の情報及び結合先の情報を付加された複数の微小線分に分割する工程と、
前記図形要素処理手段が前記複数の微小線分を線状に連結してなる線図形要素と、この線図形要素上で前記時系列データの現在の再生時点を示す進行図形要素とを含む前記図形要素を生成する工程と、
前記表示手段が前記生成された図形要素を前記表示画面上に表示する工程と、
前記入力手段が前記表示画面上に表示された図形要素に対する操作入力に伴う入力情報を受け付ける工程と、
前記データ処理手段が前記入力情報に基づいて、前記図形要素処理手段を制御して前記線図形要素の前記表示画面上での表示形態を制御する工程と、
前記データ処理手段が、前記表示形態が制御された線図形要素上を前記時系列データの再生時間に応じて前記進行図形要素を進行処理させて前記進行図形要素が到達した前記微小線分に付加された情報に基づいて前記時系列データを再生する工程とを備えた
ことを特徴とするデータ処理方法。
【請求項5】
前記表示形態を制御する工程では、前記データ処理手段が、前記時系列データの再生箇所を示しつつ前記線図形要素に沿って移動自在なスライダを、前記表示画面上に前記進行図形要素として表示させる請求項4記載のデータ処理方法。
【請求項6】
前記入力情報を受け付ける工程では、前記入力手段が、前記表示画面上に表示されたカーソルの位置情報及びこのカーソルを用いた操作入力に伴う前記図形要素に対して直接変形又は加工を施すための入力情報と、前記図形要素に対する変形又は加工の操作種別を示す操作入力モードを指示するための前記表示画面上に表示されたメニュー領域への入力情報とを受け付ける請求項4又は5記載のデータ処理方法。
【請求項7】
データ取得手段、線分処理手段、図形要素処理手段、表示手段、入力手段、及びデータ処理手段を備えたデータ処理システムを用いて、時系列データの再生状態を示す図形要素を表示画面上に表示しながら前記時系列データの再生又は編集を行わせるためのデータ処理プログラムであって、
コンピュータに、
前記データ取得手段により前記時系列データを取得させる処理と、
前記線分処理手段により前記取得された時系列データに含まれる時間情報に基づいて総再生時間を示す所定の長さの線分を作成させる処理と、
前記線分処理手段により前記作成された線分をそれぞれが前記時系列データの識別情報、時間情報、両端点の情報及び結合先の情報を付加された複数の微小線分に分割させる処理と、
前記図形要素処理手段により前記複数の微小線分を線状に連結してなる線図形要素と、この線図形要素上で前記時系列データの現在の再生時点を示す進行図形要素とを含む前記図形要素を生成させる処理と、
前記表示手段により前記生成された図形要素を前記表示画面上に表示させる処理と、
前記入力手段により前記表示画面上に表示された図形要素に対する操作入力に伴う入力情報を受け付けさせる処理と、
前記入力情報に基づいて、前記図形要素処理手段を制御させて前記線図形要素の前記表示画面上での表示形態を制御させる処理と、
前記表示形態が制御された線図形要素上を前記時系列データの再生時間に応じて前記進行図形要素を進行処理させて前記進行図形要素が到達した前記微小線分に付加された情報に基づいて前記時系列データを再生させる処理とを実行させる
ことを特徴とするデータ処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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